第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象

 当社グループは、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しておりますが、当該状況を解消又は改善するための対応策を講じることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないものと判断しております。当該状況を解消又は改善するための対応策は、3 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (6)に記載しております。

 

2【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期連結累計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

3【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結累計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 業績の状況

当第1四半期連結累計期間(平成29年4月1日~平成29年6月30日)における国内経済は、企業収益や雇用環境の改善により、緩やかな回復基調で推移しており、個人消費は回復傾向にあるものの、朝鮮半島の情勢不安や、米国の新政権移行、英国のEU離脱問題など、世界情勢は不安定であり、先行きは不透明な状況となっております。

 一方、当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、平成19年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。さらに日本では「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が平成26年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品(細胞医薬品など)に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 

 当社グループではこれまで、事業セグメントを「iPS細胞事業」と「臨床検査事業」の2つに区分してまいりましたが、当第1四半期連結会計期間より、新たに「研究支援事業」および「メディカル事業」にセグメントを再編いたします。

これまで、当社の主力事業である「iPS細胞事業」を、顧客属性に合わせ「研究試薬」、「創薬支援」、「再生医療」に細分化して管理しておりましたが、事業の進捗管理および資源配分を適切に行う事を目的として、「研究試薬」と「創薬支援」をまとめて「研究支援事業」に、「再生医療」を「メディカル事業」に区分いたします。さらに、従来の「臨床検査事業」セグメントに関しては「メディカル事業」に統合いたします。

「研究支援事業」では主に大学・公的研究機関や製薬企業・バイオテック企業を顧客として、iPS細胞や研究試薬の製造販売、および、iPS細胞や創薬支援に関するサービスの提供を行ってまいります。一方、「メディカル事業」では、再生医療製品(細胞医薬品)を製造販売業者として医療機関に販売、あるいは製薬企業・バイオテック企業に細胞医薬品の原料となる幹細胞等を製造業者として供給するとともに、移植関連などの臨床検査受託サービスを行ってまいります。

現時点では売上の大部分を「研究支援事業」が占めており、今後とも短中期的には本事業セグメントを収益の源泉とし事業を拡大してまいります。一方、「メディカル事業」は現時点では研究開発フェーズではありますが、中長期的には上述のように巨大な市場が見込めることから、積極的な研究開発を推進し、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。

報告セグメントの変更に関する財務諸表の注記事項は、「第4 経理の状況 1.四半期連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)Ⅱ 3.報告セグメントの変更等に関する事項」をご覧ください。

セグメントごとの詳細な当第1四半期連結累計期間の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。

 

この結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は211,048千円(前年同四半期比20.7%減)、営業損失は274,633千円(前年同四半期245,684千円の損失)、経常損失は196,875千円(前年同四半期352,444千円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は200,817千円(前年同四半期346,169千円の損失)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

なお、当第1四半期連結累計期間より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同四半期比較については、前年同四半期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

研究支援事業

現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来より性能の良い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的技術として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明および新薬開発が加速されると期待されています。当社グループでは、iPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業セグメントを推進しております。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えております。このように、ヒトiPS細胞およびヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。

当第1四半期連結累計期間では、ヒト組織の調達能力を大幅に上げることを目的として、REPROCELL USAがアメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)と戦略的業務提携を行いました。これにより、FCCCで採取された、質の高いがん組織を供給することが可能となり、さらに、インドにおいても、がん組織バンキングの共同事業を進めてまいります。人口数世界第2位のインドにおいて、圧倒的な数のがん組織を採取することで、競争力をより一層強化してまいります。

製薬企業では、自社研究所内で実施している新薬候補化合物のスクリーニングや毒性試験など専門性の高い研究の一部を高度な技術を保有する外部の専門機関に委託する需要が増えてきています。当社では、iPS細胞技術を含む高度な技術を用いた受託ビジネスを積極的に展開するため、REPROCELL Europe内に、新施設「Centre for Predictive Drug Discovery」を開設いたしました。同センターでは、アルツハイマー病など各種患者由来のiPS細胞の作製および最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供してまいります。さらに、同センターは、GLP(Good Laboratory Practice: 医薬品の非臨床試験の安全性に関する信頼性を確保するための基準)に準拠しており、新薬候補化合物の試験サービスを高い信頼性のもと実施しております。以上、最先端の技術を用いた創薬支援サービスを1カ所に集約することにより、競合優位性を高め、事業を積極的に拡大してまいります。

この結果、売上高は197,696千円(前年同四半期比23.1%減)、セグメント損失は6,718千円(前年同四半期23,632千円の損失)となりました。

 

メディカル事業

近年、再生医療分野においては、ヒト幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用に関連した研究および治験が世界中で盛んにおこなわれており、その成果による医療の発展を、多くの患者が待ち望んでいます。また、上述のように再生医療は将来グローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。

特にiPS細胞は、神経や心筋、肝臓、膵臓などの様々な細胞に分化させる事が可能であることから、一刻も早い臨床応用が望まれています。iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題としては、安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子の変異リスク、外来の遺伝子やウイルスがiPS細胞に残存することによるがん化のリスク等が挙げられています。

当社グループでは遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術であるRNAリプログラミング技術を開発・保有しており、研究支援事業として本技術を用いたiPS細胞作製の受託ビジネスを開始しています。今後当社グループでは、本技術の臨床応用を進め、iPS細胞技術を活用した再生医療を進めてまいります。

一方、当社では間葉系幹細胞を用いた細胞医薬品「ステムカイマル」の治験準備も進めております。一般的に、間葉系幹細胞はヒトiPS細胞に比べ臨床開発が先行しており、より早期の事業化が期待されています。ステムカイマルは希少疾患である脊髄小脳変性症の治療薬として、現在台湾で治験が進められており、既に第Ⅰ/Ⅱa相の治験が終了しています。その結果は国際的な学術論文で発表されており、投与による有害事象はみられなかった事が報告されています。

当社では日本におけるステムカイマルの独占ライセンス契約を締結しており、2018年から治験を開始し、2020年頃に承認申請を予定しています。現在、2018年の治験開始を目指して、各関係機関と順次話し合いを進めております。

臨床検査では、現在、腎移植や造血幹細胞移植に関連した検査を中心に事業を進めておりますが、今後、がん領域等で検査項目を新規に追加することによって事業を拡大してまいります。当第1四半期連結会計期間において日立化成株式会社と契約を締結し、同社が開発した研究用試薬ExoCompleteキット(尿中エクソソームからのmRNA抽出キット)を用いて、腎臓移植後の免疫拒絶反応を早期検出する検査「尿中エクソソーム腎移植モニタリング検査」を開始いたしました

この結果、売上高は13,352千円(前年同四半期比43.3%増)、セグメント損失は6,661千円(前年同四半期542千円の利益)となりました。

 

 なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が183,496千円(前年同四半期329,354千円)あります。

 

 

(2) 財政状態の分析

(資産の部)

 当第1四半期連結会計期間末における流動資産は前連結会計年度末に比べて500,489千円増加し、6,411,215千円となりました。これは主に、現金及び預金が529,400千円増加したことなどによります。固定資産は前連結会計年度末に比べて88,161千円増加し、2,031,552千円となりました。これは主に、投資有価証券が89,547千円増加したことなどによります。

 

(負債の部)

 当第1四半期連結会計期間末における流動負債は前連結会計年度末に比べて46,609千円減少し、235,280千円となりました。これは主に、未払法人税等が19,987千円、前受金が13,417千円減少したことなどによります。固定負債は前連結会計年度末に比べて3,683千円減少し、200,022千円となりました。これは主に、繰延税金負債が2,919千円減少したことなどによります。

 

(純資産の部)

 当第1四半期連結会計期間末における純資産は前連結会計年度末に比べて638,944千円増加し、8,007,465千円となりました。これは主に、資本金が406,725千円、資本剰余金が406,725千円増加したことなどによります。

 

(3) 経営方針・経営戦略等

 当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

(5) 研究開発活動

 当第1四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、39,512千円であります。

 なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6) 重要事象及び当該事象を解消し、又は改善するための対応策

当連結会計年度については、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。

しかしながら、当社グループの当第1四半期連結会計期間末の現金及び預金残高は3,942,610千円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999,862千円あり、財務基盤については安定しており、当該状況の解消を図るべく、グローバル展開に向けた販売基盤の整備を行っています。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指して当該状況の解消を図っていきます。