文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「未来に残す、自然との共生社会」という企業理念のもと、総合建設コンサルタント事業(社会インフラ)、スポーツ施設運営事業(健康)、水族館運営事業(社会教育)等の事業分野を展開する企業集団として、地域社会へ貢献するとともに、持続的な企業価値向上に努めることを経営方針としております。
当社グループでは、地域社会と共に持続的な成長を図るべく、2023年10月に、当連結会計年度である2024年7月期を初年度とする「第一次中期経営計画2024-2026」を策定いたしました。
1.基本方針
10年後を見据えた目標達成に向けた通過点として、第一次中期経営計画(2024年7月期~2026年7月期)は、事業基盤の再構築を行う期間と位置づけ、事業課題に対する人材戦略、技術戦略、市場戦略を定め、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
①人材戦略
・技術の継承による内部生産能力の強化およびミス・事故の防止
・多様性の推進等による人材の確保と社内教育の徹底
・働き方改革によるグループ社員の満足度の向上
②技術戦略
・技術力向上により、一人当たりの生産性を向上するとともに、組織体制や事業拠点の見直しにより収益性を向上
・研究開発の促進による競合他社との差別化
・DXの推進による業務プロセスの効率化
③市場戦略
<総合建設コンサルタント事業>
・防災・減災関連業務を重点事業展開分野と定め、関東地方・九州地方のエリアの受注を拡大
<スポーツ施設運営事業>
・フランチャイズ店舗の拡大による事業のブランディングおよび新規出店
<水族館運営事業>
・小規模都市型水族館の新規出店
詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。
当社グループを取り巻く事業環境は、企業収益の回復により雇用・所得環境が改善し、景気は緩やかな回復が期待されております。一方で、為替変動や物価上昇等の影響は急激に変化しており、経営環境の変化に応じた機動的な経営施策を遂行し、第一次中期経営計画の目標達成を目指しております。
また、持続的な企業価値向上のためには、コーポレートガバナンスの強化や働き方改革への対応、サステナビリティの実践等、様々な対処すべき課題の対応が求められております。
当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業では、競合他社との差別化を目指し、各分野で専門技術力を培い、一人当たりの生産能力を向上し、高収益ビジネスモデルへの転換を経営課題として認識しております。
少子高齢化の中、担い手の確保は重要な経営課題となっており、採用の活動を強化していく必要があります。また、当社グループの従業員の高齢化に伴い、これまでに培った技術や知見の継承および定年延長や再雇用等の人事体系の見直しを重要な経営課題として認識しております。
総合建設コンサルタント事業においては、西日本を中心とした事業展開から関東・東海地方への事業領域を拡大することを課題としております。また、発注先の約9割が官公庁である中、PPP・PFI、コンセッション等による公共施設の維持管理・運営事業について、事業パートナーとの取組みを強化し参画していくことで事業領域の拡大を推進してまいります。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「未来に残す、自然との共生社会」という企業理念のもと、ウエスコグループ行動憲章に基づき、総合建設コンサルタント事業、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業の3つの主要セグメントにおける事業活動を通じて、社会および当社グループの持続的な発展を目指しております。当社グループの事業活動の源泉は「人的資本」であり、多様な人材が安心と生きがいを感じる職場環境の整備を推進いたします。
2023年10月策定の第一次中期経営計画(2024年7月期~2026年7月期)では、当社グループの事業活動の源泉である「人的資本」への投資に関わる「人材開発」を、対処すべき課題の一つとして掲げ、取り組んでおります
当社サステナビリティの基本方針に関しましては、取締役会にて、2022年12月より検討を進め、各連結子会社の代表取締役とサステナビリティに関する取り組みや課題についてのヒアリング等を実施し、2023年12月、当社のサステナビリティに関する取り組みを円滑かつ迅速に進めるため、取締役会の指揮・監督のもと、新たに当社代表取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。サステナビリティ委員会では、当社役員、各連結子会社の代表取締役、コンプライアンス室、監査室等が出席して開催される経営企画会議より報告、提案された事項などから、サステナビリティに関するマテリアリティの特定および目標達成のための審議・議論を行い、取締役会への報告・付議を通じ、当社グループにおけるサステナビリティへの取り組みを推進するとともに、さらなるガバナンスの強化を行ってまいります。
また、当社はコンプライアンス体制の徹底を図るため「コンプライアンス室」を設置しており、「コンプライアンス室」や社外の第三者機関を相談窓口とする内部通報制度の運用を行うことで内部牽制機能を担保し、パワハラ・セクハラ行為の発生有無、独占禁止法違反などの法令違反発生の有無を監視する仕組みを取っております。
当社は事業の存続や経営目標の達成影響を及ぼすリスク管理について、内部統制に基づき、監査室、コンプライアンス室が経営管理本部と連携して、事業リスクの検証ならびに定期的なモニタリング活動を通じて取締役会に適宜助言を行うことでコンプライアンスに基づく企業倫理および経営環境の厳しい変化に対応しております。
また、サステナビリティに関するリスクおよび機会については、2023年12月に新たに設置した「サステナビリティ委員会」と共有し識別・評価および取締役会へ報告を行い、取締役会は報告されたリスクが当社事業に与える影響を踏まえて経営判断を行います。
<サステナビリティ・ガバナンス体制図>

サステナビリティ経営においては、「人的資本」を中核要素とし、当社グループの事業活動を通じて、社会および当社グループの持続的な発展の実現を目指します。サステナビリティ基本方針のもと、当社グループの持続性を高めていくための重要分野として4つをマテリアリティとして特定し、リスクや機会に対処するために取り組んでおります。
① 「ダイバーシティ&インクルージョン」としては、ダイバーシティの推進や、女性、中途採用者、外国人などの中核人材の登用および障害者雇用の促進を行い、多様な人材が活躍できる人事制度の構築および体系立てた階層別の充実等からキャリア形成を支援することで「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現に向けて取り組んでまいります。当連結会計年度の取り組みとして、若手社員が短期間他部署で働くことができる「社内留学」制度を新設いたしました。社内留学先での実務を通じて新たなスキル・知識を取得し、その後の業務やキャリアアップにつなげることを目的としております。また外国人留学生のインターンシップの実施や、採用した外国人人材に対する日本語学習のサポートを実施しております。その他、女性への機会提供と活躍実現に向け、女性社員が長く働けるようサポートする相談窓口を新たに設置するとともに、女性社員向けキャリア形成研修を実施しております。
② 「働き方改革」としては、DXの促進による業務効率化を図り、生産性の向上に取り組むとともに、多様な働き方を支援する人事制度の構築および健康経営の推進により、ライフワークバランスの推進などの柔軟な働き方の実現に取り組んでまいります。当連結会計年度の取り組みとして、総合建設コンサルタント事業において長年自社開発で使用してきた基幹システムについて、自社開発維持のリソース課題解決や、業務の生産性および在宅勤務や出張先での利便性向上を目的に、基幹システム更新検討委員会を組織し検討を開始いたしました。
③ 「経営参画意識の向上および中核人材の登用」においては、従業員持株会の加入促進を積極的に図ることで、社員の経営参画意識を高め、業績向上に対するモチベーションを高めるとともに、将来の資産形成や経済的な安定に向けての福利厚生としても機能させることで、グループと社員の永続的繁栄を目指してまいります。また、中核人材への登用や企業文化の継承、マネジメントに関する研修を実施し、持続的な企業価値向上に取り組む経営人材を育成します。
④ 「ガバナンス」においては、取締役会の実効性およびリスク評価の強化を図るとともに、ウエスコグループ行動憲章を実践することで、顧客・従業員・株主・投資家・取引先・行政・地域社内などのステークホルダーと良好かつ円滑な関係の維持に努め、当社グループの企業価値向上および持続可能な社会の構築に積極的に取り組んでまいります。
<マテリアリティ、戦略、指標>
<人材育成方針>
当社グループは、多様な人材が風通しの良い職場環境で、互いに成長し自己実現の機会を提供する事で、当社グループおよび地域社会の持続可能な発展につながる事を目指します。
<社内環境整備方針>
当社グループは、「人的資本」を最大の経営資源として捉え、取締役会およびサステナビリティ委員会が中心となり、社内環境整備に係る投資計画の策定や施策の立案・実行により、社内環境の整備を推進いたします。
当社グループでは、上記(3)戦略において記載した人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は次のとおりであります。
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります(2024年7月31日時点)。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります(2024年7月31日時点)。
3.女性活躍推進法に基づく開示が義務化されている連結子会社を対象としております。
4.当社グループ(全8社)を対象としております。
5.当社取締役会およびサステナビリティ委員会における年間のリスク等の評価・審議件数となります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
また、当社グループの事業等のリスクについては、「事業運営上のリスク」、「外部環境に関するリスク」、「財務上のリスク」にそれぞれ分別し、判断しております。
公共事業における入札参加については、価格により決定する競争入札(一般・指名)の他、一定の業務実績、経営成績、財政状態、技術力、入札価格等の提示による総合評価方式等があります。このような状況において、入札制度に予期せぬ変更が生じた場合や、競争の激化により入札価格が著しく低下した場合、あるいは資格保有者の退職等により安定的な人材の確保が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、入札競争力の向上、実務支援を行う専門部署を設けており、入札情報(入札公告・結果)等の集約管理を行い、特定された業務に対する情報の分析と総合評価提案書の推敲、改善を助言する等のサポート体制を構築し、安定した受注確保に向けた対策を行っております。
総合建設コンサルタント事業においては、公共事業への参加を希望する場合の入札行為等で、独占禁止法違反や官製談合等の不正な入札行為を行った場合は、公正取引委員会から排除勧告が行われます。排除勧告を受けた場合は、営業禁止や営業停止の行政処分の他、国および地方自治体から指名停止の処分が科せられます。
当社グループでは、コンプライアンス委員会を設置、各社にコンプライアンスリーダーを選任し、コンプライアンス体制の整備ならびに法令遵守に関する従業員教育を徹底しておりますが、法令違反等が発生した場合、業績および企業の社会的信用に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、独自の品質マネジメントシステムにより一貫した品質管理を体系的に行っておりますが、設計等に起因する瑕疵などの原因で生じる損害賠償請求等が発生する可能性があります。
このリスクに対応するため、業務過誤賠償責任保険に加入をしておりますが、当該保険により填補出来ない場合や、指名停止等の行政処分、技術力およびサービスに対する信用の失墜等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。総合建設コンサルタント事業においては、技術審査室による業務監督・照査や、各生産課単位での個別業務の照査を実施するなど、品質不良の発生防止に努めております。しかしながら、サービス品質のトラブルが発生した場合には、調査委員会等により発生原因の精査や再発防止策等を策定し、関係部署へ水平展開することで品質管理の強化に努めております。
総合建設コンサルタント事業においては、測量・調査・設計等の請負業務に関する収益の計上に際して、一定の期間にわたり履行義務が充足される契約については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識しております。当該収益認識に係る進捗度の見積り方法は、実行予算に対する実際原価の割合(インプット法)で算出しております。実行予算の見積りは、対象となる請負業務ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により業務内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、業務の進行途上において業務内容の変更等が行われる場合には、当該状況の変化に関する情報を適時に適切な部署・権限者に伝達し、当該情報をもとに適宜実行予算を見直すことにより、適切な収益認識となるように対応しております。
わが国の労働人口は、少子高齢化の進展に伴い減少傾向にあり、企業間の人材獲得競争は激化していることから、当社グループにおいても優秀な人材の確保が課題となっております。また、当社グループの従業員の平均年齢が46歳となっている中、持続的な発展のためには、継続的な一定数の人材確保と技術・知見の継承が不可欠となっております。このため、安定的な人材の確保・育成が困難な場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに加えて、労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント等の労務関連リスクも社会問題となっております。
これらのリスクに対応するため、人材の確保では企業認知度の向上に資する施策やインターンシップ制度の拡大を行っております。また、人材育成では多様な研修企画を実施し、社員のコンプライアンスモラルの醸成と働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。
当社グループは、事業活動における顧客等の個人情報や技術情報等の各種情報について情報システム上で管理・運営を行っております。しかしながら、ソフトウェア・ハードウェアの不具合や、サイバー攻撃等でコンピュータウイルス等による情報システムの停止等の重大な事故が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、個人情報や法人の機密情報等が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対応するため、情報セキュリティに関する社内規程(「特定個人情報等取扱規定」、「情報セキュリティ規則」等)を制定し、加えて標的型攻撃メール訓練を役職員等に対して実施するなど教育・研修の徹底を図っております。またファイアウォール等のいわゆる入口対策・出口対策だけではなく、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティシステムを導入し、予防ファーストのセキュリティ強化を行うとともに、万が一情報漏洩等が発生した場合は、PCの操作ログ監視システムにより流出したデータの追跡確認ができる体制を構築しております。
水族館運営事業においては、2021年10月に兵庫県に劇場型アクアリウムを基本コンセプトとした水族館のアトアを開業いたしました。アトアの事業運営については、当該水族館施設および付帯設備を保有するアセットオーナーと定期賃貸借契約を締結しており、当社グループは水族館施設および付帯設備を賃借して水族館の運営を行います。
当該事業が安定的な施設運営を確保するため、長期契約を締結しておりますが、中途解約は困難であり、また短期間の水族館施設の閉鎖や売上高が減少する局面での賃料減免の改定も困難な状況であることから、収益に応じた変動賃料契約とすることでリスクコントロールが実施できる体制にしております。
月額賃料は、各月において入館料等収入から水族館の運営費用および当社グループ運営報酬(入館料等収入の5.0%相当額)を控除して算出しており、保証賃料は年額3億円となっております。
しかしながら、事業環境の変化や災害、衛生上の問題あるいは新型コロナウイルス等の感染症の再拡大等による影響等により、顧客の安全にかかわる予期せぬ事態が発生した場合、臨時休業等の規模によっては、著しく採算性が悪化することに加え、水族館の収益が保証賃料を下回る場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、賃貸契約期間中に当社グループの意向に基づき中途解約を行う場合、残存期間の未経過賃料の一部について、賃料の支払いもしくは補填の義務が生じる可能性があります。
このリスクに対応するため、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症になりましたが、引続き衛生上の諸対策による感染防止対策・事業継続体制を整え、お客様と従業員の安心と安全の確保や、繁閑に応じた人員の適正配置や経費削減に努めるとともに、集客に向けたイベントの開催や広告宣伝の強化を行うなどウィズコロナに対応しながら事業活動を維持してまいります。
当社グループが事業活動を行うにあたっては、偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受ける可能性があります。これらの発生は予測困難であり、またこのような訴訟等が発生した場合において、多くはその解決に相当の時間を要することから、結果を予想することには不確実性が伴います。このような訴訟等が発生し、予期せぬ結果となった場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主体である総合建設コンサルタント事業の売上高は、大部分が官公庁からの受注であり、業務の納期が官公庁の事業年度末である3月に集中する傾向があるため、第8期までは売上高・利益も同様に第3四半期以降に偏る季節変動がありました。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第9期の期首から適用したことに伴い、業務の進捗度に応じ一定の期間にわたり収益を認識する方法に変更しております。よって売上の計上が平準化されたことにより、第9期以降における売上高については季節変動の傾向が弱まっているものの、依然として事業年度末の影響がみられるため、今後の傾向につきましては注視してまいります。
水族館運営事業においては、春季・秋季の行楽シーズンおよび夏休み期間に来館者数が多いことから、第1四半期および第4四半期に売上高が多くなる季節的変動要因があるため、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当社の連結子会社である各事業会社が当社に対して支払う経営指導料、不動産賃貸料および事業会社が業績に応じて支払う配当金を主な収入源としております。
このため、各事業会社の業績、財政状態が悪化し、当社に対してこれらの支払いが出来ない状況が生じた場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主要事業である総合建設コンサルタント事業は、受注総額の9割程度を国および地方自治体が占めております。当事業における受注環境は、政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」等の影響により、公共投資予算は堅調に推移しております。2025年度以降も継続的・安定的な国土強靭化の取り組みを進めるための「国土強靱化実施中期計画」策定に向けた改正国土強靭化基本法が成立しましたが、今後公共投資政策が急激に変更となった場合は、受注が大きく減少するなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、総合建設コンサルタント事業における新型コロナウイルス感染症の影響においては、感染症法上の位置付けも5類へ移行し今後収束に向かうことが見込まれますが、地方自治体を中心に新型コロナウイルス感染症対策のために実施した財政支出や、税収の減少等の影響によっては、公共事業関係予算が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクを軽減する対応としては、受注に占める公共事業への依存を軽減するため、高速道路の調査・点検業務など民間受注の獲得に向けた営業の強化や、PPP・PFI事業・コンセッション事業、指定管理者事業等の事業領域の拡大に努めてまいります。
当社グループは、東北地方から九州地方までの広域で事業展開を行っておりますが、地震・津波・洪水等の自然災害や予測不能な事故等の事由による被害を受けた場合は、事業活動が制限されるなど、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、定期的に設備点検等を実施するとともに、地域や事業に応じたBCP(事業継続計画)を作成し、被災時でも重要な事業を継続し、早期に事業展開が可能となる体制を構築しております。
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の5類への移行に伴い、経済活動への影響は低減したものの、今後当社グループの従業員において感染による重症化および感染長期化をもたらす変異種が発生した場合や、新たな重大な感染症が発生・蔓延した場合は、一時的な業務の停止や事業所・施設の閉鎖等を行う可能性があります。これにより、総合建設コンサルタント事業では、営業・生産活動の停止による新規受注の減少や納期の遅延等の可能性があります。また、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、顧客の安全にかかわる予期せぬ事態が発生した場合、施設の閉鎖や営業の自粛等を行う可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、社員の在宅勤務体制やオンライン会議などのリモート環境の整備は見直しを行いながら継続し、スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、衛生上の諸対策による感染防止対策・事業継続体制を整え、お客様と従業員の安心と安全の確保に努めることで、その影響を抑えるように努めております。
4) 他社との競争によるリスク
スポーツ施設運営事業および水族館運営事業においては、価格設定、サービスの品質等において、他社との競争にさらされております。
スポーツ施設運営事業では、他社の24時間フィットネス事業への出店が多く、会員数に影響を与えております。また、水族館運営事業では、水族館施設のオープン等、他社との競合が激化した場合、売上高や利益が減少する可能性があります。
このリスクに対応するため、他社との差別化を図るための会員サービス充実、魅力的な企画展示や個人利用客・団体利用客の獲得に向けた取り組み等ブランディング戦略を実施し、競争力の維持および強化に努めております。しかしながら、これらの競争に優位性を確保出来なかった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループが保有する金融商品等については、金融商品に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の時価を算定しモニタリングを行っておりますが、時価が著しく下落した場合には、当該金融商品等の減損損失等を計上する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、連結会社以外の関係取引先である四国水族館を運営する株式会社四国水族館開発の金銭債務に対して、10億円の債務保証を行う契約を金融機関との間で締結しております。当社グループでは、債務保証等の履行を要求される可能性は僅少であると判断しておりますが、将来、債務保証等の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいて、予期せぬ事象により財務内容が悪化等した場合、必要な資金が確保できなくなり、資金繰りが困難になる場合や、資金確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を慎重に検討したうえで計上しておりますが、将来の業績動向等により、計上額の見直しが必要となった場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、中国地方および関西地方を中心に自社ビルを保有しております。今後、地価等の資産の市場価格の変動により、保有不動産の資産価値が下落した場合は、減損損失等を計上する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、保有不動産に関する市場動向を定期的にモニタリングし、遊休不動産となる場合や機能的減価が認められる不動産等については、事業所の売却・移転等を含めた検討を行います。
当社グループでは、事業領域の拡大のために、今後も新規事業への取り組みを進めていく方針ですが、新規事業が安定した収益基盤を構築・維持するためには継続的な設備投資等が必要となります。事業環境の変化や収益性の悪化等により、当初事業計画と異なり投資に対する十分な回収を行うことが出来なかった場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善し緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、急激な為替変動や物価上昇、地政学的なリスクの高まりにより、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。
このような経済環境の中、当社グループの主要セグメントである総合建設コンサルタント事業では、国土強靭化の必要性から公共事業関係費が安定的に推移しており、2025年度以降も継続的・安定的な国土強靭化の取り組みを進めるための「国土強靱化実施中期計画」策定に向けた改正国土強靭化基本法が成立し、外部環境は堅調に推移しております。
当社グループでは、当連結会計年度である2024年7月期を初年度とする「第一次中期経営計画2024-2026」を策定し、当初期間を事業基盤の再構築を行う期間と位置づけ、事業課題に対する人材戦略、技術戦略、市場戦略を定め、各セグメントにおける主要KPIの目標達成に向けて取組んでおります。
これらの結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は、総合建設コンサルタント事業が豊富な繰越業務を背景に生産消化も堅調に推移し増収に寄与したものの、水族館運営事業が大幅に減収したことにより、157億2千5百万円(前連結会計年度比0.8%増)となりました。
損益面では、従業員の賃上げ等処遇改善や人的資本投資としての研修強化・拡充等により、販売費及び一般管理費が前連結会計年度に比べ1億3千3百万円の増加したものの、総合建設コンサルタント事業において、前期に発生した設計瑕疵の対応に伴う生産力の低下や赤字業務等が解消し原価率が回復したこと等から売上原価率が73.6%と前連結会計年度に比べ1.0ポイント減少したことにより、営業利益は9億4千2百万円(前連結会計年度比5.6%増)となりました。売上高に対する営業利益率については前連結会計年度から0.3ポイント上昇し6.0%となりました。営業外収益では、余資金の運用により「受取配当金」が2千9百万円、「投資有価証券売却益」が2千2百万円それぞれ増加したことに加え、前連結会計年度に発生した設計瑕疵対応費用に係る「受取保険金」4千2百万円の計上により、3億1千8百万円(前連結会計年度比19.1%増)となりました。営業外費用では、「投資有価証券売却損」が1千3百万円増加したことにより3千1百万円(前連結会計年度比42.4%増)となりました。これらの結果、経常利益は12億2千8百万円(前連結会計年度比8.0%増)となり、売上高に対する経常利益率は前連結会計年度から0.5ポイント増加し7.8%となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、前連結会計年度において事務所移転に伴う保有資産売却により「減損損失」を計上しておりましたが、当連結会計年度においては特別損益の発生はなく、税金等調整前当期純利益の増益に伴い税金費用が4千5百万円増加した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7億6千8百万円(前連結会計年度比14.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(総合建設コンサルタント事業)
当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業におきましては、政府による国土強靭化のための5か年加速化対策および改正国土強靭化基本法を背景に、外部環境は引き続き堅調に推移いたしました。
当該セグメントの売上高は、豊富な繰越業務を背景に生産消化も堅調に推移し、132億1千万円(前連結会計年度比3.2%増)となりました。
事業分野別では、防災・環境事業、空間情報事業、都市地域デザイン事業において増収しており、地域別では主力である中国・関西地方での受注生産が堅調に推移すると共に、事業領域の拡大を進める関東地方での受注増により増収となりました。発注者別では、大型の橋梁点検や施工管理等の受注減により国関連の生産が減収となりましたが、大規模盛土調査や災害対応の測量設計等で都道府県を中心に増収となりました。
損益面におきましては、前期に発生した設計瑕疵の対応に伴う生産力の低下や赤字業務が解消したことに加え、適正な工程管理や生産人員不足地域への短期出向による生産強化等人員配置管理による外注費の削減、ならびに品質不良の発生防止に努めエラークレーム対応費等が減少したこと等から原価率が回復したことで営業利益は、10億8千4百万円(前連結会計年度比8.9%増)となりました。
受注高は、134億1千4百万円(前連結会計年度比2.4%増)、受注残高は、78億5千万円(前連結会計年度比2.7%増)となりました。
なお、当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業の売上高の定量分析は以下のとおりです。
(単位:千円)
(注) 1.当社グループ間取引は消去しております。
2.都市地域デザイン:造園、都市計画等
社会基盤デザイン:道路、鋼構造コンクリート、トンネル、建設機械、電力土木等
防災・環境:河川、港湾、農業土木、森林土木、地質、土質、建設環境等
水環境デザイン:上水道、下水道、廃棄物等
空間情報デザイン:一般測量、航空測量、補償コンサルタント等
施工管理:施工管理
(単位:千円)
(注) 当社グループ間取引は消去しております。
(スポーツ施設運営事業)
スポーツ施設運営事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年を境に大幅に会員が減少しておりましたが、経済活動の正常化により緩やかに事業環境は回復いたしました。
当該セグメントの売上高は、施設料金の改定やスポーツ施設の指定管理事業の増収等により、7億6千9百万円(前連結会計年度比9.6%増)となりました。
損益面におきましては、営業利益は6百万円(前連結会計年度は9百万円の営業損失)となり、4期連続の営業赤字から回復いたしました。
(水族館運営事業)
水族館運営事業におきましては、引き続き香川県の四国水族館、兵庫県のアトアの主要大型施設を中心に事業を展開しておりますが、団体観光需要、インバウンド需要等も乏しく、いずれの施設も来館者数は減衰推移いたしました。
当連結会計年度における四国水族館およびアトアの合計来館者数は、1,200,409名(前連結会計年度比18.0%減)となりました。オープン効果の薄まりから経年により来館者が減衰しております。
このような状況の中、水族館運営事業では、第一次中期経営計画において、来館者数増加および新規出店を重点目標として定め、アトアにおいては展示ゾーンのリニューアルとして新たにアトアLABをオープンするなど、アトアおよび四国水族館共に集客のための展示内容の見直しや魅力的な各種企画展、イベントを実施する等引き続き集客対策の強化や知名度向上に努めております。
これらの結果、当連結会計年度の水族館運営事業の売上高は、14億3千4百万円(前連結会計年度比18.5%減)となりました。
損益面におきましては、営業利益は7千5百万円(前連結会計年度比1.5%減)となりました。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) スポーツ施設運営事業および水族館運営事業の受注実績は、受注生産ではないため省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(資産の部)
当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ8億9百万円増加し、207億5千9百万円となりました。
流動資産については、短期金融商品の償還等により「現金及び預金」が19億7百万円、受注高の増加等により「契約資産」が4億6千9百万円それぞれ増加した一方、短期金融商品の運用方針見直しにより「有価証券」が7億9千9百万円、「金銭の信託」が4億円それぞれ減少しております。結果として、流動資産合計では前連結会計年度に比べ11億8千1百万円増加となりました。
固定資産については、減価償却の実施等により「有形固定資産」が6千1百万円減少しております。
投資その他の資産については、償還等により「投資有価証券」が3億4千万円減少した一方、業務の利便性向上を目的とした事務所移転等により「その他」に含めております「敷金」が1千6百万円増加しております。結果として、固定資産合計では前連結会計年度に比べ3億7千2百万円の減少となりました。
(負債の部)
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ3億2千9百万円増加し、45億8千2百万円となりました。
流動負債については、決算賞与等の計上により「未払金」が2億2千4百万円、増益等に伴う課税所得の増加により「未払法人税等」が2億2千3百万円それぞれ増加した一方、業務完成納品が増加したこと等により「未成業務受入金」が1億3千7百万円減少しております。結果として、流動負債合計では前連結会計年度に比べ2億1千8百万円増加しております。
固定負債については、投資有価証券の時価評価額の増加により「繰延税金負債」が1億8百万円、連結子会社である株式会社ウエスコの関東支社が移転したこと等により「資産除去債務」が1千3百万円それぞれ増加しております。結果として、固定負債合計では前連結会計年度に比べ1億1千1百万円増加しております。
(純資産の部)
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ4億7千9百万円増加し、161億7千7百万円となりました。これは、「利益剰余金」が剰余金の配当により2億3千5百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により7億6千8百万円増加したことに加え、投資有価証券の時価評価差額の増加に伴い「その他有価証券評価差額金」が2億4千5百万円増加した一方、自己株式の消却等により「資本剰余金」が7億9千9百万円、「自己株式」が5億円それぞれ減少したことによるものです。この結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.8ポイント減少し、77.9%となりました。
当社グループは、10年後を見据えた目標達成に向けた通過点として、当連結会計年度である2024年7月期を初年度とする「第一次中期経営計画2024-2026」を、2023年10月に策定いたしました。
詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略および経営指標」に記載のとおりであります。
第一次中期経営計画の初年度である当連結会計年度の達成状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ6億7百万円増加し、91億3千4百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は7億3千8百万円(前連結会計年度比2億6千4百万円の収入増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益12億2千8百万円や、減価償却費3億2千万円を計上した一方で、契約資産の増加額4億6千9百万円や未成業務受入金の減少額1億3千7百万円、四国水族館等に係る匿名組合投資損益8千4百万円を計上したためです。
また、前連結会計年度比で営業活動によるキャッシュ・フローが増加した要因は、業務完成納品が増加したことにより売上債権が1億2千7百万円、受注高の増加等により契約資産が5億5千5百万円それぞれ増加した一方、法人税等の支払額が3億3千7百万円減少したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、増加した資金は4億8千8百万円(前連結会計年度比2億6千3百万円の収入増加)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入7億8百万円、投資有価証券の取得による支出3億1百万円、有形固定資産の取得による支出1億6千9百万円、出資金の分配による収入9千2百万円等によるものであります。
また、前連結会計年度比で投資活動によるキャッシュ・フローが増加した要因は、収入面で投資有価証券の売却による収入が1億2千5百万円、有形固定資産の売却による収入が9千2百万円それぞれ減少した一方で、投資有価証券の償還による収入が2億円増加したことに加え、支出面で余剰資金の運用等を目的とした投資有価証券の取得による支出が3億6千9百万円減少したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は6億1千9百万円(前連結会計年度比3億3千3百万円の支出増加)となりました。これは主に、配当金の支払額2億3千4百万円、自己株式の取得による支出3億3千5百万円等によるものであります。
(フリー・キャッシュ・フロー)
当社は、フリー・キャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計として定義しております。
当社の経営者は、当該指標を安定した事業活動および健全な財務体質を維持し、企業価値向上に資する成長投資と株主還元を行うために有用な指標と考えており、以下の表のとおりフリー・キャッシュ・フローを算出しております。
当連結会計年度においては、フリー・キャッシュ・フローが12億2千7百万円(前連結会計年度比5億2千8百万円の増加)となりました。これは、営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ2億6千4百万円増加したことや、投資有価証券の取得による支出の減少や投資有価証券の償還による収入などで投資活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ2億6千3百万円増加したことによるものです。
当社グループでは、引き続き事業規模に比し安定した資金を確保し、無借金経営を継続することで健全な財務体質を維持してまいります。
当社の経営者は、当連結会計年度の自己資本比率は77.9%であり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は91億3千4百万円となっており、リスク耐性および財務体質の健全性は引き続き高い水準にあると認識しております。当該状況に鑑み、当面は事業の運転資金および設備投資や企業価値向上に資する利益成長が見込める分野への投資は、フリー・キャッシュ・フローの創出を基本とし、手元流動性を確保しつつ、自己資金の範囲内で進めることを基本方針としております。
100%子会社については原則的には外部からの資金調達を行わず、持株会社が管理し資金効率化、流動性の確保を図っております。
当社は、事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持し、グループ内では資金の効率化を目指し、企業価値向上に資する利益成長が見込める分野への投資の継続と株主還元のため、資金調達基本方針に従い会計年度に発生するフリー・キャッシュ・フローの創出を基本としております。その創出されたフリー・キャッシュ・フローを主な財源として、成長投資や株主還元を行ってまいります。
(1) 成長投資
新規事業や既存事業での競争力強化のための技術力向上および新規技術開発のための研究開発投資を行い、将来の成長を見据えた人材の確保・育成・活用を積極的に行ってまいります。
(2) 株主還元
企業体質の強化と将来の事業展開に備えるための内部留保に意を用いつつ、当社グループの業績に応じた利益配分を安定かつ継続的に行ってまいります。翌連結会計年度以降につきましては、配当政策を最重要事項として位置づけ、フリー・キャッシュ・フローを基本的な財源とすることに加え、一過性の要因で業績が悪化した場合においてもDOE(株主資本配当率)に留意した安定的な配当の維持を図り、配当性向については40%を目安に配当を実施することといたします。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、総合建設コンサルタント事業の受注業務遂行のための製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。営業費用の主なものは従業員給料および賞与、法定福利費などの人件費であります。投資を目的とした資金需要は、主に総合建設コンサルタント事業における3次元計測機器等の設備投資および水族館運営事業への中長期的な成長に向けた出資によるものです。
当社は無借金経営を継続しており、フリー・キャッシュ・フローおよび内部留保により流動性を維持しておりますが、主要取引銀行との間で当座貸越契約を締結することにより手元流動性も確保しております。
(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づいた合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したうえで行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
特に、次の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
当社グループは、繰延税金資産を回収可能と考えられる金額まで減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得見込みおよびタックスプランニングを検討しますが、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、繰延税金資産を取崩し、費用として計上いたします。
当社グループは、資産を用途により事業用資産、賃貸用資産および遊休資産に分類しております。また、管理会計上の区分を基準に、事業用資産は各社に属する支社・支店等の独立した会計単位、賃貸用資産および遊休資産は物件単位にグルーピングしております。
減損の対象となった固定資産は、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った差額を減損損失としております。回収可能価額は、資産グループの時価から処分費用見込額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方を採用しております。
その他有価証券で市場価格のない株式等以外のものについては、期末日の時価が取得原価に比べて著しく下落したものを減損の対象としております。
今後の株式相場が変動した場合には、投資有価証券評価損の計上が必要となる可能性があります。
総合建設コンサルタント事業においては、測量・調査・設計等の請負業務に関する収益の計上に際して、一定の期間にわたり履行義務が充足される契約については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識しております。当該収益認識に係る進捗度の見積り方法は、実行予算に対する実際原価の割合(インプット法)で算出しております。実行予算の見積りは、対象となる請負業務ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により業務内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、売上高および売上原価に影響を与える可能性があります。
受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注のうち、発生する原価の見積額が受注額を超過する可能性が高いものについて、損失見込額を計上しております。
損失見込額の見積りは、受注契約ごとに策定した実行予算に基づき算定しております。また実行予算は、専門的な知識と経験を有する業務担当者が、個々の請負業務の特有な状況を踏まえて作業工数や外注費等を見積り、業務担当の管理者が、実行予算表を査閲、承認することで決定しております。業務の進行途上において業務内容の変更等が行われる場合には適宜実行予算の見直しを行っておりますが、今後想定していなかった状況の変化等により実行予算の見積りの見直しが改めて必要となった場合は、引当金の金額が増減する可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの事業活動は、総合建設コンサルタント事業、スポーツ施設運営事業、水族館運営事業と多岐に事業展開をしており、グループ間で相互連携体制を構築し、研究開発活動を推進しております。
当社グループの主力事業である総合建設コンサルタント事業においては、技術的な競争優位性確保のため、CIM技術や防災・減災関連業務の研究開発に取組んでおります。
これらの状況により、当連結会計年度における研究開発費の総額は、前連結会計年度比で11百万円増加し、
当連結会計年度のセグメントごとの研究開発内容は、次のとおりであります。
(総合建設コンサルタント事業)
建設コンサルタント分野では、「未来に残す、自然との共生社会」という企業理念のもと、最新の計測機器を駆使し、柔軟なアイデアと豊富な経験でインフラDXを推進し、地域社会をより安全に、より住みやすくしていきます。
このため、DX推進室の設置等の企業内イノベーションを進め、3次元計測システムを活用したCIM技術の推進、AI、ビッグデータを活用した業務への展開を図ります。技術開発にあたっては、関連企業との業務連携も積極的に進め、開発したウエスコブランド技術を通じて、新たな社会のニーズに対応していくとともに、地域社会に対して、最先端技術のワンストップサービスを展開していきます。
当社は、イノベーションによる新たな事業展開・拡大の取組みの一環として、ウエスコのブランド化を実現するため、様々な「技術研究開発」に取組みます。
①デジタル機器による計測や3次元計画、3次元設計に関する技術開発
②防災や減災に向けたアプリやシミュレーションの技術開発
③衛星データを活用する技術開発
④AIを活用したシステムの技術開発
先端技術の習得、総合技術力の向上のため、公的研究機関や大学等へ社員を出向させる等人材開発に取組んでおります。
公的研究機関および大学での主な研究内容は、次のとおりであります。
<CIM関連>
・無電柱化の推進に関する事業のスピード化・コスト縮減の研究
<環境関連>
・河川環境への航空レーザ測量データ等の活用に関する研究
・西日本の島々の植生の発達要因に関する研究
<防災関連>
・河川環境および3次元河川管内図に関する研究
・環境DNAによる環境情報の高度化に関する共同研究
<海外事業展開>
・海外業務の展開に関連した人材育成
研究開発の進捗状況と成果は、次のとおりであります。
①「デジタル機器による計測や3次元計画、3次元設計に関する技術開発」においては、「道路地下部の3次元設計に資する技術の開発」を行っております。新型の地中レーダ探査機を導入し、地下2m程度までの埋設管や空洞位置の調査を行う技術を開発しました。埋設物の表示波形や形状の解析ソフトの開発を進めました。地下埋設物の3次元化を進め、陸上の点群データと合体させた3次元設計図の作成技術を展開しております。また、「車載写真レーザ測量システムによる高効率なインフラ点検技術の開発」を行っております。MMSで観測した点群データをソフト上で解析し、道路建築限界へ侵入した樹木を抽出する技術を開発しました。さらに、「マルチビームによる水域環境調査技術の研究」も行っております。マルチビームと水中ドローンにより水中写真撮影を行い、水草や底質の調査を実施する技術を開発しております。水草(海域)を明確に確認できる技術として有効です。
②「防災や減災に向けたアプリやシミュレーションの技術開発」においては、「3次元都市モデルプラトー整備技術の確立」を進めております。地図データLOD1を作成する技術の開発を行いました。積雪分析ツールは、大学との連携のもと技術開発を行い、雪の吹き溜まり箇所の解析や建物雪下ろしについて検討を行いました。堤防崩壊・浸水イメージ動画の作成や浸水状況可視化技術を開発しました。土石流氾濫解析を3次元都市モデルのプラトー上で解析し、崩壊する家屋を明確にし、避難場所の選定を行うツールを開発しました。営業面では、観光サポートや防災計画等のパンフレットを配布しております。
③「衛星データを活用する技術開発」においては、「衛星データとLPデータとの可換性に関する評価および土砂災害発生個所の抽出に関わる研究」を行っております。衛星データとLPデータの重合せ図を作成することが可能となりました。この重合せ図での標高差を確認できる技術により、衛星データは、崩壊地形や盛土箇所の抽出に活用でき、今後の業務受注が期待されます。
④「AIを活用したシステムの技術開発」においては、「Iot音声画像自動転送システムと環境調査技術の開発」を行いました。Iot音声自動転送システムで取得した鳥の鳴声データを、AIを用いて鳴声を自動判別するシステムや、水温データ、鳥や魚の画像転送する技術を開発しました。このことにより、人材の省力化、コスト縮減が可能となりました。また、「生成AIによる設計ミス防止システムのプロトタイプ開発」を行っております。さらに、生成AIを活用した「業務のミス防止」システムの構築を行いました。クラウド上での検証環境の構築、テストデータのOCR手段の検討、社内テストデータにて生成AIの精度把握により、プロトタイプの開発を行いました。
当連結会計年度の総合建設コンサルタント事業における研究開発費は、