第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第3四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象

 海外子会社を買収した際に生じるのれん及び無形資産の償却や、iPS細胞及び細胞医薬品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しておりますが、当該状況を解消又は改善するための対応策を講じることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないものと判断しております。当該状況を解消又は改善するための対応策は、2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (6)に記載しております。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、2007年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究が多く行われるようになりました。日本では2017年8月に、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、2018年5月にはiPS細胞を使った心臓病の臨床研究計画が厚生労働省により条件付きで承認されました。このように、今後ますますiPS細胞の活用が広がっていくと期待されます。

 さらに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が2014年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 

 このような事業環境の下、当社グループでは短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。

 

 この結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高806百万円(前年同期比 17.3%増)、営業損失587百万円(前年同期 772百万円の損失)、経常損失456百万円(前年同期 639百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失430百万円(前年同期 652百万円の損失)となりました。

 

 なお、当第3四半期連結累計期間では、再生医療製品であるiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)への開発費の充当を主な目的として、EVO FUNDを割当先とした第14回新株予約権の発行を行い、8月に権利行使が完了し、1,383百万円の資金調達を行いました。

 

セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

a. 研究支援事業

 現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の良い新薬の開発が期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究に使用することで、アルツハイマー病の病態解明および新薬開発が加速されると期待されています。

 当社グループでは、ヒトiPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しております。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えております。このように、ヒトiPS細胞および

ヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。

 さらに、研究支援事業の新規事業として、2018年10月、遺伝子改変技術を用いた疾患モデル細胞の作製サービスを当社の投資先であるGenAhead Bio社と共同で開始いたしました。同社は、ゲノム編集技術の専門家チームであり、高精度かつ高効率にゲノム編集ができる独自技術「SNIPER」を保有しております。ゲノム編集技術としては、CRISPR/Cas9が最先端のゲノム編集技術として注目を集めておりますが、SNIPERはCRISPR/Cas9をさらに改良した次世代技術になります。また、株式会社ファンケルと共同でヒトiPS細胞由来の感覚神経細胞の開発に成功し、2018年10月より、受託製造サービスを開始いたしました。

 

 また、2018年4月に買収したBioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.が行っている次世代シーケンシング受託ビジネスに関しても、当社グループの新規事業領域として広げてまいります。次世代シーケンシングは、DNA解析を大量かつ高速に行う新規技術であり、上記の疾患モデル細胞の遺伝子解析などへの応用を進めてまいります。

 

 このように、地域的にも技術的にも積極的に事業を拡大しております。地域的には、従来の日本、米国、欧州に加えて、インドを含む4拠点とし、技術的にも、iPS細胞技術、ヒト細胞の調達能力、創薬スクリーニング技術に加え、新たに、遺伝子改変技術、次世代シーケンシング技術を導入しております。今後とも、当社グループでは研究支援事業を短中期事業の柱として積極的に推進してまいります。

 

 この結果、売上高は691百万円(前年同四半期比6.8%増)、セグメント利益は61百万円(前年同四半期121百万円の損失)となりました。

 

b.メディカル事業

 再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んに行われており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。そして、なにより画期的な再生医療製品の開発による医療の発展を、世界中の患者が待ち望んでいます。

 特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保であり、遺伝子変異および外来因子の残存によるがん化のリスク等が挙げられています。

 当社グループでは、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。

メディカル事業では下記の再生医療製品の開発を進めております。

 

① 体性幹細胞製品 Stemchymal®

 ヒト細胞加工製品 Stemchymal®(以下、ステムカイマル)は台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。

 2018年7月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出した、脊髄小脳変性症を対象とした日本における治験計画届について、所定の審査が終了いたしました。これにより、当社は今後日本においてステムカイマルの第II相臨床試験の実施が可能となり、今後、治験を実施する国内の医療機関と所定の契約締結に向けた準備を進めるとともに、日本の制度を活用した早期の承認取得を目指します。2018年12月に厚生労働省による大臣承認を経て、希少疾病用再生医療等製品として指定されました。これにより、今後、開発に係る経費の助成金(最大50%)、優遇税制措置、および優先審査等の支援措置を受けることができます。

 一方、ステミネント社は、台湾において当該疾患を対象としたステムカイマルの第II相臨床試験を進めております。また、2018年7月に米国においてもステムカイマルの治験許可(IND)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されており、米国でも今後治験が進められます。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルは、同疾患による症状の進行抑制効果が期待されています。

当社では、病気と闘っている患者様へ少しでも早く新しい治療法が届けられるよう、本プロジェクトを積極的に推進してまいります。

 

 

② iPS細胞由来神経グリア細胞製品

 RNAリプログラミング技術により作成したiPS細胞から神経グリア細胞を作製し、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品として開発を行っております。当初は、横断性脊髄炎および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象疾患としてスタートしておりますが、将来的には、脊髄損傷、多発性硬化症、パーキンソン病など、他の中枢神経系疾患への適用拡大を目指します。

 本プロジェクトを加速させるため、2018年4月に、米国Q Therapeutics Inc.(キューセラピューティクス、以下、Qセラ社)との間で合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」を設立いたしました。Qセラ社は中枢神経系の再生医療に特化したベンチャー企業であり、当社のiPS細胞技術を組み合わせることで、iPS細胞由来神経グリア細胞の開発を加速いたします。

 また、2018年7月に、当社の連結子会社であるREPROCELL Europe Ltd.,で、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省下のTechnology Strategy Boardによる補助金Medicines manufacturing round 2: challenge fundが決定しました。今後、本補助金を活用し、安全性の高い臨床用iPS細胞の製造技術の開発をさらに進めてまいります。

 今後とも、当社グループでは再生医療を中長期事業の柱として積極的に推進してまいります。

 

 また、メディカル事業では、これらの再生医療に加え、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。2018年4月1日より当社の主力検査項目である抗HLA抗体(スクリーニング検査)及び抗HLA抗体(抗体特異性同定検査)の検査が全ての臓器移植後において保険収載となりました。当社の登録衛生検査所は、日本組織適合性学会により「認定組織適合性検査登録施設」へ認定されており、医療機関が当該臨床検査の外部委託を検討する際の、重要な要素をクリアしております。新たに保険収載されたことで、今後、検査依頼数が増加することを見込んでおります。

 

 この結果、売上高は114百万円(前年同四半期比190.1%増)、セグメント損失は26百万円(前年同四半期5百万円の損失)となりました。

 

なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が491百万円あります。

 

また、当社グループの財政状態は次のとおりであります。

(資産の部)

 当第3四半期連結会計期間末における流動資産は前連結会計年度末に比べて79百万円減少し、5,900百万円となりました。これは主に、現金及び預金が1,651百万円増加したこと、有価証券が1,799百万円減少したことなどによります。固定資産は前連結会計年度末に比べて1,087百万円増加し、1,705百万円となりました。これは主に、のれんが108百万円、投資有価証券が801百万円増加したことなどによります。

 

(負債の部)

 当第3四半期連結会計期間末における流動負債は前連結会計年度末に比べて27百万円増加し、288百万円となりました。これは主に、買掛金が20百万円増加したことなどによります。固定負債は前連結会計年度末に比べて著増減なく、88百万円となりました。

 

(純資産の部)

 当第3四半期連結会計期間末における純資産は前連結会計年度末に比べて980百万円増加し、7,228百万円となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ708百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上430百万円があったことなどによります。

 

(2) 経営方針・経営戦略等

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、208百万円であります。

 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(5) 従業員数

 当第3四半期連結累計期間において、Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.を子会社化したことに伴い、研究支援事業の従業員数が33名増加しました。

 

(6) 重要事象及び当該事象を解消または改善するための対応策

 当社グループでは、世界的な販売網の確立に向けた先行投資をし、iPS細胞及び再生医療等の研究開発費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しております。

 しかしながら、当社グループの当第3四半期連結会計期間末の現金及び預金残高は5,225百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が200百万円あり、財務基盤については安定しており、当該状況の解消を図るべく、グローバル展開に向けた販売基盤の整備を行っています。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指して当該状況の解消を図っていきます。

 

 

3【経営上の重要な契約等】

当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。