当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中において将来について記載した事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は、「人と地球に優しい住環境を創ることで社会に貢献」することを経営理念としております。
経営の基本方針を遂行し、サービスを持続するためには、スケールメリットを活かせる一定規模以上の売上高と、高い収益性の維持が当社経営に不可欠と認識しております。すでに現場発泡ウレタン断熱施工の実績では日本トップとなっておりますが、さらに高い売上高を目指します。
2024年度から2026年度における収益性の目標については、売上高の年平均成長率13.1%、経常利益の年平均成長率15.6%、サステナブル成長率10%、営業利益率10%、自己資本利益率(ROE)20%、配当方針としては配当性向50%以上とし、かつ累進配当制度を導入しております。
当社の2024年度から2026年度における経営成績・財政状態に関する見通しは、2024年2月14日に開示した「中期経営計画策定に関するお知らせ」及び、2025年2月7日に開示いたしました「中期経営計画の一部変更のお知らせ」に記載しており、その骨子は以下の通りです。
① 安定した3本柱の確立
当社の事業の中核を占める施工販売において、防水部門の早期黒字化と認知度の向上を背景とした事業規模の拡大を図り、戸建部門、建築物部門と並ぶ3本柱として確立します。
② 事業領域の拡大
事業領域の拡大を図るため、商品販売等の強化を進めます。特に原料販売は、認定施工店以外の施工業者にウレタン原料を販売するものであり、当社のメーカーとしての認知度向上と全国物流拠点の整備により、販売量の伸長に取り組んでまいります。
③ 成長と利益配分の好循環
当社の持続的な成長を通じてステークホルダーへの利益配分を実施いたします。株主の皆様には配当性向目標50%以上、かつ累進配当制度をベースとした配当による還元、当社の施工を請け負う認定施工店に対しては認定施工店支援費を通じた還元、そして当社は中長期の成長に向けた物流拠点(営業所)の整備、防水部門強化に向けた投資等を行ってまいります。
④ 業績目標およびKPI目標
上記(2)目標とする経営指標の通りです。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中において将来について記載した事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は、全社的なサステナブル経営を推進する目的のもと「ESG委員会」を設置しています。当委員会は、委員長である代表取締役社長をはじめ、ESGに関わる取締役・執行役員、その他関連する部門長で構成されており、気候変動リスク・機会が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討等を行うこととしています。当委員会での決定事項が重要であると判断された場合には、取締役会に提言・報告されます。その後、取締役会全メンバーで検討・審議の上、最終的な対応方針を決定しています。

① 気候変動への取り組み
当社では、将来の気候変動による事業活動への影響を把握するためシナリオ分析を実施しています。2024年度に実施したシナリオ分析においては、4℃シナリオならびに1.5℃シナリオの2つの将来世界観を設定し、2030・2050年時点における気候変動リスクおよび機会を識別・評価しています。そして、その中で重大な影響を及ぼす可能性があると判断した気候変動リスクおよび機会に対応すべく、当社では様々な取り組みを推進しています。
※気候変動シナリオの詳細は、
https://www.n-aqua.jp/ir/report.html
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
ⅰ.人的資本に対する考え方
当社は、引き続き国の環境政策に沿った良好な事業環境が期待されるなか、成長を加速させるための基盤強化を進めています。特に、強固な施工体制の構築と、デジタル技術を活用した業務効率化を推進することが、今後の競争力の向上において重要な役割を果たすと考えています。施工体制の中核を担う工務社員については、引き続き中途採用を中心に確保していますが、人材の多様性と競争力を高めるために、若年層を対象とした新卒採用やインターンシッププログラムの拡充にも取り組んでいます。また、建設業界の労働環境に対する課題意識を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスのさらなる改善を図るとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した働きやすい環境づくりを進めています。加えて、ITシステムやAI技術を導入し、業務プロセスの自動化や効率化を一層推進しています。これにより、社員一人ひとりが創造的で価値の高い業務に専念できる環境を整えています。その結果、労働生産性は向上を続け、重要ポストへの女性登用や外国人社員の活躍機会の増加といった成果が現れています。これらは、当社がめざす多様性と包摂性のある企業文化の醸成に寄与しています。さらに、性別や国籍、年齢、障がいの有無にかかわらず多様な人材の積極的な採用と活用を進めることで、新たな価値創出を図り、持続可能な事業成長を実現しています。当社は引き続き、持続可能な社会の実現に貢献しながら、あらゆるステークホルダーにとって価値のある企業であり続けることをめざします。
ⅱ.建設業界の変革と労働環境の進化
2019年に施行された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に基づき、建設業界では2024年4月から「労働時間の上限規制」が適用されました。これにより、長時間労働の是正や完全週休2日制の標準化が進められています。当社では、工務職に関し、法律施行に先駆けて、完全週休2日制を導入しており、2023年1月からは「土日休み」の運用に切り替えました。この取り組みは工事の稼働日数の減少につながる可能性がありましたが、効率的な施工計画の立案や平日の施工数向上により、稼働日数の減少を補完しています。また、これにより採用応募数が大幅に増加し、人材確保においても好影響をもたらしています。
さらに、働き方改革の一環として、社員の健康とワーク・ライフ・バランスを重視した取り組みを推進し、業界全体の労働環境の改善に貢献しています。これらの施策を通じて、当社は建設業界における持続可能な労働環境のモデルケースとなることをめざします。
ⅲ.技能実習生および特定技能生の受け入れ
当社では、技術や技能および知識の開発途上地域への移転を図り、地域の経済発展を担う「人づくり」に協力する技能実習制度に基づき、外国人技能実習生および特定技能生の受け入れを行っており、工務職として多くの方々が働いています。施工に必要な知識や用語に加え、施工に関わる心構えや安全面の重要さを教えた上で、技術指導者が現場で作業を見せながら指導します。また、孤独感や不便さを感じることがないよう、単独で営業所に配属になることはなく、社員寮で共同生活を送っています。さらに、監理団体との連絡も密に取りながら、きめ細かなサポートを行っています。
当社は、「ESG委員会」において、シナリオ分析を通した気候変動リスクの識別および定性・定量両面での評価を実施しています。評価にあたっては、インパクトの大きさや時間軸を基準に、気候変動リスクの重要性および優先度を決定しています。その結果、当社にとって重大な影響があると判断された気候変動リスクについては、「ESG委員会」が具体的な対応策や今後の方針を検討しています。そして、「ESG委員会」のほか「安全リスク管理委員会」や「コンプライアンス委員会」などの専門委員会を運営する各担当部署が連携し、気候変動を含めたすべてのリスクを総括的に議論したのち、取締役会に報告しています。その後、取締役会は全社的なリスクへの対応を決定し、各委員会に対して対応を指示しています。「ESG委員会」では取締役会からの指示を受け、具体的な対応を関連部門へ指示し、各部門において対策が講じられます。さらに、「ESG委員会」が定期的に対策状況をモニタリングすることにより、リスクの低減・回避に努めています。
① 気候変動課題を管理するための指標と目標
当社では、気候変動課題を管理するための指標をGHGとしており、2023年比で2030年までに26%の削減を目標としています。2024年の実績はScope1で795t-CO2、Scope2で222t-CO2でした。 また、経営理念に基づき当社だけでなくサプライチェーン全体における活動が地球に優しい住環境を作る上で重要と考え、サプライチェーン全体の排出量(Scope3)の定期的なモニタリングにも努めております。
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針を管理するための指標と目標に関する指標
ⅰ.女性管理職比率
当社の2024年末時点の女性管理職比率は14%であり、建設業平均の7.2%(2024年度、帝国データバンク調べ)を上回っておりますが、2028年までに20%をめざします。特に女性社員が多い営業事務職では、ITシステムを導入した業務の改善とともにキャリアパスを整備したことから、続々とロールモデルが生まれています。また、時短勤務制度をはじめとする仕事と家庭を両立できる仕組みも整備しています。
ⅱ.外国人・中途採用の管理職比率
当社の事業は国内売上高が大半を占めており、外国人従業員は全体の約19%です。しかし、原料調達を含むグローバルな取引が増加しており、その活躍の場が拡大しています。今後、外国籍の従業員の採用と管理職への昇進をさらに推進していく予定です。また、中途採用者の管理職割合は全体の半数以上を占めているため、具体的な目標は設けておりません。
当社が事業を継続していく上で、リスクとして考えられる事項のうち、主なものは以下のとおりです。なお、文中において将来について記載した事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の経営成績等に与える定量的な影響については、合理的に予見することが困難であると考えており、記載しておりません。
(1) 住宅建築市場の悪化
断熱工事に対する需要は、マクロ経済指標である新設住宅着工件数の影響を受けます。これまで当社は新設住宅着工件数が伸び悩む中でも、積極的な営業展開、事業の範囲の拡大などで、業績を拡大してまいりました。金融危機の発生、消費税等の増税、金利の上昇、感染症の発生などにより住宅建築市場が悪化した場合、当社の業績に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、今後においても、着実な成長を持続するために営業所の新設、施工能力の拡充、価格競争力の強化、建築物向け断熱施工の強化などの施策を実行していく所存です。
(2) 原料の調達環境の悪化
断熱施工に使用するウレタン原料の主成分は石油製品であります。従いまして原油価格の上昇や円安により原料価格が高騰した場合、当社の原料調達価格が上昇する可能性があります。また、原料メーカーが当社以外の断熱施工会社に安価な原料を供給するようになった場合、当社の価格競争力が低下する可能性があります。加えて、自然災害等の理由により、内外の原料メーカーからの調達が困難になり、施工に使用する原料が不足するという状況に陥った場合、工期に遅延が生じる可能性があります。このように、構造的な要因で長期にわたってこれらの事象が発生した場合には、当社の業績に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、当社は、原料メーカーとの協力関係を強化し、安定購買の継続、中核拠点に原料備蓄倉庫を設置したことにより、これらの事象が発生した場合でもリスクを最小限度に抑えてまいります。
(3) 素原料の調達環境の悪化
当社が委託製造しております硬質ウレタン原料は、国内外から素原料を調達して生産しており、下記の事象が複合的に発生した場合には、素原料価格が上昇し、当社の業績に悪影響を与える可能性があります。そのため、調達先を多様化することにより長期的、安定的な調達体制を構築することで、リスクを最小限に抑えております。
①原油・ナフサ・ベンゼン等の価格が高騰するとき
②海外から輸入する素原料に、内国産業の保護の観点からアンチダンピング(不当廉売)関税が発動され
るとき
③素原料の大半は海外から輸入していますので、為替レートが円安に進行するとき
④素原料メーカーの設備稼働率が減少する事象(定期修繕、災害・事故等)が発生した場合、世界的需
要・供給バランスに影響が出て、供給がタイトになるとき
(4) 委託加工先との契約
委託加工先の生産設備が災害・事故等により、稼働不能となって、当社が原料の供給を受けられなくなった場合、断熱工事の受注ができなくなりますので、当社の業績に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、当社は1社の委託加工先に依存することなく、6社の委託加工先と製造委託契約を締結しております。一部の委託加工先が生産を継続できない事象が発生した場合でも、業績に及ぼす影響を最小限に抑えております。
(5) 受注の伸びに対する施工体制の遅れ
当社が持続的な成長と競争力を維持するためには、施工人員の増強と強固な施工体制の構築が不可欠です。何らかの理由で工務社員の新規採用や認定施工店の拡大が困難になった場合、受注機会を逸し、当社の業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。これに対応するため、当社は新規採用の強化に加え、既存の認定施工店との関係を一層強化するとともに、認定施工店としての独立支援など、包括的な施工体制の強化に取り組んでいます。
(6) 高性能断熱材市場への新規参入
「アクアフォーム」は、硬質ウレタンフォーム以外の断熱材に比べ、相対的に高価格である一方、高い断熱性能を有しております。しかしながら、当社と同じ硬質ウレタンフォームを使用して性能等で優位性のある製品を供給する業者が現れた場合や、新しい素材を使用して優れた断熱性能を発揮する強力な断熱材が商品化された場合、当社の事業成長に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、常に営業推進部とテクニカルセンターで新製品を開発していくことで、優位性を保ってまいります。
(7) 自社原料の生産に伴う資金負担の増加
当社は、原料の仕入価格を低下させるため、2015年12月期より自社ブランド原料の委託製造を本格化させております。原料は、委託加工先の生産プラントにおいて、素原料、触媒、難燃材等をブレンドして生産します。当社の生産計画に基づき、各委託加工先に有償支給する素原料等は、北米やアジア諸国を含めたグローバル調達を行っております。
原料の生産ラインを効率よく動かし、生産計画を実現させるために素原料等を自社で在庫する必要があり、その為の資金負担が増加しております。原料製造代金の回収は断熱工事が完成・引き渡しされた後に、得意先が振り出す約束手形が資金化又は売掛金が現金で回収されますが、原料製造及び原料仕入に係る買掛金の決済がこれに先行して到来することもあり、この場合に資金収支にズレが生じるため、当社の業容拡大によって原料の委託製造量が増大する場合、当社の資金の負担が増加するリスクがあります。対応策としては、資金の回収期間の短縮に取り組んでおります。
(8) 事故や瑕疵による当社に対する信頼感の低下
当社は、断熱施工会社としてその施工中の事故や施工の瑕疵に対して責任を負います。自社または認定施工店で、施工者の不注意により重大な事故が発生した場合、工事や断熱原料に由来する瑕疵に対して重大なクレームが発生した場合は、当社に対する信頼感が低下し、当社業績に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、当社は作業の安全と施工品質の確保のため、自社の工務社員はいうまでもなく認定施工店に対しても研修と指導を行っております。また、新しい断熱材の原料を導入する際には、テストを繰り返して仕様を改良してから採用しています。
(9) 株式会社東京証券取引所の上場維持基準の不適合
当社は、2013年12月に株式会社東京証券取引所マザーズ市場に上場し、その後、市場第一部を経て、2022年4月よりプライム市場に上場しております。上場企業であることは知名度や信用力の面で競争優位性をもたらし、人材の採用活動はもとより、施工主やゼネコンからの受注、さらには原材料の仕入取引においても差別化要因となっています。一方で、当社が上場維持基準を満たせなくなった場合、これらの優位性が低下し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。こうしたリスクへの対応として、当社は業績の向上に努めるとともに、株主・投資家との適切なエンゲージメントを構築し、資本コストや株価を意識した経営を推進することで、上場維持基準への適合を継続的に図ってまいります。
(10) 売上の季節変動
当社の断熱工事は、住宅が完成する2、3か月前に行いますので、住宅の引渡しが多くなる年度末12月の2、3か月前より完工がピークとなり、その傾向は、第3四半期に増加し始め、第4四半期に集中する傾向があります。その結果、第1四半期及び第2四半期で売上が停滞し経費が過多になるため、損失が発生するリスクがあります。対応策としては、売上時期の分散のため、防水事業等の新規事業及び建築物事業への領域の拡大を図ります。
なお、第20期事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)及び第21期事業年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)の各四半期における売上高を参考までに掲げると以下の通りです。
四半期ごとの売上高の推移
(11) 親会社及びその関係会社との関係
① 資本的関係について
当社は、㈱ヒノキヤグループの子会社であり、同社は㈱ヤマダホールディングスの完全子会社であります。㈱ヒノキヤグループは、2024年12月末現在、当社株式の議決権等の所有割合で55.47%を保有しており、㈱ヤマダホールディングスグループでは、住建事業として戸建住宅を中心とした住宅販売やその周辺事業を営んでおります。
② 人的関係について
当社取締役11名のうち、㈱ヤマダホールディングス、㈱ヒノキヤグループ及びその子会社出身者及び受入出向者はおりません。
③ 取引関係について
㈱ヤマダホールディングス及び㈱ヒノキヤグループの関係会社は、断熱材施工販売事業において当社の販売先の位置付けにあります。この取引にかかる価格をはじめとする取引条件は、他の取引先と同水準にて設定しております。
④ 経営の独立性について
上記のとおり、当社は㈱ヤマダホールディングス及び㈱ヒノキヤグループの子会社であり、今後も両社による当社株式の所有は継続すると見込まれるため、両社の事業戦略やグループ管理方針等の変更がされた場合、当社の経営に影響を及ぼすリスクがあります。しかしながら、当社は、監査等委員会設置会社として過半数の独立社外取締役を選任することで経営の透明性・公正性を担保しており、また当社売上高に占める同社グループへの依存度は1割を下回ることから、経営や取引における独立性は確保している状況にあります。
(12) 法的規制
当社は、建設業法、建築基準法、住宅の品質確保の推進等に関する法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、消防法、道路交通法、土壌汚染対策法等、多くの法令や規制のもとで事業活動を遂行しております。万一役職員の一部がこれらの法令等の遵守を怠った場合は、当社の社会的信用が失墜し、当社の経営に重大な悪影響が及ぶリスクがあります。また、当社にとって対応が困難な法的規制が新たに設けられた場合、当社の業績に悪影響が及ぶリスクがあります。対応策としては、これらの法令等を遵守するため、役職員のコンプライアンス意識の強化に取り組んでおります。
(13) 主要な事業活動の前提となる事項について
当社の主要な事業活動である熱絶縁工事業は建設業許可が必要な事業であり、当社では一般建設業許可(熱絶縁工事業)を取得しております。建設業許可は、5年ごとの更新が義務付けられており、本書提出日現在の許可の有効期限は2029年1月であります。また、建設業法第29条に建設業許可の取消し、第28条において業務停止等の処分の要件が規定されており、当該要件に抵触した場合には、許可の取消しまたは期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命じられる可能性があります。当社には、現時点において許可の取消しまたは業務の停止等の事由となる事実はないと認識しておりますが、当該許可の取消しまたは業務の停止等を命じられた場合には、社会的信頼の毀損や契約破棄等により当社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策としては、免許の更新時期のチェック等や、安全管理を定期的に行っております。
(14) 個人情報の取扱いについて
当社は事業を行う上で入手したお客様に関する個人情報を保有しております。万が一これらの情報が外部に漏洩した場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これらの情報管理に関しましては、社内規程の整備、社員教育の徹底、管理体制の強化に努めておりますが、万が一これらの情報が外部に漏洩した場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対応策としては、これらの情報管理に関しましては、社内規程の整備、社員教育の徹底、管理体制の強化に努めております。
当事業年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、一部に足踏みがみられるものの、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかに回復が続いております。一方で、欧米における高金利水準の継続や中国の不動産市場の停滞の継続に伴う影響など海外景気の下振れが、わが国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、米国の今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などが懸念されています。
当社が属する建築・住宅業界においては、2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、さらに、同法の施行により、2024年4月から住宅・建築物を販売・賃貸する事業者に省エネ性能ラベルの表示が努力義務となりました。これにより、住まいやオフィスなどの購入者や借り手の間で省エネ性能や断熱性能への関心が高まり、結果として、省エネ性能や断熱性能が高い住宅・建築物の供給が促進されることが期待されています。
一方で、新設住宅着工戸数は弱含みの推移が続いており、住宅業界を取り巻く環境は厳しい状況にあります。しかしながら、企業の設備投資においては、半導体や自動車関連で大型の投資が進んでいるほか、投資計画も高い水準となっており、全国各地で大規模な製造設備、商業施設、及び高層マンション等の建設が活発に行われています。
また、1980~1990年代の建築ラッシュで建てられた建物が老朽化し、防水改修工事の需要が増加しています。約20~30年とされる防水層の寿命を超えた建物では、雨漏りや劣化が進行し、資産価値維持のため改修が必要です。法規制強化や地震対策、気候変動対応が需要を後押しし、高性能防水材や環境配慮型製品が普及し、また、老朽建物の増加により、今後も市場の成長が期待されます。
このような環境下で当社は、高い断熱性能と高気密性を実現する「アクアフォームシリーズ」、および超速硬化防水材「アクアハジクン」の商品力と全国施工ネットワークという強みを活用し、各部門において積極的な受注活動を展開してまいりました。
戸建部門では、各自治体が定める高気密性能を要件とした独自の住宅省エネ施策の広がりを好機と捉え、断熱施工に気密測定サービスを付加することで差別化を図り、施工棟数の増加を軸に市場シェア拡大に取り組みました。その結果、広域展開する大型ビルダーからの受注が拡大し、12月からは新規大口先の施工も始まりました。一方で、地域密着型工務店からの受注が伸び悩んだため、当社の施工棟数は前年比の99%程度にとどまりました。しかし、持ち家の新設住宅着工戸数が大幅に落ち込む中、健闘したと考えており、同部門の売上高は13,704百万円となりました。
建築物部門では、半導体工場やデータセンターといった製造設備に加え、商業施設や高層マンションなどの新設需要を順調に獲得しています。しかし、第2四半期累計期間中には、時間外労働の上限規制を含む「建設業の2024年問題」により、一部物件で他社事情による前工程作業の遅れや原材料不足が原因で工事に着手することができず、いわゆる手待ちが発生しました。この問題は第3四半期以降に順次解消されましたが、工事の遅れのすべてを取り戻すには至らず、同部門の売上高は9,499百万円となりました。
防水部門では、組織体制の強化を進めるとともに積極的な法人営業を行い、上場企業の施設の屋根改修工事や物流倉庫の駐車場防水などを手掛けました。その結果、非住宅分野の比率が高まり、売上高は719百万円となりました。
また、原料販売は2,226百万円、その他部門である、副資材・機械・その他の売上高は4,115百万円となりました。
(単位:百万円、%)
この結果、当事業年度の売上高は、30,265百万円と前年同期比で6.8%の増収となりました。また、売上総利益は6,862百万円となり、売上総利益率は22.7%と前年同期比で1.8ポイント低下いたしました。主な要因は以下の通りです。戸建部門では、吹付ウレタン施工における寡占化を目指した市場シェア拡大施策を推進したため、同部門の売上総利益率は前年同期比で3.4ポイント低下しました。建築物部門では、コスト削減とキャッシュ・フローの改善を目的として、工事管理業務を徹底するとともに、適切な進捗管理を実施した結果、売上総利益率が前年同期比で0.8ポイント改善しました。
営業利益は2,575百万円、前年同期比で10.6%の減益となり、営業利益率は8.5%で、前年同期比で1.7ポイント低下しました。なお、販売費及び一般管理費は243百万円増加し、4,286百万円となり、主な内訳としては、施工体制の拡充をはじめとする今後の成長に必要不可欠な人的資本投資としての人件費の増加が167百万円、実習生関連費の増加が155百万円です。ただし、他の経費削減効果と相まって、販管費比率は14.2%となり、前年同期比で0.1ポイント改善しています。
経常利益は2,604百万円と前年同期比で10.7%の減益、当期純利益につきましては1,839百万円と前年同期比で8.2%の減益となりました。売上高は過去最高を更新しましたが、当事業年度は市場シェアの拡大を目指した取り組みや、施工体制強化のための採用増、物流拠点の設置など、いわゆる投資先行の年度となったため、利益の過去最高更新は翌年度以降になると見込んでいます。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社は2024年2月14日に、2024年度から2026年度までの3ヶ年を対象とした中期経営計画「3 Pillars of Stability(安定した3本柱)」を策定し、目標とする経営指標としてサステナブル成長率10%、営業利益率10%、ROE20%、配当性向50%を掲げています。さらに、2025年12月期より、利益成長を通じてより安定的な配当(維持・増配)を実現するため、累進配当制度を導入しました。
また、同計画における2026年12月期の売上高目標は37,000百万円、経常利益目標は3,405百万円です。詳細につきましては、2025年2月7日に開示いたしました「中期経営計画の一部変更のお知らせ」でご確認ください。2024年12月期につきましては、ROEは18.5%、1株当たり当期純利益金額は58円55銭となりました。これに合わせ目標配当性向50%及び累進配当制度を踏まえ、1株当たり配当額は34円といたしました。
将来の見通しに関する記述は、現在入手可能な情報に基づく当社の経営陣の仮定及び判断に基づくものであり、既知または未知のリスク及び不確実性が内在しています。また、今後の当社の事業を取り巻く経営環境の変化、市場の動向、その他様々な要因により、これらの記述または仮定は、将来実現しない可能性があります。将来の見通しに影響を与えうる潜在的リスクや不確定要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。なお、潜在的リスクや不確定要因はこれらのみに限定されるものではありませんのでご留意ください。
・業績目標
(単位:百万円)
(総資産)
当事業年度末における総資産は24,071百万円(前事業年度末比18.0%増)となり、前事業年度末に比べ3,679百万円の増加となりました。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は18,819百万円(前事業年度末比21.6%増)となり、前事業年度末に比べ3,346百万円の増加となりました。これは主として受取手形、売掛金及び契約資産1,719百万円、未収入金1,204百万円、前払費用が99百万円増加したことなどによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は5,251百万円(前事業年度末比6.8%増)となり、前事業年度末に比べ332百万円の増加となりました。これは主として宮崎営業所完成により建物および構築物が163百万円増加、ソフトウェア取得により21百万円増加、従業員に対する譲渡制限付株式割り当てに伴う自己株式の処分により長期前払費用が319百万円増加、投資その他の資産のその他に含まれる保険積立金が96百万円増加、貸倒引当金が66百万円減少したことに対し、減価償却による資産の減少が239百万円、宮崎営業所完成により建設仮勘定が55百万円、繰延税金資産が39百万円減少したことなどによるものであります。
(負債合計)
当事業年度末における負債合計は13,525百万円(前事業年度末比22.0%増)となり、前事業年度末に比べ2,438百万円の増加となりました。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は13,415百万円(前事業年度末比22.8%増)となり、前事業年度末に比べ2,488百万円の増加となりました。これは主として短期借入金が2,100百万円、買掛金1,103万円増加したことに対し、未払金237百万円減少、未払消費税等419百万円減少、未払法人税等が232百万円の減少したことなどによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は109百万円(前事業年度末比31.1%減)となり、前事業年度末に比べ49百万円の減少となりました。これは主としてその他に含まれる長期未払金が36百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は10,545百万円(前事業年度末比13.3%増)となり、前事業年度末に比べ1,241百万円の増加となりました。これは主として当期純利益が1,839百万円となったこと、従業員に対する譲渡制限付株式割り当てに伴う自己株式の処分により資本剰余金が102百万円増加及び自己株式が303百万円減少したことに対し、配当の支払いにより利益剰余金が1,005百万円減少したことなどによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、230百万円増加し、2,263百万円(前年同期2,033百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の減少は516百万円(前年同期は4,022百万円の増加)となりました。これは主に税引前当期純利益2,598百万円に加え、減価償却費239百万円、仕入債務の増加1,174百万円による資金の増加の一方、貸倒引当金の減少93百万円、売上債権の増加1,845百万円、未収入金の増加1,228百万円、未払消費税等の減少419百万円、法人税等の支払945百万円による資金の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は338百万円(前年同期は385百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得182百万円、無形固定資産の取得26百万円、保険積立金の積立96百万円、関係会社貸付け41百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の減少は1,084百万円(前年同期は4,280百万円の減少)となりました。これは主に短期借入金の純増加2,100百万円、配当金の支払いによる支出1,005百万円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
現状における当社の資金需要の主なものは、運転資金、納税資金、固定資産への投資資金です。運転資金の主な内容は、ウレタン原料の製造及び仕入代金、認定施工店への外注費、副資材の仕入代金、販売費及び一般管理費等の営業費用です。販売費及び一般管理費の内訳は、人件費、旅費交通費、地代家賃等です。固定資産への投資資金の主な内容は、営業所建設の土地及び建物等の有形固定資産、ソフトウエア等の無形固定資産、並びに敷金及び保証金等の投資その他の資産への投資資金です。
資金調達については、主に銀行借入と内部留保資金により調達しております。今後、大きな資金需要が発生した場合には、増資等による資金調達の可能性もありますが、当面必要な運転資金、固定資産への投資資金については、銀行借入と内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローにより十分調達可能であると考えております。
(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、一定の会計基準の範囲内において、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りにつきましては、経営者が過去の実績や現在の取引状況ならびに入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に使用しておりますが、見積り及び仮定には不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があります。また、財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載されているとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 経営成績、(2) 財政状態、(3) キャッシュ・フローをご参照ください。
(生産、受注及び販売の状況)
当社の主たる事業である断熱材の施工販売は、受注を契機として施工を行い、かつ主力の戸建住宅分野では施工期間が原則1日間と短期であることから、生産実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
当事業年度における建築物分野の受注実績は以下のとおりであります。
(注)1. 戸建住宅分野において、受注から施工実施、販売までの期間が短期であることから、受注実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社は、単一セグメントでの事業を行っておりますが、当事業年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)における販売実績を品目別及び地域別に示すと、次のとおりであります。
品目別販売実績
地域別販売実績
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
該当事項はありません。
当事業年度の研究開発活動は、テクニカルセンターの活用を充実させることにより、当社の取り扱う商品、製品の品質向上と地球環境に配慮した製品の開発を図っております。また、テクニカルセンターでは様々な環境での実証実験を行うことを推進しており、これまで以上に良質で安定した原料を低価格で製造することを実現してまいります。
研究開発体制は、テクニカルセンターと開発部にて新原料、新製品の開発の他、断熱材の省エネルギー性能を実証する地域区分・工法区分に応じた第三者認定取得を進め、原料メーカーや大学の研究機関と連携・協力関係を保ち、新原料の開発にも積極的に取り組んでまいります。
当事業年度の当社が支出した研究開発費の総額は、