第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、本書提出日(2025年6月25日)現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社の経営の基本方針は、中古住宅再生事業を通じ良質な住まいを提供し続けることで社会に貢献していく、という理念に立ち、お客様に満足して頂ける住まいを提供し、社会的に信頼される企業であり続けることであります。

 これらを実現していくために、商品の品質向上を図っていくとともに法令遵守を徹底し、経営体制の一層の強化を目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社は、2025年3月期から2027年3月期までの第3次中期経営計画において、資本効率性の向上と財務健全性の維持を両立させるため、自己資本利益率(ROE)を12%以上、かつ自己資本比率を30%以上とすることを目標にしております。また、累進配当制度による安定的かつ継続的な配当を実施し、株主還元の充実に努めてまいります。

 

(3)経営環境及び経営戦略の現状と見通し

 当社が属する中古住宅流通市場においては、中古住宅の取引件数は年々増加しております。中古住宅はサステナビリティの観点でも注目されており、今後もますますの市場成長が期待されます。

 このような市場環境の下で当社は、組織の効率化と人材の育成により生産性を向上させ、居住用物件の収益力強化を図ってまいります。収益用物件につきましては、蓄積してきたノウハウを活かして取引規模の拡大を図ってまいります。また、当事業年度から開始した高価格帯マンションの販売やリゾート事業についても本格的に取り組んでまいります。

 次期の業績見通しにつきましては、事業環境は先行き不透明な状況ながら、人件費や原材料の価格高騰の影響により新築マンション及び新築戸建の販売価格は高い水準を維持すると考えられ、引き続き中古住宅への需要は根強いと予想されます。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

 第3次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の第1期にあたる2025年3月期においては、売上高は当初の計画を達成いたしましたが、利益面では未達となりました。期首から課題であった長期保有物件の削減を進めてきたことが主な要因でありますが、その結果、長期保有物件の削減は大きく進展いたしました。

 計画2期目となる2026年3月期においては、より幅広い顧客層に訴求する商品ラインナップを展開するとともに、以下の重点課題に取り組み、持続可能な社会の形成に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

① 中古住宅再生事業

 当社が属する中古住宅流通市場においては、取引件数は堅調に推移しており、今後もさらなる成長が期待されます。その一方で、取引価格の上昇や為替・金利の動向など、外部環境の変化には十分な注意が必要です。

 こうした市場環境のもと、当社はこれまで手薄だった東京23区内の物件を中心に、比較的単価の高い物件の取扱いを強化することで、より多様な顧客ニーズに対応してまいります。また、新規人材の獲得・育成を進めて生産性の向上を目指すとともに、物件の事業期間を短縮し回転率を高めることで、事業規模の拡大と収益力の強化を図ってまいります。これらの施策により、年間販売件数1,000件体制の早期構築を目指してまいります。

 

② 収益再販事業及びその他の事業

 収益再販事業は順調に成長を続けておりますが、取扱い物件の大型化を進めることで、さらなる事業規模の拡大を図ってまいります。加えて、新たに取組みを開始したリゾート事業においては、貸別荘の運営等を通じて関連ノウハウの蓄積に努めてまいります。

 

 

③ 品質向上と商品企画の取り組み

 当社物件の競争力を維持向上させるため、商品企画の工夫と品質向上に努めて、魅力ある住宅を提供してまいります。また、アフターサービスの充実により、顧客満足度のさらなる向上を図ってまいります。

 

④ コンプライアンス体制の強化

 企業価値の最大化には、経営の健全性・透明性・客観性の確保が不可欠です。社内諸規程や業務マニュアルの整備、社員教育の充実、定期的な内部監査の実施を通じて内部統制の有効性を確保し、複雑化・多様化するリスクを適切に管理できる体制の整備に努めてまいります。

 

⑤ サステナビリティ経営の推進

 「中古住宅再生事業を通じて良質な住まいを提供し、社会に貢献する」という経営理念のもと、快適で安心して暮らせる住まいを提供することで、豊かな社会の実現を目指します。ステークホルダーの皆様とともに、持続可能な社会の形成に取り組んでまいります。

 

⑥ 株主価値向上に向けた財務・資本政策

 自己資本比率30%を下限とする財務レバレッジの活用により、財務健全性を維持しつつ、自己資本利益率(ROE)の向上を図ってまいります。

 また、株主還元については累進配当の実施を基本方針とし、継続的かつ安定的な配当を実施してまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社では、中古住宅再生事業を通じて良質な住まいを提供し続けることで社会に貢献していく、という経営理念のもと、快適で安心して暮らせる住まいのご提供を通じて豊かな社会の実現に貢献することが、私たちに期待されているサステナビリティであると考えております。そのため当社は、ステークホルダーと共に、持続可能な社会の形成と持続的な企業価値の向上を目指しております。

 

(2)具体的な取組

<ガバナンス>

 当社は、事業環境の変化に対応した迅速な意思決定を重視し、経営の効率性を高めるとともに、永続的な事業発展と持続的な企業価値の向上を実現し、企業を取り巻く株主、顧客、取引先、従業員等の利害関係者から信頼が得られるよう、経営の健全性、透明性の確保並びにコンプライアンスの徹底に磨きをかけ、最大限のコーポレート・ガバナンスが発揮されるよう努めてまいります。

 当社におけるコーポレート・ガバナンスの体制は、経営の意思決定機関としての取締役会と監査機関としての監査等委員会を中心とした監査等委員会設置会社となっており、その概要は次の図のとおりであります。

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 サステナビリティに関する重要な課題への取組や進捗管理等については、経営会議で審議されたうえで取締役会に報告され、監査等委員会による監督も実行されております。

 

<リスク管理>

 人財戦略の推進にあたって、人財育成・組織風土の課題は企業活動に重大な影響を及ぼす経営リスクの一つであると認識し、以下をリスクとして特定したうえで、人事を中心に関連部署と連携して、リスク低減に努めております。

①必要な人財獲得及び能力開発

・マネジメント人財、高度人財の獲得及び育成ができないリスク

・必要な能力・スキルを獲得し、変化に対応できる人材を育成できないことによる事業推進力の低下

②職場環境による生産性低下

・社員のモラルの低下による業務効率の低下、倫理観の欠如等による信頼の低下

・ハラスメントの発生、心身の健康への悪影響などによるモチベーションやチーム力の低下

 

<戦略>

当社は、中長期的な企業価値の向上及び持続的な成長に向けて、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、主体的に活躍できる職場環境の構築に力を注いでおります。

 

①人材育成方針

社員の持続的な成長を促進するため、能力主義に基づいた人材育成に注力しております。

採用活動では、性別や国籍、入社経路にとらわれず、実力本位の公平な評価を行い採用しております。また、採用後の人材育成においては、OJTを中心とした実践的な研修に加え、各階層・職種に応じた体系的な教育研修プログラムを整備しております。新入社員や若手社員向けのスキルアップ研修、管理職向けのマネジメント研修等、階層ごとに育成プログラムを設け、社員の個々のキャリア形成と成長をサポートしております。

加えて、専門性の深化を図るため、宅地建物取引士等の業務関連資格の取得を奨励し、取得に関する受験費用の補助や取得後の報奨金制度を整備しております。また、外部講師を招いた勉強会やセミナーを定期的に開催することで、最新の業界知識や技術を継続的に学べる環境を整えております。

 

②社内環境整備方針

社員の多様な価値観を尊重し、性別・国籍・経歴を問わず能力や成果に基づく公正な人事制度を運用しております。これらの取組みを通じて、様々なバックグランドを持つ社員が活躍できる環境を整備し、組織の柔軟性と創造性を向上させることで企業価値の最大化を図っております。

また、社員が高い生産性と充実した職業生活を両立できるよう、健康経営及び働き方改革の推進にも力をいれております。「健康経営優良法人」認定を継続的に取得し、健康診断やストレスチェックを充実させる等、社員が心身ともに健康を維持できる環境を整備しています。加えて、ワークライフバランスの充実のため、フレックスタイム制度を導入し、多様なライフスタイルや働き方のニーズに対応しております。

また、社員の倫理観やモラル向上を促すために、定期的なコンプライアンス研修やハラスメント防止研修を実施しております。これらの研修を通じ、職場における相互尊重や適切な行動基準を浸透させ、働きやすく健全な職場環境の維持に努めております。

 

<指標及び目標>

当社では、人的資本の管理と評価のために明確で具体的な指標と目標を設定しております。多様性推進に関しては、女性正社員比率を重要な指標とし、2024年3月末時点での26.2%から、毎年5%以上増加させることを具体的な目標として掲げております。また、女性管理職の登用を重要な課題として捉え、少なくとも1名以上の女性管理職を新たに登用することを目標としております。

働き方改革については、従業員の労働時間を適正化し、現在の水準を維持・向上させることで、社員が十分な休息を取りながら高い生産性を発揮できるよう努めております。

資格取得支援に関しては、宅地建物取引士をはじめとする業務に直結する資格の取得を積極的に支援し、資格取得者数の増加を指標として定めております。具体的には、資格取得支援制度を強化し、受験費用の補助や取得後の報奨制度を通じて、社員が積極的に専門性を高められる環境を提供しております。

健康経営に関しても具体的な指標を定めており、「健康経営優良法人」認定の継続取得を目標としております。具体的には、社員参加型の健康イベントの定期開催、健康診断やストレスチェックの受診率の維持・向上を目指し、社員一人ひとりが健康的に働ける職場づくりを推進しております。

これらの指標及び目標を着実に推進することで、人的資本の質的向上を実現し、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 以下には、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資判断上重要と考えられる事項について、投資家に対する積極的情報開示の観点から記載しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に対する投資判断は、本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があると考えます。また、以下の記載は、当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日(2025年6月25日)現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる場合があります。

 

-当社の事業に関連するリスクについて-

 

① 不動産市況及び税制等の動向と当社の業績について

 当社の主たる事業である中古住宅再生事業においては、一般に、景況感が悪化し不動産市況が低迷した場合には計画通りに物件の販売ができず販売価格の引下げが必要となる等のリスクが生じる一方で、中古不動産の仕入価格は下落する傾向があります。他方、不動産市況が活況である際には在庫不動産の回転が早期化することや販売価格が上昇する等のメリットが生じる一方で、中古不動産の仕入価格が高騰する可能性があります。また、消費税率の改定や金利の変動が不動産を購入する顧客層の購買動機に影響を及ぼし、当社の物件販売にも影響を及ぼす可能性があります。このように、当社の業績は景気動向や金利動向及び不動産市況の影響を受ける特徴があり、過年度の業績推移は、将来の業績を予測するうえで、必ずしも適切な指標とはならないと考えられます。

 

② 棚卸資産の長期在庫について

 当社は、各地域での需要予測、近隣地域環境、お客様のニーズ等を慎重に分析調査を行ったうえで、物件の仕入、リフォーム、販売を行っております。しかし、不動産市況の悪化等によって物件の販売が滞った場合や、リフォーム資材の流通不安定化等により工期の遅延が発生して早期の販売活動ができなくなった場合には、物件保有期間の長期化に繋がる可能性があります。当社のビジネスモデルとして、長期在庫となった場合は販売価格等を見直しての売却処分や棚卸資産の評価損処理が必要となる場合があるほか、滞留在庫の増加により有利子負債が増加する等、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ リフォーム工事及び資材の調達について

 当社では、取得した中古住宅のリフォーム工事を外注することによって人件費等の増加を抑制し、経費の軽減効果を見込んでおります。しかしながら、外注先を十分に確保できなかった場合や外注先の経営状態の悪化、大工の不足等により工期の遅延が発生した場合には商品化が遅れ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、リフォームに用いる資材は外部調達により仕入れておりますが、国内外の動向により原材料・資材の価格が上昇し価格へ転嫁することが難しい場合や、国内外において物流が滞るような事態となり資材供給に遅延や不足が発生することにより商品化が遅れることとなった場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 競合他社の参入について

 中古不動産の売買自体は、継続的に業として行う場合に宅地建物取引業免許の取得が必要となるほかは新規参入に特段の制約はなく、また、競売は各地方裁判所で行なわれる公的な制度であり、競売への応札に特別な許認可や登録等は必要ありません。したがって、今後、競合他社の参入状況によっては、物件の仕入や販売において価格競争等が生じる、あるいは競売への応札者が増加し競売での落札数が減少するまたは落札価格が上昇する等の事象が生じた結果、仕入や販売の件数が減少した場合、また仕入価格の上昇や販売価格の下落によって利益率が低下した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 有利子負債への依存と資金調達について

 当社では、物件の仕入資金を主として金融機関からの借入によって調達しているため、有利子負債への依存度は比較的高い水準にあります。そのため、市場金利の上昇は当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社では財務状態を良好に保つため過度なレバレッジ投資を制限する等、自己資本の維持に努めておりますが、財務状態の著しい悪化等により当社の信用力が低下した場合は資金調達に制約を受けることとなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑥ 不動産競売における明渡しについて

 当社では、不動産競売による物件仕入を行っております。当社が競売により落札取得した物件に占有者がいる場合には、当該物件の明渡し業務が発生する場合があります。民事執行法では、買受人が簡易かつ迅速に競売物件の引渡しを受けられるように引渡命令の手続きが定められておりますが、一定期間を経過した場合は明渡し訴訟の提起が必要になります。この場合には、物件の明渡し期間が長期化することによって当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、各地方裁判所の引渡命令や明渡し訴訟の手続きが何らかの事情により遅滞ないし延期された場合にも、物件の明渡し期間が長期化し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 固定資産の減損について

 当社は、その他不動産事業として賃貸事業を営んでおります。当事業で保有している賃貸用不動産について、地価の下落等の影響により固定資産の減損損失を計上することとなった場合には、当社の業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

-当社事業に関連する諸制度に関するリスクについて-

 

⑧ 法的規制や免許・許認可事項について

 当社の事業は、宅地建物取引業法をはじめ各種法令による規制を受けております。当社では法令遵守の徹底を図るとともに、法令の改廃等の情報を日頃より収集して社内に伝達しておりますが、今後これらの関係法規の改廃や、新たな法的規制が生じた場合には当社の事業活動において制限を受ける可能性があり、その場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、宅地建物取引業免許は当社の主要な事業活動に必須の免許であります。現時点において当該免許の取消事由や更新欠格事由は発生しておりませんが、将来何等かの理由により免許の取消や更新欠格による失効等があった場合は当社の事業活動に大きく支障をきたし、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 不動産登記に公信力がないことについて

 日本の不動産登記には公信力(公示を信頼して取引した者には、公示どおりの権利状態があったのと同様の保護を与える力)がないことから、登記を信頼して取引した場合でも保護されない場合があります。また登記から事前に不動産に係る権利義務を知りえない場合があります。したがって、当社が取得した権利が第三者の権利や行政法規等により制限を受け、あるいは第三者の権利を侵害していることが後になって判明する可能性があります。当社は、仕入に際して登記内容を確認する他、物件の権利関係に関する情報を可能な限り入手するようにしておりますが、現実にこのような事態が発生した場合には、当社の財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 契約不適合責任について

 当社が物件を仕入れた後、当該物件に契約不適合が見つかった場合、必ずしも物件売主に対してその責任を追及できるとは限らず、重大な契約不適合があった場合には、その修復のため追加費用の負担が発生し、当社の業績に影響が生じる可能性があります。また、当社が販売した物件について重大な契約不適合があった場合には、それに起因する契約解除や損害賠償請求、契約不適合部分の修復のための費用が発生するとともに、当社の信用が失墜する事態が考えられ、その場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 訴訟等について

 当社は、事業活動の中で生じる各業務について適法かつ適正な業務処理を行っており、現時点において業績に影響を及ぼす重要な訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、業務手続に適法性や適正性を欠いた場合にはクレーム等を受け、それらに起因する訴訟その他の請求が発生する可能性があります。このような訴訟・係争ないしは請求が生じることのないようマニュアルや業務フローを定め、社内体制の整備に努めてはおりますが、今後そうした事態が発生した場合、その内容及び結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 個人情報等の管理について

 当社は、お客様や取引先等の個人情報や重要な経営情報等の内部情報管理につきましては、社内規程を定めて社員への教育・周知に努めるとともに、情報システムのセキュリティ対策の強化にも努めております。しかしながら、万が一、当社が保有する個人情報等が何等かの理由で社外に漏えいしてしまった場合には、当社の信用が失墜し、損害賠償による損失が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

-その他のリスク-

 

⑬ 自然災害、人為的災害及び大規模な疾病の流行等の不測の事態について

 当社では、広域にわたって事業を展開することにより、特定エリアで発生する自然災害や火災、事件、暴動等(以下、「災害事故等」という。)によるリスクの分散を図っております。また、原則として、当社が保有する不動産物件については火災保険等を付保して、災害事故等に備えております。しかしながら、万が一、甚大な災害事故等が発生した際に、当社が保有している物件につき滅失、劣化または毀損等が発生し、保険でカバーできない場合や、消費者の購入マインドが著しく低下した場合には、当社の業績に影響する可能性があります。また、大規模な疾病の流行等の不測の事態が起きた場合には、被害の発生状況及び行政当局の指示・要請によっては、営業活動の自粛や事業所の休業等の措置が必要となり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、各種経済対策の効果により雇用・所得環境の改善が進み、インバウンド需要の増加も相まって、国内景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、物価上昇や為替・金利の変動、米国の関税政策の動向等の影響により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 当社が属する中古住宅流通市場においては、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、2025年3月度における首都圏中古マンションの成約件数は4,991件(前年同月比31.0%増)となり、5ヶ月連続で前年同月を上回りました。また、成約価格は4,945万円(同2.6%増)となり、依然として上昇傾向が続いております。

 このような市場環境のもと、当社の仕入活動におきましては、住宅需要の高いエリアを中心に、収益性を重視した仕入を強化した結果、第2四半期以降に仕入件数が増加し、当事業年度における居住用物件の仕入件数は896件(前事業年度比8.2%増)となりました。第2四半期以降の仕入件数の増加は、次期に向けた収益性の高い物件の確保にも寄与しております。

 販売活動におきましては、長期保有物件の価格見直しによる販売促進策が奏功し、当第4四半期会計期間の販売件数は306件(前年同四半期比19.1%増)と増加しました。その結果、当事業年度における居住用物件の販売件数は928件(前事業年度比6.9%増)となりました。平均販売単価は、市場価格の上昇を受けて26,454千円(同3.9%増)となっております。また、収益用物件の販売活動も好調に推移し、当事業年度においては一棟マンション10棟を売却いたしました。収益用物件については、再生及び販売に関するノウハウの蓄積により、取引規模が拡大しつつあります。

 利益面においては、長期保有物件の販売価格見直しの影響により利益が減少し、当事業年度の売上総利益率は14.0%と、前事業年度の16.4%から低下いたしました。

 以上の結果、当事業年度の売上高は30,502百万円(前事業年度比11.6%増)、営業利益は1,487百万円(同26.1%減)、経常利益は1,239百万円(同32.9%減)、当期純利益は880百万円(同30.4%減)となりました。

 事業別の状況は次のとおりであります。

<中古住宅再生事業>

 中古住宅再生事業におきましては、居住用物件の販売による売上が24,549百万円、収益用一棟マンションを含む収益用物件の販売による売上が5,468百万円となり、物件販売による売上高は30,018百万円となりました。また、収益用物件の保有期間中の賃貸収入が341百万円となりました。その結果、当事業年度における中古住宅再生事業の売上高は30,421百万円(前事業年度比12.2%増)となりました。

<その他不動産事業>

 その他不動産事業におきましては、賃貸用不動産の賃貸収入等により、当事業年度におけるその他不動産事業の売上高は80百万円(前事業年度比60.6%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度に比べて326百万円増加

し、6,473百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の営業活動の結果、使用した資金は1,600百万円(前年同期は4,549百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,239百万円、支払利息が227百万円であった一方で、棚卸資産が2,154百万円増加し、利息を259百万円、法人税等を474百万円支出したことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の投資活動の結果、使用した資金は1,616百万円(前年同期は1,246百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得により1,509百万円を支出したことによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動の結果、獲得した資金は3,543百万円(前年同期は1,497百万円の使用)となりました。これは主に、新規の短期借入金13,878百万円、長期借入金6,395百万円を実行した一方で、短期借入金12,371百万円、長期借入金3,865百万円を返済し、配当金の支払いにより492百万円を支出したことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

 当事業年度の仕入実績を事業別に示すと、次のとおりであります。

事業別

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

仕入件数

仕入高

(千円)

中古住宅再生事業

居住用物件

896

17,523,798

29.4

収益用物件

9

5,639,705

744.6

小計

905

23,163,504

63.0

その他不動産事業

合計

905

23,163,504

63.0

(注)販売用不動産の仕入実態を明確にするため、上記仕入高には販売用不動産本体価格を記載し、リフォーム資材を含む仕入に係る付随費用等は除いております。

 

c.受注実績

 当社は受注活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当事業年度の販売実績を事業別に示すと、次のとおりであります。

事業別

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

(%)

販売件数

売上高

(千円)

中古住宅再生事業

居住用物件

928

24,549,534

11.1

収益用物件

14

5,468,735

17.1

その他収入

-

403,487

16.9

小計

942

30,421,756

12.2

その他不動産事業

-

80,956

△60.6

合計

942

30,502,712

11.6

(注)1.販売実績を明確に表示するため、中古住宅再生事業の売上高は、居住用物件、収益用物件及びその他収入を区分して表示しております。なお、その他収入は短期賃料収入、固定資産税及び都市計画税精算金による売上であります。

2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 財政状態の分析

 当事業年度末における総資産は、31,285百万円となり、前事業年度末の26,851百万円から4,433百万円の増加となりました。

 (流動資産)

 当事業年度末における流動資産は、29,192百万円となり、前事業年度末の25,412百万円から3,780百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が384百万円、販売用不動産が3,116百万円、前渡金が150百万円増加したことによります。

 (固定資産)

 当事業年度末における固定資産は、2,092百万円となり、前事業年度末の1,439百万円から653百万円の増加となりました。これは主に、有形固定資産が607百万円増加したことによります。

 (流動負債)

 当事業年度末における流動負債は、9,980百万円となり、前事業年度末の8,475百万円から1,504百万円の増加となりました。これは主に、短期借入金が1,507百万円増加したことによります。

 (固定負債)

 当事業年度末における固定負債は、9,811百万円となり、前事業年度末の7,292百万円から2,518百万円の増加となりました。これは主に、長期借入金が2,506百万円増加したことによります。

 (純資産)

 当事業年度末における純資産は、11,493百万円となり、前事業年度末の11,082百万円から410百万円の増加となりました。これは主に、利益剰余金が387百万円増加したことによります。

 

 

③ 経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度の売上高は、30,502百万円となり、前事業年度の27,321百万円から3,180百万円の増加(前事業年度比11.6%増)となりました。その主な要因は、居住用物件の販売による売上が2,447百万円増加したことによります。

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、26,238百万円となり、前事業年度の22,851百万円から3,387百万円の増加(前事業年度比14.8%増)となりました。その主な要因は、売上高の増加及び仕入価格・リフォーム費用の上昇に伴うものであります。

 以上の結果により、当事業年度の売上総利益は、4,263百万円(前事業年度比4.6%減)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、2,776百万円となり、前事業年度の2,457百万円から319百万円の増加(前事業年度比13.0%増)となりました。その主な要因は、売上高の増加に伴う仲介手数料の増加や人件費が増加したことによります。

 以上の結果により、当事業年度の営業利益は、1,487百万円(前事業年度比26.1%減)となりました。

(営業外損益、経常利益)

 当事業年度の営業外収益は、受取利息等の計上により、11百万円となりました。また、当事業年度の営業外費用は、支払利息等の計上により、260百万円となりました。

 以上の結果により、当事業年度の経常利益は、1,239百万円(前事業年度比32.9%減)となりました。

(当期純利益)

 当事業年度の当期純利益は、880百万円となり、前事業年度の1,264百万円から384百万円の減少(前事業年度比30.4%減)となりました。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(資金需要)

 当社の資金需要は、主として販売用不動産の仕入のための仕入資金があります。また、設備資金としては賃貸用不動産の購入資金があります。

(財務政策)

 販売用不動産の仕入資金は、主に物件毎に短期借入金で調達しておりますが、機動的かつ効率的に調達するため、各金融機関と当座貸越やコミットメントラインを活用しております。

 設備資金につきましては、融資条件等を慎重に比較検討のうえ、案件毎に借入先金融機関を決定しております。賃貸用不動産の購入資金は、原則として長期借入金または社債(私募債)で調達しております。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗情報

 当社は、2025年3月期から2027年3月期までの第3次中期経営計画において、資本効率性の向上と財務健全性維持を両立させるため、自己資本利益率(ROE)を12%以上、自己資本比率を30%以上とすることを目標にしております。

計画初年度である当事業年度におきましては、ROEは7.8%、自己資本比率は36.6%となり、ROEの改善が課題となっております。翌事業年度は中古住宅再生事業の規模拡大と収益力の強化を図り、ROEの向上に努めてまいります。

 

5【重要な契約等】

 

 特約が付された金銭消費貸借契約の締結

銀行名

契約締結日

弁済期限

担保の内容

期末残高

(千円)

財務制限条項

株式会社

三井住友銀行

2024/6/21

2049/6/21

建物・土地

679,003

主な財務制限条項は以下のとおりであります。

※以下の各事由に一つでも該当しないこと。

 

1.インタレストカバレッジレシオ1以下

2.2期連続当期赤字

3.債務超過

2025/3/28

2030/3/28

建物・土地

420,000

2025/3/31

2030/3/29

建物・土地

300,000

2024/12/26

2030/2/28

建物・土地

1,216,000

株式会社

みずほ銀行

2024/6/28

2029/6/30

建物・土地

522,505

主な財務制限条項は以下のとおりであります。

 

1.純資産の部の金額を、前年同期比80%以上に維持(単体/期末(年度))

2.経常損益2期連続赤字回避(単体/期末(年度))

 3.税引後当期損益2期連続赤字回避(単体/期末(年度))

2024/10/3

2029/9/30

建物・土地

532,816

2025/1/31

2030/1/31

建物・土地

1,066,160

※なお、2024年4月1日前に締結された契約については、記載を省略しております。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。