第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象

 当社グループは、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しておりますが、当該状況を解消又は改善するための対応策を講じることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないものと判断しております。当該状況を解消又は改善するための対応策は、3 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5)に記載しております。

 

2【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期連結累計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

3【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結累計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 業績の状況

平成19年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発明して以来、iPS細胞に関連した研究は日本を含む世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。日本においては平成26年に世界で初めてiPS細胞から作製した網膜の細胞を加齢黄斑変性の患者へ移植する臨床研究が行われ、iPS細胞の再生医療への応用も加速しております。

さらに、日本では「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が平成26年11月25日に施行されたことにより、大手製薬企業を含めた企業サイドによる再生医療の事業化に向けた取り組みも活発化しております。

一方、第1四半期連結累計期間(平成28年4月1日~平成28年6月30日)におけるわが国経済は、引き続き緩やかな回復基調にあるものの、年明け以降の株価下落、円高の進行、さらにはイギリスのEU離脱による世界経済への影響など、企業の業況感に先行き不透明感が強まりました。

このような経済状況のもと、当社グループはiPS細胞関連試薬の販売、創薬を支援する細胞製品やサービスの提供を行いながら、再生医療領域への本格的な参入に向け事業の立ち上げを行っております。

当第1四半期連結累計期間においては、中期経営計画の達成を踏まえた当社グループ再編の一環として、更なる業務の効率化・組織の簡素化や技術開発においてのシナジー効果を最大限に引き出すため、当社連結子会社同士の合併に関する方針決議を平成28年5月に行いました。

具体的には、海外の当社連結子会社であるアメリカ2社(Stemgent 社、BioServe 社)、イギリス2社(Reinnervate 社、Biopta 社)をそれぞれ合併し、ReproCELL USA Inc. および ReproCELL Europe Ltd. とする予定です。

当社グループは日本、アメリカ、イギリスにグループ企業を有しておりますが、各グループ企業が連携することにより、当社グループは3つの優位性を有しております。第1の優位性は、各グループ企業の得意分野を活かし、iPS細胞の元となるヒト細胞の供給からiPS細胞の樹立、さらにはiPS細胞を各種の機能性細胞への分化誘導サービスまでワンストップで提供できることであります。今までは細胞の調達、iPS細胞の作製、iPS細胞の分化誘導の工程を別々の企業に依頼をしなければならず、やり取りも煩雑となる傾向がありました。当社では窓口が一本化されるため、一度の依頼で複数の工程を依頼する事ができ、やり取りの回数も少なくなる事から顧客利便性の向上により競合との差別化を図っております。第2は、東京大学や京都大学をはじめ、アメリカのハーバード大学・マサチューセッツ工科大学・イギリスのダーラム大学等との世界的な研究ネットワークを構築し、世界最先端の技術シーズを継続的に吸収して競争力の高い新製品を開発していることであります。第3は、日米欧にまたがる世界規模の販売チャネルを活かし、各グループ会社製品の相互販売によるグローバル展開を推し進めていることであります。

当第1四半期連結累計期間は、島津(香港)有限公司との中国における販売業務提携を行うことにより販売網の更なる拡大を行いました。また、京都大学と「srRNAを用いたヒトiPS細胞から特定の種類の体細胞への分化誘導法の開発に関しての共同研究」や東京工業大学と「ヒトiPS細胞を用いた高効率な膵前駆細胞および膵β細胞の生産方法に関する共同研究」に関して共同研究契約の締結を行うことにより外部の研究機関との連携を一層強化し、技術開発の強化に向けた取り組みを促進しております。さらに、他社製品の取扱いを開始することにより、既存顧客の利便性の向上だけではなく新たな顧客の幅を広げることができました。

また、本格的な事業化が期待される再生医療領域への参入へ向けた取り組みも活発化しております。当第1四半期連結累計期間では、新生銀行との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」が第1号投資案件としてオーストラリア・シドニー大学発の皮膚病・皮膚創傷向け医療材料開発ベンチャーElastagen社へ1億豪ドルの出資を実行し、優良な技術を保有する事業会社の再生医療分野への参入支援を本格的に開始しました。

今後はさらに再生医療領域への参入へ向けた動きを加速化させ、当該領域における世界的なプラットフォームを早期に構築してまいります。

一方、臨床検査事業では、抗HLA抗体検査を主力検査とし、現在は新規案件の獲得や臨床検査項目の導入に向けた取り組みを行っております。

 

この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は266,246千円(前年同四半期比2,457千円の増加)、営業損失は245,684千円(前年同四半期216,205千円の損失)、経常損失は352,444千円(前年同四半期112,747千円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は346,169千円(前年同四半期108,338千円の損失)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

① iPS細胞事業

iPS細胞事業は研究試薬、創薬支援、再生医療の3つに分類されます。

研究試薬については、iPS細胞に関わる様々な研究試薬を大学や公的研究機関、製薬企業等に製造・販売しています。

iPS細胞の研究に必要な、リプログラミング試薬、培養液、剥離液、凍結保存液、コーティング剤、抗体など、iPS細胞の研究に必要なほぼ全ての試薬を取り揃えております。

各種研究試薬をはじめ、ヒトiPS細胞をより受精卵に近い理想的なナイーブ状態にリプログラミングできる高品質iPS細胞用培養液「ReproNaïve(リプロナイーブ)」や、従来の方法より効率良く、ゲノムの組み換えにより細胞が癌化する心配がない安全なiPS細胞を作製する事ができる「RNAリプログラミングキット」など、世界最先端のiPS細胞技術を幅広く製品化することで、競合との差別化を図っております。大学及び公的研究機関を中心に継続的に販売実績を積み重ね、国際的な学会での技術発表も定期的に行うことにより世界的にも認知が進んでおり、引き合いも増加傾向にあります。

一方、創薬支援については、製薬及び化学企業を顧客とし、製品とサービスの両方を提供しております。企業研究所内で研究を行う際に必要となる様々なヒトiPS細胞及びヒト細胞を販売しており、創薬スクリーニングや新薬の安全性試験等に使用されています。一方、サービスは企業研究所内で実施している研究の一部を外注受託するビジネスになります。当社グループとしては、細胞販売とサービスの両方を実施し、幅広い顧客ニーズに対応することで競合との差別化を図っております。また、iPS細胞を含む数多くのヒト細胞を取り揃えており、ヒト細胞に特化することで競争優位性を高めております。

細胞製品では、ヒトiPS細胞由来の機能性細胞に加えて様々な種類のヒト細胞を含めた生体試料の販売も行っており、ヒト細胞の豊富なラインナップを取り揃えております。また、今後製薬企業での創薬ツールとして注目されているヒトiPS細胞由来の疾患モデル細胞も販売しており、今後そのラインナップも強化していく予定です。

ヒトiPS細胞由来の機能性細胞としては心筋・神経・肝臓の細胞製品が主力製品となっており、製薬企業等による創薬を支援する製品として製造・販売をしております。これらの細胞製品は製薬企業等において新薬候補化合物の薬効試験や毒性試験の実験材料として使用され、製薬企業や大学の研究機関からの引き合いも増加傾向にあります。

そしてヒト細胞としては、健常者や特定の疾患患者のDNA・組織・血清サンプルといったヒト生体試料を販売しております。60万種類以上の細胞のあるバンクを保有しており幅広い顧客ニーズに対応しております。これらの生体試料は、販売だけでなく、iPS細胞を樹立するための材料としても利用しており、アルツハイマー病など様々な疾患型iPS細胞の開発も進めております。

次に、受託サービスとしては、要望に応じたカスタマイズが可能な疾患モデル細胞の作製受託等、顧客の要望にきめ細かく対応するための様々なサービスを提供しております。加えてiPS細胞培養の受託サービスやDNA等の抽出・遺伝子型判定等を行う前臨床分子解析サービスの提供や、ヒトiPS細胞における技術プロセスの上流から下流までを当社グループでカバーすることによって実現した豊富なカスタマイズサービスの提供など、顧客利便性が大きく向上しております。さらに、イギリスの拠点にはGLP(Good Laboratory Practice)グレードの施設を有しており、高品質なサービスを製薬企業に提供しております。既に世界大手製薬企業10社のうち8社を顧客とするなど、グローバルでその品質は認められております。

再生医療につきましては、ロードマップを策定し、今後の本格的な事業立ち上げを進めております。ロードマップは「再生医療向け培地・試薬製品」「体性幹細胞を活用した細胞医薬品」「iPS細胞を活用した細胞医薬品」の3ステップからなります。

「再生医療向け培地・試薬製品」につきましては、現在の研究試薬製品を臨床グレードにアップさせることで、より付加価値を高めます。具体的には、再生医療に向けたな製品として、「bFGF Xeno-Free」、凍結保存液「ReproCryo DMSO Free」、ウイルスを使用せずに安全・効率的にiPS細胞を作製できる「RNAリプログラミングキット」などの開発を行い、販売を開始しております。

「体性幹細胞を活用した細胞医薬品」に関しましては、新生企業投資株式会社との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」の投資を通じての技術提携などを通じて積極的に推進しております。また、当社と日産化学工業株式会社が共同出願している造血幹細胞の増幅方法に関する技術についても事業化の検討を進めております。

「iPS細胞を活用した細胞医薬品」につきましては、当社が保有する世界最先端のiPS細胞技術を利用して進めてまいります。臨床応用での一番の課題となるiPS細胞の安全性について積極的な研究開発を行っており、RNAリプログラミング技術やSBIファーマ株式会社と共同開発した残留iPS細胞の除去技術など、競争力の高い独自技術を保有しております。

今後、上記の事業を積極的に推進していくと共に、新たな製品開発等も視野に入れ、再生医療分野への参入を本格化してまいります。

この結果、売上高は256,927千円、セグメント損失は23,632千円となりました。

 

② 臨床検査事業

腎臓移植や造血幹細胞移植の分野への適用の広がりを見せている抗HLA抗体検査(スクリーニング及びシングル抗原同定検査)を主力として、日本全国の100施設以上の病院から検査を受注しております。また、近年は、HLA抗体と移植成績や移植後のグラフト(移植片)生着成績の関連性が注目されており、移植の際にHLA関連検査を行う施設が増加傾向にあります。

現在は新規大型案件の受注獲得に向けた活動や新規検査項目の立ち上げに向けた活動を積極的に行っております。

この結果、売上高は9,318千円、セグメント利益は542千円となりました。

 

 なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が329,354千円あります。

 

 

(2) 財政状態の分析

(資産の部)

 当第1四半期連結会計期間末における流動資産は前連結会計年度末に比べて297,653千円減少し、5,563,814千円となりました。これは主に、現金及び預金が309,871千円減少したことなどによります。固定資産は前連結会計年度末に比べて156,338千円減少し、1,950,322千円となりました。これは主に、無形固定資産が277,525千円減少したことなどによります。

 

(負債の部)

 当第1四半期連結会計期間末における流動負債は前連結会計年度末に比べて16,724千円増加し、473,051千円となりました。これは主に、買掛金が50,027千円増加したことなどによります。固定負債は前連結会計年度末に比べて22,929千円減少し、221,201千円となりました。これは主に、繰延税金負債が21,830千円減少したことなどによります。

 

(純資産の部)

 当第1四半期連結会計期間末における純資産は前連結会計年度末に比べて447,787千円減少し、6,819,884千円となりました。これは主に、利益剰余金が346,169千円減少したことなどによります。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

当第1四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、59,003千円であります。

なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(5) 重要事象及び当該事象を解消し、又は改善するための対応策

当連結会計年度については、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。

しかしながら、当社グループの当第1四半期連結会計期間末の現金及び預金残高は3,099,187千円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999,800千円あり、財務基盤については安定しており、当該状況の解消を図るべく、グローバル展開に向けた販売基盤の整備を行っています。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指して当該状況の解消を図っていきます。