第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第3四半期連結累計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。

 また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象

 iPS細胞及び細胞医薬品等の研究開発及び治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しておりますが、当該状況を解消又は改善するための対応策を講じることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないものと判断しております。当該状況を解消又は改善するための対応策は、2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5)に記載しております。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当社の中核事業領域であるiPS細胞は、山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の発明以降、世界中で研究が盛んに行われております。

 最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究開発が多く行われるようになりました。2017年には、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、さらに、再生医療に関しても、iPS細胞を使った加齢黄斑変性及びパーキンソン病に関する臨床研究及び治験が行われております。

 当社では、前者のようにiPS細胞を病態解明や創薬研究に使用する事業を「研究支援事業」、後者の再生医療を「メディカル事業」と位置づけ、2つのセグメントに分け、推進しております。

 

 研究支援事業では、大学/公的研究機関および製薬企業等を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品およびiPS細胞作製受託などのサービスを提供しております。研究用途であるため、医薬品のような製造販売承認は必要とされず、新しい技術を比較的短期間で事業化し収益を上げることができる特長があり、現時点では、研究支援事業の売上が80%以上を占めております。当社では、iPS細胞を中心とした幅広い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を保有しており、競争優位性の高い製品やサービスを世界中で展開し、短中期の収益の柱として推進しております。

 一方、メディカル事業では、現在、脊髄小脳変性症を対象とした再生医療製品Stemchymal®(以下、ステムカイマル)および、横断性脊髄炎および筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の中枢神経系疾患を対象としたiPS神経グリア細胞の研究開発を進めております。これら再生医療製品は中長期的な成長事業として、積極的な投資を行い、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 再生医療に関しては、上市までに臨床試験を行い製造販売承認を取得する必要があるため、研究支援事業より事業化に時間が必要とされますが、日本では2014年の法改正により、世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)」では、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることが可能になりました。これにより、患者様に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できます。

 また、経済産業省の報告書(「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 「根本治療の実現」に向けた適切な支援のあり方の調査」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約5~10兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。

 このように、再生医療を中長期的な成長事業と位置づけ、早期の製造販売承認の取得を目指します。

 

 短中期的な収益の柱である「研究支援事業」と、中長期的な成長事業である「メディカル事業」の両方を組み合わせることで、短期→中期→長期と、継続的な成長を目指します。

 

 この結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高891百万円(前年同期比 10.6%増)、営業損失671百万円(前年同期 587百万円の損失)、経常損失656百万円(前年同期 456百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失663百万円(前年同期 430百万円の損失)となりました。

 

 

セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

a. 研究支援事業

 研究支援事業では、大学/公的研究機関及び製薬企業等の研究所を顧客として、研究試薬や細胞などの研究用製品及びiPS細胞作製受託などの各種サービスを提供しております。最先端技術を集約した製品・サービスを上記研究機関に提供することで、最終的には画期的な新薬や治療法の開発に貢献して参ります。

 現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の高い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明および新薬開発が加速されると期待されています。

 当社グループでは、第3世代RNAリプログラミング技術など、ヒトiPS細胞に関する世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、さらに、がん細胞やヒト組織を医療機関から調達する幅広いネットワークも保有しております。これら技術優位性の高い「ヒト細胞ビジネスプラットフォーム」を最大限活用することで、上記の「動物実験からヒト細胞実験」へのシフトを先取りした事業を進めております。具体的には、iPS細胞研究用の研究試薬類、患者の組織からiPSを作製する病態モデル細胞の作製、ヒト組織を用いた新薬の薬効薬理評価、ヒト生体試料のバンキングなどがあります。このように、ヒト細胞に関する最先端の製品・サービスを幅広く提供している点が当社の最大の強みになります。

 

 第3四半期連結累計期間において、当社の連結子会社であるREPROCELL USAに対して、米国メリーランド州政府の外郭団体からの研究開発補助金の交付が決定しました。今後、本補助金を活用し、米国のラボでも、患者由来の神経疾患iPS細胞の開発を実施し、iPS細胞ビジネスを加速してまいります。

 

 この結果、売上高は827百万円(前年同四半期比19.6%増)、セグメント損失は76百万円(前年同四半期61百万円の利益)となりました。

 

b.メディカル事業

 再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んに行われており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。

 特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保ですが、当社では、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。

 メディカル事業では下記の再生医療製品の開発を進めております。

 

(a) 体性幹細胞製品 Stemchymal®

 ヒト細胞加工製品 Stemchymal®(以下、ステムカイマル)は台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した再生医療製品であり、当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。

 2018年7月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出した、脊髄小脳変性症を対象とした日本における治験計画届について、所定の審査が終了いたしました。これにより、当社は今後日本においてステムカイマルの第II相臨床試験の実施が可能となりました。また、2018年12月に厚生労働省による大臣承認を経て、希少疾病用再生医療等製品として指定されており、開発に係る経費の助成金(最大50%)、優遇税制措置、および優先審査等の支援措置を受けることができるようになりました。第3四半期連結累計期間において、国立学校法人名古屋大学、及び国立精神・神経医療研究センター病院と治験実施契約を締結するなど、治験開始に向けた準備を順調に進めております。今後、早期に治験を開始し、治験実施医療機関についても順次増やしていく予定です。

 一方、ステミネント社は、台湾において当該疾患を対象としたステムカイマルの第II相臨床試験を進めております。また、2018年7月に米国においてもステムカイマルの治験申請(IND)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されており、米国でも今後治験が進められます。

 脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により、徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の希少疾患です。ステムカイマルによる同疾患による症状の進行抑制効果が期待されています。

 当社では、病気と闘っている患者様へ少しでも早く新しい治療法が届けられるよう、本プロジェクトを積極的に推進してまいります。

 

(b) iPS神経グリア細胞製品

 iPS細胞から神経グリア細胞を作製し、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品として開発を行っております。本プロジェクトを加速させるため、2018年4月に、米国Q Therapeutics Inc.(キューセラピューティクス、以下、Qセラ社)との間で合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」を設立いたしました。Qセラ社は中枢神経系の再生医療に特化したベンチャー企業であり、Qセラ社の創業者である、Mahendra Rao博士はアメリカ国立衛生研究所(NIH)再生医療センターの初代ディレクターも務めた、神経幹細胞の世界的に著名な研究者です。合弁会社では、当社のiPS細胞技術とQセラ社の中枢神経系の技術を組み合わせることで、iPS細胞神経グリア細胞の開発を加速してまいります。

 本プロジェクトの研究開発を加速させるため、2018年12月、湘南ヘルスイノベーションパーク内に、湘南研究所を開設し、さらに2019年5月には、神奈川県が川崎市殿町地区に設置したライフイノベーションセンター(LIC)内に再生医療用の細胞加工を行う「殿町・リプロセル再生医療センター」を開設いたしました。今後、これらの新たな施設を利用し、iPS細胞神経グリア細胞の非臨床試験及び治験用製品の製造を進めてまいります。

 

 また、メディカル事業では、これらの再生医療に加え、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。当社の主力検査項目である臓器移植後の抗HLA抗体検査が2018年4月1日より保険収載となりました。当社の登録衛生検査所は、日本組織適合性学会により「認定組織適合性検査登録施設」へ認定されており、医療機関が当該臨床検査の外部委託を検討する際の、重要な要素をクリアしております。

 

 この結果、売上高は64百万円(前年同四半期比43.9%減)、セグメント損失は118百万円(前年同四半期26百万円の損失)となりました。

 

なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が461百万円あります。

 

また、当社グループの財政状態は次のとおりであります。

(資産の部)

 当第3四半期連結会計期間末における流動資産は前連結会計年度末に比べて271百万円減少し、5,931百万円となりました。これは主に、現金及び預金が921百万円減少した一方で、有価証券が600百万円増加したことなどによります。固定資産は前連結会計年度末に比べて335百万円減少し、952百万円となりました。これは主に、投資有価証券が373百万円減少したことなどによります。

 

(負債の部)

 当第3四半期連結会計期間末における流動負債は前連結会計年度末に比べて14百万円増加し、344百万円となりました。これは主に、未払金が71百万円増加したことなどによります。固定負債は前連結会計年度末に比べて著増減なく、88百万円となりました。

 

(純資産の部)

 当第3四半期連結会計期間末における純資産は前連結会計年度末に比べて620百万円減少し、6,450百万円となりました。これは主に、資本金が48百万円、資本剰余金が47百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上663百万円があったことなどによります。

 

(2) 経営方針・経営戦略等

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の金額は、323百万円であります。

 なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

 

(5) 重要事象及び当該事象を解消または改善するための対応策

 iPS細胞及び再生医療製品等の研究開発および治験費用が収益に先行して発生する等の理由から、継続的に営業損失が発生しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております。

 しかしながら、当社グループの当第3四半期連結会計期間の現金及び預金残高は3,191百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が2,200百万円あり、財務基盤については安定しております。当該状況の解消を図るべく、グローバルな販売基盤を活用した販売促進を積極的に行っております。グループ経営体制の運営効率化のため、投資及びランニング費用を最小限に抑えつつ、地域特性に合わせた営業・マーケティング展開、営業面ならびに技術面での各社間の連携促進を進め、早期の黒字化を目指しております

 

 

3【経営上の重要な契約等】

当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。