第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

提出会社の経営指標等

 

回次

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

決算年月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

売上高

(千円)

314,179

642,494

976,182

63,038

31,384

経常損失(△)

(千円)

1,723,537

1,500,888

1,163,008

1,913,816

1,663,911

当期純損失(△)

(千円)

2,095,087

1,615,439

1,148,938

1,938,505

1,684,778

持分法を適用した場合の
投資利益

(千円)

資本金

(千円)

7,436,537

9,039,516

3,000,000

3,623,165

5,108,160

発行済株式総数

(株)

14,641,900

17,405,200

17,405,200

19,717,100

24,961,600

純資産額

(千円)

2,003,325

3,593,992

2,159,269

1,474,097

2,752,209

総資産額

(千円)

2,796,413

4,291,876

2,650,959

2,040,598

3,198,858

1株当たり純資産額

(円)

136.43

206.86

124.20

74.35

110.40

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり
当期純損失金額(△)

(円)

145.58

95.50

66.31

108.92

77.17

潜在株式調整後
1株当たり
当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

71.4

83.6

81.2

71.5

85.8

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,465,199

1,741,827

1,717,135

1,336,922

2,020,088

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

37,577

942

20,117

5,392

4,705

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

242,261

3,091,384

113,830

1,142,542

2,879,444

現金及び現金同等物の
期末残高

(千円)

1,822,850

3,209,635

1,466,201

1,287,763

2,165,918

従業員数

(名)

32

33

33

34

35

(外、平均臨時

雇用者数)

(5)

(3)

(4)

(6)

(6)

株主総利回り

(%)

78.2

27.5

27.4

29.5

26.9

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(107.4)

(121.1)

(118.1)

(151.5)

(182.5)

最高株価

(円)

3,820

1,938

694

880

918

最低株価

(円)

1,051

500

466

504

420

 

 

(注) 1.持分法を適用した場合の投資利益については、第17期から第19期は利益基準及び利益剰余金基準から見て重要性の乏しい関連会社であるため、第20期から第21期は関連会社がないため記載しておりません。

2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失金額であるため記載しておりません。

3.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

4.株価収益率については、1株当たり当期純損失を計上しているため記載しておりません。

5.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所(グロース市場)におけるものであり、それ以前は東京証券取引所マザーズにおけるものであります。これに伴い、株主総利回りの算定に使用した比較指標につきましても、東証マザーズ指数から配当込みTOPIX(東証株価指数)に変更しております。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第19期の期首から適用しており、第19期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2004年3月

腫瘍溶解ウイルスの研究開発及び分子標的抗腫瘍薬の研究開発を目的に、「オンコリスバイオファーマ株式会社」を東京都港区に設立

2004年12月

東京都港区内で本社移転

2005年5月

OBP-401が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2005年度「分子イメージング機器研究開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト」の助成金に採択

2006年3月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-301の治験申請(IND)を実施

2006年6月

Yale大学(米国)と新規HIV感染症治療薬の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-601として研究・開発に着手

2006年10月

京都研究センターを京都府京都市に開設

2006年10月

OBP-301の日本国内特許成立(特許第3867968号)

2006年10月

OBP-301のPhase1臨床試験を米国にて開始

2007年9月

第5回日本バイオベンチャー大賞文部科学大臣賞受賞(主催:フジサンケイビジネスアイ)

2007年11月

京都研究センターを兵庫県神戸市に移転し、神戸研究センターとする

2008年3月

Medigen Biotechnology Corp.(台湾)とOBP-301に関する戦略的提携契約を締結

2008年3月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-601の治験申請(IND)を実施

2008年5月

OBP-601のPhase1a臨床試験を米国にて開始

2008年8月

フランス保健製品衛生安全庁(AFSSAPS)へOBP-601のPhase1b/2a臨床試験の実施許可を申請

2009年1月

OBP-601のPhase1b/2a臨床試験をフランスにて開始

2009年9月

OBP-601の米国特許成立(米国特許第7,589,078号)

2009年10月

アステラス製薬株式会社と新規分子標的抗癌剤の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-801として研究・開発に着手

2010年7月

OBP-401が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2010年度「イノベーション実用化開発費助成金」の助成金に採択

2010年12月

Bristol-Myers Squibb Co.(以下、「BMS社」)とOBP-601に関するライセンス契約を締結

2011年4月

独立行政法人医薬基盤研究所と新規検査薬OBP-1101の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、研究・開発に着手

2011年6月

OBP-401をはじめとする検査薬事業を承継させるために、新設分割によりオンコリスダイアグノスティクス株式会社を設立

2012年4月

連結子会社であるオンコリスダイアグノスティクス株式会社を吸収合併

2012年4月

OBP-401の研究目的受託検査を開始

2012年4月

OBP-301の米国特許成立(米国特許第8,163,892号)

2012年11月

OBP-401が、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の2012年度「フィージビリティスタディ(FS)ステージシーズ顕在化タイプ」に採択

2013年5月

OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択

2013年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2014年4月

BMS社とOBP-601に関するライセンス契約を解消

2014年5月

OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択

2014年11月

OBP-301のPhase1/2臨床試験を台湾にて開始

2014年11月

米国食品医薬品局(FDA)へOBP-801の治験申請(IND)を実施

2015年5月

OBP-801のPhase1臨床試験を米国にて開始

 

 

年月

概要

2015年7月

国立大学法人鹿児島大学とB型肝炎ウイルス(HBV)に関する新規感染症治療薬の創製に関する共同研究契約を締結

2015年8月

新たな腫瘍溶解ウイルスとしてOBP-702及びOBP-405を開発品目に追加し抗がん剤パイプラインを拡充

2015年8月

台湾におけるOBP-301のPhase1/2臨床試験にて最大用量投与段階(Cohort 3)への移行を決定

2016年8月

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院先端医療科の土井俊彦先生の研究グループと、進行性又は転移性固形癌患者を対象とした腫瘍溶解ウイルスOBP-301と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による効果検討に関する医師主導治験契約を締結

2016年8月

悪性黒色腫を対象とする米国でのOBP-301 Phase2臨床試験のプロトコール申請を完了

2016年9月

医薬品及び検査薬のライセンス契約締結活動及び研究開発活動の加速を目的として、100%子会社Oncolys USA Inc.(以下「OUS社」)を米国デラウェア州に設立 ニュージャージー州で活動開始

2017年3月

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ食道がん放射線併用Phase1臨床試験の治験申請を実施

2017年7月

OBP-301の放射線併用食道がんPhase1臨床試験を日本にて開始

2017年12月

OBP-301の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用の医師主導治験を日本にて開始

2018年5月

Stabilitech Biopharma Limited(スタビリテック社)と、OBP-301の保存安定製剤のための技術導入を目的としたライセンス契約締結

2019年4月

OBP-301について、日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション権を中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)へ付与するライセンス契約及び資本提携契約を締結

2019年4月

厚生労働省の定める「先駆け審査制度」の対象品目に、OBP-301が指定

2019年12月

中外製薬がOBP-301に関する第1回マイルストーンを達成

2020年3月

中外製薬がOBP-301の放射線併用食道がんPhase2臨床試験の投与開始

2020年4月

100%子会社OPA Therapeutics Inc.(以下「OPA社」)を米国デラウェア州に設立 カリフォルニア州で活動開始

2020年6月

米国食品医薬品局(FDA:Food & Drug Administration)が、OBP-301を食道がんに対する「オーファンドラッグ」に指定

2020年6月

OBP-601に関する米Transposon Therapeutics, Inc.(米国 以下「Transposon社」)とのライセンス契約を締結

2020年6月

鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結し、ウイルス感染症治療薬を導入

2020年11月

Transposon社がOBP-601に関する第1回マイルストーンを達成

2021年2月

世界保健機関(WHO)が、OBP-301の国際一般名称をsuratadenoturevに決定

2021年6月

学校法人順天堂と共同研究講座「低侵襲テロメスキャン次世代がん診断学講座」の開設契約を締結

2021年11月

Transposon社がOBP-601の進行性核上性麻痺(PSP)を対象とした米国Phase2a臨床試験を開始

2021年12月

中外製薬とOBP-301のライセンス解消契約を締結

2022年1月

Transposon社がOBP-601の筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)を対象とした米国 Phase2a臨床試験を開始

2022年4月

市場区分の変更に伴い、マザーズ市場からグロース市場へ移行

2022年8月

中外製薬からOBP-301の放射線併用食道がんPhase2臨床試験を承継

2022年8月

Transposon社がOBP-601の進行性核上性麻痺(PSP)を対象としたPhase2a臨床試験における症例組入れ完了

 

 

年月

概要

2022年12月

OBP-301の放射線併用食道がんPhase2臨床試験における最終症例組入れ完了

2023年3月

Transposon社がOBP-601の筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)を対象とした米国 Phase2a臨床試験における症例組入れ完了

2023年7月

Transposon社がOBP-601のアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS)を対象とした欧州 Phase2a臨床試験を開始

2023年10月

OBP-301の放射線併用食道がんPhase2臨床試験におけるトップラインデータの公表

2023年12月

OBP-301と免疫チェッ クポイント阻害剤ペムブロリズマブ(Merck & Co., Inc.(以下、「メルク社」))の共同開発体制の構築

2023年12月

OBP-301における三井倉庫ホールディングス株式会社との物流業務委託契約を締結

2024年2月

OBP-301に関する富士フイルム富山化学株式会社(以下、「富士フイルム富山化学」)と日本における販売提携契約を締結

2024年5月

米国食品医薬品局(FDA)が、OBP-601をPSPに対する「ファストトラック」に指定

2025年3月

OBP-301の先駆け総合評価相談を開始

 

 

3 【事業の内容】

当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性のがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。

特に、がんのウイルス療法OBP-301やOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築し、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601はドラッグリポジショニングにより神経難病治療薬として開発されています。今後は、自社によるOBP-301の承認申請を推進して商業化を早め、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を進め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。

 

これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開してきました。しかし、今後は従来のライセンス型事業モデルに加えて、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開を行う「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」で事業を展開してゆく方針です。この方針に則り、2020年6月にTransposon社とOBP-601のライセンス契約を締結し、契約一時金やマイルストーン収入などを受領するなどライセンス型事業モデルを具体化しています。また、製薬会社型事業モデルを具体化するために、2025年3月に国内承認申請に向けたOBP-301の先駆け総合評価相談を開始しています。

 

「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開し、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。

なお、当社の事業系統図は以下のとおりです。

 

[事業系統図]


 

 

 

(1) 主要なパイプライン

当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。

特にがん領域では、がんのウイルス療法OBP-301や次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702の開発を進めるとともに、がんの超早期発見又は予後検査を行う新しい検査薬のOBP-401を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。

 

①  がんのウイルス療法OBP-301

OBP-301は、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。OBP-301は、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。

また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。

 


a) 対象疾患

食道がんなどの固形がんを対象にします。

b) 技術導入の概況

OBP-301は、内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許が日本国内で特許査定を受けており、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。

c) アライアンスの状況

2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結し、2024年12月には台湾での商業化権を許諾しました。また、2024年2月に富士フイルム富山化学と日本における販売提携契約を締結しました。

d) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。

e) 製造体制

当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。

f) 販売体制

日本国内に関しては、富士フイルム富山化学が販売する予定です。また、台湾はMedigen社へ商業化権を許諾しています。その他の海外に関しては、大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。

 

<OBP-301の構造>

 OBP-301は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。
OBP-301のDNA構造は以下のとおりです。

 


 

② LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)

OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待されるLINE-1阻害剤です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。

 

a) 対象疾患

PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)、AGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)、アルツハイマー病などの神経変性疾患を対象にします。

b) 技術導入の概況

当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用を負担し、欧米を中心に実施します。

c) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

なお、2024年5月に米国においてPSPへのファスト・トラック指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。

 

d) 製造体制

当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。

e) 販売体制

Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。

 

<OBP-601(censavudine)の作用メカニズム>


 

③ ウイルス感染症治療薬OBP-2011

OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っていました。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めるとともに、他のウイルス感染症治療薬としての可能性を探索していきます。

 

a) 対象疾患

ウイルス感染症を対象に効果を探っています。

b) 技術導入の概況

当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬用途特許の特許譲受に関する契約を締結しました。さらに、2021年10月に抗SARS-CoV-2薬物質特許、2023年5月に抗SARS-CoV-2薬塩及び結晶多型特許の出願を行いました。これらについても鹿児島大学から持分を譲り受けることで、当社は一元的に権利を保有しています。

c) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制

当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。

e) 販売体制

大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。

 

④  次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702

 OBP-702は、OBP-301に強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代腫瘍溶解ウイルスです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、OBP-301と比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、OBP-301で効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。

 

a) 対象疾患

膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。

b) 技術導入の概況

当社は、2015年に次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702をパイプラインに加えています。OBP-702は、OBP-301と同様に内視鏡を用いる投与方法に関する用法特許を日本国内で取得しており、米国及び欧州では審査中です。この用法特許は当社が単独で保有しています。

c) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制

当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。

e) 販売体制

大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。

 

<次世代腫瘍溶解ウイルスOBP-702の構造>


 

⑤  検査薬 OBP-401

OBP-401は、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったOBP-301にクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。

 

<OBP-401の構造模式図>

OBP-401を用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。

 

a) 技術導入の概況

OBP-401は、日本及び欧州を含む10カ国で物質に関する特許を取得しています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。
 OBP-1101は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。

b) 研究開発の概況

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

c) アライアンスの状況

2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。

d) 製造体制

当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。

e) 販売体制

国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。

 

⑥  HDAC阻害剤OBP-801

OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、がん領域での開発を中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。

 

a) 対象疾患

眼科疾患領域への応用

b) 技術導入の概況 

当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。OBP-801は、眼科領域の用途に関する特許を日本国内で取得しております(特許第7542799号)。

c) 研究開発の概況 

活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。

d) 製造体制 

当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。

e) 販売体制 

将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。

 

〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕

[*1] アデノウイルス

アデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。

 

[*2] E1領域

ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。

 

[*3] IRES配列

IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。

 

[*4] レトロトランスポゾン

ヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。

 

[*5] p53遺伝子

がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。

 

[*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤

染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。

 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

2024年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

35

(6)

49.2

4.6

10,609,985

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(人材会社からの派遣社員等)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.当社は創薬事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は円滑に推移しております。

 

(3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。