(注) 1.当社は四半期連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。
2.売上高には、消費税等は含まれておりません。
3. 持分法を適用した場合の投資利益については、重要性が乏しいため記載を省略しております。
4.潜在株式調整後1株当たり四半期(当期)純利益金額については、潜在株式は存在するものの、1株当たり四半期(当期)純損失金額であるため、記載しておりません。
当第2四半期累計期間(2020年1月1日~2020年6月30日)において、前事業年度の有価証券報告書(第16期、提出日2020年3月27日)に記載された「事業の内容」について、当該有価証券報告書提出後、本四半期報告書提出日(2020年8月7日)までの間において、変更及び追加すべき事項が生じており、当該変更及び追加箇所については下線部分で示しております。なお、文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 子会社の設立
医薬品事業の研究開発活動を加速させることを目的として、2020年4月に当社100%子会社OPA Therapeutics Inc.(以下、「OPA社」という)を設立しました。OPA社は米国カリフォルニア州を事業拠点とし、主として各パイプラインの非臨床試験遂行を担当します。なお、OPA社の社長には、腫瘍溶解ウイルスの研究開発に20年以上の経験を持つFrank Tufaro博士(元DNAtrix Inc. 代表取締役社長)が就任しました。
(2) 主要なパイプライン
当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。
特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンの開発を進めると共に、がんの超早期発見または予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。
① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)
テロメライシンは、がん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊することができるように遺伝子改変された5型のアデノウイルス[*1]です。5型のアデノウイルス自体は風邪の症状を引き起こすもので、自然界の空気中にも存在します。
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を溶解させる強い抗腫瘍活性を示すことや、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、更に強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。

a) 対象疾患
食道がん・肝細胞がんなどの固形がんを対象にします。
b) 技術導入の概況
テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8,163,892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。
(特許取得済みの国)
日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダ
c) アライアンスの状況
2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。
2019年4月に中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス並びに、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約を締結しました。
なお、2016年11月に江蘇恒瑞医薬股份有限公司(中国 以下「ハンルイ社」)と中国・香港・マカオでの研究・開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結しましたが、2020年6月に契約を合意解消しました。
d) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。
e) 製造体制
当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。
f) 販売体制
上記「c)アライアンスの状況」に記載の通り、中外製薬とライセンス契約を締結しました。そのため製品上市後は、中外製薬が販売します。
<テロメライシンの構造>
テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、更に同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。
テロメライシンのDNA構造は以下の通りです。

② 次世代テロメライシンOBP-702
OBP-702は、がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)に、がん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。がん抑制遺伝子p53による「遺伝子治療」とテロメライシン(OBP-301)の「腫瘍溶解機能」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つウイルスとして開発を進めています。
がん患者様全体の内、30%~40%でp53遺伝子[*4]の変異または欠損が認められています。p53遺伝子変異・欠損が認められるがん患者様に対して、OBP-702を投与することで、テロメライシン(OBP-301)の特徴であるテロメラーゼ陽性のがん細胞において特異的に増殖して破壊し、同時にがん細胞の中で発現されたp53蛋白質ががん細胞を自然死(アポトーシス)させる機能を有しています。これまでの前臨床試験の結果では、テロメライシン(OBP-301)と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシン(OBP-301)で効果が得られにくかったがん種等、アンメットメディカルニーズを充実させる治療薬へと開発してゆきます。
a) 対象疾患
各種固形がんを対象にします。
b) 技術導入の概況
当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。
c) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
d) 製造体制
当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。
e) 販売体制
大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売してまいります。
<次世代テロメライシンOBP-702の構造>

③ 核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)
OBP-601(Censavudine)は、レトロトランスポゾン[*5]の逆転写と複製を抑制し、神経変性疾患への応用が期待される核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)です。
レトロトランスポゾンの蓄積によって引き起こされる炎症反応の結果、神経細胞が傷つけられることにより、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こしているとされています。OBP-601は、レトロトランスポゾンがRNAからDNAに逆転写することを抑制することによって、これまでにない神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。
a) 対象疾患
神経変性疾患等が主な対象となります。
b) 技術導入の概況
当社は、OBP-601(Censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon Therapeutics, Inc.(以下「Transposon社」)と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。
c) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
d) 製造体制
当社は本剤を自社製造しておらず、治験薬の製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。
e) 販売体制
Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売してまいります。
<OBP-601(Censavudine)の作用メカニズム>

④ HDAC阻害剤OBP-801
OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤です。本剤は、HDACの活性を特異的かつ強力に阻害することで、がん細胞におけるがん抑制遺伝子[*6]の発現を促し、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するなどの抗腫瘍効果を示すことを期待していました。しかし、OBP-801は米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、現在新規患者様の組込みを中断し、固形がんでの開発を見直しています。また、眼科領域への応用を検討しています。
a) 対象疾患
OBP-801は、眼科疾患領域への応用を検討しています。
b) 技術導入の概況
当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。
c) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
d) 製造体制
当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。
e) 販売体制
将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。
⑤ 抗SARS-CoV-2薬プロジェクトOBP-AI-005
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して、増殖抑制効果を有する化合物を見出すプロジェクトです。宿主細胞に対して影響を示さない濃度下で、承認済みの新型コロナウイルス治療薬レムデシビル(ギリアド社)と同等またはそれ以上の活性を示す化合物群を、同じ系で同時に比較する実験において、国立大学法人鹿児島大学が特定しました。今後、開発候補品を絞り込み、前臨床試験やGMP製造を進めてゆきます。
a) 対象疾患
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象としています。
b) 技術導入の概況
当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。
c) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
d) 製造体制
当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。
e) 販売体制
将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。
⑥ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)
テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。
<テロメスキャンの構造模式図>

テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。
a) 技術導入の概況
OBP-401(テロメスキャン)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。現在、国内外においてAIを用いた検査系を立ち上げ、特許出願中です。
OBP-1101(テロメスキャンF35)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。
b) 研究開発の概況
活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 5.研究開発活動」をご確認ください。
c) アライアンスの状況
2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA, Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア市)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結いたしました。今後、欧州・アジア圏へライセンスエリアを拡大していくことを目指しています。
当社は、これらのライセンス契約に伴う対価として、契約一時金、マイルストーン収入やがん検査キットの販売収入を受け取る権利を有しております。
d) 製造体制
当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。
e) 販売体制
国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。
〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕
[*1] アデノウイルス
アデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。
[*2] E1領域
ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。
[*3] IRES配列
IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。
[*4] p53遺伝子
p53遺伝子はがん抑制遺伝子であり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。
[*5] レトロトランスポゾン
ヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。
[*6] がん抑制遺伝子
がん抑制遺伝子は私たちの正常細胞にも存在しており、細胞の増殖を抑制したり、細胞のDNAに生じた傷を修復したり、細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導したりする働きをします。DNAの傷が蓄積することによるがん化をDNAの修復によって抑制したり、異常細胞の増殖を感知してその細胞に細胞死を誘導するなど、がん抑制遺伝子はがんの発生を抑制します。がん抑制遺伝子の突然変異(DNAの変化)により、がんの発生をみることがあります。がん抑制遺伝子の突然変異は、遺伝により先天的に変異を受け継ぐ場合もあれば、遺伝に関係なく後天的に発生する場合もあります。主要ながん抑制遺伝子として、p25を初めとしてp16、p53、Rb、BRCA1などがあります。