第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、2019年6月28日に提出の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

① 経営成績の状況

 当社は、抗体に継ぐ次世代新薬として期待されているアプタマー(核酸医薬の一種)に特化して医薬品の研究開発を行うバイオベンチャーです。当社は、アプタマー創製に関する総合的な技術や知識、経験、ノウハウ等からなる創薬プラットフォームである自社独自の「RiboARTシステム」を活用して、革新的なアプタマー医薬の研究開発(「アプタマー創薬」)を行っております。

 当社の当事業年度における最重点経営目標は、「自社での臨床Proof of Concept※1の獲得に向けた開発」であり、その実現に向けた取り組みを進めてまいりました。

 その具体的な進捗を以下に要約いたします。

 

※1 臨床Proof of Concept(臨床POC):新薬の開発段階において、投与薬剤がヒトでの臨床試験において意図した薬効と安全性を有することが示されること。

 

「RBM-007」の開発について

 

(イ) 「RBM-007」(抗FGF2アプタマー)による臨床開発の狙い

当社では、自社で創製したRBM-007(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、開発を進めております。

 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、40数年前に発見されたタンパク質で、血管新生促進等の様々な生理作用を持つことが報告されております。しかしながら、長年に渡りFGF2は創薬標的の候補であったにもかかわらず、抗体を含め優れた阻害剤の開発がほぼない状態でした。そうした中、当社は、独自のアプタマー創薬技術により、過年度においてFGF2に結合しその作用を特異的に阻害するアプタマーRBM-007の創製に成功いたしました。

 開発の対象疾患としては、上述のようなFGF2の生理作用に鑑みて加齢黄斑変性症と軟骨無形成症を選択いたしました。

加齢黄斑変性症は、加齢に伴い網膜の黄斑部に障害がおこる疾患で、無治療の状態だとやがて失明に至ります。欧米では失明原因の第一位となっています。疾患の要因の一つは異常な血管新生とされており、10年ほど前に治療薬として血管新生を阻害する医薬品(VEGF阻害剤)が開発され、臨床医からは夢のような薬と評価されました(既存薬の全世界市場規模は約1兆円)。しかし、その後の経過観察によって、臨床上の問題点が明らかになってきました。その一つは、相当数の患者に対して、既存薬の有効性が乏しいことです。また、有効とみられた患者も2~3年程度経過すると薬効が低下し、再び失明のリスクにさらされます※2。これらの要因として、病変による網膜組織の瘢痕化(線維化)が関与していると考えられていますが、既存薬には瘢痕化を抑制する作用はありません。これに対してRBM-007は血管新生のみならず瘢痕形成を抑制する作用を持つことが、疾患モデル動物での薬理試験から明らかになりました(非臨床POC獲得※3)。RBM-007のような二つの異なる作用を持ち合わせる医薬品は既存薬(VEGF阻害剤)にはなく、既存の医薬品では奏功しない患者に対して新規の治療法を提供できる可能性があります。

 一方、軟骨無形成症は四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、治療薬はなく、厚生労働省から難病指定を受けています。軟骨無形成症患者においては、FGF2が骨伸長を抑制する要因の一つとして作用していますが、RBM-007は疾患モデルマウスを利用した実験では、体長の短縮を約50%回復する効果を確認しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られている軟骨無形成症患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、RBM-007存在下で、その分化誘導が回復することも確認しました(非臨床POC獲得)。現在、本邦では治療に成長ホルモンが使用されていますが、効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、新薬が待ち望まれています。

 自社での臨床開発の実施により臨床POCが獲得されれば、新規治療法の確立に至る第一歩になるとともに、新薬候補品としてのRBM-007の価値が高まり、ライセンス収益の拡大及び将来に向けた発展に寄与するものと考えております。

 

※2  Rofagha S, Bhisitkul RB, Boyer DS, Sadda SR, Zhang K. Seven-year outcomes in ranibizumab-treated patients in ANCHOR, MARINA, and HORIZON: a multicenter cohort study (SEVEN-UP). Ophthalmology 2013;120(11):2292-99.

※3 非臨床Proof of Concept(非臨床POC):ヒトでの臨床試験に入る前に、病態モデル動物での薬効確認試験において、投与薬剤が意図した薬効を有することが示されること。

 

 

 

(ロ) 開発状況、及びスケジュール

a) 加齢黄斑変性症

 加齢黄斑変性症を対象にした臨床試験として、最初にRBM-007の安全性・忍容性を調べることを主な目的とした、第1/2a 相試験(ニックネームはSUSHI STUDY)を米国において実施しました。

 本第1/2a 相試験は、オープンラベル(非盲検)、非無作為化(ランダム化しない)、非対照(対照薬を置かない)の試験で、3用量(3コホート)を設定し、計9人の被験者に対して、RBM-007を単回投与(硝子体内注射)し、安全性、忍容性を確認することを主な目的としており、スタンフォード大学を中心とした米国西海岸の複数の治験施設において試験を進めました。

2018年10月から12月にかけて低用量群(第1コホート)の3例、2019年1月から2月にかけて中用量群(第2コホート)の3例、2019年3月から5月にかけて高用量群(第3コホート)の3例の投与が実施されました。この結果、全評価期間における、主要評価項目(安全性と忍容性の確認)を達成し、あわせて副次的評価項目においても薬効を示唆する結果が確認されました。

 今回の試験では、既存薬である抗VEGF薬がほとんど奏功しなかった高齢者(70代〜90代)を対象としたため、網膜の構造変性等により視力の回復は当初から困難と想定されました。一方で、薬効評価の生理学的指標となり得る光干渉断層撮影(OCT)による中心窩網膜厚の変化については、治療抵抗性の高齢の患者を対象としたにも関わらず、中心窩網膜厚の減少(50マイクロメートル以上)が、高用量(第3コホート)の3名全員で確認され、その効果が56日目まで維持されました。さらに、3名中2名の被験者においては、56日目で中心窩網膜厚が約200マイクロメートル減少し、ほぼ正常レベルに回復しました。これらの結果は、本薬剤の優れた薬理作用を裏付けるものと評価しております。

今後は、SUSHI試験の結果に基づいて、次の第2相試験の準備を行い、2020年3月期第3四半期において第2相試験を開始したいと考えております。また、これと並行して、国内外の製薬企業との提携協議を進めてまいります。

 今後もRIBOMIC USA Inc.との緊密な連携の下、関連法令、ガイドライン等を遵守しつつ、この臨床試験を迅速・適切に推進してまいります。

 

b) 軟骨無形成症

 2021年3月期中における独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)への治験計画届出を目標として開発を進めております。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助を受け、GLP適合非臨床安全性・毒性試験及び治験薬製造が完了いたしました。本プロジェクトは2018年度からの3年間を対象に、AMEDの難治性疾患実用化研究事業に採択されており、本支援の下、治験開始に向けた準備を進めております。

 

(ハ) 推進体制

 当社では、事業開発部と臨床開発部を中心に外部機関の協力も得て、治験実施体制の構築を進めてきました。米国での臨床開発は、当社完全子会社であるRIBOMIC USA Inc.が治験スポンサーとなり、新薬開発経験が豊富なYusuf Ali氏(Ph.D.)がCEOとして陣頭指揮を執っております。2019年5月に、当社の取締役執行役員1名が、RIBOMIC USA管掌として着任するとともに、2019年8月より眼科専門医が社員として新たに加わり米国での臨床開発体制をさらに強化いたしました。また、数多くの加齢黄斑変性症の臨床開発に携わってきたカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)メディカルセンター眼科の医師であるRobert B. Bhisitkul教授を含めた3名の眼科専門医による科学諮問委員会が設置されており、2019年6月には、Alcon社(現ノバルティス ファーマ社)研究開発部門の前上級副社長で眼科領域の製品開発のエキスパートであるJerry Cagle博士が委員に加わりました。同委員会においては継続的に臨床試験計画の審議、治験データの評価等が行われます。

 さらに、軟骨無形成症治療薬開発については、大阪大学医学部附属病院小児科の臨床医で、小児における骨系統疾患の専門医である大薗恵一教授と医学専門家の委嘱に関する契約を締結し、各種助言等を行っていただいております。

 今後もRBM-007の開発推進に向け、体制の整備を図ってまいります。

 

(ニ) 開発コスト

 今後の開発資金の調達を目的として、2018年6月13日に株式会社ウィズ・パートナーズが業務執行組合員を務めるウィズ・ヘルスケア日本2.0投資事業有限責任組合及びTHEケンコウFUTURE投資事業有限責任組合を割当先とする第三者割当の方法による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債、及び第14回新株予約権を発行いたしました。第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行により調達した1,000百万円については、現在株式転換が進んでおります。また、第14回新株予約権の行使により総額1,001百万円の調達を予定しており、現在徐々に行使が進んでおります。

 

その他のプロジェクト

 

(イ) ライセンス・アウト契約ならびに共同研究契約

 前事業年度において当社は、米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムのメンバーの一員であるミシガン大学と、当社が創製したアプタマーの精神疾患に対する効果を検証することを目的に、共同研究試料提供契約(MTA)を締結し、現在、同大学において当社が提供したアプタマーの評価が進められております。また、三菱商事株式会社の子会社であるビタミンC60バイオリサーチ株式会社との間の2019年1月付共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施しております。

 

(ロ) 共同研究成果の特許出願及び覚書締結

当社と大正製薬株式会社は、2014年3月1日付共同研究契約に基づき共同研究を実施してまいりました。本共同研究の結果得られたアプタマーについて、変形性関節症の増悪因子の一つであるADAMTS5(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 5)の働きを抑制し、変形性関節症の新規治療薬候補となる可能性が示されたことから、当該成果に関するPCT出願を共同で完了いたしました。併せて両者は、2019年4月に共同研究成果の今後の取り扱いについて覚書を締結いたしました。今後、大正製薬株式会社の協力を適宜受けながら、当社が当該アプタマーの事業化を進める上で重要なグローバル展開を推進するためのパートナーを選定していく事といたしました。なお、本覚書の締結により、本共同研究契約は満了となりました。

また、当社と大塚製薬株式会社は、2008年1月1日付共同研究契約下において見出し、2017年5月8日付ライセンス契約下での研究・開発を経て、それに基づく発明「骨形成や骨代謝の異常に関連する疾患の治療薬」につき2019年5月24日に特許出願を行いました。また、両者は協議の上、同日付でライセンス契約を終了すると同時に、本品の当社による事業化(事業化後の大塚製薬へのロイヤリティ支払いを含む)に関する覚書を締結しました。今後も本品のグローバル展開を推進するためのパートナーの選定を進めてまいります。

 

(ハ) 継続中の自社創薬プロジェクト

 上記以外の自社創薬プロジェクトのうち、RBM-003(抗キマーゼアプタマー、心不全等)については、特に優れた薬効が動物試験で確認され、当社は、これをRBM-010(抗ADAMTS5アプタマー)同様にRBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけて、今後開発パートナーとの提携等に向け、努力する方針です。また当社は、アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、GPCR(Gタンパク質共役型7回膜貫通型受容体)を標的とするアプタマー創薬や、コンピュータ科学を応用した技術開発(JST委託事業)等を継続して進めております。

 

 これらの結果、当第1四半期累計期間において事業収益を1百万円(前年同四半期の事業収益は-百万円)、事業費用として研究開発費を128百万円、販売費及び一般管理費を92百万円計上し、営業損失は219百万円(前年同四半期は営業損失266百万円)となりました。

 また、営業外費用として、為替相場の変動による為替差損1百万円を計上したこと等により、経常損失は220百万円(前年同四半期は経常損失277百万円)となりました。これにより四半期純損失は220百万円(前年同四半期は四半期純損失277百万円)となりました。

 なお、当社は創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

(イ) 資産の部

 当第1四半期会計期間末における総資産は、前事業年度末に比べて124百万円減少し、2,444百万円となりました。これは、有価証券が100百万円、現金及び預金が40百万円減少した一方で、前払費用が17百万円増加したこと等によるものです。なお、当第1四半期会計期間末において保有している有価証券は、保有する資金を、研究開発への充当時期まで、適切な格付けを得た安全性の高い金融商品で運用することを目的としたものです。

 

 

(ロ) 負債の部

 当第1四半期会計期間末における負債は、前事業年度末に比べて794百万円減少し、291百万円となりました。これは、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の転換により転換社債型新株予約権付社債が800百万円減少したこと等によるものです。

 

(ハ) 純資産の部

当第1四半期会計期間末における純資産は、前事業年度末に比べて670百万円増加し、2,153百万円となりました。これは、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の転換および第14回新株予約権の一部について権利が行使されたことにより、資本金及び資本剰余金がそれぞれ445百万円増加した一方で、四半期純損失220百万円を計上したことにより、利益剰余金が同額減少したこと等によるものです。

 

(2)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第1四半期累計期間において、当社が対処すべき課題に重要な変更はありません。

 

 

(3)研究開発活動

当第1四半期累計期間の研究開発費の総額は128百万円であります。

なお、当第1四半期累計期間において、2019年6月28日に提出の有価証券報告書に記載した研究開発活動(研究開発戦略、研究開発の特徴について、研究開発体制について、新薬候補化合物の主な開発状況)に関し重要な変更はありません。

 

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。