第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

《経営理念》信頼と限りなき挑戦

 2018年に創業100周年を迎え、創業者である浅野総一郎の理念を踏まえ、当社の、現代の存在意義と将来に向けた

夢のある発展を追い求めるため、2013年の持株会社体制への移行を機に経営理念を掲げました。

 当社グループは、社会と人々に貢献することが使命と考えます。そのためには「継続ある事業基盤の確立」と

「不朽なる技術の進展」は不可欠であります。ステークホルダーからの信頼確保を第一に、研究開発体制の整備、M&Aや海外進出を含む新規事業への積極的な展開を図りながら、新製品の開発と新規事業の開拓を行ってまいります。

 社員一同、世界に信頼される「カーリットグループ」となるよう、飽くなき挑戦を日々積み重ねてまいります。

 

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、2022年度を初年度とした中期経営計画「Challenge2024」を策定いたしました。経営方針として「事業ポートフォリオの最適化により企業価値の向上を目指す」を掲げ、「成長事業の加速化」「研究開発の拡充」「既存事業の収益性改善」「ESG経営の高度化」「事業インフラの再構築」という5つの戦略を推進しています。

 

 「成長事業の加速化」および「研究開発の拡充」では、今後も活況が続くと予想できる半導体・電子機器・5G関連材料の需要と、EV化を起点に市場の拡大が見込める自動車関連需要の2つに焦点を当て、生産設備の新設や増強、国内外マーケットに向けた販売促進、当社コア技術の発展・応用の模索を進めてまいります。

 「既存事業の収益性改善」では、省エネ・省人化設備への更新や、事業ポートフォリオに基づいたリソースの適切な配分を進め、当社の利益を生み出す構造に改善してまいります。

 「ESG経営の高度化」および「事業インフラの再構築」では、気候変動対策、カーボンニュートラルへの挑戦、ステークホルダーとのコミュニケーション、財務戦略の明確化、DX推進といった具体的な施策を進めてまいります。

 これら5つの戦略を実行し、当社グループの社会貢献およびコーポレート・ガバナンスのさらなる充実を進めることで、「利益ある成長」と「ESG」を具現化し、社会に信頼される企業グループを目指してまいります。

 

 これらに加えて、経営環境の変化に柔軟に対応することで中期経営計画「Challenge2024」の達成をより確実とすることを目的に、ローリング方式にて中期経営計画の見直しを行い2023年5月に「ローリングプラン2023」を、2024年

3月に「グローアッププラン2024」を策定いたしました。資本コストや株価を意識した経営を推進し、PBRを指標とした企業価値の向上を目指してまいります。

 

 2024年の世界経済は、中国の景気減速と欧米の高金利の影響により年央にかけて減速感を強めるものの、半導体

サイクルの持ち直しにより新興工業国各国を主体に回復へ向かう見通しです。また、2025年に向け欧米景気は継続的な利下げを背景に次第に持ち直すほか、アジア地域も先進国向け外需に支えられて回復する見通しであり、世界経済は緩やかに回復すると想定しています。

 2024年の国内経済は、高水準の企業収益が賃金・設備投資に回ることで経済活動は回復基調を維持するも、実質

雇用者報酬の伸び悩みやサービス消費・インバウンド需要回復の一服等で回復ペースは緩やかになると想定しています。2025年に向けては、個人消費が力強さを欠くもとで、成長率は鈍化する見通しです。

 

 これらの社会背景、経済環境を踏まえ2025年3月期の連結業績予想を以下のとおりとし、2024年5月15日付の「2024年3月期決算短信」にて開示いたしました。

 

 

(%表示は、通期は対前期、四半期は対前年同四半期増減率)

 

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

1株当たり

当期純利益

 

百万円

百万円

百万円

百万円

円 銭

第2四半期(累計)

18,500

4.7

1,600

15.6

1,700

8.7

1,200

2.3

50.75

通期

38,000

3.9

3,800

13.4

4,000

11.1

2,800

7.7

118.42

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 『カーリットグループは《信頼と限りなき挑戦》という経営理念の下、モノづくりやサービスの提供を通じて社会課題の解決に貢献し、「持続可能な社会の実現」を目指します』というサステナビリティ基本方針を掲げて諸活動に取り組んでいます。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは取締役会の監督のもと、代表取締役社長を委員長、取締役・執行役員の全員と社外監査役を委員とするサステナビリティ委員会を設置し活動を推進しています。

 本委員会において、気候変動対策を始め、サステナビリティに関する方針・戦略・計画・施策の検討・立案、グループ各社の課題の抽出と強化・改善に向けた方策の明確化等の審議を行っています。審議された内容は適宜グループ経営戦略会議・経営会議・取締役会に報告され、取締役会においてサステナビリティ課題への積極的・能動的な議論を推進しています。

 また、サステナビリティ委員会の下にCSR推進責任者会議・CSR推進担当者会議を設置し、当社グループ全体でCSRの推進を図っています。

 

0102010_001.png

(2)戦略

 当社グループのサステナビリティ基本方針および、TCFD提言にのっとり「4℃シナリオ」と「2℃シナリオ」に

ついてリスク・機会の側面から分析しています。各シナリオにおける当社グループへの影響と主要インパクトに

ついては下記のとおりです。今後も当社グループを取り巻く環境変化に合わせ更新してまいります。

 

 

気候変動に関わる変化

主要インパクト

当社グループへの

主な影響

想定される影響

経済的影響

4℃

リスク

物理

リスク

(注)1.

慢性リスク

(注)2.

降水・気象パターンの

変化

気温上昇、

集中豪雨の増加、

水不足

生産効率の低下、

水害対策費用の上昇、

働き方の再検討

製造コストの増

固定費の増

就業環境の整備

水力発電所の稼働低下

エネルギー費の増

急性リスク

(注)3.

ライフスタイルの変化

感染症リスクの増加

従業員の健康配慮

医療費サポートの

拡大

機会

市場・製品と

サービス

気温上昇によるライフ

スタイルの変化

気候変動に適応する

製品・サービスの

需要増加

車両水没時脱出機能

付き発炎筒の

生産量増加

化薬分野の売上拡大

飲料の生産量増加

ボトリング事業の

売上拡大

2℃

リスク

移行

リスク(注)4.

法・規制に関する

リスク

カーボンプライシングの導入

炭素税の発生

環境対応設備の

導入促進

設備投資の増

テクノロジーリスク

CO2排出規制の強化

省エネ対応、

生産効率向上への対応

高効率設備の導入促進

設備投資の増

市場リスク

環境配慮型エネルギー

利用の拡大

再生可能エネルギーの

導入

太陽光パネル設置、

非化石証書電力の

導入促進

エネルギー費の増

レピュテーション

リスク

投資家評価の変化

気候変動への対応状況の適切な情報開示要請

投資判断基準の厳格化

資金調達の困窮

取引先要求の変化

気候変動への対応状況の適切な情報開示要請

取引判断基準の厳格化

調達先、販売先の

縮小

機会

市場・製品と

サービス

環境意識向上による

ライフスタイルの変化

気候変動の緩和に貢献

する、環境に配慮した

製品・サービスの需要

増加

回生エネルギー用途の

電解液の需要増加

電子材料分野の

売上拡大

電気自動車の普及、

蓄電池需要の増加

危険性・電池評価分野の売上拡大

水素循環社会の実現

電解装置等の研究開発促進と上市による

売上拡大

2℃・4℃

共通

機会

資源効率

省エネルギー環境の

普及

省エネルギー設備への

切り替え促進、

再生可能エネルギーの

調達拡大

エネルギー効率の高い

生産体制の確立、

水力発電所の活用継続、

太陽光発電の拡大

エネルギー費の削減

 (注)1. 物理リスク=気候変動によってもたらされる災害などの被害

       2. 慢性リスク=降水パターンの長期的な変化や気象パターンの変動、平均気温や海面の上昇によって受ける影響

       3. 急性リスク=台風や洪水、高潮などの異常気象の激甚化によって受ける影響

       4. 移行リスク=気候変動緩和を目的とした脱炭素社会への移行に向けて発生するリスク

 

 これらの気候変動は当社グループの事業へのリスクである一方で、製品・サービスの提供価値および企業価値を高める機会につながると認識しています。今後も脱炭素化に向けた当社製品・サービスの提供、新規事業の創出を促進します。

 

 また当社グループは積み重ねた100年の経験と知識を活かしながらも、過去にはとらわれない新たな教育や制度の拡充と職場環境の整備に挑戦し、「人への投資」を一層進めています。当社グループの多様な人財が皆様から信頼され「新たな100年へ」積極果敢に挑戦し続けることのできるよう育成し続けてまいります。

現中期経営計画「Challenge2024」では「従業員一人ひとりにとって、働きがいのある職場づくり」に注力しており、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針および社内環境に関する方針は以下のとおりです。

 

①女性活躍の推進

 当社グループでは男女区別なく多様な人財が活躍することが会社の成長に繋がると考え、積極的な女性採用や女性中核人財育成のための研修実施、女性管理職の登用を進めています。

 

②ダイバーシティの状況

 外国人採用や中途採用も継続的に進めており、2023年度までに外国人累計6名の新卒を採用しています。また管理職ポストにおける中途採用者割合は2023年度で27.6%となっています。今後も外国人採用や中途採用を進め従業員の多様性確保の諸施策に取り組んでまいります。

 

③人的資本の拡充

 グループ横断的な教育制度を充実させることで、当社グループの未来を担う人財の育成に取り組んでいます。職位別研修を始め、財務・語学、自己啓発として通信教育やマネジメントスクール通学の支援を行っており、将来の経営者人財を含む中長期的な人財戦略を支える諸制度を拡充してまいりました。2023年度の当社グループ人財一人当たりの研修費用額は2020年度対比150%となっています。

 

 

④健康経営の推進

 当社グループはマテリアリティの最上位に「安心・安全で活き活きとした職場環境づくり」を掲げており、ストレスチェックの実施、産業医による定期的な面談機会を設けるなど、従業員の健康維持・増進をサポートする取り組みを推進しています。当社グループは経済産業省が進める優良な健康経営を実践している企業を認定する制度「健康経営優良法人2024」を昨年度に引き続き取得し、従業員の健康増進を図る諸施策を実施したことによって業種平均を上回る評価を受けました。今後も健康経営を強化・推進することで企業価値のさらなる向上を目指します。

 

(3)リスク管理

 当社グループは自然災害・感染症の発生等により経済環境に大きな影響を及ぼす可能性があり、また生産設備や人的資源への損害の発生、顧客の需要動向に大きな変化が起こる可能性があります。これらが当社の業績および財務状況に大きな影響を及ぼす重要なリスク要因の一つであると認識しています。

 経済環境への大きな影響は経営企画部、人的被害の大きな影響は人事部と総務部、生産活動や品質はカーボンニュートラル推進・生産品質統括部が担当し、それらの情報をステークホルダーに適宜・適切に開示する役割を広報・サステナビリティ推進室が担い重要なリスクの管理をより一層強化しています。

 また、代表取締役社長を委員長とするグループリスクマネジメント委員会を設置し、気候変動を含む総合的なリスク管理体制を構築し、グループ各社からのリスク情報がタイムリーに経営陣に集約・報告され、グループ全体への影響を検証し、速やかな経営判断による対策の実行など、リスクを最少化するための管理を強化しています。

 また、当社グループはサプライチェーン全体でサステナビリティに取り組むことが重要であると認識し、モノづくりやサービスの提供における範囲に加え、調達、輸送過程でも「カーリットグループサステナブル調達ガイドライン」によって、社内外関係者への周知・徹底を図ることで社会と環境に配慮した活動を促進しています。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、特に水資源等豊かな自然の恵みの上に成り立っていることから、気候変動は解決すべき重要な社会課題の一つと認識しています。

 2050年までにカーボンニュートラルの実現に向け、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの活用などを促進し、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでおり、エネルギー使用量、CO排出量データに加え、水セキュリティに関する情報などの開示範囲の拡大に努めています。

 

①サプライチェーン排出量

 当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を測定・管理するための指標として、サプライチェーンCO排出量 (Scope1・2・3)を下記のとおり算定しました。排出量実績の可視化、定期的な管理体制を構築することで、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでまいります。(下表算定値は2022年度実績)

 

0102010_002.png

 

②サプライチェーン排出量削減目標

 Scope1・2は、そのマイルストーンとして2030年までに2013年度対比で46%削減することを目標として掲げています。目標の達成に向け、省エネルギーの促進、再生可能エネルギーの活用促進、関連するエネルギー使用量の情報開示範囲の拡大に取り組んでまいります。

 Scope3は当社グループの総排出量のうち8割を超えており、脱炭素社会の実現のためにはこのScope3排出量削減が不可欠であると認識しています。特に購入した製品・サービスに該当するカテゴリ1はScope3の約8割を占めています。サプライチェーンを通じた脱炭素の実現に向け、サステナブル調達アンケートや排出量算定システムを通じてサプライチェーンにおけるコミュニケーションを図り、削減に向けた取り組みを促進するとともに、2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年までのScope3削減目標の設定についても具体化を進めてまいります。

 

0102010_003.png

 

 

 また、当社グループでは上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標および実績は以下のとおりです。

 

③新卒の女性採用比率

 当社は、2015年度から新卒女性の採用比率目標を30%以上とし、2023年度までの累計新卒女性採用比率は38.9% となっています。今後も30%以上の新卒女性採用比率を維持してまいります。

 

0102010_004.png

 

④女性管理職比率

 当社および中核会社の日本カーリット㈱を合わせた2023年度の女性管理職比率は2.6%、女性の管理職候補層(係長・主任クラス)比率については15.5%となっています。

2026年度には新卒女性採用比率は維持しつつ、女性管理職比率5%台、女性の管理職候補層比率18%台を目指し、将来的に経営の意思決定に関わる女性従業員を育成しています。

 

 

2022年度

2023年度

2026年度(予)

女性管理職比率

1.7

2.6

5.0

女性管理職候補層比率

14.8

15.5

18.0

 

男女間賃金格差

 当社および中核会社の日本カーリット㈱の2023年度男女間賃金格差は以下のとおりとなります。

工場を中心とした製造業務が主体であることから男性比率が高く、男性の採用が中心であったことを背景に、男性の管理職比率や年齢が高いことにより差異が出ています。

 女性活躍推進の研修や女性管理職比率の向上などの施策を行い、格差を縮めてまいります。

 

カーリットホールディングス㈱

日本カーリット㈱

すべての労働者

65.7

70.5

 うち正規雇用労働者

80.2

75.5

 うちパート・有期労働者

53.2

62.3

 

⑥男性の育児休業取得率

 当社および中核会社の日本カーリット㈱では、労働環境整備の施策として育児休業の取得を制度面から整備してまいりました。特に男性従業員の育児休業取得率向上の為、出生時育児休業期間の有給化などを進めてまいりました。それらにより2023年度の2週間以上の男性育児休業取得率は、当社および中核会社の日本カーリットの合計で100%となりました。また、当社および中核会社の日本カーリット㈱の女性の育児休業取得率は100%を継続しています。

 

2022年度

2023年度

男性育児休業取得者数

11

5

取得比率

78.6

100.0

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、事業のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

1.技術革新のリスク

 当社グループの一部事業分野においては、技術革新のスピードと市場のニーズの変化が非常に速いことから、新しい技術やイノベーションの発生によって、既存の製品やサービスが陳腐化、競争力を失い、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対応するべく、市場調査や競合分析、技術トレンドなどの情報収集を継続的に実施することに加え、製造・営業・開発が定期的に情報共有する体制を構築し、リスクを適切に管理しています。

 

2.市場動向変動のリスク

 当社グループでは製品の需要や供給の変動、競合他社や取引先の戦略変更などにより、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。外部環境を常にモニタリングし、いち早く需要や競合状況を把握、市場動向の変化を

捉え、適切な対策を講じることに加えて、当社は4つの事業セグメントを有することで事業領域を多角化し、リスクを分散することで管理しています。

 

3.原材料調達・価格変動のリスク

 原材料の調達中断、価格の上昇、品質の低下などにより、当社グループの製品の供給安定性や品質が低下し、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。近年では運送業の労務環境改善に伴う物流キャパシティ減少、

世界情勢の悪化に伴うエネルギー供給の不確実性など大きなリスクが生じており、重大なリスク要因として認識しています。原材料調達については、複数社購買を基本戦略とし、購入ルートを適切に確保、安定調達を図ることで

リスクを分散し管理しています。

 

4.為替相場の変動リスク

 当社グループは国内販売を中心に営業活動を展開しておりますが、製品の価格競争力を強めるため、原価低減の

一環として原材料の一部を輸入品により調達していることから、為替相場の変動による原価高騰によって影響を受ける可能性があります。また、海外での事業や輸出に関連した取引においての為替レートの急激な変動により影響を受ける可能性があります。これらに対し、複数購買による調達リスクの分散、為替予約により仕入れ価格をあらかじめ確定させるなど、変動の影響を極力軽減する方策を採っておりますが、近年は急激な円安局面にあることから、重要モニタリング項目として留意してまいります。

 

5.事故・災害のリスク

 当社グループでは、化学品事業において、火薬類、塩素酸塩類などの危険物を数多く扱っており、重大事故等の

発生可能性は極めて低いものの、万が一火災、爆発、化学的な漏洩などの重大な事故が発生した場合は、人命の危険や物的損害、環境破壊、それに伴い事業活動が中断する可能性があります。生産拠点ごとに妥当な安全基準を定め、適切な設備や保護装置の設置、工場の定期巡視実施による未然防止、消火訓練等の適切な教育の規程化などに取り組むことで、リスクを最小限に抑えています。

 

6.品質に関するリスク

 当社グループの事業は多岐にわたっており、各社の事業に合致した品質管理体制が要求されます。グループ各社において、原材料調達から製造・出荷まで、一貫した品質管理体制の構築・運用を行っていますが、予期せぬ事態により製品の品質問題が発生した場合には、該社のみならず当社グループの信用や顧客満足度が低下し市場シェアに影響を及ぼすこと、また製品の回収、手直し、代替製品の納入および製造に関わる費用の発生などにより、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては、大きな品質問題として顕在化する前の兆候の段階から品質担当者間で情報を共有する会議体を設置し、異なる業種からの視点も参考にしつつ対応を検討して実施するとともに、グループ各社への水平展開により品質管理体制の向上を図っています。

 

7.法的規制のリスク

 当社グループの製品等に関する法的な制約や規制の変更、コンプライアンスの不備により、製造・販売や信頼・

評判に影響が生じた場合には、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。外部専門家などの助言を受けつつ、環境問題、化学物質、輸出等の業務に係る法規制改正動向を常に注視することに加え、コンプライアンスを

徹底し、適正な業務運営を行っています。

 

8.訴訟のリスク

 当社グループが関わる契約違反、知的財産権侵害、労働問題、製品の欠陥などについて、訴訟、係争、その他法律的手続きの対象となる可能性があり、訴訟が提訴されることなどにより、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。各所管部門が規程にもとづき、契約書の適正な作成と管理、知的財産権の保護、労働法の遵守、製品の品質管理などを実施することでリスクの低減を図っています。

 

9.資産評価の変動リスク

 当社グループは、時価のある株式や不動産、債権などを保有しているため、株式相場が大幅に下落した場合、また、固定資産について回収可能額を測定した結果が帳簿価額を下回る場合、これらの資産評価により、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。保有資産の必要性を定期的に確認するなど、資産の評価と維持を適切に行うとともに、中長期的な計画の中で資本戦略を検討することで、リスクを適切に管理しています。

 

10.自然災害等によるリスク

 当社グループの事業拠点は国内を中心に分布しています。大地震や津波・台風・大雨等の自然災害の際には、当社グループの生産設備や人的資源への影響・損害や、顧客の需要動向に大きな変化が起こる可能性があります。気象

情報などの兆候に注視するとともに、BCPの策定や従業員安否確認システムの導入、生産設備の災害保険加入など、災害に対するレジリエンス向上に取り組むことで、リスクを適切に管理しています。

 

11.情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、顧客および取引先の機密情報、開発・生産・販売などの情報ならびに会計、企業戦略等様々な

情報を有しており、これらの情報は外部流出や破壊、改ざん等が無いようにグループ全体で管理体制の構築ならびに従業員教育、ITセキュリティ等の強化策を継続的に実施しています。しかしながら、不正アクセスやサイバー攻撃、内部の不正行為等により、情報資産の漏洩や破壊、改ざん、情報システムの停止が発生し、信頼や評判の損失に加え、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。組織的対策としてはサイバーセキュリティ管理体制の構築、技術的対策としてはセキュリティポリシーに則った技術導入の推進をそれぞれ取り組むことで、リスクを適切に管理しています。

 

12.金利変動のリスク

 当社グループは、事業運営に必要な資金調達を行っておりますが、金利の上昇もしくは下降による資本調達コストの変更により当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。適切な資金調達戦略や借入条件の見直しに加え、金利スワップなどを実施し、リスクを分散することで管理しています。

 

13.海外拠点のガバナンス不全のリスク

 当社グループは、上海に販売拠点を保有しています。その際、現地の法律や規制、社会文化の違い等に対応するためのガバナンスが行き届かなかった場合、法令違反や腐敗・不正、誤った経営判断等が発生し、信頼や評判の損失に加え、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。適正な組織構造の確立と明確化、コンプライアンスプログラムの実施に加え、文化や法律の違いに対応するために外部専門家などの助言を受けることで、地域に適応した透明性の高い経営を行い、リスクを管理しています。

 

 

 

14.人員不足

 当社グループでは、生産や営業などの事業活動を少人数で行うことによる事業キャパシティの低下や、後継者不在による重要な技術およびノウハウの継承が断絶することで、製品の供給安定性、競争力および業績に影響を及ぼす

可能性があります。従業員エンゲージメント向上や採用活動の強化などの人事活動を適切に行うとともに、中長期的な経営戦略の中で人的資本投資を検討することで、リスクを適切に管理しています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」と

いう。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ39億1千5百万円増加し551億4千6百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3億1千9百万円増加し183億7千万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ35億9千6百万円増加し367億7千5百万円となりました。

 

b.経営成績

  当連結会計年度の業績につきましては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により社会経済活動

 の正常化が進みつつある状況下で、電子材料分野とシリコンウェーハ分野はいまだ世界的な半導体需要低迷の

 影響を受けておりますが、その他の事業分野についてはいずれも堅調に推移しました。この結果、当連結会計年度の経営成績は、連結売上高365億7千7百万円(前年同期比1.6%増)、連結営業利益は33億5千2百万円(前年同期比27.0%増)、連結経常利益は36億円(前年同期比23.7%増)となりました。

  これらにより、親会社株主に帰属する当期純利益は25億9千8百万円(前年同期比15.7%増)となりました。

 

  当連結会計年度より、事業ポートフォリオに基づく事業領域ごとの経営管理へ移行しました。それに伴い、

 各事業領域の投資効率・収益性などを明確にすることを目的に各事業セグメントの担当役員を委嘱し、役員の

 執行業務、責任範囲の明確化を図りました。また、経営判断や予算策定を行う管理区分の見直しに伴い、報告

 セグメントを従来の「化学品事業」「ボトリング事業」「産業用部材事業」「エンジニアリングサービス事業」の4区分から、「化学品事業」「ボトリング事業」「金属加工事業」「エンジニアリングサービス事業」の

 4区分に変更しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しています。

 

(参考)                                          (単位:百万円)

区  分

連 結 売 上 高

連 結 営 業 利 益

前 期

当 期

前 期

当 期

化学品

20,159

20,422

1,554

1,690

ボトリング

4,774

5,150

151

609

金属加工

7,478

7,304

441

461

エンジニアリング

サービス

4,203

4,346

651

818

小 計

36,615

37,223

2,798

3,579

その他・消去

△607

△646

△158

△227

合 計

36,008

36,577

2,640

3,352

 

②キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、27億5千3百万円となり、前連結会計年度末に比べて10億5千5百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動によるキャッシュ・フローは、21億5千5百万円の純収入(前年同期は20億6千4百万円の純収入)となりました。これは、主に収入として税金等調整前当期純利益37億7百万円、減価償却費17億6千7百万円、仕入債務の増加11億3千6百万円、支出として退職給付に係る負債の減少7億4千7百万円、売上債権の増加24億3千万円、

 棚卸資産の増加2億4千5百万円、法人税等の支払額12億5千2百万円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは、13億7千3百万円の純支出(前年同期は6千5百万円の純支出)となりました。これは、主に固定資産の取得による支出17億7千8百万円、投資有価証券の売却による収入2億9百万円、

 利息及び配当金の受取額2億4千9百万円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは、18億3千9百万円の純支出(前年同期は17億8千4百万円の純支出)となりました。これは、主に借入金の減少額9億2千2百万円、配当金の支払額4億7千8百万円等によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

化学品事業

11,990

△1.2

ボトリング事業

5,136

8.1

金属加工事業

3,628

△1.6

エンジニアリングサービス事業

 報告セグメント計

20,755

0.9

その他

合計

20,755

0.9

 (注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

 当社グループは主として見込み生産によっているため記載すべき事項はありません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

化学品事業

20,058

1.3

ボトリング事業

5,150

7.9

金属加工事業

7,161

△2.0

エンジニアリングサービス事業

4,050

2.3

 報告セグメント計

36,421

1.6

その他

155

△0.6

合計

36,577

1.6

 (注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

     2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱伊藤園

3,747

10.4

4,005

10.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績

 1)財政状態

 (総資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ39億1千5百万円増加し、551億4千6百万円となりました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が20億8千5百万円増加、投資有価証券が19億6千3百万円増加、棚卸資産が2億4千6百万円増加、有形固定資産が2億1千8百万円増加、退職給付に係る資産が1億9千9百万円増加、現預金が10億4千5百万円減少したことなどによります。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ14億9千万円増加し235億1千8百万円となりました。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ24億2千4百万円増加し316億2千7百万円となりました。

 

    (負債)

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ3億1千9百万円増加し、183億7千万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が12億8千3百万円増加繰延税金負債が6億3千9百万円増加、その他流動負債に含まれる未払金が3億3千3百万円増加、有利子負債が10億5千1百万円減少、退職給付に係る負債が7億4千7百万円減少、その他流動負債に含まれる前受金が2億1千2百万円減少したことなどによります。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ11億1千9百万円増加し111億4千9百万円となりました。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ8億円減少し72億2千1百万円となりました。

 

    (純資産)

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ35億9千6百万円増加し、367億7千5百万円となりました。これは、当期純利益の計上等により利益剰余金が21億1千9百万円増加、その他有価証券評価差額金が13億7千8百万円増加したことなどによります。

 この結果、1株当たり純資産は、前連結会計年度末に比べて157.62円増加し1,560.32円となり、自己資本比率は前連結会計年度末の64.8%から66.7%となりました。

 株主資本は、前連結会計年度末に比べ20億2千7百万円増加し304億4千8百万円となりました。

 その他の包括利益累計額は、前連結会計年度末に比べ15億6千8百万円増加し63億2千7百万円となりました。

 

    2)経営成績

    (売上高)

 当連結会計年度の連結売上高は前連結会計年度の360億8百万円から5億6千8百万円増の365億7千7百万円、前年同期比1.6%増となりました。

 (売上原価、販売費及び一般管理費)

 売上原価は、前連結会計年度の273億2千1百万円から2億4千6百万円減の270億7千5百万円となりました。売上に対する比率は前年同期の75.9%から1.9ポイント減の74.0%となりました。

 また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度の60億4千6百万円から1億3百万円増の61億4千9百万円となりました。売上高に対する比率は前年同期から微増し16.8%となりました。

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

 営業利益は、前連結会計年度の26億4千万円から7億1千1百万円増の33億5千2百万円となりました。営業外収

益から営業外費用を差し引いた純額は、前連結会計年度の2億7千万円の収益から、2千1百万円減の2億4千8百万円の収益計上となりました。

 その結果、経常利益は前連結会計年度の29億1千万円から6億9千万円増の36億円となりました。

 特別利益から特別損失を差し引いた純額は、前連結会計年度の3億3千2百万円の収益から、2億2千5百万円減の1億6百万円の収益計上となりました。

 以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の32億4千3百万円から4億6千4百万円増の37億7百万円となり、法人税、住民税及び事業税や法人税等調整額を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の22億4千6百万円から3億5千1百万円増の25億9千8百万円となりました。

 

b.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

 2024年の世界経済は、中国の景気減速と欧米の高金利の影響により年央にかけて減速感を強めるものの、

半導体サイクルの持ち直しにより新興工業国各国を主体に回復へ向かう見通しです。また、2025年に向け欧米景気は継続的な利下げを背景に次第に持ち直すほか、アジア地域も先進国向け外需に支えられて回復する見通しであり、世界経済は緩やかに回復すると想定しています。

 2024年の国内経済は、高水準の企業収益が賃金・設備投資に回ることで経済活動は回復基調を維持するも、実質雇用者報酬の伸び悩みやサービス消費・インバウンド需要回復の一服等で回復ペースは緩やかになると

想定しています。2025年に向けては、個人消費が力強さを欠くもとで、成長率は鈍化する見通しです。

 上述の経済環境を踏まえ、各報告セグメントの今後の見通しは以下のとおりです。

 化学品事業は、半導体サイクルの持ち直しにあわせ電子材料分野は回復が予想されるものの、シリコン

ウェーハ分野は川上原料を取り扱うことから顧客生産調整の影響が継続し、2024年度後半に本格的な回復と

なる予想です。一方、自動車向け製品や基礎化学品関連製品などの販売は前期同様に堅調に推移する見通し

です。

 ボトリング事業は、2024年4月に行う定期修繕工事による費用発生はありますが、例年同様の費用規模と

なる想定であり、前期から続くインバウンド需要の復調により販売は堅調に推移する見通しです。

 金属加工事業およびエンジニアリングサービス事業については、国内経済動向にあわせ前期同様堅調に推移すると予想しています。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、2022年度を初年度とした中期経営計画「Challenge2024」を策定いたしました。経営方針として「事業ポートフォリオの最適化により企業価値の向上を目指す」を掲げ、「成長事業の加速化」「研究開発の拡充」「既存事業の収益性改善」「ESG経営の高度化」「事業インフラの再構築」という5つの戦略を推進しています。

 これらに加えて、経営環境の変化に柔軟に対応することで中期経営計画「Challenge2024」の達成をより確実とすることを目的に、ローリング方式にて中期経営計画の見直しを行い2023年5月に「ローリングプラン2023」を、2024年3月に「グローアッププラン2024」を策定いたしました。資本コストや株価を意識した経営を推進し、PBRを指標とした企業価値の向上を目指してまいります。

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、以下のとおりです。

 

 

(%表示は、通期は対前期、四半期は対前年同四半期増減率)

 

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

自己資本利益率(ROE)

 

百万円

百万円

百万円

百万円

第2四半期(累計)

18,500

4.7

1,600

15.6

1,700

8.7

1,200

2.3

-

通期

38,000

3.9

3,800

13.4

4,000

11.1

2,800

7.7

8.0

 

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

「化学品事業部門」

化薬分野 =増収増益

・産業用爆薬は石灰砕石需要の減少に加え原材料価格の高騰などにより、減収減益。

・自動車用緊急保安炎筒は自動車生産の増加に伴い需要が増え、増収増益。

・高速道路用信号焔管は新型コロナウイルス感染症に起因する人流抑制が緩和されたことで需要が増加し、

 増収増益。

・煙火関連は販売品目の構成見直しなどの取り組みに加え、花火大会の増加などにより収益が良化し、増収増益。

 

受託評価分野 =増収増益

・危険性評価試験、電池試験ともに電池開発の活況が継続し、増収増益。

 

化成品分野 =増収増益

・塩素酸ナトリウムは紙パルプ漂白用途の需要に対し安定した供給を進め、増収増益。

・過塩素酸アンモニウム(ロケット・防衛用推進薬原料)は防衛用途の需要が増え、増収増益。

・電極は顧客在庫調整およびスポット受注減により減収するも、高付加価値製品の販売が増えたことにより増益。

・過塩素酸は国内外の需要増加により増収するも、原材料価格の高騰などにより、減益。

 

電子材料分野 =減収減益

・電子材料関連製品、機能材料関連製品ともに、アジア圏をはじめとする海外需要の低迷が継続し、国内需要も

 顧客在庫調整などがあり、減収減益。性能向上品や環境規制対応品などの製品開発・営業活動に引き続き注力

 していく。

 

セラミック材料分野 =減収減益

・新規拡販やシェア拡大を推進するも、国内砥石・研磨布紙メーカーの需要低迷により、減収減益。

 

シリコンウェーハ分野 =減収減益

・世界的な半導体需要低迷から顧客の在庫過多や生産調整が続いており、減収減益。高平坦度ウェーハをはじめ

 とする高付加価値製品の用途拡大、小口径ウェーハ市場の新規開拓とシェア拡大、既存製品群の生産性向上

 といった活動に引き続き注力していく。

 

これらの結果、当事業部門全体の売上高は204億2千2百万円(前年同期比 2億6千2百万円増、同1.3%増)、

営業利益は16億9千万円(前年同期比 1億3千6百万円増、同8.8%増)となりました。

また資産は、前連結会計年度の312億6千万円から18億8千8百万円増の331億4千8百万円となりました。

 

「ボトリング事業部門」

・ペットボトル飲料販売量は個人消費とインバウンド需要の高まりにより、順調に推移。加えて、適正価格の

 維持およびコスト改善の取り組みにより、増収増益。

 

この結果、当事業部門全体の売上高は51億5千万円(前年同期比 3億7千6百万円増、同7.9%増)、営業利益は6億9百万円(前年同期比 4億5千7百万円増、同301.6%増)となりました。

また資産は、前連結会計年度の43億8千万円から14億3千5百万円増の58億1千6百万円となりました。

 

「金属加工事業部門」

・耐熱炉内用金物は安定的成長と採算性重視を目的とした前期の関連子会社売却、販売品目の構成見直しにより

 減収するも、適正価格の維持や強みある商品へのリソース集中の推進により、増益。

・各種金属スプリングおよびプレス品は第3四半期まで需要全体が好調であり増収。しかし、第4四半期からは

 主要取引先(建設機械・自動車)の需要が大きく落ち込み、減益。

 

これらの結果、当事業部門全体の売上高は73億4百万円(前年同期比 1億7千3百万円減、同2.3%減)、

営業利益は4億6千1百万円(前年同期比 1千9百万円増、同4.5%増)となりました。

また資産は、前連結会計年度の58億2千2百万円から7千8百万円減の57億4千4百万円となりました。

 

「エンジニアリングサービス事業部門」

・建築・設備工事は工事数の増加に伴い、増収増益。

・塗料販売・塗装工事は前期に計上した大型スポット案件の反動により減収するも、市場環境全体は好調であり

 増益。

・構造設計は収益性の高い案件の増加により、増収増益。

 

これらの結果、当事業部門全体の売上高は43億4千6百万円(前年同期比 1億4千2百万円増、同3.4%増)、営業利益は8億1千8百万円(前年同期比 1億6千7百万円増、同25.6%増)となりました。

また資産は、前連結会計年度の40億5千5百万円から4億5千9百万円増の45億1千4百万円となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

   当社グループの資本の財源及び資金の流動性

   当社グループの資金調達については安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ事業運営に必要な

   流動性と多様な調達手段を確保することとしています。

 

 

(契約債務)

 2024年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

89

89

長期借入金

941

470

470

リース債務

984

216

285

481

1

 

(財務政策)

 当社グループは、営業活動から得られる自己資金、銀行等金融機関からの借入、増資などを資金の源泉としております。また、当社及び国内連結子会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、各社の余剰資金を当社へ集中して一元管理を行うことで、資金の流動性の確保と資金効率の最適化に努めております。

 設備投資やM&Aなどに伴う長期的な資金需要については資金需要が見込まれる時点で内部留保に加え金融機関からの長期借入(原則として5年以内)などを活用して対応しておりますまた運転資金など短期の資金需要については自己資金及び短期借入を充当しております

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたり、開示すべき財政状態および経営成績の報告数値に影響を与える見積りや仮定設定を行わなければなりませんが、当社経営陣は、固定資産の減損会計、各種引当金の見積り計算、棚卸資産の評価、繰延税金資産の回収可能性等に関して継続してその妥当性の評価を行い、過去の実績や状況に基づき合理的な判断を行っております。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(連結子会社の吸収合併)

 当社は、成長戦略の推進と経営の効率化を図ることを目的に、2023年11月28日開催の取締役会において日本カーリット株式会社および株式会社シリコンテクノロジーと合併することを決議し、同日付で合併契約を締結いたしました。

(1) 合併の方法

 当社を存続会社とし、日本カーリット株式会社および株式会社シリコンテクノロジーを消滅会社とする吸収合併方式であります。

(2) 合併期日(予定)

2024年10月1日

(3) 合併に際して発行する株式及び割当

 日本カーリット株式会社および株式会社シリコンテクノロジーは当社の完全子会社であるため、本合併に際して、株式の割当ておよび金銭その他の交付はありません。

(4) 引継資産・負債の状況

 存続会社である当社は、合併期日(効力発生日)時点における日本カーリット株式会社および株式会社シリコンテクノロジーの一切の資産、負債および権利義務を引き継ぐものとします。

(5) 吸収合併存続会社となる会社の概要

資本金 :2,099百万円

事業内容:純粋持株会社

 

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費の総額は847百万円となりました。

SDGs関連製品の準量産型設備として計画していた新規パイロットプラントの建設が完工し、今後は稼働に向けて設備の搬入を順次行っていきます。さらに本部内はもとより、営業部門や工場技術部門、その他関連部門と連携し研究開発業務の効率化を図ることにより、製品の早期上市と新事業の創出を加速しています。

また、日本カーリット㈱研究開発本部が中心となり、当社グループ会社の研究開発のサポート対応も引き続き行っております。当連結会計年度における研究開発活動の状況については以下のとおりです。

 

 

化学品事業部門:846百万円

当事業部門では、環境エネルギー分野で電極関連部材および次世代二次電池関連材料の研究開発、ライフサイエンス分野でヘルスケア製品関連および化粧品関連材料の研究開発、電子機能材料分野でコンデンサ関連材料の開発、次世代機能性色素材料および電子材料製品の研究開発、半導体分野で半導体材料および半導体加工用材料の研究開発を行いました。

また、宇宙産業向け固体推進薬の開発を、顧客と共同で進めております。

 

 

<研究開発体制図>

 

 

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