第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは7つの事業アプローチから人と暮らしをトータルに見つめ、お客さまとともに「美しい時代へ」の理念のもと、美しい生活環境の創造を目指す総合生活産業であり、東急グループの一員として「安心と信頼」の「東急ブランド」の価値向上に努めております。

 これまで時代の変化やお客さまの需要を捉え、新たなライフスタイルの創造に向けて常に探求し、豊かな社会の実現に挑戦してきました。グループが持つ資本と創業以来培ってきた「挑戦するDNA」をもとに、経営課題、社会課題の解決に挑み、お客さまに価値を提供し続けることが当社グループの使命です。

 また、安定化した成長路線を着実に「継続」することと、大きく変化を遂げるであろう事業環境に対応しながら、常に新たな事業・課題の達成に取り組み、変わりゆく時代へ挑戦を続けていくことで、株主価値・企業価値の向上を図ってまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

 当社グループは、持株会社体制への移行(2013年10月)を踏まえ、2014年11月にグループ中長期経営計画「『Value Frontier 2020』~価値を創造し続ける企業グループへ~」(2014年度~2020年度)を策定、東京オリンピック開催や東急グループの総力を挙げた再開発事業の推進により渋谷駅周辺が大きな変貌を遂げる2020年度までを期間とし、「関与アセット拡大」と「新たな需要創出」により「価値を創造し続ける企業グループ」を目指してまいりました。

 2017年5月に中長期経営計画の後半4ヵ年(2017年度~2020年度)の中期経営計画「Value Frontier 2020 Stage2 中期経営計画2017-2020」(以下、「本計画」といいます。)を策定いたしました。本計画では、中長期経営計画で定めた2つの基本方針である「関与アセット拡大」及び「新たな需要創出」を継続し、事業環境の変化に対応した以下3つの成長戦略を推進、さらに「事業間シナジーの取り組み強化」とともに「グループ経営資源最適化及びESGマネジメント」に注力することで、収益水準の持続的成長を図り、ハコやモノの枠を超えてライフスタイルを創造・提案する企業グループを目指しております。

成長戦略① ライフスタイル提案型の街づくり

成長戦略② 循環型再投資事業の領域拡大

成長戦略③ ストックの活用強化

 本計画のうち前半の2ヵ年が終了した2019年5月、活況なオフィス市場をはじめとする堅調な事業環境、当初の計画を上回る事業実績、2018年10月の公募増資の実施等を踏まえ、本計画の最終年度である2020年度の数値目標を見直しました。見直し後の数値目標は、営業利益950億円、親会社株主に帰属する当期純利益500億円、D/Eレシオ2.3倍以下、EBITDA倍率10倍水準とし、また、株主価値向上の指標として、ROE・EPSの目標を追加し、株主資本コストを念頭にROEの目標を8%超、EPSは69.53円に設定しました。

 しかし、新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、2019年度の第4四半期より、当社グループの事業において、商業施設・運営施設・営業店舗等において大きな影響が発生しております。2020年度における数値目標の達成は困難な状況となり、業績予想は営業利益500億円、親会社株主に帰属する当期純利益260億円といたしました。

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 2020年度の業績予想については、新型コロナウイルスの感染拡大影響を合理的に見積もることが難しい状況にありますが、第1四半期は当社グループの事業活動に大きな制約が生じ、第2四半期以降は徐々に回復することを想定して算出しております。

 臨時休業等により影響が生じる事業は、都市事業セグメントの商業施設、ウェルネス事業セグメントの運営施設、ハンズ事業セグメントであり、営業店舗の休止など営業活動の制限により影響が生じる事業は、住宅事業セグメントの分譲マンション、管理事業セグメントの工事業、仲介事業セグメント、次世代・関連事業セグメントのインドネシアにおける分譲マンション等が挙げられ、当社グループの全セグメントにおいて影響が発生することを見込んでおります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期等により、実際の業績等は変動する可能性があります。

 新型コロナウイルスの感染拡大影響を受けた2020年度の活動方針として、当社グループのサステナビリティ確保と、パラダイムシフトに対応した改革を進めます。サステナビリティ確保については、お客さまや社員を始めとするステークホルダーの安全確保を最優先とし、コストの見直しの徹底、市況変調を奇貨とした投資機会の見極め、新たな商品やサービスの提供等に取り組みます。パラダイムシフトに対応した改革としては、当社グループの社会的使命に沿ったビジネスモデルの進化とともに、DXの活用等、新しい事業機会の創出にも注力します。

 現在の事業環境においても、当社グループの株主価値及び企業価値の中長期的な向上を目指すというミッションは変わらず、2020年度は次期中長期経営計画への課題整理を行う足場固めの1年にする予定です。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループでは、株主価値及び企業価値の向上に向け、財務規律を維持しつつ収益力強化を図ることで、EPSの成長とROEの向上を目指す(下図参照)ことを基本方針としています。

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 各事業セグメント及び非財務分野における経営環境及び重点戦略は以下のとおりです。

 

① 都市事業セグメント

 オフィス市場は、働き方改革の進展や採用強化を目的とした移転及び増床ニーズが拡大し、賃料は上昇基調が続くなど、好調に推移してきました。当社グループ保有物件における2020年3月末時点での空室率(オフィスビル・商業施設)も0.6%と、引き続き旺盛な需要に支えられて低水準を維持しております。

 大型開発プロジェクトについては、2019年度には渋谷ソラスタ及び渋谷フクラスが満室で稼働し、2020年度には当社グループ最大規模のオフィスビルである東京ポートシティ竹芝(オフィスタワー)の竣工及び開業を予定するなど、順調に進捗しております。その一方で、オフィス市場は一般的に景気や企業業績に遅行する傾向にあるため、今後の新型コロナウイルスによる影響については、注視が必要です。

 商業施設については、足元のテナント売上高は2019年10月の消費増税以降も堅調に推移しておりましたが、短期的には新型コロナウイルスの感染拡大によるテナント売上高への影響、中長期的にはEC化率(消費に占めるEC経由の割合)の上昇予測によるビジネスモデルの転換等に注視が必要な環境です。

 当社グループが、直近で最も資産規模を拡大させてきた再生可能エネルギー事業は、FIT価格によって売電収益が固定されており、景気変動等に対する影響が少ない安定的な事業です。外部環境としては、政府が2030年度の電源構成において、再生可能エネルギーの割合を22~24%に成長させる方針を掲げていることに加え、2015年の東京証券取引所でのインフラファンド市場の開設以降は資産の流動性も高まっております。

 2020年度の当セグメントにおいては、新規物件の取得環境が過熱する状況の中での厳選投資及び、東京ポートシティ竹芝や(仮称)九段南一丁目プロジェクト等の開発中の大型プロジェクトの着実な推進が重点課題となっております。

② 住宅事業セグメント

 分譲マンション市場は、都心立地や利便性を重視する顧客志向、住宅ローン金利の低位安定等に加え、2019年の供給戸数が首都圏で31,238戸、関西エリアで18,042戸(出典:㈱不動産経済研究所資料)と引き続き縮小した市場のもと、分譲価格は高止まりが続いております。当社グループのマンション販売は堅調に推移しており、2020年度期初時点での分譲マンションの通期売上予想に対する契約済割合は50%となっております。その一方で、新型コロナウイルスの感染拡大影響による住まいに対するニーズの更なる多様化については、今後注視する必要があります。当セグメントで投資家向けの開発及び売却を行っている賃貸マンションについては、東京23区を中心とする都市部への若年層の転入超過が継続していることや、新型コロナウイルスの感染拡大影響を直接は受けにくい資産であることから、投資家向けの旺盛な需要が継続する見込みです。

 また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連の工事による需要が一段落した一方で、慢性的な人工不足により工事金の高止まりは継続すると想定しております。

 当社グループでは、ハード面とソフト面、両面からの商品の付加価値向上を重点課題として取り組んでおり、「一人ひとりの暮らしに新しい物語を。」をコンセプトに、住まいを起点とした新しいライフスタイルを提案する街を「LIFE STORY TOWN」として展開しております。2020年度に竣工及び引渡予定のブランズタワー大船を中心とする大船駅北第二地区第一種市街地再開発事業では、エリアマネジメント業務を受託した㈱東急コミュニティーを中心として、地域コミュニティとの交流機会の創出及び区分所有者・入居者等のコミュニティ形成を目的とした、活気ある街の創出を図ります。

 

③ 管理事業セグメント

 管理事業セグメントにおける事業環境は、管理民営化の拡大や管理難易度が高い複合施設管理の増加、改修及びリフォーム需要の拡大等が追い風である一方、新規物件管理受注環境の悪化や、近年の働き方の多様化等による人材確保難等については、対応すべき課題として認識しております。また、新型コロナウイルスの感染拡大影響による、今後のデジタル化の進化を含めた省人化技術の活用等については、注視及び対応が必要です。

 重点課題としては、管理業における収益性や将来性を考慮した上でのストック拡大戦略の実行、工事業においては当社グループのシナジーを最大限利用した営業強化を進める方針です。

 

④ 仲介事業セグメント

 仲介事業における事業環境は、新築分譲マンションの供給戸数の低位安定により中古住宅市場の拡大が見込まれる一方で、長期的にはITの進化等による事業構造の変化への注視が必要と認識しております。直近では、リテール市場においては2019年10月の消費増税の反動による一時的な取引件数の減少はあったものの、住宅ローンの低金利も手伝い、引き続き堅調な市況となっております。ホールセール市場においても、J-REIT等の物件取得意欲は依然旺盛となっており、堅調な市況が続いておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大影響による不動産流通市場の変動については、今後注視が必要と考えております。

 今後はDX活用による営業活動の効率化や、リテール部門における取引件数の更なる積み上げ、ホールセール部門における事業領域の拡大を目的とした法人戦略の強化等を重点課題として考えております。

 

⑤ ウェルネス事業セグメント

 ウェルネス事業は、当社グループのハコやモノの枠を超えてライフスタイルを創造、提案するという価値創造ストーリーのカギとなるセグメントとなります。近年では、高齢者人口の増加及び健康寿命延伸への注目度の向上や、2012年以降の訪日外国人の増加等、当セグメントの事業環境は好転してまいりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンドを含む宿泊需要の減少や生活様式の変化等、短期的な影響は特に大きいセグメントとなっております。

 当セグメントは、労働集約型の運営業が中心となっております。その中で顧客満足度向上やマーケティング力向上に資するICTツールの更なる活用及び、運営会社の統合など組織改編を含めた生産性の向上を重点課題と認識しております。

 

⑥ ハンズ事業セグメント

 小売事業においては、中短期的にはECの拡大や2019年10月の消費増税等で事業環境が変化してまいりました。更に、新型コロナウイルスの感染拡大影響により、生活様式の変化も加速しており、今後は「ウィズコロナ」及び「アフターコロナ」を見据えた上で、事業環境変化への対応が必要です。

 当セグメントでは、デジタルネイティブ世代に向けた情報発信や、EC売上の拡大に向けたデジタル戦略の強化により、消費者の生活様式の変化等に対応する施策の実施を重点課題としております。

⑦ 次世代・関連事業セグメント

 当セグメントでは、㈱東急ホームズが事業展開する輸入注文住宅事業を2020年3月末日をもって終了し、その他の同社の新築工事請負事業を㈱東急Re・デザインへ移管するなど、事業環境の変化に対応した事業改革を進めております。

 今後注力する海外事業においては、対象国を厳選した上で、外部資金の積極活用により関与資産を拡大、フィー収入を基盤とした安定的な収益を創出するとともに、循環型再投資モデルの深化・発展を促進することを重点課題としております。また、新型コロナウイルスの感染拡大影響は、当社グループが事業を展開する北米やアジア各国でも広がっており、各物件の販売状況や工事状況等については、適切な状況把握と管理に努めてまいります。

 

⑧ 非財務面における取り組み

 当社グループでは、持続的成長と長期的企業価値向上を実現するため、「事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともに、サステナブルな社会と成長を実現する」というサステナビリティビジョンのもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重要な経営課題と位置づけています。

 上記ビジョンに基づき、E(環境)の分野においては、RE100への加盟やTCFDの提言への賛同を行い、気候変動についてのシナリオ分析に基づくリスクと事業機会の検証を実施しています。S(社会)の分野では、働き方改革の推進に加え、2019年度は「東急不動産ホールディングスグループ 人権方針」及び「東急不動産ホールディングス サステナブル調達方針」の策定を行いました。なお、2020年3月に経済産業省と東京証券取引所が主催する「健康経営銘柄」に初めて選定されました。「健康経営銘柄」は1業種につき原則1企業が選定されるもので、経営的な視点から社員の健康管理に戦略的に取り組む優れた企業としての評価をいただいているものです。またG(ガバナンス)の分野では、指名・報酬委員会の設置や、取締役会の実効性についての第三者評価を実施するなど、改善に取り組んでおります。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。

 

(1)経営に重要な影響を及ぼすと想定されるリスク

 当社グループでは、「リスク管理基本規程」において、グループ各社の経営目標の達成を阻害する事象として、7つの個別リスクを定めております。当該個別リスク及び重要性の高い新たなリスクの中から、4つのリスク(投資リスク・財務資本リスク・人事労務リスク・気候変動リスク)について、より経営成績及び財務状況等への影響が大きいリスクと認識しております。

 なお、これらのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財務状況等に与える影響の定量的な内容については、合理的な予見が困難であるため記載しておりません。

 各リスクについての考え方は以下のとおりとなります。

 

① 投資リスク

 当社グループの事業の中で多額の投資を伴う都市事業セグメント、住宅事業セグメント、ウェルネス事業セグメント、次世代・関連事業セグメント等においては、国内外の景気動向や企業業績、個人消費動向、不動産市況、競合環境、政府や日本銀行の政策変更、東京都心を中心とした事業エリアの状況等の影響を受けやすい傾向があり、これらにより各事業における利益率の低下や収益性の悪化、保有資産の価値が下落する可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループ経営企画部を主管部署とし、投資対象アセット毎のリスクファクターを定めた上でVaR値を算出、継続的なモニタリングを行うことでリスク量の管理を行っております。

 

② 財務資本リスク

 当社グループでは不動産の開発資金等を自己資本及び、金融機関からの借入金や社債発行による資金調達等で対応しております。今後金利が上昇した場合や株価が著しく下落した場合には、経営成績及び財務状況等に対して大きな影響を与える可能性があります。

 金融機関等からの資金調達については、金利変動による影響を軽減するため、有利子負債の大部分を長期による借入とし、さらに金融情勢を踏まえながら一部のプロジェクト融資以外についてはほぼ金利を固定化し、今後金利が上昇した場合の経営成績に与える影響を最小限に抑える取り組みを行っております。なお、当連結会計年度末の有利子負債における長期比率は89.7%、固定比率は86.7%です。また、当社のグループ財務部を主管部署とし、金融市場の動向分析及び金利上昇時の当社への影響の定量的なシミュレーションを行っております。

 自己資本については、資本市場の動向分析を行うとともに、IR活動による株主・投資家との対話内容の取締役会等へのフィードバック等を実施しており、引き続き株価の適正化を図ってまいります。

 

③ 人事労務リスク

 当社グループでは専門性の高い人財を強みの1つと認識しております。しかし、昨今の少子高齢化等の社会構造変化により人財の継続的な確保や育成が達成出来ない場合、当社グループの成長を阻害する大きな要因となる可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループ人事部を主管部署とし、長時間労働の削減や有給休暇の取得奨励はもちろん、テレワークや在宅勤務制度等、社員の多様な働き方に対応した施策で、従業員に選ばれる企業を目指しております。なお、このような取り組みが評価され、経済産業省及び東京証券取引所が、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を選定する「健康経営銘柄2020」に選定されました。

 

 

④ 気候変動リスク

 当社グループでは1998年に定めた環境ビジョンに基づき、事業活動を通じて、継続的に環境課題への取り組みを推進しています。中でも気候変動については重要な課題であると認識しています。気候変動における移行リスクと物理リスクは、当社グループの事業への影響を及ぼす可能性があります。移行リスクとしては、炭素税など法規制の厳格化といった政策動向の変化、低炭素社会に対応できない企業に対する需要低下やレピュテーション悪化、物理リスクとしては、地球温暖化による降雪量減少によるスキー場運営事業への影響や、異常気象の激甚化による建物被害や工事期間の延長によるコスト増などが想定され、事業へ悪影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては、当社のコーポレートコミュニケーション部サステナビリティ推進室を主管部署とし、事業部門と協働してグループ横断的に取り組んでいます。取り組みの内容についてはサステナビリティ委員会で審議・協議し、必要に応じて取締役会に報告しています。また、当社は「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に2019年より賛同し、その取り組みについて議論する「TCFDコンソーシアム」にも参加しております。

 

0102010_003.png

 

⑤ 法務コンプライアンスリスク

 当社グループの社員や事業活動において、法令等に抵触する事態が発生した場合や、発生した損害に対する賠償金の支払い等が必要となる場合には、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループ法務部を主管部署とし、コンプライアンスを実現するための活動計画(コンプライアンス・プログラム)の策定・推進など、グループ各社においてコンプライアンス体制を構築し、コンプライアンス経営の徹底に努めております。具体的には、東急不動産ホールディングスグループの全役員及び従業員の行動の規範となる「東急不動産ホールディングスグループ行動基準」を定めるとともに、その理解・実践のための具体的マニュアルとして、「東急不動産ホールディングスグループ コンプライアンスマニュアル」を策定し、定期的に研修などを行うことで、全役員及び従業員に対しコンプライアンスの周知・徹底を図っています。

 

⑥ IT戦略リスク

 当社グループ及び社会を取り巻くIT環境は目覚ましく進化しており、技術革新や顧客需要の変化に対して当社グループが適切かつ迅速に対応できなかった場合には、将来的に当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループIT戦略部を主管部署とし、新規技術の各事業への応用可能性等を検討しております。また当社においては2020年4月より、グループ内の集積データの活用や、デジタル技術を活用したグループ横断的なビジネスモデル革新の推進体制強化を目的として「DX推進室」を新設いたしました。

 

⑦ 情報漏洩リスク

 当社グループでは、住宅事業セグメントや仲介事業セグメント、ウェルネス事業セグメント等において多くのお客さまの個人情報を取り扱っております。サイバー攻撃や当社グループ従業員によって情報漏洩が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループ総務部を主管部署とし、セキュリティ対策等による情報システムの強化や、標的型攻撃メール訓練等の研修実施による社員のリテラシー向上施策を行っております。

 

⑧ 危機管理対応

 国内外の地震、暴風雨、洪水その他の天災地変、テロ、事故、火災、疫病その他の人災等が発生した場合や、環境問題、不動産の瑕疵が判明した場合又は人口の変動が極端に進んだ場合等には、保有資産の毀損や補償の義務履行等に関連して紛争が発生する等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては当社のグループ総務部を主管部署とし、災害等発生時に必要となる安全対策やBCPの整備や、各種災害を想定した訓練の実施により、影響を最小限に抑えるべく取り組みを行っております。

 

 なお、翌連結会計年度において、特に大きな影響が予想されるのが新型コロナウイルスの感染拡大によるリスクです。当社グループでは、政府からの緊急事態宣言や自治体からの要請等を踏まえ、商業施設・運営施設・営業店舗の臨時休業や営業時間の短縮、従業員の在宅勤務等、感染拡大防止に努めております。

 臨時休業等により影響が生じる事業は、都市事業セグメントの商業施設、ウェルネス事業セグメントの運営施設、ハンズ事業セグメントであり、営業店舗の休止など営業活動の制限により影響が生じる事業は、住宅事業セグメントの分譲マンション、管理事業セグメントの工事業、仲介事業セグメント、次世代・関連事業セグメントのインドネシアにおける分譲マンション等が挙げられ、当社グループの全セグメントにおいて影響が発生することを見込んでおります。

 

(2)リスク管理体制

 リスク管理についてはグループ経営会議、取締役会を通じて運用するとともに、リスクマネジメント委員会において、当社グループ各社が担うリスクマネジメントを統括的に管理しています(下記体制図参照)。当社内に個別リスクを主管する部署を定め、当該部署においてグループにおけるリスク管理体制及び運用状況を把握・評価・分析しています。

 また、内部監査により、リスク管理体制及びリスク管理業務の十分性を確認するとともに、重大リスクに関する監査を優先度に応じて計画的に実施しています。

 緊急かつ重大な損失の危険が発生・発見された場合は、「緊急時対応基本規程」に基づき適切な情報伝達及び意思決定を行い、被害を最小限にとどめるなどの的確な対応を行っています。

 

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3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

財政状態

 当連結会計年度末の資産残高は2兆4,874億円となりました。資産の部では、販売用不動産、仕掛販売用不動産や固定資産等がプロジェクトの進捗により増加したため、前連結会計年度末から合計821億円増加しました。当連結会計年度末の負債残高については1兆8,931億円となり、有利子負債の増加等から前連結会計年度末から合計566億円増加しております。当連結会計年度末の純資産残高については5,942億円となり、利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末から合計255億円増加しております。

 

経営成績

 当連結会計年度の業績は、売上高9,632億円(対前連結会計年度+6.8%)、営業利益793億円(同△1.1%)、経常利益675億円(同△4.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益386億円(同+3.1%)となりました。

 不動産市況が堅調に推移する中、都市事業セグメント、住宅事業セグメント、管理事業セグメント、仲介事業セグメントは増収増益となった一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたウェルネス事業セグメント、ハンズ事業セグメント等は減収減益となりました。その結果、当連結会計年度の業績は増収営業減益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失の減少によって増益となり、過去最高益を更新しました。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

前期

当期

比較

売上高

9,019

9,632

613

営業利益

802

793

△9

経常利益

707

675

△32

親会社株主に帰属する当期純利益

375

386

12

 

 

 

 

有利子負債

12,898

13,610

712

 

<セグメント別業績>

売上高

 

(単位:億円)

 

営業利益

 

(単位:億円)

 

前期

当期

比較

 

 

前期

当期

比較

合計

9,019

9,632

613

 

合計

802

793

△9

都市

2,564

2,926

362

 

都市

499

525

26

住宅

1,214

1,363

149

 

住宅

54

85

32

管理

1,739

1,908

169

 

管理

86

87

2

仲介

1,189

1,314

126

 

仲介

139

152

13

ウェルネス

1,239

1,145

△94

 

ウェルネス

79

35

△44

ハンズ

974

966

△8

 

ハンズ

8

2

△5

次世代・関連

416

352

△63

 

次世代・関連

9

△14

△23

全社・消去

△316

△343

△27

 

全社・消去

△71

△81

△10

 

イ.都市事業

 売上高は2,926億円(対前期+14.1%)、営業利益は525億円(同+5.3%)となりました。

 投資家向けのビル等売却収益の増加や、渋谷ソラスタ等のオフィスビルや再生可能エネルギー発電施設の新規稼働により、増収増益となりました。
 なお、空室率(オフィスビル・商業施設)は0.6%と引き続き旺盛な需要に支えられ低水準を維持しております。

(単位:億円)

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

2,564

2,926

362

 

2,573

354

営業利益

499

525

26

 

500

25

 

 

売上高内訳

 

 

(単位:億円)

 

 

比較

 

賃貸(オフィスビル)

368

405

36

 

賃貸(商業施設)

415

429

14

 

資産運用等

899

1,123

225

(投資家向けのビル等売却、資産運用事業、

再生可能エネルギー発電施設、物流施設等)

住宅賃貸等

882

969

87

 

 

賃貸床面積・空室率(オフィスビル・商業施設)

 

2017年3月期末

2018年3月期末

2019年3月期末

2020年3月期末

賃貸床面積(㎡)

892,854

910,774

883,975

920,935

空室率

2.0%

0.5%

0.4%

0.6%

 

再生可能エネルギー発電施設

 

2018年3月期末

2019年3月期末

2020年3月期末

稼働施設数(件)

7

16

30

定格容量(MW)

30

246

487

※定格容量は、稼働済み発電施設の持分換算前の容量を記載しております。

 

ロ.住宅事業

 売上高は1,363億円(対前期+12.3%)、営業利益は85億円(同+59.3%)となりました。
 分譲マンションの計上戸数の増加等により増収増益となりました。販売については堅調に推移しており、マンションの次期売上予想に対する契約済み割合は50%(△4P)となっております。
 なお、当期において分譲マンションは「ブランズタワー梅田 North」(大阪府大阪市)、「ブランズシティ横濱上大岡」(神奈川県横浜市)、「ブランズ円山外苑前」(北海道札幌市)、「ブランズタワー羽衣」(大阪府高石市)等を計上いたしました。

 

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

1,214

1,363

149

 

1,320

43

営業利益

54

85

32

 

78

8

 

売上高内訳

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

マンション

1,266戸

861

1,680戸

961

100

戸建

111戸

22

17戸

7

△16

その他

331

396

65

 

 

供給販売戸数

 

 

 

前期

当期

完成在庫数

新規供給

契約戸数

新規供給

契約戸数

2019年3月期末

2020年3月期末

マンション

1,598戸

1,680戸

2,260戸

2,008戸

497戸

453戸

戸建

56戸

59戸

9戸

16戸

7戸

 

ハ.管理事業

 売上高は1,908億円(対前期+9.7%)、営業利益は87億円(同+1.8%)となりました。
 ㈱東急コミュニティーにおけるマンション及びビル等の管理収益の増加に加え、工事売上が増加したこと等により、増収増益となりました。なお、当期より戸建リフォーム工事が次世代・関連事業セグメントから移管されており、下記売上高内訳では「マンション」に含まれております。
 また、2020年3月末のマンション管理ストックは830千戸(うち総合管理戸数525千戸)となっております。

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

1,739

1,908

169

 

1,945

△37

営業利益

86

87

2

 

94

△6

 

売上高内訳

 

 

(単位:億円)

 

比較

マンション

1,173

1,258

85

ビル等

566

650

84

 

期末管理物件数

 

 

 

 

 

2017年3月期末

2018年3月期末

2019年3月期末

2020年3月期末

マンション(戸)

741,624

822,231

831,684

829,533

ビル (件)

1,483

1,500

1,540

1,561

 

ニ.仲介事業

 売上高は1,314億円(対前期+10.6%)、営業利益は152億円(同+9.4%)となりました。
 東急リバブル㈱における売買仲介については、リテール部門・ホールセール部門ともに取引件数が増加したことに加え、不動産販売での売上増加等により増収増益となりました。

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

1,189

1,314

126

 

1,217

98

営業利益

139

152

13

 

152

0

 

 

売上高内訳

 

 

(単位:億円)

 

比較

売買仲介

577

598

21

販売受託

33

33

△0

不動産販売

557

664

106

その他

21

20

△1

 

ホ.ウェルネス事業

 売上高は1,145億円(対前期△7.6%)、営業利益は35億円(同△55.8%)となりました。
 前期に開業したリゾート施設や都市型ホテル等が通期稼働となった一方で、2018年7月に開業した「東急ハーヴェストクラブ軽井沢&VIALA」(長野県北佐久郡)の共有持分計上の反動減や資産売却の減少がありました。さらに新型コロナウイルスの感染拡大による需要の減退により、東急ステイ、オアシス、リゾート運営(スキー場、ハーヴェストクラブ等)が影響を受け、減収減益となりました。
 なお、2019年4月にシニア住宅「クレールレジデンス横浜十日市場」(神奈川県横浜市)が開業、2020年2月に都市型ホテル「東急ステイ金沢」(石川県金沢市)、「東急ステイ沖縄那覇」(沖縄県那覇市)及び「東急ステイ大阪本町」(大阪府大阪市)の3施設を開業するなど、事業拡大に努めております。

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

1,239

1,145

△94

 

1,206

△61

営業利益

79

35

△44

 

72

△37

 

売上高内訳

 

(単位:億円)

 

 

比較

 

リゾート運営

413

418

6

(ゴルフ場、ハーヴェストクラブ、スキー場、

リゾートホテル等)

オアシス

179

187

8

(フィットネスクラブ等)

シニア住宅

79

97

18

 

東急ステイ

133

143

10

(都市型ホテル)

福利厚生代行

97

101

4

 

販売

262

110

△152

 

その他

76

90

13

 

※当期より、「その他」に含まれていたリゾートホテルを「リゾート運営」に移管、リゾートに関わる不動産流通事 業を「販売」に移管しており、「前期」の数値も同様に組み替えております。

 

ヘ.ハンズ事業

 売上高は966億円(対前期△0.8%)、営業利益は2億円(同△67.9%)となりました。
 ㈱東急ハンズにおいては、第2四半期までは既存店が増収基調でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、2020年2月中旬頃からインバウンド需要を中心に売上が落ち込み、3月に入り臨時休業や営業時間短縮の店舗が増加したことから、減収減益となりました。
 なお、新規店舗として、2019年4月に「東急ハンズジュエル店」、8月に「東急ハンズパヤレバ店」、2020年2月に「東急ハンズグレートワールド店」(いずれもシンガポール)、2019年9月に「東急ハンズ浜松店」(静岡県浜松市)、11月に「東急ハンズ渋谷スクランブルスクエア店」(東京都渋谷区)が開業いたしました。

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

974

966

△8

 

1,014

△48

営業利益

8

2

△5

 

13

△10

 

ト.次世代・関連事業

 売上高は352億円(対前期△15.3%)、14億円の営業損失となりました。
 インドネシアの分譲マンションである「BRANZ SIMATUPANG」と「BRANZ BSD」の計上があった一方で、当期より戸建リフォーム工事を管理事業セグメントに移管したことや、海外事業での物件売却の反動減等により、減収減益となりました。
 なお、㈱東急ホームズの注文住宅事業は当期をもって終了し、新築工事請負事業は2020年4月1日付にて管理事業セグメントに移管いたしました。

 

(単位:億円)

 

 

前期

当期

比較

 

通期予想

対予想

売上高

416

352

△63

 

369

△17

営業利益

9

△14

△23

 

△7

△7

 

売上高内訳

 

 

(単位:億円)

 

比較

注文住宅

194

86

△108

造園建設

130

134

5

海外事業等

93

133

40

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は970億円となり、前連結会計年度末と比較して878億円の減少となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益630億円、減価償却費323億円等による資金増加の一方、たな卸資産の増加△642億円、法人税等の支払△287億円等により、△67億円の資金減少となりました。

(投資活動におけるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却192億円等による資金増加の一方、固定資産の取得△1,362億円、有価証券及び投資有価証券の取得△320億円等により、△1,472億円の資金減少となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済△1,108億円、社債の償還△258億円等による資金減少の一方、長期借入金1,078億円、コマーシャル・ペーパー900億円、社債の発行400億円等により、651億円の資金増加となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

 生産、受注及び販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。したがって、当該見積り及び予測については不確実性が存在するため、将来生じる実際の結果はこれらの見積り及び予測と異なる場合があります。なお、新型コロナウイルスの感染拡大による影響については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (追加情報)」に記載しております。

 当社グループでは、特に以下の会計上の見積り及び仮定が当社の財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。

 

イ.たな卸資産及び匿名組合出資(流動)の評価

 当社グループが保有しているたな卸資産は主に販売用不動産、仕掛販売用不動産及び未成工事支出金で構成されております。また、有価証券には匿名組合出資金(流動)が含まれております。これらについて、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定し、正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、その差額を評価減として費用計上しております。評価減はたな卸資産から直接減額しております。正味売却価額は、売価から見積追加工事原価及び見積販売直接経費を控除したものであります。たな卸資産の評価における重要な仮定は、売却市場における類似資産の市場価値です。

 

ロ.有形固定資産及びのれんの減損

 有形固定資産及びのれんは、資産又は資産グループにおいて減損をしている可能性を示す兆候の有無を判定し、兆候がある場合には当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は正味売却価額、あるいは使用価値により算定しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。減損の兆候の判定及び回収可能価額の見積りにおける重要な仮定は、価格の算定に用いる不動産鑑定評価基準、売却可能価額の算定に用いる類似資産の市場価値、使用価値の算定に用いる過去の実績に基づいた将来キャッシュ・フローの見積り、及び割引率です。過去の実績には、オフィスや商業施設のテナント賃料や稼働率、リゾート施設の単価や稼働率が含まれます。また、開発事業において減損の兆候が生じているかの判断を行うにあたり投資判断に関わる仮定として、地権者や自治体との交渉状況、開発後のテナント賃料や稼働率、建設工事コスト等があります。

 

ハ.投資有価証券の評価

 投資有価証券は、主に匿名組合出資金、資産流動化法に基づく特定目的会社に対する優先出資証券、業務上の関係を有する企業の株式及び満期保有目的の債券等です。時価のある有価証券については時価法を、時価のない有価証券については原価法を採用しております。また、時価のある有価証券については、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には合理的な反証のない限り、回復する見込みがないものとして減損処理を行い、30%から50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。他方、時価のない有価証券については、実質価額が取得価額と比べて50%以上下落したものについては「著しく下落した」ものとし、回復可能性が十分な根拠により裏付けられる場合を除き減損処理を行っております。

 有価証券の評価における重要な仮定は、投資先の業績及び投資先が保有する資産の評価です。また、開発事業を行う投資先の業績についての仮定は、「ロ.有形固定資産及びのれんの減損」の記載をご参照ください。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における我が国の経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、消費増税の影響も限定的なものにとどまるなど、第3四半期までは総じて緩やかな回復が継続しましたが、海外経済の減速や相次いだ自然災害の影響等から輸出や生産は弱い状況が続くなど、景気には変調の兆しもみられるようになりました。2019年の年末頃から始まった新型コロナウイルスの感染拡大影響は、第4四半期に入り世界各地へ飛び火してパンデミックの様相を呈し、移動の制限やサプライチェーンの寸断などを余儀なくされる中で、国際金融市場も不安定となるなど、世界経済は急減速いたしました。

 不動産業におきましては、オフィス市場は、企業の業容拡大による需給の逼迫から、空室率は低水準で推移し、賃料水準も上昇基調が続きました。不動産投資市場では、投資家の旺盛な投資意欲と良好な資金調達環境を背景に、高値圏での厳しい物件取得競争が続きました。また分譲住宅市場では、建設コストや地価の高騰を背景とする販売価格の高止まりの中でも、都心部を中心に立地や利便性に優れた物件には根強い需要が見られました。一方、リゾート関連市場では、相次いだ台風による風水害や雪不足など、異常気象の影響を地域によっては強く受けることとなりました。

 そのような事業環境の中、当連結会計年度の経営成績は、売上高9,632億円(対前期+6.8%)、営業利益793億円(同△1.1%)、経常利益675億円(同△4.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益は386億円(同+3.1%)となりました。
 不動産市況が堅調に推移する中、都市事業セグメント、住宅事業セグメント、管理事業セグメント、仲介事業セグメントは増収増益となった一方で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたウェルネス事業セグメント、ハンズ事業セグメント等は減収減益となりました。その結果、当期の業績は増収営業減益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失の減少によって増益となり、過去最高益を更新しました。

 また、財政状態については、当期末の資産残高は2兆4,874億円で、販売用不動産や仕掛販売用不動産の増加等により前期末から821億円増加、当期末の負債残高についても1兆8,931億円、有利子負債の増加等から前期末から566億円増加しております。期末の純資産残高については5,942億円、利益剰余金等が増加し、対前期末255億円増加しております。

 当社グループでは、2017年5月に策定した中期経営計画「Value Frontier 2020 Stage2 中期経営計画2017-2020」での「関与アセット拡大」及び「新たな需要創出」といった基本方針のもと、事業環境の変化に対応した以下3つの成長戦略を推進しております。

成長戦略① ライフスタイル提案型の街づくり

成長戦略② 循環型再投資事業の領域拡大

成長戦略③ ストックの活用強化

 本計画の3ヵ年を終了した当連結会計年度末現在において、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を業績面で一部受けることとなった一方、本計画における成長戦略はおおむね計画通りに進捗していると判断しております。各事業セグメントにおける本計画の達成状況及び経営成績の状況については以下のとおりです。

 

・都市事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は2,926億円(対前連結会計年度+14.1%)、営業利益は525億円(同+5.3%)投資家向けのビル等売却収益の増加や、渋谷ソラスタ等のオフィスビルや再生可能エネルギー発電施設の新規稼働により、増収増益となりました。連結会計年度は本計画における成長戦略①ライフスタイル提案型の街づくり(広域渋谷圏構想)にそって、渋谷ソラスタ及び渋谷フクラスが開業を迎え、神宮前六丁目地区第一種市街地再開発事業も権利変換認可を受ける等、開発中の大型プロジェクトを着実に進捗させることができました。また成長戦略②の循環型再投資事業の領域拡大についても、再生可能エネルギー事業の太陽光発電施設や物流施設といったインフラ関連物件が複数竣工し、本計画での成長戦略への取り組みが進捗しております。

 

・住宅事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は1,363億円(対前連結会計年度+12.3%)、営業利益は85億円(同+59.3%)分譲マンションの計上戸数の増加等により増収増益となりました。住宅ブランド「BRANZ(ブランズ)」の浸透に取り組むほか、本計画における成長戦略①ライフスタイル提案型の街づくり(世代循環型の街づくり)にそって複合再開発案件などの取り組みを強化いたしました。また、成長戦略②の循環型再投資事業の領域拡大についても、2016年10月より連結子会社となった㈱学生情報センターとのシナジーを活かして学生レジデンスの開発事業も強化し、成長戦略への取り組みが進捗いたしました。

・管理事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は1,908億円(対前連結会計年度+9.7%)、営業利益は87億円(同+1.8%)となりました。㈱東急コミュニティーにおけるマンション及びビル等の管理収益の増加に加え、リフォーム事業の強化・拡大を目的に設立された㈱東急Re・デザインが2017年10月から営業を開始、マンション等の完工高が増加したこと等により増収増益となりました。管理事業においては、マンションやビル・商業施設、公共施設・公営住宅など、さまざまな建物の管理・運営・改修をトータルサポートしています。良質な社会ストックの形成を通じて、お客さまの生活環境と資産価値の維持向上に貢献しています。

 

・仲介事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は1,314億円(対前連結会計年度+10.6%)、営業利益は152億円(同+9.4%)となりました。仲介事業においては、不動産の売買仲介・販売受託・販売など、不動産流通に関するあらゆる需要に対して、先進的なサービスや最適なソリューションで応えています。不動産情報マルチバリュークリエーターとして、さらなる進化をめざします。

 上記の管理事業セグメントと併せて、当社グループではフロー型社会からストック型社会への環境変化を捉え、お客さまとの接点をもとにしたストックからの事業機会を最大限に取り込むべく、成長戦略③としてストックの活用強化を掲げ、管理・仲介事業の強化を図っております。

 

・ウェルネス事業セグメント

 連結会計年度の業績は、売上高は1,145億円(対前連結会計年度△7.6%)、営業利益は35億円(同△55.8%)となりました。2019年4月には、成長戦略①ライフスタイル提案型の街づくり(世代循環型の街づくり)にそった事業として、クレールレジデンス横浜十日市場が開業いたしました。また、本計画では東急ステイ、ホテル、シニア住宅等の開発・運営力を活かした規模の拡大戦略を掲げておりますが、特に宿泊特化型ホテルの東急ステイについては、2020年3月末で4,310室の規模まで拡大しております。

 

・ハンズ事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は966億円(対前連結会計年度△0.8%)、営業利益は2億円(同△67.9%)となりました。ハンズ事業においては、ECの拡大などにより競争が激化する中、「モノ(信頼できる豊富な品ぞろえ)」「コト(ワクワクするヒントがみつかる場)」「ヒト(商品知識が豊富な頼れるスタッフ)」という3つの強みを活かしたコンサルティングセールスを展開し、「ライフスタイル創造提案No.1ブランド」の構築をめざしています。

 

・次世代・関連事業セグメント

 当連結会計年度の業績は、売上高は352億円(対前連結会計年度△15.3%)、14億円の営業損失となりました。次世代・関連事業においては、海外事業や造園・緑化事業など、新たなビジネスフィールドを創造・拡大しています。インドネシア及びアメリカを中心とする海外事業においては、総合デベロッパーとしてのプレゼンス発揮をめざした事業を展開しています。

 

 また、新型コロナウイルスの感染拡大による翌連結会計年度業績への影響を、合理的に見積もることは難しい状況にありますが、BtoCの事業を中心とした影響を想定しております。各事業セグメントで想定される影響は以下のとおりです。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期等により、実際の業績等は変動する可能性があります。

セグメント

事業への影響

業績への影響

都市事業

主要商業施設の休館

貸会議室の営業休止

歩合賃料の減少、固定賃料の減免

貸会議室収入の減少

住宅事業

マンションギャラリーの営業休止

計上戸数の減少

管理事業

工事業の新規営業活動縮小

管理業務の一部停止

工事収益及び管理収益の減少

仲介事業

仲介店舗の営業縮小

売買仲介事業の収益の減少

ウェルネス事業

フィットネスクラブや各種ホテルの休館

時間短縮等による営業縮小

運営収益の減少

ハンズ事業

店舗の休業及び時間短縮等による営業縮小

売上の減少

次世代・関連事業

マンションギャラリーの営業休止(インドネシア)

計上戸数の減少(インドネシア)

 

ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループでは「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおり、財務規律を維持しつつ収益力強化を図ることで、EPSの成長及びROE向上を目指す方針を掲げております。財務規律については、KPIとしてD/Eレシオ及びEBITDA倍率を採用しており、この数値をコントロールした上で固定資産やたな卸資産への成長投資を行っていく方針です。なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの資産、有形固定資産及び無形固定資産の増加額の内訳は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

都市

住宅

管理

仲介

ウェルネス

ハンズ

次世代・関連事業

調整額

連結

財務諸表

計上額

セグメント資産

1,612,161

282,530

127,111

98,286

273,263

37,100

138,131

△81,215

2,487,369

有形固定資産及び無形固定資産の増加額

114,621

1,663

2,401

2,761

11,688

2,153

77

991

136,359

 

 当社グループの主要な資金需要は、都市事業セグメントにおけるオフィスビルや商業施設、再生可能エネルギー発電施設等の取得・開発資金、住宅事業セグメントにおけるマンション用地の取得・開発資金、ウェルネス事業セグメントにおけるリゾート施設等の取得・開発資金、次世代関連事業セグメントにおける海外物件への出資等であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行による資金調達等にて対応していくこととしております。また、手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

 当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローはたな卸資産の増加により67億円の減少、投資活動によるキャッシュ・フローは固定資産の取得や投資有価証券の取得等により1,472億円の減少となりました。これらの投資資金を補うために、財務活動によるキャッシュ・フローは有利子負債増加等により651億円増加し、現金等の期末残高が970億円となりました。翌連結会計年度においても、都市事業セグメントにおいて開発中の大型物件の建築工事金をはじめとしたオフィスビルや商業施設、再生可能エネルギー施設等への投資が計画されておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、借入金の調達等の財務活動によるキャッシュ・フローで対応する予定です。

 当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュフローの実績及び、翌連結会計年度における予想は以下のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

2020年3月

2021年3月期

(予想)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△67

350

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,472

△1,550

財務活動によるキャッシュ・フロー

651

1,200

(注)2021年3月期(予想)のたな卸資産への投資は、投資活動によるキャッシュ・フローに含みます。

 

 

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。