当第3四半期累計期間(2021年1月1日~2021年9月30日)において、当四半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
また、当第3四半期累計期間(2021年1月1日~2021年9月30日)において、前事業年度の有価証券報告書(第17期、提出日:2021年3月26日)に記載された「事業等のリスク」について、当該有価証券報告書提出後、本四半期報告書提出日(2021年11月5日)までの間において、変更及び追加すべき事項が生じており、当該変更及び追加箇所については下線部分で示しております。なお、文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
また、当社は従来「医薬品事業」、「検査事業」の2つを報告セグメントとしておりましたが、当社売上高の99%以上が医薬品事業により構成されており、今後も継続が見込まれることから、第1四半期会計期間より業績管理の方法を変更し、「創薬事業」の単一セグメントへ変更いたしました。このためセグメント別の記載を省略しております。
創薬事業における研究開発について
(1) 事業の内容について
④ 技術革新にかかる事項
当社が推進する創薬事業にかかる技術分野においては、いずれも技術革新及び進歩の度合いが著しく速いと考えられます。(省略)
⑤ 競合にかかる事項
当社の業務領域と完全に一致する企業は国内に見当たりませんが、国内創薬系バイオ企業の研究開発の動向を適宜確認するとともに、海外も含めたウイルス製剤の研究・開発・販売の動向は注視しています。
創薬事業の医薬品開発において本書提出日時点で当社にて把握できている競合品としては、世界の多数企業が腫瘍溶解ウイルスの開発を行っている中、中国が最も先行しており、Shanghai Sunway Biotech Co.,Ltd.(中国)が有する当社と同じ増殖型アデノウイルス製剤Oncorineが、頭頸部がん治療薬として既に上市されております。
(省略)
また、がん検査薬への開発において、当社が対象としている血中循環がん細胞(CTC)の検出分野では、現在Veridex社(J&Jグループ)のCTC検出機器CellSearchシステムが唯一米国にて薬事承認されており、その後多数の企業によるCTC検査系の開発競争が激化しております。
(省略)
⑥ アライアンスにかかる事項
当社の収益構造は、当社が研究開発する医薬品ならびに臨床検査薬について、その研究開発の進捗に伴って評価された製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)に基づいて製薬企業等とのライセンス契約を締結し、その対価として契約一時金・研究協力金・開発協力金・マイルストーン収入及び製品の上市以降その販売に伴って発生するロイヤリティ収入等を段階的に見込むものであります。
現時点において導出が完了しているのは、中外製薬とのテロメライシン(OBP-301)の日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約並びに日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション契約、及びTransposon社との核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)の全世界における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結しています。また、がん検査薬テロメスキャンについては、リキッド社(米国)との間で北米エリアにおける独占的実施権許諾を付与する導出契約を締結しています。
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 業績の状況
当第3四半期累計期間(2021年1月1日~2021年9月30日)における我が国経済は、インド型「デルタ株」の出現等による新型コロナウイルス感染症の再拡大を受け、複数の都道府県で緊急事態宣言及び蔓延防止等重点措置が実施される等、依然として先行きは不透明な状況が継続しました。一方、感染拡大の防止策が講じられワクチン接種が促進される環境の中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、新規感染者数の減少傾向や生産面で持ち直しの動きがみられています。
このような状況下、当社は経営の効率化を図り、積極的に創薬事業における研究・開発・ライセンス活動を展開いたしました。当社活動の詳細に関しては、「(6) 研究開発活動」をご確認ください。
なお、当社は従来「医薬品事業」、「検査事業」の2つを報告セグメントとしておりましたが、当社売上高の99%以上が医薬品事業により構成されており、今後も継続が見込まれることから、第1四半期会計期間より業績管理の方法を変更し、「創薬事業」の単一セグメントへ変更いたしました。このためセグメント別の記載を省略しております。
当第3四半期の創薬事業における、がんのウイルス療法テロメライシンの開発に関して、2019年4月にライセンス契約(以下「本契約」)を締結した中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)によって、日本国内での食道がんを対象とした放射線併用の臨床試験及び肝細胞がんを対象とした臨床試験が推進されました。しかしながら、これまで中外製薬において進められてきた「化学放射線療法併用による食道がんPhase1臨床試験」の患者募集及び「抗PD-L1抗体アテゾリズマブ及び化学放射線療法併用による頭頸部がんPhase1臨床試験」の計画について、当社が担当し外部委託していたテロメライシンの治験薬の製造遅延や新型コロナウイルス感染症患者増加による症例登録への影響などの理由から、中外製薬が治験中止を判断しました。
さらに、2021年10月19日公表の「テロメライシンのライセンス契約の解消に関するお知らせ」に記載のとおり、当社及び中外製薬は、「両社の協業によって開発を進めることがテロメライシンの製品価値最大化に繋がらない」と判断し、当社の今後の事業戦略を総合的に勘案した結果、本契約を解消することに合意しました。同時に、この判断は、テロメライシンの有効性・安全性の問題によるものではないことを両社間で確認しています。
なお、本契約は最長2022年10月まで有効ですが、正式解約日は、今後中外製薬と協議の上決定いたします。従って、中外製薬が日本国内で実施している臨床試験は、臨床試験を担当する中外製薬によって本契約期間中実施される予定であり、テロメライシンの製造開発に関する費用負担は、引き続き中外製薬と協議を行い決定していきます。
また、テロメライシンの製造に関して、これまで委託してきましたLonza Houston, Inc.(米国)に加えて、ウイルスベクターの製造経験が豊富なHenogen SA(ベルギー)を第二委託先として決定しました。これによりテロメライシンの上市に向けた製造体制の充実と製造拠点の分散によるリスク低減を図って参ります。
当社は、今後独自でテロメライシンの日本国内の承認申請を目指す方針です。これに向けて、薬事や臨床開発体制を整備し、2024年の承認申請を目指して参ります。テロメライシンの上市後の販売および流通に関しては、今後パートナリングを進める方針です。また、日本以外の地域に関しては、米国で実施中のテロメライシンの臨床試験を推進させると共に、新たなライセンス契約の締結を目指す方針です。
新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011においては、細胞培養系の実験で新たにインド型及び南アフリカ型変異コロナウイルスへの効果が確認されました。この結果、世界保健機関(WHO)が懸念すべき変異株(VOC: Variants of Concern)として指定するイギリス型「アルファ株」、ブラジル型「ガンマ株」、インド型「デルタ株」及び南アフリカ型「ベータ株」の全てのVOCに対する効果が確認されました。この結果に加え,OBP-2011は、重症急性呼吸器症候群(SARS)及び中東型呼吸器症候群(MERS)ウイルスに対しても同程度の効果を示しており、幅広いコロナウイルスの増殖抑制効果を持つことも確認されました。また、ラットやイヌを用いた薬物動態試験で経口吸収性も確認されました。
また、治験薬製剤のGMP製造をスペラファーマ株式会社に委託しました。既に前臨床試験に関する共同研究契約を締結している株式会社新日本科学及び治験薬原薬のGMP製造を委託しているスペラネクサス株式会社(旧:岩城製薬株式会社)と共に、2022年上半期の治験申請を達成できるように開発を推進しています。
以上の結果、当第3四半期の業績は、売上高318,317千円(前年同四半期は売上高207,611千円)、営業損失963,649千円(前年同四半期は営業損失1,167,504千円)となりました。また、営業外収益として、受取利息382千円、為替差益28,541千円等を、営業外費用として支払利息3,191千円、譲渡制限付株式報酬償却28,116千円、株式交付費11,007千円等を計上した結果、経常損失976,891千円(前年同四半期は経常損失1,185,938千円)、四半期純損失979,679千円(前年同四半期は四半期純損失1,545,408千円)となりました。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期における資産は、新株発行による増資等による現預金の増加1,871,998千円、前払金の増加411,576千円等により4,883,402千円(前事業年度末比74.6%増)となりました。また、負債は、未払金の減少等により731,174千円(前事業年度末比7.8%減)となりました。純資産は、新株発行による増資や四半期純損失等により4,152,227千円(前事業年度末比107.3%増)となりました。
(3) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第3四半期累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について、重要な変更はありません。
(4) 経営方針・経営戦略等
当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期累計期間において、新たな事業上及び財務上の対処すべき課題の発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当社の当第3四半期累計期間における創薬事業の研究開発費は、491,365千円となりました。なお、当第3四半期累計期間における創薬事業の研究開発活動の状況は以下の通りです。
1) 研究開発体制について
2021年9月30日現在、研究開発部門は13名在籍しており、これは総従業員数の37.1%に当たります。
2) 研究開発並びにビジネス活動について
当社は、以下のプロジェクトを中心に研究開発並びにビジネス活動を進めました。
(1)がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)(国際一般名称:suratadenoturev)に関する活動
当社は、2019年4月に中外製薬と、がんのウイルス療法テロメライシンに関する日本・台湾の独占的ライセンス権並びに日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における独占的オプション権を付与するライセンス契約(以下「本契約」)を締結し、これまでに中外製薬から契約一時金及び第1回マイルストーンを受領しています。
一方、当社が担当し外部委託していたテロメライシンの治験薬供給や製法開発に予想外に時間を要したため、中外製薬は承認申請時期を2022年から2024年に変更しました。また、中外製薬は、当初日本国内で4つの臨床試験を実施する計画でしたが、「食道がん対象の化学放射線療法併用Phase1試験」及び「頭頸部がん対象のアテゾリズマブ及び化学放射線療法併用Phase1試験」を中止する判断を行いました。同判断の時点では、中外製薬はテロメライシンの開発を継続する計画でした。
現在、中外製薬は「食道がん対象の放射線併用Phase2試験」及び「肝細胞がん対象のアテゾリズマブ及びベバシズマブ併用Phase1試験」の2つの臨床試験を進めています。
2021年10月19日公表の通り、当社及び中外製薬は、「両社の協業によって開発を進めることがテロメライシンの製品価値最大化に繋がらない」と判断し、当社の今後の事業戦略を総合的に勘案した結果、本契約を解消することに合意しました。同時に、この判断は、テロメライシンの有効性・安全性の問題によるものではないことを両社間で確認しています。なお、本契約は最長2022年10月まで有効ですが、正式解約日は、今後中外製薬と協議の上決定いたします。従って、中外製薬が日本国内で実施している臨床試験は、臨床試験を担当する中外製薬によって本契約期間中実施される予定であり、テロメライシンの製造開発に関する費用負担は、引き続き中外製薬と協議を行い決定してゆきます。
テロメライシンに関する今後の方針
当社は、今後独自でテロメライシンの日本国内の承認申請を目指す方針です。これに向け、薬事や臨床開発体制を整備し、2024年の承認申請を目指して参ります。テロメライシンの上市後の販売および流通に関しては、今後パートナリングを進める方針です。また、日本以外の地域に関しては、米国で実施中のテロメライシンの臨床試験を推進させると共に、新たなライセンス契約の締結を目指す方針です。
また、米国におけるテロメライシンの食道がんへの開発に対して、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を2020年6月に米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けました。本指定により、テロメライシンの開発におけるFDAからの助言相談が可能になることに加え、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇処置を受けられます。さらに、米国においてテロメライシン承認後の7年間は先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られます。2019年4月に指定を受けた先駆け審査制度と合わせて、テロメライシンを食道がんの治療薬として開発していく方針です。
2021年2月には、世界保健機関(WHO:World Health Organization)によって、テロメライシンの国際一般名称が「suratadenoturev」に決定されました。世界保健機関(WHO)による医薬品の国際一般名称の決定は、新薬の承認申請を進める上で重要な手続きであり、新薬として承認後は世界共通名称として使用されます。
2021年10月22日現在、テロメライシンは以下の6つの臨床試験が国内外で進められています。
i) 放射線併用による食道がんPhase2臨床試験
ii) 抗PD-L1抗体アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブ併用による肝細胞がんPhase1臨床試験
iii) 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iv) 化学放射線療法併用による食道がんPhase1医師主導治験
v ) 放射線及び抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による頭頸部がんPhase2医師主導治験
vi) 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による固形がんPhase1医師主導治験
上記i)の「放射線併用による食道がんPhase2臨床試験」は、中外製薬によって2020年3月に第1例目の投与が日本国内で開始されました。目標症例数は37例であり、外科手術による根治的な切除や根治的化学放射線療法が困難な食道がん患者を対象に進められています。
なお、当社は、中外製薬との本契約解消に合意しましたが、本契約は最長2022年10月まで有効です。正式解約日は、今後中外製薬と協議の上決定いたしますが、本契約期間中は中外製薬が実施する予定です。
上記ii)の「抗PD-L1抗体アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブ併用による肝細胞がんPhase1臨床試験」は、中外製薬によるテロメライシンと抗PD-L1抗体アテゾリズマブを初めて併用する臨床試験として、2021年1月に第1例目の投与が開始されています。本試験の目標症例数は20例であり、安全性を主要な評価項目とし、副次的に有効性を評価することを目的としています。
なお、当社は、中外製薬との本契約解消に合意しましたが、本契約は最長2022年10月まで有効です。正式解約日は、今後中外製薬と協議の上決定いたしますが、本契約期間中は中外製薬が実施する予定です。
上記iii)の「抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学を中心に、2019年5月に第1例目の投与が開始されました。最も重症度が高いステージ4の患者を対象に、テロメライシンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用した際の有効性及び安全性の評価を行います。既に2020年12月末に評価可能な8例において米国で中間検討会が実施され、PR(Partial Response:部分奏効)が1例、SD(Stable Disease:安定)が1例の結果が得られました。特にPRの結果が得られている症例においては、ペムブロリズマブ単独では見られない局所反応が認められており、これはテロメライシン投与による効果である可能性が高いと示唆されています。2022年中に18例における中間評価を行い、臨床試験の継続可否の判断を行う方針です。
上記iv)の「化学放射線療法併用による食道がんPhase1医師主導治験」は、米国の主要ながん研究グループであるNRGオンコロジーグループが中心となり、最大21例の登録を目標に第1例目への投与開始を目指しています。前述の通り、テロメライシンは米国においてオーファンドラッグの指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されます。
上記v)の「放射線及び抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による頭頸部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学を中心に、2021年5月に第1例目の投与が開始されました。本治験は、テロメライシンと放射線療法の併用による局所作用の相乗効果に加え、抗PD-1抗体を併用することによる全身性の臨床効果を検討します。2022年に12例における評価を行い、臨床試験の継続可否の判断を行う方針です。
上記vi)の「抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による固形がんPhase1医師主導治験」は、国立がん研究センター東病院を中心に2017年12月に投与が開始されました。食道原発巣に投与したPhase1a臨床試験の結果は、テロメライシンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用における安全性と、一部症例での有効性が示されました。また、現在進行しているPhase1b臨床試験では、11例の登録を完了し、患者のフォローアップを継続しています。2022年1月に開催されるASCO-GIでの発表が予定され、現在データの取り纏め等が国立がん研究センター東病院にて進められています。
(2) 新型コロナウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動
当社は、2006年に鹿児島大学と共同研究契約を締結し、ヒトレトロウイルス学共同研究センターの馬場昌範センター長率いる同センター・鹿児島大学キャンパスの研究グループと創薬研究を進めてきました。その結果、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して強い増殖抑制効果を有する化合物OBP-2001を特定しました。さらに、この化合物は、承認済みの新型コロナウイルス感染症治療薬レムデシビル(ギリアド社)と同等以上の活性を示すことが、同じ実験系での比較実験において確認されました。さらに、レムデシビルとのメカニズムの違いも示唆されました。
当社はその後、鹿児島大学との共同研究で新たな化合物を化学合成し、その中からより活性の高いOBP-2011を見出しました。OBP-2011はこれまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認されています。また、細胞培養系の実験においても、世界保健機関(WHO)が懸念すべき変異株(VOC: Variants of Concern)として指定するイギリス型「アルファ株」、ブラジル型「ガンマ株」、インド型「デルタ株」及び南アフリカ型「ベータ株」の全てのVOCに対する効果が確認されました。さらに、2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年に発生した中東型呼吸器症候群(MERS)の他のコロナウイルスに対しても野生型と同等の活性を示すことも確認されており、幅広いコロナウイルスの増殖抑制効果を持つことが確認されました。現在、世界の製薬企業が開発している経口コロナ治療薬は、ポリメラーゼ阻害剤やプロテアーゼ阻害剤が多い中、当社のOBP-2011は、ウイルス増殖過程の後期であるウイルス形成を阻害するヌクレオカプシド阻害剤であることを実験結果から推定しています。これは現在開発されている他剤とは異なる新規メカニズムであり、ウイルスの突然変異などの影響に左右されないことが期待されています。
21世紀に入り3度(SARS、MERS、COVID-19)のコロナウイルスによるパンデミックが発生しており、今後も世界的流行が繰り返される可能性があると予想されています。当社は、2022年の治験申請を目標に、感染初期の患者を対象とした臨床試験でPOCを取得し、短期間でSARS-CoV-2の陰性化が可能となる経口治療薬の開発を目指してゆきます。
(3)次世代テロメライシンOBP-702に関する活動
OBP-702は、強力ながん抑制遺伝子p53による「がん遺伝子治療」とテロメライシン(OBP-301)の「腫瘍溶解機能」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つウイルスです。当社はOBP-702を、中外製薬に導出済みのテロメライシンに続く「次世代テロメライシン」として位置付けています。また、OBP-702は2017年4月と2020年3月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業に採択され、岡山大学藤原教授の研究グループにより非臨床試験が進められており、これまでに複数の学会で報告されています。岡山大学で行われましたゲムシタビン耐性膵癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、OBP-702にPD-L1抗体を併用することで、OBP-702又はPD-L1抗体単独投与よりも強い抗腫瘍効果が認められ、今後予定する臨床試験においてもPD-L1抗体との併用効果が期待されます。
なお、当社は従来2022年にOBP-702のIND申請を行う計画でしたが、治験薬のGMP製造のバリデーションにおいて予想より時間を要しているため、2023年を目標に米国でのIND申請を行う方針です。
(4)がん検査薬テロメスキャン(OBP-401)に関する活動
テロメスキャンは、血液中を循環している生きたがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)の検査自動化プラットフォームの確立を目的に、順天堂大学と共同研究講座「低侵襲テロメスキャン次世代がん診断学講座」を2021年6月に開設いたしました。AI技術を活用することで検査処理の時間短縮だけでなく、CTCの画像解析の感度および検査精度の向上を目指します。
また、臨床研究においては、順天堂大学呼吸器内科と肺がんを対象とした医師主導臨床研究が2020年2月から開始されています。北米地域のライセンス契約を締結している米国Liquid Biotech USA, Inc.においては、肺がんや婦人科がん領域などへの応用を目的に米国の研究機関と共同研究を進めています。今後、順天堂大学で完成したプラットフォームを導入し検査事業を推進してゆきます。
(5)核酸系逆転写酵素阻害剤OBP-601(Censavudine)に関する活動
2006年にYale大学から導入したOBP-601は、2010年から2014年にかけてBristol-Myers Squibb Co.(以下「BMS社」)が抗HIV薬のPhase2臨床試験を完了しましたが、BMS社の戦略変更を理由にライセンス契約は終了しました。その後、当社は、2020年6月にTransposon Therapeutics, Inc.(以下「Transposon社」)との間で総額3億ドル超の新規ライセンス契約を締結し、同年11月にTransposon社は第1回マイルストーンを達成しています。
また現在、Transposon社によって「進行性核上性麻痺(PSP:Progressive Supranuclear Palsy)」と「筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Degeneration)」を対象とした2つのPhase2臨床試験が進められています。
当社は、Transposon社によるOBP-601の開発進捗を継続的に確認していくと共に、2021年中に臨床試験で第1例目への投与が開始されることを期待しています。
(6)HDAC阻害剤OBP-801に関する活動
2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤OBP-801は、米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生したため、現在新規患者の組入れを一時中断し、他の薬剤との併用など別プロトコルでの再スタートの可能性について検討しています。また、OBP-801の新規適応領域である眼科領域への適応が試みられており、2021年6月開催の国際緑内障学会(World Glaucoma Congress)で、京都府立医科大学による研究結果が報告されています。
主なパイプラインの開発状況は、以下の通りです。
※なお、当社は、中外製薬との本契約解消に合意しましたが、本契約は最長2022年10月まで有効です。正式解約日は、今後中外製薬と協議の上決定いたしますが、本契約期間中は中外製薬が実施する予定です。
当第3四半期会計期間(2021年7月1日~2021年9月30日)において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。