第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションとして掲げ、ビジョンとして、「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Living(暮らす)」の各事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になる「WILLビジョン」を掲げています。競争が激化する中で顧客から選ばれ続けるために、特定の事業領域に特化し、そのカテゴリーにおけるサービス品質の強化を図っています。事業領域については、国内では、家電量販店等の販売現場、コールセンター、食品等の工場、介護施設、建設業等、海外では政府、行政といった比較的景気の変動の少ない領域でサービスを展開しています。

 人材サービス市場における、今後の見通しについては、国内及び海外経済は緩やかに成長していく一方で、世界的な物価上昇や引き締め的な金融政策運営の長期化リスク、ウクライナや中東情勢等の地政学リスクなど、先行き不透明な状況が続いています。また、国内においては好調な企業業績を背景とした堅調な人材需要に対し、採用環境が厳しさを増しており、当社グループが主に事業展開を行っているオーストラリア、シンガポールにおいては、コロナ禍の大規模な景気刺激策実施後のインフレや金利上昇等の景況感の悪化に加えて、コロナ後に急激に採用を増やした企業で人員過剰の状態になっており、こうした顧客が採用を抑制する動きが長期化することが懸念されます。

 このような状況の下、当社グループは、2026年3月期を最終年度とした中期経営計画「WILL-being 2026」(以下、「本中計」という。)の基本方針である国内Working事業の再成長に向け、建設技術者領域の拡大、正社員派遣、外国人管理受託の拡大等に取り組みます。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループの重視する経営指標は、売上収益、営業利益、売上高営業利益率としていましたが、2024年5月13日公表の「中期経営計画(WILL-being 2026)の修正に関するお知らせ」に記載の通り、本中計で掲げていた2026年3月期の業績目標である、売上収益、営業利益、売上高営業利益率を取り下げています。

 KPIは、正社員派遣採用人数/年(建設技術者領域)、正社員派遣定着率(建設技術者領域)、正社員派遣稼働人数(国内Working事業(建設技術者領域を除く))、外国人管理受託人数(国内Working事業)です。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループの持続的な成長の実現に向けては、停滞している国内Working事業の再成長が重要となります。そのため、本中計期間においては、国内Working事業の再成長を基本方針とし、再成長に向けた先行投資を積極的に行い、利益体質への転換を図るとともに、将来の飛躍的な成長を実現できる基盤を確立します。

 

 本中計のシナリオ実現に向けては、以下の3つ(戦略Ⅰ・Ⅱは国内Working事業、戦略Ⅲは海外Working事業)を重点戦略としています。

・戦略Ⅰ 建設技術者領域の更なる拡大及び利益創出を実現

・戦略Ⅱ 国内Working事業(建設技術者領域を除く)の再成長

・戦略Ⅲ 海外Working事業の安定した成長

 

 戦略の推進を最大化させるマネジメントにシフトし、2026年3月期以降の飛躍フェーズの実現を目指すために、以下のKPIの達成を優先して追求します。

・正社員派遣採用人数/年

(建設技術者領域)

→2026年3月期目標:1,500名

・正社員派遣定着率

(建設技術者領域)

→2026年3月期目標:71.5%

・正社員派遣稼働人数

(国内Working事業(建設技術者領域を除く))

→2026年3月期目標:3,500名

・外国人管理受託人数

(国内Working事業)

→2026年3月期目標:3,500名

 

(4)会社の対処すべき課題

 現状及び今後の経営環境を踏まえ、以下、当社グループが中長期観点から対処すべき課題を記載します。

 

①国内Working事業の再成長

 当社グループの持続的な成長の実現に向けては、停滞している国内Working事業の再成長が重要となります。そのため、以下の2点に取り組みます。

 (ⅰ)建設技術者領域の更なる拡大及び利益創出を実現

  2025年3月期に計画通り黒字化を達成した建設技術者領域は、引き続き伸長を見込んでおり、2026年3月期に事業の柱の1つにしていきます。

 

 (ⅱ)国内Working事業(建設技術者領域除く)の再成長

  外国人雇用支援、正社員派遣の拡大に取り組みます。外国人雇用支援の拡大については、営業人員の増加により新規オーダー獲得を強化するとともに、現地の法人や学校等との連携を深めることで、国内だけではなく海外在住の求職者の採用にも努めます。正社員派遣の拡大については、建設技術者領域、セールスアウトソーシング領域で培った採用ノウハウを、ファクトリーアウトソーシング領域をはじめとしたその他の領域にも展開していきます。また、今後採用環境が一層厳しくなることを見据え、自社ブランド強化に向けたブランドプロモーションを実施します。

 

②海外Working事業の安定した成長

 シンガポール、オーストラリアともに、ポストコロナの急激な人材需要が一巡して以降、主要顧客による採用抑制が長期化しており、人材紹介市場の見通しは不透明な状況です。このような状況の下、優秀なコンサルタント人員を確保しながら、需要回復後の人材紹介売上の拡大に取り組むとともに、ダウンサイドリスクを抑え、事業の安定性を高めるために、行政等の安定した領域における人材派遣売上の増加、コストコントロール、ガバナンスの強化に取り組みます。

 

③人材の確保と育成

 人材の確保は当社グループの成長の礎であり、競争上の優位性、持続的な成長を実現するためには、スタッフの採用、育成と定着が重要な課題です。

 2019年10月に主要子会社のサービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一し、採用力強化を目的にブランドプロモーションを実施しています。2025年3月期には当社の最大商圏である関東エリアを含む18都府県でテレビCMを実施したことに加え、ウェブCM、SNS等を利用したプロモーション戦略を展開しており、プロモーション実施後のWILLOFの指名検索数は増加傾向にあり、オウンドメディア経由の採用数増加が期待されることから、継続して実施しています。これにより、当社グループ全体の認知度及び採用力向上に取り組み、採用力を強固なものにしていきます。

 育成、定着においては、就業先での必要なスキルやマインドを取り込んだ就業前、就業期間中における研修を更に充実させ、就業しているスタッフに対する定期的なフォローアップを行っていくとともに、資格奨励金や給与評価制度の見直し等により定着率を高めていきます。

 

④サステナビリティの強化

 当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう以下の取り組みを行っています。

 (ⅰ)環境への取組み

  災害に対するレジリエンスの強化を図るとともに、気候変動については環境方針を定め、脱炭素社会実現に貢献する取組みを進めています。また、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同表明するとともに、2023年1月にTCFDコンソーシアムに加入し、TCFDの枠組みに基づく気候関連の情報開示を行っています。

 

 (ⅱ)社会への取組み

  当社グループが持続的な成長を遂げていくためには、画一的な視点にとらわれず、多様な人材の活躍が必要不可欠であると考えています。性別・年齢・国籍・障がいなどにとらわれず、社員一人ひとりが自律したキャリアを形成できるよう支援しています。また、技術革新により、求められる人材・職種が大きく変化し、今以上に需給ギャップが生じる見込みです。そのため、働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”に取り組んでいきます。

 

 (ⅲ)ガバナンスへの取組み

  過半数が独立社外役員で構成される任意の諮問委員会である指名委員会及び報酬委員会の設置、取締役会の実効性評価を外部の助言を得ながら継続的に実施する等、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションに掲げ、ひとりでも多くの人を、ひとつでも多くの組織をポジティブに変革していくことを目指し、持続的な成長を実現してきました。これからも世の中にポジティブな変化を生み出し、持続的に成長し続けていくために、社会の変化を的確に捉え、ステークホルダーの皆さまとともに未来に向けてサステナブル(持続可能)な社会の実現に貢献していきます。

 

①ガバナンス

 当社グループはサステナビリティへの対応を経営の重要課題の一つと位置付け、グループ全体の持続的な成長と社会課題の解決を両立させるために「サステナビリティ委員会」を設置しています。委員長は代表取締役社長が務め、委員は当社社内取締役、当社執行役員及び国内主要子会社の取締役で構成され、原則年2回開催しています。サステナビリティに関する方針、重点課題やKPIの設定・モニタリング・見直し等を協議・策定し、重要事項は取締役会で審議されます。また、経営企画本部内にサステナビリティ推進組織を設け、全社横断的な推進体制を敷いています。

 

<サステナビリティに関する主な活動>

2020年10月

サステナビリティ推進プロジェクトの発足

2021年9月

重点課題の特定

2021年11月

サステナビリティ方針の策定

2021年12月

グループ初となる統合報告書の発行

2022年3月

重点課題KPIの設定

2022年10月

第一回サステナビリティ委員会の開催

2023年5月

重点課題の見直し

2023年6月

人権方針等の見直し

2023年8月

重点課題KPIの見直し

2023年10月

Web版統合報告書の公開

2024年4月

重点課題KPIの見直し

2024年10月

第五回サステナビリティ委員会の開催

 

②戦略

 当社グループで働くすべての人がWell-being※であることにより、世の中にポジティブな変化を生み出し、企業価値の向上につながると考えています。

 事業における重点課題として、中期経営計画で掲げている「働く人をエキスパートにするキャリアパスの“最大化”と“最適化”」を通じて「職のミスマッチ」を解消していきます。また、企業基盤における重点課題として、「人的資本の強化」「災害レジリエンスの強化」「強固なガバナンス体制の構築」を土台に、「Well-beingの向上」を実現します。

 ※当社グループでは、Well-beingを「身体的、精神的、社会的に良好な状態」と定義しています。

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③リスク管理

 環境、社会、ガバナンス等サステナビリティを巡るリスクと機会の双方に対応することは、長期的な成長と企業価値の向上に不可欠であると認識しています。

 当社グループは国際的なガイドラインを参考に、社内外のステークホルダーとの対話や事業活動の分析を通じて、当社グループにとっての重点課題を特定し、それぞれに対するリスク低減及び機会活用の取り組みを推進しています。

 具体的には、サステナビリティに関するリスクや機会の識別・評価・管理については、サステナビリティ委員会を中心に運用しており、当該委員会では定期的に気候変動や人権尊重等、関連テーマの議論を行っています。対応状況は定期的にモニタリングし、必要に応じて取組方針や体制の見直しを実施しており、サステナビリティ課題に対する機動的かつ実効的な対応を図っています。

 

④指標及び目標

 重点課題である「Well-beingの向上」「職のミスマッチの解消」「人的資本の強化」「災害レジリエンスの強化」「強固なガバナンス体制の構築」において、あるべき姿、指標及び目標を設定し、外部環境の変化に伴う社会の課題や期待に応えられるよう、適宜見直しをしています。

 人的資本に関する指標及び目標については、本章「(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標」に記載しています。その他の指標及び目標は、統合報告書等において継続的に開示しており、社会や投資家からの要請を踏まえ、将来的には有価証券報告書でも段階的な情報拡充を予定しています。

 進捗は、当社ホームページに掲載の統合報告書2024及び2025年10月に発行予定の統合報告書2025をご確認ください。

(ウィルグループ統合報告書2024:https://willgroup.co.jp/integrated_report/2024/

 

(2)気候変動に関する取組み

 当社グループは、「2031年3月期までに2020年3月期比でCO2の排出量を総量20%削減」を環境目標として定め、脱炭素社会実現に貢献する取り組みを進めています。また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、2023年1月にTCFD コンソーシアムへ加入し、枠組みに則った関連情報の開示をしています。

 気候変動に関する取組みの詳細については、当社ホームページに開示しています。今後も段階的に情報開示を進め、全体的な開示内容の質と量についても、充実させていきます。

(環境への取組み: https://willgroup.co.jp/sustainability/environment/ )

 

(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標

(人材育成方針及び社内環境整備方針)

 当社では現在の中期経営計画において、人材サービスを通じて「働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”を実現していく」ことを標榜し、「人的資本の強化」を取り組むべき重点課題と位置付けています。持続可能な成長を実現するためには、社員一人ひとりのWell-beingや働きがい、多様性を育む必要があると考えるため、以下7つの指標に関する取組みを強化するとともに、積極的に開示していきます。

 なお、各指標は当社及び国内連結子会社に優先すべき課題があると考えているため、在外子会社を含めず、当社及び国内Working事業に含まれる連結子会社を対象としています。

 

①Well-beingスコア

 当社グループでは、2019年4月からサーベイを活用しWell-beingスコアの計測をしています。Well-beingが高まることは生産性と創造性の向上につながると考えており、当社グループで働くすべての人がWell-beingであること、ひいては企業価値の向上を実現していきます。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

Well-beingスコアpt

66.5

66.4

66.0

66.5

 

②職場の幸せ力スコア

 Well-beingの一要素に「安心安全な風土」「信頼関係のある職場の雰囲気」「チャレンジを推奨する雰囲気」「職場オススメ度」で構成される「職場の幸せ力」と定義される項目があります。職場の幸せ力が高まることは社員の『働きやすさ』につながると考えており、自走できる“強い組織”づくりをしていきます。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

職場の幸せ力スコア

69.2

69.6

69.1

69.6

 

③働きがいスコア

 当社グループが考える働きがいとは「働きやすさ」と「仕事のやりがい」の掛け合わせであると考えているため、いずれも大切にしつつ、当社グループで働く社員の働きがいを高めることで“個の活躍”を最大化していきます。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

働きがいスコア

52.9

57.0

58.3

62.5

(注)働きがいスコアとは当社が年に一度実施するアンケートの「Q.今の組織や仕事において働きがいを感じているか」の問に対し、5段階評価にて「強く感じている」又は「感じている」と回答した社員の割合を示したものです。

 

④女性の管理職比率

 ミッションやビジョンの実現に向けて、世の中にポジティブな変化を生み出すためには、社会によって作り上げられた男性像や女性像に捉われない、多様な“個の活躍”は必要不可欠です。女性の管理職比率を高め、新たな価値創造に向けて進化していきます。

 女性の管理職比率については、決算年月の翌日4月1日時点の数値を算出しています。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

女性の管理職比率

14.9

16.1

18.5

22.0

 

⑤女性の管理職昇格希望割合

 多様な“個の活躍”に向けては、多様な人材の“意志”は欠かせません。特には当社グループで働く女性社員の管理職昇格希望割合を高め、彼女たちの作りたい未来、生み出したい価値、提供したいサービスを顕在化させ、イノベーティブな組織づくりにつなげていきます。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

女性の管理職昇格希望割合

24.8

24.7

22.7

36.0

 

⑥男性の育休取得率

 ジェンダー平等の追求は企業の社会的責任ともいえ、男性の育休取得率はその一つの証左であると考えています。もはや女性活躍なくして日本の労働社会は成立せず、女性の更なる活躍を後押しする重要なポイントは『男性の家庭での活躍』であり、男性の育休取得率向上を実現します。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

男性の育休取得率

41.2

35.5

42.6

50.0

(注)男性の育休取得率については、2025年3月期より集計方法を変更しました。従来の正社員・契約社員のみを対象とした集計から、正社員派遣及び派遣スタッフも含めた全従業員を対象とした集計に変更したため、過去年度の数値を再集計しています。これに伴い、2026年3月期の目標値についても、従来の70%から50%へ見直しを行っています。

 

⑦男女の賃金格差

 男女の賃金格差の是正に取り組むことはジェンダー平等に向けた重要な取組みテーマであり、公正な評価と報酬システム確立が欠かせません。男女の賃金格差をなくすことはもちろん、昇進や異動などの機会格差さえもなくし、多様性に富む組織へと進化していきます。

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

(目標)

2026年3月

男女の賃金格差

72.2

72.0

72.6

73.0

(注1)男女の賃金格差については、2025年3月期より集計方法を変更しました。正社員・契約社員について、勤続期間を問わず全社員を対象とした集計から、正社員派遣及び派遣スタッフと同様に勤続8か月以上を対象とした集計に変更したため、過去年度の数値を再集計しています。これに伴い、2026年3月期の目標値についても、従来の76.6%から73.0%へ見直しを行っています。

(注2)前連結会計年度末に比べ従業員の男女の賃金格差は0.6%縮小しています。格差が生じている主な理由は、男女の管理職比率、短時間勤務の社員割合、中途社員の初任給設定の偏りによるものです。詳細の分析を進め、格差の是正に向けて女性活躍推進に取り組んでいます。

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

項目

(1)特定事業への依存について

内容

 

 当社グループは、業種別に特化型での人材サービス(人材派遣、業務請負及び人材紹介)を展開しており、連結売上収益における構成比は、国内Working事業における主要な3領域の人材サービス(セールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域)を中心とした既存領域に依存しています。今後の事業を取り巻く環境の変化等により、当該3領域の売上が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 また、国内Working事業における介護ビジネス支援領域、建設技術者領域や海外Working事業等、次の柱になり得る事業の成長を推進しており、主要な3領域に係る売上収益の構成比は低下していくことを想定していますが、計画通りに進まず、主要な3領域への売上収益の依存が低下しなかった場合は、当事業の売上収益の変動が当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

 次の柱になり得る事業、国内Working事業における介護ビジネス支援領域、建設技術者領域や海外Working事業等の成長を推進し、事業ポートフォリオのバランスを考慮したポートフォリオの多様化について継続して取り組みます。

 

 

項目

(2)事業の許認可について

内容

 

 当社グループにおいて、重大な法令違反が発生し、許可の取消し、又は事業の停止を命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動全体に支障をきたすことが想定され、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(労働者派遣事業)

 国内における人材派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣元事業主として欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取消しや事業の全部又は一部を停止できる旨を定めています。

 

(職業紹介事業)

 国内における人材紹介事業は、職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っています。職業安定法においても、派遣法と同様に、有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合には、許可の取消しや業務の全部又は一部の停止を命じることができる旨を定めています。

 

対応策

 

 事業を適正に運営していくため、各国の関連法令等に従い、社内コンプライアンスに関する社内教育や業務システム等の仕組みづくりを、随時ブラッシュアップしていくとともに、内部監査等により関連法規の遵守状況を日頃より監視し、法令違反等の防止に努めています。

 

 

 

項目

(3)人材の確保について

内容

 

(社員)

 当社グループが競争上の優位性の確保、事業環境の変化への対応、及び持続的な成長を可能とするためには、優秀な人材の確保と育成が重要な経営課題です。係る人材の確保又は育成が計画通りにできない場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、競合他社に重要な人材が流出した場合や、想定以上に多くの離職が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(スタッフ)

 当社グループの事業活動の重要な要素のひとつにスタッフの確保があります。当社グループの継続的な成長のためには、スタッフの採用と育成が重要な課題です。

 

対応策

 

(社員)

 多様な人材が活躍できる風土作り、各種制度の整備を通じて働きやすい職場環境を提供することで、優秀な人材の流出を防ぐとともに、企業ブランディングにより知名度や信頼性を向上することで、優秀な人材の確保に努めています。

 

(スタッフ)

 募集方法を多様化し、独自のWeb募集媒体に重点をおくことや、オンラインでの登録やカウンセリング、友人紹介キャンペーン、採用拠点の設置などの施策を実施しています。また、週5日未満や短時間勤務など主婦、シニア、留学生向けのフルタイム以外の案件獲得にも取り組んでいます。

 

 

項目

(4)法改正について

内容

 

 当社グループが事業を営んでいる国や地域における法律、規制等については、労働市場を取り巻く環境の変化等に応じて改正される可能性があります。とりわけ、国内における派遣対象業務や派遣期間制限については、適宜改正が実施されており、その改正内容によっては、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(社会保険制度)

 当社グループでは、従業員に加え、社会保険加入要件を満たすスタッフの社会保険への加入を徹底しています。社会保険料の保険料率や対象範囲は、社会的情勢によって適宜改定されていることから、社会保険制度の改正に伴い、会社負担金額が大幅に上昇した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(労働契約法)

 2013年4月に改正労働契約法が施行され、施行日以降に開始した有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)に転換する仕組みが導入されました。これにより、当社グループで派遣スタッフ等を無期雇用する場合、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。

 また、2020年4月1日より施行された同一労働同一賃金に関する法律では雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、不合理な待遇差がある場合、その格差是正が求められています。このような場合、原価率が上昇するなど、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・当社法務部門が常に、当社グループのビジネスに関連する法律・規制等の改正動向などを注視し、法律・規制等に対応する必要が発生した場合については、適時適切に関係各所へ伝達することとしており、都度タイムリーな経営判断を行い対応しています。

 

・派遣スタッフ等の賃金や社会保険料などのコスト上昇リスク低減のためには、法改正等により上昇したコストを適切に請求単価に反映させるとともに、取引先企業への請求料金改定の交渉を適切に行うことにより、対応していきます。特に無期派遣の事業モデルにおいては、事業責任者の監督のもと、適正な請求単価維持のための取組みと進捗管理を継続的に行い、収益性の確保に努めています。

 

 

 

項目

(5)競争の激化について

内容

 

・当社グループが属する人材サービス業界は、多数の競合他社が存在します。競争がさらに激化した場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

・当社グループが技術革新、顧客のニーズ又は嗜好の変化等に対応できないこと、競合他社間の合併・統合等により、当社グループの競争力を維持できない場合、当社グループが市場シェアを失う可能性があります。

 

対応策

 

・顧客からニーズを把握した後にそれに対して対応可能なスタッフを募集し、顧客に対して的確かつ迅速な対応を行うことで、高い顧客満足度を得て競合他社との差別化を図っています。

 

・当社グループは競争力を維持するために、顧客のマインドシェア、インストアシェアを拡大するために、供給力の強化、労務管理の強化、請負化などを提案し収益性の維持、向上を図っています。

 

 

項目

(6)将来の企業又は事業の買収について

内容

 

・企業又は事業の買収(以下、「M&A」という。)は、当社グループの主要な経営戦略の一つと考えています。M&Aにおいては、成立後、統合上の業務プロセスの不備、異なる企業文化の統合による摩擦の発生に伴う業務の停滞や業績の低下、従業員の離職や内部対立の顕在化等、様々なリスクが内在しているため、想定通りにM&Aを行った後の経営の統合を実行するプロセス(以下、「PMI」という。)が遂行できなかった場合には、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性があり、このような事象が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

・M&Aに伴い発生するのれんは、帳簿価額を回収できない可能性がある場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を損失として計上する可能性があります。したがって、のれんの対象事業の将来キャッシュ・フローの見込みによっては減損損失を計上することになり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・M&A成立時に想定した効果を最大限に発揮させるため、詳細なデューデリジェンスに加え、PMIを適切に進めることが非常に重要であると考え、当該PMIプランを迅速かつ長期的な視点で策定しています。

 

・M&A検討時におけるバリュエーション(価値算定)の適正性を高めるために第三者機関との綿密な確認作業を行うほか、実行後の事業継承計画を入念に検討すること、PMIのモニタリング強化、のれんの回収可能性に変化が生じた場合、経営者と改善のためのディスカッションを行う等により、減損損失リスクに対処しています。

 

 

項目

(7)海外における事業展開について

内容

 

 当社グループは、事業のグローバル展開を標榜しており、現時点において、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、中国、ベトナム、イギリス、ドイツ及びスイスに営業拠点を有しています。これら海外展開においては、各国における景気変動リスク、為替変動リスク、政府による規制、政治的な不安定さ及び資金移動の制約等に起因するカントリーリスク等が存在しています。

 このような不測の事態が生じた場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・当社グループでは、シンガポールに統括拠点として中間持株会社をおき、事業遂行上の環境変化(各国の法改正や最新の現地当局の動向等)について随時情報を把握するとともに、資産集中の防止など各国の案件ごとにその回避策を講じて事業を推進しています。

 

・事業の展開には、対象国の法務や税務の顧問と連携し早期のカントリーリスク調査による専門的なアドバイスを基に定期的なリスクの低減に努めています。

 

 

 

項目

(8)個人情報の取り扱いについて

内容

 

 当社グループは、事業の特性上、派遣登録者や転職希望者等の個人情報や機密情報を保有しています。不測の事態が原因で、個人情報や機密情報が外部に漏洩し、情報主体者に被害が発生した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜、EU一般データ保護規制(GDPR)による制裁金により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・個人情報の取扱いについては、2022年4月に改正された個人情報の保護に関する法律を踏まえ、社内体制の整備、定期的な研修、情報管理の強化等、個人情報の取扱いに十分な注意を払っています。グループ企業の一部においては、プライバシーマークやISMS等の認証取得も行うことで、客観的なグループの情報管理水準の確認を行っているほか、万が一に備えた個人情報漏洩保険への加入等によりリスク軽減措置をとっています。

 

・ヨーロッパに拠点を持つ子会社のThe Chapman Consulting Group Pte. Ltd.ではGDPR、シンガポールでは Personal Data Protection Act、オーストラリアにおいても個人情報保護法に沿ったガイドラインを保有、運用しています。

 

 

項目

(9)法令遵守に関するリスクについて

内容

 

(全般的なリスク)

 当社グループの事業活動における関連法令は、国内における各種法規制(派遣法、職業安定法、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、健康保険法及び厚生年金保険法等)、海外における各国の各種法規制(雇用機会均等法等)、新規事業に関連する各種法令等、多岐にわたります。万一、これらの対策を行っていたとしても、グループ各社の役職員やスタッフによる不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスク、又は人権等の問題を含め社会的に信用が失墜するリスクを完全に排除できない場合があり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(重大な訴訟等によるリスク)

 当社グループは、主として人材派遣事業及び人材紹介事業等を営んでいます。その事業活動の遂行過程において、顧客、求職者、競合他社、その他の関係者等から、当社グループが提供するサービスの不備、個人情報や機密情報の漏洩又は知的財産の侵害等に関する訴訟その他の法的手続きを提起される場合や、当局等による捜査や処分等の対象となる場合があり、これらの法的手続に関連して多額の費用の支出や、事業活動に支障をきたす可能性があります。また、係る法的手続は長期かつ多額となることや、結果の予測が困難となる場合があり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・法令遵守を重要な企業の責任と認識しており、コンプライアンス体制を強化し、法令遵守の徹底を図っています。

 

・万一、訴訟の提起等を受けた場合には、専門部署(法務)が外部の専門家と協同の上、適時適切に対応しています。

 

 

項目

(10)自然災害及び有事に関する影響について

内容

 

 当社グループは、日本全国及びシンガポール・オーストラリアを中心として世界各国に営業拠点を有しており、地震、台風及び津波等の自然災害、大規模の火災や停電、新型感染症、テロ攻撃及び国際紛争等が発生した場合、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があり、これらを完全に回避することができず、被害が発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

 大規模地震、洪水等の自然災害や感染症への備えとして従業員及び派遣スタッフの安否を確認し、安全を確保するための危機管理体制を構築し、災害に備えています。また、事業拠点の機能分散や情報資産のクラウド化など事業継続のための施策も講じています。

 

 

 

項目

(11)情報システムに関するリスクについて

内容

 

 当社グループの事業活動は、IT(コンピュータシステムやネットワーク等)に依存しており、これらITの開発、維持及び管理を一部第三者に委託しています。また、格付け基準の高いデータセンターの利用や、クラウドサービスの利用等により、大規模地震等の自然災害発生時におけるシステムの可用性の確保やリモートワーク環境の構築を実現している他、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス対策を実装し、事業継続性を確保しています。しかしながら、万一、何らかの原因によって大規模なシステム障害が発生した場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

対応策

 

・事業活動を支える基幹システム等の主要システムをTier4レベルのデータセンターに構築し、大規模地震等の自然災害発生時におけるシステムの可用性を確保しています。加えて、交通機関の停止や感染症等によりオフィスに出社できない場合の業務継続性を確保する為に、リモートワーク環境を構築しています。

 

・大規模システム障害等が発生した時の業務影響を軽減するとともに、再発防止策を確実に実行する為に、「IT管理規程」にシステム障害対応方針を定義、システム障害管理態勢の整備をしています。

 

・新たにITの開発、維持・管理の委託先を選定する際は、「委託先選定チェックリスト」に則って選定することとしており、委託する業務と類似の内容・規模の実績があるかを事前に確認することで、システムの品質確保に努めています。

 

 

項目

(12)業界を取り巻く環境の変化について

内容

 

 当社グループが事業を展開する市場の多くにおいて、近年のIT技術の急速な発達に伴い、インターネットを媒体としたオンラインサービスへの移行が進み、人的な営業力や物流ネットワーク等に起因する既存の新規参入障壁が低くなったことで、ユーザーがサービスを切り替えることも比較的容易になりました。また、今後国内外においてSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等を利用したオンラインのコミュニケーションが活発化し、顧客とユーザーを直接マッチングすることが可能となる等、特に人材派遣事業及び人材紹介事業において、競争が更に激しくなる可能性があります。これにより現在の市場シェアを維持できなくなり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

 既存事業領域のサービス力及びブランド力の向上施策、コーポレートベンチャーキャピタルを活用した新たに創出されるビジネス機会を捉えるための施策等、様々な収益基盤の拡大施策を実施しています。2019年10月に、当社グループ全体の認知度及びサービス向上を目指すため、国内主要子会社のサービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一しました。「Chance-Making-Company」のブランディングを実施することにより、求職者への認知を図っていきます。

 

 

項目

(13)株式価値の希薄化について

内容

 

 当社は、当社グループの役員及び従業員に対し、新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新株予約権の株式数については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 17.株式報酬」に記載の通りです。

 

対応策

 

 今後新規発行する場合、基準の確認や他の上場企業との比較等を行う他、1株当たりの利益の希薄化が最小限となるよう考慮して行います。

 

 

 

項目

(14)資金調達について

内容

 

 当社グループの事業資金は、その一部を金融機関からの借入等により調達しています。これにより、景気の後退、金融市場の悪化、金利の上昇、当社グループの信用力の低下、業績の見通しの悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達を行えない場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

 必要な資金調達ができなくなる事態に備え、常に一定の手許流動性の確保に努め、今後は、金利が直近の上昇に加えさらに上昇する可能性もあり、固定金利での調達やスワップ取引等による金利リスク削減の施策など、市場の動向を見ながら検討していきます。

 

 

 

項目

(15)景気変動に関するリスクについて

内容

 

 当社グループは、一般的に国内、シンガポール及びオーストラリアを中心とする海外の経済情勢に影響されるため、求人需要や消費の減少など、景気停滞が長期化する場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

対応策

 

・景気に大きく影響されにくい業界(国内は介護、建設、外国人雇用支援、海外は政府系プロジェクト等)への営業を強化し、景気変動が業績に与える影響の緩和を図っています。

 

・必要に応じて、固定費の圧縮や、IT投資、新規事業投資の抑制、現預金の確保等必要な措置を講じ、機動的に経営の安定化を図ります。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

 当連結会計年度における世界経済は、各国におけるインフレ率の鎮静化を背景に、緩やかな成長を持続しているものの、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化、米国の通商政策による影響など、依然として先行き不透明な状況が続いており、これらの影響を引き続き注視していく必要があります。

 日本経済は、賃上げや企業の設備投資意欲が継続するなど景気に前向きな動きはありましたが、物価上昇による個人消費の陰り等が影響し、緩やかな回復にとどまりました。また、米国政府が打ち出した関税政策を巡る懸念から、世界経済の先行き不透明感が強まり、日本経済を下押しするリスクが高まりました。

 このような状況の下、当社グループは、2026年3月期を最終年度とした中期経営計画「WILL-being 2026」(以下、「本中計」という。)の基本方針である国内Working事業の再成長に向け、建設技術者領域の拡大、正社員派遣、外国人雇用支援の拡大等に取り組みました。

 国内においては、コールセンターアウトソーシング領域を除き堅調に推移しました。特に、戦略投資領域である建設技術者領域は順調に拡大し収益化を達成しました。また、国内における採用力強化を目的に、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションとして、当社の最大商圏である関東エリアを含む18都府県でテレビCMを実施したことに加え、ウェブCM、SNS等を利用したプロモーション戦略を展開しました。

 海外においては、ポストコロナの急激な人材需要が一巡して以降、インフレ圧力による影響も加わり、主要顧客の採用抑制が長期化していることから、継続的な利益体質の強化に向けたコストコントロールを実施し、人材需要が低迷している状況下において持続的な収益の確保に向けた対策を継続しています。

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益139,705百万円(前連結会計年度比1.1%増)、営業利益2,338百万円(同48.3%減)、税引前利益2,177百万円(同50.7%減)、当期利益1,141百万円(同60.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,155百万円(同58.4%減)、及びEBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費+減損損失)は4,896百万円(同28.1%減)となりました。

 

 セグメント別の業績は、以下の通りです。

 

(1)国内Working事業

 国内におけるセールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域、介護ビジネス支援領域、建設技術者領域等カテゴリーに特化した人材派遣、人材紹介及び業務請負を行う国内Working事業については、コールセンターアウトソーシング領域の低迷が続いているものの、それ以外の領域は堅調に推移しました。特に、最も注力している建設技術者領域のKPI(重要業績評価指標)のうち「年間採用人数」については、当連結会計年度において、新卒を含め過去最高の1,700名以上(計画比142%)の入社を達成し、稼働人数の積み上がりが国内Working事業の売上収益の増加に寄与しました。また、旺盛な人材需要を背景に契約単価の交渉も順調に進展しています。

 利益面においては、前連結会計年度に含まれる子会社株式売却益がはく落したこと、連結除外の影響により減益となりました。

 以上の結果、国内Working事業は、外部収益83,099百万円(前年同期比0.7%増)、セグメント利益3,251百万円(同35.5%減)となりました。

 

(2)海外Working事業

 主にシンガポール、オーストラリアにおいて展開している海外Working事業については、主要顧客において採用を抑制する傾向が継続している一方、為替レートが前年同期比で円安に推移したこと等により増収となりました。

 利益面においては、売上総利益の低下を為替変動の影響、シンガポールの政府補助金収入及び市況悪化の長期化に備えた継続的なコストコントロールにより補いましたが、オーストラリアの連結子会社に係るのれんの減損損失473百万円を計上したこと等により減益となりました。

 以上の結果、海外Working事業は、外部収益56,448百万円(前年同期比1.8%増)、セグメント利益1,432百万円(同26.4%減)となりました。

 

(3)その他

 その他については、前連結会計年度に外国人雇用管理システム「ビザマネ」、当連結会計年度に外国人向けモバイル通信事業「ENPORT mobile」の事業譲渡を行ったほか、不動産の売却を行ったことにより、外部収益157百万円(前年同期比40.7%減)、セグメント損失223百万円(前年同期は225百万円の損失)となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1)生産実績

 当社グループの主たる事業は人材サービスの提供であり、その性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しています。

 

(2)受注状況

 生産実績と同様の理由により、記載していません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、以下の通りです。

 

 

(単位:百万円)

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

国内Working事業

83,099

100.7

海外Working事業

56,448

101.8

報告セグメント計

139,547

101.1

その他

157

59.3

 合計

139,705

101.1

(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日において当社グループが判断したものです。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定により、IFRS会計基準に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎、3.重要性がある会計方針」に記載の通りです。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は26,551百万円となり、前連結会計年度末に比べ421百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が169百万円減少した一方、営業債権及びその他の債権が623百万円増加したこと等によるものです。

 非流動資産は23,371百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,042百万円減少しました。これは主に、持分法適用除外に伴う振替、貸付の実施及び投資有価証券の取得等によりその他金融資産が1,002百万円増加した一方、使用権資産が679百万円、その他の非流動資産が655百万円、その他の無形資産が504百万円、減損及び為替影響等によりのれんが571百万円、持分法で会計処理されている投資が431百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 以上の結果、総資産は49,923百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,620百万円減少しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は25,208百万円となり、前連結会計年度末に比べ674百万円増加しました。これは主に、その他の金融負債が689百万円、未払法人所得税が482百万円それぞれ減少した一方、借入金が1,513百万円、営業債務及びその他の債務が471百万円それぞれ増加したこと等によるものです。

 非流動負債は7,354百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,135百万円減少しました。これは主に、その他の金融負債が1,200百万円、借入金が838百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 以上の結果、負債合計は32,563百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,461百万円減少しました。

 

(資本)

 当連結会計年度末における資本合計は17,359百万円となり、前連結会計年度末に比べ158百万円減少しました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上1,155百万円及び配当金の支払1,011百万円により利益剰余金が143百万円、その他の資本性金融商品が132百万円それぞれ増加した一方、在外営業活動体の換算差額が388百万円、非支配持分が42百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は34.8%(前連結会計年度末34.0%)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、1,806百万円の収入(前連結会計年度は3,828百万円の収入)となりました。これは主に、法人所得税の支払額1,800百万円、営業債務の減少額615百万円、営業債権の増加額591百万円等があった

一方、税引前利益の計上2,177百万円、減価償却費及び償却費2,084百万円、減損損失473百万円等があったことによる

ものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、695百万円の支出(前連結会計年度は575百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出361百万円、貸付金の貸付による支出300百万円、投資有価証券の取得による支出299百万円等があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,233百万円の支出(前連結会計年度は6,232百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純増額1,365百万円、長期借入れによる収入800百万円等があった一方、長期借入金の返済による支出1,566百万円、リース負債の返済による支出1,324百万円、配当金の支払額1,011百万円等があったことによるものです。

 

(4)重要な経営指標の分析

 当連結会計年度における実績及び主な要因は以下の通りです。

 

(売上収益)

 当連結会計年度の売上収益は、139,705百万円となり、前連結会計年度に比べ1.1%増加しました。

 売上収益が増加した主な要因は、国内Working事業において、戦略投資領域である建設技術者領域が順調に拡大し収益化を達成したことに加え、海外Working事業において、為替レートが前連結会計年度比で円安に推移したことによるものです。

 

(売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は、29,383百万円となり、前連結会計年度に比べ3.5%減少しました。

 売上総利益が減少した主な要因は、海外Working事業において、ポストコロナの急激な人材需要が一巡して以降、インフレ圧力による影響も加わり、主要顧客の採用抑制が長期化し、主に紹介売上が減少したことによるものです。

 その結果、売上総利益率は21.0%となり、前連結会計年度より1.0ポイント低下しました。

 

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、27,270百万円となり、前連結会計年度に比べ3.7%減少しました。

 販管費比率は19.5%となり、前連結会計年度より1.0ポイント低下しました。

 販売費及び一般管理費が減少した主な要因は、本中計の重点戦略としている正社員派遣、外国人雇用支援の拡大に向けて、採用費、営業人員、コンサルタント人員増員等の先行投資を実施、国内における採用力強化を目的として、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションを実施等により販売費及び一般管理費が増加したものの、子会社の連結除外による販売費及び一般管理費の減少影響が大きかったことによるものです。

 

(営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は、2,338百万円となり、前連結会計年度に比べ48.3%減少しました。

 営業利益が減少した主な要因は、前連結会計年度に含まれる子会社株式売却益がはく落したこと、子会社の連結除外による営業利益の減少影響及び、オーストラリアの連結子会社に係るのれんの減損損失473百万円を計上したこと等によるものです。

 その結果、営業利益率は1.7%となり、前連結会計年度より1.6ポイント低下しました。

 

(EBITDA)

 当連結会計年度のEBITDAは、4,896百万円となり、前連結会計年度に比べ28.1%減少しました。

 EBITDAが減少した主な要因は、営業利益が減少したことによるものです。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

 当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少により、前連結会計年度に比べ1,623百万円減少の1,155百万円となりました。

 

(ROIC)

 当連結会計年度のROICは、営業利益の減少に伴う税引後営業利益率の低下により、5.7%(前連結会計年度は13.4%)となり、7.7ポイント低下しました。

 ROIC計算式:(営業利益×(1-税率))-非支配持分に帰属する当期利益)÷(前期:(親会社所有者帰属持分+長期借入金)+当期:(親会社所有者帰属持分+長期借入金)÷2)

 

(総還元性向)

 当連結会計年度の総還元性向は、87.9%となりました。詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の事業には、景気の変動等による人材ビジネス市場規模への影響や競合他社の状況、法的規制等、経営成績に重要な影響を与えうる様々なリスク要因があります。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(6)経営戦略と今後の見通し

 今後の見通しについては、国内及び海外経済は緩やかに成長していく一方で、世界的な物価上昇や、ウクライナや中東情勢等の地政学リスク、各国の通商政策など、先行き不透明な状況です。国内においては好調な企業業績を背景とした堅調な人材需要に対して、採用環境が厳しさを増しています。また、当社グループが主に事業展開を行っているシンガポール、オーストラリアにおいては、コロナ禍の大規模な景気刺激策実施後のインフレや金利上昇等の景況感の悪化に加えて、コロナ後に急激に採用を増やした企業で人員過剰の状態になっており、こうした顧客が採用を抑制する動きが長期化することが懸念されます。

 このような状況の下、国内Working事業では、本中計の重点戦略として掲げている、建設技術者領域の拡大、外国人雇用支援、正社員派遣の拡大に取り組みます。建設技術者領域の拡大は、未経験者の採用をさらに強化するとともに、定着率の維持・改善に向けた取り組み、契約単価上昇に向けた取り組みを実施します。正社員派遣の拡大については、採用環境の厳しさを踏まえ、「WILLOF(ウィルオブ)」のブランドプロモーションの継続など採用力の強化施策を実施し、稼働人数の維持・拡大に取り組みます。外国人雇用支援については、引き続きファクトリーアウトソーシング領域、介護ビジネス支援領域において顧客からの受注及び現地での採用を拡大していきます。

 海外Working事業では、各国経済の下振れリスクと人材派遣、人材紹介ともに低調な市況が長期化する懸念がある状況においても、優秀なコンサルタント人員の確保など、事業価値を毀損しない範囲での戦略的なコストマネジメントを実施し、人材派遣、人材紹介ともに需要回復後の拡大に備える取り組みをしていきます。

 これらにより、2026年3月期の通期連結業績予想は、売上収益134,600百万円(当連結会計年度比3.7%減)、営業利益2,500百万円(同6.9%増)、税引前利益2,380百万円(同9.3%増)、当期利益1,550百万円(同35.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,560百万円(同35.0%増)、EBITDAは4,561百万円(同6.9%減)を見込んでいます。(ご参考)業績予想で前提としている為替レートは、1シンガポールドル104円(当期の実績は114円)、1オーストラリアドル91円(当期の実績は100円)です。

 

 *上記業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。引き続き当社グループの事業への影響を慎重に見極め、今後修正の必要が生じた場合には速やかに開示します。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して169百万円減少し、6,936百万円(前連結会計年度末比2.4%減少)となりました。

 当社グループは、財務の健全性を図りながら戦略投資を行っていきますが、資金需要については、その性質に合わせて主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入等を優先して対応していくこととしています。

 当社グループの資金の流動性は、連結子会社では、支払サイトが締め後20日、入金サイトが締め後30日となっています。一方、当社では、支払サイトが締め後30日、入金サイトが締め後30日となっています。連結子会社で資金需要が発生した場合には、当社の資金及び取引銀行と契約している当座貸越を使用し、連結子会社に貸し付けています。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、前述「(3)キャッシュ・フローの分析」に記載の通りです。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。