文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現を目指し、理想の住まいづくりを通じて社会の発展に貢献していくことを経営の基本方針としております。
更に、今後展開を進める海外市場においては、「良質で安全、安価な住宅を供給して社会に貢献する」という経営方針を掲げ、「時代の変革をいち早く読み、素早く対応できる企業集団」として、常に変革に挑みながら、世界中により良い住まいを提供できるよう、更なる発展・成長を続けてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループの主要な事業である不動産事業は、景気等の影響を受けて業績が変動することから、中期的な視点で目標とする経営指標を設定し、経営を行っていくことが妥当であると考えます。
この考え方に基づき、当社グループは資本収益性を意識しつつ、事業ポートフォリオの拡大を推進するための経営指標として、2030年3月期をターゲットとした下記の数値をガイドラインとして掲げ、収益構造の変革を推進してまいります。
|
目標とする経営指標 |
ガイドライン |
|
オーガニック成長率 |
4.0% |
|
戸建分譲売上依存率 |
70.0% |
|
自己資本利益率(ROE) |
10.0%以上 |
(注)1.上記経営指標の各目標値については、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
2.オーガニック成長率とは、既存事業領域による売上高の平均成長率のこと。
(3)経営環境
当社グループの主要な事業である不動産事業の経営環境は以下のとおりです。
① マクロ環境
国内における人口・世帯数の減少、特に住宅の一次取得者層である生産年齢人口が減少することにより住宅市場の縮小が懸念されます。他方、長寿命化の進展に伴い、長く健康でいたいというニーズは大きくなり、住宅に求められる機能は変化していくことが予想されます。また世界全体を見ると、人口・世帯数の増加により住宅需要の拡大が見込まれる国や、市場規模が大きく安定的な需要が見込まれる国があります。
国内における経済環境は、政策金利が上昇傾向にあり、長く続いてきたデフレ経済からインフレ経済への転換期にあり、住宅ローン金利の動向によっては、住宅需要に対して影響を及ぼす可能性があります。
② 市場動向
中長期的には人口・世帯数の減少により住宅市場の縮小が懸念されますが、注文住宅市場、賃貸住宅市場、分譲マンション市場と比較すると、分譲戸建住宅市場は安定的な成熟市場であるといえます。近年、物価上昇に伴い建築コストが上がったことから、相対的に販売価格が低い地方圏から物件に割高感が出始めており、地域によって需要動向に差異が見られます。
他方、優良な住宅ストック市場の拡大に伴い、今後は中古住宅市場とリフォーム市場の成長が予想されます。
③ 競合動向
戸建分譲業界は、中小事業者を含めた多数の競合企業が存在する業界構造です。また参入障壁が低いことから、注文住宅メーカーによる分譲戸建市場への参入や、分譲住宅メーカーの営業エリアの拡大により競争環境は厳しくなっております。
④ 当社グループの構造
当社グループは、持株会社である当社を中心に、戸建分譲事業を主業とする6つの事業会社と、機能別事業会社で構成されております。各事業会社は、グループ統一的な事業方針のもと、それぞれの自主性、独自性を尊重した事業運営を行っております。戸建分譲事業においては、各事業会社が販売する住宅の価格帯や仕様が異なるため、多様な顧客ニーズに対して全方位的に対応できる商品群を提供しております。
⑤ 主要な製品・サービスの内容
戸建分譲事業では、「誰もがあたり前に家を買える社会」を実現するために、住宅の一次取得者を主要ターゲットとして、耐震性能や断熱性能などに優れた住宅を、お買い求めしやすい適正な価格で提供しております。また、住宅を購入して頂いたお客様に対しては、定期的なメンテナンスを行うことにより、住宅の性能を維持し、長く安心して快適に暮らして頂けるようなサービスも提供しております。
戸建分譲事業以外にも、マンション分譲事業、注文住宅事業、メンテナンス・リフォーム事業や、不動産賃貸事業、住宅設備機器販売事業、ホテル事業など幅広くお客様の人生や日常生活に寄り添う商品・サービスの提供を行っております。
⑥ その他
当連結会計年度においては、雇用・所得環境の改善がみられるなど景気回復への期待感が高まっている一方、ウクライナ情勢の長期化や中東地域での緊張の高まりに加え、米国の経済政策に端を発した貿易摩擦は、経済環境の先行きを不透明にしております。加えて、建築コスト高騰等による住宅販売価格の高止まりや住宅ローン金利の上昇による消費マインドの低下等が住宅需要を抑制する懸念があり、引き続き注視が必要であります。
(4)中期的な経営戦略
中核事業である戸建分譲事業は、エリア毎の需給バランスを考慮した上で、利益成長を重視した事業展開を行っていく方針です。また、収益構造を安定化させるために、当社グループの分譲戸建住宅を購入頂いた顧客を対象としたメンテナンス・リフォーム事業の拡大と、戸建賃貸をはじめとする収益不動産事業の拡大を図ると共に、マンション分譲事業や請負工事事業などの業容拡大によって事業ポートフォリオを拡げていく方針です。
国内における不動産事業で創出したキャッシュは、今後の成長事業として位置付ける海外事業の拡大や、住宅の安全性能、環境性能、居住性能の向上に加え、施工の省力化に資する研究開発に投資をしていく方針です。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① コア事業の競争力強化
実質賃金が伸び悩む中、分譲戸建住宅の販売価格は上昇傾向にあります。足許では住宅ローン金利上昇の兆しも見られ、長く続いたデフレ経済からインフレ経済への大きな転換点を迎えようとしております。このような事業環境下において、当社グループの強みであるコスト競争力を更に強化することに加え、ターゲットとなるお客様のニーズの変化を的確に捉え、マーケット・イン的な発想によって販売戦略の再構築を図ります。戸建分譲事業を展開する主要グループ6社が、それぞれの特長を活かして競争力を高め、当社グループ全体として、市場のカバレッジを高めてまいります。
② 事業ポートフォリオの拡大
メンテナンス・リフォーム事業は、既にビジネスモデルの型化(標準化)が完了しており、グループ内に横展開することによって確実に業容拡大を進めてまいります。収益不動産事業は、資本収益性に配慮しながら、戸建賃貸も含め計画的な物件取得を進めてまいります。
③ サステナビリティ経営の推進
当社グループは、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長の両立を図るべく、サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティ経営を推進しております。2025年1月には、「健康経営推進委員会」を新設し、健康的で働きがいのある職場環境づくりを通じて、人的資本経営を加速させてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方及び取組み
当社グループは、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長の両立を図るべく、サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティ経営を推進しております。
当社グループは、経営理念として「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」を掲げ、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現という事業コンセプトに基づき、安全・快適・健康に暮らせる住環境をお客様に提供してまいりました。この「誰もがあたり前に」というコンセプトは、サステナブルな社会を実現する上でも極めて重要であると考えております。
① サステナビリティ基本方針
人生100年時代、持続可能な社会の創造へ。
私たち飯田グループは、住宅業界のリーディングカンパニーとして持続的成長と社会貢献で、より多くの人々が幸せに暮らせる豊かな社会づくりを推進し、企業価値の向上に努めます。
|
・より多くの人々が長く安心して活き活きと暮らせる住環境の実現を目指します。 ・事業を通じて環境に配慮した住宅・サービスを提供し、CO2排出量削減や廃棄物の抑制、生物多様性の保全などに取り組みます。 ・個人の人権、多様な価値観を尊重するとともに、安全で快適な職場環境を実現し働きがいのある健康的な職場環境の整備に努めます。 ・あらゆる法令、規則等やルールを厳格に遵守するとともに腐敗防止に取組み、誠実かつ公正な企業活動を遂行します。 ・適切な情報開示により、透明性や信頼性を高め、ステークホルダーとの積極的な対話に努めます。 |
② 当社グループのマテリアリティ(重要課題)
当社グループは、企業活動を通じて社会課題の解決と当社グループの持続的成長の両立を図るべくマテリアリティを特定し、グループ一体となって、統一的にサステナビリティ経営を推進しております。
マテリアリティの特定にあたっては、GRIスタンダードやSASB等に基づくESG課題、業界特有のESG課題を網羅的に抽出し、投資家・株主、お客様、取引先、従業員をはじめとしたステークホルダーにとっての重要度と、当社グループにとっての重要度の2つの観点から、ESG課題の選別を行っております。抽出された重要度の高いESG課題に対してはシナリオ分析を行い、当社グループにとっての機会及びリスクを検討し、優先度の高いものをマテリアリティとして特定しております。マテリアリティは、サステナビリティ推進委員会で審議した後、取締役会にて決議しております。マテリアリティは、事業環境の変化やマテリアリティ毎に設定する目標値に対する進捗状況等を踏まえて、概ね3年程度を目安として検証を行い、必要に応じて見直しを行う予定としております。
取締役会並びにサステナビリティ推進委員会の構成メンバーについては、「
「当社グループのマテリアリティと主な取り組み内容」
|
|
マテリアリティ |
主な取組み内容 |
|
|
環境 (E) |
地球環境保全・クリーンエネルギーへの貢献 |
温室効果ガスの削減 |
|
|
商品・サービスによるエネルギー効率の改善 |
|||
|
社会 (S) |
誰もが安全・快適・健康に暮らせる住環境の実現 |
誰もが家を持てる社会の実現 |
|
|
安全性の高い住環境の創出 |
|||
|
健康に暮らせる住環境の創出 |
|||
|
住宅の長寿命化・資産価値の維持 |
|||
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企業と組織 (G) |
健康的で働きがいのある職場環境の維持 |
ワークライフバランスの推進 |
健康経営の推進 |
|
労働時間の減少 |
|||
|
人材育成と雇用の確保 |
人材の育成・活用 |
||
|
多様性の確保 |
|||
|
法令・規則の厳格な遵守と公平公正な企業活動 及びリスク管理 |
リスクマネジメント体制の構築 |
||
「マテリアリティ特定プロセス」
③ ガバナンス
当社は、取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、主要グループ会社の代表取締役を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、定期的に開催しております。更に、同委員会の下部組織として「サステナビリティ推進部会」を設置しており、同委員会での決定事項を具体的な実施策に落とし込み、グループ一体となって、統一的に推進できる体制を構築しております。
サステナビリティ推進体制の構成と、構成する各会議体の機能及び活動概要は以下のとおりです。
(ⅰ)取締役会
取締役会は、サステナビリティ推進委員会で審議した方針や目標、施策推進状況や重要な変更事項等の報告を定期的に受け、重要事項については決議を行い、サステナビリティに関する執行側の取組みを監督しております。また、サステナビリティに関して知見を有する各独立社外取締役は、当社の持続的な企業価値向上に対する有効性の視点から監督し、サステナビリティ経営の実効性を高めております。
(注)1.サステナビリティ推進委員会及び同委員会と連携するリスクマネジメント委員会の構成メンバーは取締役会構成メンバーと重複しており、また監査役もオブザーバーとして同会議に参画していることから、取締役会での審議だけではなく、委員会を通じて代表取締役以外の取締役や監査役からの監督も行われております。サステナビリティ推進委員会及びリスクマネジメント委員会の構成メンバーについては、「
(注)2.リスクマネジメント委員会については、下記「
(ⅱ)サステナビリティ推進委員会
サステナビリティ推進委員会は、代表取締役社長を委員長とし、主要グループ会社の代表取締役を委員として構成することによって、本委員会での審議内容をグループ会社全体に迅速に共有・展開しております。また、サステナビリティ経営に知見を有する社外取締役を委員として構成すると共に、監査役もオブザーバーとして出席しております。同委員会は、「サステナビリティ推進委員会規程」に基づき、サステナビリティに関する基本方針・戦略・目標の策定、施策の進捗管理・評価、下部組織を通じたグループ会社への指示・管理、リスク及び機会に関する評価の適切性などを議論し監督しております。また、必要な情報の抽出や調査を実施し、取締役会への報告・提言も実施しております。
(ⅲ)サステナビリティ推進部会
サステナビリティ推進部会は、サステナビリティ推進委員会の下部組織として、主要グループ会社のサステナビリティ担当者で構成され、定期的に開催しており、サステナビリティ推進委員会の方針決定に基づいて、グループ会社全体のサステナビリティに関する具体的な取組みや課題に関して改善活動を進めております。同部会を通じて、グループ一体となってサステナビリティに関する取組みを推進しております。また、必要な情報の抽出や調査を実施し、サステナビリティ推進委員会への報告・提言も実施します。
「サステナビリティ推進体制」
④ 戦略
(ⅰ)地球環境保全・クリーンエネルギーへの貢献環境
当社グループは、環境に配慮した事業活動を通じて、環境保全を含めたESG課題の解決を推進しております。グループ全体の環境方針を定め、断熱性能が高く、消費エネルギー量の少ない住宅を供給するだけではなく、資材調達先等を含む事業活動プロセス全体での環境負荷低減を推進していく方針です。
また、CO2を吸収・固定化する木材の利用促進は、脱炭素社会の実現に向けて重要な取り組みであるとの認識から、保有する森林資源の適正な保全と管理を推進し、CO2吸収能力を高め、カーボンニュートラルの達成に貢献してまいります。
(ⅱ)誰もが安全・快適・健康に暮らせる住環境の実現
当社グループは、分譲戸建住宅を中心に住まいに関わる様々な商品・サービスを通じて、人生100年時代においても、より多くの人々が長く、安全、快適、健康に暮らせる社会の実現を目指しております。耐久性能、安全性能、環境性能の高い高品質な住宅の供給と、誰もが購入しやすい値ごろ感のある住宅を供給することは相反する側面があるものの、その両方を実現することが当社グループの社会的存在意義であると考えております。このため、分譲戸建住宅全棟で住宅性能評価を取得した高品質な住宅を、地域ごとの平均的な世帯収入で購入可能な販売価格で提供してまいります。
また、ライフステージやライフスタイルに応じて健康で豊かに暮らすことのできる社会の実現を目指し、長く安心して暮らしていただくために、住む人の健康にも寄り添う「健康住宅」の開発を推進してまいります。
(ⅲ)健康的で働きがいのある職場環境の維持
当社グループは、人的資本の向上が企業成長の源泉と捉え、経営の重要課題の一つであると認識しております。多様な価値観を認め、従業員の自律的な成長を支援し、人と組織が強くなることで組織力を高めてまいります。また、ワークライフバランス、健康経営を推進し、誰もが安心して活躍できる、働きがいのある健康的な職場環境を築いてまいります。
(注)その他の取り組みについては、下記「
(ⅳ)法令・規則の厳格な遵守と公平・公正な企業活動及びリスク管理
当社グループは、事業活動に関わるあらゆる法令、規則等やルールを厳格に遵守するとともに、腐敗防止に取り組み、誠実かつ公正な企業活動を遂行すべく、グループ全体として効果的かつ効率的なリスクマネジメント体制を構築し強化してまいります。人権研修や情報セキュリティ研修、コンプライアンス研修をはじめとしたコンプライアンス教育を推進し、役職員のコンプライアンス意識の向上を図るとともに、従業員並びにサプライチェーンの労働安全の確保、安全配慮、環境整備を推進してまいります。
⑤ リスク管理
コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みとして、当社代表取締役社長を委員長とし、主要グループ会社の代表取締役を委員として構成するリスクマネジメント委員会を設置し、グループ全体のリスクマネジメントに関するさまざまな審議を行うとともに効率的かつ効果的なリスクマネジメントを推進する体制を整備しております。
サステナビリティ推進委員会とリスクマネジメント委員会は連携し、環境リスク(温室効果ガス排出削減、資源の持続可能な利用、廃棄物管理、生態系保全等)、社会リスク(人権保護、労働環境の改善等)、ガバナンスリスク(コンプライアンス、企業倫理、サプライチェーン管理等)を含むグループ全体におけるリスク管理が実施できる体制となっております。サステナビリティ推進委員会は、中長期の事業環境変化によるリスク及び機会の分析をおこなっており、同委員会で検討されたリスクについては、リスクマネジメント委員会へ報告されております。リスクマネジメント委員会では、サステナビリティ推進委員会で抽出されたリスクに加え、業務運営から検出されたリスクも含めて対応策の検討を行い、グループ全体のリスク管理をおこなっております。
「リスクマネジメント体制」
(注)1.リスクマネジメント体制に示すとおり取締役会の諮問機関である「リスクマネジメント委員会」と「サステナビリティ推進委員会」が連携し、サステナビリティに関する基本方針、サステナビリティ関連を含めて経営全般に係るリスクや機会の選定、優先順位付け、対応策の決定、進捗管理等を行っており、定期的に取締役会への報告や、当社規程の定めに従い決議事項の決議を行っております。
(注)2.サステナビリティ推進委員会及びリスクマネジメント委員会の構成メンバーについては、「
⑥ 指標及び目標
各マテリアリティの戦略の進捗状況を把握するためのKPI並びに2030年3月期をターゲットとする目標値は以下のとおりです。
|
マテリアリティ |
主な取組み内容 |
KPI |
2025年3月期実績(注)1 |
目標 |
|
|
地球環境保全・ クリーンエネルギーへの貢献 |
温室効果ガスの削減 |
売上収益当たりのCO2排出量 (t-CO2e/百万円) |
4.0 |
2.5 |
|
|
商品・サービスによる エネルギー効率の改善 |
新築分譲戸建のZEH水準比率 |
90.4% |
100% |
||
|
誰もが安全・快適・健康に暮らせる住環境の実現 |
誰もが家を持てる社会の実現 |
ターゲット世帯が購入可能な物件比率 |
94.9% |
96% |
|
|
安全性の高い住環境の創出 |
|||||
|
健康に暮らせる住環境の創出 |
住宅性能評価取得率 |
100% |
100% |
||
|
住宅の長寿命化・資産価値の 維持 |
|||||
|
健康的で働きがいのある職場環境の維持 |
ワークライフバランスの推進 |
健康経営の推進 |
|
|
|
|
労働時間の減少 |
|
|
|
||
|
人材育成と 雇用の確保 |
人材の育成・ 活用 |
|
|
|
|
|
多様性の確保 |
|
|
|
||
|
|
|
|
|||
|
法令・規則の厳格な遵守と公平・公正な企業活動及びリスク管理 |
リスクマネジメント体制の構築 |
休業災害度数率 |
2.3 |
0 |
|
|
コンプライアンス研修 受講率 |
98.9% |
100% |
|||
(注)1.2025年3月期(実績)につきましては、連結ベースでの記載としております。
ただし、海外においては、日本国内と法制度や資格制度等の環境が異なることから画一的な基準に基づき実績に含むことが困難なため、海外子会社の実績は含んでおりません。
2.弁護士、公認会計士、不動産鑑定士、司法書士、税理士、宅地建物取引士、建築士、施工管理技士等の当社が指定する資格を示しております。
(2)気候変動関連等に対する取組(TCFD提言への対応)
当社グループでは、サステナブルな社会を実現するためには、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温室効果ガスの排出量削減だけでなく、環境性能の高い商品・サービスを誰もが当たり前に手に入れられるようにすること、すなわち、環境対策に必要なコスト負担と、誰もが享受できる値ごろ感を両立させることが重要であると考えております。
当社グループは、気候変動や環境規制の強化等による事業環境の変化が当社グループに与えるリスク及び機会について評価、分析を行い、事業戦略へ組み込むことで環境負荷低減を推進してまいります。
① 戦略
当社グループでは、気候変動関連のリスクは事業活動に大きな影響を及ぼす重要な課題であると認識し、NZEシナリオ及びIPCCを参考に、地球の平均気温上昇が産業革命前と比較して+1.5℃と+4.0℃となる2つのシナリオを選択し、重要性の判断から「戸建住宅事業(注)1」と「森林事業(注)2」について分析を行いました。
その結果、気候変動は政策・法規制リスクをはじめ、短期・中期・長期で当社グループの事業に影響を及ぼす可能性が明らかになりました。
当社グループでは、気候変動を含む環境問題を重要な経営課題の1つと捉え、2050年カーボンニュートラルの達成という目標を前提とした事業戦略を検討してまいります。
(注)1.戸建住宅事業とは、戸建分譲事業及び注文住宅事業の木造住宅を供給する事業のこと。
(注)2.森林事業とは、森林管理を行い、木材の伐採、製材加工を行う事業のこと。
② リスク及び機会
当社グループが供給している住宅は、長期間に渡って使用する商品の特性上、その利用期間を通じて発生する温暖化ガスが多量になります。商品のエネルギー効率を改善することは環境負荷低減になり、競合商品との差別化要素になることが考えられます。
当社グループが供給する分譲戸建は、すでに全棟で住宅性能評価を取得しており、断熱化対応、一次エネルギー消費量削減対応を行っているため、必要となるコストは相対的に小さいことから、販売価格における相対的な優位性は高まり、販売棟数拡大の機会となることが考えられます。
|
|
リスク |
気候変動による 事業リスク |
財務への潜在的な影響 |
顕在化 期間 |
財務的 インパクト |
|
1.5 ℃
移 行 リ ス ク |
政策・法規制 |
炭素税・ 炭素排出量規制 |
炭素税が導入された場合、増税により利益額(利益率)を押し下げる影響がある。 |
中期 |
大 |
|
省エネ・ 低炭素規制 |
住宅に対する断熱基準が引き上げられた場合、追加コストが発生することから、利益額(利益率)を押し下げる影響があるものの、既に供給する住宅全棟で住宅性能表示制度の断熱等性能等級4以上、一次エネルギー消費量等級5以上を取得するとともに、2025年4月以降に確認申請を取得する分譲戸建住宅は全棟でZEH水準を達成していることから、その影響は「小」の範囲に抑えることが可能である。 |
短期 |
小 |
||
|
再エネ装置の 設置義務 |
新築戸建住宅のZEH義務化が行われた場合、再生可能エネルギー設備の設置コスト分が販売価格の上昇となり、補助金や税制優遇策次第では、住宅需要を縮小させるだけでなく、利益額(利益率)を押し下げる可能性がある。 |
短期 |
大 |
||
|
研究開発投資 |
低炭素型住宅の 開発 |
より断熱性能が高く、エネルギー消費量の少ない低炭素型住宅が求められるようになることが想定されるが、既にZEH等への対応に向けた研究開発を計画的に推進しており、追加的な投資及び費用による財務的な影響は小さい。 |
短期 |
小 |
|
|
市場 |
顧客ニーズ・ 購買行動の変化 |
エシカル消費志向が住宅分野にも広がり、環境対応をはじめとする企業活動が消費者の購買決定に大きく影響することが想定されるが、現状推進している環境対応をすすめることで、追加的な投資及び費用による財務的な影響は小さい。 |
中期 |
小 |
|
|
調達 |
資材調達コストの上昇 |
温暖化対策が加速していく過程において、CO2固定化可能な木材に対する需要が高まり、木材価格は上昇することが予想されるが、当社は自社で森林資源を保有していることから、グループ連結ベースでの財務的な影響は限定的である。 |
中期 |
中 |
|
|
リスク |
気候変動による 事業リスク |
財務への潜在的な影響 |
顕在化 期間 |
財務的 インパクト |
|
4 ℃
物 理 リ ス ク |
極端な気象変化
|
施工現場への影響 |
施工現場の被災による復旧費や引渡し遅延リスク等が想定されるが、当社は施工現場当たりの規模が小さいことに加え、営業エリアが全国に展開しておりリスク分散が図られていることから財務的な影響は小さい。 |
短期 |
小 |
|
サプライチェーンへの影響 |
サプライヤー工場の被災により操業停止やサプライチェーン分断等が発生した場合、施工遅延による住宅の引渡し時期の遅れや、借入金の金利負担の増加などが生じるため財務的な影響が生じる可能性がある。 |
短期 |
中 |
||
|
降水パターンの変化 |
当社資材工場への影響 |
河川氾濫による洪水、内水による被害等が想定されるが、当社工場の立地から長期に操業が停止するようなリスクは低く、財務的な影響は小さい。 |
中期 |
小 |
|
|
平均気温の上昇 |
施工現場での作業への影響 |
施工現場の作業効率低下、熱中症による健康被害への対策費等の増加や、引渡し遅延のリスクがあるが財務的な影響は小さい。 |
中期 |
小 |
|
|
森林の生育環境 への影響 |
住宅建設に使用される針葉樹の生育環境が変化することが想定されるが、2050年を想定した場合、その影響は限定的と思われ、財務的な影響は小さい。 |
長期 |
小 |
|
|
機会 |
気候変動による 事業機会 |
財務への潜在的な影響 |
顕在化 期間 |
財務的 インパクト |
|
1.5 ℃
機 会 |
市場 |
分譲戸建住宅市場における低炭素住宅の需要拡大 |
分譲戸建住宅市場はZEH対応が遅れているが、当社は既に断熱化対応、一次エネルギー消費量削減対応を行っているため、必要となる追加コストは相対的に小さいことから、販売価格における相対的な優位性は高まり、販売棟数拡大の機会となる。 |
中期 |
大 |
|
木材需要の拡大 |
温室効果ガスの削減対策が強化されていく過程で、CO2を固定できる木材の需要が高まることが想定される。従来木材を利用していない高層建築物などで新たな木材需要が創出されれば、当社の木材事業の売上収益の拡大が見込まれる。 |
中期 |
大 |
||
|
人工光合成技術による用途分野の拡大 |
人工光合成技術は、CO2の排出がないだけでなく吸収効果もあることから環境効果は太陽光パネルより高い。単位コスト当たり発電効率が代替手段よりも高い装置が開発できれば住宅の付加価値を高めるとともに、装置単体としての売上拡大も期待できる。 |
中期 |
小 |
||
|
木造住宅の訴求価値向上 |
当社グループでは年間40,000棟の木造住宅建築を通じて年間65万tのCO2を固定している。消費者の環境意識が高まることで訴求価値は高まり、当社住宅の販売促進効果が見込まれる。 |
短期 |
小 |
||
|
森林資源を活用した環境貢献 |
保有する森林資源はCO2の固定化に貢献する経営資源であり、環境志向の高い消費者への訴求価値は高くなる。 |
短期 |
小 |
||
|
森林によるCO2クレジット創出 |
将来、仮に森林クレジットをGHG排出量削減に使用することができるようになれば、直接的な財務効果が見込まれる(ただし、現時点では不確定であることから財務的な影響についての見積もりは行っていない)。 |
短期 |
- |
③ 指標及び目標
当社グループでは、気候変動への対応として「2050年カーボンニュートラル」実現を目指し、2030年の気候関連リスク・機会を評価・管理するため中長期温室効果ガス削減目標を策定し、取組みを進めております。この目標と実績の推移は以下のとおりです。
<GHG排出量の実績>
当社グループのGHG排出量算定は、国際的な基準である「GHGプロトコル」に準拠しております。また、信頼性の高いデータ収集及び情報開示が重要であるとの認識のもと、Scope1、Scope2、Scope3のGHG排出量について、第三者認証を受け、保証報告書を取得しております。
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|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
Scope 1・2 (万t) |
|
|
|
|
|
|
Scope 3 (万t) |
|
|
|
|
|
<中長期 温室効果ガス削減目標>
当社グループは、SBT(Science Based Targets)1.5℃水準として求められるCO2排出削減レベルを考慮し、Scope1、Scope2について「2050年度実質ゼロ」という最終目標の達成に向け中間目標を設定し、削減策を推進しております。
|
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2030年度 |
2050年度 |
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Scope1 |
46% |
100% |
|
Scope2 |
||
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Scope3 |
(3)人的資本に関する取組み
当社グループは、人的資本の価値向上が企業成長の源泉と捉え、経営の重要課題の一つであると認識しております。健康的で働きがいのある職場環境の維持を通じ、採用の強化、人材育成、働き方の多様化、人材の多様化、グローバル化に取組みます。グループ経営方針に定める「常に新時代を切り拓く市場創造のトップ集団であり、社会から信頼・尊敬される企業集団」「社員が挑戦でき、働き甲斐のある、生き生きとした魅力的な職場」となることを常に意識し、従業員一人ひとりの個の成長と多様性を高め、人と組織を強くしていくことで、持続的成長の実現を目指してまいります。
① 戦略
(ⅰ)健康経営の推進
人的資本の価値向上に向けた取組みを加速するべく、『社員一人ひとりの健康を大切にして、「住まいと暮らし」で地域社会に貢献する企業として「人生100年」「健康100年」「住宅100年」を目指します』という飯田グループ健康経営宣言を策定し、健康経営推進委員会を新たに設置しました。「未病の改善」の概念を取り入れ、生涯にわたる従業員の健康維持推進を目指し、「卒煙」「生活習慣の改善」「ヘルスケア」を当面の重点施策とし、ストレスチェック受検、セミナー、eラーニングの実施等、従業員の心身の健康を積極的に支援しております。
(ⅱ)労働時間の減少
有給休暇の取得促進に取り組んでおり、有給休暇取得率に関しては、2025年3月期実績は74.5%と、政府目標を上回り、高い水準を維持しております。生成AIの業務への活用を開始する等、引き続き業務プロセスの見直しやデジタルツールの活用による効率化を進めることにより、社員が短い時間でより高い成果を生み出せる環境を整えるとともに、多様な働き方を実現し、健全かつ活力ある職場を目指してまいります。
(ⅲ)人材の育成・活用
社員の自律的成長とスキル向上をサポートするため、グループ全体で資格手当の拡充・統一を図ってまいりました。その結果、グループ全体の有資格者数は6,000名を超え、増加基調にあります。また新卒採用社員向け宅建合格講座、若手社員向け各種技能講習、管理職向けマネジメント研修等、グループ各社において各種研修プログラムを展開しております。各社の取組みにおける工夫や好事例を適宜グループ内で共有を図ることで、グループ全体の生産性向上や競争力強化ひいては採用強化や離職率低減等人材の雇用確保にもつなげてまいります。
(ⅳ)多様性の確保
組織の成長力の維持強化のためには、多様な人材活用による価値創造が必要と考え、性別、国籍、新卒、中途採用に係らず、能力のある人材を中核人材に登用することとしております。測定可能な目標として、女性の管理職登用及び男性育児休業取得率に関し、政府目標に合わせて目標設定を行っております。また、両立支援の一環として、小さな子供を持つ従業員が安心して働けるよう、本社(東京都武蔵野市)ビル内に事業所内託児所「すまいーだ保育園」を設置しております。社内環境整備を通じ、多様な人材が活躍できる職場作りを進めてまいります。
② 指標及び目標
「健康的で働きがいのある職場の維持」をマテリアリティに設定し、主な取組みを「ワークライフバランスの推進」「人材育成と雇用の確保」としております。戦略の進捗状況を把握するためのKPIは、「ストレスチェック受検率」「有給休暇取得率」「資格保有率」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」となります。目標値については、上記「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)国内人口、世帯数の減少について
日本国内における人口、世帯数は減少していくことが予測されております。特に、当社グループの不動産分譲事業の主要ターゲットでもある生産年齢人口が減少することにより、中長期的には当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「事業ポートフォリオの拡大」を経営戦略の一つとして掲げており、住宅周辺分野への事業領域の拡大と、今後経済成長が見込まれる海外市場への事業展開を推進しております。
(2)労働力不足・人材確保について
人口減少による影響は業績のみに留まらず、建設現場や事業運営に携わる人材獲得という点においても、影響を及ぼす可能性があります。具体的には、人材の獲得競争の激化や従業員の退職等によって十分な人材の確保及び育成ができなかった場合に、競争力の低下に繋がり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、優秀な人材を幅広く採用・育成することで、事業活動の推進と競争力の維持向上を図っており、社会環境の急速な変化や価値観の多様化を考慮しつつ「社員ひいては会社の繁栄につながる職場環境」の整備を進めております。また、建設現場におけるDX推進や大工等の内製化、事業運営における資格取得等のキャリア形成を促進することにより、グループ内人材育成の基盤作りも強化してまいります。
(3)原材料・資材価格・人件費、物流費、外注費等について
国内外の市場の動向等により、原材料・資材価格・人件費・物流費等の上昇、またそれによる外注先の原材料調達状況等に起因する外注費等の上昇は、その影響額を販売価格へ転嫁することが難しい場合に、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このような資材調達リスクに対しては、日常的に調達先の情報収集に努め、必要に応じて前倒しで確保する等、安定調達に努めるとともに、当社グループのスケールメリットを活かし、競争原理を活用した調達を行っております。また木材や内装建材、住設機器等主要な住宅資材の調達に関しては、グループ内での内製化を進めており、品質・コスト両面での安定的な調達体制を構築すると共に、外部の調達先に対する交渉力を高める取り組みを行っております。
(4)保有資産の価値下落について
当社グループが保有している販売用不動産等の棚卸資産(2025年3月期7,913億72百万円)や有形固定資産(2025年3月期1,305億98百万円)について、不動産市況の著しい悪化等によってそれらの価値が下落し、評価損の計上や減損処理を行うことになった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このような不動産市況によるリスクに対して当社グループでは、在庫回転率を重要な経営指標の一つとして事業運営を行っております。在庫回転率を高めることによって、市況変動による保有資産の価格下落の影響を極小化するべく対応を進めております。
また、当社グループが行う輸出入及び外国間取引において外貨建決済を行うことに伴い、外貨レート変動のリスクがあります。これらの取引に対し、当社グループでは必要に応じて適切なヘッジを行っておりますが、予想を超える大幅な為替相場の変動が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外事業について
海外での事業活動には、経済状況の変化・景気の後退、為替レートの変動、法令・規制等の予期せぬ変更、政情の悪化、テロ・紛争・暴動等による社会的又は政治的混乱のリスクが存在するとともに、社会的慣習の違いが外国公務員等への贈賄等の法規制に問われるリスクも存在します。これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
海外事業の推進に当たって当社グループでは、事前の市場調査から把握されたリスク要因と想定する事業価値を総合的に考慮しながらコンプライアンス体制の構築と事業推進の判断を行うとともに、監督官庁や現地のグループ会社と連携し、状況の的確な把握と速やかな対策の協議等、管理体制の強化に取り組んでおります。
ウクライナ情勢については、引き続き情勢を注視するとともに、事業活動に及ぼす影響の最小化に努め、適時適切な対応を進めてまいります。
(6)住宅の需給動向について
当社グループの売上高の約9割を占める不動産分譲事業の業績は、景気動向、金利動向、地価動向及び税制等に基づく購買者の購入意欲や需要動向に影響を受けやすいため、景気の見通しの悪化や大幅な金利の上昇、地価の上昇、税制の変更等があった場合には、購買者の購入意欲が減退し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、供給に対して極端に需要が少なくなる場合や他社との競合が激化した場合は、大幅な価格引き下げによる対応が強いられる可能性があります。
住宅需給動向は常に変化していることから、当社グループでは、建物の工事進捗状況、仕掛・完成在庫の販売状況、他社の供給動向や市場在庫の先行き見通し等に関する分析を定常的に行い、事業用地の仕入価格及び住宅販売価格、供給戸数及び時期等について、グループ全体の対応方針を決定しております。各事業会社においては、このグループ対応方針に基づき、事業エリア毎に異なる環境に応じた事業運営を行っております。
(7)自然災害、事故等について
地震、台風、洪水等の大規模な自然災害のほか、当社グループの工場等において、火災・爆発等の産業事故が発生した場合、対応費用の発生や生産活動の停止による機会損失又は当社グループが所有する不動産価値の下落等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらの自然災害、事故等の発生可能性を予想することは困難でありますが、事象が発生した場合には大きな影響を被る可能性があることから、当社グループでは損害保険等の加入により対応を行っております。また、事象発生時における事業継続性を担保するための計画立案も行っております。
一方、地震、台風、洪水等の大規模な自然災害は、当社が販売した住宅を損傷する可能性もあります。当社グループでは、分譲戸建住宅全棟で住宅性能表示制度の「耐震等級」「耐風等級」で最高等級を取得するとともに、住宅を引き渡した後のメンテナンス体制も強化しており、提供する住宅の基本性能の向上と維持に努めております。
(8)情報セキュリティについて
当社グループは、事業を展開する上で多くの個人情報や機密情報を有しております。これらの情報は、外部流出や改ざん等がないように、徹底した管理と従業員教育等の施策を展開し、ハード面・ソフト面を含めた適切なセキュリティ対策を講じております。しかしながら、予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルス侵入等により、万一これら情報が流出した場合や重要データの破壊・改ざん、システム停止等が生じた場合には対応に多額の費用負担が生じ、あるいは社会的信用が低下することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)法的規制について
当社グループは、日本のみならず各国において事業活動を展開しており、各地域の法律・許認可等さまざまな法規制のもと、その改正動向を注視しつつ、適時適切に対応するよう努めております。また、法令遵守の徹底や不正行為の未然防止に向けた体制整備を行うとともに、教育啓発活動を随時実施し、全社的なコンプライアンス意識の向上に努めております。
しかしながら、各種対策を行ったとしても、個人的な不正行為等を含めコンプライアンスに関するリスクを完全に回避できるものではなく、各種法令に抵触する事態が発生した場合には、行政処分やレピュテーションの毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の行政・規制当局等による予期せぬ法令の制定・改廃、司法による予期せぬ法解釈の変更が行われる可能性や、社会・経済環境の著しい変化等に伴う各種規制の大幅な変更の可能性も否定できません。
このような場合には、将来の当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)気候変動について
当社グループは、安全で高品質の住宅供給を通じて継続的に環境課題への取り組みを推進しており、中でも気候変動については重要な課題であると認識しております。気候変動における移行リスクとしては、炭素税など法規制の厳格化といった政策動向の変化、低炭素社会に対応できない企業に対する需要低下やレピュテーション毀損、物理的リスクとしては、自然災害の激甚化や異常気象の深刻化、降雨や気象パターンの変化、平均気温の上昇等による対応費用の発生や生産活動の停止による機会損失、建設作業員の熱中症等による健康被害などが想定され、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、分譲戸建住宅全棟で住宅性能表示制度の「断熱等性能等級」等級4を取得しており、温室効果ガス(CO2)排出削減に努めております。また、CO2を排出しないエネルギーシステムである人工光合成を利用した住宅の研究開発や、長く健康で暮らせるための未来型住宅の開発を推進するほか、供給する住宅の給排水設備に節水機能を積極的に導入する等、持続可能で豊かな社会づくりに貢献するサステナビリティ経営を推進しております。更に、気候変動に係るリスク及び機会が自社の事業活動や収益等に与える影響については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに基づき、各種取組みを進めております。
しかしながら、将来において環境規制の変更や気候変動の影響等により、更に多くの対策コストが必要になった場合、あるいは想定外の経済・社会環境の変化が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)事業資金の調達について
事業用地の仕入資金の一部は金融機関からの借入金によって調達しております。事業資金の調達及び返済は、金融機関の経営状態や金利情勢その他の外的環境に左右されるため、これにより当社グループの業績及び財政状態に影響を受ける可能性があります。また、当社グループの信用力低下等何らかの理由により調達に制約を受けた場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクが長期間にわたり顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、仮にリスクが顕在化した場合、その影響の程度は相応に大きくなることを想定し、当社グループとしては経営戦略に基づく財務方針に従い財務安全性を最優先しつつ、持株会社である当社と事業会社である子会社が、資金使途に応じて一体的に事業資金の調達・運用を行っております。
(12)住宅品質保証について
当社グループは、人生100年時代に向けた住宅品質の向上を経営戦略の一つとして掲げており、グループで供給する分譲戸建住宅全棟で住宅性能表示制度4分野の最高等級を取得する体制を整備する等、品質管理に万全を期しております。
しかしながら、万一、当社グループの販売した物件に重大な問題があることが判明した場合には、その直接的な原因が当社グループの責めに帰すべきものでない場合であっても、売主としての契約不適合責任を負わなければならない場合があります。その結果として生じる保証工事費の引当金の増加や、当社グループの信用力低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)M&Aについて
当社グループは、既存事業の規模拡大や新規事業進出に際し、事業戦略の一環としてM&Aを実施しております。M&A実施に当たっては、当社グループの既存事業とのシナジー効果、事業計画、財務内容及び契約関係等を慎重に調査・検討し、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に実行しておりますが、市場環境や競争環境の著しい変化等により当社グループとの期待されたシナジー効果が出ないことや、当初計画された事業が予定通り展開できなくなることも考えられ、その場合にはグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇が景気の下押し圧力となっていたものの、雇用・所得環境の改善もあり景気回復への期待感が高まってきました。一方で、米国の政権交代に伴う経済政策や外交安全保障政策の動向には注視が必要な状況です。また、ウクライナ情勢の長期化や中東地域での緊張の高まりは、特にエネルギー、食糧価格に影響を及ぼしており、経済環境の先行きを不透明にしております。
当不動産業界におきましては、分譲戸建住宅の着工数は前期比で減少し、市中在庫量も緩やかに減少していることから、需給バランスは引き続き改善傾向にあります。しかしながら、建築コスト高騰等による住宅販売価格の高止まりや住宅ローン金利の上昇は、住宅取得マインドを低下させる懸念があります。
このような事業環境のなか、当社グループは、2030年3月期をターゲットとした経営目標(オーガニック成長率4.0%、戸建分譲売上依存率70.0%、ROE10.0%以上)の達成に向けて、基本戦略である「コア事業の競争力強化」と「事業ポートフォリオの拡大」を推進してまいりました。戸建分譲事業においては、適正な在庫保有水準を維持することを優先し、エリアの特性や保有在庫状況のバランスを注視しながら、土地仕入・販売を行う等のきめ細かいエリア戦略を徹底しております。
その結果、当連結会計年度の売上収益は1兆4,596億39百万円(前期比1.4%増)、営業利益は804億52百万円(前期比36.0%増)、税引前利益は743億15百万円(前期比33.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は506億97百万円(前期比36.3%増)となりました。
セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
件数 |
売上収益(百万円) |
前期比(%) |
|
一建設グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
10,153 |
305,833 |
1.6 |
|
マンション分譲事業 |
692 |
32,462 |
18.5 |
|
請負工事事業 |
1,138 |
32,753 |
△13.5 |
|
その他 |
- |
36,372 |
31.3 |
|
小計 |
11,983 |
407,422 |
3.4 |
|
飯田産業グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
6,221 |
229,138 |
4.5 |
|
マンション分譲事業 |
348 |
22,106 |
△3.8 |
|
請負工事事業 |
289 |
7,032 |
11.3 |
|
その他 |
- |
9,674 |
4.7 |
|
小計 |
6,858 |
267,951 |
3.9 |
|
東栄住宅グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
4,747 |
179,398 |
4.1 |
|
マンション分譲事業 |
246 |
2,827 |
360.7 |
|
請負工事事業 |
279 |
15,723 |
1.0 |
|
その他 |
- |
2,816 |
11.4 |
|
小計 |
5,272 |
200,765 |
5.1 |
|
タクトホームグループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
5,281 |
177,206 |
0.1 |
|
マンション分譲事業 |
17 |
791 |
- |
|
請負工事事業 |
173 |
7,506 |
220.7 |
|
その他 |
- |
2,045 |
△23.2 |
|
小計 |
5,471 |
187,550 |
3.0 |
|
セグメントの名称 |
件数 |
売上収益(百万円) |
前期比(%) |
|
アーネストワングループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
9,524 |
237,732 |
△7.6 |
|
マンション分譲事業 |
606 |
30,069 |
47.7 |
|
請負工事事業 |
424 |
13,372 |
12.0 |
|
その他 |
- |
870 |
28.9 |
|
小計 |
10,554 |
282,044 |
△2.8 |
|
アイディホーム |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
2,681 |
79,082 |
△11.8 |
|
マンション分譲事業 |
1 |
45 |
△97.2 |
|
請負工事事業 |
38 |
939 |
60.5 |
|
その他 |
- |
432 |
25.0 |
|
小計 |
2,720 |
80,500 |
△12.7 |
|
その他(注)4 |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
20 |
727 |
△0.7 |
|
マンション分譲事業 |
36 |
890 |
61.4 |
|
請負工事事業 |
- |
1,084 |
△12.1 |
|
その他 |
- |
30,701 |
5.0 |
|
小計 |
56 |
33,403 |
5.2 |
|
(区分計)戸建分譲事業 |
38,627 |
1,209,120 |
△0.7 |
|
マンション分譲事業 |
1,946 |
89,194 |
21.3 |
|
請負工事事業 |
2,341 |
78,412 |
3.4 |
|
その他 |
- |
82,912 |
14.6 |
|
総合計 |
42,914 |
1,459,639 |
1.4 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.戸建分譲事業には、戸建住宅のほか、宅地等が含まれます。マンション分譲事業には、分譲マンション(JV持分含む)のほか、マンション用地等が含まれます。請負工事事業には、注文住宅のほか、リフォームやオプション工事等が含まれます。
3.請負工事事業等の売上収益は、一定期間にわたり履行義務が充足されることに伴って認識される収益ですが、件数はいずれの区分も資産の引渡し件数を記載しております。
4.「その他」のセグメントは、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、ファーストウッドグループ及びRFPグループの木材製造事業等、ホームトレードセンター及び当社の事業に係るもの等であります。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1兆8,538億30百万円となり、前連結会計年度末比で426億51百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の負債合計は8,718億44百万円となり、前連結会計年度末比で329億44百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の資本合計は9,819億86百万円となり、前連結会計年度末比で97億7百万円の増加となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は4,756億75百万円となり、前連結会計年度末比で425億77百万円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は922億52百万円(前連結会計年度は164億49百万円の使用)となりました。
これは主に、税引前利益743億15百万円、棚卸資産の減少額272億93百万円及び法人所得税の支払額192億6百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は386億20百万円(前連結会計年度は177億88百万円の使用)となりました。
これは主に、定期預金の預入による支出251億49百万円、有形固定資産及び投資不動産の取得による支出171億74百万円及び有形固定資産及び投資不動産の売却による収入52億59百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は110億44百万円(前連結会計年度は273億55百万円の獲得)となりました。
これは主に、借入金の増加300億6百万円、リース負債の返済による支出68億68百万円、自己株式の取得による支出91億81百万円及び配当金の支払額252億33百万円があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
件数 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
一建設グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
9,710 |
283,818 |
△10.0 |
|
マンション分譲事業 |
777 |
36,560 |
25.3 |
|
請負工事事業(注文住宅) |
1,140 |
24,081 |
△25.0 |
|
小計 |
11,627 |
344,460 |
△8.5 |
|
飯田産業グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
6,217 |
227,387 |
△6.5 |
|
マンション分譲事業 |
613 |
34,880 |
151.4 |
|
請負工事事業(注文住宅) |
289 |
6,435 |
11.3 |
|
小計 |
7,119 |
268,703 |
2.3 |
|
東栄住宅グループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
4,797 |
184,286 |
1.4 |
|
マンション分譲事業 |
253 |
2,917 |
- |
|
請負工事事業(注文住宅) |
280 |
7,274 |
△2.5 |
|
小計 |
5,330 |
194,478 |
2.8 |
|
タクトホームグループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
4,870 |
173,520 |
△6.9 |
|
マンション分譲事業 |
28 |
1,166 |
- |
|
請負工事事業(注文住宅) |
218 |
6,044 |
214.7 |
|
小計 |
5,116 |
180,731 |
△4.0 |
|
アーネストワングループ |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
8,525 |
209,941 |
△19.0 |
|
マンション分譲事業 |
727 |
37,416 |
49.4 |
|
請負工事事業(注文住宅) |
432 |
7,158 |
4.6 |
|
小計 |
9,684 |
254,516 |
△12.5 |
|
アイディホーム |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
1,943 |
59,101 |
△50.7 |
|
マンション分譲事業 |
- |
- |
△100.0 |
|
請負工事事業(注文住宅) |
39 |
795 |
35.1 |
|
小計 |
1,982 |
59,896 |
△50.9 |
|
その他 |
|
|
|
|
(区分)戸建分譲事業 |
23 |
843 |
△7.4 |
|
マンション分譲事業 |
36 |
890 |
9.1 |
|
小計 |
59 |
1,734 |
0.4 |
|
(区分計)戸建分譲事業 |
36,085 |
1,138,900 |
△12.8 |
|
マンション分譲事業 |
2,434 |
113,830 |
61.3 |
|
請負工事事業(注文住宅) |
2,398 |
51,790 |
△5.3 |
|
総合計 |
40,917 |
1,304,521 |
△8.9 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しておりません。
2.戸建分譲事業には、戸建住宅のほか、宅地等が含まれます。
(ⅱ)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期末比(%) |
|
一建設グループ 請負工事事業(注文住宅) |
30,796 |
△3.9 |
21,044 |
△3.1 |
|
飯田産業グループ 請負工事事業(注文住宅) |
7,348 |
32.5 |
4,588 |
24.8 |
|
東栄住宅グループ 請負工事事業(注文住宅) |
8,066 |
12.3 |
6,030 |
12.0 |
|
タクトホームグループ 請負工事事業(注文住宅) |
5,415 |
190.6 |
3,695 |
195.4 |
|
アーネストワングループ 請負工事事業(注文住宅) |
7,679 |
16.5 |
4,391 |
16.9 |
|
アイディホーム 請負工事事業(注文住宅) |
2,377 |
75.1 |
1,441 |
176.3 |
|
合計 |
61,684 |
13.0 |
41,192 |
13.5 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しておりません。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度における販売実績につきましては、前述の「① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の事業全体及びセグメントごとの経営成績等につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであり、経営者の視点によるこれらの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、当社グループのセグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報」に記載のとおり、共通した事業を行う連結子会社単位等を報告セグメントとしておりますが、ここでは事業区分ごとに経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容を記載しております。
(ⅰ)戸建分譲事業
戸建分譲事業の業績は、売上収益が1兆2,091億20百万円(前期比83億24百万円減)、販売棟数が38,627棟(前期比1,866棟減)となりました。
当社グループの売上収益の大半を占める戸建分譲事業では、20~30代の一次取得者を主要ターゲットとして、耐震性能や断熱性能に優れた値ごろ感のある住宅を供給しております。物件の値ごろ感は、販売エリアの相場、需給バランスに加え、主要ターゲット層の可処分所得や住宅ローンの返済額等によって常に変化するため、これらの動向を的確に捉え、販売価格に応じた土地の仕入と、建物原価のコントロールを行うことが経営成績に重要な影響を与えます。
当連結会計年度は、物価上昇が景気の下押し圧力となっていたものの、雇用・所得環境の改善もあり景気回復への期待感が高まってきました。物価上昇や建築コスト高騰等による住宅販売価格相場の高止まり、住宅ローン金利の上昇によって住宅取得マインド低下の懸念はあるものの、需要は継続しております。
供給面においては、不動産流通機構が運営しているレインズによると、新築戸建住宅の登録在庫数は、期初から約16%減少していることから、分譲戸建住宅市場の需給バランスは緩やかに改善傾向にあり、エリアによっては利益が確保しやすい環境となったことから、売上総利益率が増加しました。しかしながら、第4四半期以降は、木材をはじめとした建築資材価格並びに土地原価が上昇したものの、原価上昇分を物件販売価格に織り込みきれず、売上総利益率が低下しました。また、当社グループは利益重視の戦略を徹底しており、無理に販売棟数を追わなかったことから、販売棟数は前期比で減少しました。
以上の結果、戸建分譲事業の販売棟数は38,627棟、売上総利益率は13.9%となり前期比で1.7ポイント増加となりました。
(ⅱ)マンション分譲事業
マンション分譲事業の業績は、売上収益が891億94百万円(前期比156億73百万円増)、販売戸数が1,946戸(前期比206戸増)となりました。
新築分譲マンション市場は、地価の上昇や建設費の高騰等を背景として販売価格は逓増しており、高い購買力が要求される状況が継続しております。
マンション分譲事業は、戸建分譲事業に比べ事業期間が長いことから、用地仕入を厳選し採算性の面から選択的に事業を推進することを基本スタンスとしております。また、建設コストは上昇を続けており、適正な利益率を確保しづらい環境となっていることから、1棟売りや土地売りも選択肢として適正な利益確保を行っており、概ねその方針に沿った結果となりました。
(ⅲ)請負工事事業
請負工事事業の業績は、売上収益が784億12百万円(前期比25億67百万円増)、注文住宅の販売棟数が2,341棟(前期比246棟減)となりました。
請負工事事業については、累計約80万棟の顧客基盤を活かしたリフォーム事業が順調に拡大しております。利益率の高いリフォーム工事の受注が増加したことにより、増収増益となりました。
請負工事事業の中の注文住宅については、建築コストの上昇による販売価格高騰の影響で需要が弱く、販売棟数は減少となりましたが、原価上昇分を販売価格に転嫁できているため、販売価格は増加し売上総利益率は上昇しております。
(ⅳ)その他事業
その他事業の業績は、売上収益が829億12百万円(前期比105億42百万円増)となりました。
RFPグループの業績回復は遅れているものの、戸建賃貸事業を含む投資不動産事業については、ビジネスモデル化を進めており順調に拡大しているため、増収増益となりました。
当連結会計年度末の資産合計は1兆8,538億30百万円となり、前連結会計年度末比で426億51百万円の増加となりました。
流動資産については1兆3,426億22百万円となり、前連結会計年度末比で440億70百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金の増加671億62百万円、棚卸資産の減少269億84百万円等によるものであります。
非流動資産については5,112億8百万円となり、前連結会計年度末比で14億18百万円の減少となりました。これは主に、有形固定資産の増加45億31百万円、投資不動産の増加111億3百万円、その他の金融資産の減少190億17百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は8,718億44百万円となり、前連結会計年度末比で329億44百万円の増加となりました。
流動負債については4,724億18百万円となり、前連結会計年度末比で76億28百万円の減少となりました。これは主に、営業債務及びその他の債務の減少169億86百万円、未払法人所得税等の増加87億6百万円等によるものであります。
非流動負債については3,994億25百万円となり、前連結会計年度末比で405億72百万円の増加となりました。これは主に、社債及び借入金の増加387億71百万円、その他の金融負債の増加43億67百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の資本合計は9,819億86百万円となり、前連結会計年度末比で97億7百万円の増加となりました。これは主に、剰余金の配当252億34百万円に対し、当期利益491億1百万円を計上したこと等によるものであります。
上記の結果、在庫回転率(戸建)は年1.5回転、営業利益率は5.5%となりました。引き続き、高い資本効率と持続的なキャッシュ・フローの創出に不可欠な羅針盤として位置づけ、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中期的な経営戦略、(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の経営戦略及び各種施策を推進してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、持続的な成長に必要な経営の健全性・効率性の観点から、経営環境の変化によって変動するリスクに見合った適正な資本水準と負債・資本構成を維持していくことを基本方針としております。
当社グループの資金需要は、その大部分が戸建分譲事業及びマンション分譲事業を行うための事業用土地購入費でありますが、不動産賃貸事業などのストックビジネスや海外展開、バリューチェーン強化といった事業ポートフォリオの拡大に関連した投資等に加え、コア事業の競争力強化に向けた営業拠点の展開などに伴う設備投資でも資金需要が生じます。株主還元につきましては、経営体質の強化と将来を見据えた成長投資を考慮しつつ、1株当たり90円以上の累進配当を基本方針としております。
これらの資金需要につきましては、自己資金に加え、銀行借入を中心に、主要事業に対応する機動性と資金需要の性格に応じた長期安定性のバランスを重視した資金調達をグループ一体となって実施することとしております。
なお、当連結会計年度における資金調達の状況については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 20.社債及び借入金(リース負債及びその他の金融負債含む)」をご参照ください。
また、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源につきましては、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断、見積りの方法及び仮定、並びにそれらの不確実性等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載の各項目をご参照ください。
特記すべき事項はありません。
当連結会計年度のグループ全体の研究開発費は
研究開発の主な内容は以下のとおりであり、主に報告セグメントに帰属しない当社において発生した研究開発費であります。
(1)IGパーフェクトエコハウスの研究開発
当社は「水素社会」実現に向け、独自の人工光合成技術により、二酸化炭素と水、または二酸化炭素由来の有機物から蟻酸を生成・貯蔵し、更にこの蟻酸から生成した水素により発電した電気で家庭の電力を賄う住宅「IGパーフェクトエコハウス」の研究開発を行っております。
先般、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にパビリオン出展する『飯田グループ×大阪公立大学共同出展館』の敷地内に建設した管理棟に試験機器等を導入し、実証実験の開始を予定しております。
2029年の技術確立を目指し、大阪公立大学との共同研究を推進、現在、蟻酸及び水素生成効率の向上や、発電機構の構築、装置の耐久性向上等に取り組んでおります。
(2)海外向け独自工法の開発と活用
日本とは異なる高温多湿な地域での住宅建築向けに開発した「IGストロングCB工法」のインドネシアでの活用を開始し、現在、ブロックのスリム化や建築工程の削減等、インドネシア住宅建築への適合性向上を目的とした改善活動を行っております。
本工法に関する特許が日本、米国、ロシア、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアにて登録されました。
(3)ウエルネス・スマートハウス研究
当社は当社グループの飯田産業に委託して、大阪公立大学と、未来型住宅:ウエルネス・スマートハウスの実現を目指し、『スマートライフサイエンスラボ』を開設し、共同研究を実施しております。共同研究部門は、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター(グランフロント大阪内)に設置。共同研究ラボ『スマートライフサイエンスラボ』は、阿倍野キャンパス医学部内に開設し、共同研究を行っております。
ウエルネス・スマートハウスとは、AIウエルネスドクターが生活空間で個人の健康データを収集し、AIなどで解析することにより適切な健康アドバイスを行ない、AIウエルネストレーナーがAIウエルネスドクターの指示のもと、オーダーメイドの運動プログラム等を作成して未病の改善につなげる、また、AIバトラー(執事)が、日々の生活・食事のアドバイスだけでなく、住まい手が必要な時に適切な情報を提供するなど、ライフステージやライフスタイルに応じ、健康に豊かに暮らすことのできる未来の住空間です。
また、本研究は企業の健康経営にも寄与します。
そして、本研究の成果は、2025年日本国際博覧会の『飯田グループ×大阪公立大学共同出展館』で発表をする予定です。
なお、本研究に関して1件のビジネスモデル特許を取得いたしました。加えて6件の特許を出願しております。
(4)建物技術開発
人生100年時代に適応した良質な高耐久住宅を実現するため、建物性能(耐震・耐風・省エネ)の研究開発に加え、建物のランニングコストを抑える試みとして、長寿命資材の導入によるメンテナンス期間の長期化など、住宅の長期保証を実現するメンテナンス体制の構築を検討しております。