文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは企業理念を次のとおり定めております。
創業企業 つねに社会にとって必要な事業を創造しつづける
日々創業・・・初心を大切に日々創業精神で仕事をする
歴代創業・・・代々初代の志を持って新事業を創造する
全員創業・・・全社員が自分に合う第一人者の道を拓く
循環企業 助け合い、活かし合い、分かち合う喜びの環を回しつづける
快 労・・・助け合い、補い合って気持ちよく働く
活 財・・・あらゆるもののいのちを活かして使い回す
還 元・・・利益や喜びを共に生きる人たちと分かち合う
求道企業 永遠につづく企業の道、人の道を追求しつづける
選難の道・・・安易な道を選ばず求められる道を歩む
独自の道・・・特質を生かし人のやらないことをやる
感謝の道・・・生かされていることに感謝し慢心をしない
社会にとって求められている事業を創造し続け、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることはもとより、事業活動を通じて良い世の中を作ることを目指してまいります。
当社グループの事業環境においては、2050年のカーボンニュートラル達成や経済安全保障の強化、地域経済の活性化といった複合的な社会課題の解決に向け、サーキュラーエコノミー(循環経済)の重要性がますます高まっております。この領域は、当社グループが長年に渡り培ってきた技術やノウハウを活かすことができ、低炭素なリサイクル原料(グリーンマテリアル)の供給において重要な役割を担うと実感しております。
このような環境の中、当社グループではカーボンニュートラル実現に向けた社会課題解決を事業機会に、戦略コンセプトを「サーキュラーエコノミー(CE)をリードする」とし、それを「モノづくりを支えるCE」と「地域を支えるCE」に分けて対応をしております。その上でベースメタルはもちろんのこと、レアメタル、レアアース、プレシャスメタルに加え、ポリマー(ゴム、プラスチック)の再生素材製造にも挑戦し、再生素材メーカーに変革していきます。
この度当社は、不確実性な事業環境のもと、将来のビジョンをより明確にしつつ、一層実行重視の経営を行うために2029年6月期を最終年とする5か年の中期経営計画を取り下げました。今後につきましては、中長期的にROEを新たな定量目標とし、足元1年間の具体的な利益計画と財務指標を公表し、その確実な達成を毎年積み重ねていく方針といたしております。これにより、変化の激しい事業環境においても、より効果的な経営資源の配分や迅速な意思決定によって、将来的な企業価値向上へと繋げてまいります。
今後当社グループが、事業を推進していく上での課題は下記のとおりです。
(独自性の追求)
これらCEを実現させるための当社の独自性の追求として、以下の5点があげられます。
①高度な物理選別設備・プロセス・ノウハウ
②リサイクルエンジニアリングの専門性
③コンサルティング及び企画提案力
④全国複数拠点と海外を含めた流通ネットワーク
⑤解体から資源循環まで一貫サービス
これにより、使用済製品や廃材の解体段階からリサイクル素材の製造・供給に至るまで高度なトレーサビリティを確保し、素材の品質・安全性・出所を明確に管理することで、静脈サプライチェーンにおけるセキュリティの担保を実現しております。また、全国に張り巡らせた原料回収拠点網や各地域に応じた多様な原料調達手法の展開によって、安定的かつ柔軟な原料供給体制を構築し、経営の独立性を維持しながら、競争優位性を確立しています。
(事業基盤の整備)
当社グループは、サーキュラーエコノミーの実現と持続的成長を支えるためには、技術やビジネスモデルだけでなく、経営基盤の強化・進化が不可欠であると考えております。そのため、以下の取り組みに重点を置き、中長期的視点での企業体質の強靱化を図ってまいります。
①待遇改善による人材の確保と定着
人材こそが事業の基盤であるという認識のもと、定期昇給やベースアップをはじめとする報酬水準の引き上げに取り組んでおります。生産性向上と連動した好循環の構築を通じ、地域における雇用の質と魅力を高め、優秀な人材の確保と定着を実現します。
②次世代経営層・リーダー層の計画的育成
将来の拠点拡充や地域戦略の展開を見据え、後任育成の制度化・意図的な人材選抜に取り組んでいます。経営幹部候補や現場リーダー層に対し、OJTと選抜研修の組み合わせにより、自律的・戦略的に行動できる次世代人材の育成を進めています。
③ガバナンス体制の強化
グループ経営の透明性・健全性を確保すべく、内部統制の整備や取締役会の機能高度化を進めております。経営判断の質を高めるため、社外取締役の活用やリスクマネジメント機能の強化を図るとともに、サステナビリティとインパクト創出を軸とした戦略的ガバナンスの構築を目指します。
④事業会社統合による業務プロセスの最適化
金属資源循環4社及びポリマー資源循環2社の統合をはじめとするグループ再編を通じて、生産・営業・管理などの機能連携を強化しています。これにより、部門横断的な情報共有・ノウハウ融合が進み、業務プロセスの最適化と経営資源の有効活用を実現しつつあります。
これらの取り組みを通じて、当社は単なる短期的収益の追求にとどまらず、長期的な企業価値の向上と社会課題の解決の両立を目指し、持続可能な成長のための堅固な事業基盤を構築してまいります。
(重要戦略事業)
事業基盤の上に構築されるのが、当社グループの今後の重要戦略事業です。
①焼却灰からの金銀滓回収事業
焼却灰からの金銀滓回収事業は、都市鉱山の高度活用を可能にし、他社に先駆けた「資源化困難物の高付加価値化モデル」として、環境省の循環高度化政策とも連動した新たな市場形成が期待されます。
②リチウムイオン電池リサイクル事業
リチウムイオン電池リサイクル事業は、EV普及に伴う使用済みリチウムイオン電池の増加を背景に、素材回収・処理・再資源化のクローズドループ構築を目指すものであり、グリーントランスフォーメーション(GX)の中心的役割を担います。
③ポリマーCE事業
ポリマーCE事業では、物理・化学両面での高度な再生処理により、廃プラスチック・ゴムを原料とした新素材の供給体制を構築し、脱炭素・資源循環に資する「持続可能な素材インフラ」を創出します。
これらの取り組みにより、当社はハイレベルなCEの先進的な具体事例を数多く創出し、経済的価値と社会的価値を両立させる持続的成長を目指してまいります。
企業理念(
当社グループにおけるサステナビリティとは、この企業理念を基盤として展開する事業活動そのものが経済的価値・環境的価値・社会的価値の創出に直結するという認識に立脚しています。すなわち、当社グループの事業を推進すること自体が循環型社会の実現や脱炭素化、社会の持続的発展につながり、同時に企業の競争力や収益基盤の強化を実現するものです。そして、企業理念を実現することこそが企業の使命であり、それを体現し続けることが当社グループにおける真のサステナビリティ経営であると考えています。
これは、持続可能な社会とエンビプロ・ホールディングスの持続的な成長を同時に実現するための揺るぎない信念であり、当社が実践するサステナビリティ経営そのものです。
企業理念の背景 -企業理念は最も大切にする価値観でありDNA-
2000年頃になると循環型社会や環境問題に関する意識の高まりから、リサイクルに対するニーズ、各種法令の整備など事業環境が大きく変化しはじめました。当社グループにおいても、成長するスピードは高まり、変化の度合いは大きく、人材は増加し、地域を越えて活躍しはじめました。同時に何か漠然とした不安を感じるようになりました。
会社が順調に発展しはじめているのにもかかわらず、これまでの長い間何かが足りないと探し続けていたものを再認識しました。木が成長し、幹は伸びますが、それを支える根を大きく張る必要があると。表面の変化に左右されない、確固たる思想、理念が確立されていない事によるものだと強く感じ、2004年、私たちは企業理念を制定しました。
創業者の人生観、理念や口癖、幹部社員の人生観、想いなど会社に内在している考え方を紡ぎだし、約1年間かけて明文化しました。どんなに私たちをとりまく環境が変化しても、決して揺らぐことなく、また今後2000年間でも通用するような永続性を持ち、全ての行動の規範となる企業理念、「最も大切にする考え方」はこうして作り上げられました。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する方針・施策について推進すべく、当社の代表取締役社長をはじめ、常勤取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会を設置しています。当社グループと社会の持続的発展を同時に実現させるための戦略推進を目的とし、代表取締役の意思決定の補助機関として、戦略推進状況及び新規事業、M&Aなどを含めた将来的な方向性を、長期的な視野に立ち、フレキシブルかつ活発に毎月議論・検討を行っています。また、協議された事項については業務執行の意思決定機関である経営会議にて決議又は協議が行われ、その後の取締役会へ上申されます。取締役会の監督体制のもと、ガバナンスの維持とサステナビリティ経営の推進を図ります。これら当社のコーポレート・ガバナンスの状況は「
② 戦略
当社グループは、循環型社会の実現に向けた事業活動そのものが社会的価値の創出と直結しており、持続可能な成長を実現するためには、社会・環境課題の中で特に重要なテーマ(マテリアリティ)を特定し、中長期的な経営戦略に組み込むことが不可欠であると考えています。
・マテリアリティ特定のプロセス
当社グループは、サステナビリティ経営を推進するにあたり、社会・環境課題の中から特に重要なテーマ(マテリアリティ)を特定しました。
まず 外部環境の分析 として、GX基本方針や資源循環高度化法などの政策動向、脱炭素・資源循環に関する社会的要請を把握しました。次に、これらを踏まえて 長期トレンドの整理 を行い、グリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心に、資源獲得競争の激化やデータ活用の進展など中期・短期の課題を抽出しました。このプロセスを経て、当社グループはマテリアリティを以下の3つに整理しました。
(a)サプライチェーンにおけるグリーンマテリアルの需要増加
(電炉増設に伴う鉄スクラップ需要の増加、電化による非鉄金属・レアメタル需要の増加、廃プラスチックの高度な資源循環促進)
(b)生産プロセスにおける省人化、事業活動におけるデータ活用の促進
(c)事業活動を推進する人材への投資

・戦略コンセプト
マテリアリティの特定から、当社グループの事業モデルにおいて2つの方向性に帰結します。一つは鉄スクラップや非鉄金属・レアメタル、廃プラスチックといったサプライチェーンを通じたモノづくり分野での循環経済実装に直結します。また他方では、地域の資源回収やごみ行政との連携といった地域・生活に密着した領域での循環経済実装につながります。
これらの考え方をふまえ、改めて「モノづくりを支えるCE」と「地域を支えるCE」の二つに分けて展開することで、産業界と地域社会の双方で循環経済をリードする戦略コンセプト「サーキュラーエコノミーをリードする」としました。
「モノづくりを支えるCE」では、使用済み製品の広域回収から保管の最適化、高度なリサイクル、環境データの活用などを通じ、製造業における循環型バリューチェーンの構築を実現します。
一方「地域を支えるCE」はいわば都市ごみのCEであり、資源回収サービスや住民への価値還元など地域密着型リサイクルの推進、焼却灰からの金銀滓回収による自治体とのパートナーシップを通じて、ごみ行政の効率化と資源循環高度化に貢献します。

③ リスク管理
当社グループでは、事業のリスクは内部統制委員会で評価・検討され、全社的なリスク管理プロセスとして統合されています。気候変動関連のリスクについてはサステナビリティ委員会で評価・検討を行っています。また、機会についても、関連部署が特定の上、具体的な施策を検討し、必要に応じて提言しています。サステナビリティ委員会は提言内容を評価し、対応策を推進していきます。リスク・機会いずれにおいても特に重要な事項は取締役会に報告又は上申されます。
④ 評価及び目標
当社グループは、特定したマテリアリティをもとに策定した戦略コンセプト「サーキュラーエコノミー(CE)をリードする」を実現するためには、自社独自の強みをさらに磨き上げることが不可欠であると認識しています。
目標としては、2030年に向けて「低炭素プロセスによる地上資源の再生素材メーカー」としての地位を確立することを掲げています。そのために、事業収益性と社会的インパクトの両立を指標化し、持続可能な社会の実現とエンビプロ・ホールディングスの持続的成長を同時に追求していきます。

(2) 人的資本に関する項目
良い組織風土の醸成と、強い企業文化を形成し、そこから戦略を実行するための卓越した組織能力を育てることは経営において最も重要なテーマの一つです。
そのための組織イメージは「創発的能力を備えた、自律した個人の規律ある集団」とし、自分の力で考え、自らの意志で進み、自らの規範で律する、そのような個の集団が連携することにより組織能力は最大化すると考えています。
① ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については、「(1)当社グループにおけるサステナビリティに関する基本方針 ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
当社グループは、良い組織風土を醸成し、強い企業文化を形成することが、持続的な企業価値向上の根幹であり、戦略を実行するための卓越した組織能力の源泉であると考えています。
組織風土とは、助け合い・認め合い・支え合う関係性を基盤とし、風通しが良く、主体的かつ挑戦的で協力的な環境を指します。これは日々の業務の中での信頼関係と心理的安全性によって育まれ、従業員が自ら考え、意思を持ち、自らの規範で行動する「創発的能力を備えた、自律した個人の規律ある集団」を生み出します。
一方、企業文化とは、組織内で働く人々が当たり前のように共有し、信じている価値観や信念であり、「らしさ」という個性・独自性・こだわり・DNAによって表されます。企業文化が強く根付いた組織は独自の存在となり、競争力の源泉となります。
当社グループは、このような組織風土と企業文化を相互に高め合いながら、人的資本経営の戦略を以下の取り組みによって推進しています。
・企業理念の浸透
良い組織風土と強い企業文化は、当社グループの持続的成長の原動力です。当社は、企業理念を全従業員に深く浸透させることを最重要テーマと位置づけ、「企業理念浸透への執念」をもって取り組んでいます。理念を日々意識し、自らの判断や行動の拠り所とすることで、組織の一体感と価値観の共有を実現します。
今期も毎日全従業員が朝礼(昼礼)において企業理念の唱和を継続的に実施しており、従業員一人ひとりが当社グループの存在意義を確認しながら、共通する価値観で行動する習慣づくりを推進しています。また、企業理念に対する理解を深めるため、定期的に説明会を開催し、今期は97名が参加しました。引き続き、理念に基づいた意思決定や行動を支える文化の定着を図っていきます。
注:「正社員数に対する受講割合」は、各年度末に在籍する正社員に対する企業理念説明会の受講済みの人数の割合を表示しております。
・事業推進人材
当社グループは、組織風土と企業文化の重要性を理解し、ビジョンに向かって課題を認識し、変化を推進できる実行力・エネルギー・覚悟を持つ人材を「事業推進人材(経営幹部)」と定義しています。これらの人材は、当社の永続的成長の基盤であり、2030年6月期までに100名の創出を目標としています。内部人材の育成と外部からの人材確保の両面から取り組んでいます。
今期は、内部育成と外部採用の両面で取り組む中、管理職・主任層へのアンケートと個別面談(106名)により、新たな挑戦の機会の不足や管理職登用に向けた準備・支援の不足といった課題が明らかになりました。これらの課題を踏まえ、次期は次世代経営層及びリーダー層の育成を目的とした研修を実施することで、将来の事業推進を担う人材の育成を強化していきます。
・目標管理とフィードバック
当社グループは、現在の業務を確実に遂行する「業務遂行能力」に加え、新たな価値を創出する「創造力」が組織能力の両輪であると考えています。新しい価値は日常業務の改善の延長線上にあり、日々のオペレーションを「狭く・深く・強く」掘り下げる「業務改善能力」が不可欠です。また、役割を明確に与え、成果や行動に対する適切なフィードバックを行うことで、社員が方向性を見失わずに成長できる環境を整えることを重視しています。
今期も引き続き、グループトップがビジョンを共有、続いて各社・各部署が課題認識、目標設定、アクションプランを発表する経営計画・実行計画発表会を実施しました。各部署では、目標達成に向けたアクションプランを記載した実行計画書を運用し、社長・役員・経営幹部が週次報告を通じて進捗確認と課題共有を行いました。さらに週次報告や発表会でのやり取りを通じ、上位者からのフィードバックと社員からの意見を双方向で交換することで、改善の方向性を明確化し、全社員が組織的な気づきや改善のヒントを得られる環境を醸成しました。
・教育研修
当社グループは、「最大の学びは誰かに教えること」という考えのもと、各事業・業務に必要な知識や技能を、内部人材が講師として伝える「エンビプロビジネススクール」を開催しています。教える経験を通じて得られる難しさや達成感が、自らの学びや成長姿勢を大きく高めると考えています。また一部の専門分野では外部講師を活用し、「自主性・創造性が成果の質を高める」という視点のもと、各現場が主体的に課題を改善する力としての「現場力」を強化しています。
今期は現在の業務を適切に効率的に遂行することを目的に、事業に関連する法令習得や生成AIを中心に内部人材による研修を行いました。また外部人材による研修では現場力を引き出す組織マネジメントの一環として「傾聴」を重視し、深い知見と豊富な実践経験を持つ講師による管理職研修をこれまでに8回実施しました。これらの研修を通じて、役割と責任を担える人材の育成を加速し、次世代経営層・リーダー層の基盤を築いていきます。
・報酬待遇の改善
当社グループは、物価上昇や生活コストの変化、賃金上昇の社会的動向を踏まえ、従業員の生活基盤を守りつつ意欲向上につなげるための待遇改善を重要施策と位置付けています。
今期は4月の定期昇給およびベースアップ(1万円)に加え、6月には追加ベースアップ(2万円)を実施しました。これにより、安定給部分を厚くし、生活設計のしやすさと雇用の安心感を向上させています。一方で、総人件費のバランスを保つため、賞与支給月数は前年より調整し、固定費増加に対して変動費を適切にコントロールしました。この取り組みにより、財務健全性を維持しつつ、従業員の生活基盤の安定とモチベーション向上を両立しています。今後も労働市場や経済環境の変化をふまえ、安定給と変動給の最適なバランスを追求しながら持続的な処遇改善を進めていきます。
・採用
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のためには、企業理念や組織文化に共感し、変化を推進できる人材の確保が不可欠であると考えています。採用活動は単なる人員補充ではなく、長期的な視点での人的資本投資と位置づけ、既存の組織風土との親和性、将来のリーダー候補としての成長のポテンシャルを重視しています。採用に当たっては、国内外の事業展開や多様な業務領域に対応できる人材を対象とし、経験者採用と新卒採用をバランスよく行っています。
今期、経験者採用では、専門的な知識・資格を有する人材に加え、マネジメント層として活躍が期待される人材の採用に注力しました。
新卒採用では、入社後の定着と早期戦力化を目的として、メンター制度やOJT、各種研修を組み合わせた育成体制を整備しています。特に学卒者の初任給については、新卒採用競争力の維持・強化を目的に、段階的な引き上げを実施しています。これにより、優秀な若手人材の獲得と早期定着を図るとともに、長期的なキャリア形成を後押ししています。
注:当社及び当社グループの主要な子会社のエコネコルの本社が所在する静岡地区の金額を表示
・コンプライアンス研修
当社グループは、全従業員が安心して働ける健全な職場環境を維持し、法令順守と高い倫理観に基づく行動を徹底するため、コンプライアンス研修を人的資本戦略の重要施策として位置付けています。心理的安全性の確保、組織風土の健全化、情報管理体制の強化を目的に、以下の取り組みを実施しています。
「ハラスメント・内部通報制度研修」
ハラスメントの未然防止と早期対応を図るため、全従業員を対象に定期研修を実施しています。
今期の研修では、世代間の価値観やコミュニケーションスタイルの違いにも着目し、相互理解を促進しています。あわせて内部通報制度の趣旨、通報の流れ、通報者保護の仕組みを周知し、安心して声を上げられる職場づくりを推進しています。
「内部情報管理研修」
情報漏洩やインサイダー取引リスクへの対応として、内部情報管理規程の整備、情報セキュリティ強化策を講じるとともに、全従業員を対象に研修を実施しています。関連法令や社内規程の理解促進、情報管理意識向上を図り、受講率は85%となりました。今後も受講率向上と理解定着を目指し、研修内容・方法の改善を継続します。
これらの研修を通じ、全従業員が安心して働ける環境と強固なコンプライアンス体制を維持し、持続的な企業価値向上に資する組織文化の定着を図っていきます。
・多様性
組織風土の醸成には多様性を尊び、透明性の高い組織マネジメントを志向することは重要な要素です。また新たな価値を生み出すには、私たちに染みついている固定観念や常識を否定すること、発想の柔軟性や意識の壁を超えることが求められます。さまざまな観点から学ぶために多様性を尊重し、建設的な対立を厭わず率直に発言することを心理的安全性と位置づけて連帯感を生み出していくことが大切と考えています。そのための位置づけとして女性が働きやすい職場環境を構築し、そのうえで女性管理職比率を20%とすることを目標としています。
今期の具体的な施策として、女性管理職登用にあたっては、個々の状況に寄り添いながら、対話を重ねることで前向きな意思決定を支援しています。今後、年齢構成の偏りや管理職層の業務負荷といった課題にも対応が必要であると認識しています。男女間での役割固定化を見直し、男性の育児休業取得促進や、取得時に互いを補完できる体制(脱属人化、多能工化、生産性向上)を整備します。また、社会常識や価値観の変化を理解するための社内研修を継続し、管理職・主任層への個別面談を通じて意識改革を促進します。
③リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については、「(1)当社グループにおけるサステナビリティに関する基本方針 ③リスク管理」をご参照ください。
④評価及び目標
(3) GHG排出量削減への取り組み
当社グループでは、TCFD提言に賛同し、適切な情報開示を進めています。また、2018年にRE100を宣言し、2020年には2050年までに当社グループで扱うスクラップや廃棄物の処理及びリサイクルを含む、すべての事業から排出されるGHG排出量実質ゼロを目指すことを決定しています。
資源問題と気候変動問題は、個別の問題ではなく相互に密接に関連しており、地球規模の社会課題です。際限のない資源採掘や温室効果ガスの排出は、持続可能性を損なうものであり、私たちが共有している地球の資源と自然環境を未来に残すためにはその解決が望まれます。サプライチェーンの最後に位置する資源循環事業を担う当社グループは、この重要な社会課題の両方に事業を通じて取り組むことができる事業特性を有しており、まさに当社グループが果たすべき社会的責任であると考えています。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については、「(1)当社グループにおけるサステナビリティに関する基本方針 ①ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
当社グループでは、気候変動がもたらすリスクと機会及び当社グループへの影響を検証するため、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)公表の「Representative Concentration Pathways(RCP8.5)」及び国際エネルギー気候(IEA)公表の「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」などを用いて、今世紀末の気温上昇を1.5℃に抑えた場合と4℃上昇した場合の想定で、当社グループの事業活動へのインパクトを検証しました。

③リスク管理
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。詳細については、「(1)当社グループにおけるサステナビリティに関する基本方針 ③リスク管理」をご参照ください。
④評価及び目標
Scope1、2排出量、基準年2018年6月期に対する削減率、使用電力の再生可能エネルギー比率
(注)2050年6月期のScope1、2の排出量はネットゼロを「±0」として表記しております。
Scope1については、フォークリフトに使用しているLPGの電化推進や、バイオ燃料の導入可能性を検討することにより、削減の取組を続けていきます。Scope2については、再生可能エネルギー電力の導入を継続的に推進しており、達成率は既に99.7%に達しております。引き続き、Scope1及びScope2の排出削減を一層進展させるべく対応を継続してまいります。
Scope3排出量、基準年2025年6月期に対する削減率
当社グループでは、2023年6月期を基準年としてScope3の排出量目標を設定しておりましたが、当該算定においては、期中に新設した株式会社サイテラスの物流代行事業の一部が含まれておりませんでした。その後、当該事業の規模拡大に伴い排出量への影響が大きくなったことに加え、グローバルトレーディング事業における算定方法の精緻化を進めた結果、より実態を適切に反映した目標管理を行う必要があると判断いたしました。具体的には、2024年6月期にはカテゴリ4であった物流代行分を2025年6月期はカテゴリ9へ分類変更し、トレーディングにおける日本-海外便については港を7つのグループに分けて算定することで、より実態に即した輸送距離でGHG排出量を算定しております。このため、2025年6月期の算定結果を新たな基準年として設定することといたしました。
今後は、この新たな基準年を起点として、引き続き精緻な算定とモニタリングを行い、実効性の高い削減戦略の策定と実施に取り組んでまいります。当社グループは、サプライチェーン全体での排出削減を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
本書に記載した当社グループにおける事業概況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でおりますが、記載内容及び将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在していること、並びに投資に関連するリスク全てを網羅するものではありませんのでご留意ください。
当社グループにおける原材料、製・商品である鉄スクラップや非鉄金属の価格は、鉄鉱石や銅鉱石といった資源価格や金属製品価格等の影響を受けます。
当社グループの原材料、製・商品の仕入価格と販売価格は、基本的には相場に連動いたしますが、相場の急激な変化の影響を受けて、契約内容によっては利益の減少や損失が発生する場合があります。また、同様に製・商品在庫価値についても相場の影響を受ける可能性があります。
1トン当たりの鉄スクラップ価格(東京製鐵田原海上特級価格の平均)の推移は、下表のとおりであります。
(注) 鉄スクラップ価格は、東京製鐵田原海上特級の日々の価格を合計し各四半期会計期間の日数で除して算出しております。
当社グループにおける原材料・商品は、主に工場の生産工程から発生する金属スクラップ及び産業廃棄物や市中発生の老廃屑(解体工事や工場ライン撤去に伴い発生する鉄スクラップや非鉄金属)となり、工場の生産動向、最終製品の消費動向等の影響により発生が減少する可能性があります。こうした原材料・商品の減少は、売買数量、生産設備の稼働率に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、原材料、製・商品の相場変動、為替変動、原材料・商品の増減等、各種要因により業績が大きく変動する可能性があります。
当社グループの業績は、下表のとおりであります。
(注) 比率は、通期に対する四半期の割合であります。
当社グループの2025年6月期の売上高に占める上位三社である国内、韓国及びベトナムの鉄鋼メーカーを合わせた売上高比率は24.55%であります。各社とは円滑な取引関係を継続しておりますが、取引先の個別の事情や相手国の事情、法規制や関税率の変化といった理由により、取引条件の悪化や取引関係の解消又は契約内容の大幅な変更等が生じる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは鉄スクラップ等の調達、加工、販売の流通において主に車両及び船舶を利用しております。原油価格や人件費の高騰、需給逼迫等による配車、配船難等により物流コストが上昇する可能性があります。また、船舶会社から傭船し販売する場合、一船当たりの販売量は1,500トンから5,000トン単位となり、売上高は数千万円から1億円以上となります。船舶を利用した販売において、悪天候等の不測の事態により適時に傭船が行えない可能性があります。これらにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業に適用される法令は、廃棄物処理法、建設業法等の各種業法、環境関連法、消防法、知的財産法、製造物責任法、独占禁止法、外国為替法等の輸出入に関する法令、贈賄防止に関する法令、海外事業に係る国・地域の各種法令・規制等、広範かつ多岐にわたります。当社グループは、法令遵守を企業としての重要な責務と認識のうえ、コンプライアンス体制を強化して法令遵守の徹底を図っております。
しかしながら、万一、各種業法に基づき事業停止命令や許認可の取消処分を受けた場合や、環境関連法、製造物責任法等に基づき損害賠償責任が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の予期せぬ法令の制定・改廃が行われた場合や、社会・経済環境の著しい変化等に伴う各種規制の大幅な変更があった場合、既存事業がこれらの規制に抵触し、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。
当社グループは、海外売上高比率が高く、輸出や三国間貿易を実施しております。また、オランダ支店、イギリス支店及びベトナム駐在所等が存在することから、取引先の各国の経済情勢に加え、貿易・通商規制、税制、予期しない法律又は規制の変更並びにそれらの解釈の相違、あるいは政変、戦争、感染症の流行等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの貿易取引では、円建のほか外貨建も含めて取引を行っている子会社も存在することから、取引、在庫価値並びに外貨預金残高について為替変動の影響を受けております。
このため外貨取引については、為替予約規程により為替予約等を利用することを規定し運用することで、為替変動リスクの低減に努めております。また、連結財務諸表を作成するにあたって在外子会社の財務諸表を円換算しており、現地通貨における価値に変動がなくても、円換算後の価値が影響を受けます。しかしながら、事業活動において為替変動リスクを完全に排除することは困難でありますので、今後著しい為替変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業の拡大を図る手段としてM&Aを実施してまいりました。対象企業については、当該企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うことによって、極力リスクを回避するよう努めております。しかしながら、M&Aを行った後に偶発債務や未認識債務が判明する場合等が考えられます。
また、M&Aの対象会社が外部環境の変化等各種の要因により、当初の期待どおりの成果をあげられない可能性もあります。これらの場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業分野には大きなシェアを持つ全国的な企業が存在せず、地域別に中小企業が多数存在し、それぞれの得意分野・地域を持ち、価格、サービスを競っております。
今後は、法的規制を背景にした環境対応や廃棄物リサイクルへの社会的ニーズの高まりにより、より高度な廃棄物処理と再資源化が求められることから、全国一括受託のためのサービス提供地域の拡大や大規模な設備等を設置できる財務的な体力、ノウハウ、あるいは廃棄物の排出事業者から廃棄物由来のリサイクル品やリユース品を利用する企業までをも巻き込んだ総合的な廃棄物の循環処理サービス体制を構築することが重要になってくると予想しております。
当社グループではこれらの社会的ニーズを取り込んだ事業展開を目指しておりますが、海外企業や異業種からの新規参入や業界再編成といった事業環境の変化によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
2025年6月期末において、当社グループの有利子負債は7,735百万円、総資産に対する割合は24.7%となっております。引き続き財務バランスを総合的に勘案してまいりますが、今後の経済情勢・金融環境の変化・市中金利動向等によって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、役員の退職慰労金の目的並びに役員と従業員等へのインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。2025年6月末現在における潜在株式数は1,232,400株であり、2025年6月末の発行済株式総数の4.1%に相当いたします。この新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、株式市場で同時期に大量に売却された場合は、需給バランスに変動を生じ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業価値の持続的向上のためには、優秀な人材の確保及び育成が不可欠であると認識しております。特に、「企業理念」及び組織イメージ「創発的能力を備えた自律した個人の規律ある集団」の実現に向けては、自律的に行動しうる組織風土の醸成と強い企業文化の形成が重要な経営課題であると捉えております。そのため、内部統制委員会の下部組織である人事労務改革委員会を中心に、外部人材の積極的な採用や次世代経営層・リーダー層育成施策の強化、待遇改善等人的資本経営の観点からの人材戦略に取り組んでおります。しかしながら、産業界全体での人材獲得競争の激化などを背景に、いずれも継続的な人材の確保を保証するものではなく、適切な人材の確保及び育成が困難となった場合には、当社グループの事業運営や成長戦略の推進、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、多くの生産設備、重機等を使用して業務を行っており充実した安全管理が不可欠であると認識しております。そのため、内部統制委員会の下部組織として環境安全推進委員会を設置し、従業員への安全教育、危険予知活動といった啓発活動並びにチーム活動等による点検パトロールの継続的な実施を通じ、事故を防止するための安全管理を徹底しております。しかしながら、万一、重大な事故・労働災害等が発生した場合、一時的に復旧費用、補償金等の負担が生じ、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社並びに当社グループの中核企業である株式会社エコネコルの資源リサイクル工場は、静岡県富士宮市の富士山の麓に位置しており、富士山が噴火した場合、火山弾等による社屋や設備の損壊、周辺道路の寸断による孤立化及び電気や水道等の供給停止による操業停止の可能性があります。また、静岡県や愛知県においては南海トラフ巨大地震の発生、全世界的には気候変動に伴う異常気象の発生が懸念されております。当社グループの株式会社エコネコル、株式会社NEWSCON並びに株式会社サイテラスにおいては、船積みヤード(在庫保管基地)を有しておりますので、地震による津波や気候変動に伴う異常気象等による風水害により製・商品在庫においても大きな被害が出る可能性があります。
また、当社グループの主要生産設備であるシュレッダー(大型破砕機)は、破砕資材からの発火等による爆発や火災のリスクが比較的高い設備であるため、自動消火装置や24時間自動監視システム等のセキュリティ対策を施しておりますが、同主要設備の稼動が火災や重大な事故損傷により長期間停止した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループではこのような自然災害、火災、重大事故、損傷といった非常事態に備え、グループ各社において災害・事故発生時の緊急体制・手順を整備し被害を最小限にとどめる対応を準備しております。しかしながら有事の際の被害状況は想定を超える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、産業廃棄物等を扱っており、中間処理過程で騒音、振動、粉塵、排水が発生いたしますが吸音、防振、集塵、水質浄化設備等の環境対策設備を設置し環境汚染を防止しております。しかしながら、不測の事態により流出漏洩等の事態が生じた場合、汚染防止、汚染除去等の環境汚染防止のための改修費及び損害賠償や設備の修復等に多額の支出が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、基幹システム及び会計・人事等のシステムを、関東某所のクラウドサーバにて集中管理し総合的な対策を講じている状況にあります。
しかしながら自然災害等により関東拠点が壊滅的な被害を受けた場合には当社グループの事業が停止することとなりますので、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を進めるため、今後も引き続き、積極的に新規事業に取り組んでいく考えであります。これにより先行した設備投資、人件費やその他の経費等の追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、新サービス、新規事業を開始した際には、そのサービス、事業固有のリスク要因が加わると共に、予測とは異なる状況が発生する等により新サービス、新規事業の展開が計画どおりに進まない場合、投資を回収できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(19)情報セキュリティにおけるリスク
当社グループは、事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しています。そのため、内部統制委員会の下部組織としてデジタル化推進委員会を設置し、これらの情報管理に関する規程の整備や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報セキュリティを強化しております。しかしながら何らかの理由で紛失、破壊、漏洩等が生じた場合、当社グループの社会的信用の低下や失墜、損害賠償責任の発生等と、社内情報システムへの外部から想定した防御レベルを上回る技術によるサイバー攻撃等により、社内システム停止等が引き起こされる可能性もあります。これらの事態が起きた場合には、一定時間事業が停止し適切な対応を行うための費用負担が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(20)固定資産の減損損失リスク
当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化により事業の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合や時価が著しく下落した場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(21)債権回収リスク
当社グループの事業活動の中で発生する売掛債権等については与信管理の強化に努めておりますが、取引先の財政状態が悪化し、支払遅延や売掛債権等の回収が行えない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(22)知的財産に関するリスク
当社グループは、焼却灰等からの高度な選別技術による金銀滓回収事業、リチウムイオン電池のリサイクル事業、工業用ゴム・樹脂製品の製造事業等を推進しており、その推進の過程で成した発明その他知的財産を保護するために、知的財産権の取得に努めております。
当社グループでは、他者の知的財産権を侵害しないように技術開発その他知的財産の創出に努めておりますが、見解の相違等により他者の知的財産権を侵害する可能性があります。一方、他者が当社グループの知的財産権を侵害する場合には、その保護のため訴訟提起等をすることがあります。
(23)ダスト処理費に関するリスク
当社グループの資源リサイクルの処理工程において、受け入れた廃棄物等の原料は価値ある資源と当社グループでは再生処理することのできない廃棄物(ダスト)に分かれます。市場環境の悪化によりダストの出荷先である管理型最終処分場、又は焼却処分場において受け入れが制限される場合には、処理費の上昇や、遠隔地の処分場への輸送が必要となり費用が増加する場合があります。また、当社グループ事業場のダストの保管容量の関係から生産量が制限される場合もあり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(24)気候変動に係るリスク
世界各国で脱炭素に向けた取り組みが進められる中、当社グループではTCFD提言に沿ったリスクと機会の特定及び、適切な情報開示に努めております。気候変動による自然災害の増加などの物理的リスクのみならず、炭素税の導入や再生可能エネルギー電力への切り替えに伴う経費の増大なども、脱炭素社会への移行に係るリスク要因となりえます。今後、気候変動課題に関連した様々な分野で新たな規制が導入された場合や、気候変動に伴う市場や情勢の変化があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(25)感染症流行のリスク
感染症等の流行があった場合には、サプライチェーンの停滞や事業環境の悪化により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。感染症の拡大時期や収束の予測は非常に困難と考えられます。移動の制限や就業の規制に伴う生産体制の縮小、直接対面での営業活動の制約などによる事業への影響を最小限にとどめるため、当社グループでは、テレワーク、フレックスタイム制、WEB会議等の活用に取り組んでおります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
当社グループの事業領域においては、中国経済の減速や不安定なドル相場、国内では人手不足を背景とした賃金上昇や、エネルギー・物流費を含む物価の高騰が企業のコスト構造に直接的な影響を及ぼしています。さらに米国の関税政策など地政学的リスクが国際的なサプライチェーンに影響を与える中、今後の事業展開に対する不確実性は一層高まっています。
このような状況において、鉄スクラップ価格(東京製鐵田原海上特級価格)は、当期首の52,000円/tから第1四半期連結会計期間中に40,000円/tまで下落し、その後はほぼ横ばいで推移しました。当連結会計年度の鉄スクラップ平均価格は42,732円/tとなり、前期の50,916円/tを下回りました。また、リチウムイオン電池の主原料であるコバルト、ニッケル、リチウムの平均価格は、EV需要の減退に伴い、前期を下回って推移しました。一方、金価格(住友金属鉱山発表建値)や銅価格(JX金属発表銅建値)は、前期を上回る水準で推移しました。
このような環境下で、第1四半期連結会計期間中における鉄スクラップ価格の下落及び待遇改善による人件費等の固定費上昇が利益を圧迫する要因となりました。今後とも「サーキュラーエコノミーをリードする」という戦略コンセプトのもと、事業ポートフォリオの再構築を進め、構造的な人件費の上昇を上回る収益力の確保を通じて、持続可能な経営基盤の構築に取り組んでまいります。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は49,090百万円(前期比6.0%減)、営業利益は972百万円(前期比31.0%減)、経常利益は1,216百万円(前期比31.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,175百万円(前期比118.7%増)となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりであり、売上高についてはセグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高で表示しております。
セグメント別業績の概要
≪売上高≫ (単位:百万円)
≪セグメント利益≫ (単位:百万円)
(注)セグメント利益は連結損益計算書の経常利益と調整を行っております。
①資源循環事業
鉄スクラップ価格の一時的な急落に加え、人件費及び設備費等の固定費増加により利益は押し下げられました。一方で、鉄スクラップ価格は急落後に安定的に推移し、加えて金属市況の影響を受けにくいプラスチック燃料化やゴムチップ販売・施工等の事業が堅調に推移したことから、売上高は前期並みを維持しました。利益率は第1四半期連結会計期間を底に持ち直しの動きが見られましたが、通期では前期を下回る水準となりました。
以上の結果、資源循環事業の売上高は21,015百万円(前期比1.1%減)、セグメント利益は1,159百万円(前期比28.5%減)となりました。
②グローバルトレーディング事業
金属原料のトレーディング事業においては、鉄スクラップ価格の下落及び為替変動の影響を吸収しきれず、減収減益となりました。今後も鉄スクラップ分野において、国内電炉メーカーとの連携を強化し、安定的な集荷販売体制の構築を進めてまいります。また、物流代行サービスにおいては、需給バランスを見定め適正価格でサービスを提供したことにより堅調に推移しました
以上の結果、グローバルトレーディング事業の売上高は31,590百万円(前期比9.6%減)、セグメント利益は269百万円(前期比34.5%減)となりました。
③リチウムイオン電池リサイクル事業
電池材料であるレアメタル相場は前期を下回る水準で推移しましたが、茨城工場の本格稼働開始及び加工受託量の増加により生産数量を伸長し、固定費増加を吸収して増収増益となりました。今後も国内シェア拡大を目指し、積極的に設備投資を推進してまいります。
以上の結果、リチウムイオン電池リサイクル事業の売上高は1,693百万円(前期比7.8%増)、セグメント利益は223百万円(前期比2.4%増)となりました。
④その他
障がい福祉サービス事業は、一時的な登録利用者の減少等により減収減益となりました。また、環境経営コンサルティング事業では受注が増加し増収となったものの、人件費等の固定費増加により減益となりました。
以上の結果、その他事業の売上高は491百万円(前期比0.2%減)、セグメント利益は95百万円(前期比12.0%減)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は31,299百万円(前連結会計年度末比2,487百万円の減少、前連結会計年度末比7.4%減)となりました。流動資産は15,874百万円(前連結会計年度末比2,492百万円の減少、前連結会計年度末比13.6%減)となりました。これは、現金及び預金が92百万円が増加したものの、商品及び製品が1,738百万円、売掛金が562百万円、その他流動資産が176百万円、受取手形が136百万円減少したこと等によります。固定資産は15,424百万円(前連結会計年度末比5百万円の増加、前連結会計年度末比0.0%増)となりました。これは、建物及び構築物が134百万円、建設仮勘定が48百万円減少したものの、投資有価証券が205百万円増加したこと等によります。
当連結会計年度末の負債合計は13,989百万円(前連結会計年度末比2,758百万円の減少、前連結会計年度末比16.5%減)となりました。流動負債は8,729百万円(前連結会計年度末比2,361百万円の減少、前連結会計年度末比21.3%減)となりました。これは、その他流動負債が1,311百万円、短期借入金が680百万円、買掛金が315百万円減少したこと等によります。固定負債は5,260百万円(前連結会計年度末比397百万円の減少、前連結会計年度末比7.0%減)となりました。これは、長期借入金が446百万円減少したこと等によります。
当連結会計年度末の純資産合計は17,309百万円(前連結会計年度末比271百万円の増加、前連結会計年度末比1.6%増)となりました。これは、自己株式の取得により788百万円減少したものの、利益剰余金が994百万円、非支配株主持分が92百万円増加したこと等によります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ92百万円増加し、6,864百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額421百万円、持分法による投資利益389百万円等の支出があったものの、棚卸資産の減少額1,717百万円、税金等調整前当期純利益1,516百万円、減価償却費1,369百万円等の収入により、3,469百万円の収入(前期は2,940百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、国庫補助金の受取額203百万円等の収入があったものの、有形固定資産の取得による支出1,537百万円等の支出により、1,328百万円の支出(前期は1,560百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入600百万円等の収入があったものの、長期借入金の返済による支出1,054百万円、自己株式の取得による支出788百万円、短期借入金の純減少額680百万円等の支出により、2,075百万円の支出(前期は1,931百万円の支出)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
当社は、主に基準在庫量及び販売の実需見込に基づいた生産方式を採用しておりますので、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、必要と思われる見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
「(経営成績等の状況の概要)(1)財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資金調達としては、運転資金に関しては、手元流動性資金を勘案の上不足が生じる場合には短期借入金による調達で賄っております。設備資金に関しては、手元資金(利益等の内部留保金)、長期借入金及び無担保社債による調達を基本としております。ただし、設備資金の不足が生じる期間が短期間である場合には、短期借入金による調達で賄っております。
長期資金の調達に際しては、金利動向並びに発行費用等の調達コストも含めて総合的に検討し、銀行借入に比較して有利な条件に限り社債発行を行うこととしております。また、株式の発行に関しては、資本政策に基づき株式価値の希薄化や配当金の負担等を考慮して実施しております。
資金の流動性については、財務部が適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに手元流動性の維持等により流動性リスクを管理しております。なお、当社グループのキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 (経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度における研究開発活動の金額は、