第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社のモットーは、社名に採用している「勇気づける(エンカレッジ)」です。

 当社は、2002年の創立以来、お客様企業にとって最適なシステム運用を実現し、そこで従事するシステム運用者やシステム運用管理者が自らの業務に誇りをもって効率的に取り組むことを促すため、パッケージソフトウエア・ベンダーとして数々のシステム管理製品を提供してまいりました。

 私たちは常にお客様との活発なディスカッションとヒアリングを徹底して行い、お客様が持つ悩みの根本原因やニーズのもとになる真の目的を自分の事として捉えております。その結果を具現化するものとして、新しい価値として創造したパッケージソフトウエアを開発しております。絶えず自ら技術を磨きながら、過信することなく、最も良い解決方法を導くことに努めております。

 

 現代社会においては、企業活動や行政サービス、個人の生活などあらゆる場面でITの利用は不可欠なものとなっております。当社は拡大するICT社会において、ソフトウエアと関連サービスの提供を通じてシステム運用の安全と安定稼働の実現に貢献することを目指し、2024年4月に『すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る』をパーパス(当社の存在意義)として定めました。これからもデジタル技術は加速度的に進歩し、社会の生活の隅々までITの活用が行きわたる中で、当社はシステム運用を支える役割を確実に果たしてまいります。

 

 当社は事業活動を通じてパーパスを実現するため、経営理念として、

1.お客様の視点で新たな価値を創造し、満足いただける製品とサービスを提供します。

2.社員と会社の目的を一致させ、物心一体の幸福を追求します。

3.国内外の法令と企業倫理を遵守し、誠実かつ公平に業務を遂行します。

を定めております。

 

 こうした経営理念のもと、当社は、単なる製品・サービスの提供ではなく、お客様の声を反映したパッケージソフトウエアの開発・販売、製品のサポートサービス、コンサルティングを通じた真のソリューションサービスを提供し、社会に貢献することを目指しております。

 これらを実現するため、

1. 価値創造の源はお客様にある

2. お客様の喜びは我々の幸せである

3. 勇気を持ってチャレンジすることが会社成長の源である

4. 敬意を払い、感謝し、期待に応える行動をする

5. 小さな成長も大きな感動を育む企業風土を創造する

を経営方針として掲げ、事業に取り組んでおります。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 2025年3月期におきましては、生成AIの急激な技術的進歩により利用場面もあらゆる分野へ広がり、一般社会に普遍的な技術として浸透しはじめ、企業活動の中でも生産性を向上させるツールとして導入が進んでおります。働き方もテレワークと出社勤務のハイブリッドな働き方が定着し、インターネット環境の利用や重要な情報の共有が日常的に行われるようになりました。こうしたICT社会においては高度なサイバー攻撃の脅威のみならず、従来と変わらない在籍社員や退職者、協力会社社員による社内の機密情報の持ち出しが発生しております。全ての企業にとって、情報資産管理のためのIT投資は事業の継続、拡大に欠くことのできない投資となっております。

 このような外部環境において、当社は事業を通じて安心・安全なICT社会の創出に貢献するため、2025年3月期に「フロー売上拡大」「ストック売上拡大」「役割による組織化ならびにタレントスキル向上による生産性向上」を重点施策として定めました。当該施策の結果および2026年3月期の新たな重点施策につきましては、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②経営成績の分析」に記載しております。

 

 

(3)中長期経営計画

当社は2024年4月に2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」を設定し、直近の3ヶ年にあたる第1次中期経営計画(投資フェーズ:2025年3月期から2027年3月期)を開示しております。

 

①VISION2030

 特権ID/証跡管理などシステム運用(管理)分野において、プロダクトならびにシステムエンジニアリングサービスの新たな価値を創造し、製品と保守売上主体のビジネスモデルに加え、クラウドサービスへの本格参入やコンサルティングサービス、技術サービスなど新たなソリューションを展開します。また、リーダー育成に取組み、円滑な世代交代を行いながら顧客志向で一体化した機動力ある新体制を築きます。

 

②戦略的サービス

 当社は、システム運用の統制を極めるオンリーワンベンダーとなるべく、次に掲げるサービス展開を進めてまいります。

・コンサルティングサービス

・プロダクトサービス(パッケージソフトウエア製品/クラウドサービス)

・システムインテグレーションサービス(製品導入に伴う技術支援)

・システムマネージメントサービス(SIO常駐サービス)

 

③第1次中期経営計画(投資フェーズ;2025年3月期~2027年3月期)

当期間は投資フェーズと位置付け、現行製品・サービスを着実に販売し、収益を獲得することで原資を確保して第2次中期経営計画(2028年3月期~2030年3月期)の成長フェーズに向けた新製品の開発に積極的に投資してまいります。

当該3ヶ年の売上、損益を達成させる重要なポイントは以下の3点です。

・ライセンス売上の達成

・保守更新率の達成

・ESS AdminONEならびにESS REC 6移行推進

これらの重要なポイントを実現するため、各事業年度の重点施策を定めて取組んでまいります。

 

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投資フェーズにおける製品・サービス開発のロードマップは以下の通りです。

・既存製品:バージョンアップによる機能拡張

・新製品:第1次中期経営計画期間3ヶ年を通じて企画、開発を行い第2次中期経営計画(成長フェーズ)の売上拡大を目指す

・既存主要製品の統合:ESS AdminONE、ESS REC 6と同じアーキテクチャに統一。新たな運用統制ソリューション製品として提供

・新クラウドサービス:新製品、統合製品をクラウド化(SaaS化)

 

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(4)持続的成長に向けた取組み

 当社が重点項目の実現による成長を持続していくためには、優秀な技術者を安定的に確保して、スピード感をもった新製品・新サービスの開発が重要であると認識しております。さらに、当社の事業は製品の販売から保守までを一貫して提供する形態であるため、多様な職種の人材が必要となります。社員の働きがいと生産性の向上を両立させつつ、さらに技術の優位性を維持しながら事業を継続的に拡大するためには、優れた人材の獲得や育成が不可欠となります。

 

①ダイバーシティの推進

当社では、性別、年齢、国籍に制約を設けず、多様な視点や経験を持つ人材を採用し、その能力や特性を事業に活かす取組みを行っております。特に他社を経験した幹部社員の登用により、幅広く知識・経験の蓄積と融合を進めております。

 

②女性活躍の推進

当社は従業員127名(2025年3月末現在)のうち女性が53名(41.7%)となっており、技術部門においても女性の理科系学卒者の採用が進んでおります。女性幹部社員も課長クラスの2名が従事しております。現在、女性の取締役はおりませんが、将来は現幹部社員が十分なスキル、経験を発揮することにより取締役に就任する可能性があります。また、他の女性社員もマネジメント職に就くことで能力を最大限に発揮できるよう、管理職候補者の育成に向けた取組みを行っております。これらの取組みは、女性の職業生活における活躍の推進に関する行動計画として、2028年3月31日時点の女性管理職を、2025年4月1日時点の2倍以上に増やすことを目標としております。

 

③新人事制度定着による生産性向上

以下に掲げる施策を取り入れることにより、社員が自律的に働くことで生産性とモチベーション向上を目指しております。

:職務記述書にもとづいた自律的な業務計画を立案し、業務進捗(KGI、KPI)を正当・公正に評価するなど、社員一人ひとりの進捗に合わせたマネジメントを図る

:週休3日や週6日勤務を可能とする労働時間制の定着により、社会や社員のニーズに対応し満足度の向上を図る

 

④安心して継続的に働くことができる賃金の見直し

日本経済は消費者物価が上昇し続ける反面、実質賃金はマイナスが連続しているため、政府が主導して賃上げによる物価を上回る所得の増加を目指しております。一方で「2025年の崖」(2025年に約43万人までIT人材の不足が拡大:経済産業省)が現実のものとなり、国内のIT産業は慢性的な人材不足の状況から抜け出せる見通しが立っておらず、IT人材の採用コストは高騰を続けております。当社は、社員が安心して継続的に働くことができるよう、また、新卒採用やキャリア採用で必要な人材を確実に獲得できるように、賃金及び初任給の見直しを行っております。2024年3月期の平均8%に続き、2025年3月期は平均6%の賃上げを行いました。2026年3月期も、平均6%の賃上げとともに新卒社員の初任給は300千円(住宅手当を除く)としております。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、パーパスである『すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る』の下、ソフトウエアと関連サービスの提供を通じてシステム運用の安全と安定稼働の実現に貢献することを目指しております。

 また、経営理念として以下の3点を掲げております。

  1.お客様の視点で新たな価値を創造し、満足いただける製品とサービスを提供します。

  2.社員と会社の目的を一致させ、物心一体の幸福を追求します。

  3.国内外の法令と企業倫理を遵守し、誠実かつ公平に業務を遂行します。

 当該パーパスと経営理念にもとづき、当社の事業であるソフトウエア製品の開発から販売、導入支援、保守・サポートの全てを、当社の人的リソースによって実行しております。

 

 事業活動は、当社社員と協力会社社員の計217名(2025年6月1日時点)が本社と本社に近接するサテライトオフィスを拠点に行い、経営理念に謳う全ての付加価値を自社内で生み出しております。こうした事業特性から当社は「人材」をマテリアリティ(重点項目)と位置付けております。また、本有価証券報告書の「第2 事業の状況 1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(3)持続的成長に向けた取組み」に人材の多様性や自律的な働き方、生産性の向上について、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(3)人材の確保及び組織的経営について」において当社のリスクとして認識、対策への取組みを記載しております。

 一方、気候変動に関する事業影響に目を向けると、当社の事業活動を行うにあたっては、各オフィスとデータセンターにおける電力の消費および通勤や出張時等の交通機関の利用によるエネルギーの消費が主な管理対象であると認識しております。サステナビリティに関する取組みとして気候変動対策となるCO2排出量削減を注視しておりますが、2025年3月期のCO2排出量は302t/年と推計しております。当該排出量は国内の業務その他部門のCO2排出量165百万t(環境省:2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(2025年4月発表))と比較して僅少ではあるものの、製品開発やサポートに利用する機器の増強等により前事業年度より34%増加しており、将来に向けて適切な目安となる値の設定が必要であると認識しております。なお、入居するオフィスビルが推進する再生可能エネルギーへの代替には、積極的に賛同、支援しております。

 

人材に関する取組

ITの世界は国境を越えて日々めまぐるしく進歩しており、当社は、継続的に事業を成長させるため常に新技術を伴う付加価値を高めた新製品の提供を目指しております。しかし、国内のIT人材は圧倒的に不足している状況が続いており、限られた人材の才能が十分に発揮されることがソフトウエア産業の持続可能性には不可欠となります。少子高齢化が加速して労働者人口が減少する中、当社は社員が高いエンゲージメントをもって自律的に働ける職場環境を整えるとともに、仕事も生活も充実した日々を過ごせるように努めております。

 

(1)ガバナンス

当社は中期経営計画および年度予算計画立案にあたり、採用計画(人数、職種、採用時期、採用方法など)と育成計画を取締役会で報告し、承認を得ております。月々の取締役会においては、採用の実績、離職状況、組織、異動等について報告を行い、適切な運用、実施が行われていることを確認するとともに、課題の認識やその対策を協議しております。

また、社員が安全で健康的に働けるよう代表取締役社長を健康経営責任者とする衛生委員会を設置して、毎月の時間外労働の状況把握や職場環境の維持の状況を労使がともに確認しております。衛生委員会は社員の健康促進に向けた取組みも協議しております。こうしたガバナンス体制による取組みの結果、当社は前期に引き続き2025年3月期も「健康経営優良法人2025」に認定されました。

 

(2)戦略~人材に関する機会~

① 人事制度

当社では2022年3月期より、「働き方改革」の推進と評価制度の改訂を目的とした新しい人事制度「Encourage Smart life Style(ESS)」を導入しております。当該人事制度によって、社員は月単位で勤務形態を決めることで柔軟に「いつ働くか」を決めることが可能となり、勤務形態が変わったことによって処遇や評価に影響を受けることがなくなりました。同時に、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって会社が期待する役割と成果、その評価を明確に示し、社員と会社の認識の齟齬をなくし、在宅勤務などのリモートワークによって仕事のプロセスが見えなくても公平な評価を実現しております。

 

② 採用方針

当社は全社員の約2/3が技術系社員で構成されております。また、営業職であっても当社製品を正しく理解し、お客様企業のエンジニアに訴求することが必要となるため、ITに関する知識が欠かせません。そのため、新卒採用では情報系学部を中心に採用活動を行い、キャリア採用においてもプログラミングをはじめネットワーク構築などの経験を有するエンジニアを募集しております。営業職も、IT企業での営業経験がある人材をターゲットにしております。ただし、昨今のIT系人材の不足は深刻な状況にあるため、新卒採用、キャリア採用とも間口を広げ、特に新卒及び若年層のポテンシャル採用においては、入社後の技術教育や配属後の技術研修などに注力し、早期育成に取り組んでおります。

近年は2週間のインターンシップや約5か月にわたる就業体験で情報系学部の学生を受け入れ、実践を通じて当社事業や職場環境を知る機会を設けております。当該施策は、早期選考の側面も持ち、参加した学生が入社した際に就職後のミスマッチが発生する可能性を下げる施策も実施しております。

報酬面につきましては、新しい人事制度導入時に賃金テーブルを引き上げる見直しを行ったことに加え、2024年3月期に続き2025年3月期においても、社員は平均6%の賃上げ、初任給は住宅手当を含めて300千円とし、IT人材の確保に注力しております。なお2026年3月期は、社員平均6%の賃上げと初任給は住宅手当を除いて300千円に引き上げております。

 

③ ダイバーシティとインクルージョン

当社事業におけるそれぞれの業務は、性別、年齢、国籍等で制約されるものではなく、現行の人事制度においては個人の能力によってのみ評価される仕組みとしております。性別等に関わらず、等級が高い上位職者は実績を重視し、新入社員など経験が浅い社員はプロセスやコンピテンシーに重点を置いて評価を行っております。

新人事制度導入の際に、現行等級のまま上位等級の業務を行う「チャレンジ制度」も設け、マネジメント職としてのスキルやスペシャリストとしての働き方など自らハイレベルの業務に挑戦し、1年を通じて成果が認められた場合には通常のステップを経ずに昇格する制度も開始しております。これまでに7名がチャレンジに成功しております。前事業年度に続き2025年3月期も、VISION2030を見据えて次世代のリーダー層の育成を推進しており、若手層のグループ長やリーダーを対象に組織運営、マネジメントスキルの研修を実施しております。現在は、全社で6名の女性が次期管理職として就業し、活躍しております。

 

入社実績

 

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期(提出日現在)

 

新卒入社

男性

2名

1名

0名

4名

 

 

女性

1名

2名

2名

2名

 

キャリア入社

男性

6名

1名

11名

-名

 

 

女性

2名

5名

6名

1名

 

期末在籍者数

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期
実績/計画

2026年3月期
計画

 

男性

81名

72名

74名/80名

80名

 

女性

45名

50名

53名/55名

57名

 

126名

122名

127名/135名

137名

 

うち 外国人

2名

1名

1名/1名

1名

 

     障碍者

2名

1名

1名/2名

0名

管理職(注)

男性

18名

15名

13名/13名

13名

 

女性

2名

2名

2名/3名

2名

(注)当社では職制(等級)上、管理職にリーダーを含んでおりません。リーダーをマネジメント職とした場合、2025年3月期は男性18名、女性8名となります。

 

(3)リスク管理

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(3)人材の確保及び組織的経営について」に記載の通り、当社が必要とする人材が十分に確保できなかった場合、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクについては、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会で作成するリスクマップにおいて、日常的に発生し、当社事業にとって最も影響が大きいリスクとして認識しております。また、取締役会においても定期的に採用と離職状況を報告して、事業に負の影響が出ないように継続的に対策の検討を行っております。

さらに、IT環境は常に新しい技術や製品が生み出されており、新しい技術の情報収集や技術の習得を行うため、OJTの他に研修および有志のエンジニアによる自主的な勉強会を開催しております。

 

研修等の参加状況

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 

入社後導入研修(技術研修含む)

3名/14研修

3名/12研修

2名/15研修

 

外部個別・専門研修

179名/31研修

182名/33研修

257名/30研修

 

人材の確保にあたっては、優秀な人材の離職防止も重要となります。現行の人事制度は、働く時間と働く場所を柔軟に設定できるため、従来の勤務形態では育児や介護との両立が難しく、退職や時短勤務を選択する代償として報酬を犠牲にしていた社員も、こうした犠牲を払うことなくバランスを取った日常生活を送ることが可能となっております。

 

離職率

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 

5.2%

9.4%

11.6%

 

柔軟な働き方

 

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 

産休取得者数

 

0名

(対象無し)

1名

 

育休取得者数

 

1名

(対象無し)

1名

 

  うち男性の取得

 

(対象無し)

(対象無し)

(対象無し)

 

介護休職取得者数(注)

 

0名

0名

0名

 

時短勤務(注)

育児

3名

4名

3名

(注)介護を目的とした休職および時短勤務の実績はありませんが、在宅勤務や勤務時間のシフトなどの柔軟な働き方を常時5名前後が選択しております。

 

(4)指標及び目標

当社のマテリアリティ(重点項目)である「人材」の安定確保と継続的な能力の発揮や成長を実現するため、以下の目標を設定しております。

 

① 採用者数、離職者数(2025年3月期)

 

2024年3月期 実績/計画

2025年3月期 実績/計画

2026年3月期 計画

新卒採用

2/5~8名

66

8名

キャリア採用

6/11~17名

1721

16名

離職

13/11名

1410

10名

 

② 残業時間

当社は柔軟な働き方を推進しておりますが、新製品の開発に多大な工数を投入する場合もあり、2023年3月期は複数のプロジェクトによる新製品開発を行ったため、従来よりも多くの時間外労働(残業時間)が発生いたしました。残業時間は月次でコントロールするだけでなく、週次で発生状況を把握し、増加が懸念される部署に対しては人事部門から注意喚起を行っております。各部門長も現在使用している勤怠管理ツールを利用することで、個人別の就業状況を把握することができ、業務の適切な配分と残業の指示命令を適切に行うことが可能となっております。業務が過度に集中したり、長期間残業が継続することにより、身体面、メンタル面の不調が生じる可能性があるため、適切な水準となるように目標時間を25時間と定めて取り組んでおります。

月平均残業時間実績(目標時間 25時間00分)

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

32時間33分

28時間21分

25時間55分

 

 

③ 一般事業主行動計画

  当社は2027年3月31日までの期間における一般事業主行動計画として、以下の目標を定めております。

目標1:残業時間削減のための措置の実施

目標2:子どもの看護や家族等の介護のための柔軟な働き方への強化

それぞれの目標内容につきましては、下記URLからご覧ください。

https://www.et-x.jp/company/actionplan/

④ 女性の職業生活における活躍の推進に関する行動計画

当社は2028年3月31日時点の女性管理職を、2025年4月1日時点の2倍以上に増やすことを目標としております。

https://www.et-x.jp/company/actionplan/

 

3【事業等のリスク】

当社は、事業活動に影響を与える様々なリスクを正しく把握し、評価・分析して(Plan)、発生の未然防止、発生した時には影響を最小限にする対策を施し(Do)、その効果を検証(Check)、再発の防止(Action)を行っております。こうしたPDCAサイクルを実施・確認するため、取締役会において「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、四半期に1回以上、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。リスク・コンプライアンス委員会においては、継続的なリスクの把握と改善活動となるリスクマネジメントに取組み、議論、検討された事項については、定期的、または重要なリスクが発生した場合には随時に取締役会に報告を行っております。

 2024年3月期に定めた人権方針に則り(https://www.et-x.jp/company/human_rights/)継続的・自律的なデュー・ディリジェンスを実践しております。2024年12月のリスク・コンプライアンス委員会においては、進捗および結果のモニタリングを行い、課題の確認と今後の取組みについて意見を交わしました。その中で、重大な人権を侵害する事象が発生していないことと、課題の解決にむけた改善状況を確認いたしました。

 

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 当社が認識するリスク事象につきましては、

1.経済環境      2.自然災害       3.法律・規制(人権を含む)

4.レピュテーション  5.不正         6.製品/サービスおよびオペレーション

7.システム      8.人材・労務      9.ガバナンス

 のカテゴリごとに想定する事象を潜在リスクとして抽出しております。次に、抽出した事象を発生可能性(4段階)と財政状態及び経営成績に与える影響(4段階)の区分で分類した象限に評価・プロットし、リスクマップを作成しております。このリスクマップにプロットされたリスクは、発生可能性と影響度の高いものから低くする取組みとともに、社会や市場の環境、経営状況や人材の状況を勘案して、定期的に見直しを行っております。

 

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こうした手続きを踏まえた上で、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

当社はこれらの事業等のリスクを認識した上で、その回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社株式への投資判断は本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)製品及びサービスについて

①製品競争力について

「ESS REC(REC)」は、克明な操作記録と検索性によって、システム証跡監査ツール市場を創出してきた主力製品でありますが、近年、システム証跡監査ツール市場の認知度が高まるとともに、海外製品も含めた新たな類似製品の参入が続いております。

また、企業のDX推進によってITシステムが拡大するだけでなく、サイバー攻撃が激化、巧妙化する中で、特権IDを管理するツールは一段とニーズが高まっております。次世代型特権ID管理ソフトウエア「ESS AdminONE」は、より市場規模の大きい特権ID管理ツール市場において後発製品ではあるものの「REC」と組み合わせて総合的な特権ID管理を実現するソリューションとして提案し、国内外の競合製品からの差別化を図っております。さらには、「ESS REC Cloud」では広く普及しているクラウド環境にも対応しております。「ESS REC 6」は、リモートワーク時のモニタリングや操作者の常時本人確認を行い、なりすましや覗き込みを防止することで高いセキュリティを確保しております。2024年5月には、在宅・リモートにおけるシステム操作の安全性の担保やブラウザ操作の証跡機能を強化するなど複数の機能を追加して、差別化を進めております。

当社成長の源泉はこれらの製品によるライセンス売上であるため、当社製品と比較して高機能であったり、同等の機能でありながら「低価格」を設定するような強力なライバル製品の出現によって「REC」の優位性が失われた場合や、「ESS AdminONE」「ESS REC Cloud」等他製品でも競争力が保てない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②製品開発について

当社の製品開発の基本スタンスは、システム運用の安全と安定を実現するためのパッケージソフトウエアを提供することにあります。当社では、システム運用のあるべき姿を汎用的に捉えて製品を企画し開発を行うため、開発した製品やサービスが各顧客ごとのシステム運用現場の環境や実運用に適さないことにより、市場に受け入れられない場合があります。また、使い易さ、技術革新への対応の遅れなどの機能面や価格面において他社製品に劣るなどの理由によって、売上貢献できない場合もあります。さらに、企画した時点の計画よりも大幅に製品開発に時間を費やした場合や、開発した製品に不具合があり、当該不具合の改修に多大な工数を要する場合もあり、いずれの場合においても開発費用の回収を実現することが出来ず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ライセンスに付随する保守サポートサービス及び品質について

当社製品の使用許諾(ライセンス)契約をされた顧客に対しては、原則として保守サポートサービス契約を締結していただき、当社製品の最新バージョンの提供と顧客のシステム環境下で、安定的に使用いただけるようサポートを行っております。顧客のシステム更改で新システムに当社製品が採用されない場合や、システムの縮小・廃止などによる保守契約の解除や変更、また重大な製品の欠陥やインシデントの解決が長期化するなどによって顧客の信頼を損ね保守契約の更新に繋がらない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④コンサルティングサービスについて

当社はコンサルティングサービス業務として、当社製品の導入にあたっての導入支援やシステム構築支援をメニュー化して提供しております。「ESS SmartIT Operation」の展開に伴って、従来の単体製品のインストールや各種支援からIT全般統制に向けたシステム構築の支援へと、システム要件の拡大や役務提供範囲が拡大しております。

したがって、要件実現に向けて当社の役務提供範囲や検収条件及び納期設定、提出書類の品質に至るまでのマネジメントが要求されます。何らかのトラブルによって検収の遅れや見積以上の工数が発生しても顧客に請求できない場合、あるいは顧客の要求仕様との齟齬が生じ、損害賠償や補償作業を要求された場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定取引先に対する取引依存について

 当社においては、全売上高に占める株式会社NTTデータへの売上高の割合が高く、2024年3月期は19.3%、2025年3月期は22.2%となっております。株式会社NTTデータとは代理店契約を締結し、取引開始以来永年にわたり安定した取引を継続しておりますが、今後当該契約が何らかの理由で変更あるいは解消された場合には、当社の財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)人材の確保及び組織的経営について

①人材確保について

当社は、AI技術やクラウドサービス、最新のセキュリティ対策などを盛り込んだ次世代型新製品の開発、既存製品の拡張・改良及び製品の統合化などの研究開発テーマに取り組んでおり、これらの業務にあたる開発技術者の増強を図っております。またコンサルティング業務やサポートサービス業務に従事するシステム技術者の増員に加え、営業職の人材に関しても、その獲得だけでなくIT/セキュリティ知識の習得、育成も喫緊の課題となっております。IT技術者不足による賃金の高騰とこれに伴う人材市場の流動化、少子化による新卒採用の売り手市場化により、今後も採用は困難な状況が続くものと考えております。

 当社の人事制度は、育児・介護に関する諸制度や在宅勤務、時短勤務など柔軟な働き方を導入するとともに、職務記述書にもとづく公平・公正な評価制度を実施しております。2024年4月に続き2025年4月からも平均で6%の賃上げとともに新卒社員の初任給を300千円に引き上げ、人材採用時の競争力を高めるとともに、離職の防止に取り組んでおります。採用した社員に対しては専門技術教育とOJTによる育成を行い、スキルアップによる能力の発揮と、さらなるモチベーション向上による定着化を図っております。また、在宅勤務が定常化する中でも一般社員と経営者、幹部社員間のコミュニケーションを密にする一体感醸成施策を実施するなど、生産性の向上と仕事や会社生活に関する不安や不満を解消し離職防止にも努めております。

IT技術者の確保が計画通りに進まない場合、研究開発の遅れによる製品リリースの遅延が発生する可能性があり、これにより、連携する営業施策を変更する可能性があります。加えて営業職の人材確保が計画通りに進まない場合は顧客開拓の遅延や競合製品による商談の失注などにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社は「人材」をマテリアリティ(重点項目)と位置付けており、「2サステナビリティに関する考え方及び取組」に具体的な内容を記載しております。

 

②組織的経営について

当社が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、事業計画の立案と実行、その業務進捗管理や部門間の連携などを担う多様性のあるマネジメント層の育成強化が課題となっております。事業基盤の拡大に併せて組織を成長させていくためには、業務執行レベルで部門責任者が意思決定を迅速に行い、全社横断的な課題を解決することが必要になります。

 そのため、継続して次世代を嘱望される若手リーダーの育成に取り組んでおり、業務管理や部門間連携を図るなどのマネジメントスキルを体得する機会を創出しております。また、従来は所属する組織の年長者が経験の浅い社員のメンターとなっておりましたが、当事業年度より人事部門の有識者がメンターとなって社員のメンタルを手厚くサポートする体制を整えております。

 現在のところ、技術部門のみならず全社において他社でのマネジメント経験を有するシニア・ミドル層の人材獲得とともに女性の幹部社員登用も進んでおりますが、次世代のリーダーや幹部社員候補育成の遅れなどによって事業計画の推進に支障をきたした場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)知的財産権の侵害による訴訟リスクについて

 当社は自ら開発した製品に係わる技術要件および商標について知的財産権を登録申請することによって、他社

からの権利侵害の防止を図っております。しかし、当社が認識していない知的財産権が既に成立している可能性

や、使用しているフリーソフトウエアが第三者の知的財産権を侵害している可能性は否定できず、当社製品を使

用する顧客あるいは当社の侵害について、第三者からの請求に対応する義務を当社は負っております。

 このような知的財産権に関しての損害賠償請求、使用差し止め請求、ロイヤリティ支払要求が発生した場合、

その訴訟対応や費用負担により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)情報セキュリティに関するリスクについて

 当社においては、オフィスでの執務だけでなく在宅勤務や協力会社のリモートワーク環境も取り入れ、常に

インターネットを利用したデータセンターのサーバー利用、メールの送受信や情報の発信、収集を行っており

ます。こうした環境では、コンピュータウイルスの侵入や標的型メールの攻撃等により、顧客や当社の機密情

報又は個人情報が当社外に流出する危険やランサムウエアによって当該情報が利用できなくなる可能性が常に

存在しております。また、社員(協力会社社員を含む 以下「社員」)だけでなく退職した社員が営業機密や技

術情報などを不正に入手し、外部へ持ち出す可能性があります。

 当社では、社外からのネットワークの脆弱性を狙った攻撃やウイルス付メールなどに対し、ハードウエア、

ソフトウエアによる防御とともに社員への教育や啓蒙など、継続的に適切なセキュリティを向上させる対策を

講じております。また、社内からの不正な手段による情報の持ち出し、漏洩に対しても、「ESS REC」「ESS

AdminONE」など当社製品を導入しており、特に「ESS REC 6」では、常時本人認証の機能を活用してPC画面の覗

き見や他人のPC利用を制御しております。

 また、リスク・コンプライアンス委員会の下に情報セキュリティ部会を設置し、情報セキュリティ対策およ

び活動計画の策定、実行の評価、情報セキュリティインシデントへの対応、社員に対する情報セキュリティ

に関する啓発と教育に取り組んでおります。

 しかし、過去に例の無いウイルス攻撃等により当社が講じた対策が十分に機能しない場合や、当社製品の機

能を無効化するなどの悪意により、情報セキュリティに関するリスクが現実のものとなった場合には、社会的

な信用の失墜等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

(経営成績)

 当事業年度における我が国経済は、雇用環境の改善と一般労働者の平均賃金の伸びによる景気の緩やかな回復が見られたものの、米国の通商政策の影響や国内での物価の継続的な上昇は、今後の景気を下押しするリスクとなっております。一方で、日銀短観2025年3月調査では、全規模・全産業におけるソフトウエア投資計画が2024年12月調査から△4.2%下方修正されましたが、前年度比7.4%の増加となっており、2025年度のソフトウエア投資計画も前年度比4.3%の増加と底堅さが見えております。2024年に発生した情報セキュリティ分野のインシデントにおいても、「内部不正による情報漏えい等」が10年連続で上位の脅威とされており(独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2025」2025年1月30日公開)、引き続き優先的な対策が求められております。

 このような状況のもと、当社は、2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」を設定し、直近の3ヶ年にあたる第1次中期経営計画(投資フェーズ:2025年3月期から2027年3月期)及びゴールとなる2030年に繋がる第2次中期経営計画(成長フェーズ:2028年3月期から2030年3月期)について中長期経営計画を立案いたしました。第1次中期経営計画の初年度である2025年3月期は、「フロー売上拡大」「ストック売上強化」「役割による組織化並びにタレントスキル向上による生産性向上」を重点施策に定めて、新たな活動に取り組んでまいりました。

 「フロー売上拡大」においては、代理店強化を進めた結果、代理店営業部門でのライセンス売上が前年同期比で14.7%増となりましたが、純新規取引先を50社獲得する目標に対しては32社となったことや、ライセンス売上の減少に伴い、派生するコンサルティングサービス売上が減少する結果となりました。

 「ストック売上強化」においては、保守サポートサービス契約料金の10%値上げを実施し、同時に保守更新率は95%超と高止まりいたしました。クラウドサービス強化では、エンタープライズユーザー向けサブスクリプション契約が2024年6月よりスタートいたしました。また、クラウドサービスを含む製品・サービスの更なる拡充に向けて、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC27001とクラウドセキュリティの国際規格ISO/IEC27017の2つの認証を取得いたしました。

 「役割による組織化並びにタレントスキル向上による生産性向上」においては、機能ごとに並立していた部門の単位を事業における役割を軸に組織化し、プロダクト(製品企画/製品開発/製品保守)に関する責務と機能を集約したプロダクト統括部、SEサービスに関する責務と機能を集約したサービス統括部、全製品・サービスの売上ならびに新規顧客獲得/既存顧客の利用拡大(横展開)の責務と機能を集約したセールス統括部を編制いたしました。同時に、それぞれの統括部ならびに配下の部門内に新たなリーダーが就任いたしました。当該リーダーは若い世代からの人材も抜擢しており、マネジメント経験を積むことによって2030年には経営の一翼を担うリーダーとして活躍しはじめております。また、多様で新しい視点を取り入れることで既存の事業活動の改善や改革によって生産性が向上することを目指しております。

 

 以上の結果、当事業年度の売上高は、2,501,582千円(前年同期比0.1%増)となりました。フロー売上であるラ

イセンス売上は、代理店営業部門で伸長した一方で直販営業部門における金融向け大型案件がグループ再編に伴う導入時期の延期やクラウドサービスの選択などの影響により前年同期比で減少いたしました。また、ライセンス売上に派生するコンサルティング売上も減少しております。ストック売上である保守サポートサービス売上は契約料金の10%値上げや更新率が高止まりしたことにより増加しております。また、クラウドサービス売上もエンタープライズユーザー向けサブスクリプション契約開始などにより、大きく伸長しております。

 一方、「ESS AdminONE」「ESS REC6」の新バージョンのリリースに伴い、減価償却負担(ソフトウエア償却費からソフトウエアに計上される機能拡張費用を控除)が、前年同期比35百万円増加、給与手当を年率約6%の昇給等をしたことにより、売上原価並びに販売費及び一般管理費の合計額は2,203,592千円(前年同期比1.1%増)となりました。

 この結果、営業利益は297,990千円(前年同期比6.6%減)、経常利益は303,146千円(同5.7%減)、当期純利益は220,239千円(同0.6%増)となりました。

(財政状態)

(資産)

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ222,901千円減少し、4,659,554千円(前事業年度末比4.6% 減)となりました。主として売掛金及び契約資産の減少110,796千円、ソフトウエアの減価償却費計上等による固 定資産の減少70,654千円、現金及び預金の減少50,228千円によるものであります。

(負債)

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ310,099千円減少し、1,146,542千円(前事業年度末比21.3% 減)となりました。主として前事業年度の確定申告納付による未払法人税等の減少165,968千円、賞与支給による 賞与引当金及び役員賞与引当金の減少106,983千円、その他に含まれる未払消費税等の減少45,525千円、保守売上 の伸長に伴う保守サポートサービス売上に係る前受金(契約負債)の増加40,454千円によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ87,197千円増加し、3,513,011千円(前事業年度末比2.5% 増)となりました。主として当期純利益220,239千円、剰余金の配当134,295千円によるものであります。

 

②生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は、パッケージソフトウエア事業を主たる事業としており、生産の概念を有しないため生産実績の記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社は、受注確定から売上日までの期間は1ヶ月程度であります。よって、期末日現在の受注残高は、年間売上高に比して僅かであるため、その記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績を区分ごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

製品・サービスの名称

前事業年度

(自 2023年4月1日

   至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

   至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

 

 

 

うちESS REC

398,008

286,124

△28.1%

 

うちESS AdminONE

214,300

221,173

3.2%

 

 

うちその他ライセンス

82,464

71,286

△13.6%

ライセンス

694,772

578,584

△16.7%

保守サポートサービス

1,347,075

1,434,437

6.5%

クラウドサービス

103,404

171,487

65.8%

コンサルティングサービス

317,894

282,392

△11.2%

SIO常駐サービス

26,734

17,235

△35.5%

その他

8,263

17,444

111.1%

パッケージソフトウエア

事業合計

2,498,144

2,501,582

0.1%

 (注)1.当社の報告セグメントは「パッケージソフトウエア事業」の単一セグメントであります。

2.その他の主なものはレンタル売上、販売奨励金等であります。

3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

 

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

 

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社NTTデータ

483,069

19.3

555,538

22.2

※2023年7月より株式会社エヌ・ティ・ティ・データから株式会社NTTデータに社名変更しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。財務諸表の作成に当たっては決算日における財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積りおよび予測を必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

②経営成績の分析

 当社は、第1次中期経営計画のもとで2025年3月期より ① フロー売上拡大、② ストック売上拡大、③ 役割による組織化ならびにタレントスキル向上による生産性向上 の3点を重点施策として取り組みました。当該施策の分析と結果は以下の通りです。

 

重点施策

活動結果と分析

①フロー売上拡大

当事業年度の取組み

 当社の事業におきましては、製品(ソフトウエア)のライセンス販売とこれに伴うコンサルテーションや導入作業などは販売時および検収時に収益認識を行い、フロー売上として管理しております。

ア)ライセンス売上拡大

 当社の収益は全てがライセンスの販売が起点となるため、営業面で最も重要な施策となります。

・主要代理店の活性化、代理店の契約条件最適化、ならびに主要代理店以外

 のアライアンス強化

・顧客深耕によるエンタープライズユーザーの獲得

・マーケティング活動による純新規の顧客企業拡大

イ)コンサルティングサービス売上拡大

・ESS AdminONE/ESS REC6への移行提案の推進による案件増加

・問題解決型の提案による新規導入案件増加

・サービス部門統合によるサービス品質の強化

当事業年度の成果

 フロー売上拡大の取組みは以下の成果となりました。

ア)ライセンス売上拡大

・金融機関向け大型案件がグループ再編に伴う導入時期の延期となり、予定

 していた主力製品ESS RECの売上1億円超が実現しなかったことと、顧客

 がストック売上となるクラウドサービスを選択した影響により、ライセン

 ス売上は前年度比16.7%の減少となりました。

・代理店については、主要代理店と準主要代理店のいずれも活性化が進み、

 前年度に比べて売上高は14.7%の増加となりました。

イ)コンサルティングサービス売上拡大

・ライセンス売上が減少したことに伴い、これに派生するコンサルティング

 サービスの売上も減少いたしました。

 

②ストック売上拡大

当事業年度の取組み

 当社の事業におきましては、製品の導入後にライセンスを使用する間は毎年更新する保守契約や、ライセンスの一括購入ではなく一定期間を定めてサービスとしてご利用いただくクラウドサービスのように期間で収益認識を行い、ストック売上として管理しております。

ア)保守サービスの強化

・2024年4月より更新契約の保守料10%値上げ

・保守更新率96%を目指す

・品質保証部による製品製造へ牽制を強化することにより品質の強化

イ)クラウドサービスの強化

・ISO27001/27017取得による信頼性向上

・エンタープライズユーザー向けサブスク契約の創設

・主要製品のクラウド(SaaS)化によるサービス提供の検討を開始

当事業年度の成果

 ストック売上拡大の取組みは以下の成果となりました。

ア)保守サービスの強化

・保守サービスはお客様に契約料金の10%値上げをご理解いただき、計画通

 り実施いたしました。

・保守更新率は僅かに目標を下回ったものの95%超と高い水準となり、前年度と比べて6.5%の増加となりました。

イ)クラウドサービスの強化

・予定通り2025年1月に、情報セキュリティマネジメントシステム

 (Information Security Management System:ISMS)の国際規格である

 ISO/IEC 27001認証とクラウドセキュリティを対象としたISO/IEC 27017認

 証を取得しております。

・エンタープライズユーザー向けサブスク契約も予定通りお客様に提供を開

 始しております。

・主要製品(ESS REC、ESS AdminONE)のクラウド化も具体的な検討を始

 め、第2次中期経営計画(2028年3月期~2030年3月期)の収益化に向けた

 取組みを開始しております。

 

③役割による組織化ならびにタレントスキル向上による生産性向上

当事業年度の取組み

ア)役割による組織化

・プロダクト統括部

 プロダクト(製品企画/製品開発/製品保守)に関する全責任と機能の集

 約

・サービス統括部

 SEサービス(Pre&PostSales/Consulting&SI(企画含む))に関する全

 責任と機能の集約

・セールス統括部

 全品目の売上(受注契約請求含む)ならびに新規顧客獲得/既存顧客拡大

 の全責任と機能の集約

イ)タレントスキル向上による生産性向上

・新人、ポテンシャル採用の早期戦力化と入社後3年間の新しい教育計画の

 検討・決定

・リーダー層(若手・中堅層)の基本研修の実施およびPDCAによる経験学習

 の実践、次世代リーダーの抜擢・育成

当事業年度の成果

 役割による組織化ならびにタレントスキル向上による生産性向上の取組みにより以下の成果となりました。

ア)役割による組織化

・プロダクト統括部、サービス統括部、セールス統括部の役割を明確にした

 ことにより、顧客要望やインシデント等の情報の共有や切り分け、対応な

 どが的確に行われるようになりました。また、各統括部の管理者による意

 思統一が容易に行われるようになり、配下への指示命令も迅速かつ確かな

 ものになりました。

イ)タレントスキル向上による生産性向上

・新卒入社の導入研修は改良を重ね、初期の導入研修を終えたのちに当社の

 製品、サービスに適したエンジニアを育成するための実践教育や、配属先

 の業務に応じたOJTを充実させており、早期戦力化を実現する教育に取り

 組んでおります。この研修体系は、実務経験が少ないポテンシャル採用の

 社員にも適用しております。

・VISION2030に向けて最も重要な次期リーダー層の育成は、座学による知識

 の習得だけでなく、それぞれの業務や組織における計画の立案から目標の

 設定、実績の評価までを実践しております。マネジメントスキルの獲得を

 目指して取り組み、それぞれに新たな気付きを得ることで、業務の改善や

 組織の運営に反映されております。

 

(注)Pre&PostSales;

PreSales  :商談確定/受注前にお客様の利用条件等を鑑みて技術的提案を行う

PostSales :製品稼働後、お客様に対して能動的に利用状況の把握や利用環境の変化等を確認し、利用の促進、新たな課題への提案を行う

 

 今後の取組みとしましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期経営計画」に記載の通り、2031年3月期に向けて中長期にわたる経営計画を立案し、2026年3月期は以下の通り重点施策を定め、新たな活動に取り組んでおります。

 

2026年3月期 重点施策

重点施策

新たな取組み

①ライセンス売上の計画達成

2025年3月期の売上高計画未達は、ライセンス売上が計画値を約23%下回ったことが最大の原因となりました。この結果を受けて、2026年3月期はライセンス売上の計画達成を最重要事項と位置付けております。

ア)新規・純新規案件数の増加および受注率向上

・顧客深耕型営業に注力

・営業SEの増員による案件対応強化

・代理店の顧客担当部門へのアプローチ強化

イ)案件発掘のためのマーケティング強化

・自社カンファレンスの開催規模拡大により集客倍増

・主要イベントへの出展規模拡大による認知度向上

・インバウンドリードのナーチャリングによる案件化推進

②新機能開発/製品・サービス

  品質強化

当社は製品・サービスを通じて顧客へ新たな価値を創造して、提供しております。

ア)新機能開発

・ESS AdminONE、ESS REC6の新機能開発・リリース

・AdminONEクラウドサービスリリースに向けた開発

・新製品(AIによるESS RECデータ分析による統制強化)の研究

イ)製品・サービス品質の強化

・品質点検による開発プロセスの改善

・開発フェーズでのテスト自動化による品質、生産性向上

・コンサルティングサービスの実施プロセス改善

③人材強化

当社は「人材」をマテリアリティ(重点項目)と位置付けております。

ア)パフォーマンス向上へ体制強化

・営業活動活性化のための支援体制強化

・ローテーションによる業務知識習得、/スキルアップ及びリスキリ

 ング

・業務時間を最大限有効活用(コスト効率化)するマネジメント強化

イ)人材育成

・組織、業務をリードする次世代リーダーの育成

・育成体系の充実・拡充による早期戦力化

・協働意識とエンゲージメントを高める一体感の醸成

 

 

以下は、前年度実績対比及び2024年5月10日に公表の業績予想対比の分析を記載しています。

(売上高の状況)

当事業年度の実績値

比較年度

増減金額

増減率

2,501百万円

前事業年度実績対比

3百万円

0.1%の増加

業績予想対比

△248百万円

9.1%の減少

前事業年度の実績対比につきましては、ライセンス売上が大型案件の導入時期延期やクラウドサービスの選択などの影響により116百万円(16.7%)減少し、ライセンス売上に付随するコンサルティングサービス売上も35百万円(11.2%)減少するも、保守料金の改定等により、保守サポートサービス売上が87百万円(6.5%)の増加、クラウドサービス売上が68百万円(65.8%)の増加と伸長し、3百万円(0.1%)の増加となりました。

業績予想対比におきましては、保守サポートサービス売上及びクラウド売上がほぼ計画どおりの売上となるも、ライセンス売上が上記理由を要因に計画比171百万円の減少、ライセンスに付随するコンサルティングサービス売上も計画比52百万円減少となり、248百万円(9.1%)の減少となりました。

 

(営業利益の状況)

当事業年度の実績値

比較年度

増減金額

増減率

297百万円

前事業年度実績対比

△20百万円

6.6%の減少

業績予想対比

△52百万円

15.1%の減少

前事業年度の実績対比につきましては、減価償却負担(ソフトウエア償却費からソフトウエアに計上される機能拡張費用を控除)が、前年同期比35百万円増加、給与手当を年率約6%の昇給等をしたことにより、売上原価及び販管費が24百万円増加し、営業利益は20百万円(6.6%)の減少となりました。

業績予想対比におきましては、業績連動賞与等が計画比減少するも、売上計画の未達により、営業利益は52百万円(15.1%)の減少となりました。

 

(経常利益の状況)

当事業年度の実績値

比較年度

増減金額

増減率

303百万円

前事業年度実績対比

△18百万円

5.7%の減少

業績予想対比

△46百万円

13.4%の減少

 前事業年度の実績対比につきましては、営業利益の減少により18百万円(5.7%)の減少となりました。また、業績予想対比につきましても、営業利益の計画比減少により46百万円(13.4%)の減少となりました。

 

(当期純利益の状況)

当事業年度の実績値

比較年度

増減金額

増減率

220百万円

前事業年度実績対比

1百万円

0.6%の増加

業績予想対比

△20百万円

8.3%の減少

 前事業年度の実績対比につきましては、法人税等の税金費用が19百万円減少し、当期純利益は1百万円(0.6%)の増加となりました。

 業績予想対比におきましては、税金費用の減少がありましたが、経常利益の減少により当期純利益は20百万円(8.3%)の減少となりました。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社を取り巻く事業環境は、主として企業のIT投資の動向によって影響を受け、とりわけ、金融業界への依存度が比較的高いため、規制当局の監査や指針による影響は無視できないものがあります。また、クラウド化の進展に伴ってデータセンター事業者の顧客情報保護のためのセキュリティ投資などが当社の経営成績に影響を及ぼす一因となります。その他当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社は、投資活動および財務活動に必要な資金を、営業活動によるキャッシュ・フローにて賄っており、銀行など外部からの資金調達は行っておりません。その結果、自己資本比率は75%となっております。

 事業展開に伴う資金については、機動的な対応を可能とする十分な現金及び現金同等物として保有しております。当該資金を用いてIT人材の確保に投資を行うとともに日々変化し続ける情報技術の進歩に対するIT投資及び研究開発投資、ならびにM&Aなどに充当し、事業基盤の安定と企業価値の向上に努めてまいります。

 株主還元に関しましては、株主配当においては配当性向33.3%以上かつ純資産配当率(DOE)5%程度を目安とし、自己資金で対応する予定です。

 なお、配当政策につきましては「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。また、自己株式の取得については、キャッシュ・フローの状況を総合的に勘案し、機動的な資本政策の遂行を目的に、適切な時期に実施いたします。

 

・当事業年度における各キャッシュ・フローの分析・検討内容

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,506,709千円(前事業年度末比 50,228千円減)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、345,945千円(前事業年度は862,636千円の資金増)となりました。主な収入要因は、税引前当期純利益303,146千円、減価償却費283,897千円、売上債権の減少110,796千円、保守サポートサービス売上に係る前受金(契約負債)の増加40,454千円によるものであります。主な支出要因は、法人税等の支払208,070千円、賞与引当金および役員賞与引当金の支給に伴う減少106,983千円、未払消費税等の減少45,525千円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、261,878千円(前事業年度は364,188千円の資金減)となりました。主な支出要因は、製品の拡張・改良の推進に伴う市場販売目的ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出219,325千円、有形固定資産の取得による支出32,974千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、134,295千円(前事業年度は134,295千円の資金減)となりました。配当金の支払額によるものであります。

 

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは84,067千円の資金増となりました(前事業年度は498,447千円の資金増)。

 

5【重要な契約等】

 2025年3月31日現在、以下の重要な契約を締結しております。

相手先の名称

契約の名称

有効期間

契約の概要

株式会社NTTデータ

代理店契約書

2007年12月5日から2008年12月4日まで。以降は1年毎の自動更新

当社パッケージソフトウエア製品の販売及び保守サポートサービスの提供

 

6【研究開発活動】

 当社は、システム運用を安全かつ安定的に稼動させるために、システムリスクとヒューマンリスクの両面からのアプローチによって、最適なソリューションをパッケージソフトウエアで提供しております。研究開発活動においては、パッケージソフトウエア事業において、主力製品である「ESS REC」の大幅な機能強化(次世代型システム証跡管理製品)とAIを搭載した本人確認によるなりすまし防止製品の2つの新製品開発プロジェクトを主とした研究開発を行なってきました。

 当社は、第1次中期経営計画の3年間の投資フェーズの中で、既存製品のさらなる機能拡張に加え、新製品のリリース、既存主要製品を統合した新たな運用統制ソリューション製品の提供、新製品・統合製品のクラウド化(Saas)等に向けて、研究開発活動を積極的に進めており、当事業年度の研究開発費は、前事業年度に比し50,589千円増加し、89,417千円となりました。