文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績
当連結会計年度においてわが国経済は、堅調な雇用・所得情勢を受け、景気は緩やかに回復しました。しかしながら、米国の政権移行や英国のEU離脱問題、中国をはじめとする新興国の景気減速など、世界情勢は大きく変化しており、先行きは不透明な状況となっております。
一方、当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、平成19年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。さらに日本では「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が平成26年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品(細胞医薬品など)に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
当社グループでは、iPS細胞事業を「研究試薬」「創薬支援」「再生医療」の3つに分類しております。これまで当社グループでは「研究試薬」と「創薬支援」の2つの事業に注力してまいりましたが、当連結会計年度より本格的に3つ目の「再生医療」を開始いたしました。セグメントごとの詳細な当連結会計年度の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。
また、当連結会計年度では、当社グループ全体の事業の効率的な運営およびコーポレートガバナンスの強化を目的として、米国と英国にそれぞれ複数あった子会社を合併統合し、REPROCELL USA Inc.およびREPROCELL Europe Ltd.として再編いたしました。具体的には、米国子会社3社(Stemgent社、Bioserve社、Biopta Inc.社)をREPROCELL USA Inc.に、英国子会社2社(Reinnervate社、Biopta Ltd.社)をREPROCELL Europe Ltd.に統合しております。
本統合によって、管理部門やマーケティング部門では重複する機能を削減することにより経費を削減し、技術部門および営業部門では各子会社間の技術シナジーの実現および営業活動の効率化を図ることが出来ました。
この結果、当連結会計年度の売上高は1,257百万円(前年同期比 18.0%増)、営業損失は944百万円(前年同期 1,024百万円の損失)、経常損失は937百万円(前年同期 1,169百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は911百万円(前年同期 1,961百万円の損失)となりました。
なお、営業損失には「販売費及び一般管理費」として、海外子会社買収時に生じたのれん及び無形資産の償却費が226百万円(前年同期283百万円)含まれております。また、「親会社株主に帰属する当期純損失」につきまして、前連結会計年度においては特別損失として減損損失が発生しておりましたが、当連結会計年度ではそのような特別な要因は発生しなかったため、大幅な増益となりました。
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
a.iPS細胞事業
当社グループでは、iPS細胞事業を3つに分類しております。1つ目は大学や公的研究機関を対象顧客とする「研究試薬」、2つ目は製薬企業や化学企業を対象とする「創薬支援」、3つ目は患者および医療機関を対象とする「再生医療」です。当社グループではこれまで「研究試薬」と「創薬支援」の2つの事業に注力してまいりましたが、当連結会計年度より本格的に3つ目の「再生医療」を開始いたしました。なお新たに取り組む「再生医療」においても、「研究試薬」および「創薬支援」で培われた技術およびビジネス基盤を十分に活用することで、競争力と優位性を確保してまいります。
「創薬支援」においては、ヒトiPS細胞だけでなく、ヒト組織を用いた受託サービスおよび三次元培養技術を新たに加えることで、製品ラインナップを拡大しております。世界中の製薬企業では「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んできており、当社グループとしてはそのトレンドを受けて「ヒト細胞」技術の強化およびラインナップの拡充を進めております。iPS細胞はヒトの様々な細胞や組織を作製することができるため非常に有力な技術ではありますが、現状では作製できる細胞種に限りがあります。そこで、ヒトから直接採取した細胞や組織を確保することで、対応できる細胞種のバリエーションを格段に広げております。ヒトiPS細胞およびヒト組織を用いた創薬支援ビジネスを提供している企業は世界でも当社グループ以外に例がないと考えられ、上述のトレンドからも今後一層競合優位性が拡大していくと考えております。
当連結会計年度では、株式会社ファンケルとヒトiPSモデル細胞の共同開発契約を締結いたしました。さらに、日米欧の製薬企業、大学、バイオベンチャーから、創薬支援サービスおよびiPS細胞の樹立サービスを受託しており、引き合いも増加傾向にあります。
また、REPROCELL Europe Ltd.では、iPS細胞、ヒト組織、三次元培養の3つの技術を一カ所に集約させた「Centre for Predictive Drug Discovery」を新設し、今後当社グループの強みをさらに強化する取り組みに着手しました。本施設は、スコットランド政府下の特殊法人であるスコットランド開発公社による補助金(RSAグラント)を活用し、設備や人員の整備を行っております。以上のように、創薬支援において、着実に事業の拡大を進めております。
「再生医療」においては、当連結会計年度において2つの大きな進捗がありました。1つ目は、臨床応用に適したiPS細胞の作製技術の開発です。現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子の変異リスク、外来の遺伝子やウイルスがiPS細胞に残存することによるがん化のリスク等が言われています。これらの課題を克服すべく当社グループは新規リプログラミング方法の開発に取り組んでまいりました。この結果、RNA法という次世代技術を用いることで、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない高品質なiPS細胞の作製を可能にする技術の開発に成功しました。既に本技術を用いたiPS細胞作製用試薬「StemRNA-NM Reprogramming Kit」の発売および受託ビジネスを当連結会計年度に開始しております。今後、RNAリプログラミング技術の臨床応用を進めiPS細胞技術を活用した再生医療を進めてまいります。
2つ目として、台湾のバイオベンチャーであるSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)から、脊髄小脳変性症の治療薬として開発が進められる細胞医薬品ステムカイマルの日本における独占ライセンス契約を締結しました。ステムカイマルはヒトの脂肪組織由来の細胞で、台湾では、既に治験(第Ⅰ/Ⅱa 相)が完了しており、その結果は国際的な学術論文で発表されております。日本では当社が事業主として、2018年から治験を開始し、2020年頃に承認申請の予定です。当社はステムカイマルの開発を通じて細胞医薬品の開発ノウハウを蓄積し、当社独自のiPS細胞技術を用いた再生医療の実用化を加速させてまいります。
この結果、売上高は1,206百万円、セグメント損失は117百万円となりました。
b.臨床検査事業
当社の臨床検査事業は腎臓移植や造血幹細胞移植分野への適用の広がりを見せている抗HLA抗体検査(スクリーニング及びシングル抗原同定検査)を主力として、日本全国の100施設以上の病院から検査を受注しております。また、近年は、HLA抗体と移植成績や移植後のグラフト(移植片)生着成績の関連性が注目されており、移植の前にHLA関連検査を行う施設が増えております。
当連結会計年度では、株式会社ヘリオスと同社が実施する再生医療等製品の治験における臨床検査業務受託に関する契約を締結いたしました。今後ヘリオス社の治験の実施に応じて、順次検査業務を行ってまいります。
他人の細胞を移植する再生医療は、拒絶反応が治療成績に大きく影響する点で臓器移植と類似しており、今後再生医療の普及に応じて臨床検査のニーズも高まると予測されます。
この結果、売上高は50百万円、セグメント利益は11百万円となりました。
なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が830百万円あります。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて1,004百万円増加し、5,419百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は775百万円(前年同期は614百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失937百万円が発生した一方、のれん償却費141百万円等の発生によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は685百万円(前年同期は568百万円の使用)となりました。これは主に、有価証券の償還に伴う収入1,000百万円が発生した一方で、投資有価証券の取得による支出248百万円が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は1,127百万円(前年同期は1,700百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,116百万円によるものであります。
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
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iPS細胞事業(千円) |
644,429 |
124.6 |
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合計(千円) |
644,429 |
124.6 |
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.臨床検査事業に生産実績はありません。
(2) 受注状況
当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) |
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
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iPS細胞事業(千円) |
1,206,857 |
120.7 |
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臨床検査事業(千円) |
50,954 |
76.7 |
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合計(千円) |
1,257,812 |
118.0 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社はiPS細胞および体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
当社ではiPS細胞事業を「研究試薬」、「創薬支援」、「再生医療」の3つのカテゴリーに分類し、技術および市場の立ち上がりに応じて段階的に事業を進めております。対象とする顧客はカテゴリー毎に異なっており、「研究試薬」は大学・公的研究機関、「創薬支援」は製薬・バイオ企業、「再生医療」は患者および医療機関を想定しています。最終的には、当社の製品・サービスを、研究者、企業、医療機関に幅広く普及させ次世代医療の実現に貢献してまいります。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現在は米国、欧州、日本が医療分野の大きな市場を形成しており、当社もこの3地域を活動拠点としておりますが、将来的には、中国、インド、アジアなどにも広く事業を展開していく予定です。
また、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)目標とする経営指標
iPS細胞を用いた研究および再生医療の市場は今後長期的な成長が見込まれています。その中で当社はトッププレーヤーとしての地位を確立し、市場とともに大きく成長するために「攻め」の経営で競合他社に先行する方針です。したがって、当面は、研究開発新規事業の立ち上げ、新しい地域への進出など、先行投資を伴う事業規模の拡大に注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
再生医療の市場は、今後大きな成長が見込まれております。経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円と予測されております。
当社グループでは、iPS細胞事業を「研究試薬」、「創薬支援」、「再生医療」の3つに分類しており、現在の売上構成は、「研究試薬」「創薬支援」が大半を占めています。今後平成32年3月期までは、「創薬支援」が大きく成長することで、全体を牽引する見込みです。また、「再生医療」に関しては、当面先行投資が中心であり、短期的な売上は限定的ですが、平成32年3月期以降に大きな売上の伸びを見込んでおります。
「創薬支援」においては、日米欧を中心に、大手製薬企業を含め多数の企業と既に取引を行っておりますので、今後より一層、営業の強化を行って売上を拡大してまいります。
当連結会計年度では、株式会社ファンケルとヒトiPSモデル細胞の共同開発契約を締結したことを始め、日米欧の製薬企業、大学、バイオベンチャーから、創薬支援サービスおよびiPS細胞の樹立サービスを受託しており、引き合いも増えています。また、ヒト組織を使った受託サービスも米国、欧州の大手製薬企業を中心に堅調に受注が続いています。
このような中、REPROCELL Europe Ltd.に、iPS細胞、ヒト組織、三次元培養の3つの技術を一カ所に集約させた施設「Centre for Predictive Drug Discovery」を新設し、当社グループの受託サービスをワンストップで実施できる体制を構築しました。これにより、「創薬支援」のより一層の売上増加を図ります。
「再生医療」においては、平成32年3月期以降の大きな成長を牽引するべくステムカイマルを始めとする細胞医薬品の開発を着実に進めてまいります。また、これに先立ち、細胞培養液「NutriStem」をGMP準拠の試薬として販売を開始しております。これらの試薬は、iPS細胞の再生医療を実用化する上で重要な消耗品となるため、今後、再生医療を目指す企業や大学を中心に販売促進を進めてまいります。その他の消耗品試薬についても今後継続的に開発を行い臨床応用に適した製品ラインナップとして順次上市してまいります。
最後に、臨床検査事業においては、当連結会計年度にヘリオス社より再生医薬品の治験における検査業務受託に関する契約を締結しており、今後ヘリオス社の治験の実施に応じて、順次検査業務を行い、売上が計上される予定です。
(4)会社の対処すべき課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために対処すべき課題を以下のように考えております。
①全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
②セグメント別課題
1)iPS細胞事業
(a) 技術革新への対応とサービスの拡充
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が行われており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広いiPS細胞および体細胞の技術プラットフォームを保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
この他、国内外のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーとの協力関係の構築及び資金提供を目的として株式会社新生銀行と共同でベンチャーキャピタルファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」の運営を開始しております。本活動を通じて、世界最先端の再生医療技術に幅広くアクセスし連携を強化してまいります。
今後とも当社グループは再生医療の実現と競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関や技術シーズとの連携を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、技術革新への対応として意欲的、多角的に取り組んでまいります。
(b) 細胞医薬品ステムカイマルの上市
当連結会計年度において、当社グループでは細胞医薬品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として開発することを目指して日本に導入することを決定いたしました。
現在は日本での治験の準備を進めている段階であり、2020年には承認申請を行うことを目指しております。ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、投与に伴う有害事象は無く、通常悪化する一途の症状が維持されたことが報告されております。
(c) iPS細胞の再生医療への展開
当社は2009年に世界で初めてヒトiPS細胞の製品化に成功するなど、iPS細胞の事業化を世界に先駆けて実施してきました。これまでは、新薬の薬効や毒性を評価する目的での「創薬支援」での活用に注力してきましたが、今後はいよいよ、iPS細胞を用いた「再生医療」が立ち上がります。当社は、これまでに培ったiPS細胞技術の優位性を活かし、再生医療分野に進出してまいります。当連結会計年度に開発した次世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、ウイルス残存リスクのない臨床応用に適したiPS細胞バンクの開発を目指します。また、当該iPS細胞バンクを通じた再生医療用細胞の供給を医療機関および企業に広く行い、今後、iPS細胞による再生医療の産業化を進めてまいります。
2) 臨床検査事業
(a) 適用拡大
現在の主力検査である抗HLA抗体検査及びフローサイトクロスマッチ検査は腎移植の分野では啓蒙が進み、当該検査が広く実施されていますが、肝臓移植や造血幹細胞移植の分野では、まだ十分に普及が進んでいるとは言えません。平成24年4月からは造血幹細胞移植における抗HLA抗体検査が保険適用になったため、今後検査が広がると期待されますが、現状の制度では造血幹細胞以外の臓器を移植する際の当該検査は保険適用外となっております。そのため、施設や患者にコスト面で多くの負担がかかってしまい、十分な検査を導入出来ていない施設も多くあります。今後、関係する学会と歩調を合わせ、当該検査の保険適用拡大を進めていきます。
(b) 検査精度の担保
臨床検査はその結果が臨床上の重要な診断や治療方針の決定に結びつくため、検査精度に細心の注意を払う必要があります。当社では、衛生検査所として義務づけられている精度管理基準に加え、学会が主催するQCワークショップなどにも検査担当者が積極的に参加し、技術レベル、検査精度の向上に力を入れております。
(5)株式会社の支配に関する基本方針について
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者は、安定的な成長を目指し、企業価値を高め、株主の利益の増強に経営資源の集中を図るべきと考えております。
現時点では特別な買収防衛策は導入しておりませんが、今後も引き続き社会情勢等の変化を注視しつつ弾力的な検討を行ってまいります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。また、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本項記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 競合リスク
iPS細胞の分野は、熾烈な研究競争が行われており、技術革新が速く、新規参入の動きが活発となっているため、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社グループは、世界的な大学や公的研究機関と連携し、常に世界最先端の技術開発に先行して取り組んでおります。
新規参入は大手企業を含めて増加しており、研究開発を進めながら参入を検討している潜在的競合相手も少なくないと考えられます。さらに、後発参入製品は先発製品に比べ機能面やコスト面で少なからず優位性を有している可能性もあり、競争が激化することが想定されます。これら競合相手の中には、生産性や販売力、資金力で当社グループを上回る企業が含まれる可能性もあります。当社グループは今後とも、積極的に研究開発及び営業活動を行っていきますが、競合相手との競争状況によっては、計画どおりの収益を上げることができない可能性もあります。
(2) 研究開発活動に由来するリスク
当分野の競争が激化する中、当社では公的資金の有効活用や産学連携により、日米欧の3拠点でこれまで研究開発に重点を置いた活動をしてまいりました。しかしながら、研究開発活動が常に計画どおりに進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) ステムカイマルの臨床治験に関するリスク
ステミネント社から導入した細胞医薬品ステムカイマルに関して、日本で2018年頃から脊髄小脳変性症への適応を目指した臨床治験を開始し2020年頃に承認申請を行う予定で準備を進めております。本治験に関しては、平成26年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」に準拠し進めてまいりますが、想定外の事案により、治験進捗、承認申請および審査の過程で遅延が起こるリスクがあります。
また、本細胞医薬品に関しては、台湾で既に治験(第Ⅰ/Ⅱa 相)が完了しており、その結果が国際的な学術論文で発表されるなど、日本の臨床治験においても技術上のリスクは低いと想定しておりますが、想定外の有害事象の発生および有効性が証明できないなどの理由で、治験の中止または承認が得られないリスクがあります。
さらに、臨床治験の規模が想定より大きくなることによる開発費用の増大のリスクもあります。
(4) 知的財産権に関するリスク
1)特許にかかる事項
知的財産権に関して、当社グループの特許権が他社により侵害されるリスクがあります。このため、当社グループでは研究開発で得られた成果に関して、必要に応じて迅速に特許出願等を行っております。逆に、当社グループが他社の特許権を侵害するリスクも否定できないため、必要に応じて各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、可能な限り特許侵害リスクを軽減すべく対応しております。しかしながら、当社グループの調査範囲の及ばない抵触特許が存在した場合及び秘密裏に当社グループの特許が侵害された場合、当社グループの技術の優位性が損なわれ、多額の損害賠償を請求されるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2)職務発明にかかる事項
当社グループにおける職務発明の取扱に関しては、職務発明規程を作成し、運用しております。しかしながら、将来、発明者の認定及び職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、当社グループの事業に影響を与える可能性があります。
(5) 経営上の重要な契約等に関するリスク
当社の経営上重要と思われる契約は、当社が実施許諾を受けているiPS細胞事業に関する特許ライセンス契約であります。当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、もしくは当社にとって不利な改定が行なわれた場合、または契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び業績に影響を与える可能性があります。
(6) 海外子会社の経営管理に関するリスク
当社グループの海外売上比率は約70%にも達しており、海外子会社の業績がグループ全体に与える影響は大きいと言えます。当連結会計年度において、事業の効率的な運営およびコーポレートガバナンスの強化を目的として、米国子会社3社(Stemgent社、Bioserve社、Biopta Inc.社)と英国子会社2社(Reinnervate社、Biopta Ltd.社)をそれぞれ統合し、REPROCELL USA Inc.およびREPROCELL Europe Ltd.として再編いたしました。
それぞれの子会社の取締役兼Chairpersonには当社代表取締役社長の横山周史が就任しており、経営に深く関与しておりますが、意思決定の迅速化と地域特性に合わせた効率的な経営を実施するため、REPROCELL USA Inc.のCEOには、旧BioServe Ltd.社長のRama Modali氏を、REPROCELL Europe Ltd.のCEOには旧Biopta Ltd.社長のDavid Bunton氏を就任させております。子会社にある一定レベルの権限委譲を行うことで効率的な経営を実施しておりますが、一方では、権限委譲の弊害として、成長戦略や経営管理体制が徹底できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 人材の確保に関するリスク
当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保及び育成が不可欠といえます。特に、米国や英国では日本に比べ一般的に人材流動性が高く、優秀な人材ほど外部に流出するリスクが高くなります。海外子会社を含め、各社の取締役および本部長クラスの優秀な人材を対象にストックオプション制度を導入するなどして長期確保に努めており、さらに優秀な新規人材の採用も積極的に行っております。しかしながら、優秀な人材の確保および採用が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 為替変動リスク
当社グループの海外売上比率は約70%にも達しており、為替変動が業績および財政状態に与える影響は少なくありません。主要取引通貨である米ドルと英ポンドに対して当初の見込みより円高に推移した場合、売上が減少し、さらに海外通貨預金および子会社への貸付金に関わる為替差損の発生による損失の拡大が起こるリスクがあります。一方、円安に推移した場合は、売上の増大および損失の縮小が見込まれます。
特に、英国に関してはEUからの離脱が予定されており、さらに、REPROCELL Europe Ltd.の本社があるスコットランドも英国から独立する動きもあることから、今後の政局により英ポンドが大きく変動するリスクがあります。
(9) 資金繰り及び資金調達等に関するリスク
当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。今後、株式市場からの資金調達や、国の公的補助金等の活用など、資金調達手段の多様化により継続的に財務基盤の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(10) 子会社の減損処理に関するリスク
2014年以降、米国ではStemgent社、Bioserve社、Biopta Inc.社の3社を、英国では、Reinnervate社、Biopta Ltd.社の2社を買収いたしました。毎年、それぞれの買収時に発生したのれん及び無形資産の償却を行っておりますが、各子会社の事業計画が想定通り進まなかった場合、減損処理を行うリスクがあります。Stemgent社ののれんに関しては前連結会計年度に減損処理を行っておりますが、それ以外ののれんの減損処理のリスクは残っております。
(11) マイナスの繰越利益剰余金の計上
当社グループは、これまで、研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、平成29年3月期には、△4,429百万円の繰越利益剰余金を計上しております。当社グループは、安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、当社グループの事業が計画通りに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画通りに解消できない可能性があります。
(12) 税務上の繰越欠損金
当社には現在のところ税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、事業計画の進展から順調に当社業績が推移するなどして繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、親会社株主に帰属する当期純利益または親会社株主に帰属する当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(13) レピュテーションに関するリスク
当社グループは、製品の品質・安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社グループ及び当社グループを取り巻く環境や競合他社及び競業他社を取り巻く環境において何らかのレピュテーション上の問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 自然災害、事故、テロ、戦争等に関するリスク
当社グループが事業活動を行っている地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、当社グループの拠点の設備等に大きな被害を受け、その全部又は一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 継続企業の前提に関する重要事象等
海外子会社を買収した際に生じるのれん及び無形資産の償却や、iPS細胞及び細胞医薬品等の研究開発および治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。
しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,413百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
当社が実施許諾を受けているiPS細胞事業に関する特許ライセンス契約
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契約相手 |
契約書名 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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iPSアカデミアジャパン㈱ |
実施権許諾契約 |
平成21年3月31日 |
平成21年3月31日から本特許の全ての特許権の満了まで |
ヒトiPS細胞由来心筋細胞の製造・販売、並びに各種受託サービスを実施するための非独占的通常実施権の許諾に関する契約。 |
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iPSアカデミアジャパン㈱ |
第1次変更契約 |
平成22年8月1日 |
平成22年8月1日から本特許の全ての特許権の満了まで |
許諾特許及び許諾製品を追加するため、上記契約の一部を変更する契約。 |
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iPSアカデミアジャパン㈱ |
第2次変更契約 |
平成23年10月1日 |
平成23年10月1日から本特許の全ての特許権の満了まで |
許諾製品を追加するため、上記契約の一部を変更する契約。 |
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公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 |
実施権許諾契約 |
平成22年11月22日 |
平成22年11月22日から特定国における本特許の最終の特許権存続期間の満了する日まで |
多能性幹細胞由来肝細胞の製造・販売、並びに各種受託サービスを実施するための非独占的通常実施権の許諾に関する契約。 |
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Steminent Biotherapeutics Inc. |
Collaboration and Commerciallization Agreement |
平成28年11月11日 |
平成28年11月11日から平成38年11月10日まで |
細胞医薬品「Stemchymal®」を日本において独占的に開発・販売するための権利の許諾に関する契約。 |
(注)上記についてはロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。
設立以来、iPS細胞事業に関しては積極的な研究開発を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は276百万円と、販売費及び一般管理費全体の約18%と大きな割合を占めています。当社の技術開発については自社開発に固執することなく、むしろ外部との連携及び共同開発を中心に進めています。これまでも、大学や公的研究機関の世界最先端の研究成果を活用することで、世界最先端の製品の開発に成功してきた実績があり、今後ともその方針を継続する予定です。また、今後とも補助金等の公的資金を有効活用することで、研究開発活動を加速しています。当連結会計年度末の当社グループの研究開発従事人員数は36名です。
(1) iPS細胞事業
iPS細胞の研究は世界中で精力的に進められており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。当社グループとしても、研究開発活動を最重点領域と位置付け、引き続き注力してまいります。研究開発は当社グループにとって重要なアクティビティと位置付け、グループ会社間の技術シナジーの追求を図りながら、研究開発を継続的に実施してまいります。技術開発については自社開発に加え、東京大学・京都大学をはじめとした日本の大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等の欧米の技術導入を積極的に推進していきます。また、今後は再生医療に向けた研究開発に領域を広げながら、再生医療の事業化を前倒しで進めてまいります。iPS細胞に関しては、臨床応用に最適な新規技術の開発を既に行っております。当社グループは引き続き再生医療ビジネスの展開を図るための事業プラットフォームの整備を進めてまいります。
(2) 臨床検査事業
特に研究開発は実施しておりません。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて49百万円増加し、5,910百万円となりました。主な内訳は、原材料及び貯蔵品の増加103百万円、仕掛品の減少65百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて163百万円減少し、1,943百万円となりました。主な内訳は、無形固定資産の減少435百万円、投資その他の資産の増加238百万円であります。
(負債の部)
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて174百万円減少し、281百万円となりました。主な内訳は、前受金の減少174百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて40百万円減少し、203百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の減少36百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて100百万円増加し、7,368百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加577百万円、資本剰余金の増加547百万円、利益剰余金の減少911百万円であります。
(2) 経営成績の分析
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」をご参照ください。
(3) キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
iPS細胞事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、平成29年3月期における研究開発費の総額は276百万円と、販売費及び一般管理費の約18%を占めています。今後も研究開発は積極的に推進する予定であり、継続的な研究開発費の支出を見込んでいます。
(5) 資金の財源及び資金の流動性について
当社グループは、これまで研究開発活動に集中的に資金を投下しておりますが、まだ、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。
(6) 経営戦略の現状と見通し
平成30年3月期の業績につきましては、売上高1,270百万円(前期比1.0%増)、営業損失880百万円(前年同期は944百万円の損失)、経常損失817百万円(前年同期は937百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失817百万円(前年同期は911百万円の損失)を見込んでおります。
当連結会計年度において売上高は1,257百万円となり、業績予想として示しておりました1,305百万円にほぼ到達いたしました。一方、前回の中期経営計画作成時に想定していたポンドの為替レート(1英ポンド=170円)が予想より円高傾向にあり、来期の業績については、売上高1,270百万円に据え置くことといたしました。
また、費用面では、ステムカイマルの治験準備費用が新たに発生する他、海外子会社買収時に生じたのれん及び無形資産の償却費が継続して多額に計上されることが予想されます。一方、子会社をはじめとしたグループの運用体制の合理化の推進による費用削減により連結営業損失の予想額は前年比で減少する見込みです。連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=110円、1英ポンド=140円を前提としております。
当社グループの成長戦略は、iPS細胞事業における「研究試薬」「創薬支援」「再生医療」の段階的な成長とグローバル展開の2つが中心になっています。
段階的な成長に関しては、第1段階である「研究試薬」に加え、この1~2年は第2段階である「創薬支援」の事業拡大に注力してまいりました。「創薬支援」における主な顧客は、製薬、バイオ及び化学系企業であり、今後、市場規模は「研究試薬」より大きくなると見込んでおります。「創薬支援」ではiPS細胞製品およびヒト細胞・組織の供給と、これらを用いた受託サービスを引き続き実施してまいります。当連結会計年度では、ファンケル社との契約に加えて、日米欧の製薬およびバイオ企業等からiPS細胞樹立サービスやヒト細胞・組織を使用した薬剤スクリーニングサービスなど多くの案件を受託しております。今後とも、営業活動を強化し、受注を拡大してまいります。
さらに、当連結会計年度においては、第3段階である「再生医療」を本格的に開始いたしました。市場の動きが当初の予想以上に早く、当社グループとしても中長期計画を前倒しして再生医療事業を開始することになりました。まずは、ステミネント社から導入したステムカイマルの脊椎小脳変性症をターゲットとした治験準備を着実に進め、2018年より日本での臨床治験を開始する予定です。その後2020年には承認申請を行ない、上市を目指します。さらに、iPS細胞の新規開発を行い、中長期的にはこの技術によりiPS細胞の再生医療事業を牽引してまいります。これまで、事業は着実に進捗しております。
海外事業については、上場以来約4年の間、海外子会社の買収や海外代理店との販売提携により、グローバル展開を積極的に進め、現在では連結売上高の約7割を海外が占めるまでにグローバル化を実現しました。今後も引き続きグローバル展開を拡大するとともに、各地域での活動を強化することによって、事業の成長に貢献してまいります。
以上、事業展開およびグローバル展開ともに順調に進んでおり、今後とも、この成長戦略のもとに事業を拡大してまいります。
また、経営資源を有効活用して、スケジュールに沿った事業計画を達成するため、以下の3点を優先して進めてまいります。
① グローバルでの販売拡大
iPS細胞事業の市場は、グローバルで成長しています。現在、日本、米国、欧州が世界の主力市場であり、当社グループでは、米国市場をREPROCELL USA Inc.、欧州市場をREPROCELL Europe Ltd.、日本・アジア市場を株式会社リプロセルが担当し、それぞれの地域でグループ製品および受託サービスの販売拡大に取り組んでおります。今後とも、日米欧の3拠点における営業活動を強化することで売上の増加を図るとともに、中国やインドなど将来大きな市場が見込まれる地域への販売網拡大も目指してまいります。
② グループシナジーの追求と技術開発の加速
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が繰り広げられており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。当社グループは、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。特に、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規技術の開発を行ってまいります。さらに、引き続き、京都大学、慶応義塾大学等の日本のトップ大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に導入してまいります。
③ 再生医療事業の加速
ステミネント社から導入した細胞医薬品ステムカイマルの2018年治験開始に向けた準備を着実に進め、2020年の承認申請を目指します。さらに臨床用のiPS細胞培養に適した試薬の開発およびiPS細胞バンクの開発に注力し、当社のiPS細胞技術の優位性を活かしつつ企業および医療機関に幅広く製品供給することによって汎用性の高いプラットフォーム型の事業構築を目指します。
また、国内外の未上場のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーを投資対象とする、株式会社新生銀行との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を通じ、世界中の革新的な技術シーズの確保と育成、そして連携を図ります。
(7) 経営者の問題意識と今後の方針について
「第2 事業の状況 3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(8) 継続企業の前提に関する事項について
海外子会社を買収した際に生じるのれん及び無形資産の償却や、iPS細胞及び細胞医薬品等の研究開発および治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております。
しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,413百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。