文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現在は米国、欧州、日本が医療分野の大きな市場を形成しており、当社もこの3地域を活動拠点としておりますが、将来的には、中国、インド、アジアなどにも広く事業を展開していく予定です。
また、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)目標とする経営指標
iPS細胞を用いた研究及び再生医療の市場は今後長期的な成長が見込まれています。その中で当社はトッププレーヤーとしての地位を確立し、市場とともに大きく成長するために「攻め」の経営で競合他社に先行する方針です。したがって、当面は、研究開発、新規事業の立ち上げ、新しい地域への進出など、先行投資を伴う事業規模の拡大に注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
iPS細胞は、培養器内で大量に増やすことが可能であり、体の様々な細胞に分化する能力を持っていることから、これまでに無い次世代のライフサイエンス事業を生みだす分野として、大きく注目を集めています。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
「研究支援事業」は、大学・公的研究機関及び製薬企業を対象顧客としたビジネスであり、現在、当社グループ売上高の94.2%を占めております。iPS細胞の研究に必要な培養液や抗体などの各種研究試薬の販売、及び新薬候補化合物の薬効・毒性試験などの受託サービスを実施しております。
「メディカル事業」ではiPS細胞及びその他の細胞を活用した再生医療製品の開発を行っており、日本における早期承認取得を目指しております。日本では2014年に治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる再生医療関連法案が施行されました。当社では本制度を活用し、日本における早期承認及び商業化を推進してまいります。
また、基盤技術は、「研究支援事業」と「メディカル事業」ともに共通しております。iPS細胞に関連する最先端の技術プラットフォームとしてiPS細胞の基幹技術であるリプログラミング技術(iPS細胞を作製すること)を中心に、iPS細胞から神経、心筋、肝臓など各種の細胞に分化させる技術、iPS細胞に関連する培養試薬の技術、さらに、様々なヒト細胞を調達するためのインフラなどを保有しております。この技術プラットフォームを今後とも強化し続けることで、競争優位性を確保し、「研究支援事業」と「メディカル事業」の両方で事業を積極的に推進してまいります。
① 研究支援事業
iPS細胞ビジネスの市場はグローバルで成長しており、日本、米国、欧州が世界の主力市場となっており、最近では中国、インドなどでも市場が拡大しております。
当社では、既に日米欧の3拠点を保有しており、それぞれの市場で営業を展開しております。対象顧客は、大学・公的研究機関などのアカデミアと、製薬企業、バイオテック企業などの法人に大きく分けられます。最近は特に、iPS細胞の研究及び再生医療に取り組む企業が増えており、当社としても製薬企業、バイオテック企業の営業を中心に強化してまいります。これらの企業は、日米欧の3拠点にほぼ局在しているため、今後も、当社グループの3拠点の営業網の強化を行ってまいります。また、これらの企業では各種の研究試薬を購入して自社で専門性の高い研究を実施するよりも、研究の一部を外注する受託サービスを依頼する傾向があります。そのため、当社の3拠点のラボでそれぞれの地域の顧客と密接にコミュニケーションを取りながらカスタムサービスを提供できることは、当社の大きな強みと言えます。現在、各拠点で、iPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。
さらに、今後大きな市場成長が見込めるインドでも積極的に事業を推進してまいります。当連結会計年度では、アメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)とインドにおける戦略的業務提携を行い、今後インドに合弁会社を新たに設立する予定です。経済成長著しいインドに拠点を置くことにより、日米欧に続く新たな拠点としてビジネスを展開してまいります。
また、技術的にはiPS細胞の技術プラットフォームの強化を積極的に継続してまいります。当社では、iPS細胞の基幹技術となるリプログラミング技術において、世界最先端の「第3世代RNAリプログラミング技術」を保有しております。本技術では、皮膚や血液だけでなく、尿からもiPS細胞が作製できるため、誰からも容易にiPS細胞が高効率で作製可能になっております。また、作製されたiPS細胞に関しても、遺伝子変異や残存因子のない高品質な細胞となっており、神経細胞、肝臓細胞、心筋細胞など、様々な細胞に効率よく分化することが確認されております。さらに、本技術に加え、iPS細胞の元となるドナー細胞の調達能力を大幅に拡大することで、様々な細胞を用いたサービスラインナップの拡充に取り組んでまいります。例えば、多くのアルツハイマー病患者から採取した検体からiPS細胞を作製することで、数多くのアルツハイマー病疾患iPS細胞の提供が可能になります。細胞の調達に関しては、米国、欧州だけでなく、前述のインドの合弁会社を通じても行う予定であり、世界第2位の人口を誇るインドを加えることで、圧倒的な優位性を確保してまいります。
また、新たな技術の流れとして、基礎研究、創薬研究だけでなく、再生医療の研究を開始する大学及び企業が増加しております。再生医療研究においては、使用する試薬が規制当局のガイドラインに沿っている必要があるため、これまでの基礎研究用試薬がそのまま使用できるとは限りません。このため、当社では再生医療に適した新たな臨床研究用試薬の開発にも取り組んでおります。新たに販売を開始した、iPS細胞培養液「ReproMed iPSC Medium」や、細胞凍結保存液「ReproCryo RM」は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、厚生労働省の薬事審査機関である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療への使用の適格性が確認されております。今後、このような臨床研究用の試薬のラインナップを拡充することで、急激に成長する再生医療分野において事業の拡大を目指します。
② メディカル事業
メディカル事業では、当社の基幹技術であるiPS細胞技術及び細胞培養技術を用いて、会社の中長期的な成長ドライバーとして、再生医療製品の研究開発及び早期承認・商業化を目指して事業を推進してまいります。
現在、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」とiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の2つのパイプラインの開発を実施しておりますが、日本における再生医療の早期承認制度を活用し、早期の承認・商業化を目指します。さらに、将来的には、同一の再生医療製品を用いた他の疾患への適用拡大及びライセンスアウトを通じ更に事業を拡大してまいります。
1つ目のパイプラインは、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」です。ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品で、脊髄小脳変性症の早期承認取得を目指してまいります。当社はステミネント社と日本における共同開発及び販売に関する独占契約を締結しています。
2つ目のパイプラインは、中枢神経系疾患を対象としたiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)です。具体的には、当社と米国Q Therapeutics Inc.で、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立して共同開発を実施しております。日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の2つの中枢神経系疾患に関して、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。
当社の保有する第3世代RNAリプログラミング技術を用いて作製したiPS細胞は、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に最適な細胞となっております。iGRPに関しても、本iPS細胞を利用することで、がん化リスクの問題を克服し早期の承認取得につなげてまいります。また、本iPS細胞から作製したiGRP細胞は、その他様々な中枢神経系疾患への適用が見込まれており、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または横断性脊髄炎(TM)で安全性が確認された後、他の疾患への適用拡大を迅速に進めてまいります。さらに、本iPS細胞を、心臓、肝臓、網膜など様々な再生医療製品のセルソースとしても事業を拡大してまいります。
(4)会社の対処すべき課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために対処すべき課題を以下のように考えております。
① 全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
2)技術革新への対応
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が行われており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広いiPS細胞及び体細胞の技術プラットフォームを保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
この他、国内外のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーとの協力関係の構築及び資金提供を目的として株式会社新生銀行と共同でベンチャーキャピタルファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を運営しております。本活動を通じて、世界最先端の再生医療技術に幅広くアクセスし連携を強化してまいります。
今後とも当社グループは再生医療の実現と競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関や技術シーズとの連携を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、技術革新への対応として意欲的、多角的に取り組んでまいります。
② セグメント別課題
1)研究支援事業
(a) 多様化する顧客ニーズへの対応
iPS細胞を扱う研究者はこれまで大学・公的研究機関が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業にも拡大しております。また、創薬研究だけでなく再生医療研究も増加しており、顧客の技術ニーズも多様化しております。このため、限られた地域で既製品のみを提供しているだけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。
当社グループでは、iPS細胞の研究機関及び製薬企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応した製品及びサービスを提供しております。特に、製薬企業やバイオテック企業では、受託サービスのニーズが高く、各地域のラボで顧客とコミュニケーションしながら付加価値の高いサービスを提供しております。
さらに、研究支援事業の基盤となる各種のヒト細胞及び組織の調達能力の向上にも積極的に取り組んでおります。これにより、アルツハイマー病患者由来iPS細胞やガンなど様々な疾患モデル細胞の提供及びサービスを提供してまいります。具体的には、米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」と連携し、世界人口第2位のインドにおいて細胞を調達することで、様々なヒト細胞の調達能力を強化しております。
当社グループでは、今後も顧客の近くでニーズに合わせてカスタマイズできる製品やサービスの提供を推進し、競争力を高めてまいります。
2)メディカル事業
(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認
当社グループでは、台湾のステミネント社より再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入しています。ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、投与に伴う有害事象は無く、通常悪化する一途の症状が維持されたことが報告されております。
日本では、2014年11月25日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が施行されました。これにより、日本では治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、治験を実施しながらも条件付きで販売を行う事が出来る「条件・期限付き承認」を得る事が可能となり、再生医療に関連した医薬品の開発を加速化する事が可能となっております。
当社では、台湾での治験データや日本独自の制度を活用し、ステムカイマルの承認を早期に取得することを目指します。
(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現
現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が言われています。これに対し、当社グループでは独自技術である次世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない高品質なiPS細胞の作製を可能にする技術の開発に成功しています。
現在、当社と米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)の合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(MQ社)において、iPS細胞を用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の治療法及び再生医療製品の開発を行っております。本研究開発においても、前述の次世代RNAリプログラミング技術を用いることで、がん化のリスクの克服をし、早期の実用化を目指します。
(5)株式会社の支配に関する基本方針について
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者は、安定的な成長を目指し、企業価値を高め、株主の利益の増強に経営資源の集中を図るべきと考えております。
現時点では特別な買収防衛策は導入しておりませんが、今後も引き続き社会情勢等の変化を注視しつつ弾力的な検討を行ってまいります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。また、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本項記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 競合リスク
iPS細胞の分野は、熾烈な研究競争が行われており、技術革新が速く、新規参入の動きが活発となっているため、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社グループは、世界的な大学や公的研究機関と連携し、常に世界最先端の技術開発に先行して取り組んでおります。
新規参入は大手企業を含めて増加しており、研究開発を進めながら参入を検討している潜在的競合相手も少なくないと考えられます。さらに、後発参入製品は先発製品に比べ機能面やコスト面で少なからず優位性を有している可能性もあり、競争が激化することが想定されます。これら競合相手の中には、生産性や販売力、資金力で当社グループを上回る企業が含まれる可能性もあります。当社グループは今後とも、積極的に研究開発及び営業活動を行っていきますが、競合相手との競争状況によっては、計画どおりの収益を上げることができない可能性もあります。
(2) 研究開発活動に由来するリスク
当分野の競争が激化する中、当社では公的資金の有効活用や産学連携により、日米欧の3拠点でこれまで研究開発に重点を置いた活動をしてまいりました。しかしながら、研究開発活動が常に計画どおりに進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 再生医療ビジネスに関するリスク
現在当社グループでは、体性幹細胞由来の再生医療製品ステムカイマルの治験準備、及び再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞の開発を進めております。
再生医療製品の治験に関しては、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」に準拠し進めてまいりますが、想定外の事案により、治験進捗、承認申請及び審査の過程で遅延が起こるリスクがあります。
ステムカイマルに関しては、台湾で既に治験(第Ⅰ/Ⅱa 相)が完了しており、その結果が国際的な学術論文で発表されるなど、日本の臨床治験においても技術上のリスクは低いと想定しておりますが、想定外の有害事象の発生及び有効性が証明できないなどの理由で、治験の中止または承認が得られないリスクがあります。さらに、臨床治験の規模が想定より大きくなることによる開発費用の増大のリスクもあります。
加えて、再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞については、米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)と共に開発を進めてまいりますが、開発が計画通り進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 知的財産権に関するリスク
① 特許にかかる事項
知的財産権に関して、当社グループの特許権が他社により侵害されるリスクがあります。このため、当社グループでは研究開発で得られた成果に関して、必要に応じて迅速に特許出願等を行っております。逆に、当社グループが他社の特許権を侵害するリスクも否定できないため、必要に応じて各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、可能な限り特許侵害リスクを軽減すべく対応しております。しかしながら、当社グループの調査範囲の及ばない抵触特許が存在した場合及び秘密裏に当社グループの特許が侵害された場合、当社グループの技術の優位性が損なわれ、多額の損害賠償を請求されるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 職務発明にかかる事項
当社グループにおける職務発明の取扱に関しては、職務発明規程を作成し、運用しております。しかしながら、将来、発明者の認定及び職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、当社グループの事業に影響を与える可能性があります。
(5) 経営上の重要な契約等に関するリスク
当社の経営上重要と思われる契約は、当社が実施許諾を受けているiPS細胞事業に関する特許ライセンス契約であります。当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、もしくは当社にとって不利な改定が行なわれた場合、または契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び業績に影響を与える可能性があります。
(6) 人材の確保に関するリスク
当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保及び育成が不可欠といえます。特に、米国や英国では日本に比べ一般的に人材流動性が高く、優秀な人材ほど外部に流出するリスクが高くなります。海外子会社を含め、各社の取締役及び本部長クラスの優秀な人材を対象にストックオプション制度を導入するなどして長期確保に努めており、さらに優秀な新規人材の採用も積極的に行っております。しかしながら、優秀な人材の確保及び採用が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 為替変動リスク
当社グループの海外売上比率は約70%にも達しており、為替変動が業績及び財政状態に与える影響は少なくありません。主要取引通貨である米ドルと英ポンドに対して当初の見込みより円高に推移した場合、売上が減少し、さらに海外通貨預金及び子会社への貸付金に関わる為替差損の発生による損失の拡大が起こるリスクがあります。一方、円安に推移した場合は、売上の増大及び損失の縮小が見込まれます。
特に、英国に関してはEUからの離脱が予定されており、今後の政局により英ポンドが大きく変動するリスクがあります。
(8) 資金繰り及び資金調達等に関するリスク
当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。今後、株式市場からの資金調達や、国の公的補助金等の活用など、資金調達手段の多様化により継続的に財務基盤の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9) マイナスの繰越利益剰余金の計上
当社グループは、これまで、研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、2018年3月期には、△6,601百万円の繰越利益剰余金を計上しております。当社グループは、安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、当社グループの事業が計画通りに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画通りに解消できない可能性があります。
(10) 税務上の繰越欠損金
当社には現在のところ税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、事業計画の進展から順調に当社業績が推移するなどして繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、親会社株主に帰属する当期純利益または親会社株主に帰属する当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(11) レピュテーションに関するリスク
当社グループは、製品の品質・安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社グループ及び当社グループを取り巻く環境や競合他社及び競業他社を取り巻く環境において何らかのレピュテーション上の問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 自然災害、事故、テロ、戦争等に関するリスク
当社グループが事業活動を行っている地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、当社グループの拠点の設備等に大きな被害を受け、その全部又は一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 継続企業の前提に関する重要事象等
iPS細胞及び細胞医薬品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。
しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,573百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。
業績等の概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績
当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、2007年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。
最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究が多く行われるようになりました。日本でも昨年8月、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、今後ますますiPS細胞の活用が広がっていくと期待されます。
さらに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が2014年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
このような事業環境の下、当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
セグメントごとの詳細な当連結会計年度の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。
この結果、当連結会計年度の売上高は926百万円(前年同期比 26.4%減)、営業損失は1,025百万円(前年同期 944百万円の損失)、経常損失は935百万円(前年同期 937百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,172百万円(前年同期 911百万円の損失)となりました。
売上高については、当初予想していた成長事業として、欧米における創薬支援サービスを中心に売上の増加を見込んでおりました。しかし、実際には予定していた案件の一部について当期中に受注することができず、引き続き顧客との交渉を続けております。
また、前連結会計年度においては、下記の一時的な大きな売上が2つ含まれておりました。
1つ目は、REPROCELL Europe(前Biopta社)が前々年度(2016年3月期)より前から進めていた総額150百万円相当のサービス業務があり、決算期をまたいで納品されたことにより、前年度(2017年3月期)の売上及び費用として計上していたものです。
2つ目は、REPROCELL USA Inc.の決算期を12月31日から3月31日に変更したことで、前連結会計年度はREPROCELL USA Inc.のみ2016年1月1日から2017年3月31日まで15か月分の売上高及び費用を計上しており、最後の3か月間の売上高については118百万円となっておりました。
上記の2つの一時的な売上高を合計した268百万円による影響額を除いて比較すると、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と同水準となっており、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
a.研究支援事業
現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の良い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。
当社グループでは、ヒトiPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しております。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えております。このように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、製薬企業では、自社研究所内で実施している新薬候補化合物のスクリーニングや毒性試験など専門性の高い研究の一部を、高度な技術を保有する外部の専門機関に委託する需要が増加しています。
当社グループではこのような需要に対応し、iPS細胞技術を含む高度な技術を用いた受託ビジネスを積極的に展開するため、ヒトiPS細胞の研究施設を日米欧の3拠点に集約・設置いたしました。これらの拠点では、アルツハイマー病など各種患者由来のiPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。多くの大手製薬企業やバイオテック企業が研究拠点を置いている日米欧でこれらのサービスを提供することにより、研究支援ビジネスをさらに加速してまいります。
具体的には、米国ではREPROCELL USA本社の研究施設を拡張し、米国内に2か所あった研究施設を1か所に統合いたしました。さらに欧州のREPROCELL Europe内には、新施設「Centre for Predictive Drug Discovery」を開設いたしました。日本では、新しい創薬支援サービスとして、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室にバンキングされている疾患特異的iPS細胞を活用し、疾患特異的な機能性細胞を提供するサービスの提供を開始いたしました。
最先端の技術を用いた創薬支援サービスを各地域で素早く提供できるよう、研究施設を集約することにより、競合優位性を高め、事業を積極的に推進してまいります。
さらに、当社グループは日米欧だけでなくインドにも進出を開始いたしました。2017年4月にアメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)と戦略的業務提携を行い、今後、インドにおいて合弁会社を設立する事を決定いたしました。今後FCCCで採取された、質の高いがん組織を供給することや、人口数世界第2位のインドで圧倒的な数のがん及びヒト組織を採取することが可能となります。これにより、細胞調達能力をさらに強化し、グループ事業の競争力をより一層強化してまいります。
製薬企業では、前述の通りヒト細胞を活用した実験へのシフトが進んでおりますが、その他にもヒト細胞自体を用いた再生医療製品の開発に取り組む企業も増加しており、高い安全性が求められる再生医療向けの臨床用試薬に対するニーズも高まっております。当社グループでは、現在販売を行っている研究向け試薬の改良を行い、再生医療向け臨床用試薬の開発を行っています。
再生医療向け臨床研究用試薬としてヒトiPS細胞用培養液「ReproMed iPSC Medium」を開発し、2018年4月より発売しております。本試薬は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療等製品の原材料としての適格性が確認されています。本製品を用いて拡大培養したiPS細胞から、心筋細胞、神経細胞、肝細胞などへ効率よく分化誘導できることも確認しており、優れた性能を有しております。本製品は安全性が高く、かつ、優れた性能を有しており、iPS細胞の再生医療向けとして最適な培養液となっております。
さらに、同じく再生医療等製品向け試薬としてヒトiPS細胞用凍結保存液「ReproCryo RM」(リプロクライオ アールエム)を開発、上市いたしました。本試薬はPMDAにおいてマスターファイル(原料等登録原簿)登録され、臨床用iPS細胞を用いた細胞医薬品の開発に最適な製品となっています。
当社グループでは、拡大する再生医療市場に向けた臨床用試薬の販売を積極的に行っていくとともに、今後自社の再生医療事業へも活用してまいります。
当社グループと外部研究機関による共同研究では、研究課題3件に対して補助金交付が決定しました。
当社グループでは公的補助金の有効活用や産学連携により、日米欧の3拠点で積極的に研究開発活動を推進しております。今後も競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関との連携及び技術シーズの導入を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、たゆまぬ技術革新に取り組んでまいります。
最後に、化粧品販売事業を行っている当社関連子会社のリプロキレート社が第1号製品「セルアージュ バイオマスク」の販売を開始しました。化粧品関連の市場規模(出荷額ベース)は2016年で1兆5千億円を超えており、その中でも本製品が属する「皮膚用化粧品」は50%近い出荷額を占めています。当社グループでは、引き続き幹細胞の培養技術を活かした化粧品の共同開発を推進し、新製品の開発を行ってまいります。
この結果、売上高は872百万円(前年同期比27.7%減)、セグメント損失は173百万円(前年同期117百万円の損失)となりました。
b.メディカル事業
再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んにおこなわれており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。そして、なにより画期的な再生医療製品の開発による医療の発展を、世界中の患者が待ち望んでいます。
特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保であり、遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が挙げられています。
当社グループでは、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「第3世代RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。
メディカル事業では本技術の臨床応用を進め、再生医療製品の早期承認を目指しております。また、再生医療とは別に、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、1号パイプラインとして、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」の治験準備を進めております。
ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品です。当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。
脊髄小脳変性症は小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の疾患です。日本では指定難病とされており、患者数は約3万人と言われている希少疾患です。
日本では、治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、早期に承認を得る事が可能であり、再生医療製品の開発を加速化できる環境が整っています。さらに、ステムカイマルは台湾において既にⅠ/Ⅱa相の治験を完了しており、安全性に問題無い旨が確認されております。
これらの制度や台湾での治験データを活用し、患者様へ少しでも早く新しい治療法を届けられるよう、事業を推進してまいります。
2号パイプラインとしては、米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品の研究開発に取り組んでいます。
当社は、独自の強みとして、次世代のiPS細胞作製技術であるRNAリプログラミング法により、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を保有しています。一方Qセラ社では、米国においてiPS細胞と異なる細胞(体性幹細胞)を用いて再生医療製品の開発を進めており、米国FDAに対して筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした治験申請(IND)を完了しています。
再生医療製品であるiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の開発を加速するため、当社とQセラ社は、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立いたしました。MQ社では、iGRPの前臨床試験の実施、及び、その後の臨床開発を行い、中枢神経領域の様々な疾患を対象とした再生医療技術の商業化権のライセンスアウトを行います。
日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)に関しては、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。さらに、他の中枢神経系疾患及び他の地域においても、当社がiGRPの独占的な製造ライセンス契約を締結しており、さらなる適用拡大を進めてまいります。2号パイプラインにより、当社は、自社のiPS細胞技術を用いて様々な中枢神経疾患に有効な再生医療製品の実用化を目指し、中長期の事業の成長を推進してまいります。
臨床検査関連事業では、当連結会計年度において、主力検査項目の抗HLA抗体スクリーニング検査と抗HLA抗体シングル抗原同定検査が、全ての臓器移植後の検査として保険収載されました。これにより、今後これらの検査を行う医療機関の増加が見込まれるため、当社として積極的に受注を獲得してまいります。
さらに、日立化成株式会社と契約を締結し、同社が開発した研究用試薬ExoCompleteキット(尿中エクソソームからのmRNA抽出キット)を用いて、腎臓移植後の免疫拒絶反応を早期検出する検査「尿中エクソソーム腎移植モニタリング検査」を開始しております。
この結果、売上高は53百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント損失は7百万円(前年同期11百万円の利益)となりました。
なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が753百万円あります。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて160百万円増加し、5,580百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は636百万円(前年同期は775百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,281百万円が発生した一方、減損損失1,324百万円、のれん償却費133百万円等の発生によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は228百万円(前年同期は685百万円の獲得)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出206百万円が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は1,028百万円(前年同期は1,127百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,031百万円によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
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研究支援事業(千円) |
513,717 |
79.7 |
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合計(千円) |
513,717 |
79.7 |
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.メディカル事業に生産実績はありません。
(2) 受注実績
当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) |
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
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研究支援事業(千円) |
872,625 |
72.3 |
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メディカル事業(千円) |
53,630 |
105.3 |
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合計(千円) |
926,255 |
73.6 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて69百万円増加し、5,979百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加160百万円、商品及び製品の減少52百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて1,325百万円減少し、617百万円となりました。主な内訳は、無形固定資産の減少1,467百万円、投資その他の資産の増加165百万円であります。
セグメント別に示すと、研究支援事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて1,498百万円減少し、589百万円となりました。また、メディカル事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて124百万円増加し、142百万円となりました。なお、各報告セグメントに配分していない全社資産については、前連結会計年度末に比べて117百万円増加し、5,865百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて20百万円減少し、261百万円となりました。主な内訳は、買掛金の減少12百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて115百万円減少し、88百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の減少112百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて1,120百万円減少し、6,248百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加519百万円、資本剰余金の増加519百万円、利益剰余金の減少2,172百万円であります。
(2) 経営成績の分析
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。
(3) キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2018年3月期における研究開発費の総額は191百万円と、販売費及び一般管理費の約14%を占めています。今後も研究開発は積極的に推進する予定であり、継続的な研究開発費の支出を見込んでいます。
(5) 資金の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当連結会計年度末における当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,573百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、十分な流動性を確保しています。
(6) 経営戦略の現状と見通し
2019年3月期の業績につきましては、売上高1,167百万円(前期比26.1%増)、営業損失757百万円(前年同期は1,025百万円の損失)、経常損失709百万円(前年同期は935百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失709百万円(前年同期は2,172百万円の損失)を見込んでおります。
2018年3月期(前事業年度)において売上高は926百万円となり、2017年3月期実績1,257百万円を下回る結果となりました。ただし、2017年3月期実績には、2つの一時的な売上が含まれており、影響額を除いて比較すると前事業年度と2017年3月期は同水準の売上高となっています。そのため、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
また、当社グループが注力している創薬支援サービスについては、将来的に売上高につながる受注数やリード件数をみた場合、成長傾向が見られており、引き続き事業を推進してまいります。また、2018年4月にインドの企業Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.の株式を取得しており、同社の売上高が取り込まれます。
また、費用面では、ステムカイマルの治験準備費用や、iPS細胞を活用した再生医療製品の研究開発費の計上を想定しております。
連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=110円、1英ポンド=140円を前提としております。
また、2018年3月期(前事業年度)は減損損失の発生により大幅な損失を計上しておりますが、2019年3月期においてはそのような特別な要因は想定しておりません。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
① 研究支援事業
当社グループでは、iPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しています。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えています。
以上のように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで多様化する顧客ニーズに対応し、より一層競合優位性を高めてまいります。
特に、この2~3年は「創薬支援サービス」の事業拡大に注力してまいりました。前連結会計年度に受注したファンケル社との共同開発案件を進めるとともに、日米欧の製薬及びバイオ企業等からiPS細胞樹立サービスやヒト細胞・組織を使用した薬剤スクリーニングサービスなどを受託しております。今後とも、引き続き営業活動を強化し、受注を拡大してまいります。
② メディカル事業
iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題としては安全性の確保があり、遺伝子の変異、がん化のリスク等が挙げられています。当社グループでは、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を開発・保有しており、本技術を用いたビジネスを行っています。
現在、ステミネント社から導入した再生医療製品ステムカイマルの脊椎小脳変性症をターゲットとした治験準備を進めており、早期に治験を開始した後、2020年頃に承認申請を行う予定です。
さらに、iPS細胞を活用した再生医療製品としてiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で行っております。中長期的には本研究開発の技術によりiPS細胞の再生医療事業を牽引してまいります。
今後の成長事業として、引き続きメディカル事業を積極的に推進してまいります。
海外事業については、上場以来約4年の間、海外子会社の買収や海外代理店との販売提携により、グローバル展開を積極的に進め、現在では連結売上高の約7割を海外が占めるまでにグローバル化を実現しました。今後もインドや中国なども視野に入れて引き続きグローバル展開を拡大するとともに、各地域での活動を強化することによって、事業の成長に貢献してまいります。
以上、事業展開及びグローバル展開ともに順調に進んでおり、今後とも、この成長戦略のもとに事業を拡大してまいります。
また、経営資源を有効活用して、スケジュールに沿った事業計画を達成するため、以下の3点を優先して進めてまいります。
(a) グローバルにおける事業成長
iPS細胞事業の市場は、グローバルで成長しています。現在、日本、米国、欧州が世界の主力市場であり、当社グループでは、米国市場をREPROCELL USA Inc.、欧州市場をREPROCELL Europe Ltd.、日本市場を株式会社リプロセルが担当し、それぞれの地域でグループ製品及び受託サービスの販売拡大に取り組んでおります。
さらに当連結会計年度では、インドに米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」との合弁会社設立を決定しました。FCCCで採取された質の高いがん及びヒト組織の供給を通じて細胞調達能力を向上させることで、競争力をより一層強化してまいります。
今後は、日米欧の3拠点に加え、インドでも事業を展開することで更なる事業成長を目指すとともに、将来の大きな市場が見込まれる中国への展開も視野に入れながら、事業を拡大してまいります。
(b) グループシナジーの追求と技術開発の加速
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が繰り広げられており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。
当社グループは、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。特に、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規技術の開発を行ってまいります。
さらに、引き続き、京都大学、慶応義塾大学等の日本のトップ大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に導入してまいります。
(c) 再生医療事業の加速
ステミネント社から導入した細胞医薬品ステムカイマルの治験開始に向けた準備を着実に進め、2020年頃の承認申請を目指します。
さらに、当連結会計年度よりiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Qセラ社と開始いたしました。当社とQセラ社の技術を組み合わせることで、安定的に供給可能なiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)を開発してまいります。さらに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と横断性脊髄炎(TM)を対象とした再生医療製品として早期の承認取得を目指してまいります。
また、国内外の未上場のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーを投資対象とする、株式会社新生銀行との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を通じ、世界中の革新的な技術シーズの確保と育成、そして連携を図ります。
(7) 経営者の問題意識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。
(8) 継続企業の前提に関する事項について
iPS細胞及び再生医療製品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。
しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,573百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
当社が実施許諾を受けている特許ライセンス契約
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契約相手 |
契約書名 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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iPSアカデミアジャパン㈱ |
第2次実施権許諾契約 |
2016年10月1日 |
2016年10月1日から本特許の全ての特許権の満了まで |
ヒトiPS細胞由来分化細胞の製造・販売、並びに各種受託サービスを実施するための非独占的通常実施権の許諾に関する契約。 |
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Steminent Biotherapeutics Inc. |
Collaboration and Commerciallization Agreement |
2016年11月11日 |
2016年11月11日から2026年11月10日まで |
再生医療製品「Stemchymal®」を日本において独占的に開発・販売するための権利の許諾に関する契約。 |
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MAGiQ Therapeutics Inc. |
CROSS-LICENSE AGREEMENT |
2018年4月6日 |
2018年4月6日から 契約の終了まで |
iPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の臨床開発・商業化ライセンス及びiGRPの独占的な製造に関する契約 |
(注)上記についてはロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。
研究支援事業およびメディカル事業において積極的な研究開発を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は191百万円と、販売費及び一般管理費全体の約14%と大きな割合を占めています。当社の技術開発については自社開発に固執することなく、むしろ外部との連携及び共同開発を中心に進めています。これまでも、大学や公的研究機関の世界最先端の研究成果を活用することで、世界最先端の製品の開発に成功してきた実績があり、今後ともその方針を継続する予定です。また、今後とも補助金等の公的資金を有効活用することで、研究開発活動を加速しています。当連結会計年度末の当社グループの研究開発従事人員数は17名です。
(1) 研究支援事業
iPS細胞の研究は世界中で精力的に進められており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。当社グループとしても、研究開発活動を最重点領域と位置付け、引き続き注力してまいります。研究開発は当社グループにとって重要なアクティビティと位置付け、グループ会社間の技術シナジーの追求を図りながら、研究開発を継続的に実施してまいります。技術開発については自社開発に加え、東京大学・京都大学をはじめとした日本の大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等の欧米の技術導入を積極的に推進していきます。
(2) メディカル事業
台湾のステミネント社より体性幹細胞由来の再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入し、日本で治験準備を開始しています。日本では、2014年に再生医療等製品に関する法整備が行われており、治験において早期に承認を得ることができる制度が整っています。さらに、ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、その治験データを日本での治験に応用することができます。
当社では、これらのメリットを最大限に活用し、ステムカイマルの早期承認を目指します。
また、米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)と共同で、再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の研究開発を行っております。iGRPは様々な中枢神経系疾患への効果が期待されますが、当社では筋萎縮性側索硬化症(ALS)および横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした再生医療製品として開発を行ってまいります。