第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「世界中の人と企業の創造がめぐる社会へ」というミッションのもと、自社開発のマーケティングSaaSツールの提供やSNS活用を中心としたソリューション提供等により、顧客企業のマーケティングを支援する事業を国内・海外で展開し、企業価値・株主価値の向上を目指しております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループの中長期戦略としましては、マーケティングDX支援事業のオーガニック成長に加え、M&A及び新領域の開拓による業容拡大を模索し、非連続成長を実現することを掲げております。

オーガニック成長としては、プロダクトの進化、施策実行力の増強、提案メニューの拡充、カスタマーサクセス強化といったことを着実に実行してまいります。また、AI(人工知能)による業務効率化を当連結会計年度において推進してまいりましたが、今後も着実に実施してまいります。

M&Aにつきましては、①既存事業とシナジーの高い企業の獲得、②新領域の事業性質を持つ企業の獲得を検討してまいります。

 

(3)経営環境

現在、日本企業を取り巻く環境は、人口の減少及び市場の超成熟化、政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)による本格的なデジタル・ソーシャル時代の到来、インバウンド市場の拡大などを背景に、集客をグローバルに行う時代へと大きく変化しています。かかる変化に対応するため、当社グループが事業を行う企業のマーケティング領域においては、国内市場ではファンとの関係性を強化していくこと、デジタル・ソーシャルを積極的に活用していくこと、加えて国内市場のみならず越境・インバウンドも含めたグローバル市場からも新規顧客を獲得していくことが必要となっており、そのマーケティング手法やサービス形態が日々進化している段階であります。

当社グループは、デジタル・ソーシャル等を活用したマーケティング支援を行っており、当社の売上の多くは顧客企業における広告費予算のうち、インターネット広告費に区分されております。2024年の日本の広告費全体が7兆6,730億円で前期比4.9%のところ、インターネット広告費は、3兆6,517億円と前期比9.6%増となっており、マスコミ四媒体広告費2兆3,363億円(前期比100.9%)を大きく上回る結果となりました。さらに、インターネット広告費のうち、ソーシャル広告は前期比13.1%増の1兆1,008億円となり、インターネット広告媒体費全体の37.2%を占めるまでに一段と成長しております。また、当社のSaaS事業における売上の一部は、物販系ECプラットフォーム広告費としても分類されますが、2024年の同広告費は前期比103.4%となる2,172億円となりました。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした生活者の行動様式の変化に伴い物販系ECプラットフォームを持つ企業が増加し、ECでの購買活動が浸透しつつあることに連動して、ECでの商品購入を促す目的の広告も増加しております。(※1)

当社グループは、このような環境を踏まえ、マーケットのニーズに合わせて各種事業の展開を図る方針であります。具体的には、ソフトウェアの機能追加・改良、自社サービスの認知度向上等に加え、プロフェッショナル人材の獲得に積極的な投資を行い、サービス拡大に努めてまいります。また、基幹事業で得たマーケティングに関連したデータを適切に蓄積し、効果的に活用するサービスを展開し、事業領域の拡大及び事業進化を目指してまいります。更に、国内で蓄積したノウハウや開発技術力を生かし、グローバルへの展開も進めてまいります。

(※1)「2024年日本の広告費」(株式会社電通)、「2024年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(株式会社サイバー・コミュニケーションズ、株式会社D2C、株式会社電通、株式会社電通デジタル)

 

(4)目標とする経営指標

当社グループは継続的な事業の発展と企業価値向上のため、売上高、及び営業利益とそれぞれの成長率を重要な指標としております。

 

 

2024年12月期(実績)

(百万円)

2025年12月期(予想)

(百万円)

前期比

売上高

3,463

2,500

△27.8%

営業利益又は営業損失(△)

△459

50

経常利益又は経常損失(△)

△386

50

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

△516

-

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①収益基盤の強化

当社グループは2024年12月期において「国内3事業の加速と海外事業の再構築」をグループ方針として事業展開を進めてまいりましたが、構造改革の過程で明らかになった課題への対処と、持続的な成長基盤の確立が急務となっております。各事業における対処すべき課題は次のとおりと認識しております。

 

<国内事業>

2024年12月期において、7月よりプロダクト事業(旧国内SaaS事業)とソリューション事業の統合を開始し、第4四半期連結会計期間には統合の成果が表れ始め、売上高・営業利益ともに回復基調となりました。また、来期は事業部を新設し、クロスバウンド事業のうち需要が旺盛なインバウンド領域での支援を事業統合することで、全社売上高における主力事業として位置づけます。

しかしながら、マーケティング業界では生成AIをはじめとする先進技術の急速な普及により、競争環境が一層激化しており、他社との差別化と競合優位性の確立が重要な課題となっております。特に、AIを活用したマーケティングソリューションの開発、SaaSツールの機能強化、そして統合効果を最大化するための組織運営体制の確立が急務であります。

そのため、当社グループでは、事業統合で得られたシナジーを基盤として、最新技術の積極的な取り入れと、戦略立案・提案力や実行力を備えたマーケティング人材の確保・育成を継続してまいります。また、ワンストップでのマーケティングDX支援という統合の価値を顧客に確実に届けるため、営業・カスタマーサクセス体制の最適化も重要な課題として取り組んでまいります。

 

<海外事業>

シンガポールの連結子会社であるSuperFaction Pte. Ltd.(旧Creadits Pte. Ltd.)については、メインターゲットであるゲーム業界において、巣ごもり需要の減少やプライバシー強化に伴うターゲティング精度の低下などの構造的な変化が継続し、2024年12月期においても厳しい事業環境が続きました。経営体制の刷新、人員整理、コスト削減、新規顧客層開拓など様々な施策を講じましたが、早期の収益性改善は極めて困難であると判断し、同社の解散と清算手続の申立てを決議いたしました。

この決定により、当社グループは海外事業から一度撤退することとなりますが、今後は国内事業への経営資源の集中により、より効率的な事業運営と収益性の向上を図ってまいります。海外展開については、国内事業での収益基盤確立後の中長期的な検討課題として位置づけております。

 

②ガバナンス体制の強化

2024年12月24日付「調査委員会設置に関するお知らせ」でお伝えしたクロスバウンド事業における不適切会計については、ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。当社グループでは、この事態を極めて重く受け止め、今後の持続的な成長と企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンス体制の抜本的な見直しと強化を最優先課題として取り組んでおります。

経営の健全化、公正性の観点から、内部統制システムの強化、リスク管理体制の見直し、コンプライアンス教育の徹底、監査・監督機能の実効性向上など、多面的なアプローチによりガバナンス体制の強化を図ってまいります。また、独立社外取締役の活用や取締役会の多様性確保など、取締役会機能の一層の強化を通じて、信頼性の向上と自浄能力の増強に努めてまいります。さらに、改訂コーポレートガバナンス・コードへの的確な対応も継続して進めてまいります。

 

③財務基盤の安定化

当社グループの財務の方針は、健全な財務基盤を維持しつつ、マーケティングDX支援事業の中長期的な成長のための投資を行うことを基本方針としております。2024年12月末時点において、現預金1,940,205千円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)は610,617千円であり、自己資本比率は58.4%と、引き続き健全な財務体質を維持しております。

構造改革に伴う一時費用の発生により、2024年12月期は営業損失を計上いたしましたが、これらは主にクロスバウンド事業の解散・調査費用、海外子会社の清算関連費用などの一過性の費用であり、2025年12月期以降は固定費削減効果と収益性改善につながるものと見込んでおります。国内事業への経営資源集中により事業構造を簡素化し、より効率的な事業運営と安定した収益基盤の確立を図ってまいります。

投資については、営業キャッシュ・フローの範囲内で行うことを目標としておりますが、企業価値を大きく向上させる投資機会に備え、金融機関との良好な関係を維持し、資金調達環境を整えてまいります。

また、投資有価証券の売却等、資産の効率的な運用に向けた対応を進めるとともに、負債を適正な水準に留め、資本コストを意識した経営を推進してまいります。透明性の高い財務運営により、ステークホルダーの皆様からの信頼回復と企業価値の持続的向上を目指してまいります。

 

④不適切な会計処理に関する特別調査委員会による調査結果を踏まえた今後の課題

当社は、当社のクロスバウンド事業(クロスボーダーカンパニー)にて従事する従業員により、売上計上の適否等に関する疑義、案件間の費用の付け替えや期間帰属の操作が行われていた疑義が判明したことを受け、2024年12月24日に調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。当社は、2025年2月28日に調査委員会から調査報告書を受領し、その結果、当該従業員が予算未達となるクロスボーダーカンパニーの業績につき予算達成を仮装することを企図して、売上の前倒計上や架空計上等の不適切な会計処理を行ったこと(以下「本件事案」といいます。)が判明いたしました。

これに伴い当社は、本件事案に関する売上高等を過年度に遡って訂正する必要があると判断し、2020年12月期から2023年12月期の有価証券報告書、2022年12月期第2四半期から2024年12月期第1四半期までの四半期報告書及び2024年12月期半期報告書について、訂正報告書を提出いたしました。

当社は、本件事案に関し調査報告書で判明した事実と原因分析に関する報告等を踏まえ、改めて財務報告に係る内部統制の再評価を行った結果、全社的な内部統制及び業務プロセスに、以下の不備があったことを識別いたしました。

 

全社的な内部統制(統制活動)の不備

本件事案における売上の前倒計上や架空計上等の不適切な会計処理は、社内予算達成への心理的重圧等を動機として、クロスボーダーカンパニーのカンパニー長自身が担当する取引について、自ら申請のうえ承認を行うという自己承認取引等により実施されておりました。クロスボーダーカンパニーは他のカンパニー等と異なり外部環境の変化に大きな影響を受けている事業である一方で、同カンパニー長は業務管理を規律する体制を見直しておらず、結果として、本件事案を行う機会が生じていたことから、職務分掌に関連した全社的な内部統制(統制活動)に不備があったと認識しております。

 

業務プロセスに係る内部統制の不備

当社の販売業務プロセス及び購買業務プロセスで使用されている販売管理システムにおいて、あるべき職務分掌を実装するための承認フローの変更(承認権者の設定含む)が適切にできていない状況にあり、結果として、販売管理システム上で自己承認の実行が可能となっておりました。また、当社の販売業務プロセスで使用されている自動送信システムにおいては、本件事案のように本来の顧客側担当者とは別のダミーアドレスが追加登録され、自ら検収確認を実施することにより、顧客側の検収確認の偽装が行われており、電子メールの送信先の登録・変更について同システム上の制限が設けられておりませんでした。さらに、クロスボーダーカンパニー以外の事業部においては、各案件の営業担当者以外の第三者が、受注内容に合致した成果物の進捗状況を確認し、納品又はサービスの提供が完了していることを案件管理シートの中で確認しておりましたが、クロスボーダーカンパニーにおいては業務管理を規律する体制が十分に機能しておらず、カンパニー内での相互牽制が機能しておりませんでした。

これらの全社的な内部統制及び業務プロセスにおける不備は財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。

当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じることにより、適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。

 

(1) 経営体制の改善

重要ポジションの適格性のレビュー

重要ポジションについては、任命基準やプロセスを改めて明確化の上、重要ポジションへの任命者については、その適格性について取締役会でレビューを実施します。不足するスキル等がある場合、教育的施策の実施等を行い、将来的なキャリアとスキルマップを対象者と協議のうえ、中長期的な視点で人材のモニタリングを進めてまいります。

 

予算の適切な設定・管理

取締役会とは別に、各事業の責任者が月次で集まる会議体として経営会議を新たに設置し、各事業部の事業特性や市場環境を踏まえ、積み上げ数値をもとに合議的に予算設定を行うものとします。また実績数値や着地見込み数値のモニタリングについては、取締役社長と各事業部の統括部長とで週次で実施しますが、予算を下振れする場合にも、アクションプランやリカバリープランを合理的に設定し、経営会議において全社的な課題として取り上げ、各事業部の予算額の調整も含め、建設的な対応を行う体制を構築いたします。

 

リスク評価体制の構築と職務権限規程の見直し

リスクマネジメント委員会(当面は再発防止委員会での対応)を設置し、特に財務報告観点からのリスクの洗い出しや、それらリスクへのマネジメント方針の設定を進めます(当面は社外役員や外部の専門家による知見も活用して進める予定です)。また、特に当社全体における職務分掌の設計については、同委員会において改めて各管理職位の職務権限を整理し、必要に応じて組織構成も見直しを行った上で、職務権限規程の改定を進めます。

 

(2) コンプライアンス及び財務会計に対する教育

役職員を対象とした継続的なコンプライアンス研修

当社全役職員を対象に、継続的なコンプライアンス研修を実施します。特に当面は財務報告の重要性や、本件事案を踏まえた研修内容を加えるとともに、入社時及び管理職位への昇進時には改めてコンプライアンス研修を実施するとともに、コンプライアンスに係る宣誓書の提出を求め、コンプライアンス意識の継続的な醸成を図ります。

また今後定期的にコンプライアンスウイークを設け、当該期間中にコンプライアンス研修を実施するとともに、当社経営陣よりコンプライアンスに関するメッセージを発信することで、コンプライアンスの重要性について継続的な喚起を行います。

 

(3) 事業部門(1線)におけるリスク管理体制の強化

自律的な牽制機能を持った組織設計

今後、当社の組織設計において組織長・中間管理職位者・業務従事者、という最低3層の組織設計を基本といたします。また、当社の連結子会社においても一定の内部牽制機能が期待できる組織体制になっているか、特に必要な管理者が設置できているかについて確認の上、社内の人員数等から十分な管理体制の構築が困難な事業については、他事業への統合や事業撤退も含めて検討を行います。

なお、当該クロスボーダーカンパニーについては2025年4月1日付けで廃止し、管理体制の整った大きな組織である国内事業に吸収の上、事業の継続を行っております。また、クロスバウンド事業の子会社である株式会社オセロについても解散し、同様に当社国内事業で同社の事業を引き継いでいきます。

 

自己承認取引の廃止と取引承認権限の再整理(販売取引・購買取引)

本件事案の販売取引及び購買取引が、当社の販売管理システム上、自己承認を介して実行されていた点に対し、当社は早急にこのような販売管理システム上の承認権限設定を改善すべきであると認識しております。しかしながら、当社の販売管理システムが標準仕様から各種カスタマイズの結果、承認レイヤーの仕様が非常に複雑化し、承認フローの変更(承認権者の設定含む)が容易にできない状況にあることから、今後速やかに、販売管理システム上の取引承認権限を改めて整理の上、販売管理システム上で自己承認の実行ができないようにシステム対応を行います。

また、その際には自己承認取引の廃止を各種規程に明記するとともに、改めて社内通知を行うとともに、販売管理システムにおけるシステム対応が整うまでの間、取引申請者と承認者が同一となる自己承認取引については、すべての取引について、内部監査によるモニタリングを実施いたします。

 

顧客による検収確認プロセスの改善

販売システム上の検収確認メールの送信先メールアドレスは、顧客の法人ドメインとすることを改めて明確にし、送信先メールアドレスの登録時や変更の際、販売システム内のワークフローにて上長の承認を受けるものといたします。また、送信先メールアドレスの追加は同一ドメインに限定するようシステム対応をいたします。

また、販売管理システム上に実際に顧客側で検収確認を行った際には、検収者のIDやメールアドレス、検収日時等が記録として残るようにシステム改修を行い、顧客側での検収状況について、内部監査等による事後的な検証が容易に実施できるような体制を整えます。

 

販売取引及び購買取引の実在性を担保するための統制手続の追加

当社の販売取引及び購買取引につき、取引類型(商材や取引形態毎)に応じた成果物を再整理・再定義の上、納品物が存在する取引については収益認識時、または費用計上時(棚卸資産計上時)にこれらの成果物の実在性を裏付ける証憑を指定の場所に必ず保管するというルールを改めて明確化いたします。そのうえでこれら証憑の保管状況については、管理部門内の担当者(いわゆる第1.5線)が確認を行うようにいたします。

 

(4) 管理部門(2線)の強化

管理部門(第2線)の強化

財務経理部の体制を強化し、第2線としての牽制機能を高めるため、財務経理の専門的スキルを有した中途採用や、外部専門家のリソースの活用、及び、各四半期に各事業部の責任者との情報連絡会を行い、債権回収の状況や取引における懸念事象等の情報収集を進めます。

また、いわゆる第1.5線として、管理部門内に営業事務に関する管理担当者を設置し、納品物確認や請求書発行業務を営業部門とは異なる第三者的立場から実施します。

 

(5) 内部監査(3線)の体制強化

内部監査(第3線)の体制強化

内部監査室の人員を増強(兼務者の専任化も含む)の上、特に各事業の特徴や商材の特性を踏まえ、会計不正や誤謬の発生リスクを改めて整理の上、実効性ある内部監査の実施を進めます。当面は内部監査計画の策定から具体的な監査手続きの設計も含め、外部の専門家の指導を受ける予定ですが、内部監査における各種ノウハウの吸収を進めることで、自走できる内部監査体制を早期に目指します。

また内部監査の監査結果について監査等委員会に報告を行う際には、監査等委員会に内部監査自体の評価も求め、継続的な内部監査品質の向上を図ります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループはサステナビリティを企業経営にも取り入れ、環境、社会、ガバナンスの三つの要素をバランスよく考慮した経営を実践しています。

 以下は、当連結会計年度末現在における当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の主要なポイントです。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは「世界中の人と企業の創造がめぐる社会へ」をミッションとしており、達成には当社グループ自身もサステナブルな企業経営が不可欠だと考えております。そのため、サステナビリティに関連するリスクと機会を評価し、効果的に管理するためのガバナンス体制を整備いたします。そして、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて透明性・誠実性を高め、持続可能な企業文化を構築してまいります。

 なお、当社グループのコーポレート・ガバナンス体制は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであり、サステナビリティへの取り組みについても、この体制のもとで運営しております。

 

(2)戦略

 当社グループは、人間の創造性こそが変化の激しい現代社会における企業の最大の競争優位性であるという前年度の認識をさらに深化させ、人的資本経営とサステナビリティの統合的アプローチに挑戦しております。

 持続可能な企業価値創造には、従業員一人ひとりが持つ創造性と専門性を最大限に発揮できる環境の構築が不可欠です。当社グループでは、以下の3つの柱で人的資本戦略を推進しております。

「デジタル創造人材の戦略的強化」 AI・デジタル技術の急速な進展に対応するため、専門人材の計画的な増員と既存従業員のスキル向上を並行して実施しております。単なる人員増加ではなく、一人当たりの付加価値向上を重視し、データサイエンスとクリエイティブ領域を融合した新たな価値創出を目指しております。

「自律的学習文化の醸成」 従業員の多様性と包摂性に加え、継続的な成長を支援する学習環境の整備を進めております。失敗を恐れず挑戦を奨励する企業文化のもと、従業員が自らの専門性を高め、相互に学び合う組織の実現を目指しております。

「統合的ソリューション提供体制の構築」 プロダクトとソリューションを統合的に提供できる組織能力の向上を図り、営業部門における相互理解の促進と、部門を超えた協働機会の創出に取り組んでおります。これにより、お客様により高い価値を提供し、持続可能なビジネスモデルの確立を目指しております。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、リスクの評価、対応について、現在は各部門やグループ会社で管理可能なリスクについては各組織が中心となって対応し、取締役会において進捗管理しております。また、必要に応じて弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整えており、リスクの未然防止と早期発見に努めております。今後はより精度の高いリスク管理を目指し、リスクマネジメントの総合的アプローチを採用した専門委員会の設置も検討いたしております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、前年度に掲げた「データ収集と適切な目標設定」の方針に基づき、人的資本経営の効果を測定・評価するための基盤整備を進めております。取り組み効果を定量的に評価するため、現在以下の指標体系の確立に向けたデータ収集・分析を進めております。

 1 従業員1人当たりの付加価値向上を目指し、経営指標に「1人当たり売上高」を導入

 2 社内教育制度の導入と知識習得効果の測定

 3 従業員エンゲージメントと創造性発揮度の評価

 収集したデータの分析結果に基づき、2025年度には人的資本経営に関する定量的な目標設定と開示項目の確立を目指してまいります。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業に関するリスク

① SNSに関するリスク

 当社グループでは、デジタル・ソーシャルに強いマーケティング支援を行っており、とりわけFacebook、Instagram、X(旧Twitter)などのSNSを活用したマーケティング支援を行っております。これらのSNSは、自社で運用しているものではないことから、1)新たなSNSの登場により既存のSNSの影響力が低下するリスク、2)SNS運営事業者の広告に関する方針変更により、当社グループが提供するサービスが突如として規制対象となるリスク、3)連携するSNSサービスの不具合により当社サービスが利用できなくなるリスク、4)顧客企業の広告予算の月ごとの変動により業績が変動しやすいリスクがあると認識しております。

 当社グループは、これらのリスクに対応するため、SNS運営事業者との連携を強化するとともに、特定のSNSに依存し過ぎないサービスの設計等を進めておりますが、これらのリスクが急激に発生・拡大した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成に関するリスク

 当社グループでは、SaaSツールの提供とデジタルマーケティング人材によるソリューションの提供を2つの柱として事業を展開しておりますが、事業の展開及び拡大にあたってはSaaSツールの開発人材、営業人材、SNSを利用したマーケティング施策の立案・実行が可能な人材が必要不可欠となります。

 当社グループは今後の事業拡大に応じて必要な人材の確保と育成に努めていく方針でありますが、必要な人材の確保が計画通り進まなかった場合には、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じる可能性があり、この場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ システム障害のリスク

 当社グループが提供するソフトウエアの不具合、連携するSNSサービスの不具合、サイトへのアクセスの急増等の一時的な過負荷や電力供給の停止、コンピューターウィルスや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な様々な要因によってコンピューター又は当社サービスのシステムがダウンした場合、当社グループの事業活動に支障を生ずる可能性があります。

 また、サーバーの作動不能や欠陥に起因して、当社グループの信頼が失墜し取引停止等に至る場合や、損害賠償請求が発生する場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)経営環境に関するリスク

① インターネット広告市場に関するリスク

 当社グループが対象とするインターネット広告市場は、2021年にマスコミ四媒体広告費を上回った以降も成長を続けており、今後も当該市場は拡大していくものと推測されます。

 しかしながら、企業の広告宣伝活動は景気動向や業績、事業方針の影響を受け易いものであり、また、インターネット広告は今後も他の広告媒体との競合が継続していくと考えられることから、今後においてこれらの状況に変化が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 また、2023年10月に施行された『景品表示法』の改正により、ステルスマーケティング(※)を含む偽装広告や不正な情報操作が法律によって明確に禁止されました。当社グループでは、ガイドラインを作成し、適宜サイト内の確認を行う他、適法確認機能の開発等の対応を図っておりますが、広告主の不安が高まった場合等には、ソーシャルメディアを利用した広告市場の拡大に悪影響を与え、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 (※)ステルスマーケティングとは、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。

 

 

② グローバル化によるリスク

 当社グループが事業展開しているインターネット業界は、日本、米国、欧州及び中国の社会・経済動向に大きく左右されます。さらに、それらの国または地域における、経済環境の変化やデジタル変革の進度から、国家間の紛争や政治的な問題まで、様々なリスク要因が常に存在しています。

 当社グループでは、主に日本国内を中心に事業を展開しておりますが、インターネット業界は日本、米国、欧州及び中国の社会・経済動向に大きく左右されることから、これらのリスク動向を注視し適時に対策を講じておりますが、常に十分かつ適時の対策を講じられる保証はなく、またこのような経営環境の変化が予想を超えた場合等において、業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)財務リスク

① 資金繰りに関するリスク

 当社グループは、営業活動から生じるキャッシュ・フローに加え、主として銀行からの借入金により手元資金を確保しております。取引銀行との間では良好な関係を築いておりますが、当社グループの財政状態・経営成績が悪化した場合には機動的な資金調達が困難となり、事業活動に支障が生じるリスクがあります。

 かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 新株予約権行使による株式価値の希薄化に関するリスク

 当社では、取締役、従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。

 今後においても同様の目的で新株予約権を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① コンプライアンス・ガバナンスに関するリスク

 当社グループでは、法令遵守と適切な企業統治の確保を重要な経営課題として位置づけております。しかしながら、クロスバウンド事業において不適切会計が発覚したことを受け、内部統制システムやガバナンス体制の見直し・強化を進めております。今後、類似の事案が発生した場合や、再発防止策が十分に機能しなかった場合には、社会的信用の失墜、行政処分、損害賠償等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

② 個人情報管理に関するリスク

 当社グループはサービス提供にあたり、顧客、サービス利用会員等の個人に関連する情報を取得しております。これらの情報の取り扱いには、外部からの不正アクセスや内部からの情報漏洩を防ぐため、セキュリティ環境の強化、従業員に対する個人情報の取り扱いに対する教育等、十分な対策を行うと同時に、個人情報として管理すべき情報の範囲についても厳密な判断が必要であると考えております。

 しかし、今後何らかの理由により個人情報が漏洩した場合には、損害賠償や信用力の失墜により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ サイトの健全性に関するリスク

 当社グループが提供するサービスを展開するSNS上では不特定多数の利用者同士が独自にコミュニケーションを図っており、こうしたコミュニケーションにおいては、他人の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利等の侵害が生じる危険性が存在しております。

 このため、当社グループサービスの利用者には利用規約に禁止事項を明記するとともに、利用規約に基づいた利用がされていることを確認するためにユーザーサポート体制を整備し、利用規約に違反した利用者に対してはユーザーサポートから改善要請等を行っているため、一定の健全性は維持されているものと認識しております。

 なお、利用規約に明記されている禁止事項の内容は以下となっております。

(ア)当社、他の利用者もしくは第三者の著作権、商標権等の知的財産権を侵害する行為、又は侵害するおそれのある行為

(イ)他の会員もしくは第三者の財産、プライバシーもしくは肖像権を侵害する行為、又は侵害するおそれのある行為

(ウ)特定個人の氏名・住所・電話番号・メールアドレス等第三者が見て個人を特定できる情報の提供

(エ)一人の利用者が複数のメールアドレスを利用して重複してIDを取得する行為

(オ)IDの使用を停止ないし無効にされた利用者に代わりIDを取得する行為

 しかしながら、急速な利用者数の増加による規模拡大に対しては、サイト内における不適切行為の有無等を完全に把握することは困難であり、サイト内においてトラブルが発生した場合には、規約の内容に関わらず、当社グループが法的責任を問われる可能性があり、この場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 法的規制に関するリスク

 当社グループ事業を規制する主な法規制として、(ア)「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、(イ)「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」という。)及び(ウ)「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下「不正アクセス禁止法」という。)があります。

 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律については、無差別かつ大量に短時間の内に送信される広告等といった迷惑メールを規制し、インターネット等を良好な環境に保つものです。また、当社グループは、プロバイダ責任制限法における「特定電気通信役務提供者」に該当し、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信による情報の流通において他人の権利の侵害があった場合に、権利を侵害された者に対して、権利を侵害した情報を発信した者に関する情報の開示義務を課されております。また、権利を侵害した情報を当社グループが媒介したことを理由として、民法の不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性もあり、これらの点に関し訴訟等の紛争が発生する可能性もあります。さらに、当社グループには、不正アクセス禁止法における「アクセス管理者」として、努力義務ながら不正アクセス行為からの一定の防御措置を講ずる義務が課されております。

 上記に加え、公正取引委員会より2001年4月26日に公表されている「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」、消費者庁より2011年10月28日に公表された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」、及び2023年10月1日に施行された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示の運用基準」についても、業界に対して影響を及ぼす可能性があります。

 その他、インターネット上の情報流通や電子商取引のあり方等については現在も様々な議論がなされており、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきている状況にあり、今後、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を規制対象として、新たな法令等の制定や、既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 自然災害・テロ・感染症等のリスク

 当社グループは、国内外に複数の事業拠点を有しております。各拠点では、不慮の災害や感染症発生等に対する防災・防疫対策等を施しておりますが、想定を超えた大規模な地震、台風や洪水等の自然災害やそれに起因する大規模停電、未知の感染症の流行、テロ等の犯罪行為等によって大きな被害を受ける可能性があります。

 それらの影響を受け、情報通信インフラの損壊・途絶及び中枢機能の障害もしくは顧客自身に大きな被害が生じた場合など、受注や供給が長期間にわたって滞り、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 2024年の日本経済は、長期化する円安基調、継続的な物価上昇、人件費の高騰、地政学的リスクの高まりなど、企業経営を取り巻く環境は依然として不透明な状況が続いた一年となりました。一方で、生成AIの急速な普及とそれに伴う知的労働の再定義、産業構造の劇的な変革、さらには企業の競争優位性を決定づける要因の根本的な変化など、デジタル社会における大きな転換期を迎えており、企業には迅速な変革と同時に、自社の存在意義を改めて問い直すことが求められています。

 このような環境下、DX(デジタル・トランスフォーメーション)投資への取り組みは、労働集約型産業を中心に省力化対策として加速しており、企業の競争力向上に向けた重要な経営戦略として一層の注目を集めています。当社グループが事業を展開するマーケティング領域においても、生成AIをはじめとする先進技術の活用によりDXの流れが加速しており、デジタル・ソーシャル時代の本格的な到来は、当社グループの事業展開に追い風となっております。

 このような背景のもと、当社グループでは、企業のマーケティングDXへの対応を支援するため、自社開発のマーケティングSaaSツールやSNS活用を中心としたソリューションの提供といった『顧客企業と人をつなぐ』BtoBビジネスを展開しております。中期テーマとして「マーケティングDX支援企業としての圧倒的なポジションの確立」を目指しておりますが、2023年12月期の業績が予想を大きく下回ったことを踏まえ、2024年12月期は「国内3事業の加速と海外事業の再構築」をグループ方針に設定し、事業展開を進めてまいりました。

 

イ.経営成績

 当連結会計年度においては、持続的な成長軌道への回復に向けた基盤づくりとして、抜本的な構造改革に継続的に取り組んでまいりました。国内では、7月よりプロダクト事業(旧国内SaaS事業)とソリューション事業の統合を開始し、順次シナジーの創出や業務効率化を進めました。第4四半期連結会計期間においては、この統合の成果が表れ始め、国内事業の売上高・営業利益ともに回復基調となりました。

 一方で、クロスバウンド事業においては、2024年12月24日付「調査委員会設置に関するお知らせ」でお伝えしたとおり不適切会計の調査を進める中で担当事業部の解散を決定いたしました。需要が引き続き旺盛なインバウンド領域での支援は国内事業に事業部を新設し、事業統合することといたしました。海外事業においては、シンガポールの連結子会社であるSuperFaction Pte. Ltd.について、厳しい事業環境が継続し早期の収益性改善は極めて困難であると認識したため、事業継続は難しいとの結論に至り、同社の解散と清算手続の申立てを行うことを取締役会にて決議いたしました。

 こうした取り組みにより、売上の下支えとなる国内顧客基盤の再拡大が進んだ一方、構造改革及び海外子会社清算関連費用、クロスバウンド事業に係る調査費用等の一時費用が損益に影響を及ぼしました。その結果、当連結会計年度の売上高は3,463,714千円(前連結会計年度比14.6%減)、営業損失は459,826千円(前連結会計年度は146,606千円の営業利益)、経常損失は386,845千円(前連結会計年度は207,473千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は516,291千円(前連結会計年度は248,967千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。これらは主に構造改革に伴う一過性費用であり、2025年12月期以降の固定費削減効果と収益性改善につながるものと見込んでおります。

 

 当社の報告セグメントは、マーケティングDX支援事業の単一セグメントとしておりますが、事業区分ごとの概況は以下のとおりであります。

 

ⅰ)国内事業(旧プロダクト事業と旧ソリューション事業を2024年7月に統合)

 これまで当社は、プロダクト事業(旧国内SaaS事業)とソリューション事業を通じて、顧客企業のマーケティングDXを支援してまいりました。プロダクト事業では、自社開発のマーケティングSaaSツールの提供や、SaaSで補いきれないマーケティングDX施策の提供、さらにカスタマーサクセス人員によるサポートを通じて、顧客企業のマーケティング人材の質的・量的な不足を補い、効率的かつ効果的な成果を上げる支援を行っております。一方、ソリューション事業では、「SNS活用」や「ファンとの関係構築・強化」をキーワードに、ファンをマーケティングに活用してビジネスの成長を目指す概念が浸透する中、顧客企業のマーケティングDX課題に対し、企画立案から施策の実行までを包括的に支援しております。

 デジタルとリアルの垣根を越えて広がった生活者の消費行動を捉えるには、これまで以上に多様なマーケティング施策の総合的な設計と一貫した遂行が必要となってきたことから、当社は、プロダクト事業とソリューション事業のサービスを組み合わせることで、他社では分断されているマーケティング施策をより包括的にワンストップで支援するべく、事業統合に着手し、国内事業の抜本的な構造改革を進めてまいりました。

 当連結会計年度は、人員配置の最適化やサービスポートフォリオの再設計、顧客リストの精査など、事業の合理化・効率化を推進いたしました。主力製品である「Letro」を軸に、新たに提供を開始したLetroシリーズのエントリー商材で新規顧客を開拓し、AIを活用して高度化したインサイトデータの分析結果を基に提案の幅を広げ、提供価値の拡大を目指してまいりました。第4四半期連結会計期間においては、統合の成果が表れ始め、売上高・営業利益ともに回復基調となりました。その結果、当連結会計年度の売上高は2,528,457千円(前年同期比11.2%減)となり、全社売上高の約7割を占める主力事業として地位を再確立いたしました。

 

ⅱ)クロスバウンド事業(旧中国進出支援事業)

 当社のインバウンド支援は、中国版Instagramと言われるRED(小紅書)の活用を中心に、中国SNSを駆使して話題化し、訪日前の情報収集段階からアプローチすることで、訪日時の店舗集客を支援しております。2024年から中国インバウンドが急速に回復している状況を受け、日本企業によるインバウンドプロモーションの需要も引き続き旺盛であり、当連結会計年度を通じて好調を継続いたしました。また、越境EC支援及び第2四半期連結会計期間より連結計上を開始したBook & Entries Capital Pte. Ltd.とAllied Verse Pte. Ltd.によるアウトバウンド支援につきましても、円安基調が継続する中、積極的に外貨獲得を検討する企業が増加しており、堅調に推移いたしました。

 しかしながら、2024年12月24日付「調査委員会設置に関するお知らせ」でお伝えした不適切会計の調査を進める中で、担当事業部の解散を決定いたしました。需要が引き続き旺盛なインバウンド領域での支援については、国内事業に新設した事業部において、引き続きサービス提供を継続してまいります。その結果、当連結会計年度の売上高は448,827千円(前年同期比85.5%増)となりました。なお、当該事業部の解散および調査対応に伴う一時費用が発生しており、短期的には収益性を圧迫しておりますが、ガバナンス強化と業務効率化を通じて早期の収益回復を図ってまいります。

 

ⅲ)海外事業(旧海外SaaS事業)

 シンガポールの連結子会社であるSuperFaction Pte. Ltd.(旧Creadits Pte. Ltd.)は、広告クリエイティブ制作における高品質・ハイスピード・低価格を実現する仕組みを提供するサービスをグローバルに展開してまいりました。しかし、メインターゲットであるゲーム業界において、新型コロナ情勢の落ち着きによる巣ごもり需要の減少や、iOS/アンドロイドのプライバシー強化に伴うターゲティング精度の低下などを背景に、不採算タイトルの整理や人員削減、広告予算の大幅縮小を実施するゲーム企業が増加しました。

 2024年12月期は、経営体制を刷新し、人員の整理、コスト削減、新規顧客層開拓など、営業活動に注力してまいりましたが、厳しい事業環境が継続し、早期の収益性改善は極めて困難であると認識いたしました。来期以降の当社連結業績への影響などを総合的に勘案した結果、SuperFaction Pte. Ltd.の事業継続は困難であるとの結論に至り、同社の解散と清算手続の申立てを行うことを取締役会にて決議いたしました。その結果、当連結会計年度の売上高は486,429千円(前年同期比49.9%減)となりました。なお、当社は2024年12月30日に同社に対する債権放棄を決議いたしましたが、連結決算に対する影響はございません。今後は連結ベースでの固定費負担軽減と資本効率の改善が見込まれます。

 

 以上のとおり、国内事業の構造改革効果が顕在化しつつある一方で、クロスバウンド事業における不適切会計対応および海外事業の清算決定に伴う一時費用が営業損益を圧迫いたしました。当社グループは、2025年12月期において国内領域での高付加価値サービス拡大とガバナンス強化をさらに進め、安定した収益基盤の確立を図るとともに、リスクコントロールを徹底し、持続的な企業価値向上に取り組んでまいります。

 

ロ.財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ122,189千円増加し、4,085,834千円となりました。これは主に、現金及び預金が95,248千円増加したこと等によるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて502,532千円増加し1,552,714千円となりました。これは主に、長期借入金が253,399千円、未払金が118,459千円、繰延税金負債が118,626千円それぞれ増加したこと等によるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて380,342千円減少し2,533,120千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したこと等により利益剰余金が516,453千円減少したこと等によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて95,248千円増加し、1,940,205千円となりました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動により減少した資金は、106,785千円となりました(前年同期は118,552千円の減少)。これは主に、売上債権の減少が351,024千円発生した一方で、税引前当期純損失を427,933千円計上したこと及び法人税等の支払が238,026千円発生したこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動により減少した資金は、139,881千円となりました(前年同期は49,088千円の増加)。これは主に、無形固定資産の取得による支出が84,622千円あったこと及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が59,089千円あったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動により増加した資金は、311,494千円となりました(前年同期は234,961千円の減少)。これは主に、長期借入れによる収入が500,000千円あったこと等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループの事業はマーケティングDX支援事業を主な事業とする単一セグメントであるため、以下の事項はサービス別に記載しております。

 

 イ.生産実績

 当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。

 

 

 ロ.受注実績

 当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。

サービス

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

マーケティングサービス

2,796,873

101.2

707,133

76.3

CREADITSサービス

415,653

46.2

-

-

合計

3,212,526

87.7

707,133

73.9

(注)金額は、販売価格によっております。

 

 ハ.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

サービス

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

マーケティングサービス

3,037,705

98.4

CREADITSサービス

426,009

43.9

合計

3,463,714

85.4

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

イ.経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は3,463,714千円となりました。

国内事業の売上高が2,528,457千円、クロスバウンド事業の売上高が448,827千円、海外事業の売上高が486,429千円となり、グループ全体として苦戦の1年でした。

 

ロ.財政状態の分析

 自己資本比率が58.4%と前連結会計年度と比べ12.1pt低下する結果となっております。新たな長期借入を500,000千円実行したことに伴うものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。

当社グループの事業活動における主な資金需要は、各事業の事業規模拡大や新規事業推進に伴う国内外の子会社における運転資本等であります。

当社グループは、主として内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達をおこなっており、事業活動に必要となる資金の安定的な確保に努めております。

内部資金については、国内事業で安定的に利益剰余金を積み重ねることで維持している現預金を活用しております。

資金調達については、市場環境を勘案しながら慎重な判断のもと借入を行っております。また、当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しており、機動的な資金調達ができる環境を整えております。

なお、当連結会計年度末における現金及び預金残高は1,940,205千円、借入金残高は610,617千円となっております。今後も引き続き十分な手元資金を維持できるように努めてまいります。

 

③経営方針・経営戦略、経営上の目標達成を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2025年6月13日に公表した2025年12月期の業績予想である、売上高2,500百万円、営業利益50百万円、経常利益50百万円を目標としております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(取得による企業結合)

 当社は、2024年1月29日開催の取締役会において、Book & Entries Capital Pte.Ltd.の株式を取得して子会社化することを決議し、2024年3月18日に株式を取得いたしました。

 詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(取得による企業結合)」に記載のとおりです。

 

(共通支配下の取引等)

 2024年7月11日開催の取締役会において、2024年10月1日を効力発生日として、当社の100%子会社である株式会社ネクストバッターズサークルを吸収合併することを決議し、本合併に係る合併契約書を締結しました。

 詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(共通支配下の取引等)」に記載のとおりです。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。