第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2013年3月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

売上高

(千円)

456,375

631,278

1,264,902

1,649,940

経常損失(△)

(千円)

682,881

907,854

710,079

782,653

親会社株主に帰属する

当期純損失(△)

(千円)

688,171

915,893

718,057

789,332

包括利益

(千円)

687,116

916,040

719,476

777,636

純資産額

(千円)

5,995,828

27,777,298

27,063,934

46,226,147

総資産額

(千円)

6,434,768

48,289,052

47,534,470

46,848,267

1株当たり純資産額

(円)

32.19

134.03

130.50

214.90

1株当たり当期純損失

(△)

(円)

3.95

4.74

3.53

3.69

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

93.2

56.4

55.8

98.6

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

539,588

779,286

258,282

575,438

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

121,796

26,780,601

482,675

5,547,807

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,050,140

42,441,003

21,185

109,807

現金及び現金同等物の

期末残高

(千円)

4,341,264

19,221,857

18,458,970

13,375,733

従業員数

(名)

47

64

65

71

〔外、平均臨時雇用者数〕

110

90

93

94

(注)1.当社は第10期より連結財務諸表を作成しております。そのため、第9期以前については連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

4.自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

5.株価収益率については、1株当たり当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

6.当社は2013年10月25日付けで普通株式及びB種類株式1株につきそれぞれ200株の割合で株式分割を、2014年8月1日付けで普通株式及びB種類株式1株につきそれぞれ5株の割合で株式分割を、2015年8月1日付で普通株式及びB種類株式1株につきそれぞれ2株の割合で株式分割を行っております。第10期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

7.第13期より従業員数の算定方法を変更したことに伴い、第12期以前につきましても当該算定方法による集計へ変更しております。

 

(2)提出会社の経営指標等

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2013年3月

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

売上高

(千円)

286,457

448,543

588,631

1,012,412

1,453,642

経常損失(△)

(千円)

565,820

671,213

886,741

685,226

701,853

当期純損失(△)

(千円)

573,326

672,764

890,532

689,004

707,418

持分法を適用した場合の

投資利益

(千円)

資本金

(千円)

3,349,075

5,428,919

16,511,767

16,511,767

26,743,881

発行済株式総数

(株)

(旧)普通株式

49,267

(旧)A種類

株式

25,667

(旧)B種類

株式

12,073

普通株式

10,853,400

B種類株式

7,770,000

普通株式

62,788,000

B種類株式

38,850,000

普通株式

125,576,000

B種類株式

77,700,000

普通株式

137,347,609

B種類株式

77,700,000

純資産額

(千円)

2,523,257

6,010,180

27,815,874

27,132,982

46,374,379

総資産額

(千円)

2,927,794

6,373,749

48,238,237

47,533,060

46,921,518

1株当たり純資産額

(円)

14.50

32.27

134.02

130.84

215.59

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

3.29

3.86

4.60

3.39

3.31

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

86.2

94.2

56.3

55.7

98.8

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

397,658

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

157,360

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

235,448

現金及び現金同等物の

期末残高

(千円)

708,591

従業員数

〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

36

40

56

55

61

33

47

48

59

61

 

(注)1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.当社は、株主総会及び各種類株主総会その他所要の手続きを経て、2013年10月23日付で(旧)B種類株式を(旧)A種類株式に変更した上で、かかる(旧)A種類株式の内容を変更して新たに普通株式とし、また、従前の(旧)普通株式の内容を変更して新たにB種類株式といたしました。

3.第5期乃至第9期に発行されていた(旧)A種類株式及び(旧)B種類株式は、剰余金の配当及び残余財産の分配について、(旧)普通株式と同じ権利を有していたため、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失の各数値の算出の際には、(旧)A種類株式及び(旧)B種類株式も発行済株式総数及び期中平均発行済株式数に含めております。

4.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

5.株価収益率は1株当たり当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

6.持分法を適用した場合の投資利益については、第9期は関連会社が存在しないため記載しておりません。第10期から第13期については、連結財務諸表を作成しているため、記載しておりません。

7.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

8.当社は、2013年10月25日付で株式1株につき200株の株式分割を、2014年8月1日付で普通株式及びB種類株式1株につきそれぞれ5株の割合で株式分割を、2015年8月1日付で普通株式及びB種類株式1株につきそれぞれ2株の割合で株式分割を行っております。そこで、第9期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

9.第10期より連結財務諸表を作成しているため、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー、及び、現金及び現金同等物の期末残高は記載しておりません。

10.第13期より従業員数の算定方法を変更したことに伴い、第12期以前につきましても当該算定方法による集計へ変更しております。

2【沿革】

 当社代表取締役社長である山海嘉之は、1980年代後半に人・ロボット・情報系を融合複合させた新しい学術領域である「サイバニクス」(※1)を構想し、1991年頃から医療分野での活用を目指しHAL®の原理に関する基礎研究に着手し、研究開発を一貫して推進してきました。その結果、サイバニクスの研究成果として世界初のサイボーグ型ロボット「ロボットスーツHAL®」(※2)が誕生しました。

 HALをはじめとする新領域「サイバニクス」の研究成果を広く社会に還元することを目的として、2004年6月にCYBERDYNE株式会社(※3)が設立されました。

年月

概要

2004年6月

茨城県つくば市において資本金1,000万円で医療・福祉・介護分野向けロボットスーツの開発、製造、販売を目的に、CYBERDYNE株式会社を設立

2005年11月

The 2005 World Technology Summit & Awards(2005年世界技術大賞), IT Hardware部門において大賞を受賞(※4)

2007年6月

CYBERDYNE株式会社、代表取締役社長山海嘉之及び筑波大学知的財産統括本部の三者が、「身体機能を拡張するロボットスーツHAL®」の開発で経済産業大臣賞を受賞

2009年1月

HAL®福祉用の初期モデルの製造販売を開始

2009年7月

サイボーグ型ロボット技術の発明(特許4178186号)が、全国発明表彰(※5)21世紀発明賞を受賞

2010年6月

HAL®福祉用の現行モデルの製造販売を開始

2012年12月

ISO13485(医療機器の品質マネジメントシステムの国際標準規格)を、世界初のロボット治療機器の設計開発・製造・販売業者として、認証取得(第三者認証機関:UL 認証番号:A18103)

2013年1月

HAL®欧州モデル、脳卒中患者に対する臨床試験の開始(臨床試験実施機関:スウェーデン カロリンスカ研究所/ダンドリード病院)

2013年2月

HAL®福祉用が、世界で初めて生活支援ロボットの国際安全規格ISO/DIS13482の認証を取得(第三者認証機関:一般財団法人日本品質保証機構 認証番号:JQA-KC12624)

2013年3月

医療用HAL®の希少性難治性の神経・筋難病疾患患者に対する医師主導治験が開始(治験調整事務局:国立病院機構新潟病院)

2013年4月

鈴鹿ロボケアセンター株式会社(現連結子会社)を三重県鈴鹿市に設立

2013年6月

医療用HAL®が、世界初のロボット治療機器として、MDD(欧州医療機器指令)の適合性評価を受け、EU域内において医療機器として認証取得(第三者認証機関:TÜV Rheinland。認証番号DD 60085735 0001)

2013年7月

富士重工業株式会社(現株式会社SUBARU)より、クリーニングロボット事業を譲り受ける

CEマーキング(※6)が表示された医療用HAL®を医療機器としてEU域内へ出荷開始

2013年8月

湘南ロボケアセンター株式会社(現連結子会社)を神奈川県藤沢市に設立

ドイツにCyberdyne Care Robotics GmbH(現連結子会社)を設立し、医療用HAL®を利用した脳神経筋疾患の患者に対する機能改善治療(サイバニクス治療(※7))の事業を開始

DGUV(Deutsche Gesetzliche Unfallversicherung:ドイツ法的損害保険)が、医療用HAL®による機能改善治療(サイバニクス治療)に、公的労災保険の適用を認可

2013年9月

大分ロボケアセンター株式会社(現連結子会社)を大分県別府市に設立

2014年3月

東京証券取引所マザーズに上場

2014年9月

HAL®作業支援用(腰タイプ)の製造販売を開始

2014年11月

HAL®作業支援用(腰タイプ)及びHAL®介護支援用(腰タイプ)が、作業者及び介護者向けの装着型ロボットとしては世界で初めて生活支援ロボットの国際安全規格ISO13482:2014の認証を取得(第三者認証機関:一般財団法人日本品質保証機構 認証番号:JQA-KC14001及びJQA-KC14002)

2015年2月

HAL®単関節タイプの製造販売を開始

HAL®作業支援用(腰タイプ)及びHAL®介護支援用(腰タイプ)が、欧州機械指令に適合し、作業者及び介護者向けの装着型ロボットとして世界初のCEマーキングを表示

2015年3月

HAL®介護支援用(腰タイプ)の製造販売を開始

人工知能AI搭載型自動搬送ロボットの製造販売を開始

2015年6月

医療用HAL®(下肢タイプ)について、米国食品医薬品局(FDA)に対して医療機器承認(クラスⅡ)の申請書類を510(k)プロセス(※8)により提出

 

 

年月

概要

2015年10月

医療用HAL®(下肢タイプ)による対麻痺患者に対する機能改善治療(サイバニクス治療)について、ドイツのInEK(病院医療報酬制度協会)およびG-BA(ドイツ連邦合同委員会)に対して公的医療保険適用を申請

2015年11月

医療用HAL®(下肢タイプ)について、厚生労働省より医療機器として製造販売承認を取得

2016年1月

医療用HAL®(下肢タイプ)による神経・筋難病疾患に対する機能改善治療(サイバニクス治療)について、中央社会保険医療協議会総会において世界で初めて公的医療保険適用が決定

2016年8月

米国にCYBERDYNE USA Inc.(現連結子会社)を設立

2016年9月

医療用HAL®(下肢タイプ)による神経・筋難病疾患に対する機能改善治療(サイバニクス治療)について、ロボット治療として世界で初めての公的医療保険による診療が開始

医療用HAL®単脚モデルの脳卒中患者に対する医師主導治験が開始(治験調整事務局:筑波大学)

2017年2月

第3回日本ベンチャー大賞(※9)において内閣総理大臣賞を受賞

 

事業展開に至る背景

 1970-80年代は、日本が産業用ロボットを国内外に展開し始めた時期ですが、現場の専門家の積極的なロボット導入への挑戦が原動力となり、ロボット技術は産業界を大きく変革する革新技術へと発展することとなりました。改良が続けられた「ロボット技術」と「現場での活用技術の開拓」によって、国産の産業用ロボットは1990年代半ばまで世界シェアの6割以上(一般社団法人日本ロボット工業会「世界の産業用ロボット稼働台数」より)を占めるまでに至りました。

 現在、先進各国は高齢化に直面しておりますが、そこには新産業創出の機会として、産業用ロボットが成し遂げた生産現場における革命と同様のパラダイムシフトが、医療・福祉・生活(職場環境含む)分野でおこる可能性があります。当社グループは、このような背景のもと、当該分野の人や社会の課題を解決するために「人支援分野での事業展開を通して新たな産業を創出すること」を目標としております。当社グループの事業においては、我々の社会が直面する少子・超高齢社会の課題を解決する革新技術を創生しながら、その解決手法を産業化(新産業創出)し、その挑戦の過程で未来開拓型の人材育成を行う、という3本柱を同時展開するというスキームで事業を推進してまいります。

 

用語解説

※1.サイバニクス(Cybernics)

 サイバニクスとは、Cybernetics(人と機械の共通の情報処理理論、人工頭脳学), Mechatronics(機械電子工学), Informatics(情報学/IT)を中心に、脳・神経科学、行動科学、ロボット工学、IT、システム統合技術、生理学、心理学、哲学、倫理、法律、経営など、人・ロボット・情報系の融合複合分野を扱うことを目的として構築された新しい学術領域のことです。実問題は様々な課題が混在した複合課題であり、従来の縦割りの科学技術のみからのアプローチでの解決は極めて困難ですが、サイバニクスは人や社会の課題を総合的・複眼的に扱うことができるため、複合課題の解決に威力を発揮します。1987年から1989年にかけて、筑波大学の山海嘉之がサイバニクスの基本構想をまとめ、2007年には文部科学省を中心に最も強化する教育研究領域としても展開されてきました。

 

※2.ロボットスーツHAL®(ハル)

 人の身体機能を改善・補助・拡張・再生するために研究開発された世界初のサイボーグ型ロボットです。HAL®は、Hybrid Assistive Limb の略です。Hybridは「混在」を意味し、人とロボットの混在、随意制御系と自律制御系の混在などの意味が重ねられています。Assistiveは「支援」を意味し、Limbは「腕、脚などの四肢」を意味します。HAL®は、このような語源として構成されましたが、HAL®の原理を活用する関連機器に対してもHAL®という呼び方が使われることもあります。HAL®の研究開発に関しては、1991年から基礎研究が始まり、HAL®の原理づくりの段階から、医療用途を目指して研究開発を推進してまいりました。基礎技術が確立できてきた後、医学的効果効能を有する医療機器化に向けて、基礎研究開発、試作・評価、安全技術開発・安全評価技術開発、臨床研究・臨床評価、国際連携、標準化、治験、保険適用に至る様々な取り組みが行われてきました。下肢タイプの医療用、福祉用、腰タイプの介護支援用、作業支援用、単関節タイプの自立支援用など、様々な種類のHAL®が展開されています。

 

※3.CYBERDYNE(サイバーダイン)株式会社

 新領域「Cybernics(サイバニクス)」を駆使した革新技術と力を意味するDyne(ギリシア語に由来)を組み合わせ、サイバニクスにより生み出される力、という意味を込めてCYBERDYNEと命名しました。

 

※4. The World Technology Summit & Awards

 タイム誌、フォーチュン、CNNによって2000年から開催されており、各分野において「長期にわたって最も優れた価値をもたらし得る」革新的な取組みを行った個人や企業を称えるものです。

※5.全国発明表彰

 大正8年、日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に始まり、以来、日本を代表する幾多の研究者、科学者の功績を顕彰するものです。自動車やIT等の分野も含め全ての分野の中から著しく優秀と認められ、最高の特許との評価を受け常陸宮殿下から表彰を賜りました。

 

※6.CEマーキング

 欧州連合(EU)地域に販売される指定の製品に貼付を義務づけられる基準適合マークのことです。CEマーキング表示のある製品は、EU域内の自由な販売・流通が保証されます。医療用HAL®は、MDD(欧州医療機器指令)の適合性評価を受け、EUにおいて医療機器としてCEマーキングを表示しております。

 

※7.サイバニクス治療(Cybernic Treatment)

 サイバニクス治療は、サイバニクス技術を駆使して研究開発された医療用HAL®等により実現される「機能再生医療」であり、脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進する革新的治療技術です*。HAL®は人の脳神経系からの運動意思情報で動作し、筋紡錘などの感覚神経を賦活化させることで脳神経系と筋骨格系の間での神経情報伝達ループを構成し、インタラクティブなバイオフィードバックを成立させます。これにより、機能障害を有し運動に必要な筋力の発揮が難しい患者であっても、脳・神経・筋系に過剰な負担をかけることなく脳からの運動意思と同期した実際の運動を何度も繰り返し実現させることができるため、機能改善・機能再生の促進が可能となります。患者の神経情報や運動情報等に関するHAL®の各種パラメータの調整機能によって、医師は患者の脳神経系と筋骨格系の神経情報伝達ループを適切に回すことができるよう治療的に介入することができるようになります。

 HAL®による治療は、日本において薬事承認され診療報酬上の新しい治療技術として保険収載されており、併用される各種リハビリテーションとは区別される「治療処置」となります。

 

 *サイバニクス治療は、医療用HAL®に限らずサイバニクス技術を駆使した様々な形態のメディカルサイバニックシステム(サイバニックインタフェース/サイバニックデバイス等)によっても実施可能です。

 

※8.510(k)プロセス

 クラスIならびに一部のクラスⅡの医療機器について米国市販承認を求めるプロセスです。このプロセスは、申請者が、米国での市販品と同等もしくは同等以上の安全性と有効性(safety and effectiveness)を有することを示すことで、FDAによる審査を経て承認が与えられます。

 

※9.日本ベンチャー大賞

 経済産業省などが主催する、若者などのロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰し称える制度です。当社が受賞した「内閣総理大臣賞」は、事業の新規性や革新性、グローバル市場への進出や社会課題の解決といった事業のビジョンなどに関し、最も評価の高いベンチャー企業に対して付与されるものです。

 

 

3【事業の内容】

 当社は、社会が直面する様々な課題を解決するため、サイバニクスを駆使して、革新技術(イノベーション技術)の創出と基礎的研究開発から社会実装までを一貫した事業スキームとして事業展開し、革新技術の研究開発と新産業創出による市場開拓、これらの挑戦を通じた人材育成を上向きにスパイラルを描くように同時展開する未来開拓型企業です。

 「テクノロジーは人や社会の役に立ってこそ意味がある」との理念のもと、HAL®に代表される「メイドインジャパンの革新的ロボット医療機器/革新的人支援機器/革新的医療機器」の研究開発・社会実装及び当該技術を核とした世界規模でのサービス産業を創出し、健康長寿社会を支える人支援産業(ロボット・ヘルスケア産業を含む)のリーディング企業として国際事業展開・市場開拓を行い、重介護ゼロ®社会の実現に挑戦します。今後、世界の先進各国は超高齢社会に直面しますが、そこには医療・福祉・生活(職場環境含む)分野での新産業創出の機会があり、1980年代に産業用ロボットが成し遂げた生産革命を超えるパラダイムシフト(サイバニクス革命)によって人や社会に役立つことが、当社グループの事業ミッションです。

 

(1) サイバニクス技術による事業分野

 サイバニクスは、人とロボットと情報系が融合複合したトータルシステムを「基礎研究レベルから社会実装」に至るまで取り扱うことのできるものとなっています。当社グループは、このサイバニクス技術を駆使して、医療、福祉、生活(職場環境含む)分野の事業展開を行います。HAL®は、人・ロボット・情報系が融合複合したサイバニクスを駆使して研究開発された革新技術の代表的成果であり、これを中心として下記のような事業分野に展開しております。

 

1) 医療サービス分野:脳・神経・筋系疾患の患者へのサイバニクス治療サービスを提供する事業分野。

2) 医療機器分野:医療用HAL®に代表される脳・神経・筋系疾患の患者向けのサイバニクス治療を行う医療機器や手のひらサイズで動脈硬化度や心電位を計測するバイタルセンサーの研究開発・製造・販売及びそれらに関連する事業分野。

3) 生活支援サービス分野(介護福祉を含む):高齢者や障がい者への健康トレーニングを提供する事業分野。

4) 生活支援機器分野(介護福祉を含む):高齢者や障がい者の自立動作をサポートするHAL®福祉用(下肢タイプ)・自立支援用(単関節タイプ)、作業者や介護者の重作業をサポートするHAL®作業支援用・介護支援用(腰タイプ)、人工知能AI搭載型の搬送ロボットやクリーニングロボットなどの介護福祉・職場環境等を含む生活支援を行う生活支援ロボットの研究開発・製造・販売及びそれらに関連する事業分野。その他、災害現場でのレスキュー活動を支援する災害対策ロボットの研究開発及びそれに関連する事業分野。

 

 

(2) 中核技術としてのHAL®の動作原理と制御方法

 HAL®は、人が装着して利用します。HAL®の技術は様々な分野で利用でき、当社グループの事業の中核となるものです。HAL®は、装着者の脳神経系からの動作意思を反映した微弱な生体電位信号(Bio-Electrical Signal:BES)で機能する「サイバニック随意制御系」、姿勢や重心バランス等の装着者の動作情報を人工知能処理し機能する「サイバニック自律制御系」、装着者の人間特性に適応調整される「サイバニックインピーダンス制御系」、及びこれらを組み合わせた「サイバニックハイブリッド制御系」などで構成される革新的サイバニックシステムです。

 人が体を動かそうとする際、その運動意思は微弱なイオン電流の神経系指令信号として、脳、脊髄、運動神経、筋肉へと伝達され、最終的に筋骨格系が動くことになります。その際、微弱な生体電位信号が皮膚表面にも到達してくるので、これを検出できれば運動意思を捉えたことになります。HAL®はこの微弱な生体電位信号を装着者の皮膚表面に貼付けられたセンサーで検出し、これを活用して機能します。これにより、装着者が身体を動かそうとすると、その運動意思に従ってHAL®が駆動します。HAL®は身体に密着しているため、装着者の意思によって駆動すると同時に、脚などの装着部位を動かすことになり、筋紡錘(※1)からの求心性ニューロン(※2)の信号が感覚神経、脊髄を経て脳に戻る(フィードバックされる)ことになります。更に、このような体内の感覚神経系情報に加え視聴覚情報も脳にフィードバックされることになります。このようにして、「脳→脊髄→運動神経→筋肉→HAL®」、そして、「HAL®→筋紡錘→感覚神経→脊髄→脳」という脳と身体とHAL®との間でインタラクティブなバイオフィードバックが構成されることになります。

 これが基本的な「サイバニック随意制御」であり、機能的に人間とロボットとを一体化させることに成功した新しい制御手法の動作原理の一つです。また、重度の運動機能障害を有する場合、特に、生体電位信号がまだ検出できないような状態では、「サイバニック随意制御」が機能しないため、人間の基本運動パターンや動作メカニズムの解析結果を元に予め準備されたプログラムによってロボットのように動作する「サイバニック自律制御」が機能します。また、HAL®の質量・慣性モーメント・粘性摩擦等の機械インピーダンスを補償し、装着感に関する物理パラメータを任意に調整することができるサイバニックインピーダンス制御も組み込まれています。目的に応じて、これらの制御を自在に組み合わせたサイバニックハイブリッド制御を構成できることがHAL®の大きな特徴となります。

 

0101010_001.png

図1 HAL®の動作原理

 

 

 

0101010_002.png

図2 HAL®の制御方法

 

※1.筋紡錘

 筋肉の内部の紡錘型の筋繊維にらせん状に巻き付いている感覚受容器です。筋肉の長さや張力に応じて神経伝達物質が生じるため関節の角度や身体の姿勢や筋肉が発揮している力などの身体の内部の感覚を起こします。

 

※2.求心性ニューロン

 末梢の感覚受容器からの刺激を脊髄や脳など中枢に伝達する知覚神経のニューロンです。

 

(3) HAL®の医療機器認証/承認と保険収載のプロセス

<EU>

 スウェーデンのカロリンスカ研究所のダンドリード病院で急性期・回復期を対象にした脳卒中患者に対してHAL®の臨床試験が実施され、歩行機能の他、さまざまな身体機能の改善が認められています。また、ドイツのBG RCI(公的労災保険組合)の傘下のベルクマンスハイル大学病院では、外傷性の麻痺患者(主に脊髄損傷患者)に対してHAL®による集中的な治療を実施し、優れた歩行機能改善を実証しております(※)。

 上記のような取り組みにより、HAL®は国内外の医療機関で実証された臨床データによって身体機能改善と臨床的な安全性が確かめられ、ロボット治療機器として世界で初めてEUにおける医療機器認証(CEマーキング)を取得しました。なお、適用疾患の範囲は脳・神経・筋系の疾患(具体的には、脳卒中・脊髄損傷に起因する運動麻痺、廃用、進行性疾患など)となっております。医療機器としての認証はEU圏内で効力を有するため、認証規制面でのプロセスは既にクリアしております。今後は欧州各国での各種保険適用のプロセスを順次進める予定です。

 ドイツにおいては、HAL®によるサイバニクス治療に対して、DGUV(ドイツ法的損害保険)により公的労災保険の適用を受けることになりました。2013年8月より適用された当該公的労災保険での治療や臨床試験における臨床データを収集・蓄積して、新たに公的医療保険への適用を目指して、2015年10月にはInEK(ドイツ病院医療報酬制度協会)に対して急性期から回復期に相当する期間のすべての対麻痺患者に対する診療報酬に関する申請を提出するとともに、G-BA(ドイツ連邦合同委員会)に対して急性期から回復期に相当する期間を終えたすべての対麻痺患者に対する診療報酬に関する申請手続きを進めております。

 なお、HAL®は人種や民族により安全性や有効性に関する差異がでにくいという特徴があります。また、非侵襲でリスクレベルも高くないため、各国の各種保険制度にはほぼ共通の臨床データを利用することができます。したがって、高レベルの臨床データを蓄積することで、その後の展開(ドイツ国内だけでなくEU圏内の各種保険適用)を迅速に進めることができるようになります。

 

※ 関連する主な学術論文は、下記の通りです。

・“Locomotion training using voluntary driven exoskeleton (HAL) in acute incomplete SCI” Neurology (2014)

・“Voluntary driven exoskeleton as a new tool for rehabilitation in chronic spinal cord injury — A pilot study” The Spine Journal (2014)

・“Gait training early after stroke with a new exoskeleton — the hybrid assistive limb: a study of safety and feasibility” Journal of Neuro Engineering and Rehabilitation (2014)

・“The Effectiveness and Safety of Exoskeletons as Assistive and Rehabilitation Devices in the Treatment of Neurologic Gait Disorders in Patients with Spinal Cord Injury: A Systematic Review” Global Spine Journal (2016)

・“Against the odds: what to expect in rehabilitation of chronic spinal cord injury with a neurologically controlled Hybrid Assistive Limb exoskeleton. A subgroup analysis of 55 patients according to age and lesion level”Neurosurgical Focus (2017)

 

 

<米国>

 米国での医療機器承認については、2014年11月よりFDA(米国食品医薬品局)に対する申請手続きを進めております。当社は、医療用HAL®の革新性に関して、他に類のない新しいロボット治療機器であることを識別可能な形式での承認に向け、FDAと協議を行なっており、米国における各種保険適用等、承認取得後の事業展開を見据え、引き続き戦略的に推進しております。

 

<日本>

 筑波大学附属病院で行われた「運動器不安定症患者およびその基礎疾患を有する患者に対する Hybrid Assistive Limb (HAL®)装着による運動機能改善効果の探索的研究(UMIN試験ID:UMIN000002969)」により、機能回復が一定水準に達した脳卒中、脊髄損傷、神経筋疾患、運動器疾患等の患者に対して有意な歩行機能の改善が認められており、現在も臨床研究を進めております(※1)。本臨床データ等に基づき作成されたプロトコルによって、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による治験実施許可が得られ、2013年3月より国立病院機構新潟病院の中島孝医師を中心に、希少性難治性の神経・筋難病疾患の患者に対して、厚生労働省の厚生科学研究費補助金による医師主導治験が実施されました。また医療用HAL®(下肢タイプ)は2014年12月には希少疾病用医療機器の厚生労働大臣指定を受け、製造販売承認申請後の優先審査対象になりました。2015年3月に医療用HAL®(下肢タイプ)について、筋ジストロフィーやALS等(※2)の希少性難治性の神経・筋難病疾患に対する「新医療機器」としての製造販売承認申請を行い、2015年11月に厚生労働省より医療機器として製造販売承認を取得し、2016年1月に世界で初めて公的医療保険適用が決定しました。2016年9月より神経・筋難病疾患の患者に対する公的医療保険による診療が開始されています。また、2014年9月より対象疾患を希少性難治性の脊髄疾患に適用拡大して医師主導多施設共同治験が実施されています。

 今後は脳卒中や脊髄損傷などへの適用範囲の拡大を図り、臨床研究を進め、さらに医療保険収載のプロセスについても、医療機器承認の範囲拡大と平行してまいります。2016年9月より脳卒中患者を対象とした医師主導治験が実施されています。

 

※1.主な学術論文は、下記の通りです。

・“Pilot study of locomotion improvement using hybrid assistive limb in chronic stroke patients” BMC Neurology (2013)

・“Feasibility of rehabilitation training with a newly developed wearable robot for patients with limited mobility” Archives of Physical Medicine and Rehabilitation (2013)

・“Gait training of subacute stroke patients using a hybrid assistive limb: a pilot study”

NeuroRehabilitation (2017)

 

※2.医療機器製造販売承認申請の対象となった希少性神経・筋難病疾患は、下記の通りです。

脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、遠位型ミオパチー、封入体筋炎(sIBM)、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー

 

(4) 当社グループ製品の内容

 当社グループでは、多様な技術分野において製品開発を推進しておりますが、現時点での当社グループの事業はHAL®が中心となっています。HAL®は、その使用目的別に、①医療分野での患者の身体機能改善/機能再生を目的としたロボット治療機器、②介護福祉分野での自立動作支援を目的とした福祉機器や生活支援機器、③介護施設や建設・工場など重作業現場での作業者に対する作業支援機器などとして、人が装着して活用することで様々な用途展開を可能とするものです。HAL®以外には、AIを搭載した搬送ロボットやクリーニングロボットを製品化しています。また、病気を未然に防ぐための、手のひらサイズの動脈硬化度・心電計であるバイタルセンサーなどの開発を行っています。

 

(5) 当社グループの事業系統図

 以上に述べた事項を、以下の事業系統図に示します。なお、当社グループのセグメントはロボット関連事業のみの単一セグメントであります。

 

0101010_003.png

 

 HAL®を製品として出荷するために、研究開発の手順から製造・管理に至るまで、高品質の研究開発・製造・管理体制を整備しつつ、①専門家ユーザー(利用施設:医療機関、介護福祉施設、企業等)向けに当社機器のレンタル・リース販売及び保守サービスを提供し、更に②エンドユーザー(患者等)向けにサイバニクス治療およびトレーニングサービスの提供を行っております。

 

4【関係会社の状況】

2017年3月31日現在

 

名称

所在

資本金

主要な事業の内容

議決権の所有

(又は被所有)

割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

(海外)

 

 

 

 

 

Cyberdyne Care

Robotics GmbH

ドイツNRW州

ボーフム市

EUR 25,000

HAL®を利用した

機能改善治療

(サイバニクス治療)

サービス事業

75.1

HAL®の賃貸借

資金の貸付

役員の兼任 2名

CYBERDYNE USA Inc.

アメリカ

合衆国

ワシントン州

100,000米ドル

米国における当社事業の統括・推進

100.0

 

役員の兼任 1名

 

(国内)

 

 

 

 

 

鈴鹿ロボケアセンター

株式会社

三重県

鈴鹿市

3,000千円

HAL®を活用した

トレーニング事業

100.0

HAL®の賃貸借

資金の貸付

役員の兼任 1名

湘南ロボケアセンター

株式会社

神奈川県

藤沢市

3,000千円

HAL®を活用した

トレーニング事業

100.0

HAL®の賃貸借

資金の貸付

役員の兼任 1名

大分ロボケアセンター

株式会社

大分県

別府市

3,000千円

HAL®を利用した

トレーニング事業

100.0

HAL®の賃貸借

資金の貸付

役員の兼任 1名

(注) 有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 当社グループの事業は単一事業であるため、グループ全体での従業員数を記載しております。

2017年3月31日現在

 

従業員数(名)

71〔94〕

(注)1.従業員数は就業人員であり、正社員及び出向社員の人数です。

2.従業員数欄の〔外書〕は、臨時従業員(契約社員及びパート)の年間の平均人員であります。

 

(2)提出会社の状況

2017年3月31日現在

 

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

61〔61〕

39.5

4.5

6,464

(注)1.従業員数は就業人員であり、正社員及び出向社員の人数です。

2.従業員数欄の〔外書〕は、臨時従業員(契約社員及びパート)の年間の平均人員であります。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4.当社は単一事業分野において事業を行っているため、従業員数は全社共通としております。

 

(3)労働組合の状況

 労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円滑な関係にあり特記すべき事項はありません。