当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当中間連結会計期間(2024年1月1日から2024年6月30日)において、当社グループは2つの戦略領域である放射性医薬品(RI)領域とNon-RI領域(ペプチド医薬品、PDC医薬品、MPC医薬品等)で着実に進捗を重ねています。
(A)放射性医薬品(RI)領域
当社グループは、日本国内で放射性医薬品事業を推進する上で必要となる創薬研究・開発から製造、販売に至るまですべての機能を一気通貫で有しています。ペプチドリームの100%子会社であるPDRファーマでは、放射性治療薬・診断薬および関連製品の製造や販売等を行っています。また、ペプチドリームではPDRファーマとの連携により、自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。腫瘍の縮小効果をもつ放射性核種をがん細胞に選択的に送達するためのキャリアーとして環状ペプチドの有用性が次々と示される中、両社のシナジーを最大限発揮することにより、革新的で高付加価値の放射性医薬品を開発・販売するとともに、海外の製薬企業から有望な放射性医薬品を導入することにより放射性医薬品領域での成長を目指しています。
(A)-1 当社グループが販売している放射性医薬品
PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している製品は以下の通りです。(2024年6月末時点)
· ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。
· ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。
· ゼヴァリン®インジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。
· ゼヴァリン®イットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。
· オクトレオスキャン®静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。
· テクネ®DMSAキット:腎シンチグラムによる腎疾患の診断。ジメルカプトコハク酸99mTc注射液 調整用。
· テクネ®DTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。
· テクネ®MAAキット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。
· テクネ®MAG3注射液/テクネ®MAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。
· テクネ®MDP注射液/テクネ®MDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。
· テクネ®ピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。
· テクネ®フチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。
· ニューロライト®注射液第一/ニューロライト®第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。
· カーディオライト®注射液第一/カーディオライト®第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。
· ミオMIBG®-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。
· 塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。
· ウルトラテクネカウ®:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。
· フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。
· アドステロール®-I131注射液:副腎シンチグラムによる副腎疾患部位の局在診断。ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)注射液。
· イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。
· アミヴィッド®静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。2024年5月、薬価基準に収載。Eli Lilly社からの導入品。
(A)-2 放射性医薬品(RI)領域の開発パイプライン
当社グループにおける放射性医薬品(RI)領域の開発パイプラインは以下の通りです。(2024年7月末時点)

· 64Cu-ATSMプログラム:
適応症:グリオーマおよび他の悪性脳腫瘍
モダリティ:64Cuで標識したジアセチルビスN4-メチルチオセミカルバゾン
提携先:リンクメッド株式会社(「リンクメッド」)
開発ステータス:64Cu-ATSMは現在、悪性脳腫瘍の中でも治療の選択肢が限定的と言われる再発・難治性悪性神経膠腫の患者さんを対象に、これまでの標準治療と比較して、生存期間を延長する効果がどの程度得られるかを検証するためのランダム化比較3相医師主導治験(STEP-64試験、試験番号NCCH2301)を、国立がん研究センター、神奈川県立がんセンターが主体となる形で実施されています。リンクメッドは、悪性神経膠腫・中枢神経系悪性リンパ腫などの悪性脳腫瘍や転移性脳腫瘍の患者さんを対象とした64Cu-ATSMの第1相医師主導臨床試験(STAR-64試験、試験番号NCCH1711)を完了したことを2024年6月に発表し、その結果を米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO2024)で報告しています。本試験の結果、64Cu-ATSMの安全性・寛容性に関して良好な結果を確認し、悪性脳腫瘍の患者さんに対する64Cu-ATSMの投与量として、99MBq/kgの7日ごとに4回の投与が推奨されるとの結論が得られました。有効性に関しては、全生存期間はあくまで副次的な評価項目ですが、64Cu-ATSMを投与した患者さん18人のうち14人(77.8%)が6か月以上、12人(66.7%)が1年以上生存されました。特に、膠芽腫の患者さんにおいては、9人のうち5人(55.6%)が1年以上生存されました。一般的に再発した膠芽腫の患者さんにおいて1年以上の生存率は30~40%であり、第1相臨床試験の結果は初期的ながら有望なものとして、第3相臨床試験に進めるための根拠となりました。本試験は、国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門が支援し、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究費をもとに、第1相から第3相に進んだ初めての医師主導治験です。
プログラム詳細:多くの腫瘍においては、がん細胞の急速な増殖と、新生血管からの不十分な酸素供給により腫瘍内部が酸素の乏しい低酸素状態になっていることが知られています。64Cu-ATSMは低酸素状態の組織に集積する性質を有することから、がん細胞のDNAにダメージを与え細胞死へ導く64Cuを腫瘍に送達することを可能とし、各種腫瘍への治療効果が期待されています。悪性脳腫瘍は、日本国内だけでも、毎年約4,000~5,000例が罹患すると報告されています。5年生存率は約15.5%、生存期間の中央値は約18カ月、再発率が約51%と非常に予後の悪いがんの一つとして知られています。現状、外科手術、放射線治療、化学療法等の既存の治療法で十分な効果が得られず再発した場合には、有効な治療法が確立されていません。2023年12月に発表した通り、当社グループはリンクメッドと戦略的パートナーシップに合意しました。今後の開発・商業化において必要となるコストおよび製品上市後に得られる収益を両社間で分配します。リンクメッドが主体となって64Cu-ATSMの開発を進め、PDRファーマが主体となって国内での承認申請および商業化にむけた準備を進めていきます。
· 177Lu/68Ga-Integrin(FF58)プログラム:
適応症:進行固形がん(膵管腺癌、胃食道腺癌、多形性膠芽腫)
モダリティ:インテグリンαvβ3/5を標的とし、177Lu(治療用)または68Ga(診断用)で標識した低分子化合物
提携先:Novartis社(Novartis社は海外の開発販売権を保有し、PDRファーマは日本の商業化に関する権利を保有しています。)
開発ステータス:177Lu-Integrinは、進行固形がんの患者さんを対象に安全性・忍容性・線量測定、初期的な効果の確認のための第1相臨床試験を行っています (NCT05977322)。
プログラム詳細:第1相臨床試験の目的は、インテグリンαvβ3とインテグリンαvβ5として知られるタンパク質を発現する進行/転移がんを有する患者さんに対し、放射性リガンド療法である177Lu-Integrinの安全性・用量検討を確認するための試験です。また、イメージング剤である68Ga-Integrinのがん病巣を同定する効果や安全性について同時に確認します。本試験は用量漸増試験と拡大試験の2つのパートから成ります。両パートにおいて、患者さんに対してまず68Ga-Integrinを用いたPET/コンピュータ断層撮影(CT)またはPET/磁気共鳴画像(MRI)スキャンを行い、177Lu-Integrinによる治療の適格性を判断します。用量漸増パートでは、177Lu-Integrinの投与量を漸増させ、推奨量を決定します。拡大試験では、用量漸増試験で決定した推奨量の177Lu-Integrinを投与し、安全性と予備的有効性を検討します。拡大試験パートの患者さんの80%以上のフォローアップが完了したか何らかの理由により中断された場合、全患者さんの治療と36ヵ月の長期フォローアップ期間が終了した場合、またはその他の理由により早期に試験が中止された場合、試験は終了します。
· 225Ac/68Ga-GPC3(RYZ-801/811)プログラム:
適応症:肝細胞がん(「HCC」)
モダリティ: 225Ac (治療用)または68Ga (診断用)で標識したグリピカン-3(GPC3)を標的とする環状ペプチド
提携先:Bristol-Myers Squibb社(BMS社)傘下のRayzeBio社(2024年2月にBMS社により買収。RayzeBio社/BMS社は225Ac/68Ga-GPC3の全世界での開発販売権を有しており、ペプチドリームは日本の開発販売権に関するオプション権を保有しています。)開発ステータス:68Ga-GPC3は現在第0相臨床試験を米国外の複数の医療機関で実施中です。(2023年9月時点で、47例以上のHCC患者さんに投与され、約90%の患者さんで腫瘍特異的に薬剤が取り込まれたこと、また特段の有害事象(SAE)が観察されていないことが報告されています)。また、225Ac/68Ga-GPC3のIND申請のための試験を並行して実施しています。2024年にIND申請を予定しており、HCC患者さんにおける225Ac/68Ga-GPC3の安全性を確認する第1相臨床試験を開始する予定です。
プログラム詳細:肝臓がんは米国におけるがんによる死因の中で6番目に多く、年間死亡者数は29,380人と推定されています。肝臓がんの患者さんにおける5年生存率は約20%であり、特に肝臓がんが進行した患者さんでは生存率が低いことが知られています。GPC3は、75%の肝細胞がんで過剰な発現が認められるがん胎児性タンパク質であり、正常組織では全くまたは僅かしか発現が見られません。225Ac-GPC3は治療薬として開発を進めており、HCCに225Acを送達するためにGPC3を標的とする、新規・独自のペプチドです。HCC異種移植腫瘍モデルの前臨床試験において、GPC3結合ペプチドは特異的な腫瘍取り込みを示し、225Acまたは177Luを送達する単回投与により、退縮を含む有意な腫瘍増殖阻害作用を示しました。68Ga-GPC3は、225Ac-GPC3と同一のペプチドで68Gaを送達するPET診断薬であり、臨床試験や治療の際に、225Ac-GPC3による治療効果が得られる可能性が高いGPC3を発現するHCCの患者さんをスクリーニングし、特定することを目的に開発されています。
· 225Ac/64Cu-CA9(PD-32766T/PD-32766D)プログラム:
適応症:淡明腎細胞がん(ccRCC)等のがん
モダリティ: Carbonic Anhydrase IX (「CAIX(CA9)」)を225Ac(治療用PD-32766T)または64Cu(診断用PD-32766D)で標識した環状ペプチド
提携先:ペプチドリームが全世界の商業化権を保有
開発ステータス:225Ac/64Cu-CA9は現在IND申請に向けた試験を実施中です。また、2024年4月に発表された通り、国立がん研究センターでのccRCC患者さんを対象とした64Cu-CA9の特定臨床研究(第0相臨床試験)の実施計画が国立がん研究センター東病院の臨床研究審査委員会で承認され、2024年6月に第0相試験(ヒューマン・イメージング試験)の開始を発表しました。また、2024年4月に、American Association for Cancer Research(AACR)で前臨床試験の結果を発表しました。
プログラム詳細:CA9は炭酸脱水酵素ファミリーの一員であり、RCC、膠芽腫、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、大腸がん等の様々な固形がんで発現していることが知られています。RCCは米国内のがん患者数において9番目に多いことが知られており、全世界でがんと診断されて亡くなられる患者さんの約2%を占めています。また、5年生存率は12%と、予後の悪いがんとしても知られています。2020年には全世界で431,288人の患者さんが腎臓がんと診断され、そのうち約9割が腎細胞がんと推定されています。RCCには主に淡明細胞型(ccRCC)、乳頭状(pRCC-type1およびtype2)、嫌色素性(chRCC)等があり、RCC症例の約70%をccRCCが占めています。CA9は淡明腎細胞がんに高発現(95%以上)する細胞表面のがん抗原で、正常細胞ではほとんど発現しないことから、淡明腎細胞がんの診断・治療における重要な標的として注目されています。RCC異種移植腫瘍モデルの前臨床研究において、CA9結合ペプチドは特異的な腫瘍取り込み、および単回投与による退縮を含む有意な腫瘍増殖阻害を示しました。治療薬と同じペプチドを用いたPET診断薬は、臨床試験や治療において、225Ac-CA9治療に良好な反応を示す可能性が最も高いCA9発現がんを有する患者さんを選別、特定することを可能にすると考えています。従来のがん治療薬に対して標的型の放射性医薬品を開発する重要な利点は、治療薬と同じペプチドを用いた診断薬で対象となる患者さんのイメージングデータを早期に取得する (第0相試験)ことで、薬剤の生体内分布・薬物動態・がん組織への集積等に関する情報を得ることができ、診断薬の有用性や治療薬の有益性の可能性について初期的な知見が得られるという点です。さらに、その際に得られる情報を活用しその後の第1相臨床試験および第2相臨床試験をデザインすることで臨床開発を加速することができるという利点もあります。
· Novartis社プログラム #2:
適応症:がん
モダリティ:環状ペプチド(放射性核種・標的は非開示)
提携先:Novartis社(Novartis社は同プログラムの全世界商業化権を保有。)
開発ステータス:2023年10月よりGLP安全性試験を実施中です。
プログラム詳細:2024年中に本プログラムに関するさらなる進捗を見込んでいます。
· 225Ac-Cadherin3(PPMX-T002)プログラム:
適応症:固形がん
モダリティ:カドヘリン3(P-カドヘリン/CDH3)を標的とするモノクローナル抗体。放射性治療薬として開発中であり、90Yで標識しておりましたが225Acに変更する計画です。
提携先:株式会社ペルセウスプロテオミクス(「PPMX」)
開発ステータス:90Y-Cadherin3は、がん患者さんを対象とした第1相臨床試験の拡大パートにおいて、がん組織への特異的な蓄積を示し、標的への送達能力が確認できたことから継続的な取り組みを進めています。2024年7月の発表の通り、PPMXはEANM(欧州核医学会)の24年年次総会において、PPMX-T002の高い抗腫瘍効果や、ヒトへの臨床応用の可能性についてポスター発表を行うことを予定しています。
プログラム詳細:抗CDH3抗体はPPMXによって創製され、本プログラムの開発および導出活動はPPMXが主導しています。CDH3は卵巣がん・胆道がん・頭頸部有棘細胞がん等多くのがんで過剰発現し、ほとんどの正常組織で発現が低いことが知られています。
· RayzeBio社/BMS社プログラム #2:
適応症:固形がん
モダリティ: 225Ac (治療用)または68Ga(診断用)で標識した環状ペプチド(標的は非開示)
提携先:BMS社傘下のRayzeBio社(RayzeBio社/BMS社は全世界の開発販売権を保持しており、ペプチドリームは日本の開発販売権に関するオプション権を保有しています。)
開発ステータス: 本プログラムはIND申請に向けて準備を進めています。
プログラム詳細:2024年中に本プログラムに関するさらなる進捗を見込んでいます。
· Novartis社プログラム #3:
適応症:固形がん
モダリティ:環状ペプチド(放射性核種・標的は非開示)
提携先:Novartis社(Novartis社は同プログラムの全世界商業化権を保有。)
開発ステータス:2024年7月の発表の通り、現在GLP安全性試験を実施中です。
· 18F-フロルタウシピル(Tauvid®)プログラム:
適応症:アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内における異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化(NFTs)を可視化
モダリティ:18Fで標識されたフロルタウシピル(PET診断薬)
提携先:Eli Lilly社
開発ステータス:非開示
プログラム詳細:18F-フロルタウシピルは、脳内に蓄積したタウタンパク質のNFT沈着を可視化するPET診断薬としてFDAから承認されています。18F-フロルタウシピルは2020年に米国でアルツハイマー型認知症と診断された成人の患者さんの脳内のタウタンパク質によるNFTの密度と分布を確認するためのPETイメージング剤として承認されました。当社グループは、PDRファーマのすでに承認されているアミヴィッド®と共に、18F-フロルタウシピルが承認されることにより、アルツハイマー病の診断および経過観察においてPET診断薬の使用が大きく拡大すると期待しています。
· 18F-PD-L1(18F-BMS-986229)プログラム:
適応症:がんのイメージング
モダリティ:18Fで標識されたPD-L1(programmed death ligand-1)を標的とする環状ペプチド(PET診断薬)
提携先:BMS社
開発ステータス:18F-PD-L1は、患者さんの胃食道癌についてPETを用いて診断し、病状を継続的に確認する上での実用性・安全性を確認することを目的とした第1相臨床試験が完了しました(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04161781; 米Memorial Sloan Kettering Cancer Centerで実施)。第1相臨床試験では、安全性と実用性の両方の主要評価項目を達成し、Journal of Nuclear Medicineに結果が掲載されました(May 2024: Volume 65:5: Cytryn et al., 18F-BMS-986229 PET to Assess Programmed-Death Ligand 1 Status in Gastroesophageal Cancer)。18F-PD-L1は、胃食道癌の患者さんに発現したPD-L1を可視化することを可能とし、安全性と実用性を備えた非侵襲的な診断薬であり、単一部位の生検では得られない全身の不均一な分布を把握し、PD-L1の発現に関するより包括的な情報を得られる診断薬としての可能性が示されました。PET診断により18F-PD-L1の集積が見られた患者さんは、第一選択のPD-1阻害薬で治療した場合、集積がどの病巣であるかに関わらず、無増悪生存期間(PFS)が長くなることが示されました(集積あり:PFS中央値28.4か月、集積なし:PFS中央値9.9か月)。18F-PD-L1を用いた診断により、抗PD-1治療の患者さんの選定や予後予測を改善できる可能性を示唆しており、胃食道癌の患者さんのより良い治療法の選択ひいては治療成績の改善につながる可能性があります。
(A)-3 放射性医薬品(RI)領域の前臨床・創薬プログラム:
上記の臨床ステージプログラムに加えて、ペプチドリームは標的型ペプチド-放射性核種複合体(RI-PDC)の創薬パイプラインを広範囲に有しており、Novartis社(2019年)、RayzeBio社(2020年、現BMS社傘下)、Genentech社(2023年)と複数の標的を対象とするRI-PDCに関する創薬分野の提携を行っているほか、自社開発プログラムも拡大しています。2024年4月にNovartis社とは2019年に発表されたRI-PDC等に関する共同研究開発の取り組みを拡大することを発表しました。これらの取り組みから生まれたプログラムのうち、臨床候補化合物の選定/IND申請のための試験開始等の段階まで進んだものについてパイプライン表/リストに掲載しています。また、ペプチドリームはRayzeBio社/BMS社およびGenentech社とのすべての提携プログラムについて、日本国内での商業化に関するオプション権を保有しています。
(A)-4 放射性医薬品(RI)領域の臨床段階の導入プログラム:
当社グループは、放射性治療薬や、国内で開発・商業化するための放射性医薬品の導入/提携の機会を積極的に検討しています。ペプチドリームが2022年にPDRファーマと経営統合して以降、両社で2つの提携を実施しました。2022年にはPET診断薬である18F-フロルタウシピルの日本の開発と商業化のためにEli Lilly社と共同開発契約を締結し、2023年には放射性治療薬64Cu-ATSMの日本での開発と商業化のためにリンクメッドと戦略的パートナーシップに合意しました。標的型放射性医薬品を開発する企業は世界的に急速に増加し続けており、その大半が米国市場に注力していることから、当社グループはそれらの企業が日本での製品化を望む場合の「パートナー・オブ・チョイス」となる、ユニークな立ち位置の構築を進めています。また、高付加価値プログラムの戦略的導入/提携は、当社グループの自社・共同研究による創薬活動との補完的な位置づけとして重要な戦略となっています。
(A)-5 放射性医薬品(RI)領域:その他
PDRファーマは日本で様々な放射性医薬品領域の付随的な製品・支援サービスを提供しています。2023年10月に、医療被ばく線量管理の完全自動化・デジタル化を可能とし、医療機関の業務効率化による医療事故リスクの低減に寄与する4つの商品(「Bridgea GATEWAY」、「Bridgea TIMER」、「onti」、「ankan」)に関連する資産を株式会社RYUKYU ISGから取得しました。PDRファーマは、これらの商品の製造・販売・保守サービス等を行っています。
(B)Non-RI領域
当社グループは、放射性医薬品事業に加え、PDPS®(Peptide Discovery Platform System)を中核とし(1) ペプチド医薬品、(2) ペプチド-薬物複合体(PDC)、(3) 多機能ペプチド複合体(MPC)の創薬におけるリーディング・カンパニーとして各種事業を展開しています。グローバルの大手製薬企業や戦略的提携先との提携・ライセンス契約に加え、自社プログラムも拡大しており、ペプチドを用いた次世代の革新的医薬品の創製・開発を目指しています。
(B)-1 Non-RI領域の開発パイプライン
当社グループにおけるNon-RI領域の開発パイプラインは以下の通りです。(2024年7月末時点)

· GhRアンタゴニスト(AZP-3813)プログラム:
適応症:先端巨大症
モダリティ:成長ホルモン受容体アンタゴニスト(GHRA)である環状ペプチド
提携先:Amolyt Pharma社 (Amolyt社、2024年7月にAstraZeneca社により買収)
開発ステータス:Amolyt社は、健常人におけるAZP-3813の安全性、忍容性、薬物動態の評価を目的とした第1相臨床試験を完了しました。本試験では、プラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験として、単回漸増(SAD)および反復漸増(MAD)試験を実施いたしました。SAD試験では、AZP-3813(3名)およびプラセボ(2名)の計5名の被検者について3mg用量の皮下投与が実施され、また、AZP-3813(6名)およびプラセボ(2名)の計8名の被験者について 10, 20, 40, 60, 90, 120mg各用量の皮下投与が実施されました。MAD試験では、AZP-3813(6名)およびプラセボ(2名)の計8名の被験者について 10, 20, 40, 60, 90, 120mg各用量の皮下投与が1日1回、14日間連続で実施されました。すべての被験者について治療の忍容性が確認され、安全性上の懸念は見られませんでした。また、Cmax(※1)およびAUC(※2)の用量依存的な増加が確認されています。AZP-3813の薬物動態半減期は20~22時間と算出されました。SAD試験では、AZP-3813は10mg用量以上の投与群において用量依存的に血中IGF-1濃度を減少させ、高濃度の投与群では72時間にわたり抑制効果を示しました。MAD試験では、用量依存的な血中IGF-1濃度の減少がゆるやかに起こり、その後維持されました。SAD試験の同濃度の群と比較して血中IGF-1濃度を減少させる効果が大きく、投与後2週間にわたり減少効果を維持することが示されました。これは、反復投与による蓄積効果によるものと考えられます。Amolyt社は、新規GhRアンタゴニストであるAZP-3813が健常人において血中IGF-1濃度を有意に減少させていることから、今後、先端巨大症の患者さんを対象とする臨床試験へと進めていくことを支持する結果であったと報告しています。
プログラム詳細:ペプチドリームとAmolyt社は2020年12月に戦略的共同研究開発およびライセンスオプション契約を締結し、本契約に基づいてGHRAである環状ペプチドポートフォリオの全世界の権利のライセンスを受けるオプションを2021年9月に行使しました。第1相臨床試験の結果については、第26回 ECE(欧州内分泌学会、2024年5月にスウェーデンストックホルムで開催)と2024 ENDO(米国内分泌学会、2024年6月に米国ボストンで開催)で発表され、各プレゼンテーション資料はAmolyt社のウェブサイトで公開されています(www.amolytpharma.com)。先端巨大症は、成長ホルモン(Gh)を分泌する脳下垂体の腺腫(良性腫瘍)が原因で生じる慢性の希少内分泌疾患であり、Ghの過剰分泌によってインスリン様成長因子(IGF-1)が肝臓で異常に産生されるという一般的な特徴があります。先端巨大症の治療の目標は、IGF-1濃度を正常化することで、症状を軽減し、将来の合併症を防止していくことです。多くの患者さんにとってソマトスタチンアナログ(SSA)単剤での治療は血中IGF-1濃度のコントロールにおいて十分であるとは言えない状況です。AZP-3813は、16アミノ酸から構成される2環性のペプチドであり、GhRに結合することによりGh刺激によるIGF-1産生を阻害します。これまでの研究では、AZP-3813は血中のIGF-1濃度を減少させ、SSAであるオクトレオチドとの併用によりその抑制効果を高める結果が得られています。AZP-3813は、SSA単剤治療ではコントロールが不十分な先端巨大症の患者さんに対して、SSAとの併用療法を目指して開発されています。
※1 Cmax:最高血中濃度。薬物投与後の血中濃度が最大になった値のこと。
※2 AUC:血中濃度曲線の積分値。薬物が投与後から代謝・排出されるまでにわたり、血中を循環した全体量を示す指標。
· PD-L1阻害薬プログラム:
適応症:がん
モダリティ: PD-L1阻害環状ペプチド
提携先:BMS社
開発ステータス: PD-L1阻害ペプチドは、健常人を対象に安全性・忍容性・薬物動態を検討する第1相臨床試験 (ISRCTN17572332)が完了し、臨床試験の報告書が現在作成中です。
プログラム詳細:2023年10月に発表されたとおり、BMS社は現在健常人を対象に実施している第1相臨床試験が完了した後は、第2相試験以降の開発は自社では継続しないことを決定しました。BMS社は、今回の決定はあくまでビジネス判断によるものであり、本薬剤自体の安全性に関する懸念によるものではないと明言しています。ペプチドリームは、第1相臨床試験の結果報告書の内容をBMS社と確認した上で、将来性の高い本プログラムの別の形での開発継続の可能性について検討していきたいと考えています。
· CD38-ARM™(BHV-1100)プログラム:
適応症:多発性骨髄腫
モダリティ:CD38を標的とする環状ペプチドとIgGを標的とする環状ペプチドを結合させたヘテロ二量体のペプチド複合体
提携先:Biohaven, LTD. (「Biohaven社」)
開発ステータス:BHV-1100は、BHV-1100とCIML-NK細胞を投与する第1a/1b相臨床試験(オープンラベル; 単一施設(Dana-Farber Cancer Institute); ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04634435)を実施しています。本試験はサイトカイン誘導性メモリー細胞様(CIML)ナチュラルキラー(NK)細胞とBHV-1100および免疫グロブリン(IVIG)とのex-vivo併用製剤と低用量IL-2を初回または2回目の寛解期の微小残存病変陽性(MRD+)である多発性骨髄腫(MM)の患者さんに投与し、細胞表面にCD38を発現している骨髄腫細胞を標的とする治療において、安全性の確立と有効性の探索を主要目的としています。
プログラム詳細:BHV-1100+自己NK細胞治療は、2020年9月8日にオーファンドラッグ指定を受けています。
· MSD社プログラム #1:
適応症:非開示
モダリティ:環状ペプチド治療薬(標的は非開示)
提携先: Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA (MSD社)
開発ステータス:MSD社が2018年に実施したPDPS®技術ライセンス契約に基づきMSD社がペプチドリームのPDPS®を用いて見出した環状ペプチドは、現在、健常人を対象に安全性・忍容性・薬物動態を検討する第1相臨床試験を実施しています(2023年7月開始)。
· MSD社プログラム #2:
適応症:炎症性疾患
モダリティ:環状ペプチド治療薬(標的は非開示)
提携先: Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA (MSD社)
開発ステータス:MSD社が2018年に実施したPDPS®技術ライセンス契約に基づきMSD社がペプチドリームのPDPS®を用いて見出した環状ペプチドは、現在、健常人を対象に安全性・忍容性・薬物動態を検討する第1相臨床試験を実施しています(2024年6月開始)。
· S2-タンパク質阻害薬(PA-001)プログラム:
適応症:新型コロナウイルス感染症
モダリティ:新型コロナウイルス感染症ウイルスの表面に発現するS2タンパク質を阻害する環状ペプチド
提携先:ペプチエイド
開発ステータス:2024年6月、ペプチエイドは第1相臨床試験開始に向けてIND(新薬臨床試験開始届)申請を米国FDA(食品医薬品局)に提出。2024年7月にIND申請がFDAに承認されたことにより、PA-001の安全性、忍容性、薬物動態を検証するための健常者および高齢者を対象とした第1相臨床試験を開始する予定です。
プログラム詳細:ペプチエイドは2022年8月10日に公表した通り、PA-001の日本人健康成人男性30名に対する臨床研究法に基づく特定臨床研究を実施し、良好な安全性プロファイルおよび用量依存的な血中濃度プロファイルの相関を確認しております。PA-001プログラムは2023年に日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業に採択され、補助金の支援を受けています。
· マイオスタチン阻害薬プログラム:
適応症:肥満、DMD(Duchene muscular dystrophy、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、SMA(Spinal muscular atrophy、脊髄性筋萎縮症)および他の筋疾患
モダリティ:マイオスタチン阻害環状ペプチド
提携先:自社品(ペプチドリームが全世界の商業化権を保有)
開発ステータス:GLP-1デュアルアゴニストとの併用で肥満症動物モデルでの前臨床試験を追加で実施し、臨床候補化合物を選定中です。
プログラム詳細:マイオスタチン(成長分化因子8、またはGDF8としても知られる)は、筋細胞で産生・放出されるタンパク質で、筋細胞に働きかけ筋細胞の増殖を抑制します。多くの前臨床および臨床試験により、マイオスタチン阻害薬によって筋肉量の増強、身体強度の改善、内臓脂肪量の減少、インスリンによる血糖値低下等の代謝機能障害の改善につながることが示唆されており、マイオスタチンが様々なSMA・FSHD(Facioscapulohumeral muscular dystrophy、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)・DMD等の筋ジストロフィー、他の筋肉消耗を伴う疾患、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病等の創薬ターゲットとして重要であることを示すエビデンスが蓄積されてきています。ペプチドリームは、2023年10月にWorld Muscle Society(「WMS」)2023でマイオスタチンプログラムの前臨床試験の結果を発表しました。
· cKIT阻害薬(MOD-B)プログラム:
適応症:マスト細胞により引き起こされる免疫炎症性疾患・アレルギー疾患
モダリティ:KITを阻害する低分子化合物
提携先:アリヴェクシス株式会社(「アリヴェクシス」、旧モジュラス)
開発ステータス:2023年8月に臨床候補化合物の同定を発表しました。本開発候補化合物は、マスト細胞により引き起こされる炎症経路において重要な役割を果たすキナーゼであるKITに対して選択的阻害活性を示す新規の低分子化合物(MOD-B)であり、マスト細胞により引き起こされるアレルギー疾患を含む様々な免疫炎症性疾患などの治療への活用が期待されます。今後、アリヴェクシスが主導し本化合物の臨床入りに向けたIND申請の準備を進める予定となっています。
プログラム詳細:アリヴェクシスはMOD-Bプログラムの提携・導出活動に積極的に取り組んでいます。
(B)-2 Non-RI領域の前臨床・創薬プログラム:
上記のプログラムに加えて、ペプチドリームは、(1)ペプチド医薬品、(2)ペプチド-薬物複合体(「PDC」)および(3)多機能ペプチド複合体(「MPC」)の3つのモダリティにわたって、提携プログラム・自社プログラムの両方で広範囲にわたる前臨床プログラムのパイプラインを有しています。これらの非常に多様なパイプラインについて臨床候補化合物の同定、臨床試験を進めていくことがペプチドリームの成長および価値創出に貢献するものと考えています。これらの取り組みから生まれたプログラムのうち、臨床候補化合物の選定/IND申請のための試験開始等の段階まで進んだものについてパイプライン表/リストに掲載しています。
ペプチド医薬品領域:ペプチドリームは、ペプチド創薬の分野において世界的なリーディング・カンパニーの一社であり、様々な疾病領域・治療メカニズム・投与経路について、多数の提携を通じて、多くの有望なプログラムを実施しています。2024年にはペプチド医薬品の領域についても多くの進展があり、特に経口剤の領域で進展がありました。
PDC領域:細胞を傷害する放射性核種((A)RI領域のセクションに記載しております)や抗がん剤、組織に作用する核酸医薬など、様々な治療薬ペイロードを目的の標的に送達するために環状ペプチドが理想的であるということが明らかになってきており、ペプチドリームはPDC領域を主導しています。幅広い前臨床段階のプログラムを塩野義製薬株式会社(「塩野義製薬」、2019年、組織を標的としたPDC)、武田薬品工業(2020年/2021年、ペプチドリームがJCRファーマと共同で見出したトランスフェリン受容体結合ペプチドを用いた筋組織・中枢神経を標的としたPDC)、Alnylam Pharmaceuticals, Inc.(Alnylam社、2021年、組織を標的としたPDC)、Eli Lilly社(2022年、組織を標的としたPDC)、MSD社(2022年、がんを標的としたPDC)、Novartis社(2024年、組織を標的としたPDC)などの提携先と進めています。
MPC領域:過去10年間のうちに二重特異的抗体が承認され、また最近では複数の抗原に同時に結合することのできる三重・多重特異的抗体が登場してきている中、新たな治療薬としてMPCの可能性が拡大しつつあります。環状ペプチドを複数結合させることで多重特異的抗体と同様な多機能分子を作成することができます。ペプチドリームはすでにBiohaven社や参天製薬とMPCプログラムを実施していることに加え、自社プログラムも実施しており、その数が拡大しています。ペプチドリームは、MPCが二重特異的抗体や他の多機能分子と比べ優れたモダリティであると考えています。ペプチドリームは、T細胞およびNK細胞を標的とする新規のペプチドの同定に注力しており、これらのペプチドを上述のがんを選択的に標的とするペプチドと結合させることにより、新たなクラスのT細胞・NK細胞エンゲージャー分子を創出することが可能となり、非常に有望な治療薬の領域になるものと期待しています。さらにペプチドリームは環状ペプチドの用途を拡大し、標的タンパク質分解誘導剤の領域においてアステラス製薬との提携(2023年7月)を発表しました。
(B)-3 Non-RI領域の主なトピックス(2024年12月期)
3月:Amolyt社がAstraZeneca社と買収契約の締結を発表
3月:当社関連会社ペプチグロース株式会社によるTPO代替ペプチド(TPORアゴニスト)(PG-010)の開発完了と販売開始
6月:当社関連会社ペプチエイド株式会社がPA-001の臨床試験開始に向けてIND申請をFDAに提出
6月:Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A.によるPDPS®技術ライセンスでは2つ目のプログラムで第1相臨床試験開始
7月:Amolyt社が実施するAZP-3813の第1相臨床試験で評価項目を達成
(B)-4 PDPS®の技術ライセンス
2024年3月31日現在、11社;BMS社(2013年)、Novartis社(2015年)、Eli Lilly社(2016年)、Genentech社(2016年)、塩野義製薬(2017年)、MSD社(2018年)、ミラバイオロジクス株式会社(2018年)、大鵬薬品工業株式会社(2020年)、Janssen社(2020年)、小野薬品工業株式会社(2021年)、富士レビオ株式会社(2022年)との間で非独占的技術ライセンス契約を締結しています。同事業においては、ペプチドリームは、各ライセンス先企業から技術ライセンスフィーに加えて開発プログラムの進捗に応じてマイルストーンフィー、および上市後の売上高に応じた売上ロイヤルティを受領する権利を有します。なお、マイルストーンを達成するまでの間は、ライセンス先企業での研究内容や進捗についてペプチドリームに知らされることはありません。また、ペプチドリームはPDPS®の技術ライセンス契約に関心をもつ複数の企業との交渉を継続的に進めています。
(C)当社グループの戦略的投資先・関連会社
当社グループの戦略的投資先・関連会社は以下の通りです(2024年6月末時点)。
ペプチグロース株式会社(「ぺプチグロース」):ペプチドリームの出資比率は39.5%
ペプチグロース(本社:東京都)は、ペプチドリームと三菱商事との間で細胞治療・再生医療等製品や成長市場である培養肉等の製造等に使用される、細胞培養向け培地の重要成分である、成長因子を代替するペプチド(「代替ペプチド」)の開発・製造・販売を行う合弁会社として2020年に設立しました。成長因子は、ヒトを含む動物の体内に広く存在し、細胞の成長・増殖や、またiPS細胞・ES細胞等の幹細胞を神経細胞や血液細胞等へと分化誘導させる際に重要な役割を担うタンパク質です。現在は、動物血清からの抽出物、あるいは組み換え技術によって製造されたものが主に使用されていますが、不純物混入による安全性上のリスク、製造ロット間の品質のばらつき、高額な製造コスト等が、医薬品産業が直面する課題となっています。ペプチドリームがPDPS®を用いて、成長因子と同等の機能を有する代替ペプチドを同定し、動物血清や組換え技術を用いず化学合成による新規製造手法を開発します。ペプチグロースが商業ベースでの製造工程・体制を確立することで、品質面においては高純度で製造ロット間のバラつきも無くし、またコスト面の合理化も実現していきます。また、三菱商事が代替ペプチドの販売及び市場拡大を積極的に図っていきます。ペプチグロースは現在、10の製品を販売しています。2021年に、HGF代替ペプチド(PG-001)とTGFβ1阻害ペプチド(PG-002)の販売を、2022年にBDNF代替ペプチド(PG-003)、BMP4,7阻害ペプチド(PG-004)、BMP7選択的阻害ペプチド(PG-005)、BMP4選択的阻害ペプチド(PG-006)の販売を、2023年にVEGF代替ペプチド(PG-007)、Wnt3a代替ペプチド(PG-008)、合成EGF(PG-009)、2024年にTPO代替ペプチド(PG-010)の販売を開始しました。今後も順次新たな製品の開発・上市を計画しています。
ペプチエイド:ペプチドリームの出資比率は約39.4%
ペプチエイド(本社:神奈川県)は、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目的として、2020年にペプチドリーム、富士通株式会社(「富士通」)、株式会社みずほフィナンシャルグループの連結子会社であるみずほキャピタル株式会社(「みずほキャピタル」)、株式会社竹中工務店(「竹中工務店」)、及びキシダ化学株式会社(「キシダ化学」)との間で設立した合弁会社です。ペプチドリームは、PDPS®を用いて、コロナウイルスがヒト細胞に侵入する際に必須となるスパイクタンパク質を創薬ターゲットとした、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補化合物の同定を実施し、PA-001を見出しました。2023年5月、PA-001の開発はAMEDの事業に採択され、ペプチエイドは第1相試験等の実施に向けた補助金を受領することが決定しました。2024年6月4日、ペプチエイドはPA-001の安全性、忍容性、薬物動態を検証するための第1相臨床試験開始に向けてIND(新薬臨床試験開始届)申請を米国FDA(食品医薬品局)に提出し、2024年7月にIND申請がFDAに承認されました。第1相臨床試験は2024年後半に開始する予定です。
ペプチスター株式会社(以下 ぺプチスター):ペプチドリームの出資比率は20%未満
ペプチスター(本社:大阪府)は、ペプチドリーム、塩野義製薬、積水化学工業株式会社と合弁でペプチド原薬の製造プロセスに関する研究開発、製造及び販売を行うCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)であるペプチスター株式会社(「ペプチスター」)を2017年9月に設立しました。ペプチスターは国内の様々な会社が有する技術を融合し、高品質、高純度でしかも製造コストを大幅に低減する最先端技術を開発、提供することを目指しています。同社の製造工場は、大阪府摂津市に設立されています。
リンクメッド:ペプチドリームの出資比率は15%未満
リンクメッド(本社:千葉県)は、『革新的な「見える」がん治療』をいち早く社会にお届けすることを目指し、量子科学技術研究開発機構(QST)の研究をもとに2022年に設立された放射性医薬品の開発を行っている研究開発型企業です。ペプチドリームは2023年12月に、リンクメッドによるシリーズA関連資金調達の実施に参画したことを発表しました。
アリヴェクシス:ペプチドリームの出資比率は5%未満
アリヴェクシス(旧モジュラス、本社:東京都、ボストン)は、2016年に設立された最先端の計算科学を駆使した高速かつ効率的な低分子医薬品候補化合物のデザインに関する技術を有する創薬企業です。
(D)当社グループ(ペプチドリーム・PDRファーマ)の拠点、従業員数
ペプチドリームは、神奈川県川崎市に本社と最先端の研究所(延床面積:約7,950㎡)を構えています。PDRファーマは、東京都に本社をおき、千葉県に主要生産拠点(延床面積:約25,200m²の生産・研究拠点)、大阪府と川崎市にPETラボ(延床面積:各約2,200㎡)、また全国8箇所に営業拠点を構えています。当社グループの従業員数は2024年6月30日現在で733名(取締役及び監査役12名を含めると総勢745名)(ペプチドリーム株式会社:215名、PDRファーマ株式会社:518名)となります。
(E)サステナビリティ・ESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みと目標
当社グループは、サステナビリティへの取り組みに関して、基本方針、重点取り組み、主要ポリシー/データを自社WEBサイト上での専用ページやサステナビリティレポート等にて積極的に情報開示を行っています。またグループとしてのサステナビリティへの取り組みをより推進するため、2022年7月より、PDRファーマでのサステナビリティへの取り組みを検討・推進する「サステナビリティ推進委員会」をPDRファーマ内に新設しました。
ペプチドリームの事業活動におけるGHG排出量(Scope1及びScope2)は主に電力消費に由来しており、これまで再生可能エネルギーへのシフトを積極的に推進する電力会社から電力供給を受けていました。この取り組みをさらに推進するため、ペプチドリームの本社・研究所で消費する電力を実質CO2(二酸化炭素)フリーとなる電力として2022年1月より導入しました。これにより、自社事業活動における「カーボンニュートラル」実現の中期目標を4年前倒しで達成しました。
ペプチドリームは、研究開発型のイノベーション企業として、多様性が競争優位性やイノベーションを生み出し、我々のミッション実現につながることを確信しています。特に、従業員一人一人の有する専門性やサイエンティフィックな感性の多様性を重視しており、研究開発及び経営の中核を担う管理職・上級専門職層において、年齢や性別・文化背景に捉われないサイエンスベースの議論や意思決定ができる体制の確保が重要と考えています。その前提となる、中核人材(※1)の多様性を構成する要素として、「博士号 (Ph.D.)取得者比率(2023年12月末:54.0%、2030年目標:50%以上維持)」、「女性マネージャー比率(同:16.0%、同:30%以上)」、「外国人又は海外勤務経験者(※2)比率(同:32.0%、同:30%以上維持)」、「20~30代比率(同:24.0%、同:30%以上)」の4つの定量指標を設定し、これらの現状及び2030年までの目標数値を定めています。
※1:管理職・上級専門職(役員を除く)
※2:海外での研究・就労経験を有する者(半年未満、または留学を除く)
当社グループは、サステナビリティに関する継続的な取組みにより各評価機関から高い評価を受けています。2022年1月には、グローバルな ESG評価機関である Sustainalytics社から、ESGの取り組みに関して業界最高水準にある(評価対象となっているバイオテック企業439社中、世界第二位)との高い評価を受け、「TOP-RATED ESG PERFORMER 2022」を受賞しました。また、環境情報開示に取り組むCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)のCDP気候変動レポート2023において最上位レベルのリーダーシップレベルである「A-(A マイナス)」評価を2年連続で取得しました。2023年5月には、日本取引所グループであるJPX総研が選定した「JPXプライム150指数」の構成銘柄として選定されました。2024年7月には、グローバルインデックスプロバイダーである FTSE Russellにより構築されたFTSE4Good Index Series および FTSE Blossom Japan Index に4年連続、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexに3年連続で構成銘柄として選定されました。なお、FTSE Blossom Japan Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexは、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) の国内株式を対象とするESG総合指数としても採用されています。
以上の結果、当中間連結会計期間における創薬開発事業の経営成績については、売上収益28,480,960千円(前年同期比27,019,593千円増加)、セグメント利益24,740,819千円(前年同期はセグメント損失1,168,739千円)、放射性医薬品事業の経営成績については、売上収益7,652,665千円(前年同期比312,018千円減少)、セグメント損失46,535千円(前年同期はセグメント利益227,641千円)となり、当社グループ全体としては売上収益は36,133,625千円(前年同期比26,707,575千円増加)、Core営業利益24,772,986千円(前年同期はCore営業損失793,562千円)、営業利益24,649,283千円(前年同期は営業損失986,098千円)、税引前中間利益24,742,228千円(前年同期は税引前中間損失1,110,932千円)、親会社の所有者に帰属する中間利益17,925,302千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する中間損失729,014千円)となりました。
当社グループは、IFRS業績に加えて、会社の経常的な収益性を示す指標として非経常的な項目をNon-Core調整として除外したCoreベースの業績を開示しています。当該Coreベースの業績は、IFRS業績から当社グループが定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。
Core営業利益は営業利益から企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用、有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益、非経常的かつ多額の損益、個別製品又は開発品導入による無形資産の償却費を控除して算出しております。
なお、Core営業利益から営業利益への調整は以下のとおりです。
(単位:千円)
当中間連結会計期間の総資産は95,881,241千円となり、前連結会計年度末と比べて26,417,228千円増加しました。その主な要因は、その他の金融資産が10,287,137千円減少したものの、現金及び現金同等物が5,969,618千円増加、営業債権及びその他の債権が27,795,103千円増加、繰延税金資産が2,367,714千円増加したこと等によるものです。
負債は37,110,606千円となり、前連結会計年度末と比べて7,996,303千円増加しました。その主な要因は、借入金が1,292,459千円減少、繰延税金負債が385,837千円減少したものの、未払法人所得税等が8,794,648千円増加、その他の金融負債が814,377千円増加したこと等によるものです。
資本は58,770,634千円となり、前連結会計年度末と比べて18,420,924千円増加しました。その主な要因は、その他の包括利益により、その他の資本の構成要素が469,448千円増加、中間利益により利益剰余金が17,925,302千円増加したこと等によるものです。
当中間連結会計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ5,969,618千円増加し、25,477,479千円となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前中間利益24,742,228千円の計上、減価償却費1,154,343千円の計上等があったものの、営業債権及びその他の債権の増加額27,795,103千円、法人所得税の支払による支出1,015,740千円等により、2,659,911千円の支出(前年同期は8,769,521千円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券売却による収入10,935,460千円等により、9,956,370千円の収入(前年同期は797,543千円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出1,320,000千円等により、1,485,160千円の支出(前年同期比816,789千円の支出減少)となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当中間連結会計期間における研究開発費の総額は、1,471,800千円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
該当事項はありません。