第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度における我が国経済は、政府政策や日銀の金融緩和策により企業収益が改善傾向となり、これに伴う雇用・所得環境の回復基調から景気回復に明るい兆しが見られました。一方、海外情勢においては、英国のEU離脱や中国経済不振に対する懸念に加え、米国利上げ及び同国新政権発足に伴う市場の混乱など複合リスクの存在を背景として先行きの不透明な状況となっております。

 不動産市場においては、歴史的な低金利による良好な資金調達環境を背景として投資用不動産に対する需要が高まり、賃貸アパートなど貸家の新築着工数増加に牽引され、平成28年の新設住宅着工戸数が967,237件(前年対比6.4%増)となり、消費税率8%増税前の水準へ回復いたしました。個人用住宅となる持家は平成28年で292,287件(前年対比3.1%増)と微増となり、また分譲マンションは平成28年で114,570件(前年対比0.9%減)と前年並みの水準となりました。金利の低下に伴う住宅ローン需要の動向については、平成28年9月に公表された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の影響により独立行政法人住宅金融支援機構が公表する基準金利が上昇するなど一部住宅ローン金利の上昇が見受けられたものの、引き続き史上最低水準の推移となり、同じく公表されている平成28年4月から12月までの主要な金融機関の新規貸出額は18兆605億円(前年同期比27.4%増)と堅調な推移を示しており、住宅ローンへの需要は継続する見通しであります。

 このような状況の中、当社グループでは、平成30年2月期を最終年度とする中期3カ年計画「Start Up 2017」の下、「日本版エスクロー」の業態化を目指し、不動産取引の合理性・利便性・安全性の向上を通じて、不動産取引のあらゆるステークホルダーへ安心と安全を提供することを目的として、持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいりました。当連結会計年度においては、「1.取引に関連するBPOサービスの拡張」として主要取引先の金融機関における業務請負範囲の拡大と処理件数の増加を図り、「2.新たなエスクローサービスの開発」として不動産取引保証の商品化、非対面決済サービスの提供開始及び相続手続代行サービスの提供開始を行い、「3.新規取引先の拡大」として提携企業との連携による営業範囲の拡大と新規顧客獲得を推進させるという3つの成長戦略を基軸として事業活動を行ってまいりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,680,585千円(前連結会計年度比58.8%増)、営業利益は689,441千円(前連結会計年度比71.2%増)、経常利益は694,202千円(前連結会計年度比72.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は451,620千円(前連結会計年度比85.0%増)となりました。

 なお、当連結会計年度におけるセグメント別の業績は次のとおりであります。

 

(エスクローサービス事業)

 エスクローサービス事業においては、ASPサービスを中心として、不動産取引に係わる司法書士をはじめとした専門家、金融機関、不動産事業者に対し、事務の効率化及び安全性・合理性・利便性を高める各種支援サービスを提供するとともに、株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託が提供する合理的かつ利便性の高い信託サービス、相続手続代行サービス、不動産オークション・エスクローサービスと連携したパッケージサービスの拡充に努めております。

 当連結会計年度においては、住宅ローン借換案件を中心として融資申込件数が増加した結果、司法書士によるシステムサービスの利用頻度が増加し、セグメント売上高は1,140,642千円(前連結会計年度比72.6%増)、セグメント利益は839,222千円(前連結会計年度比67.3%増)となりました。

 

(BPO事業)

 BPO事業においては、金融機関における住宅ローン融資案件の事務を請負い、既存取引先金融機関等の業務上の課題を解決するための事務合理化及びコスト節減ニーズに応じたサービスを提案しております。

 当連結会計年度においては、既存顧客からの受託範囲拡大に向けた営業推進を継続する一方、低金利相場を背景とした取引先金融機関からの住宅ローン融資関連業務の受託件数が引き続き順調に推移した結果、セグメント売上高は1,541,888千円(前連結会計年度比50.2%増)、セグメント利益は458,330千円(前連結会計年度比34.8%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,786,331千円となり、前連結会計年度末と比較して373,558千円の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローの収入は508,234千円(前連結会計年度は402,646千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益684,943千円があった一方で、売上債権の増加額が99,015千円あったこと、及び法人税等の支払額180,185千円があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローの支出は27,897千円(前連結会計年度は120,866千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出40,000千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出67,140千円があった一方で、差入保証金の回収による収入33,001千円、及び預り敷金の受入による収入20,298千円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローの支出は107,866千円(前連結会計年度は3,303千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額81,443千円、及び借入金の返済による支出85,646千円があった一方で、新株予約権の行使による株式の発行による収入70,448千円があったことによるものです。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

 当社の業務は、システム提供・業務受託・人材派遣・物件調査・クロージング等であり、受注生産を行っていないため、生産実績及び受注状況については、記載しておりません。

 

(1)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 販売高(千円)

前年同期比(%)

エスクローサービス

1,140,642

172.6%

BPO

1,541,888

150.2%

合計

2,682,531

158.9%

(注)1.金額はセグメント間の内部振替前の数値によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 平成27年3月1日

至 平成28年2月29日)

当連結会計年度

(自 平成28年3月1日

至 平成29年2月28日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

住信SBIネット銀行株式会社

247,584

14.7

365,453

13.6

株式会社コスモホールディングス

213,617

12.7

328,993

12.3

司法書士法人中央グループ

174,230

10.3

(注)当連結会計年度における司法書士法人中央グループの販売実績は総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載しておりません。

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【対処すべき課題】

BPO事業の営業チャネル拡大及びローコストオペレーションの提供の推進

 住宅ローンの金利は極めて低い状況でありながらも金利競争が激化しており、金融機関では住宅ローン業務のコスト削減が急務の課題となっていることから、ローコストオペレーションへの一層の対応が求められております。また、金融機関ではグループ統合や他行との統廃合に伴う経営資源の効率化により、更にコスト削減が求められております。

 このような状況の下、当社グループといたしましては、インターネット銀行を含む新興金融機関への営業を強化してまいります。また、既存事業のフロー及び適正人員数の見直しを図り、技術革新に伴うペーパレス化や人工知能の活用によって業務負荷の省力化等を検討し、業務の堅確化及び効率化による事業生産性の向上に努め、労働集約型から脱却した徹底的なローコストオペレーション体制の構築を推進してまいります。

 さらに、これまで培ってきた不動産金融に関する業務ノウハウを活用し、時流の要請に適合した新たなサービスの開発提供を通じて、営業チャネルを金融機関だけでなく不動産事業者、建設事業者へ拡大し対応してまいります。

 

②市場ニーズが拡大する分野でのサービスの拡充

 不動産取引及び金融事務については、市場ニーズが拡大する分野のサービスへの選択と集中をしてまいります。

 具体的には、「1.少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少によるアウトソーシング需要」、「2.少子高齢化及び相続税法の改正による相続市場」、「3.技術革新による不動産取引及び金融事務の合理化」、「4.中古住宅市場の拡大により増加する取引事務の効率化」の4つの成長市場を主要な対象と定め、金融機関、不動産事業者及び専門家に対する専門サービスの拡充を推進してまいります。

 

③人材の確保・育成及び従業員の意欲・能力の向上

 当社の今後の事業発展を支える人材の確保・育成及び従業員の意欲・能力の向上は不可欠な課題の一つであります。その中で、不動産取引又は金融取引事務の知識はどれも必須事項であり、クライアントからもその経験・知識を有する人材が要望されております。

 したがって、当社では、クライアントの要望に資するため、公的資格の有無や経験年数等を考慮した人員配置を行っております。

 さらに、引き続き継続的・積極的な採用活動を行い、優秀な人材の確保・育成に努めていくとともに、福利厚生制度の充実、教育プログラムの構築により、より一層の従業員の意欲・能力の向上に今後も積極的に取組んでまいります。

 

④当社の提供するサービスにかかる法令遵守

 近年、我が国でも不動産取引や金融取引における情報化が進みネットオークションやネットバンキングといった新しい流通システムによるオンラインサービスが普及しております。

 そのため、オンラインによる取引の増加に伴い、隔地者取引や非対面取引が増えております。一方、顧客保護やオペレーションリスクの観点から不動産や金融取引にかかる関係者は、当事者の本人確認や意思確認等の契約事項における確認といった各種の法令を遵守する必要があります。

 当社では、不動産取引の安全を図るための各種サービスを金融機関や司法書士等に提供しているため、サービス提供に関連する法令を確認したうえで、サービスの提供を行っております。法令の確認については、社内での検討に加え、適時、社外の専門家等に相談する体制を構築し、法令遵守体制の運用を継続する方針であります。

 

⑤コーポレート・ガバナンスの構築に対する取組み

 当社は、企業価値の極大化と永続的な企業価値の向上を実現していくためにコーポレート・ガバナンスの構築を経営上の重要課題の一つとして認識しております。

 毎月定例的に開催される取締役会には代表取締役社長を含む取締役及び監査役が出席し、当社の業務執行を決定し、取締役の職務執行を監督する権限を有しております。

 業務執行に関する重要事項については経営委員会で審議・検討し迅速な意思決定に寄与しております。

 さらに、代表取締役社長の直轄である内部監査室を設置し業務の適正化に努め、会計監査人及び監査役と十分な連携を図るとともに業務執行について監視しております。

 なお、取締役及び使用人の職務執行が法令・定款及び社内規程に適合することを確保するための「内部統制基本方針」を平成25年9月18日に制定しており、この基本方針では会社法で定められた体制の他、内部統制上必要と考えられる事項を定めております。今後は、当方針につき適宜検証を行いコーポレート・ガバナンス体制の強化に努めてまいります。

 また、「コーポレートガバナンス・コードに関する当社の取り組み」を平成28年11月25日に開示し、公正で透明性の高い健全な経営体制を維持するために法令遵守の徹底、組織体制の定期的な見直し、職務権限の明確化、監査機能の充実等内部統制の強化を図っております。今後とも、当各コードの取り組み状況の検証を行い更なるコーポレート・ガバナンスの実効性の強化に努めてまいります。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事務過誤について

 当社グループで取り扱う事務代行業務において、従業員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすこと等の種々の事務リスクに晒されております。これらの事務リスクを防止するために業務フローやシステムの改善、社員教育の徹底などの事務過誤防止策を講じております。さらに、事務過誤の発生状況を定期的に把握し、事務リスクの所在及び原因・性質を総合的に分析することにより、その結果を再発防止ならびに軽減策の策定に活かしております。

 対策にもかかわらず過誤が発生した場合、当社が提供するサービスへの信頼低下などによって、事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)人材について

 当社グループの事業特性から、人材は極めて重要な経営資源であり、今後の事業発展を支える人材の安定的な確保は経営存続に不可欠な課題の一つであります。優秀な人材を確保するために、人事評価制度を実施することで、優秀な社員が働きやすい環境を整えるとともに、ストックオプションを含む柔軟な報酬プログラムを用意しております。さらに、人材紹介サービスを活用し、必要な人材の確保を進めていく方針であります。

 今後も一層優秀な人材の確保及び育成に努める所存ではありますが、当社が求める人材を十分に確保、育成できない場合、または現在在職しているマネジメント層が多数流出した場合には、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)金利情勢等の影響について

 金利情勢の変動により住宅ローンの金利も変動し、ローンの新規借入者及び借換ローン利用者が増減する可能性があり、その他、住宅ローンの申込件数は景気動向及び税制等に影響を受けやすくなっております。そのため、大幅な金利の上昇、景気見通しの悪化や住宅取得に係る優遇税制の廃止等が生じた場合には、住宅ローンの申込件数が減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)不動産市況等による影響

 当社グループの事業全般は、国内不動産市況の動向に大きな影響を受けております。国内不動産市況の悪化に起因した住宅着工件数の減少により住宅ローンの取扱高が大幅に減少した場合には、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)個人情報の取扱いについて

 当社では事業の特性上、住宅ローン利用者に関する大量の個人情報を取り扱っております。

 個人情報の保護については、「プライバシーマーク」の認証取得企業として、「個人情報の保護に関する法律」を遵守するとともに、「個人情報保護基本規程」、「個人情報保護方針」の策定、日本工業規格「個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」(JIS Q15001)に準拠した「個人情報保護マネジメントシステム」の構築、実施、及び維持に努めております。

 しかしながら、当社が保有する個人情報につき漏洩、改ざん、不正使用等が生じた場合、顧客の経済的・精神的損害に対する損害賠償等、直接的な損害が発生する他、当社の信用低下により、事業運営、経営成績、及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制及び免許、許認可等について

①法的規制

 当社グループの事業及び取得している免許・許認可において関連する主な法的規制は下記のとおりになります。

・宅地建物取引業法

・貸金業法

・労働者派遣法

・犯罪収益移転防止法

・個人情報保護法

・信託法、信託業法

・銀行法

・不動産鑑定法

 万が一、当社グループの役員及び従業員の故意又は過失により法令違反が発生した場合、または、法人として法令違反があった場合は、取引先との信頼関係を損なう可能性がある他、監督当局から業務の制限や停止等の命令並びに顧客からの当社グループに対する訴訟の提起及び損害賠償支払いの発生等により、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの販売先に関連する司法書士法及び銀行法等の改正により当社グループのサービスが提供できなくなった場合、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②免許、許認可等について

 当社グループが事業遂行上取得している免許、許認可及び公的資格等は以下のとおりです。当社グループはこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点において当該許認可等が取消となる事由は発生しておりません。また、当社グループではこれら法令及び免許・許認可等を遵守すべく、役員及び従業員に対する法令等遵守の徹底や、コンプライアンス規程及びリスク管理規程等の社内規程の整備等を行い全社的なコンプライアンス意識の向上に努めております。

 しかし、法令違反等によりこれらの許認可等が取り消された場合や、これらの関連法規が改廃された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 許認可等の名称

所管

許認可等の内容

取消、解約その他の事由

有効期限

宅地建物取引業者免許

東京都 知事

東京都知事

(2)第88371号

宅地建物取引業法

第66条

平成24年10月27日~

平成29年10月26日

貸金業者登録

東京都 知事

東京都知事

(3)第31359号

貸金業法

第24条の6の5

平成28年12月1日~

平成31年11月30日

一般労働者派遣業許可

厚生労働省

般13-303359 号

労働者派遣法

第6条第1項

第1号~6号

平成28年1月1日~

平成32年12月31日

プライバシーマーク認証

一般財団法人 日本情報経済社会推進協会

第108470376(05)号

プライバシーマークに関する規約第15条第1項

平成28年11月7日~

平成30年11月6日

ASP・SaaS情報開示認定

一般財団法人 マルチメディア振興センター

第0124‐1103号

ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度運用規程」第17条

平成28年3月28日~

平成30年3月27日

管理型信託業登録

関東財務局

関東財務局長

(信)第11号

信託業法

第46条、第47条

平成26年8月25日~

平成29年8月24日

不動産鑑定業登録

東京都 知事

東京都知事

(1)第2579号

不動産鑑定法

第30条

平成27年4月23日~

平成32年4月22日

 

③司法書士法等について

 当社は金融機関等の顧客から「金融機関の担保設定、抹消登記を行う司法書士選定に関する助言及び事務代行業務」を受託しております。当該業務遂行のため当社は、司法書士等の司法書士賠償責任保険への加入状況、プライバシーマークの取得状況、司法書士事務所の体制、資格者の人数、補助者の人数及び懲戒事例等の有無等を調査した上でシステム登録し、金融機関等の求めに応じ一定の基準を満たす司法書士をリスト化し提示しております。また、当社は一部の司法書士法人と業務委託契約を締結し、金融機関等からの登記業務の依頼の受付及び進捗管理等を行うことができるシステムの提供及び運用サポート等を行っております。

 司法書士は、業務を行うに当たり「不当な手段によって依頼を誘致するような行為をしてはならない。」(司法書士法施行規則第26条)、「依頼者の紹介を受けたことについて、その対価を支払ってはならない。」(司法書士倫理第13条第2項)等の規制を受けておりますが、当社が金融機関等に対し提供する助言及び事務代行業務は依頼者を司法書士に紹介する行為ではなく金融機関等の求める基準を満たす司法書士をリスト化し提示する行為であり、司法書士から受領する業務委託料は司法書士等の紹介をする業務の対価ではなく当社が提供するサービスの対価であることから、当社の事業は上記規定に抵触しておりません。その他、司法書士に対するサービスを提供する上で、当社は司法書士法、同法施行規則、司法書士会会則基準、司法書士倫理の影響を受けております。

 当社は、これら法令等の遵守のため適宜、管轄省庁である法務省や弁護士に事業スキームの適法性を確認した上で司法書士にサービスを提供しておりますが、今後、法令等の改正等により何らかの対応を講じる必要が生じた場合、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④人材派遣及び業務受託について

 当社はBPO事業において、金融機関の業務効率化ニーズを的確に把握するために当社社員を金融機関に派遣するほか、金融機関の業務の一部を受託しております。

 人材派遣にあたっては、労働者派遣法、職業安定法その他の規制に反することが無いよう事前に弁護士への確認を行っております。また、当社から派遣された社員は、当社が行う業務受託とは別の指揮命令系統により業務を行っております。なお、業務受託においては、受託する業務の範囲を明確にし、当社内での指揮命令が行われることを徹底するほか、業務受託を行う社員を含め研修を行い、関連法令の遵守に努めております。

 しかしながら、今後、人材派遣及び業務受託に関連する諸法令の改正等により何らかの対応を講じる必要が生じた場合、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)代表取締役社長への依存について

 当社の代表取締役社長である本間 英明は、当社の経営方針の決定を始め、営業、企画等において重要な役割を果たしかつ、本書提出日現在、当社株式を1,640,000株(議決権比率19.76%)所有しております。また、本間 英明の近親者が議決権の100%を所有する株式会社中央グループホールディングスは当社株式を2,120,000株(議決権比率25.54%)所有しております。

 そのため、代表取締役社長への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、経営幹部職員の育成を図っておりますが、何らかの理由により本間 英明の業務遂行が困難になった場合、今後の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)特定取引先への依存について

 当社グループの販売先は主に司法書士や金融機関であります。その中でも、司法書士法人コスモ(現 株式会社コスモホールディングス)とは平成20年1月から取引を開始しており、司法書士法人の事業拡大及び当社の取引金融機関からの案件依頼の増加等に伴い、司法書士法人の当社が提供するシステム利用が増加し、当連結会計年度における株式会社コスモホールディングスに対する売上高の総売上高に占める割合は12.3%と高くなっております。また、当連結会計年度における住信SBIネット銀行株式会社に対する売上高の総売上高に占める割合は、受託業務の拡大とともに13.6%となっております。

 当社グループは引き続き、これらの特定取引先と安定的な取引の継続を進めるとともに、新たな取引先の開拓に努める方針でありますが、司法書士法人各社に対する金融機関等からの案件依頼の減少、特定取引先の取引方針の変更等による受託業務の減少又は業務受託契約の解消等が生じた場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)提供サービスの開始、終了について

 当社グループでは、より一層の成長を目指すべく、不動産取引に携わる関係者のニーズを発掘し、各種の新規サービスを提供しております。新規サービスの提供に際しては、必要に応じて人材の採用、設備投資等の新たな費用の支出を必要とする可能性があるため、経済状況や顧客動向の変化等により、新規サービスの展開が計画通りの収益獲得に至らない場合は経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、新規サービスの提供については、当該サービスに係る法令、必要となるリソースその他を十分に検討して提供を開始しておりますが、提供するサービスに係る法令の趣旨と当社解釈の相違の判明、法令の改正、当該サービスの陳腐化及び当社の経営リソースの再配分等によりサービスの提供を終了することがあります。新規サービスの提供の開始もしくは終了により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)システムダウンのリスクについて

 当社の事業は、企業・法人向けASPサービスの提供を行っていることから、自然災害、事故等により、通信ネットワークが切断された場合は、サービス提供に支障が生じることとなります。また、外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入等の犯罪や当社担当者の過誤等によりシステムに支障が生じる可能性もあります。

 以上のようなリスクに対応するため、遠隔地においてバックアップサーバーを設置するなどの回避体制を整えておりますが、それにもかかわらず以上のような障害が発生した場合には、当社に直接損害が生じるほか、システムへの信頼を低下させる可能性があり、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)災害について

 当社グループの事業用サーバーシステム及び通信機器は、耐障害対策を有する施設に設置されており、さらに、複数のサーバーシステムを分散配置するなど災害発生時にも、障害の発生を最小限に抑えるための方策を講じておりますが、将来発生が懸念されている東京直下型地震をはじめ、台風、暴風雨等の自然災害、または戦争、テロ、火災等の人災が関東圏、特に当社グループが主に在籍する東京都において発生した場合、正常な営業活動を行うことができなくなる可能性があり、一時的に事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)金融機関からの委託について

 当社はBPO事業において、従来は金融機関等が主に自社又は自社の関連会社で行っていた不動産調査業務、不動産売買に付随する担保設定、抹消登記に関係する書類の発送、内容確認等の業務を受託しております。これら業務のアウトソーシングについては、今後も金融機関等における業務効率化のニーズを背景に新規の取引先及び件数が共に拡大していくものと当社は考えております。

 しかしながら、金融機関等の方針の変更や法規制の強化等により当社の想定どおりに金融機関等の業務のアウトソーシングが拡大しない場合、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)競合について

 当社が提供するBPO事業については、金融機関等より十分な情報管理体制が求められております。また、エスクローサービス事業においても、住宅ローン、不動産登記及び信託等に関連する業務の効率化を目的としたシステムを提供しておりその専門性は高く、これら事業はいずれも参入障壁は比較的高いものであると考えております。

 しかしながら、新規事業者の参入、技術革新、業界規制の変更等によりこれらの事業における当社の優位性が保てなくなった場合には、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)新株予約権の行使による株式価値について

 当社では、当社の役員、従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。平成29年2月28日現在、新株予約権の目的である株式の数は802,000株であり、当社発行済株式総数の9.66%に相当しております。これらの新株予約権又は今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、平成28年4月19日開催の取締役会において、伊藤厚事務所株式会社(現 株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン横浜)の株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付にて株式譲渡契約を締結し、平成28年7月1日付にて全株式を取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費の総額は16,340千円であり、内容はソフトウェアの開発費用及びコンサルティング費用であります。不動産取引に係る売買とそれに付随する決済及び権利移転の効率化、関係者の事務負担の軽減に役立てるため、ブロックチェーン技術の不動産取引に係る認証及び決済システムへの応用可能性について継続して研究開発を行っております。ブロックチェーンは利用者同士が監視しあう分散型(非中央集権型)システムであり、当社グループは、ブロックチェーン技術が不動産取引の利便性、合理性、安全性の向上に大きく貢献する可能性があると考えております。当連結会計年度においては、当社がこれまでにBPO事業及びエスクローサービス事業を推進する上で蓄積したノウハウ、ネットワーク及び実証実験のための環境を活かし、金融機関及びシステム開発会社と協議を進め、実証実験の開始へ向けて取り組んでおります。

 なお、研究開発活動は事業セグメントを横断する内容となっているため、全社として研究開発活動の概要を開示しております。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積りを必要とする箇所があります。これらの見積りにつきましては、経営者が過去の実績や取引状況を勘案し、会計基準の範囲内でかつ合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があることにご留意ください。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

(2)経営成績の分析

①売上高

 当連結会計年度における売上高は、2,680,585千円(前年同期比58.8%増)となりました。

 売上高が増加した主な要因は、新規取引先の拡大及び借換需要の拡大に伴い業務処理件数が増加したことによるものです。

②営業利益及び経常利益

 当連結会計年度における営業利益は689,441千円(前年同期比71.2%増)、経常利益は694,202千円(前年同期比72.2%増)となりました。

 人員増強に伴う人件費の増加や本社移転に伴う家賃負担の増加、最新技術活用等の調査研究費の増加、またのれん償却費等の増加により販売管理費が増加いたしましたが、上記の売上高の伸長の結果、営業利益及び経常利益は前年同期比で増加いたしました。

③親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、451,620千円(前年同期比85.0%増)となりました。

 固定資産の売却損や本社移転費用などにより特別損失が9,258千円(前年同期比64.5%減)、また業績向上に伴い法人税等が233,323千円(前年同期比75.6%増)となるものの、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比で増加いたしました。

 

(3)財政状態の分析

①資産

 当連結会計年度末における資産の残高は2,767,170千円となり、前連結会計年度末と比較して673,481千円の増加となりました。

 流動資産は2,419,157千円となり、前連結会計年度末と比較して573,611千円の増加となりました。これは主に現金及び預金が473,525千円、売掛金が117,630千円増加したことによるものであります。固定資産は348,013千円となり、前連結会計年度末と比較して99,869千円の増加となりました。主に、移転による本社設備投資(資産除去債務分を含む)を79,349千円実施したことの他、子会社株式取得によるのれんが52,439千円、投資有価証券が37,221千円増加した一方で、長期預金が100,000千円減少したことによるものであります。

②負債

 負債の残高は566,525千円となり、前連結会計年度末と比較して232,962千円の増加となりました。

 流動負債は487,718千円となり、前連結会計年度末と比較して160,275千円の増加となりました。これは主に買掛金が13,810千円、未払法人税等が72,605千円、賞与引当金が14,572千円増加したことの他、未払金が23,811千円増加したことによるものであります。固定負債は78,807千円となり、前連結会計年度末と比較して72,686千円の増加となりました。これは主に資産除去債務を28,244千円、預り敷金を20,298千円計上したことの他、リース債務が24,143千円増加したことによるものであります。

③純資産

 純資産の残高は2,200,644千円となり、前連結会計年度末と比較して440,518千円の増加となりました。これは主に新株予約権の行使により、資本金が36,228千円、資本準備金が36,228千円増加したことの他、親会社株主に帰属する当期純利益が451,620千円あった一方で、剰余金の配当が81,875千円あったことによるものです。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

 平成30年2月期における事業環境としては、欧州各国の経済動向や地政学的リスクに加え、アジア経済の失速、米国新政権の政策による影響など先行きが不透明な状況の中、我が国経済においては、政府主導の経済政策と金融緩和の効果により企業収益の増加に伴う雇用改善・所得増加が期待されており、緩やかな景気の回復基調が継続するものと予想されます。

 不動産市場においては、新設住宅着工戸数の推移が消費税率8%増税の駆け込み以前の水準に回復しており、新築物件の着工戸数は低金利を背景として引き続き堅調に推移するものと想定されます。また、中古市場においては、都心部を中心に成約件数が増加傾向にあり、高騰する不動産価格に対して比較的安価である中古物件への投資需要が高まっております。

 金利動向においては、マイナス金利をはじめとした金融緩和策の影響から住宅ローン金利は変動型・固定型の双方とも極めて低い水準で推移しております。今後、物価上昇を指向する政府政策に伴う金利上昇リスクが懸念されるものの、金利上昇は実体経済への影響に配慮する観点から長期的に緩やかな上昇推移となる見通しであり、金利相場は引き続き低い水準で推移する見通しであります。このような良好な資金調達環境を背景として、住宅ローン件数は底堅い推移となる見通しでありますが、借換件数については史上最低金利により平成28年度に趨勢を極めた状況から徐々に鎮静化へ向かうものと想定されます。

 相続市場においては、相続税基礎控除が引き下げられたことにより課税件数が大幅に増加いたしました。また、我が国における少子高齢化の進行に伴う死亡者数の経年増加から相続関連市場は拡大傾向となっており、相続時に発生する事務手続きの効率化や相続不動産の処分需要は高まっていくものと想定されます。

 そのような中、当社グループの平成30年2月期は中期3カ年計画「Start up 2017」の最終年度として、不動産取引決済のワンパッケージ化による「日本版エスクロー」の業態化を推進し、不動産取引の合理性・利便性・安全性の向上を通じて不動産取引にあらゆるステークホルダーに安心と安全を提供することを目的として、業績向上による事業成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 エスクローサービス事業では、収益基盤であるシステムサービスのユーザー数を増加させるための営業推進を継続し、メインユーザーである司法書士のユーザビリティ向上に努め、更なる利用頻度の増加を促進してまいります。また、平成29年2月期に提供を開始した非対面決済サービスは、中古市場や相続市場の拡大を背景として増加が見込まれる非対面・遠隔地の取引について、不動産事業者や大手フランチャイジーを中心に利用促進を図り事業を展開してまいります。さらに、子会社である株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託が提供する相続手続代行サービスや不動産オークション・エスクローサービスとの連携により、今後確実に成長する市場において必要となるサービスの開発提供を通じて増収増益を目指してまいります。

 BPO事業においては、マイナス金利の影響による低金利を背景とした住宅ローン借換案件の増加が沈静化の様相を呈している一方、地方銀行をはじめとした地域金融機関における県外案件確保の取組推進や合理化ニーズは高まりを見せております。当社は提携企業との連携により営業販路を拡大し、当社の強みである非対面・遠隔地取引における業務支援サービスやローコストオペレーション体制による効率性の高い業務支援サービスを展開してまいります。また、BPO事業における生産性向上施策として、BPOセンター(仮称)の設置を検討しており、当社のローコストオペレーション体制の集大成として事務堅確化と効率化を同時に実現させ、徹底的なローコストオペレーション体制と人材育成による事務品質の向上を強化してまいります。

 

(6)経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「3 対処すべき課題」をご参照ください。