第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションとして掲げ、ビジョンとして、「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Living(暮らす)」の各事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になる「WILLビジョン」を掲げています。競争が激化する中で顧客から選ばれ続けるために、特定の事業領域に特化し、そのカテゴリーにおけるサービス品質の強化を図っています。事業領域については、国内では、家電量販店等の販売現場、コールセンター、食品等の工場、介護施設、建設業等、海外では政府、行政といった比較的景気の変動の少ない領域でサービスを展開しています。

 人材サービス市場における、今後の見通しについては、国内及び海外経済は緩やかに成長していく一方で、世界的な物価上昇や引き締め的な金融政策運営の長期化リスク、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクなど、先行き不透明な状況が続いています。また、国内においては好調な企業業績を背景とした堅調な人材需要に対し、採用環境が厳しさを増しており、当社グループが主に事業展開を行っているオーストラリア、シンガポールにおいては、コロナ禍の大規模な景気刺激策実施後のインフレや金利上昇等の景況感の悪化に加えて、コロナ後に急激に採用を増やした企業で人員過剰の状態になっており、こうした顧客が採用を抑制する動きが長期化することが懸念されます。

 このような状況の下、当社グループは、2026年3月期を最終年度とした中期経営計画「WILL-being 2026」(以下、「本中計」という。)の基本方針である国内Working事業の再成長に向け、建設技術者領域の拡大、正社員派遣、外国人管理受託の拡大等に取り組みます。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループの重視する経営指標は、売上収益、営業利益、売上高営業利益率としていましたが、2024年5月13日公表の「中期経営計画(WILL-being 2026)の修正に関するお知らせ」に記載の通り、本中計で掲げていた2026年3月期の業績目標である、売上収益、営業利益、売上高営業利益率を取り下げることとしました。

 KPIは、正社員派遣採用人数/年(建設技術者領域)、正社員派遣定着率(建設技術者領域)、正社員派遣稼働人数(国内Working事業(建設技術者領域を除く))、外国人管理受託人数(国内Working事業)です。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループの持続的な成長の実現に向けては、停滞している国内Working事業の再成長が重要となります。そのため、本中計期間においては、国内Working事業の再成長を基本方針とし、再成長に向けた先行投資を積極的に行い、利益体質への転換を図るとともに、将来の飛躍的な成長を実現できる基盤を確立します。

 

 本中計のシナリオ実現に向けては、以下の3つ(戦略Ⅰ・Ⅱは国内Working事業、戦略Ⅲは海外Working事業)を重点戦略としています。

・戦略Ⅰ 建設技術者領域の更なる拡大及び利益創出を実現

・戦略Ⅱ 国内Working事業(建設技術者領域を除く)の再成長

・戦略Ⅲ 海外Working事業の安定した成長

 

 戦略の推進を最大化させるマネジメントにシフトし、2026年3月期以降の飛躍フェーズの実現を目指すために、以下のKPI目標の達成を優先して追求します。

・正社員派遣採用人数/年

(建設技術者領域)

→2026年3月期目標:1,500名

・正社員派遣定着率

(建設技術者領域)

→2026年3月期目標:71.5%

・正社員派遣稼働人数

(国内Working事業(建設技術者領域を除く))

→2026年3月期目標:3,500名

・外国人管理受託人数

(国内Working事業)

→2026年3月期目標:3,500名

 

(4)会社の対処すべき課題

 現状及び今後の経営環境を踏まえ、以下、当社グループが中長期観点から対処すべき課題を記載します。

 

①国内Working事業の再成長

 当社グループの持続的な成長の実現に向けては、停滞している国内Working事業の再成長が重要となります。そのため、以下の2点に取り組みます。

 (ⅰ)建設技術者領域の更なる拡大及び利益創出を実現

  建設技術者領域の生産性向上に取り組むことで2025年3月期に黒字化、2026年3月期に事業の柱の1つにしていきます。

 (ⅱ)国内Working事業(建設技術者領域除く)の再成長

  外国人管理受託、正社員派遣の拡大に取り組みます。外国人管理受託の拡大、営業人員の増加により新規オーダー獲得を強化するとともに、現地での採用については、現地の法人、学校等のアライアンスを強化します。正社員派遣の拡大については、建設技術者領域、セールスアウトソーシング領域で培った採用ノウハウを、ファクトリーアウトソーシング領域にも展開していきます。また、今後採用環境が一層厳しくなることを見据え、自社ブランド強化に向けたブランドプロモーションを実施します。

 

②海外Working事業の安定した成長

 シンガポール、オーストラリアともに、ポストコロナの急激な人材需要が一巡して以降、主要顧客による採用抑制が長期化しており、人材紹介市場の見通しは不透明な状況です。このような状況の下、優秀なコンサルタント人員を確保しながら、需要回復後の人材紹介売上の拡大に取り組むとともに、ダウンサイドリスクを抑え、事業の安定性を高めるために、行政等の安定した領域における人材派遣売上の増加、コストコントロール、ガバナンスの強化に取り組みます。

 

③人材の確保と育成

 人材の確保は当社グループの成長の礎であり、競争上の優位性、持続的な成長を実現するためには、スタッフの採用、育成と定着が重要な課題です。

 採用活動においては、2019年10月に主要子会社のサービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一し、2024年3月期より西日本エリアを中心に初のTVCMを実施、プロモーション実施後のWILLOFの指名検索数は増加傾向にあり、オウンドメディア経由の採用数増加が期待されることから、継続して実施しています。これにより、当社グループ全体の認知度及び採用力向上に取り組み、採用力を強固なものにしていきます。

 育成、定着においては、就業先での必要なスキルやマインドを取り込んだ就業前、就業期間中における研修を更に充実させ、就業しているスタッフに対する定期的なフォローアップを行っていくことで定着率を高めていきます。

 

④サステナビリティの強化

 当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう以下の取組みを行っています。

 (ⅰ)環境への取組み

  災害に対するレジリエンスの強化を図るとともに、気候変動については環境方針を定め、脱炭素社会実現に貢献する取組みを進めています。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同表明するとともに、2023年1月にTCFDコンソーシアムに加入し、TCFDの枠組みに基づく気候関連の情報開示を行っています。

 (ⅱ)社会への取組み

  当社グループが持続的な成長を遂げていくためには、画一的な視点にとらわれず、多様な人材の活躍が必要不可欠であると考えています。性別・年齢・国籍・障がいなどにとらわれず、社員一人ひとりが自律したキャリアを形成できるよう支援しています。また、技術革新により、求められる人材・職種が大きく変化し、今以上に需給ギャップが生じる見込みです。そのため、働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”に取り組んでいきます。

 

 (ⅲ)ガバナンスへの取組み

  過半数が独立社外取締役で構成される任意の諮問委員会である指名委員会及び報酬委員会の設置、取締役会の実効性評価を外部の助言を得ながら継続的に実施する等、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションに掲げ、ひとりでも多くの人を、ひとつでも多くの組織をポジティブに変革していくことを目指し、持続的な成長を実現してきました。これからも世の中にポジティブな変化を生み出し、持続的に成長し続けていくために、社会の変化を的確に捉え、ステークホルダーの皆さまとともに未来に向けてサステナブル(持続可能)な社会の実現に貢献していきます。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ活動を通じてグループ全体の持続的な成長及び社会課題解決に資することを目的に「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は委員長を代表取締役社長、委員を当社社内取締役、当社執行役員及び主要子会社取締役、事務局を経営戦略本部で構成し、原則年2回開催しています。サステナビリティに関する活動方針や実行計画の協議・検討・策定、重点課題のKPI推進状況のモニタリング・見直し等を行い、委員会で議論された内容等は、取締役会で審議しています。また、経営企画本部内にサステナビリティ推進組織を配置し、サステナビリティ委員会以外でもサステナビリティに関する議論をしています。

 

<サステナビリティ推進体制>

0102010_001.png

 

<サステナビリティに関する主な活動>

2020年10月

サステナビリティ推進プロジェクトの発足

2021年9月

重点課題の特定

2021年11月

サステナビリティ方針の策定

2021年12月

グループ初となる統合報告書の発行

2022年3月

重点課題KPIの設定

2022年10月

第一回サステナビリティ委員会の開催

2023年5月

重点課題の見直し

2023年6月

人権方針等の見直し

2023年8月

重点課題KPIの見直し

2023年10月

Web版統合報告書の公開

 

 

②戦略

 当社グループで働くすべての人がWell-being※であることにより、世の中にポジティブな変化を生み出し、企業価値の向上につながると考えています。

 事業における重点課題として、中期経営計画で掲げている「働く人をエキスパートにするキャリアパスの“最大化”と“最適化”」を通じて「職のミスマッチ」を解消していきます。また、企業基盤における重点課題として、「人的資本の強化」「災害レジリエンスの強化」「強固なガバナンス体制の構築」を土台に、「Well-beingの向上」を実現していきます。

※当社グループでは、Well-beingを「身体的、精神的、社会的に良好な状態」と定義しています。

0102010_002.png

③リスク管理

 環境、社会、ガバナンス等あらゆるサステナビリティを巡る課題への対応は、リスク減少・収益機会にもつながる重要な経営課題であるとの認識のもと、経営理念に基づく企業活動を通じてこれらに対する取組みを進めています。

 当社グループは国際的なガイドラインを参考に、ステークホルダーへのヒアリングや当社グループの社会的価値・あるべき姿などの議論を踏まえ、リスクと機会の両面から重点課題を特定しています。

 

④指標及び目標

 重点課題である「Well-beingの向上」「職のミスマッチの解消」「人的資本の強化」「災害レジリエンスの強化」「強固なガバナンス体制の構築」において、あるべき姿、指標及び目標を設定しています。これらは外部環境の変化に伴う社会の課題や期待に応えられるよう、継続して議論をしていきます。中でも当社グループが創業以来大切にしている人的資本については、本章「(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標」に指標及び目標を記載しています。その他の指標及び目標は、統合報告書に開示しています。

ウィルグループ統合報告書2023: https://willgroup.co.jp/integrated_report/2023/materiality/index.php

 

(2)気候変動に関する取組み

 「2031年3月期までに2020年3月期比でCO2の排出量を総量20%削減」を環境目標として定め、脱炭素社会実現に貢献する取組みを進めています。また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、2023年1月にTCFD コンソーシアムへ加入し、枠組みに則った関連情報の開示をしています。

 気候変動に関する取組みの詳細については、当社ホームページに開示しています。今後も段階的に情報開示を進め、全体的な開示内容の質と量についても、充実させていきます。

(環境への取組み: https://willgroup.co.jp/sustainability/environment/ )

 

(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標

 当社では現在の中期経営計画において、人材サービスを通じて「働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”を実現していく」ことを標榜し、「人的資本の強化」を取り組むべき重点課題と位置付けています。持続可能な成長を実現するためには、社員一人ひとりのWell-beingや働きがい、多様性を育む必要があると考えるため、以下7つの指標に関する取組みを強化するとともに、積極的に開示してまいります。

 なお、各指標は株式会社ウィルグループ、株式会社ウィルオブ・ワーク及び株式会社ウィルオブ・コンストラクション等を対象としています。

 

①Well-beingスコア

 当社グループでは、2019年4月からサーベイを活用しWell-beingスコアの計測をしています。Well-beingが高まることは生産性と創造性の向上につながると考えており、当社グループで働くすべての人がWell-beingであること、ひいては企業価値の向上を実現していきます。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

Well-beingスコアpt

66.1

66.5

66.4

66.5

 

②職場の幸せ力スコア

 Well-beingの一要素に「安心安全な風土」「信頼関係のある職場の雰囲気」「チャレンジを推奨する雰囲気」「職場オススメ度」で構成される「職場の幸せ力」と定義される項目があります。職場の幸せ力が高まることは社員の『働きやすさ』につながると考えており、自走できる“強い組織”づくりをしていきます。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

職場の幸せ力スコア

68.4

69.2

69.6

69.6

 

③働きがいスコア

 当社グループが考える働きがいとは「働きやすさ」と「仕事のやりがい」の掛け合わせであると考えているため、いずれも大切にしつつ、当社グループで働く社員の働きがいを高めることで“個の活躍”を最大化していきます。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

働きがいスコア

51.2

52.9

57.0

62.5

(注)働きがいスコアとは当社が年に一度実施するアンケートの「Q.今の組織や仕事において働きがいを感じているか」の問に対し、5段階評価にて「強く感じている」または「感じている」と回答した社員の割合を示したものです。

 

④女性の管理職比率

 ミッションやビジョンの実現に向けて、世の中にポジティブな変化を生み出すためには、社会によって作り上げられた男性像や女性像に捉われない、多様な“個の活躍”は必要不可欠です。女性の管理職比率を高め、新たな価値創造に向けて進化していきます。

 女性の管理職比率については、決算年月の翌日4月1日時点の数値を算出しています。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

女性の管理職比率

13.5

14.9

16.1

22.0

 

⑤女性の管理職昇格希望割合

 多様な“個の活躍”に向けては、多様な人材の“意志”は欠かせません。特には当社グループで働く女性社員の管理職昇格希望割合を高め、彼女たちの作りたい未来、生み出したい価値、提供したいサービスを顕在化させ、イノベーティブな組織づくりにつなげていきます。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

女性の管理職昇格希望割合

22.4

24.8

24.7

36.0

 

⑥男性の育休取得率

 ジェンダー平等の追求は企業の社会的責任ともいえ、男性の育休取得率はその一つの証左であると考えています。もはや女性活躍なくして日本の労働社会は成立せず、女性の更なる活躍を後押しする重要なポイントは『男性の家庭での活躍』であり、男性の育休取得率向上を実現します。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

男性の育休取得率

11.4

42.9

39.6

70.0

 

⑦男女の賃金格差

 男女の賃金格差の是正に取り組むことはジェンダー平等に向けた重要な取組みテーマであり、公正な評価と報酬システム確立が欠かせません。男女の賃金格差をなくすことはもちろん、昇進や異動などの機会格差さえもなくし、多様性に富む組織へと進化していきます。

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

(目標)

2026年3月

男女の賃金格差

74.9

74.6

76.6

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)特定事業への依存について

 当社グループは、業種別に特化型での人材サービス(人材派遣、業務請負及び人材紹介)を展開しており、連結売上収益における構成比は、国内Working事業における主要な3領域の人材サービス(セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域)が38.2%を占めています。今後の事業を取り巻く環境の変化等により、売上が急激に減少した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、国内Working事業における介護ビジネス支援領域、建設技術者領域や海外Working事業等、次の柱になり得る事業の成長を推進しており、主要な3領域に係る売上収益の構成比は低下していくことを想定していますが、計画通りに進まず、主要な3領域への売上収益の依存が低下しなかった場合は、当事業の売上収益の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)事業の許認可について

①労働者派遣事業

 国内における人材派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣元事業主として欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取消しや事業の全部又は一部を停止できる旨を定めています。また、海外における人材派遣事業は、事業展開する各国・地域それぞれの法律、規制等に従い業務を遂行しています。

 万一、当社グループ各社において、重大な法令違反が発生し、許可の取消し、又は事業の停止を命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動全体に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、国内における派遣法及び関係諸法令、各国・地域における法律、規制等については、労働市場を取り巻く環境の変化等に応じて改正される可能性があります。とりわけ、国内における派遣対象業務や派遣期間制限については、適宜改正が実施されており、その改正内容によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

②職業紹介事業

 国内における人材紹介事業は、職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。職業安定法においても、派遣法と同様に、有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取消しや業務の全部又は一部の停止を命じることができる旨を定めています。また、海外における人材紹介事業は、事業展開する各国・地域の法律、規制等に従い業務を遂行しています。

 万一、当社グループ各社において、重大な法令違反が発生し、許可の取消し、又は業務の停止を命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動全体に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、国内における職業安定法や各国・地域における法律、規制等については、当領域を取り巻く環境の変化等に応じて改正される可能性があります。当該法規制等の改正がされた場合、その改正内容によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)人材の確保について

①社員

 当社グループが競争上の優位性の確保、事業環境の変化への対応、及び持続的な成長を可能とするためには、優秀な人材の確保と育成が重要な経営課題です。

 専門部署を設置し、様々な人事戦略の立案と実行を行っていますが、係る人材の確保又は育成が計画通りにできない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、競合他社に重要な人材が流出した場合や、想定以上に多くの離職が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

②スタッフ

 当社グループの事業活動の重要な要素のひとつにスタッフの確保があります。当社グループの継続的な成長のためには、スタッフの採用と育成が重要な課題です。そのため、当社グループでは、募集方法を多様化させるため、独自のWeb募集媒体に重点をおくことや、オンラインでの登録やカウンセリング、友人紹介キャンペーン、採用拠点の設置などの施策を実施しています。また、週5日未満や短時間勤務など主婦、シニア、留学生向けのフルタイム以外の案件獲得にも取り組んでいます。

 

(4)コスト圧迫リスクについて

①社会保険料

 当社グループでは、従業員に加え、社会保険加入要件を満たすスタッフの社会保険への加入を徹底しています。社会保険料の保険料率や対象範囲は、社会的情勢によって適宜改定されていることから、社会保険制度の改正に伴い、会社負担金額が大幅に上昇した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

②労働契約法改正

 2013年4月に改正労働契約法が施行され、施行日以降に開始した有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)に転換する仕組みが導入されました。これにより、当社グループで派遣スタッフ等を無期雇用する場合、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。

 また、2020年4月1日より施行された同一労働同一賃金に関する法律では雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、不合理な待遇差がある場合、その格差是正が求められています。当社グループでは、適正水準での給与支払いに努め、派遣給与の引き上げや社会保険負担増が必要な場合には、派遣先企業への請求金額も値上げするべく交渉を行っていますが、派遣給与と派遣先企業への請求金額の上昇が必ずしも同期が取れない場合があります。このような場合、原価率が上昇するなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)競争の激化について

 当社グループが属する人材サービス業界は、多数の競合会社が存在します。当社グループでは、顧客からニーズを把握した後にそれに対して対応可能なスタッフを募集し、顧客に対して的確かつ迅速な対応を行うことで、高い顧客満足度を得て競合会社との差別化を図っていますが、競争がさらに激化した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(6)将来の企業又は事業の買収について

 企業又は事業の買収(M&A)は、当社グループの主要な経営戦略の一つと考えています。M&Aにおいては、成立後、統合上の業務プロセスの不具合の発生、異なる企業文化の統合による摩擦の発生に伴う業務の停滞や業績の低下、従業員の離職や内部対立の顕在化等、様々なリスクが内在しています。当社グループでは、このリスクを最小化し、M&A成立時に想定した効果を最大限に発揮させるため、詳細なデューデリジェンスに加え、M&Aを行った後の経営の統合を実行するプロセス(PMI)を適切に進めることが非常に重要であると考え、当該PMIプランを迅速かつ長期的な視点で策定しています。

 しかしながら、想定通りにPMIプランが遂行できなかった場合には、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性があり、このような事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)M&Aに伴うのれんについて

 M&Aに伴い発生するのれんは、帳簿価額を回収できない可能性がある場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。したがって、のれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては減損損失を計上することになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)海外における事業展開について

 当社グループは、事業のグローバル展開を標榜しており、現時点において、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、中国、ベトナム、イギリス、ドイツ及びUAEに営業拠点を有しています。これら海外展開においては、各国における景気変動リスク、為替変動リスク、政府による規制、政治的な不安定さ及び資金移動の制約等に起因するカントリーリスク等が存在しています。

 当社グループでは、シンガポールに統括拠点として中間持株会社をおき、当社と連携しながら、各国における景気変動リスク、為替変動リスク及びカントリーリスク等に留意した事業推進を行っていますが、当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)個人情報の取扱い及び個人情報保護法に関するリスクについて

 当社グループは、事業の特性上、派遣登録者や転職希望者等、多くの個人情報や機密情報を保有しています。

 不測の事態が原因で、個人情報や機密情報が外部に漏洩し、情報主体者に被害が発生した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜、EU一般データ保護規制(GDPR)による制裁金により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(10)法令遵守に関するリスクについて

①全般的なリスク

 当社グループの事業活動における関連法令は、国内における各種法規制(労働者派遣法、職業安定法、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、健康保険法及び厚生年金保険法等)、海外における各国の各種法規制(雇用機会均等法等)、新規事業に関連する各種法令等、多岐にわたります。当社グループでは、法令遵守を重要な企業の責任と認識しており、コンプライアンス体制を強化し、法令遵守の徹底を図っています。

 しかしながら、これらの対策を行っていたとしても、グループ各社の役職員やスタッフによる不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスク、又は人権等の問題を含め社会的に信用が失墜するリスクを完全に排除できない場合があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

②重大な訴訟等によるリスク

 当社グループは、主として人材派遣事業及び人材紹介事業等を営んでいます。その事業活動の遂行過程において、顧客、求職者、競合他社、その他の関係者等から、当社グループが提供するサービスの不備、個人情報や機密情報の漏洩又は知的財産の侵害等に関する訴訟その他の法的手続きを提起される場合や、当局等による捜査や処分等の対象となる場合があり、これらの法的手続に関連して多額の費用の支出や、事業活動に支障をきたす可能性があります。

 また、係る法的手続は長期かつ多額となることや、結果の予測が困難となる場合があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(11)自然災害及び有事に関する影響について

 当社グループは、日本全国及びシンガポール・オーストラリアを中心として世界各国に営業拠点を有しており、地震、台風及び津波等の自然災害、大規模の火災や停電、新型感染症、テロ攻撃及び国際紛争等が発生した場合、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があり、これらを完全に回避することができず、被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(12)情報システムに関するリスクについて

 当社グループの事業活動は、IT(コンピュータシステムやネットワーク等)に依存しており、これらITの開発、維持及び管理を一部第三者に委託しています。また、格付基準の高いデータセンターの利用や、クラウドサービスの利用等により、大規模地震等の自然災害発生時におけるシステムの可用性の確保やリモートワーク環境の構築を実現している他、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス対策を実装し、事業継続性を確保しています。

 しかしながら、万一、何らかの原因によって大規模なシステム障害が発生した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)業界を取り巻く環境の変化について

 近年のテクノロジーの進化等によって、当社グループが属する人材サービス業界を取り巻く環境は、変化のスピードが早まっています。このような事業環境に適応するため、既存事業領域のサービス力及びブランド力の向上施策、コーポレートベンチャーキャピタルを活用した新たに創出されるビジネス機会を捉えるための施策等、様々な収益基盤の拡大施策を実施しています。2019年10月には、当社グループ全体の認知度及びサービス向上を目指すために、国内主要子会社のサービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一しました。「Chance-Making-Company」のブランディングを実施することにより、求職者への認知を図っていきます。

 しかしながら、当社グループが事業環境の変化に適応できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(14)新株予約権等の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社グループの役員及び従業員に対し、新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新株予約権の株式数については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 17.株式報酬」に記載の通りです。

 

(15)資金調達について

 当社グループの事業資金は、その一部を金融機関からの借入等により調達しています。これにより、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下、業績の見通しの悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(16)景気変動に関するリスクについて

 当社グループの業績は、一般的に国内、シンガポール及びオーストラリアを中心とする海外の経済情勢に影響されるため、当社グループは、景気に大きく影響されにくい業界(国内は介護、建設、外国人管理受託、海外は政府系プロジェクト等)への営業を強化し、景気変動が業績に与える影響の緩和を図っています。

 必要に応じて、固定費の圧縮や、IT投資、新規事業投資の抑制、現預金の確保等必要な措置を講じ、機動的に経営の安定化を図ります。

 しかしながら、求人需要や消費の減少など、景気停滞が長期化する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1)業績

 当連結会計年度における世界経済は、各国におけるウィズコロナ政策の浸透によるコロナ禍からの経済正常化や供給制約の緩和、インフレ率の鈍化により、緩やかな回復が続いているものの、各国での金融政策の変動、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、中国経済の景気減速等、依然として先行き不透明な状況が続いています。

 わが国経済においては、新型コロナウイルスの5類感染症移行や感染リスクの低下に伴う経済活動の正常化が一段と進む中、個人消費やインバウンド需要の回復、雇用・所得環境の改善、日経平均株価の上昇が見られる等、緩やかな回復が続いています。しかしながら、海外景気の下振れリスク、エネルギー・原材料価格の上昇や、為替相場変動などに注視する必要があります。

 このような状況の下、当社グループは、2026年3月期を最終年度とした中期経営計画「WILL-being 2026」(以下、「本中計」という。)の基本方針である国内Working事業の再成長に向け、建設技術者領域の拡大、正社員派遣、外国人管理受託の拡大等に取り組みました。

 国内においては、セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域において新規案件開拓が伸び悩んでいるものの、最も注力している建設技術者領域は堅調に推移しました。また、国内における採用力強化を目的に、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションとして、2023年7月より西日本エリアを中心に初のTVCMを実施しました。プロモーション実施後のWILLOFの指名検索数は増加傾向にあり、オウンドメディア経由の採用数増加が期待されることから、継続して実施しています。

 海外においては、オーストラリアで一部顧客における採用抑制に伴う派遣稼働人数の減少により、人材派遣売上が減少しました。また、前年度におけるポストコロナの急激な人材紹介需要が一巡し、人材紹介売上も減少しました。

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益138,227百万円(前連結会計年度比4.0%減)、営業利益4,525百万円(同14.9%減)、税引前利益4,417百万円(同14.2%減)、当期利益2,878百万円(同16.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,778百万円(同14.1%減)、及びEBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費+減損損失)は6,810百万円(同8.7%減)となりました。

 

 セグメント別の業績は、次の通りです。

 

①国内Working事業

 国内におけるセールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域、介護ビジネス支援領域、建設技術者領域等カテゴリーに特化した人材派遣、人材紹介及び業務請負を行う国内Working事業については、セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域において新規案件開拓が伸び悩んでいるものの、最も注力している建設技術者領域は順調に推移しました。本中計の重点戦略としている建設技術者領域以外の正社員派遣、外国人管理受託の拡大については、計画より遅れているものの、建設技術者領域については、当連結会計年度において、新卒を含め1,200名以上が入社したことで、稼働人数が増加しました。また、既存顧客とのチャージアップに加え、新規決定時の単価交渉に注力したことで、収益性も改善しました。

 利益面においては、建設技術者領域、セールスアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域における採用費、外国人管理受託における営業人員の増員、ブランドプロモーション等の先行投資を実施しました。なお、第1四半期連結会計期間に株式会社ボーダーリンクの株式譲渡により786百万円を、当第4四半期連結会計期間にフォースタートアップス株式会社の株式売却により1,277百万円を、その他収益として計上し、両社を連結範囲から除外しています。

 以上の結果、国内Working事業は、外部収益82,528百万円(前年同期比1.9%減)、セグメント利益5,038百万円(同13.2%増)となりました。

 

②海外Working事業

 主にシンガポール、オーストラリアにおいて展開している海外Working事業については、人材紹介ではシンガポール、オーストラリアともに前年度におけるポストコロナの急激な人材紹介需要が一巡し、顧客の採用意欲が減速したことから、前年同期と比較して、売上収益が減少しました。人材派遣では、オーストラリアで金融業界を中心とした一部顧客における採用抑制に伴う派遣稼働人数が減少したことで、売上収益が減少しました。また、利益面においては、人材紹介売上の減少による売上総利益の縮小、人件費等の増加により減益となりました。

 以上の結果、海外Working事業は、外部収益55,432百万円(前年同期比3.7%減)、セグメント利益1,946百万円(同42.9%減)となりました。

 

③その他

 その他については、前連結会計年度末にハイブリィド株式会社の株式譲渡を行い、同社を連結範囲から除外したことにより減収となった一方、2024年3月に外国人雇用管理サポートサービス事業を吸収分割の方法により他社に承継しました。

 以上の結果、その他は、外部収益266百万円(前年同期比88.2%減)、セグメント損失225百万円(前年同期は296百万円の損失)となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1)生産実績

 当社グループの主たる事業は人材サービスの提供であり、その性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しています。

 

(2)受注状況

 生産実績と同様の理由により、記載していません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。

 

 

(単位:百万円)

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 前年同期比(%)

国内Working事業

82,528

98.1

海外Working事業

55,432

96.3

報告セグメント計

137,961

97.4

その他

266

11.8

 合計

138,227

96.0

(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」という。)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎、3.重要性がある会計方針」に記載の通りです。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は26,129百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,537百万円減少しました。これは主に、その他の流動資産が329百万円増加した一方、現金及び現金同等物が2,484百万円、営業債権及びその他の債権が415百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 非流動資産は25,413百万円となり、前連結会計年度末に比べ858百万円減少しました。これは主に、円安による為替換算の影響を受けたことによりのれんが616百万円、有形固定資産が135百万円それぞれ増加した一方、使用権資産が1,278百万円、その他の金融資産が316百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 以上の結果、総資産は51,543百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,396百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は24,533百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,880百万円減少しました。これは主に、その他の金融負債が751百万円、営業債務及びその他の債務が334百万円それぞれ増加した一方、借入金が4,271百万円、その他の流動負債が672百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 非流動負債は9,490百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,157百万円減少しました。これは主に、借入金が55百万円増加した一方、その他の金融負債が1,113百万円、繰延税金負債が121百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 以上の結果、負債合計は34,024百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,037百万円減少しました。

 

(資本)

 当連結会計年度末における資本合計は17,518百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,640百万円増加しました。これは主に、非支配持分が1,228百万円減少した一方、利益剰余金が1,769百万円、その他の資本の構成要素のうち、在外営業活動体の換算差額が1,164百万円それぞれ増加したこと等によるものです。

 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は34.0%(前連結会計年度末26.6%)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、3,828百万円の収入(前連結会計年度は4,816百万円の収入)となりました。これは主に、営業活動その他の支出2,489百万円、法人所得税の支払額1,565百万円等があった一方、税引前利益の計上4,417百万円、減価償却費及び償却費2,285百万円、営業債務の増加1,031百万円等があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、575百万円の支出(前連結会計年度は1,761百万円の支出)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入811百万円等があった一方、有形固定資産及び無形資産の取得による支出802百万円、投資活動その他による支出584百万円等があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、6,232百万円の支出(前連結会計年度は2,783百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,500百万円等があった一方、短期借入金の純減3,245百万円、長期借入金の返済による支出2,470百万円、リース負債の返済による支出1,335百万円、配当金の支払1,008百万円等があったことによるものです。

 

(4)重要な経営指標の分析

 国内においては、セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域において新規案件開拓が伸び悩んでいるものの、最も注力している建設技術者領域は堅調に推移しました。また、国内における採用力強化を目的に、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションとして、2023年7月より西日本エリアを中心に初のTVCMを実施しました。プロモーション実施後のWILLOFの指名検索数は増加傾向にあり、オウンドメディア経由の採用数増加が期待されることから、継続して実施しています。

 海外においては、オーストラリアで一部顧客における採用抑制に伴う派遣稼働人数の減少により、人材派遣売上が減少しました。また、前年度におけるポストコロナの急激な人材紹介需要が一巡し、人材紹介売上も減少しました。

 当連結会計年度における実績及び主な要因は以下の通りです。

 

(売上収益)

 当連結会計年度の売上収益は、138,227百万円となり、前連結会計年度に比べ4.0%減少しました。

 売上収益が減少した主な要因は、海外Working事業において、一部顧客における採用抑制に伴う派遣稼働人数が減少したことに加え、前年度におけるポストコロナの急激な人材紹介需要が一巡し、人材派遣売上、人材紹介売上が減少したことによるものです。

 

(売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は、30,446百万円となり、前連結会計年度に比べ4.1%減少しました。

 売上総利益が減少した主な要因は、国内海外Working事業において、紹介市場の低迷に伴う顧客の採用抑制等により、紹介売上が減少したことによるものです。

 その結果、売上総利益率は22.0%となり、前連結会計年度より0.1ポイント低下しました。

 

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、28,314百万円となり、前連結会計年度に比べ4.2%増加しました。

 販管費比率は20.5%となり、前連結会計年度より1.6ポイント上昇しました。

 販売費及び一般管理費が増加した主な要因は、本中計の重点戦略としている正社員派遣、外国人管理受託の拡大に向けて、採用費、営業人員、コンサルタント人員増員等の先行投資を実施したこと、国内における採用力強化を目的として、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションを実施したことによるものです。

 

(営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は、4,525百万円となり、前連結会計年度に比べ14.9%減少しました。

 営業利益が減少した主な要因は、連結子会社2社の株式売却益を計上した一方、海外紹介売上の減少、正社員派遣、外国人管理受託の拡大に向けての先行投資、ブランドプロモーションを実施したことによるものです。

 その結果、営業利益率は3.3%となり、前連結会計年度より0.4ポイント低下しました。

 

(EBITDA)

 当連結会計年度のEBITDAは、6,810百万円となり、前連結会計年度に比べ8.7%減少しました。

 EBITDAが減少した主な要因は、営業利益が減少したことによるものです。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

 当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少により、前連結会計年度に比べ457百万円減少の2,778百万円となりました。

 

(ROIC)

 当連結会計年度のROICは、営業利益率の低下に伴い税引後営業利益率が低下したことにより、13.4%(前連結会計年度は16.6%)となり、3.3ポイント低下しました。

 ROIC計算式:(営業利益×(1-税率))-非支配持分に帰属する当期利益)÷(前期:(親会社所有者帰属持分+長期借入金)+当期:(親会社所有者帰属持分+長期借入金)÷2)

 

(総還元性向)

 当連結会計年度の総還元性向は、36.4%となりました。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の事業には、景気の変動等による人材ビジネス市場規模への影響や競合他社の状況、法的規制等、経営成績に重要な影響を与えうる様々なリスク要因があります。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(6)経営戦略と今後の見通し

 今後の見通しについては、国内及び海外経済は緩やかに成長していく一方で、世界的な物価上昇や引き締め的な金融政策運営の長期化リスク、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクなど、先行き不透明な状況です。国内においては好調な企業業績を背景とした堅調な人材需要に対して採用環境が厳しさを増しています。また、当社グループが主に事業展開を行っているオーストラリア、シンガポールにおいては、コロナ禍の大規模な景気刺激策実施後のインフレや金利上昇等の景況感の悪化に加えて、コロナ後に急激に採用を増やした企業で人員過剰の状態になっており、こうした顧客が採用を抑制する動きが長期化することが懸念されます。

 このような状況の下、国内Working事業では、本中計の重点戦略として掲げている、建設技術者領域の拡大、外国人管理受託、正社員派遣の拡大に取り組みます。建設技術者領域の拡大は、未経験者の採用をさらに強化するとともに、定着率の維持・改善に向けた取り組み、契約単価上昇に向けた取り組みを実施します。正社員派遣の拡大については、採用環境の厳しさを踏まえ、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションの継続など採用力の強化施策を実施し、稼働人数の維持・拡大に取り組みます。外国人管理受託については、引き続きファクトリーアウトソーシング領域、介護ビジネス支援領域において顧客からの受注及び現地での採用を拡大していきます。2025年3月期は本中計シナリオ実現のために、建設技術者の採用、営業人員の採用等の先行投資を実施する予定です。

 海外Working事業では、各国経済の下振れリスクと人材派遣、人材紹介ともに低調な市況が長期化する懸念がある状況においても、優秀なコンサルタント人員の確保など、事業価値を毀損しない範囲での戦略的なコストマネジメントを実施し、人材紹介、人材派遣ともに需要回復後の拡大に備える取組みをしていきます。

 なお、当連結会計年度の営業利益には、株式会社ボーダーリンク及びフォースタートアップス株式会社の、一過性の子会社株式売却益2,063百万円が含まれるほか、フォースタートアップス株式会社の売上収益3,420百万円(当期実績)、営業利益543百万円(当期実績)がはく落する影響があります。

 

 これらにより、2025年3月期の通期連結業績予想は、売上収益140,400百万円(当連結会計年度比1.6%増)、営業利益2,290百万円(同49.4%減)、税引前利益2,190百万円(同50.4%減)、当期利益1,640百万円(同43.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,640百万円(同41.0%減)、EBITDAは4,232百万円(同37.9%減)を見込んでいます。上記の当連結会計年度に含まれる一過性の利益等を除外した場合の対前期増減率は、売上収益で4.1%増、営業利益で19.4%増です。

(ご参考)業績予想で前提としている為替レートは、1シンガポールドル104円(前期は94円)、1オーストラリアドル91円(前期は86円)です。

 

 *上記業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。引き続き当社グループの事業への影響を慎重に見極め、今後修正の必要が生じた場合には速やかに開示します。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して2,484百万円減少し、7,106百万円(前連結会計年度末比25.9%減少)となりました。

 当社グループは、財務の健全性を図りながら戦略投資を行っていきますが、資金需要については、その性質に合わせて主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入等を優先して対応していくこととしています。

 当社グループの資金の流動性は、連結子会社では、支払サイトが締め後20日、入金サイトが締め後30日となっています。一方、当社では、支払サイトが締め後30日、入金サイトが締め後30日となっています。連結子会社で資金需要が発生した場合には、当社の資金及び取引銀行と契約している当座貸越を使用し、連結子会社に貸し付けています。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3)キャッシュ・フローの分析」に記載の通りです。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。