文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、建築分野における確認検査機関を中核として、さまざまな審査・検査・評価・認証などに必要な技術力を具えると同時に、その役務の公益性から公正さ・中立性が重視されることを認識しています。その社会的使命の認識の下で、以下に掲げる「七つの理念」を実践して、良質なすまい・建物を実現し、安全で美しい街づくりに貢献することが、当社グループ創業以来の基本方針であります。
「七つの理念」
1.消費者・事業者に公正かつ必要な情報を提供します。
2.法令・規程を遵守し、第三者性、中立性を保ちます。
3.最高水準の技術を提供して、技術の基準となります。
4.全分野のニーズを引受け、迅速なサービスに努めます。
5.全ての業務を自己執行する責任ある体制を築きます。
6.可能な限りの情報を公開し、透明な会社となります。
7.信頼され、社会的にも影響力のある会社になります。
当社グループでは、2026年5月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しております。この経営計画において目標とする経営指標は以下のとおりです。
≪計画最終年度(2028年5月期)における計数目標≫
当社グループの中核事業が属する住宅・建築業界を取り巻く事業環境につきましては、国内景気は一部で足踏みの動きもみられるものの、全般に緩やかな回復が継続している一方で、建設費の高止まりや人手不足などが、新設住宅着工件数を上向きに転じさせる上での足かせになっています。非住宅建築物の設備投資に関しては、企業の設備投資動向において、米国の関税政策の不確実性の高まりが設備投資抑制を招く懸念に注視する必要はあるものの、人手不足対応、デジタル化、脱炭素対策、サプライチェーン強化などに伴う設備投資が需要の底支えになると思われます。加えて、2025年4月には、省エネ基準適合完全義務化と同時に、これまで戸建住宅新設に一般的に適用されてきた4号特例(構造審査免除)の適用範囲を大幅に縮小する大幅な建築基準法改正が施行され、申請手続きの負担増加と審査時間の長期化による指定確認検査機関における審査の滞留を懸念する声が聞こえています。
また、事業領域の拡大を目指しているインフラ・ストック関連においては、国土強靱化の推進、社会資本劣化に対する対応など山積する社会的課題に対し、政府の公共投資事業規模は2026年度から5年間で20兆円強の予算を計上して、インフラの老朽化や南海トラフ地震をはじめ大規模災害への対策を進める方針を掲げており、当社グループが今後一層の活躍を目指すべきフィールドであると考えております。
このような状況下、脱炭素社会の実現に向けた重要な施策の一つである大幅な建築基準法改正に、着実に対応する技術力こそが当社グループの競争力の源であると同時に、最大の指定確認検査機関グループである当社グループは、建築市場において申請手続の混乱・停滞を招くことがないよう努めることが、社会的責務であると認識しています。中長期的な視点では、新築市場の将来的な縮小をはじめ、建設業界に求められる先端のICT技術(i-construction)への対応など、市場変化に決してひるまない姿勢で臨み、事業毎の成長戦略と経営基盤の強化により収益力を高めるとともに、補完的事業の育成のために経営資源を積極的に投入することで、当社グループの特色である公共性の高いサービスの提供を安定的に行うことができるビジネスモデルを構築することが課題であると認識しております。
当社グループは、今後の事業環境の変化に備えて対処すべきこれらの課題を踏まえ、ステークホルダーの皆様から評価される新たな価値を創造するべく、以下の戦略分野を掲げて、2030年に売上高300億円、時価総額300億円を目標とする持続的な事業成長と安定的な収益の実現を目指しております。
① 既存中核事業の強化
法改正対応によって想定される、省エネ関連業務の増加や4号特例縮小に伴う審査負担の増加に対して、確実に対応できる態勢整備の成果を発揮し、将来の技術者不足に備えた人材の拡充を図るとともに、BIM申請、BIM図面審査、リモート検査に積極的に取り組むDXの推進によって、業界における競争力を強化します。また、主力の建築確認及び住宅性能評価は、業界の再編機会を的確に捉え、M&Aによる市場シェアの拡大を目指します。
② 事業領域の拡大
グループの技術力、ブランド力を活かせる分野へ事業領域の拡大を継続して推進します。土木インフラから環境関連の事業に至るまで、持続的な成長を目指す社会の実現のために求められるサービスの提供を一層拡大して参ります。また、M&Aで当社グループに参画したグループ各社のシナジー発揮を促進するべく、事業統合をはじめとした積極的なトランスフォーメーションを推し進めながら、公益重視の理念を共有できる企業とのM&Aを活用して、事業領域の拡大を推進してまいります。
③ サステナビリティの重視
当社グループの提供する役務は、住宅・建築物の安全・安心の確保から土木インフラ整備、脱炭素社会に向けた環境負荷低減の取り組みに至るまで、持続可能な社会の実現のために欠かせない社会基盤の一部であることを自覚し、それを支える人的資本への投資を重視します。女性技術者、外国人技術者の活躍をはじめ多様な人材が活躍できる態勢整備、従業員の労働環境・健康増進に配慮した健康経営の推進に注力します。また、業界の人手不足に対する施策として求められる、ロボティクスの開発・活用に積極的に取り組んでまいります。
今後も、当社の経営理念である「七つの理念」の下に、「信頼性向上」と「ERIブランドの確立」に向けた取り組みを通じて、建築・土木分野における公益重視の技術者集団として社会的使命を果たしてまいります。
当社グループは、ステークホルダーの皆さまと共に持続可能な社会の発展に貢献できるよう、経営理念の柱である公益重視の経営思想を尊重し、サステナビリティ基本方針を策定しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティに係るリスク及び機会に関する経営課題を議論する場として、サステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、代表取締役がサステナビリティ担当役員(CSO)として委員長となり、当社の常勤取締役及びグループ各社の社長で構成され、年2回の頻度で開催するとともに、取締役会に報告・監督される体制を構築しております。
当社は、当社グループのサステナビリティ基本方針において、ESGへの取組みを表明しております。
環境(Environment)につきましては、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー及びネイチャーポジティブを対応すべき課題として認識し、取り組んでおります。環境に対するステークホルダーの関心は高く、気候変動や循環経済などの環境問題に対する消極的な経営姿勢は、公益重視の経営理念を掲げる当社グループの企業評価を毀損するリスクがあると認識しております。また、当社グループの提供する住宅・建築物の安全・安心を支える審査・検査、評価や省エネルギー性能の判定・評価、土木インフラの整備・維持管理や自然環境の保全・再生と防災などに係る建設コンサルティングなどは、いずれも持続可能な社会の実現に向けた政策を推進する上で必要不可欠なサービスであり、当社グループにとって機会であると捉えております。
環境関連につきましては、主として、確認検査・住宅性能評価及び関連事業を拡大させることによる省エネ建築物や住宅等の普及に貢献すること、環境関連業務を既に取り組んでいる企業をM&Aを通じてグループ子会社化することにより、当社グループの提供するサービスを拡大させることなどによって対応しております。
社会(Social)につきましては、人的資本、ダイバーシティ、人権尊重、労働環境を対応すべき課題と認識し、取り組んでおります。
住宅・建築から土木インフラ・自然環境に至る広範な社会資本整備と持続可能な社会の実現の両立を目指すためには、様々な社会的課題が存在します。それらに対処するための政策と施策の遂行の過程では、技術的な審査・検査・評価・調査・点検等が求められます。それらのサービスを、社会から信頼される第三者機関として提供することが、当社グループのパーパスであり、同時に当社グループ事業の成長機会と一体をなすものです。特に、中核事業である確認検査業務においては建築基準適合判定資格者の確保が重要になることから、グループ子会社も活用しながら資格者の確保を進めることで、サステナビリティに係る機会になると捉えております。
専門的技術力を具えた人材が社会からの信頼の源泉であり、良質な人的資本の蓄積を経営戦略の要として重視しています。
○ 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
① エデュケーション
従業員が専門知識を高め、先駆的に先端技術を活用できるよう育成することで、企業の価値を高め、持続的な成長を実現できるように人的資本への投資を推進します。
② ダイバーシティ
性別、年齢、国際性、性的指向などを含む幅広い多様性を認め尊重します。女性技術者、外国人技術者の活躍を後押しできるよう積極的に環境整備を推進します。
③ ウェルビーイング
従業員とその家族の健康が、事業の持続的発展の基盤であるとの理念のもと、仕事を通じて、社員と家族の人生が輝かしいものになるよう健康経営を推進します。
企業統治(Governance)につきましては、当社グループの提供する各種の技術的な審査・検査・評価・調査・点検等は社会から信頼を獲得することが不可欠であり、ガバナンス及びコンプライアンスを重要な経営課題としております。また、第三者機関として企業統治に対し真摯に取り組むことが中長期的に企業価値を向上させる機会と認識しております。
サステナビリティに係るリスクと機会に関しては、当社グループの事業内容から、特に人的資本が最重要であると認識し、グループ各社が認識を共有して行動をとれるよう、サステナビリティ委員会において数値目標に関する達成状況の検討も含め協議を行います。協議内容については、CSOが取締役会に報告をして必要な監督・施策などの検討を行います。また、法令順守に係る事項については、原則3か月に1度開催されるコンプライアンス委員会に報告し、必要な監督・施策などの検討を行います。
当社グループは、前記「戦略」「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」に記載の通り、人的資本への投資を重視しており、そのための指標を用いております。
① 中核事業への人材投資に関する指標
株式会社ERIアカデミー
(注)2024年度の一級建築基準適合判定資格者検定は台風の影響により再検定を含め2回実施されました。
② 女性活躍推進に関する指標
連結会社(注1)
③ 健康経営に関する指標
連結会社(注1)
(注)1.連結会社は提出会社含む計16社。
2.「男女の賃金差異」は従業員100人以上の、日本ERI㈱、㈱住宅性能評価センター、㈱福田水文センター、以上3社の正規雇用労働者を対象。
3.分母は該当年度に出産(もしくは配偶者が出産)した全労働者の数、分子は該当年度に出生時育児休業・育児休業を取得した全労働者の数。出産年度と育児休業等を取得した年度が異なる労働者がいる場合、100%を超えることがあります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 法的規制について
当社グループの主力業務は、確認検査業務及び住宅性能評価業務であり、当社子会社の中では日本ERI株式会社、株式会社住宅性能評価センター、株式会社サッコウケン及び株式会社東京建築検査機構の4社が、それぞれ「建築基準法」に基づく国土交通大臣の指定機関、「住宅品確法」に基づく国土交通大臣の登録機関として事業展開を行っております。指定機関・登録機関は、高度な技術力、専門性、公正中立性に加え、建築主・設計者・施工者等と利害が制度の支障とならない第三者性が必要であることから、厳格に法的規制を受けております。それらの法的規制に、指定機関・登録機関である当社子会社が抵触した場合には、当該子会社において、指定・登録が取消される、あるいは更新されない、もしくは業務停止処分を受ける可能性があります。その場合には、行政処分の対象となった子会社の事業活動に支障をきたすとともに、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、前述「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営の基本方針」に記載の通り、公共性の高いサービスの提供を行う社会的役割を経営理念に掲げるとともに、後述「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等 (1)コーポレートガバナンスの概要 ①コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」に記載の通りの方針で、内部統制・リスク管理体制を整備して業務運営に取り組んでいます。なお、有価証券報告書提出日現在においては、法的規制に該当すべき事由は発生しておりません。
法的規制の内容は「(参考情報)当社事業にかかる法規制等」をご参照ください。
(2) 業界動向について
当社グループの中核事業である確認検査業務及び住宅性能評価業務は、以下のような業界動向の下で運営されており、その動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
① 確認検査業務
○ 確認検査機関の指定状況
1999年度から確認検査業務が民間開放され、指定確認検査機関は1999年度末の23機関から2005年度末の125機関まで、毎期、増加しました。しかし2006年度以降は、新規に指定される確認検査機関がある一方、廃業や合併を行う指定確認検査機関の動きが見られ、2016年度以降の機関数はほとんど変化がなく2025年5月末時点で128となっています。指定確認検査機関を組織形態別にみると、国土交通大臣指定の機関は株式会社が約8割、地方整備局長指定の機関は株式会社が約9割、都道府県知事指定の機関は財団法人が約半数以上を占めております。
確認検査機関の指定状況(増減又は期末指定機関数)
(注) 1 日本建築行政会議ホームページにおける「都道府県ごとの指定確認検査機関一覧」より作成しております。
2 廃業機関を除く。指定区分の変更については区分変更後の指定のみを計上しております。
3 国土交通大臣指定は業務区域が2以上の地方整備局の管轄区域をまたがる場合、地方整備局長指定は業務区域が2以上の都道府県でかつ1の地方整備局の管轄区域内の場合、都道府県知事指定は1の都道府県の場合であります。
4 指定機関数の( )内は、株式会社(特例有限会社を含む)・合同会社の指定機関数であります。
○ 建築確認の民間比率
(図1)のとおり、2001年度以降、70万件前半で推移していた建築確認件数は、改正建築基準法の施行に伴う混乱(2007年6月)やリーマン・ショックの影響(2008年9月)等から落ち込みました。その後、2010年度以降は回復傾向にありましたが、2014年度は、消費税増税前の駆け込み需要の反動等により前年度比14.1%減と大幅な減少となりました。その後、2015年度以降においては緩やかながら増加傾向にありましたが、コロナ禍の影響により2020年度は減少し、翌2021年度はその反動増等で増加しております。このような状況の中、指定確認検査機関による業務シェア(民間比率)は漸増傾向を続け、2023年度は92%となっております。なお、2024年度については、本有価証券報告書作成時点においてデータが発表されていないため、(図1)に掲載しておりません。

(注) 国土交通省「最近の建築確認件数等の状況について」より作成しております。
○ 競合状況
指定確認検査機関は2025年5月31日現在128機関ありますが、その多くは所在都道府県及び隣接県を業務区域とする地域密着型機関か、業務区域が全国でも地方支店網を持たない機関となっております。その中で当社グループの中核会社である日本ERI株式会社は、日本全域を業務区域として対応可能な支店網(33支店 2025年5月31日現在)を整備した唯一の指定確認検査機関となっております。また、確認検査員および副確認検査員数(2025年5月31日現在選任757名)や確認検査の実績件数においても当社グループが最大手となっております。しかしながら、地域密着型機関との競争が激しいこと、建築基準適合判定資格者検定に合格した確認検査員を確保・育成する必要があることなどから、将来にわたって当社グループが指定確認検査機関における最大手の地位を維持できるとは限りません。
② 住宅性能評価業務
○ 住宅性能評価機関の登録状況
2000年10月に第1陣の指定住宅性能評価機関64機関が指定され、2006年3月より登録制に移行し、2025年5月31日現在の一般社団法人住宅性能評価・表示協会の会員機関数は123機関となっております。
○ 住宅性能評価の普及状況
(図2)のとおり、新築住宅の性能評価制度は、当初は共同住宅において先行して普及しましたが、一戸建の普及が安定的に増加し、ここ9年間は一戸建の普及率が共同住宅を上回っています。2024年度の実績(設計性能評価)は、一戸建38%、共同住宅32%の普及率となり、一戸建、共同住宅がいずれも上昇したことで、合計の普及率は過去最高を記録しました。

(注) 一般社団法人住宅性能評価・表示協会ホームページ、財団法人建設物価調査会「月間住宅着工統計」より作成しております。
○ 競合状況
2025年5月31日現在の一般社団法人住宅性能評価・表示協会の会員機関数は123機関ですが、指定確認検査機関と同様に地域密着型機関が大半を占めております。その中で当社グループの中核会社である日本ERI株式会社は、日本全域を業務区域として対応可能な支店網を整備した唯一の登録住宅性能評価機関となっております。一般社団法人住宅性能評価・表示協会のデータによると、2024年度の業界シェア(設計評価交付戸数)は、当社グループの日本ERI株式会社、株式会社住宅性能評価センターを含む上位5機関で5割、上位10機関で7割の寡占状態となっております。当社グループの登録住宅性能評価機関合計で2024年度の実績戸数では、戸建住宅、共同住宅合計で22%のシェアを占めて1位となっています。しかしながら、戸建住宅、共同住宅それぞれの分野で、大手住宅供給会社間の取引拡大を巡る競争が激化していることもあり、将来とも当社グループが住宅性能評価機関における高い地位を維持できるとは限りません。
(3) 経営成績及び財政状態について
① 人材の確保について
当社グループの業務は、それを遂行する社員が高度な技術力を保持していることはもちろん、中核事業である確認検査業務、住宅性能評価業務の実施には「確認検査員」「副確認検査員」「評価員」等の法律によって必要とされる資格を取得することが必須であります。こういった優秀な人材を確保することは、当社グループが将来にわたって安定的に事業を継続するための重要な課題のひとつと言うことができます。
確認検査員等の確保につきまして、限定された地域において、限定的な件数の確認検査業務を行う場合は、多数の確認検査員等の確保を要しませんが、当社グループのように全国展開等広域にわたって多数の業務を行う場合においては、拠点毎に確認検査員等の確保が必須となります。万が一、その確保が業務量に対して十分でない場合は、確認検査業務の遂行に支障を来すこととなります。
住宅性能評価業務におきましては、正社員である評価員以外に委託評価員を併用することがあります。これは技術水準を保つための自社執行体制を維持しつつ、効率的な人員体制による運用を図るためであります。確認検査業務と同様、全国展開を図る当社グループにつきましては評価員の確保が必須であり、万が一、その確保が業務量に対して十分でない場合は、住宅性能評価業務の遂行に支障を来すこととなります。
ソリューション事業におきましては、業務の遂行や建設コンサルタント、測量業者及び補償コンサルタント登録等の更新に有資格者が必要になります。当社グループでは、人材の育成や採用によって有資格者の確保に努めておりますが、確保が十分にできない場合には、業務の遂行に支障を来すことになります。
② 建築物の竣工時期による業績変動について
当社グループの業績は、建築物の竣工案件の季節的な偏在により、四半期で変動する可能性があります。特に当社グループでは、竣工時の現場検査収入(確認検査業務のうち完了検査、住宅性能評価業務のうち建設住宅性能評価)が売上の3割程度を占めることから、建築物の竣工が多い3月、9月及び12月に売上が集中する傾向が見られます。また「3 事業等のリスク(3) 経営成績及び財政状態について ③住宅市場の動向について」の消費増税による駆け込み需要の反動や、「3 事業等のリスク(4)その他 ⑥自然災害に関するリスク、⑦大規模な感染症流行のリスク」の工事の中断などの予想し得ない事態の発生による竣工時期の遅延等、竣工案件が翌期にずれ込む事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 住宅市場の動向について
当社グループに密接に関係する住宅業界は、雇用状況、景気動向、金利動向、地価動向、住宅税制等の影響を受けやすく、景気見通しの悪化や税制変更による消費税等の引き上げ、住宅刺激策の変更等、こうした外部要因の変化により、住宅購入者の購入意欲を減退させる可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 官公庁等への売上依存及び季節的な業績の変動について
当社グループのソリューション事業の一部の会社は、中央省庁及び地方自治体を主要顧客としており、これら官公庁等に対する売上依存度が高い比率となっております。そのため、当社グループの業績は、官公庁等の公共事業予算の影響を受ける可能性があります。
また、これらの業務は主要顧客である中央省庁及び地方自治体への納期が年度末に集中することから、売上高が第4四半期連結会計期間に偏重する傾向にあります。
⑤ 関連法令の改正等について
当社グループの中核事業である確認検査業務、住宅性能評価業務は、建築基準法や住宅品確法をはじめとする多くの法令による規制を受けております。また、ソリューション事業においては、所管行政庁から一級建築士事務所登録、建設コンサルタント登録、測量業者登録、補償コンサルタント登録等を受けて業務を実施しております。
今後、これらの法令の改廃や新たな法令が設けられる場合、その内容や影響をあらかじめ予測しコントロールすることは困難であり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ M&Aについて
当社グループは事業拡大の施策の一環としてM&A等を活用しており、今後も必要に応じて実施してまいります。ただし、M&A等は、将来予測を基に実施するものであり、不確実性が伴います。
当社グループでは、M&A等を実施する場合には、対象企業の財務内容や契約関係等について詳細な事前調査・検討を行い、極力不確実性を排除するように努めております。しかしながら、M&A後に、偶発債務等の発生や事業環境の変化等により計画通りの事業展開を行えなかった場合は、のれんや関係会社株式の減損処理が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4) その他
① 業務遂行に関する訴訟リスクについて
当社グループの業務のうち、確認検査業務、住宅性能評価業務等の建築基準法、住宅品確法に基づく業務は、その遂行において、次項に記載の審査請求をはじめとして、当社グループの過失の有無に係わらず訴訟を受ける可能性があります。
当社グループでは、業務遂行により発生する損害に備え、「建築確認検査機関・住宅性能評価機関賠償責任保険」に加入することにより担保しておりますが、想定外の訴訟を受けた場合には、風評の悪化等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 行政不服審査法に基づく審査請求について
審査請求とは、行政不服審査法に規定されている権利の一形態で、行政処分に対して不服がある場合、一定期間内にその取消を求めることができる制度であります。当社グループの業務の内、確認検査業務については従来行政が行っていた業務であり、その処分としての建築確認は同法に基づく審査請求の対象となるものであります。民間開放により当社グループのような民間確認検査機関が行う建築確認に対しても同法が適用されることとなります。
従いまして、当社グループが行った建築確認について、その処分を不服とする近隣住民から審査請求を受け、事案が問題化し、訴訟に発展した場合など、当社グループが行った建築確認が適正であるか否かを問わず、また、全く根拠のない誤認による審査請求であった場合でも、公正中立な専門的第三者機関としての当社グループの信用に影響を及ぼす可能性があります。
③ みなし公務員規定等について
確認検査業務が極めて公共的な性格を持つ業務であるため、建築基準法において、指定確認検査機関の役職員は業務で知り得た秘密を漏らしてはならない秘密保持義務を負っております。
具体的には、建築基準法の指定機関として確認検査業務を行っておりますが、当社グループ役職員が確認検査業務で知り得た秘密を外部へ漏らしたり、又は盗用したりすることが禁じられており、確認検査の業務に従事するものは、公務員と同様に罰せられることとなり、刑法及びその他の罰則の適用についても公務員として罰せられることとなります。
なお、住宅品確法の登録機関として住宅性能評価業務を行っておりますが、当該業務も公共性の高い業務であることから、秘密保持義務が別途定められております。
④ 制限業種(注)について
当社の株主のうち制限業種に従事する者又は制限業種を営む法人(当該法人の役職員を含む)による当社の議決権保有割合(以下、「制限業種による議決権保有割合」という。) は以下のとおりです(2025年5月31日現在)。なお、制限業種による議決権保有割合が1/3を超える場合は、確認検査業務及び住宅性能評価業務における国土交通大臣の機関指定、機関登録が取り消されることとなる可能性があります。当社では、株主名簿に記載された株主の属性を可能な範囲で確認・調査を行い、制限業種及び非制限業種に区分した議決権保有割合を今後とも継続的に開示してまいります。
(注) 「制限業種」とは、次に掲げる業種のうち建築物又はその敷地に係るもの(国、都道府県及び市町村の建築物等並びにこれらの機関から業務実施の要請があった建築物等に係るものを除く。)をいいます。
・設計・工事監理業(工事請負契約事務、工事の指導監督、手続の代理等の業務及びコンサルタント業務を含む。但し、建築物に関する調査、鑑定業務は除く。)
・建設業
・不動産業(土地・建物売買業、不動産代理・仲介業、不動産賃貸業及び不動産管理業を含む。)
・昇降機の製造及び供給
⑤ 個人情報漏洩のリスク
当社グループは、多数の顧客情報をはじめとする個人情報を保有しております。当社グループでは、「個人情報保護基本規程」等各社において、情報管理に関する規程を定め、役職員に対する教育・研修等により社内に徹底通知しております。しかしながら、これらの対策にも関わらず、大規模な情報漏洩等により顧客に甚大な被害を及ぼす事態が生じた場合には、監督官庁からの行政処分や、損害賠償請求、社会的信用の毀損等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 自然災害のリスク
当社グループは、国内主要都市に支店や検査員事務所等の施設を展開しており、地震、台風、水害、火山の噴火等の大規模な自然災害の発生により、従業員や施設・設備等への直接的な被害のほか、通信網、交通網の遮断・混乱等によって事業活動が影響を受ける可能性があります。
また、顧客における建設現場の被災や建設資材の供給遅延などによって、竣工時期の遅延等、竣工案件が翌期にずれ込む事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模な感染症流行のリスク
重大な健康被害をもたらす感染症が大規模に蔓延した場合、感染拡大を防止する観点から、当社グループ各社の窓口業務や現場検査業務等を停止せざるを得なくなる可能性があり、その期間が長期化するほど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、感染症拡大が顧客において営業活動や工事現場の操業を停止せざるを得なくなる場合には、その期間が長期化するほど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(参考情報)当社事業にかかる法規制等
① 指定確認検査機関
〔指定の要件〕
○建築確認、検査を行う職員の数について
確認検査員等(確認検査員及び副確認検査員並びに補助員(確認検査の補助的な業務を行う職員。))の数は、指定確認検査機関(以下、「機関」という。)の業務量及びその内容 (建築物の規模等) に応じて法律によって厳密に定められており、その定められた人数以上の確認検査員等を確保する必要があります。
○確認検査の業務の体制、方法等について
機関並びに機関の確認検査員等及び検査補助者(検査を補佐することができるものとして、機関が認めた者)は、次に適合しなければならないものとされています。
・ 確認検査の業務は他の業務(判定及び建築物の検査等に関する業務を除く。)と独立した部署で行い、担当役員を置かなければならない。
・ 機関の役職員又は検査補助者以外の者を確認検査の業務に従事させてはならない。
・ 補助員又は検査補助者は、確認検査の補助的な業務のみを行い、単独で確認検査の業務を行ってはならない。
・ 次のイからニまでに掲げる者が建築主である建築物、イからトまでに掲げる者が制限業種に係る業務を行う建築物その他確認検査の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがある者が関与する建築物について、その確認検査を行ってはならない。
イ 機関の代表者又は担当役員
ロ イに掲げる者が所属する企業・団体等(過去2年間に所属していた企業、団体等を含む。)
ハ イに掲げる者の親族
ニ ハに掲げる者が役員である企業・団体等(過去2年間に役員であった企業、団体等を含む。)
ホ イ又はハに掲げる者が総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。以下同じ。)又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している企業・団体等
へ 機関の親会社等
ト 機関又は機関の親会社等が特定支配関係(建築基準法施行令第百三十六条の二の十四第一項第三号に該当する関係を除く。)を有する者
・ 機関は、次のいずれかに該当する指定構造計算適合性判定機関に対してされた構造計算適合性判定の申請に係る建築物の計画について、建築確認を行ってはならない。
イ 機関の代表者又は担当役員が所属する指定構造計算適合性判定機関(過去2年間に所属していた
指定構造計算適合性判定機関を含む。)
ロ 機関の代表者又は担当役員の親族が役員である指定構造計算適合性判定機関(過去2年間に役員であった指定構造計算適合性判定機関を含む。)
ハ 機関の代表者若しくは担当役員又はこれらの者の親族が総株主又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している指定構造計算適合性判定機関
ニ 指定構造計算適合性判定機関の代表者又は担当役員(過去2年間に代表者又は担当役員であった者を含む。)が機関に所属する場合にあっては、当該指定構造計算適合性判定機関
ホ 指定構造計算適合性判定機関の代表者又は担当役員(過去2年間に代表者又は担当役員であった者を含む。)の親族が機関の役員である場合にあっては、当該指定構造計算適合性判定機関
ヘ 指定構造計算適合性判定機関の代表者若しくは担当役員又はこれらの者の親族が機関の総株主又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している場合にあっては、当該指定構造計算適合性判定機関
ト 機関が総株主又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している指定構造計算適合性判定機関
チ 機関の総株主又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している指定構造計算適合性判定機関
リ 機関が特定支配関係を有する指定構造計算適合性判定機関
ヌ 機関の親会社等が特定支配関係(令第百三十六条の二の十四第一項第三号に該当する関係を除く。)を有する指定構造計算適合性判定機関
・ 確認検査員又は副確認検査員は、次のイからニまでに掲げる者が建築主である建築物、イからホまでに掲げる者が制限業種に係る業務を行う建築物又は判定を行う建築物その他確認検査の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがある者が関与する建築物について、確認検査の業務に従事してはならない。
イ 当該確認検査員又は副確認検査員
ロ イに掲げる者が所属する企業、団体等(過去2年間に所属していた企業、団体等を含む。)
ハ 当該確認検査員又は副確認検査員の親族
ニ ハに掲げる者が役員である企業、団体等(過去2年間に役員であった企業、団体等を含む。)
ホ イ又はハに掲げる者が総株主又は総出資者の議決権の100分の5以上を有している企業、団体等
○経理的基礎について
機関は、経理的基礎を有するものであることとして、次に掲げる要件に該当するものとされています。
・ 債務超過の状態にないこと。
・ 予算規模が適切であること。
・ 事業と予算のバランスがとれていること。
・ 純資産額が、確認検査の業務に係る年間支出総額の概ね1割以上であること。
・ 純資産額が、確認検査の業務の所轄特定行政庁への引継ぎに要する費用に相当する額以上であること。
○機関の役職員等の構成について
機関の役職員等の構成は次に掲げるものとされています。
・ 機関が法人である場合にあってはその役員が、法人以外の者である場合にあってはその者が、次のイからハまでのいずれにも該当しないこと。
イ 建築基準法令の規定により刑に処せられた法人の役員又は役員であった者(当該法人がその刑に
処せられる原因となった事実のあった日以前1年内に当該法人の役員であった者で当該法人がそ
の刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しないもの
に限る。)
ロ 機関の指定を取り消された法人の役員又は役員であった者(その取消しの原因となった事実のあった日以前1年内に当該法人の役員であった者でその取消しの日から起算して5年を経過しないものに限る。)
ハ 指定構造計算適合性判定機関の指定を取り消された法人の役員又は役員であった者(その取消しの原因となった事実のあった日以前1年内に当該法人の役員であった者でその取消しの日から起算して5年を経過しないものに限る。)
・ 機関が株式会社である場合にあっては、取締役のうち制限業種※(軽微なものを除く。以下同じ。)に従事する者若しくは制限業種を営む法人に所属する者(過去2年間に所属していた者を含む。)又は制限業種を営む法人の割合が3分の1を超えないこと。
・ 機関が株式会社である場合にあっては、制限業種に従事する者若しくは制限業種を営む法人に所属する者(過去2年間に所属していた者を含む。)又は制限業種を営む法人が保有している当該機関の議決権(以下この号において「制限対象の議決権」という。)の数の合計が当該機関の総株主の議決権の3分の1を超えないこと。ただし、当該機関の総株主の議決権の千分の1未満の議決権を保有している者の当該議決権については、当該機関の総株主の議決権の3分の1を上限に、制限対象の議決権でないものとみなすことができる。
・ 機関が株式会社である場合にあっては、一のグループ会社等(3分の1を超える議決権を有する会社(制限業種を営む法人が含まれる場合に限る。)の全てが保有している当該機関の議決権の数の合計が当該機関の総株主の議決権の3分の1を超えないこと。
・ 機関の親会社等(建築基準法施行令第百三十六条の二の十四第一項第三号又は同条第二項の規定により親会社等に該当する場合を除く。)についても、上記を準用する。
・ 機関の代表者及び担当役員が、制限業種に従事する者又は制限業種に営む法人に所属する者(過去2年間に所属していた者を含む。)でないこと。
・ 前各号に定めるもののほか、機関と制限業種との関係が確認検査の業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
○兼業の制限について
・ 機関として制限業種に係る業務を行ってはならないものとされています。
※「制限業種」とは、次に掲げる業種のうち建築物又はその敷地に係るもの(国、都道府県及び市町村の建築物等並びにこれらの機関から業務実施の要請があった建築物等に係るものを除く。) をいいます。
・ 設計・工事監理業(工事請負契約事務、工事の指導監督、手続の代理等の業務及びコンサルタント業務を含む。但し、建築物に関する調査、鑑定業務は除く。)
・ 建設業
・ 不動産業(土地・建物売買業、不動産代理・仲介業、不動産賃貸業及び不動産管理業を含む。)
・ 昇降機の製造及び供給
〔指定の更新の要件〕
指定の更新は5年毎に、指定取得と同様の要件を満たしていることを国土交通大臣に申請することとなります。
今後、万一当該基準を満たさない場合は更新がなされない可能性があります。
〔欠格条項〕
建築基準法に定めのある下記欠格条項(建築基準法第七十七条の十九)に該当する場合、指定を受けることができなくなります。
・ 未成年者
・ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
・ 禁錮以上の刑に処せられ、又は建築基準法令の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
・ 機関の指定を取り消され、その取消の日から起算して5年を経過しない者
・ 指定構造計算適合性判定機関の指定を取り消され、その取消の日から起算して5年を経過しない者
・ 建築基準適合判定資格者又は構造計算適合判定資格者の登録を取り消され、その消除の日から起算して5年を経過しない者
・ 建築士の免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者又は建築士事務所の登録を取消され、その取り消しの日から起算して5年を経過しない者
・ 公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から起算して3年を経過しない者
・ 精神の機能の障害により確認検査の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
・ 法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの
・ その者の親会社等が、上記欠格事項のいずれかに該当する者
〔取消等の要件〕
次の要件(建築基準法第七十七条の三十五)に該当した場合は、指定の取消しや期間の定めのある業務停止の処分の対象となります。
・ 確認検査の業務における特定行政庁への報告、確認審査等に関する指針に基づく確認検査の業務の実施、機関の所在地等の変更又は確認検査員若しくは副確認検査員の選解任の届出等の定めに違反したとき
・ 確認検査業務規程によらないで確認検査を行ったとき
・ 国土交通省による確認検査員若しくは副確認検査員の解任、確認検査業務規程の変更又は確認検査の業務に関する監督の命令に違反したとき
・ 指定の基準に適合していないと認められるとき
・ 確認検査の業務に関し著しく不適当な行為をしたとき、又はその業務に従事する確認検査員若しくは法人にあってはその役員が、確認検査の業務に関し著しく不適当な行為をしたとき
・ 不正な手段により指定を受けたとき
② 登録住宅性能評価機関
〔登録の基準等〕
○ 評価を実施する評価員の数が一定数以上であること
評価を行おうとする住宅の区分ごとに、住宅品確法で別途定める数以上の評価員がいること。
○ 住宅関連事業者に支配されているものではないこと
住宅関連事業者とは、住宅の設計、住宅の販売(販売の代理・媒介を含む)、新築住宅の工事請負のいずれかを業として行う者であり、住宅関連事業者の支配とは、住宅関連事業者が親会社である、役員に占める住宅関連事業者の役職員割合(過去2年間に役職員であった者を含む)が2分の1超である、代表役員が住宅関連業者の役職員(過去2年間に役職員であった者を含む)である、のいずれかに該当する場合である。
○ 評価の業務を行う部門に専任の管理者を置くこと
専任の管理者とは、登録住宅性能評価機関の常勤の役員又は当該部門を管理するうえで必要な権限を有する常勤の職員であること。
○ 債務超過の状態にないこと
債務超過の状態とは、貸借対照表の負債(債務)が資産(財産)を上回った状態をさす。
〔登録の更新〕
登録の更新は5年ごとに行わねばなりません。なお申請は、設計住宅性能評価を行う者としての登録、新築住宅の建設住宅性能評価を行う者としての登録、既存住宅の建設住宅性能評価を行う者としての登録の各区分に従って行われます。
今後、万一登録基準等を満たさない場合は、更新がなされない可能性があります。
〔欠格条項〕
住宅品確法に定めのある下記欠格条項(住宅品確法第8条)に該当する場合、登録ができなくなります。
・ 未成年者
・ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
・ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
・ 国土交通大臣により登録を取り消され、その取り消しの日から起算して2年を経過しない者
・ 精神の機能の障害により評価の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
・ 法人であって、その役員のうちに上記欠格事項のいずれかに該当する者があるもの
〔登録の取消し等〕
下記の各項(住宅品確法第24条)に該当した場合は登録の取消、業務停止処分となる可能性があります。
・ 欠格事項に該当するとき
・ 登録の変更等に関する届出の違反、承継に関する届出の違反、登録の区分等の掲示の違反、財務諸表及び評価の業務に関する帳簿の備付けの違反、評価の業務の休廃止等に関する届出の違反及び指定住宅紛争処理機関からの説明又は資料提出の請求を正当な理由無く拒んだとき
・ 住宅性能評価業務規程によらないで評価の業務を行ったとき
・ 財務諸表等の閲覧又は謄写の要求を、正当な理由が無く拒んだとき
・ 国土交通大臣による業務規程変更の命令、登録の基準に適合するため必要な措置を求める命令、評価の業務の義務を果たすために必要な改善命令に違反したとき
・ 住宅紛争処理支援センターへの負担金の納付をしないとき
・ 評価の業務に関し著しく不適当な行為をしたとき、又はその業務に従事する評価員もしくは法人にあってはその役員が、評価の業務に関し著しく不適当な行為をしたとき
・ 不正な手段により登録を受けたとき
当連結会計年度におけるわが国経済は、エネルギーや原材料価格高騰に伴う物価上昇、金利変動による為替や米国の政策動向による影響はあるものの企業収益は総じて改善し、個人消費にも持ち直しの動きもみられ緩やかな回復基調で推移いたしました。
当業界において、住宅市場については、改正建築基準法等の施行に伴う駆け込み需要により、新設住宅着工戸数は増加いたしました。非住宅の建設市場については全体的に着工床面積は減少いたしました。インフラ・ストック分野では、激甚化・頻発化する自然災害、インフラ老朽化等に対処すべく「国土強靱化基本計画」に基づき、必要な公共事業予算が確保されている状況であります。
このような情勢の下、当社グループは、中期経営計画(2022年6月から2025年5月)を策定し、サステナビリティ重視の経営方針の下で、社会的課題の解決に貢献する役務提供を当社グループの成長機会ととらえ、「中核事業の強化」と「事業領域の拡大」の推進を掲げ、継続的な企業価値の拡大を目指してまいりました。
中核事業において、脱炭素社会の実現に向けた政策遂行に必要とされる省エネ関連業務の体制整備を進めるとともに、インフラ・ストック分野の事業領域の拡大のために、2024年6月に株式会社福田水文センター及び国土工営コンサルタンツ株式会社、2025年1月に株式会社花田設計事務所の株式を取得し、子会社化いたしました。この結果、当連結会計年度の業績は、確認検査及び関連事業並びに住宅性能評価及び関連事業が減収となったものの、ソリューション事業及びその他の事業が増収となったことから、売上高は前期比9.7%増の19,765百万円となりました。営業費用は人件費及び子会社株式取得関連費用等が増加したことから、前期比10.5%増の17,719百万円となりましたが、営業利益は前期比2.7%増の2,045百万円、経常利益は前期比2.8%増の2,076百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比4.9%増の1,293百万円となりました。
セグメント別の状況は次のとおりであります。
(確認検査及び関連事業)
建築確認に係る売上の減少等により、売上高は前期比0.1%減の8,767百万円、営業利益は前期比5.3%減の974百万円となりました。
(住宅性能評価及び関連事業)
住宅性能評価に係る売上の減少等により、売上高は前期比4.2%減の3,465百万円、営業利益は前期比8.4%減の400百万円となりました。
(ソリューション事業)
当連結会計年度において新規連結子会社化した3社に係る売上の計上等により、売上高は前期比64.6%増の4,494百万円、営業利益は前期比82.2%増の481百万円となりました。
(その他)
環境関連業務に係る売上の増加等により、売上高は前期比4.9%増の3,038百万円となりましたが、子会社株式取得関連費用等が増加したことから、営業利益は前期比22.0%減の255百万円となりました。
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,965百万円増加し13,435百万円となりました。これは、流動資産が690百万円、固定資産が1,275百万円増加したことによるものであります。
流動資産増加の主な要因は、現金及び預金の減少875百万円等減少したものの、売掛金及び契約資産の増加が1,633百万円等によるものであります。
固定資産増加の主な要因は、有形固定資産647百万円、のれん499百万円等の増加によるものであります。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ1,357百万円増加し7,050百万円となりました。これは、流動負債が1,203百万円増加し固定負債が154百万円増加したことによるものであります。
流動負債増加の主な要因は、短期借入金250百万円、1年内返済予定の長期借入金368百万円、未払金247百万円、未払費用112百万円、契約負債84百万円等の増加によるものであります。
固定負債増加の主な要因は、長期借入金が322百万円減少したものの、退職給付に係る負債109百万円、長期未払金260百万円、リース債務25百万円等の増加によるものであります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ607百万円増加し6,384百万円となりました。これは自己株式の取得216百万円があるものの、利益剰余金の増加834百万円等によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ933百万円減少し5,719百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは784百万円の収入(前連結会計年度は1,506百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益2,110百万円があるものの、売上債権及び契約資産の増加1,365百万円等の支出があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは852百万円の支出(前連結会計年度は391百万円の支出)となりました。これは主に固定資産の売却による収入100百万円等があったものの、固定資産の取得による支出381百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出723百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは866百万円の支出(前連結会計年度は740百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金の増加260百万円、長期借入金の借入による収入550百万円があったものの、長期借入金の返済による支出980百万円、配当金の支払458百万円、自己株式取得による支出216百万円等があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの業務は、確認検査業務、住宅性能評価業務等であり、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における経営成績等の状況の概要につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
a. 売上高
確認検査及び関連事業の売上高は前期比0.1%減の8,767百万円、住宅性能評価及び関連事業の売上高は前期比4.2%減の3,465百万円、ソリューション事業の売上高は前期比64.6%増の4,494百万円、その他の売上高は前期比4.9%増の3,038百万円となりました。
これは、確認検査及び関連事業については評定を行う関連事業に係る売上が減少したことによるものであり、住宅性能評価及び関連事業については戸建住宅および共同住宅に係る売上の減少等によるものであり、ソリューション事業については当期に新規連結子会社化した3社に係る売上の計上等によるものであり、その他については環境関連業務に係る売上の増加等によるものであります。
b. 営業利益
当連結会計年度の営業費用は、人件費、子会社株式取得関連費用等が増加したことにより、売上原価が前期比14.4%増の13,355百万円、販売費及び一般管理費は前期比0.2%増の4,364百万円となりました。この結果、売上総利益は前期比1.0%増の6,410百万円、営業利益は前期比2.7%増の2,045百万円となりました。なお、売上原価率は67.6%、売上総利益率32.4%、売上高営業利益率は10.4%となっております。
c. 経常利益
営業外収益は前期比14.9%増の77百万円となりました。これは、主として助成金収入が増加したこと等によるものであります。
営業外費用は前期比20.7%増の46百万円となりました。これは、主として雑損失が増加したこと等によるものであります。
この結果、経常利益は前期比2.8%増の2,076百万円となりました。
d. 親会社株主に帰属する当期純利益
税金等調整前当期純利益は前期比4.3%増の2,110百万円となり、法人税、住民税及び事業税813百万円、法人税等調整額△1百万円、及び非支配株主に帰属する当期純利益4百万円を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は前期比4.9%増の1,293百万円となりました。
当連結会計年度の1株当たり当期純利益は169.33円となっております。
e. 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
上記指標につきまして、当連結会計年度における売上高は19,765百万円、営業利益は2,045百万円、営業利益率10.4%、ROE21.4%で、安定的配当(配当性向は35.4%)を継続しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度における経営成績等の状況の概要につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源
当連結会計年度における資本の財源は、営業活動による収入が784百万円ありました。
当社グループのキャッシュ・フロー指標は下記のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対ネット有利子負債比率:(有利子負債-現金及び現金同等物)/キャッシュ・フロー
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現金及び現金同等物)/自己資本
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/支払利息
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式を除く)により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。
c. 資金の流動性についての分析
当連結会計年度末現在、長期借入金等の有利子負債残高は2,606百万円であり、長期借入金の資金使途は、子会社株式取得資金であります。
当社グループの流動比率等の指標は下記のとおりであります。
流動比率:流動資産/流動負債
固定比率:固定資産/株主資本
固定長期適合比率:固定資産/(固定負債+株主資本)
(注)いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び同「注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。