第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。

 短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。

 また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現時点で、市場の大きい米国、欧州、日本、また将来大きな成長が見込めるインドにそれぞれ拠点を有しており、事業展開を進めております。

 さらに、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 研究支援事業とメディカル事業では、ビジネスモデル及び法規制が大きく異なるため、それぞれ経営指標を個別に設定しております。

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。このため、研究支援事業に関しては売上高及びセグメント別収益を経営指標としています。

 一方、メディカル事業では、再生医療及び臨床検査を実施しておりますが、今後大きな収益を見込んでいる再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があります。現在、ステムカイマルとiPS神経グリア細胞の2つの再生医療製品の研究開発を進めておりますが、これらの再生医療製品の前臨床及び臨床試験における開発の進捗を経営指標としております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、iPS細胞を使った加齢黄斑変性及びパーキンソン病に関する臨床研究及び治験が行われております。

 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。

 現時点では、研究支援事業の売上が80%以上を占めており、今後とも、短中期的な主力事業としてグローバルに推進してまいります。一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品ステムカイマル及び、横断性脊髄炎及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の中枢神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 

 当社の基本事業戦略を下記にまとめます。

 

(1) 積極的なグローバル化の推進

 当社では、日本に加え、米国、欧州、インドにも拠点を保有しております。いずれの拠点も、販売、製造、研究開発の機能を有しており、各拠点が有機的に連携しながらグループシナジーを追求しています。

 営業では、各拠点がそれぞれの地域の顧客をカバーしており、時差や言語の壁なく営業活動を推進しております。日本市場に加え、バイオ業界における最大の市場である米国、それに続く欧州、さらに世界人口第2位を誇るインドの4拠点をカバーすることで、ターゲット顧客である世界中の多くの大学/公的研究機関及び製薬企業等にアクセスが可能になりました。各地域で製造している製品やサービスを別の地域で販売するクロスセルも積極的に推進しており、引き続き、各地域において営業活動を強化してまいります。

 

(2) 研究支援事業とメディカル事業による継続的成長モデル

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができます。

 現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。

 当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を保有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し短中期の収益の柱として推進しております。

 メディカル事業では、再生医療及び臨床検査を実施しております。再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。

 また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、継続的な成長を目指します。

 

(3) 最先端技術による継続的な技術優位性の確保

 iPS細胞は世界中で研究開発競争が繰り広げられており、飛躍的に技術が進歩してきました。当社は、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。また、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規ビジネスの開発を行ってまいります。引き続き、世界中のトップ大学及び企業等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に開発・導入してまいります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

 当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために対処すべき課題を以下のように考えております。

 

① 全社的課題

1)人材の確保・育成

 当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。

 

2)技術革新への対応

 iPS細胞は世界中で研究競争が行われており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。

 技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広いiPS細胞及び体細胞の技術プラットフォームを保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。

 この他、国内外のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーとの協力関係の構築及び資金提供を目的として株式会社新生銀行と共同でベンチャーキャピタルファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を運営しております。本活動を通じて、世界最先端の再生医療技術に幅広くアクセスし連携を強化してまいります。

 今後とも当社グループは再生医療の実現と競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関や技術シーズを積極的に取り入れ、技術革新への対応として意欲的、多角的に取り組んでまいります。

 

② セグメント別課題

1)研究支援事業

(a) 多様化する顧客ニーズへの対応

 iPS細胞を扱う研究者はこれまで大学・公的研究機関が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業にも拡大しております。また、創薬研究だけでなく再生医療研究も増加しており、顧客の技術ニーズも多様化しております。このため、限られた地域で既製品のみを提供しているだけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。

 当社グループでは、iPS細胞の研究機関及び製薬企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応した製品及びサービスを提供しております。特に、製薬企業やバイオテック企業では、受託サービスのニーズが高く、各地域のラボで顧客とコミュニケーションしながら付加価値の高いサービスを提供しております。

 さらに、研究支援事業の基盤となる各種のヒト細胞及び組織の調達能力の向上にも積極的に取り組んでおります。これにより、アルツハイマー病患者由来iPS細胞やガンなど様々な疾患モデル細胞の提供及びサービスを提供してまいります。具体的には、米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」と連携し、世界人口第2位のインドにおいて細胞を調達することで、様々なヒト細胞の調達能力を強化しております。

 当社グループでは、今後も顧客の近くでニーズに合わせてカスタマイズできる製品やサービスの提供を推進し、競争力を高めてまいります。

 

2)メディカル事業

(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認

 当社グループでは、台湾のステミネント社より再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入しています。ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、投与に伴う有害事象は無く、通常悪化する一途の症状が維持されたことが報告されております。また、アメリカでも治験申請が米国食品医薬品局より承認されています。

 日本では、2018年7月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出した、脊髄小脳変性症を対象とした日本における治験計画届について、所定の審査が終了いたしました。これにより、当社はステムカイマルの日本での第II相臨床試験の実施が可能となり、治験を実施する国内の医療機関と所定の契約締結に向けた準備を進めるとともに、日本の制度を活用した早期の承認取得を目指してまいります。

 

(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現

 現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が言われています。これに対し、当社グループでは独自技術である次世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない高品質なiPS細胞の作製を可能にする技術の開発に成功しています。

 現在、当社と米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)の合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(MQ社)において、iPS細胞を用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の治療法及び再生医療製品の開発を行っております。本研究開発においても、前述の次世代RNAリプログラミング技術を用いることで、がん化のリスクの克服をし、早期の実用化を目指します。

 

(5)株式会社の支配に関する基本方針について

当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者は、安定的な成長を目指し、企業価値を高め、株主の利益の増強に経営資源の集中を図るべきと考えております。

現時点では特別な買収防衛策は導入しておりませんが、今後も引き続き社会情勢等の変化を注視しつつ弾力的な検討を行ってまいります。

 

 

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。また、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。

 当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、本項記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 競合リスク

 iPS細胞の分野は、熾烈な研究競争が行われており、技術革新が速く、新規参入の動きが活発となっているため、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、当社グループは、世界的な大学や公的研究機関と連携し、常に世界最先端の技術開発に先行して取り組んでおります。

 新規参入は大手企業を含めて増加しており、研究開発を進めながら参入を検討している潜在的競合相手も少なくないと考えられます。さらに、後発参入製品は先発製品に比べ機能面やコスト面で少なからず優位性を有している可能性もあり、競争が激化することが想定されます。これら競合相手の中には、生産性や販売力、資金力で当社グループを上回る企業が含まれる可能性もあります。当社グループは今後とも、積極的に研究開発及び営業活動を行っていきますが、競合相手との競争状況によっては、計画どおりの収益を上げることができない可能性もあります。

 

(2) 研究開発活動に由来するリスク

 当分野の競争が激化する中、当社では公的資金の有効活用や産学連携により、日本、米国、欧州、インドの4拠点でこれまで研究開発に重点を置いた活動をしてまいりました。しかしながら、研究開発活動が常に計画どおりに進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 再生医療ビジネスに関するリスク

 現在当社グループでは、体性幹細胞由来の再生医療製品ステムカイマルの治験準備、及び再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞の開発を進めております。

 再生医療製品の治験に関しては、2014年11月25日に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」に準拠し進めてまいりますが、想定外の事案により、治験進捗、承認申請及び審査の過程で遅延が起こるリスクがあります。

 ステムカイマルに関しては、台湾で既に治験(第Ⅰ/Ⅱa 相)が完了しており、その結果が国際的な学術論文で発表されるなど、日本の臨床治験においても技術上のリスクは低いと想定しておりますが、想定外の有害事象の発生及び有効性が証明できないなどの理由で、治験の中止または承認が得られないリスクがあります。さらに、臨床治験の規模が想定より大きくなることによる開発費用の増大のリスクもあります。

 加えて、再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞については、米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)と共に開発を進めてまいりますが、開発が計画通り進む保証はなく、当初の予定どおりに進まない場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 知的財産権に関するリスク

① 特許にかかる事項

 知的財産権に関して、当社グループの特許権が他社により侵害されるリスクがあります。このため、当社グループでは研究開発で得られた成果に関して、必要に応じて迅速に特許出願等を行っております。逆に、当社グループが他社の特許権を侵害するリスクも否定できないため、必要に応じて各種データベースや特許事務所を活用して情報収集を行い、可能な限り特許侵害リスクを軽減すべく対応しております。しかしながら、当社グループの調査範囲の及ばない抵触特許が存在した場合及び秘密裏に当社グループの特許が侵害された場合、当社グループの技術の優位性が損なわれ、多額の損害賠償を請求されるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 職務発明にかかる事項

 当社グループにおける職務発明の取扱に関しては、職務発明規程を作成し、運用しております。しかしながら、将来、発明者の認定及び職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、当社グループの事業に影響を与える可能性があります。

 

(5) 経営上の重要な契約等に関するリスク

 当社の経営上重要と思われる契約は、当社が実施許諾を受けているiPS細胞事業に関する特許ライセンス契約であります。当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、もしくは当社にとって不利な改定が行なわれた場合、または契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(6) 人材の確保に関するリスク

 当社グループの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保及び育成が不可欠といえます。特に、海外では日本に比べ一般的に人材流動性が高く、優秀な人材ほど外部に流出するリスクが高くなります。海外子会社を含め、各社の取締役及び本部長クラスの優秀な人材を対象にインセンティブ制度を導入するなどして長期確保に努めており、さらに優秀な新規人材の採用も積極的に行っております。しかしながら、優秀な人材の確保及び採用が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 為替変動リスク

 当社グループの海外売上比率は約6割に達しており、為替変動が業績及び財政状態に与える影響は少なくありません。主要取引通貨である米ドルと英ポンドに対して当初の見込みより円高に推移した場合、売上が減少し、さらに海外通貨預金及び子会社への貸付金に関わる為替差損の発生による損失の拡大が起こるリスクがあります。一方、円安に推移した場合は、売上の増大及び損失の縮小が見込まれます。

 特に、英国に関してはEUからの離脱が予定されており、今後の政局により英ポンドが大きく変動するリスクがあります。

 

(8) 資金繰り及び資金調達等に関するリスク

 当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。今後、株式市場からの資金調達や、国の公的補助金等の活用など、資金調達手段の多様化により継続的に財務基盤の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) マイナスの繰越利益剰余金の計上

 当社グループは、これまで、研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、2019年3月期には、△7,202百万円の繰越利益剰余金を計上しております。当社グループは、安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、当社グループの事業が計画通りに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画通りに解消できない可能性があります。

 

(10) 税務上の繰越欠損金

 当社には現在のところ税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、事業計画の進展から順調に当社業績が推移するなどして繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、親会社株主に帰属する当期純利益または親会社株主に帰属する当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

(11) レピュテーションに関するリスク

 当社グループは、製品の品質・安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社グループ及び当社グループを取り巻く環境や競合他社及び競業他社を取り巻く環境において何らかのレピュテーション上の問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 自然災害、事故、テロ、戦争等に関するリスク

 当社グループが事業活動を行っている地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、当社グループの拠点の設備等に大きな被害を受け、その全部又は一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 継続企業の前提に関する重要事象等

 iPS細胞及び再生医療製品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております。

 しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は4,112百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,600百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。

 

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、iPS細胞を使った加齢黄斑変性及びパーキンソン病に関する臨床研究及び治験が行われております。

 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。

 

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができる特長があり、現時点では、研究支援事業の売上が80%以上を占めております。当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を保有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し、短中期の収益の柱として推進しております。

 一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品Stemchymal®(以下、ステムカイマル)及び、横断性脊髄炎及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の中枢神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。

 また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 

 セグメントごとの詳細な当連結会計年度の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。

 

 この結果、当連結会計年度の売上高は1,088百万円(前期比 17.5%増)、営業損失は781百万円(前期 1,025百万円の損失)、経常損失は627百万円(前期 935百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は601百万円(前期 2,172百万円の損失)となりました。

 

 なお、当連結会計年度では、再生医療製品であるiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)への開発費の充当を主な目的として、EVO FUNDを割当先とした第14回新株予約権の発行を行い、8月に権利行使が完了し、1,376百万円の資金調達を行いました。

 

 セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。

a.研究支援事業

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等の研究所を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などの各種サービスを提供しております。最先端技術を集約した製品・サービスを上記研究機関に提供することで、最終的には画期的な新薬や治療法の開発に貢献して参ります。

 現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。

 当社グループでは、第3世代RNAリプログラミング技術など、ヒトiPS細胞に関する世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、さらに、がん細胞やヒト組織を医療機関から調達する幅広いネットワークも保有しております。これら技術優位性の高い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を最大限活用することで、上記の「動物実験からヒト細胞実験」へのシフトを先取りした事業を進めております。具体的には、iPS細胞研究用の研究試薬類、患者の組織からiPSを作製する病態モデル細胞の作製、ヒト組織を用いた新薬の薬効薬理評価、ヒト生体試料のバンキングなどがあります。このように、ヒト細胞に関する最先端の製品・サービスを幅広く提供している点が当社の最大の強みになります。

 

 当連結会計年度では新規事業として、2018年10月、遺伝子改変サービスを当社の投資先であるGenAhead Bio社と共同で開始いたしました。同社は、ゲノム編集技術の専門家チームであり、高精度かつ高効率にゲノム編集ができる独自技術「SNIPER」を保有しております。最先端のゲノム編集技術として注目されているCRISPR/Cas9の精度及び効率を飛躍的に向上するための付加技術であり、従来では困難であった難易度の高い遺伝子改変サービスを提供することができます。遺伝子改変細胞は創薬スクリーニングなど製薬企業で幅広いニーズがあり、今後これらのサービスを重点的に展開してまいります。

 また、株式会社ファンケルと共同でヒトiPS細胞由来の感覚神経細胞の開発に成功し、2018年10月より、新規の受託製造サービスとして開始いたしました。

 さらに、2018年4月にBioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.を買収したことで、次世代シーケンシング受託ビジネスを、新規事業領域として追加いたしました。次世代シーケンシングは、遺伝子解析を大量かつ高速に行う新規技術であり、今後、疾患iPS疾患細胞の遺伝子解析などへの応用を進めてまいります。

 

 このように、当連結会計年度は、地域的にも技術的にも積極的に事業を拡大いたしました。地域的には、従来の日本、米国、欧州に加えて、インドを含む4拠点とし、技術的にも、iPS細胞技術、ヒト細胞の調達能力、創薬スクリーニング技術に加え、新たに、遺伝子改変技術、次世代シーケンシング技術を加えました。今後とも、当社グループでは研究支援事業を短中期事業の柱として積極的に推進してまいります。

 

 この結果、売上高は934百万円(前期比7.1%増)、セグメント利益は85百万円(前期173百万円の損失)となりました。

 

b.メディカル事業

 再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んに行われており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。

 特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保ですが、当社では、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。

 当社グループでは、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「第3世代RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。

 メディカル事業では下記の再生医療製品の開発を進めております。

 

(a)体性幹細胞製品 Stemchymal®

 ヒト細胞加工製品 Stemchymal®(以下、ステムカイマル)は台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。

 2018年7月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出した、脊髄小脳変性症を対象とした日本における治験計画届について、所定の審査が終了いたしました。これにより、当社は今後日本においてステムカイマルの第II相臨床試験の実施が可能となり、治験を実施する国内の医療機関と所定の契約締結に向けた準備を進めるとともに、日本の制度を活用した早期の承認取得を目指してまいります。また、2018年12月に厚生労働省による大臣承認を経て、希少疾病用再生医療等製品として指定されました。これにより、今後、開発に係る経費の助成金(最大50%)、優遇税制措置、及び優先審査等の支援措置を受けることができます。

 一方、ステミネント社は、台湾において当該疾患を対象としたステムカイマルの第II相臨床試験を進めております。また、2018年7月に米国においてもステムカイマルの治験申請(IND)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されており、米国でも今後治験が進められます。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルによる同疾患による症状の進行抑制効果が期待されています。

 当社では、病気と闘っている患者様へ少しでも早く新しい治療法が届けられるよう、本プロジェクトを積極的に推進してまいります。

 

(b)iPS神経グリア細胞製品

 iPS細胞から神経グリア細胞を作製し、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品として開発を行っております。本プロジェクトを加速させるため、2018年4月に、米国Q Therapeutics Inc.(キューセラピューティクス、以下、Qセラ社)との間で合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」を設立いたしました。Qセラ社は中枢神経系の再生医療に特化したベンチャー企業であり、Qセラの創業者である、Mahendra Rao博士はアメリカ国立衛生研究所(NIH)再生医療センターの初代ディレクターも務めた、神経幹細胞の世界的に著名な研究者です。合弁会社では、当社のiPS細胞技術とQセラ社の中枢神経系の技術を組み合わせることで、iPS細胞由来神経グリア細胞の開発を加速してまいります。

 さらに、本プロジェクトの研究開発を加速させるため、2018年12月、湘南ヘルスイノベーションパークに入居し、湘南研究所を開設いたしました。

 

 また、メディカル事業では、これらの再生医療に加え、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。当社の主力検査項目である臓器移植後の抗HLA抗体検査が2018年4月1日より保険収載となりました。当社の登録衛生検査所は、日本組織適合性学会により「認定組織適合性検査登録施設」へ認定されており、医療機関が当該臨床検査の外部委託を検討する際の、重要な要素をクリアしております。これにより、当連結会計年度は、検査依頼数、売上とも大幅に増加いたしました。

 

 この結果、売上高は154百万円(前期比187.7%増)、セグメント損失は23百万円(前期7百万円の損失)となりました。

 

 なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が689百万円あります。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて1,467百万円減少し、4,112百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は554百万円(前期は636百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失627百万円が発生した一方、減価償却費40百万円、株式報酬費用37百万円等の発生によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は2,308百万円(前期は228百万円の使用)となりました。これは主に、有価証券及び投資有価証券の取得による支出2,067百万円が発生したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は1,381百万円(前期は1,028百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,376百万円によるものであります。

 

生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

研究支援事業(千円)

511,658

99.6

合計(千円)

511,658

99.6

(注)1.金額は製造原価によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.メディカル事業に生産実績はありません。

 

(2) 受注実績

 当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

研究支援事業(千円)

934,211

107.1

メディカル事業(千円)

154,316

287.7

合計(千円)

1,088,527

117.5

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態の分析

(資産の部)

 当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて222百万円増加し、6,202百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加539百万円、有価証券の減少399百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて669百万円増加し、1,287百万円となりました。主な内訳は、のれんの増加107百万円、投資有価証券の増加394百万円であります。

 セグメント別に示すと、研究支援事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて20百万円増加し、610百万円となりました。また、メディカル事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて16百万円増加し、159百万円となりました。なお、各報告セグメントに配分していない全社資産については、前連結会計年度末に比べて854百万円増加し、6,719百万円となりました。

 

(負債の部)

 当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて69百万円増加し、330百万円となりました。主な内訳は、買掛金の増加22百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて著増減なく、88百万円となりました。

 

(純資産の部)

 当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて822百万円増加し、7,071百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加708百万円、資本剰余金の増加708百万円、利益剰余金の減少601百万円であります。

 

(2) 経営成績の分析

「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」をご参照ください。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2019年3月期における研究開発費の総額は273百万円と、販売費及び一般管理費の約21%を占めています。今後も研究開発は積極的に推進する予定であり、継続的な研究開発費の支出を見込んでいます。

 

(5) 資金の財源及び資金の流動性について

 当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当連結会計年度末における当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は4,112百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,600百万円あり、十分な流動性を確保しています。

 

(6) 経営戦略の現状と見通し

 2020年3月期の業績につきましては、売上高1,434百万円(当期比31.8%増)、営業損失756百万円(当期は781百万円の損失)、経常損失687百万円(当期は627百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失687百万円(当期は601百万円の損失)を見込んでおります。

 当連結会計年度において売上高は1,088百万円となり、業績予想として示しておりました1,167百万円にほぼ到達いたしました。一方、前回の中期経営計画作成時に想定していたポンドの為替レート(1英ポンド=140円)が予想より円高傾向にあり、来期の業績については、売上高1,434百万円に据え置くことといたしました。

 また、費用面では、ステムカイマルの治験準備費用や、iPS細胞を活用した再生医療製品の研究開発費の計上を想定しております。

 連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=110円、1英ポンド=140円、1印ルピー=1.65円を前提としております。

 

(7) 経営者の問題意識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。

 

(8) 継続企業の前提に関する事項について

 iPS細胞及び再生医療製品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております。

 しかしながら、当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は4,112百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,600百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。

当社が実施許諾を受けている特許ライセンス契約

契約相手

契約書名

契約締結日

契約期間

契約内容

iPSアカデミアジャパン㈱

第2次実施権許諾契約

2016年10月1日

2016年10月1日から本特許の全ての特許権の満了まで

ヒトiPS細胞由来分化細胞の製造・販売、並びに各種受託サービスを実施するための非独占的通常実施権の許諾に関する契約。

Steminent Biotherapeutics Inc.

Collaboration and Commerciallization Agreement

2016年11月11日

2016年11月11日から2026年11月10日まで

再生医療製品「Stemchymal®」を日本において独占的に開発・販売するための権利の許諾に関する契約。

MAGiQ Therapeutics Inc.

CROSS-LICENSE

AGREEMENT

2018年4月6日

2018年4月6日から

本特許の全ての特許権の満了まで

iPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の臨床開発・商業化ライセンス及びiGRPの独占的な製造に関する契約

(注)上記についてはロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。

 

5【研究開発活動】

 研究支援事業及びメディカル事業において積極的な研究開発を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額は273百万円と、販売費及び一般管理費全体の約21%と大きな割合を占めています。当社の技術開発については自社開発に固執することなく、むしろ外部との連携及び共同開発を中心に進めています。これまでも、大学や公的研究機関の世界最先端の研究成果を活用することで、世界最先端の製品の開発に成功してきた実績があり、今後ともその方針を継続する予定です。また、今後とも補助金等の公的資金を有効活用することで、研究開発活動を加速しています。当連結会計年度末の当社グループの研究開発従事人員数は16名です。

 

(1) 研究支援事業

 iPS細胞の研究は世界中で精力的に進められており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。当社グループとしても、研究開発活動を最重点領域と位置付け、引き続き注力してまいります。研究開発は当社グループにとって重要なアクティビティと位置付け、グループ会社間の技術シナジーの追求を図りながら、研究開発を継続的に実施してまいります。技術開発については自社開発に加え、東京大学・京都大学をはじめとした日本の大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等の欧米の技術導入を積極的に推進していきます。

 研究支援事業に係る研究開発費は180百万円であります。

 

(2) メディカル事業

 台湾のステミネント社より体性幹細胞由来の再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入し、日本で治験準備を開始しています。日本では、2014年に再生医療等製品に関する法整備が行われており、治験において早期に承認を得ることができる制度が整っています。さらに、ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、その治験データを日本での治験に応用することができます。

 当社では、これらのメリットを最大限に活用し、ステムカイマルの早期承認を目指します。

また、米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)と共同で、再生医療向けiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の研究開発を行っております。iGRPは様々な中枢神経系疾患への効果が期待されますが、当社では筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした再生医療製品として開発を行ってまいります。

 メディカル事業にかかる研究開発費は92百万円であります。