第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

提出会社の経営指標等

 

回次

第12期

第13期

第14期

第15期

第16期

決算年月

2015年12月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

売上高

(千円)

121,303

178,313

229,139

168,549

1,303,844

経常損失(△)

(千円)

854,701

864,241

1,087,185

1,230,105

539,177

当期純損失(△)

(千円)

857,290

931,397

1,090,703

1,233,846

912,346

持分法を適用した場合の
投資利益

(千円)

資本金

(千円)

5,072,338

5,090,981

5,802,444

6,402,658

7,121,273

発行済株式総数

(株)

9,183,800

9,234,600

11,086,000

13,346,000

14,331,300

純資産額

(千円)

3,501,470

2,617,383

2,931,893

2,901,153

3,454,048

総資産額

(千円)

4,005,959

3,140,313

3,526,222

3,430,112

4,380,056

1株当たり純資産額

(円)

381.27

283.43

263.54

216.61

240.71

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり
当期純損失金額(△)

(円)

93.35

101.18

106.23

104.55

65.55

潜在株式調整後
1株当たり
当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

87.2

82.7

82.9

84.30

78.7

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

755,756

903,424

1,096,840

1,187,579

238,228

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,754,808

256,627

131,662

342,040

4,442

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

120,060

6,423

1,476,503

1,147,270

1,123,312

現金及び現金同等物の
期末残高

(千円)

2,060,252

1,418,993

1,922,454

2,218,074

3,097,514

従業員数

(名)

29

30

29

30

27

(外、平均臨時

雇用者数)

(7)

(6)

(6)

(6)

(5)

株主総利回り

(%)

82.8

138.7

100.4

132.9

247.2

(比較指標:東証マザーズ指数)

(%)

(97.5)

(103.6)

(135.4)

(89.3)

(98.7)

最高株価

(円)

941

2,070

1,121

1,222

4,410

最低株価

(円)

530

401

602

479

998

 

 

(注) 1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、第14期以前は関連会社を有していないため記載しておりません。第15期以降については、利益基準および利益剰余金基準からみて重要性の乏しい関連会社であるため、記載しておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失金額であるため記載しておりません。

4.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

5.株価収益率については、1株当たり当期純損失を計上しているため記載しておりません。

6.最高株価及び最低株価は、東京証券取引所マザーズにおけるものであります。

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2004年3月

腫瘍溶解ウイルスの研究開発及び分子標的抗腫瘍薬の研究開発を目的に、「オンコリスバイオファーマ株式会社」を東京都港区に設立

2004年12月

東京都港区内で本社移転

2005年5月

OBP-401(テロメスキャン)が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2005年度「分子イメージング機器研究開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト」の助成金に採択

2006年3月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-301(テロメライシン)の治験申請(IND)を実施

2006年6月

Yale大学(米国)と新規HIV感染症治療薬の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-601として研究・開発に着手

2006年7月

東京都港区内で本社移転

2006年10月

京都研究センターを京都府京都市に開設

2006年10月

OBP-301(テロメライシン)の日本国内特許成立(特許第3867968号)

2006年10月

OBP-301(テロメライシン)のPhase I臨床試験を米国にて開始

2007年9月

第5回日本バイオベンチャー大賞文部科学大臣賞受賞(主催:フジサンケイビジネスアイ)

2007年11月

京都研究センターを兵庫県神戸市に移転し、神戸研究センターとする

2008年3月

Medigen Biotechnology Corp.(台湾)とOBP-301(テロメライシン)に関する戦略的提携契約を締結

2008年3月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-601の治験申請(IND)を実施

2008年5月

OBP-601のPhase Ia臨床試験を米国にて開始

2008年8月

フランス保健製品衛生安全庁(AFSSAPS)へOBP-601のPhase Ib/IIa臨床試験の実施許可を申請

2009年1月

OBP-601のPhase Ib/IIa臨床試験をフランスにて開始

2009年9月

OBP-601の米国特許成立(米国特許第7,589,078号)

2009年10月

アステラス製薬株式会社と新規分子標的抗癌剤の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-801として研究・開発に着手

2009年12月

東京都港区内で本社移転

2010年7月

OBP-401(テロメスキャン)が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2010年度「イノベーション実用化開発費助成金」の助成金に採択

2011年4月

独立行政法人医薬基盤研究所と新規検査薬OBP-1101(テロメスキャンF35)の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、研究・開発に着手

2011年6月

OBP-401(テロメスキャン)を初めとする検査薬事業を承継させるために、新設分割によりオンコリスダイアグノスティクス株式会社を設立

2012年4月

連結子会社であるオンコリスダイアグノスティクス株式会社を吸収合併

2012年4月

OBP-401(テロメスキャン)の研究目的受託検査を開始

2012年4月

OBP-301(テロメライシン)の米国特許成立(米国特許第8,163,892号)

2012年11月

OBP-401(テロメスキャン)が、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の2012年度「フィージビリティスタディ(FS)ステージシーズ顕在化タイプ」に採択

2013年5月

OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択

2013年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2014年5月

OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択

2014年6月

東京都港区内で本社移転

 

 

年月

概要

2014年11月

OBP-301(テロメライシン)のPhase I/II臨床試験を台湾にて開始

2014年11月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-801の治験申請(IND)を実施

2015年5月

OBP-801のPhase I臨床試験を米国にて開始

2015年7月

国立大学法人鹿児島大学とB型肝炎ウイルス(HBV)に関する新規感染症治療薬の創製に関する共同研究契約を締結

2015年8月

新たな腫瘍溶解ウイルスとしてOBP-702及びOBP-405を開発品目に追加し抗がん剤パイプラインを拡充

2015年8月

台湾におけるOBP-301(テロメライシン)のPhase I/II臨床試験にて最大用量投与段階(Cohort 3)への移行を決定

2015年11月

Liquid Biotech USA, Inc.(米国)とOBP-401(テロメスキャン)の北米でのライセンス導出及び事業展開に関する業務提携契約を締結

2016年4月

国立大学法人岡山大学大学院医歯薬学総合科学研究科産学官連携センター・おかやまメディカルイノベーションセンター(OMIC)に、オンコリスバイオファーマ岡山研究センターを共同研究拠点として開設

2016年8月

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院先端医療科の土井俊彦先生の研究グループと、進行性又は転移性固形癌患者を対象とした腫瘍溶解ウイルスOBP-301(テロメライシン)と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による効果検討に関する医師主導治験契約を締結

2016年8月

悪性黒色腫を対象とする米国でのOBP-301(テロメライシン)PhaseⅡ臨床試験のプロトコール申請を完了

2016年9月

医薬品及び検査薬のライセンス契約締結活動及び研究開発活動の加速を目的として、100%子会社Oncolys USA Inc.を米国デラウェア州に設立 ニュージャージー州で活動開始

2016年11月

江蘇恒瑞医薬股份有限公司(本社:中国 英語名:Jiangsu Hengrui Medicine Co., Ltd. 以下「Hengrui(ハンルイ)社」)と、OBP-301(テロメライシン)の中国、香港、マカオでの独占的ライセンス契約を締結

2017年3月

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ食道がん放射線併用PhaseⅠ臨床試験の治験申請を実施

2017年7月

OBP-301(テロメライシン)の食道がん放射線併用Phase I臨床試験を日本にて開始

2017年12月

OBP-301(テロメライシン)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用の医師主導治験を日本にて開始

2018年5月

Stabilitech Biopharma Limited(スタビリテック社)と、OBP-301(テロメライシンⓇ)の保存安定製剤のための技術導入を目的としたライセンス契約締結

2019年4月

OBP-301(テロメライシン)について、日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション権を中外製薬株式会社(以下、「中外製薬」)へ付与するライセンス契約及び資本提携契約を締結

2019年4月

厚生労働省の定める「先駆け審査指定制度」の対象品目に、OBP-301(テロメライシン)が指定

2019年12月

中外製薬から第1回マイルストーンを受領

 

 

 

3 【事業の内容】

当社の事業セグメントは、「医薬品事業」と「検査事業」の二つです。「医薬品事業」は、医薬品の研究・開発・製造・販売を事業目的とし、「検査事業」は、検査薬の研究・開発・製造・販売を事業目的としています。
当社は、未来のがん治療にパワーを与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくことをビジョンとしています。
 医薬品事業においては、がんや重症感染症などの難病を対象に安全で有効な新薬を創出すること、検査事業においてはウイルスの遺伝子改変技術を活かしたがん検査薬の提供を基本的な事業方針としています。
 なお、医薬品事業及び検査事業ともにアウトソーシングを積極的に活用することで、開発期間の短縮化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下の通りです。
 

[事業系統図]


 

(1) 当社の収益モデルと事業領域

①  効率化経営モデル

当社では'Planning & Operation'を基軸に開発体制を構築しています。すなわち、創薬プランを企画し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングする、いわゆるファブレス経営[*1]による研究開発を行っており、これにより経費効率化・期間短縮を図っています。

 

〔本項の用語解説〕
[*1] ファブレス経営

ファブレス経営(Fabless Business)とは、自社で独自に企画・設計した製品を、他社に委託し製造する経営手法をいいます。生産設備のようなストックをできるだけ持たない手法であることからフロー型経営とも呼ばれる、製造業におけるアウトソーシングの一形態です。

 

 

②  医薬品事業の収益モデルと事業展開

医薬品事業においては、「がん及び重症感染症」などの難病を対象とする医薬品候補を大学等の研究機関や企業から導入し、当社で臨床開発の初期段階をアウトソーシングによって推進しています。その品目の製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)を行った上で、大手製薬企業・バイオ企業等にライセンス許諾を行い、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入を獲得する収益モデルを構築しています。
一般的な医薬品研究開発プロセスとの関係は以下の通りです。

 

[医薬品研究開発の一般的なプロセス]


 

[*1] 探索

新薬のもとになる候補化合物を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの中から、将来薬になる可能性がある新しい物質(成分)を発見し、化学的に作り出す段階です。

[*2] 前臨床試験

基礎研究で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物化学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる試験です。化学的試験として、製造方法、原薬・製剤の規格・安定性などを調べる試験です。

[*3] Phase I臨床試験

第1相臨床試験とも呼ばれ、治療効果を見ることを主目的とせず、少数の健康な志願者を対象に、試験薬を初めてヒトに投与する試験で、主に安全性や体内における薬の分布や代謝を確認する試験です。

[*4] Phase Ⅱ臨床試験

第2相臨床試験とも呼ばれ、限定された患者様に試験薬を投与し有効性と安全性を検討し、用法・用量の推定とPhase Ⅲ臨床試験のエンドポイントを決定することを目的とした試験です。Phase Ⅱa臨床試験は探索的試験とも言われ、Phase Ⅱb臨床試験と区分されることもあります。

[*5] Phase Ⅲ臨床試験

第3相臨床試験とも呼ばれ、多施設にわたる多数の患者様に試験薬を投与する大規模な試験で、実際に市場で用いられる場合の有効性・安全性及び有用性を評価することを主目的とする試験です。検証的試験とも呼ばれ、承認申請に向けた効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めることを目的とした試験です。

[*6] 申請・承認

臨床試験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、各国の規制当局に製造販売承認申請を行います。数段階の審査を受けた後に薬として承認され、市場に出ることになります。

 

 

③  検査事業の収益モデルと事業展開

検査事業では、遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権を製薬会社等に付与するライセンス収入や、検査会社・医療機関等へのがん検査及び検査薬販売により収入を得ています。遺伝子改変ウイルス検査薬を用いた検査法は、これまでのバイオマーカーでは出来なかったがん患者様の予後検査(再発予測)やがんの超早期発見に寄与する可能性があります。さらに、がん組織の生検(針刺し採取)をすることなしにがん組織の性質や遺伝子情報を知る事が可能になると考えられるため、患者様の予後予測や適正な医薬品の選定に寄与するがん検査法として期待されています。
 当社は、2015年11月にLiquid Biotech USA, Inc.(本社:米国ペンシルベニア州)と提携し、米国での新たな検査プラットフォームの確立とマーケットの獲得を目指しています。

 

(2) 主要なパイプライン

当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。
 特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。

 

①  がんのウイルス療法テロメライシン (OBP-301)

テロメライシンは、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。

 テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖することでがん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いということで、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。

 


 

 

a) 対象疾患

食道がん・肝細胞がんなどの固形がんを対象にします。

b) 技術導入の概況

テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。

(特許取得済みの国)

日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダ

c) アライアンスの状況

2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結致しました。現在同社とともに、テロメライシンの臨床試験を進めています。
 2016年11月にはハンルイ社(中国)との間で、中国・香港・マカオにおけるライセンス契約を締結し、ハンルイ社による中国での本剤の研究開発が開始されました。
 2019年4月に中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス並びに、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結致しました。

当社は、ハンルイ社および中外製薬との契約により、オプション権を含めると全世界の導出が完了致しました。

d) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

e) 製造体制

当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。

f) 販売体制

上記「c)アライアンスの状況」に記載の通り、ハンルイ社及び中外製薬とライセンス契約を契約しました。そのため製品上市後は、両社にて販売します。

 

<テロメライシンの構造>

 テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。
テロメライシンのDNA構造は以下の通りです。

 


 

 

 ②  次世代テロメライシンOBP-702

 OBP-702は、がんのウイルス療法「テロメライシン(OBP-301)」に、がん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。がん抑制遺伝子p53による「遺伝子治療」とテロメライシン(OBP-301)の「腫瘍溶解機能」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つウイルスとして開発を進めています。

 がん患者様全体の内、30%~40%でp53遺伝子[*4]の変異または欠損が認められています。p53遺伝子変異・欠損が認められるがん患者様に対して、OBP-702を投与することで、テロメライシン(OBP-301)の特徴であるテロメラーゼ陽性のがん細胞において特異的に増殖して破壊し、同時にがん細胞の中で発現されたp53蛋白質ががん細胞を自然死(アポトーシス)させる機能を有しています。これまでの前臨床試験の結果では、テロメライシン(OBP-301)と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシン(OBP-301)で効果が得られにくかったがん種等、アンメットメディカルニーズを充実させる治療薬へと開発してゆきます。

 

a) 対象疾患

各種固形がんを対象にします。

b) 技術導入の概況

当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。

c) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制

当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造する予定です。

e) 販売体制

大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。

 

<次世代テロメライシンOBP-702の構造>


 

 

③  HDAC阻害剤OBP-801

OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*5]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことを期待していました。しかし、OBP-801は米国での各種固形がんを対象にしたPhase I臨床試験で用量制限毒性が生じたため、現在新規患者様の組込みを中断し、固形がんでの開発を見直しています。また、眼科領域への応用を検討しています。


a) 対象疾患

OBP-801は、眼科疾患領域への応用を検討しています。  

b) 技術導入の概況 

当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。  

c) 研究開発の概況 

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制 

当社は、本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 

e) 販売体制 

将来的に大手製薬企業等へのライセンス導出し、導出先が販売を行います。

 

④  HIV感染症治療薬OBP-601(Censavudine)

OBP-601(Censavudine)は、HIV[*6]の複製に必須である逆転写酵素を阻害することを作用機序とする、新規のHIV感染症治療薬です。
 当社のOBP-601(Censavudine)は、下図の通り細胞内に侵入したHIVウイルスの持つRNAが細胞内でDNAに逆転写される時に作用する酵素の働きを阻害することで、HIVの複製の第一段階を阻害します。

しかし、依然としてHIVマーケットが過飽和状態であり新規ライセンスの可能性は非常に低下しています。今後、新規ライセンス契約の締結が不可能と判断した場合には、Yale大学へOBP-601の権利を返還し、当社経営資源を有効に活用するために、パイプラインの選択と集中を進めていきます。

 

<OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム>

 

 

a) 対象疾患

OBP-601(Censavudine)は、HIV感染症等を対象疾患としています。

b) 技術導入の概況

当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)との独占的ライセンス契約を2006年6月に締結しています。

c) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制

当社では、OBP-601(Censavudine)を自社製造しておらず、治験薬は他社に委託して製造しております。

e) 販売体制

大手製薬会社などにライセンスし、導出先が販売してまいります。

 

⑤  検査薬 テロメスキャン

テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。

 

<テロメスキャンの構造模式図>

 

テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。

 

a) 技術導入の概況

OBP-401(テロメスキャン)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外において特許出願中です。
 OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。
 また、2013年2月15日付で、当社は、Geron Corporation(米国)と全世界におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターの特許についてがん検査用途での実施権の許諾に関する契約を締結していますが、2020年2月に本契約を終了しています。

b) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。

c) アライアンスの状況

2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。
 当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。

d) 製造体制

当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。

e) 販売体制

国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬会社へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供していきます。

 

 

〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕

[*1] アデノウイルス

アデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。

[*2] E1領域

ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。

[*3] IRES配列

IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。

[*4] p53遺伝子

p53遺伝子はがん抑制遺伝子であり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。

[*5] がん抑制遺伝子

がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。

[*6] HIV

HIV(ヒト免疫不全ウイルス=Human Immunodeficiency Virus)は、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、後天的に免疫不全を発症させるウイルスです。俗称的に「エイズウイルス」と呼ばれることがありますが、正式な名称ではありません。

 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

2019年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

27

(5)

45.8

5.7

7,801,992

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

医薬品事業

7

(0)

検査事業

6

(0)

報告セグメント計

13

(0)

全社(共通)

14

(5)

合計

27

(5)

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(人材会社からの派遣社員等)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、主に特定のセグメントに区分できない管理部門に所属しているものであります。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は円滑に推移しております。