第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、RNA(リボ核酸)を成分とする医薬品(「アプタマー医薬」)の開発を通じて、「Unmet Medical Needsに応える」を企業理念に掲げ、それを実現するために、

・人の生命、健康に関連する医薬品の研究開発に関わる企業として、高い倫理性を持ち、最新の科学・技術に基づく研究活動を推進する

・コーポレート・ガバナンス体制の強化と充実を図り、業務執行の適法性や妥当性の維持に努めることにより企業価値の最大化を図り、社会に貢献できる企業としての責任を果たす

・会社経営の透明性を確保するために、会社情報の開示を一層充実させるとともに、説明責任を果たし、株主、取引先、地域社会等のステークホルダーとの良好な関係の維持、発展に努める

ことを基本ポリシーに掲げ、当社のプラットフォーム技術である「RiboARTシステム」を活用した研究開発を推進しております。

 

(2)経営戦略等

一般に、医薬品事業は一つの製品を創出し上市するまで莫大な費用と年数を要します。このような中、当社はアプタマーの医薬品としての研究開発を行い、ライセンス・アウトした時に受け取る契約一時金、開発進行に伴ってその節目に受領するマイルストーン収入、製品上市後に受け取るロイヤルティー及び共同研究に伴って得られる共同研究収入などにより収益を獲得する創薬事業を展開しております。

当社の事業の特徴は一般的な創薬ベンチャーに比べて、比較的早期の研究開発段階においてライセンス・アウトを実施することにあります。これはプラットフォーム型のベンチャーであるため、領域に係わらず開発早期から共同研究や自社パイプラインを拡充することにより達成できるものですが、その一方、ライセンス・アウトで得られる収益の拡大も経営においては重要であるため、適切な自社創薬品については自社で臨床開発に取り組むことも戦略の一つとしております。

当社は、共同研究並びに自社パイプラインの研究開発や臨床開発を推進するとともに、製薬企業との協力関係構築の一層の強化を図りながら、今後継続的なライセンス・アウトを実現することで収益規模の拡大とその安定化に努めてまいります。

中長期的な成長のための基本コンセプトとして、①探索から臨床ステージへの脱皮、②次世代アプタマー・テクノロジーの開発、③社会に対する企業価値の創出を念頭に、研究開発・臨床開発・事業開発活動に取り組んでおります。これの具体的進捗状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しております。

当社は、これらの開発を確実に進めるための資金調達を主目的として新株予約権を発行しました。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、研究開発型の創薬ベンチャーであり、研究開発への投資から、その収益化まで長期間を要すること、また、収益はライセンス・アウトなどの成果に委ねられるという事業特性からROEやROAなどを目標とする経営指標は設けておりません。

ライセンス・アウト時の契約一時金、その後のマイルストーン、ロイヤルティ、共同研究による共同研究収入を計上するための前提となる研究成果(新規技術開発、非臨床POC、臨床POCの取得)や、各種開発イベント(当局への治験開始申請許可)などが、当社における重要な経営イベントとなり、この実現に向けた研究開発、臨床開発並びに事業開発活動の一層の推進を図り、製薬企業へのライセンス・アウト、及びライセンス・アウト後の開発を着実に進めることにより収益力を高めて、会社業績の安定化と収益の確保を図ってまいります。

 

(4)経営環境

医薬品業界では、未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医薬品開発が求められており、この分野での新薬開発競争が激化しております。製薬企業においては、従来の低分子医薬品だけでは、この分野の新薬を開発することが困難となっており、核酸医薬品をはじめとした新規医薬品の開発が進められております。このような取り組みにおいて、製薬企業は単独で開発を進めるのではなく、新規医薬品を手掛けるバイオベンチャー等と提携し、新規技術の導入や、バイオベンチャーが開発したパイプラインを導入するなどにより開発を進めております。近年、核酸医薬品の上市が顕在化しつつありますが、このような環境のもと、当社はアプタマー創薬のプラットフォーム技術である「RiboARTシステム」により、疾患や標的タンパク質に限定されない新薬シーズを創製し、製薬企業に提供していくとともに、当社ビジネスモデルの発展に注力してまいります。

 

[新型コロナウイルス感染症による影響]

 新型コロナウイルス感染症の拡大による当事業年度における経営成績等への大きな影響はありませんでした。

 今後につきましては、米国で進めております加齢黄斑変性症を対象とした臨床試験、日本で進めております軟骨無形成症による臨床試験、基礎・探索段階の創薬研究に今後遅れが生じることも想定されますが、現段階において、当社では新型コロナウイルス感染症による当社の事業に与える影響は軽微であると判断しているため、今後の経営戦略を見直す必要はないものと判断しております。

 当社の設立の理念の一つは、未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズに応えることであり、中長期的な成長のための基本コンセプトとして、社会に対する企業価値を創出することも念頭にしており、これを実現すべく、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬の開発を目的としたアプタマー創薬研究を進めております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、アプタマーの医薬品としての研究開発を行い、製薬企業にライセンス・アウトした時に受け取る契約一時金、開発進行に伴ってその節目に受領するマイルストーン収入、製品上市後に受け取るロイヤルティー及び共同研究に伴って得られる共同研究収入などにより収益を獲得する創薬事業を展開しております。このようなビジネスモデルにおいて、継続的かつ安定的な収益の確保の実現と、今後の飛躍に向けた中長期の経営課題として、「リボミック・アプタマーの自社臨床試験の実施とPOC取得」、「海外メガファーマとの複数アライアンスの締結」、「臨床試験推進のための財務基盤の拡充」を掲げ、これにより「世界のアプタマー医薬品開発における主要な地位確立」を目標としております。この経営課題の実現に向けて以下について、特に重点的に取り組んでまいります。

 

①自社での治験の実施

当社は、将来において当社が大きく飛躍するためには、自社で臨床試験を実施することが必要であると考えております。具体的には、RBM-007による滲出型加齢黄斑変性症を対象とした第2相臨床試験を米国で実施中です。また、軟骨無形成症を対象とした治験計画届出を2020年4月にPMDA(米国FDA(食品医薬品局)に相当する日本の審査機関)に行い、同年5月に第1相試験の実施が許可されました。その結果、2020年7月、国内で第1相臨床試験を開始いたしました。今後も、外部委託機関の有効活用や国内外の医学専門家の協力を得て臨床試験を滞りなく推進していく所存です。なお、滲出型加齢黄斑変性症の治験を進める目的で、RIBOMIC USA Inc.を当社の100%子会社として米国Berkeleyに開設し、眼科専門医を社員に採用する等、必要な体制を整えております。

 

②自社パイプラインの充実と質の高いデータの構築

持続的な企業成長を実現するためには、良質な自社パイプラインを選定、拡充し、各々について製薬企業の評価に耐え得る試験データを取得していくことが重要と考えております。新規テーマの選定にあたっては、大手製薬企業における重点領域、既存薬剤による医療ニーズの充足度等を調査し、最適な創薬ターゲットと適応疾患を選定するよう努めてまいります。しかし同時に、経営資源の集中のため、一度着手したテーマについても、一定期間の後に適切な評価を実施し、必要に応じて、開発ラインから除外する判断も必要であると認識しております。

 

③新規技術の開発

今後、アプタマー医薬への参入企業が増えてきた場合でも常に技術の優位性を保てるように、新規のアプタマー創薬技術の開発に努めてまいります。具体的には、アプタマー創製の新技術の開発、次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発、細胞内への取り込み可能なアプタマー、細胞膜貫通型のタンパク質と結合するアプタマー、さらには脳内標的化アプタマーなどの創製に繋がる技術を目標に、これまでに培った技術のさらなる発展、向上を図ってまいります。

 

④ライセンス活動の推進

ライセンス・アウトを目標とした共同研究の実現や、自社パイプラインのライセンス・アウトを図るべく、国内外の製薬企業への営業活動、学会での発表や学術雑誌への論文掲載等を通じて、当社の技術と製品を国内外にアピールする活動を継続してまいります。

 

⑤共同研究の推進

大手製薬企業との共同研究は、安定的な収益源となるだけでなく、当社のアプタマー創製に関するスキルアップにつながり、同時に、大手製薬企業の技術を活用して開発を迅速に進められることから、既存の契約での成果創出と同時に、新規提携契約の獲得に努めてまいります。

⑥ESG(環境/社会/企業統治)に関する取り組み

昨今の資本市場では、長期持続的な企業の成長を評価する上で不可欠な観点として、ESG(Environment/環境, Social/社会 and Governance/企業統治)といった非財務情報への関心が高まっています。当社は、ESGに関して次のような方針で取り組んでまいります。

1)E (環境)

IT整備によるペーパーレス等の省資源や研究資源の管理、並びに分別廃棄を徹底した厳格な廃棄物管理に注力いたします。また、社外で実施されているリサイクル活動にも積極的に参加するなどの取り組みも合わせて推進してまいります。

2)S(社会)

当社は、難病や未だに薬のない病気(Unmet Medical Needs)に対する新薬を開発して、世界の医療と人々の健康に貢献するというミッション実現に向けた事業活動を展開しているため、「Social」は事業活動そのものと考えています。その中で、特に、現在世界的なパンデミックとなっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアプタマー治療薬の開発は、アプタマーの卓越した優位性を発揮すべき当社の使命であると考えており、1日も早く候補アプタマーの創製を実現するために努力してまいります。

3)G(企業統治)

・コーポレート・ガバナンスの強化

当社は、アプタマー創薬企業としてアプタマーを素材とする新薬を次々と創製し、継続的な成長と企業価値の最大化を図り、医薬品開発を通して社会に貢献できる企業を目指しております。このような企業として社会的責任を果たしていくために、社外取締役を2名体制にしている他、コーポレートガバナンス・コードへの対応も継続して進めてまいりましたが、今後もコーポレート・ガバナンス体制の強化により経営の健全性や透明性の向上を継続的に図っていくことは、最も重要な課題の一つであると認識し、取り組んでまいります。

・組織体制の整備と人材の育成・登用

当社は、上記の課題に対応し、当社事業の継続的な発展を実現するためには、それに対応する組織体制の整備と、人材の育成・登用を図ることが重要と考えており、必要に応じて組織体制の強化を図ってまいりました。今後も事業構造や事業展開等を勘案したうえで必要な人材を育成し必要なポジションに登用する他、豊富な経験を有する人材の採用、外部ノウハウの活用などにも積極的に取り組んでまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資家の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。

当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

①創薬・医薬品開発事業全般に関する事項

 当社は、医薬品開発における初期段階(探索研究~初期臨床試験)での研究開発を中心とした創薬・開発事業を主たる事業としております。本分野は、国際的な巨大企業を含む国内外の多数の企業や研究機関等が競い合っています。また、研究開発から製造販売のための承認・許可の取得、上市に至る過程において様々な薬事規制に従い、しかも長期間にわたって多額の資金を投入する必要があります。この創薬・開発事業は下記のとおり不確実性及びリスクを伴うものであります。

 

(イ)医薬品研究開発の不確実性について

1)新規パイプライン創出について

 当社は、新規医薬品の候補アプタマーを自社あるいはアカデミアとの連携を通じて創出し、自社創薬品目あるいは共同研究品目の候補としていくことを基本戦略としております。

 この戦略を確実に推進するため、製薬企業との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの産学連携等により、Unmet Medical Needsを満たす新規パイプラインの選定・獲得・創出の可能性を高める努力を続けております。

 また、国内外の製薬企業との情報ネットワーク等の情報ソースを活用して需要のある候補ターゲットを早期に探知し、新規パイプラインの可能性を追求してまいります。

 しかしながら、現在既に開発途中にあるもの以外の医薬品候補となりうるアプタマーを、適宜、創出できる保証が100%あるとはいえず、そのような場合には、当社の事業計画の変更を余儀なくされる等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

2)開発候補品の選定について

 一つの開発候補化合物が医薬品として承認され上市に至るまでには、ヒトでの臨床試験を含む様々な試験によって有効性・安全性の確認のみならず、製造・販売に至るまでに様々な関門があり、その全てをクリアする必要があります。

 開発過程の各段階において、開発続行の可否を判断する際、中止の決定を行うことは稀なことではありません。このような成功の不確実性は、自社で開発した場合も、あるいは製薬企業にライセンス・アウトした場合においても、避けては通れないものです。このリスクを低減・分散するため、当社は以下の基本的な対応をとっております。

 

・一つのターゲット(ターゲットタンパク質)に結合するアプタマーについて、有力なものが得られても、必要に応じ、バック・アップ品を準備することによって、プロジェクトの持続を図る

・互いに独立した複数の開発パイプラインを保有する

 

 これらによって、一つの開発候補化合物について開発途上で何らかの障害が発生した場合でも、それに伴う事業遂行上のリスクやロスを最小限に留めるよう努めております。

 しかしながら、当社のような規模の創薬企業にとって、自社創薬、共同研究又はライセンス・アウトかを問わず、開発パイプラインから品目が脱落する影響は大きく、その場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、第1相臨床試験における重篤な副作用の発現で開発中止を余儀なくされた場合、新規アプタマー探索から同段階までの開発には、約4~6年の期間と、数億円規模の追加費用とを要することになります。

 

(ロ)COVID-19感染(“パンデミック”)に関するリスク

 当社は、パンデミックの状況に鑑みて在宅勤務や時差出勤を取り入れ、事業を遂行することにより感染防止と事業の遂行の両立を図っておりますが、社員に感染者が出た場合には、必要な業務を遂行することができず、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 また、広く社外にも専門的な意見を求め、さらに機動的な事業運営を図るため、当社はアプタマーの合成(前臨床試験用及び臨床試験用の各種アプタマー)や前臨床試験をはじめとした研究開発に関する業務の多くを外部に委託しております。そして、随時状況の把握を行い、且つ、代替先の確保も進めておりますが、万一、パンデミックの影響により外部委託先での作業が滞り、また、迅速に代替先が見つからない場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに臨床試験において、当社は、パンデミックの状況や当局の指導を遵守し、治験に参加する被験者、医師、実施施設スタッフの安全性を最優先した上で、試験を実施いたしております。そして、パンデミックにより円滑な患者登録・治験実施に支障が出た場合には、各医師・実施施設と迅速に連携を取り対応策を実施してまいりますが、パンデミックの状況によっては、米国及び日本での患者登録が円滑に行われず、RBM-007の臨床開発の円滑な遂行ができなくなる可能性があります。例えば、米国で実施中の第2相臨床試験では、各被験者の試験期間が5か月間で主要評価項目の測定が4か月目に行われます。仮にパンデミックの影響で最後の10名の被験者全員が主要評価項目の測定直前で試験から脱落した場合、10名の被験者のリクルートを含め、試験全体の終了が5か月以上延び、かつ治験実施施設や外部業者への追加試験実施にかかる支払が発生いたします。

 

(ハ)治験の実施について

 当社は、2019年12月より、滲出型加齢黄斑変性症を適応疾患として、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験を米国で開始しています。また、日本国内においては、RBM-007について軟骨無形成症を対象とした第1相臨床試験を、2020年7月に開始いたしました。

 しかしながら、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変化等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の臨床開発段階への進行が遅れる可能性や、臨床開発自体を終了・中止せざるを得ない状況になる可能性があります。

 当社は、このような不確実性を低減するために、1)米国においては、米国子会社のCEOであり眼科医薬品の開発を専門とするYusuf Ali氏(Ph.D.)が中心となり、米国の眼科専門医からなる科学諮問委員会を設置し、さらに子会社従業員として眼科専門医を雇用の上、開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び治験薬の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき臨床試験を設計し、各治験実施施設の責任医師との緊密な連携下で試験を実施しております。また、日本においても、昨年、製薬大手で長年国内外の臨床試験実績のある臨床開発部長を採用し、多くの第1相臨床試験実績のある治験施設やCRO(Clinical Research Organization)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験を設計し実施してまいります。

 しかしながら、上記のような最善の対応を実施しても、予めすべての要因を想定することは極めて困難であり、臨床開発の大幅な遅れや中止の可能性、規制当局から追加の試験を求められるなどの事態が発生する可能性があります。このような事象が発生した場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ニ)収益の不確実性について

 通常、医薬品(開発途上の製品を含む)のライセンスにおいては、契約締結に伴う契約一時金、開発途上におけるマイルストーン収入及び製品上市後のロイヤルティーの受領を予定しています。

 しかし、契約を成立させるためには、ライセンシー(ライセンスを受ける相手先)の評価をクリアする一定の条件(安全性・有効性等に関する信頼できる試験データ、独占的販売等を可能とする特許の存在、競合品との優位性の根拠資料等)を有した医薬候補品を創製・開発する必要があり、また、マイルストーン収入を獲得するためには、ライセンシーによって開発が順調に進み、一定の段階をクリアすることが必要であり、さらにロイヤルティーを得るには、許認可当局からの承認の取得、製造及び販売の全ての段階において成功を収めることが必要であります。

 しかしながら、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に当該研究開発が終了する可能性及び当社の想定と異なる事態が生じる可能性があります。

 また、当社及びライセンシーが前述の一連の活動において成功しない、あるいは、製品化(製品の承認取得、製造販売)に成功したとしても、薬価や市場性の問題等から、当該製品に関する事業活動を継続するために必要な採算性を確保するのに十分な収益を得ることができない可能性があります。

 そのため、当社は、上記開発プロジェクトの適応疾患の選定及び共同研究やライセンス契約等の提携契約の締結に際して、競合品となる可能性のある既存の医薬品の市場規模等を基に当該プロジェクトの市場性や採算性、並びに当該提携先の開発力・事業化力等を種々の情報ソースを活用しながら検討して参ります。

 しかしながら、万一この判断が誤っていた場合、あるいはこの判断の基礎となる状況に変化が発生した場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ホ)遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について

 当社が参画する医薬品業界は、各国における事業規制法及び医療保険制度、その他関係法令等により、様々な規制を受けております。すなわち新規医薬品を製造発売するに当たっては、対象となる全ての国で当該国が定める薬事関連法規に従って一定の基準の下で承認や許可を受ける必要があり、また臨床試験の開始などについても、多くの国で厳しい薬事規制が設けられています。

 当社の事業計画は現行の医薬品に関する日本など先進国での承認基準や薬事規制を前提として策定されておりますが、これらの基準及び規制は科学技術の発展に伴って、適時、改定されています。

 そのため、当社は、特に、臨床試験を実施中(又は予定)の日本及び米国の最新の承認基準や薬事規制を適時調査し、当社の研究開発計画に反映し、また、必要に応じて、適宜その他地域についても調査を進めております。

 しかしながら、長期間を要する新薬開発においては、その間にこれらの基準や規制、制度、価格設定動向等が大きく変動する可能性がないとはいえず、特に、薬事に関する法的規制等及び医療保険制度等に変更等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ヘ)アプタマー医薬に関する潜在的な競合について

 当社の潜在的な競合相手は、国内外の大手製薬企業、バイオ関連企業、大学、その他の研究機関等多岐にわたります。

 

1)アプタマー創薬企業との競合:アプタマー創薬を行っている企業は、現時点では当社やドイツのBerlin Cures社が代表的な会社であり、この分野で公開されている各社の開発ターゲット(開発品目)を見る限り、競合はほとんどありません。

 また、アプタマー創薬の基盤技術であるSELEX法に関する特許は、日本及びヨーロッパにおいて2011年6月、米国において2014年9月に失効しました。こうした状況下では大手製薬企業等によるアプタマー創薬への新規参入が想定されます。その場合には、わが国で先駆的にアプタマー創薬に着手してきた当社の研究者の引き抜きや流出に加えて、限られた原薬製造設備の争奪が生じる可能性もあります。

 当社としては、将来のこうした状況に備えて、独自の「RiboARTシステム」の開発、知財の取得、ノウハウの蓄積に鋭意努力すると同時に、研究員のリテンションのための施策を講じ、また、アプタマー原薬の製造会社との良好な取引関係を推進するとともに、核酸科学やアプタマーの研究者・研究機関とのネットワークの維持等の対応を行っております。

 しかしながら、アプタマー医薬のポテンシーや将来性が大手製薬企業等に認識され、新規参入企業が増加し競争が激化する場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

2)抗体医薬等との競合

 アプタマー医薬は抗体医薬と類似した作用メカニズムや投与方法などから、ターゲット疾患によっては抗体医薬との開発競争や市場での競合が起こりえます。

 上記に述べた競合相手の中には、マーケティング力、財務状況等について当社やその提携先より優位にある企業が多数あり、当社開発品と競合する製品(特に抗体医薬)を効率よく開発し、生産及び販売する可能性があります。

 当社としては、当社開発品と競合する製品・開発品のプロファイル並びに開発状況等も考慮に入れながら、アプタマーの特徴を生かし、当該競合品を凌ぐことができる開発品を選定した上で、当社の優秀な資源と資金をその開発品に集中し、当該開発を推進し、これを他の競合先よりも優れた開発力・マーケティング力を保有する製薬会社にライセンス・アウトする所存です。

 しかしながら、許認可当局によって当社の製品候補の販売承認が得られた場合であっても、これら競合相手との競争が生じた場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ト)賠償問題発生リスクについて

 当社の創薬対象であるアプタマー医薬は、これまで医薬品として用いられてきた低分子医薬品、ワクチン、抗体医薬品に次ぐ新しいカテゴリーである核酸医薬品に属するものです。

 核酸医薬品は開発の歴史が浅く、現在までに10数品目が上市されただけで、多くは開発途上にあります。このため、製品の効果や安全性、製造方法及び製造コストなどにつき十分な経験、実績が確立されているとはいえず、予期せぬ副作用や製造上の問題または課題が発生する可能性があり、このような場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、十分な非臨床試験データの蓄積と、上記(ハ)で述べたように、各領域の専門家や医薬品製造会社の参画を得た上で、治験薬製造、臨床試験計画策定・実施をしています。

 しかしながら、このような対策を講じても、予期せぬ副作用や製造上の問題または課題が発生する可能性があるため、臨床試験の実施に伴う健康被害に対する賠償問題が発生した場合に備えて、治験賠償責任保険などの保険への加入によって、こうした事態が発生した場合の財政的負担を最小限にする対応を図っておりますが、当該保険で、十分な賠償責任金額を填補できない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(チ)技術革新について

 当社は「RiboARTシステム」というアプタマー創薬に関する基盤技術を保有しており、あらゆるターゲットに対応したアプタマー医薬の開発を可能にしているという点で優位性を有していると認識しております。

 しかしながら、医薬品産業においては技術革新が活発であり、当社が認識している優位性を維持し続けるために、当社では、これまでに培った「RiboARTシステム」のさらなる発展、向上を図ることに加えて、新規技術の開発に鋭意取り組んでおります。

 しかしながら、当社の計画どおりに研究開発が進捗しない場合や急激な技術革新等により新技術への対応に遅れが生じた場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リ)海外での事業展開について

 当社は、当社の開発するパイプラインが、国内のみならず、世界各国の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、海外子会社の設立を含む形で海外展開に向けた取組みを進めております。

 しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、当社の事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、種々の情報ソースを活用し、最新情報に基づく対応を進めてまいりますが、その情報収集又は対応が不十分な場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ヌ)研究開発に関する外部委託について

 当社は、広く社外にも専門的な意見を求め、さらに機動的な事業運営を図るため、主に以下に掲げる研究開発項目の一部について、外部機関に業務委託を行っております。

・原薬(前臨床試験用及び臨床試験用の各種アプタマー)並びに治験薬の製造業務

・前臨床試験の実施

・臨床試験の実施

 特に、原薬・治験薬製造委託取引については、自然災害や所在国における不測の事態、予期せぬ事情による契約終了した場合等により、当該製造元から安定的な原薬供給が受けられなくなり、当社の研究開発の推進に支障をきたし、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、当該製造元との良好な関係を維持・継続、また代替先の確保に努めてまいりますが、上記のような事態や速やかな代替先への製造移行が行われなかった場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、今後の事業の拡大に合わせて上記以外の業務についても、機動的な事業運営を図るため、外部機関に業務委託を行ってまいりますが、速やかに適切な業務委託先が確保出来なかった場合には、同様に、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ル)投資に関するリスク

 当社では、常に最先端の技術開発に取り組み、周辺領域を含めアプタマー創薬に参入している企業や潜在的な競争相手に先んじるため、関連する技術や特許を保有する企業に対して投資やM&A等(買収、合併、事業譲渡・譲受)という形で提携を進める可能性があります。

 しかしながら、提携先の選定やその投資価額の妥当性等においては、各事業・財務等の社外専門家の評価を得たうえで慎重に進める方針でありますが、提携先において、予期せぬ問題が生じた場合や、予想通りに研究開発が進まない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

②会社組織に関する事項

(イ)小規模組織であることについて

 当社の人員は、本書提出日現在、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員21名と小規模であります。当社の研究開発活動については、比較的少人数による体制(代表取締役1名、従業員16名)を敷いておりますが、研究開発段階における提携関係と業務受託企業の積極活用により、既存パイプラインの開発並びに新規薬剤候補化合物の探索を推進しております。今後は、既存パイプラインの開発推進及び新規薬剤候補化合物のパイプライン化に伴い、さらなる研究開発人員の増加を計画しております。

 また、管理部門(内部監査室を含む)の人員は本書提出日現在で6名(兼務取締役1名、従業員5名)であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大に伴い、管理部門につきましても増員を図る方針であります。

 しかしながら、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ロ)特定人物への依存について

 当社はこれまで、創業者で当社の競争力の源となっている「RiboARTシステム」の創出者であり、多くの社有特許の発明者でもある東京大学医科学研究所教授であった中村義一(現 当社代表取締役社長、東京大学名誉教授)を中心として、基礎研究・研究開発をはじめとする事業の全般を推進してまいりました。当社設立は、同氏の研究成果の事業化を目的とするものであり、また、現在の当社と東京大学との共同研究においても中心となっていることから、当社の研究開発活動において重要な位置付けを有しており、その依存度は極めて高いと考えられます。

 当社は、今後においても代表取締役としての同氏の会社経営の執行が必要不可欠であると考えており、又、次の世代への大きな権限移譲等による後継者育成に努めておりますが、何らかの理由により、突然、同氏の会社経営の執行が困難となった場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ハ)自然災害について

 当社は、事業活動の中心となる研究設備や人員が本社周辺に集中しており、地理的なリスク分散ができておりません。今後、地理的なリスク分散も検討して参りますが、この地域において地震等の大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊、事業活動の停滞等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ニ)大学等との共同研究について

 当社は東京大学を含め、複数の大学等公的機関と共同研究を実施してまいりました。今後もこれらの共同研究を継続していく考えでおります。

 東京大学医科学研究所には社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し共同研究を実施しており、その下で同研究所の施設(実験区画、動物試験施設等)や各種のインフラの利用が可能となっており、当社の研究推進に大きく寄与しております。

 しかしながら、今後も、他大学との新規共同研究先の探索・提携に努めて参りますが、法令改正等、何らかの事情により東京大学の社会連携講座が大学において継続されず、または共同研究契約が解消された場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③大株主に関する事項

 2020年3月31日時点で大塚製薬株式会社は当社発行済株式総数の22.78%(4,000,000株)を保有しております。なお、大塚製薬株式会社は大株主ではありますが、当社の経営的支配を目的として出資をしていないため、当社の経営判断等に関して影響力を行使するなどの制約を当社に与えておりません。

 当社は、大塚製薬株式会社との友好関係を維持してまいりますが、将来において大塚製薬株式会社の経営方針やグループ戦略が変更され、関係が解消された場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(イ)大塚製薬株式会社との取引関係

  大塚製薬株式会社との間において、2020年3月期における取引はありません。

 

(ロ)大塚製薬株式会社とのその他特別な関係

  大塚製薬株式会社との間において特別な関係はありません。

 

④知的財産権に関する事項

(イ)特許について

 当社の出願中の各特許については、特許出願時に特許事務所や専門家による特許性等に関する検討・調査を行った上で、最適な特許出願を実施しております。そして、本項に記載した事項については、現在、当社が開発中のプロジェクトに関して、その実施に支障若しくは支障の発生を懸念される事項は、調査した限りにおいて、存在しておりません。

 しかしながら、開発品をカバーする特許出願が成立しなかったり、カバーする範囲が狭いためにライセンス・アウトが出来ず、または出来たとしても低額な対価しか得られず、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。また、成立した特許の権利維持費用が今後当社の負担になる可能性もあります。

 さらに、医薬品業界においては、日々熾烈な新薬の開発競争が世界的に繰り広げられており、他社において優れた発明が行われる可能性は常に存在し、当社の特許が成立し、当社技術を保護できた場合においても、他社の特許や技術により、当社の特許が淘汰または無力化される可能性は否定できません。

 

(ロ)訴訟及びクレームについて

 当社においては、その事業が第三者の特許権等に抵触することを未然に防止するため、事業の着手及びその過程において、特許事務所や専門家による特許調査を適宜実施しており、現時点において第三者特許への抵触の可能性は低いものと認識しております。

 また、本書提出日現在において、当社の事業に関する特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟及びクレームが発生している事実はありません。

 しかしながら、当社のような創薬を事業とする研究開発型の企業にとって、事業に対する差止請求、損害賠償請求、実施料請求等の知的財産権侵害問題の可能性を完全に排除することは困難であります。万が一、当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、案件によっては解決に時間及び多大の費用を要する可能性があります。特に第三者の特許権等を侵害して事業を行っていた場合、当該第三者から差止請求権や損害賠償請求権を行使されたり、高額な実施料の請求等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ハ)特許の確保について

 当社は、事業に必要となる職務発明につき、その発明者である役員・従業員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は発明者に対して特許法第35条第3項に定める「金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を与えなければなりません。当社は社内に周知された規程に則り、発明者の認定及び金銭の支払を実施しているため、これまでに金銭の額等について発明者との間で問題が生じたことはありませんが、その可能性を将来にわたり完全に排除することはできません。紛争が生じた場合や、発明者に追加の対価を支払わなければならない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ニ)情報管理について

 当社の事業において、研究若しくは開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。その流出リスクを低減するため、当社は、役職員、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。

 しかしながら、役職員、取引先等によりこれが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤経営成績に関する事項

 当社は、医薬品の研究開発を事業とするベンチャー企業であり、製薬企業との共同研究や製薬企業への開発品のライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としておりますが、医薬品の研究開発では当初から多額の資金が必要になる反面、安定的な収益の計上にいたるまでには相当な期間を要し、当初は期間損益がマイナスになるのが一般的な傾向です。2015年3月期を除き、創業以来、2020年3月期まで当期純損失を計上してまいりました。当社は、既にライセンス・アウトしたパイプラインに続く、後続のパイプラインのライセンス・アウトや新規共同研究契約の獲得を推し進めてまいりますが、将来においてこれらの施策が計画通りに進展しない場合、予定した当期純利益を計上できず、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。

尚、過去5年間の当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。

 

    回次

 

第13期

第14期

第15期

第16期

第17期

決算年月

 

2016年3月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

事業収益

(千円)

121,911

93,773

64,727

7,949

121,385

営業損失(△)

(千円)

△532,389

△785,903

△899,894

△928,626

△914,580

経常損失(△)

(千円)

△322,103

△658,864

△751,609

△835,200

△853,832

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

△324,703

△706,894

△694,797

△830,464

△902,288

 

 上記に記載しましたように、安定的な収益の計上に至るまで、さらには、事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、提携内容の変更、更なる助成金の獲得、新株発行等の方法により資金需要に対応してまいります。しかし、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による当事業年度における経営成績等への大きな影響はありませんでした。

 

①財政状態の状況

(イ)資産の部

 当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて299百万円減少し、2,269百万円となりました。これは、AJU薬品へのRBM-007のライセンス・アウトに伴い売掛金が108百万円、研究用機器の購入等に伴い有形固定資産が30百万円増加した一方で、有価証券が600百万円、RBM-007の開発に関連する外注費等に対する前渡金が45百万円減少したこと等によるものです。なお、当事業年度末において保有している有価証券は、保有する資金を、研究開発への充当時期まで、適切な格付けを得た安全性の高い金融商品で運用することを目的としたものです。

 

(ロ)負債の部

 当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて997百万円減少し、88百万円となりました。これは、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の行使800百万円、及び未行使分200百万円の繰上償還を行ったことにより転換社債型新株予約権付社債が1,000百万円減少したこと等によるものです。

 

(ハ)純資産の部

 当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて697百万円増加し、2,180百万円となりました。これは、転換社債型新株予約権付社債の転換、並びに、新株予約権の一部について権利が行使されたことにより、資本金が768百万円、資本剰余金が768百万円増加した一方で、当期純損失855百万円を計上したことにより、利益剰余金が同額減少したこと等によるものです。

 

 以上の結果、自己資本比率は、前事業年度末から37.6ポイント増加し、95.3%となっております。

 

②経営成績

 当事業年度においてAJU薬品株式会社へのRBM-007に関するライセンス収入108百万円等を計上したことにより事業収益を121百万円(前事業年度比1,427.0%増)、事業費用として研究開発費を673百万円、販売費及び一般管理費を362百万円計上し、営業損失は914百万円(前事業年度は928百万円の営業損失)となりました。

 また、営業外収益として、AMEDの支援事業による助成金収入68百万円、JST委託事業による助成金収入6百万円等を計上した一方で、営業外費用として、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の転換及び第14回並びに第15回新株予約権の発行諸費用等に係る株式交付費14百万円、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の償還に係る社債償還損2百万円を計上したこと等により、経常損失は853百万円(前事業年度は835百万円の経常損失)となりました。これにより当期純損失は855百万円(前事業年度は836百万円の当期純損失)となりました。

 なお、当社は創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比較し187百万円増加し、1,199百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は902百万円(前事業年度は830百万円の支出)となりました。主な資金増加要因は、減価償却費17百万円によるものです。一方で主な資金減少要因は、売上債権の増加額108百万円、未払金の減少による支出11百万円、RBM-007の開発を中心とした研究開発への投資を行ったこと等に伴う税引前当期純損失853百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果得られた資金は553百万円(前事業年度は418百万円の支出)となりました。主な資金減少要因は、定期預金の預入による支出803百万円、有形固定資産の取得による支出46百万円によるものです。一方で、主な資金増加要因は、有価証券の売却による収入600百万円、定期預金の払戻による収入803百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は536百万円(前事業年度は1,080百万円の収入)となりました。主な資金減少要因は、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の繰上償還を行ったことによる支出202百万によるものです。一方で、主な資金増加要因は、第14回及び第15回新株予約権の一部について権利が行使されたこと等に伴う株式の発行による収入732百万円によるものです。

 

 

④生産・受注及び販売の実績

当社の事業は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。

 

(イ)生産実績

 該当事項はありません。

 

(ロ)受注実績

 該当事項はありません。

 

(ハ)販売実績

 当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

事業の名称

当事業年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

創薬事業

121,385

1,427.0

合計

121,385

1,427.0

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2018年4月1日

 至 2019年3月31日)

当事業年度

(自 2019年4月1日

 至 2020年3月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

販売高

(千円)

割合

(%)

韓国AJU薬品株式会社

108,830

89.7

国立研究開発法人国立循環器病

研究センター

4,212

53.0

岩井化学薬品株式会社

2,486

31.3

ビタミンC60バイオリサーチ株式

会社

1,250

15.7

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。当事業年度における国立研究開発法人国立循環器病

研究センター、及びビタミンC60バイオリサーチ株式会社に対する販売実績は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この財務諸表の作成に当たりましては、会計方針の決定とその継続的な適用、並びに資産及び負債、収益及び費用の会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しましては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づき合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積もりと相違する可能性があります。

 なお、新型コロナウイルス感染症による影響は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営環境 [新型コロナウイルス感染症による影響]」に記載のとおり、現段階において、当社では新型コロナウイルス感染症による当社の事業に与える影響は軽微であることから、中期事業計画に与える影響も軽微であると判断し、会計上の見積りに用いた仮定に重要な影響を与えるものではないと認識しております。

 

固定資産の減損損失

 当社は、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、当社が進める特定のプロジェクトにのみ用いる固定資産がないことから当社の全ての固定資産を一つのグループとし、キャッシュ・フローを生み出す最小の単位として扱っており、これらの固定資産による収益性が著しく低下した場合に、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、中期事業計画に基づき慎重に検討を行っており、当事業年度末においては、中期事業計画に基づくキャッシュ・フローが固定資産の帳簿価額を上回っていることから減損損失を計上しておりませんが、その見積りの前提とした条件や仮定に変化が生じた場合、減損処理が必要になる可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響等による将来キャッシュ・フロー等、固定資産の回収可能価額計算の前提条件に変更が生じた場合は、固定資産の減損損失を計上する可能性があります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 

当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社の当事業年度における最重点経営目標は、「自社での臨床Proof of Conceptの獲得に向けた開発」であり、その実現に向けた取り組みを進めてまいりました。

 その具体的な進捗を以下に要約いたします。

 

「RBM-007」の開発について

 

(イ)RBM-007(抗FGF2アプタマー)による臨床開発の狙い

 当社では、自社で創製したRBM-007(FGF2に結合し、その作用を阻害するアプタマー)を、自社での臨床開発のテーマに選び、開発を進めております。

 線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2、FGF2)は、40数年前に発見されたタンパク質で、血管新生促進等の様々な生理作用を持つことが報告されております。しかしながら、長年に渡りFGF2は創薬標的の候補であったにもかかわらず、抗体を含め優れた阻害剤の開発がほぼない状態でした。そうした中、当社は、独自のアプタマー創薬技術により、過年度においてFGF2に結合しその作用を特異的に阻害するアプタマーRBM-007の創製に成功いたしました。

 開発の対象疾患としては、上述のようなFGF2の生理作用に鑑みて滲出型加齢黄斑変性症(Wet Age-related Macular Degeneration、wet AMD)と軟骨無形成症(Achondroplasia, ACH)を選択いたしました。

wet AMDは、加齢に伴い網膜の黄斑部に障害がおこる疾患で、無治療の状態だとやがて失明に至ります。欧米では失明原因の第一位となっています。この疾患の要因の一つは異常な血管新生によるとされており、10数年前に治療薬として血管新生を阻害する医薬品(VEGF阻害剤)が開発され、臨床医からは夢のような薬と評価されました(既存薬の全世界市場規模は約1兆円)。しかし、その後の経過観察によって、臨床上の問題点が明らかになってきました。その一つは、相当数(約1/3)の患者に対して、既存薬の有効性が乏しいことです。また、有効とみられた患者も2~3年程度経過すると薬効が低下し、再び失明のリスクにさらされます※1。これらの要因として、病変による網膜組織の瘢痕化(線維化)が関与していると考えられていますが、既存薬には瘢痕化を抑制する作用はありません。これに対してRBM-007は血管新生のみならず瘢痕形成を抑制する作用を持つことが、疾患モデル動物での薬理試験から明らかになりました(非臨床POC獲得※2※3。RBM-007のような二つの異なる作用を持ち合わせる医薬品は既存薬(VEGF阻害剤)にはなく、既存の医薬品では奏功しない患者に対して新規の治療法を提供できる可能性があります。

 一方、ACHは四肢短縮による低身長を主な症状とする希少疾患で、治療薬はなく、厚生労働省から難病指定を受けています。ACH患者においては、FGF2が骨伸長を抑制する要因の一つとして作用していますが、RBM-007は疾患モデルマウスを利用した実験で、骨長の短縮を約50%回復する効果を示しました。さらに、軟骨細胞への分化誘導が欠損していることが知られているACH患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、RBM-007存在下で、その分化誘導が回復することも確認しました(非臨床POC獲得)。現在、本邦では治療に成長ホルモンが使用されていますが、効果は十分とは言えず、骨延長術(足の骨を切断して引き離した状態で固定し、骨の形成を促す)といった非常に厳しい治療が幼い子供に施されることもあり、新薬が待ち望まれています。

 自社での臨床開発の実施により臨床POCが獲得されれば、新規治療法の確立に至る第一歩になるとともに、新薬候補品としてのRBM-007の価値が高まり、ライセンス収益の拡大及び将来に向けた発展に寄与するものと考えております。同時に、wet AMDの場合の硝子体という局所投与のみならず、全身投与による疾患治療の世界初の事例として、アプタマー医薬品の開発に大きく貢献するものとなります。

 

※1 Rofagha S, Bhisitkul RB, Boyer DS, Sadda SR, Zhang K. Seven-year outcomes in ranibizumab-

  treated patients in ANCHOR, MARINA, and HORIZON: a multicenter cohort study (SEVEN-UP).

  Ophthalmology 2013;120(11):2292-99.

※2 非臨床Proof of Concept(非臨床POC):ヒトでの臨床試験に入る前に、病態モデル動物での薬効確認試験において、投与薬剤が意図した薬効を有することが示されること。

※3 Matsuda Y, Nonaka Y, Futakawa S, Imai H, Akita K, Nishihata T, Fujiwara M, Ali Y, Bhisitkul RB, Nakamura Y. Anti-angiogenic and anti-scarring dual action of an anti-fibroblast growth factor 2 aptamer in animal models of retinal disease. Mol. Ther. Nucl. Acids, 17:819-828 (2019).

 

(ロ)開発状況、及びスケジュール

①滲出型加齢黄斑変性症(wet AMD)

 wet AMDを対象にした臨床試験として、第1/2a 相臨床試験(試験略称名:SUSHI試験)を2018年10月から2019年7月にかけて米国で実施いたしました。

 本第1/2a 相臨床試験は、オープンラベル(非盲検)、非対照(対照薬を置かない)の試験で、RBM-007の3用量(3コホート)を、計9人の被験者に対して、単回投与(硝子体内注射)し、安全性、忍容性を確認することを主な目的として、米国西海岸の複数の治験施設において実施いたしました。

その結果、全ての用量において、主要評価項目(安全性と忍容性の確認)を達成し、あわせて副次的評価項目において薬効を示唆する結果も認められました。とくに薬効評価の指標となり得る光干渉断層撮影(OCT)による中心窩網膜厚の変化について、治療抵抗性のある高齢の患者を対象としたにもかかわらず、中心窩網膜厚の減少(50マイクロメートル以上)が、高用量(第3コホート)の3名全例で認められ、その効果が投与後56日目まで維持されました。さらに、その3名中2名の被験者においては、56日目で中心窩網膜厚が約200マイクロメートル減少し、ほぼ正常レベルに回復していました。

 この結果を受けて、2019年12月より、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験が米国で開始されました。この試験は、wet AMD患者を対象に、①RBM-007硝子体内注射の単剤投与群、②既存薬としてアイリーア(アフリベルセプト)硝子体内注射との併用投与群と、③アイリーア硝子体内注射の単剤投与群との間で、有効性と安全性を比較評価する無作為化二重盲検試験です。

またこれと並行して、国内外の製薬企業との提携協議を進めてまいりました結果、2020年3月、韓国AJU薬品株式会社(以下、AJU 薬品)との間で、韓国・東南アジア地域におけるRBM-007のwet AMDを適応疾患とするライセンス契約を締結いたしました。この締結により、AJU薬品は、RBM-007の韓国・東南アジア地域における独占的開発権と販売権を取得します。また、当社は、AJU 薬品より、契約一時金として1百万USドルを受領、今後、RBM-007の開発段階に応じて、開発マイルストーンとして最大5百万USドル、合計最大6百万USドルを受け取る権利を取得します。

 今後もRIBOMIC USA Inc.との緊密な連携の下、関連法令、ガイドライン等を遵守しつつ、この臨床試験を迅速・適切に推進してまいります。

 

②軟骨無形成症(ACH)

 本プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助(2015年度からの3年間ならびに2018年度からの3年間)を受け、GLP適合非臨床安全性・毒性試験及び治験薬製造が完了しております。当事業年度において、これらの非臨床試験データが第1相臨床試験を実施するための条件を充足しているかどうかの見解を求めるため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との対面助言を実施し、データの充足性がPMDAにより確認されました。2020年4月、新薬の治験計画届出書をPMDAに提出し、その後のPMDAによる30日間の審査を経て、第1相臨床試験の実施が許可されました。その結果、2020年7月に、日本において第1相臨床試験を開始いたしました。第1相臨床試験は、RBM-007の安全性、忍容性及び薬物動態を調べることを目的として、国内の1治験施設において、合計24名の健康成人男性を対象に実施しております。

 

(ハ)推進体制

 当社では、事業開発部と臨床開発部を中心に外部機関の協力も得て、治験実施体制の構築を進めてきました。その一環として、2019年10月1日付で第一三共株式会社で37年間臨床開発を担当した池上直隆氏を執行役員臨床開発部長として採用し、体制強化を図っております。米国での臨床開発は、当社完全子会社であるRIBOMIC USA Inc.が治験スポンサーとなり、新薬開発経験が豊富なYusuf Ali氏(Ph.D.)がCEOとして陣頭指揮を執っております。2019年5月に、当社の取締役執行役員1名が、RIBOMIC USA管掌として着任するとともに、2019年8月より眼科専門医(Daniel de Souza Pereira氏)が社員として新たに加わり米国での臨床開発体制をさらに強化いたしました。また、眼科専門医及び眼科領域の製品開発のエキスパートを含む科学諮問委員会が設置されており、同委員会においては継続的に臨床試験計画の審議、治験データの評価等が行われています。

 さらに、ACH治療薬開発については、大阪大学医学部附属病院小児科の臨床医で、小児における骨系統疾患の専門医である大薗恵一教授と医学アドバイザーの委嘱に関する契約を締結し、各種助言等を行っていただいております。

 今後もRBM-007の開発推進に向け、体制の一層の整備を図ってまいります。

 

その他のプロジェクト

 

(イ)RBM-003及びRBM-010

 当社は、既存パイプラインを継続的、重層的に拡大し中長期的に成長するために、特に優れた薬効が動物試験で確認されているRBM-003(抗キマーゼアプタマー、心不全等)及びRBM-010(抗ADAMTS5アプタマー、変形性関節症等)を、RBM-007に次ぐ重点開発プログラムと位置づけております。

 RBM-003が標的とするキマーゼの阻害剤として、バイエル社(独)が開発した低分子のキマーゼ阻害剤があり、これを用いた、慢性心不全に対する臨床試験が第2相まで実施されていましたが、最近開発の中止が報告されております。当社のRBM-003はバイエル社のキマーゼ阻害剤に比較して、強い酵素阻害活性をもつことが確認されており、急性心不全に対する即効性の注射薬の開発を目指し、今後の研究開発を加速してまいります。

 RBM-010が対象とする変形性関節症は、種々の原因により、膝や足の付け根、肘、肩等の関節に痛みや腫れ等の症状が生じ、その後関節の変形をきたす病気です。現在、治療法としては痛みや腫れを和らげる薬の服用や関節置換術などの手術しかなく、根治する薬はありませんが、RBM-010はその根治療法に道を開く可能性があり、今後の研究開発に取り組んでおります。

 

(ロ)RBM-011

 RBM-011(抗IL-21(インターロイキン21)アプタマー)を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新薬の開発研究を、AMEDの難治性疾患実用化研究事業の一環として助成を受けて(2017~2019年度)、国立循環器病研究センターと共同で進めてきましたが、今般、その継続研究がAMEDの治験準備(ステップ1)研究として採択されました(2020~2022年度)。

 肺動脈性肺高血圧症は、難治性呼吸器疾患に認定されている原因不明の病気であり、肺動脈壁が肥厚して血管の狭窄が進行した結果、全身への血液や酸素の供給に障害が生じ、最終的には心不全から死に至ることのある重篤な疾患です。近年、プロスタグランジンI2製剤などの治療薬の開発で予後は改善しつつありますが、治療薬が十分な効果を発揮しない患者様の予後は依然として極めて悪い状態です。これらの既存治療薬は、いずれも血管を拡張させる作用を持つものであり、血管壁の肥厚を抑制する作用を持つ薬はなく、その開発が強く望まれています。

 国立循環器病研究センターとの3年間の共同研究によって、当社が創製したRBM-011は、動物実験において、肺動脈壁の肥厚に対して、顕著な抑制効果をもつことが明らかになっています。今後は、肺動脈性肺高血圧症の国内での専門医療機関である国立循環器病研究センターと密に連携して、本剤を臨床試験に進めるべく注力したいと考えております。

 

(ハ)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアプタマー治療薬の開発

 当社は、現下の世界情勢と当社の使命に鑑み、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬の開発を目的として、アプタマー創薬研究を開始いたしました。

 COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2は、ウイルス表面のスパイクタンパク質(Sタンパク質)がヒトの細胞表面にある受容体(ACE2タンパク質)に結合することによって、感染が開始され、その後細胞内に侵入し増殖することが明らかになっています。当社は、Sタンパク質やACE2タンパク質に結合することで、Sタンパク質とACE2タンパク質の結合を阻害したり、あるいはウイルスの細胞内への侵入を阻止するような活性を持つアプタマーの創製を開始しました。今後、社外の専門研究グループと共同で細胞ならびに動物モデルを用いて検証する予定です。

 世界的なパンデミックとなっているCOVID-19に対して、多くの企業や研究機関がワクチンや抗ウイルス薬の開発を進めており、臨床試験も開始されておりますが、その終息は全く見通しがたっておりません。一刻も早い感染症克服のためには、ワクチン開発と並行して、作用機序の異なる様々な治療薬の開発を緊急に間断なく推進することが重要です。当社は、タンパク質・タンパク質結合阻害剤としてのアプタマーの卓越した有用性に鑑み、上述のアプタマー開発がCOVID-19の克服に繋がる有力なアプローチであると期待しています。本研究の遂行に当たっては、研究員の健康に十分配慮の上、短期間に開発可能であるアプタマーの特徴を最大限に発揮して、迅速にCOVID-19治療薬の開発に取り組んでまいります。

 

(ニ)共同研究契約

 前々事業年度において当社は、米国プリツカー精神神経疾患研究コンソーシアムのメンバーの一員であるミシガン大学と、当社が創製したアプタマーの精神疾患に対する効果を検証することを目的に、共同研究試料提供契約(MTA)を締結し、現在、同大学において当社が提供したアプタマーの評価が進められております。

 また、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社との間の2019年1月18日付共同研究開発契約に基づき、化粧品原料候補の創製・開発に関する共同研究を実施しております。

 また、当社はアステラス製薬株式会社と2017年3月21日付でアプタマー医薬品開発に関する共同研究契約を締結し、共同研究を推進してまいりましたが、2019年9月21日に研究期間が満了し、当該共同研究を終了いたしました。

 

(ホ)継続中の自社創薬プロジェクト

 アプタマー医薬品の汎用性をさらに活かすため、GPCR(Gタンパク質共役型7回膜貫通型受容体)を標的とするアプタマー創薬や、コンピューター科学を応用した技術開発(JST委託事業)等を継続して進めております。

 

開発コスト

 

 今後の開発資金の調達を目的として、2018年6月13日に株式会社ウィズ・パートナーズが業務執行組合員を務めるウィズ・ヘルスケア日本2.0投資事業有限責任組合及びTHEケンコウFUTURE投資事業有限責任組合を割当先とする第三者割当の方法による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(1,000百万円)、及び第14回新株予約権(1,001百万円)を発行し、これらの転換・行使により1,028百万円を調達しており、主にRBM-007のwet AMDの臨床開発費として充当を進めております。なお、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の未転換の200百万円については、2020年2月12日に繰上償還いたしました。

 また、2020年1月27日にSMBC日興証券株式会社を割当先とする第三者割当の方法による第15回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、5,659百万円※5の調達を予定しております。本調達による資金は主に、①RBM-007のwet AMD及びACHを対象とした臨床開発費用(臨床開発のための薬剤合成費用を含む)、②RBM-003の心不全を対象とした非臨床試験費用、③RBM-010の変形性関節症を対象とした非臨床試験費用、④新規技術開発費用(製剤化技術開発・導入他)等に充当する予定です。2020年3月末時点での調達額は約5億円(発行総数の12%)となっております。

 

※5 当初行使価額で全ての新株予約権が行使されたと仮定した場合で発行諸費用の概算額を差し引いた金額。

 

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

(イ)運転資金

 当社は、医薬品の研究開発を事業としており、製薬企業との共同研究や開発品の製薬企業へのライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としております。

 当社の事業を遂行するための、運転資金需要のうち主なものは、当社が創製するアプタマー医薬の研究開発を推進するための研究開発費であります。なお、過年度における研究開発費の推移について下記に示すとおりであり、自社での臨床試験を実施するために、2017年3月期よりRBM-007による臨床試験のための原薬製造を開始して以降、臨床開発を行うための資金需要が高まっております。

 当社では、策定中の中期事業目標「VISION 2025」に掲げるパイプラインの臨床開発、新規技術開発等を遂行するための資金需要が生じております。

 

研究開発費の推移

    回次

 

第13期

第14期

第15期

第16期

第17期

決算年月

 

2016年3月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

研究開発費

(千円)

435,009

610,423

663,809

612,979

673,605

 

(ロ)財務政策

 中長期的な成長のための基本コンセプトとして、①探索から臨床ステージへの脱皮、②次世代アプタマー・テクノロジーの開発、③社会に対する企業価値の創出を念頭にしており、これを遂行するため、前事業年度において、株式会社ウィズ・パートナーズが業務執行組合員を務めるウィズ・ヘルスケア日本2.0投資事業有限責任組合及びTHEケンコウFUTURE投資事業有限責任組合を割当先とする第三者割当の方法による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債、及び第14回新株予約権を発行し、当事業年度において1,028百万円を調達いたしました。これに加えて、当事業年度において、SMBC日興証券株式会社を割当先とする第三者割当の方法による第15回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、当事業年度において501百万円を調達いたしました。なお、2020年7月14日時点で第15回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使が完了し、総額5,503百万円を調達いたしました。

 

(ハ)株主還元

 当社の株主還元に関する方針は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。

①ライセンス・アウトに関する契約

契約書名

提携及びライセンス契約書

契約相手方名

藤本製薬株式会社

契約締結日

2014年4月30日

契約期間

締結日から、製品の販売後7年が経過する日の属する月の末日、或いは本製品の関連特許が全て消滅する日の属する月の末日のいずれか遅い日まで

主な契約内容

① 当社は、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関する、全世界でのサブライセンス権付きの独占的実施権を藤本製薬株式会社に許諾する。

② 藤本製薬株式会社は、当社に対して、対価として、契約一時金、開発の進展等に応じたマイルストーン・ペイメント(第1相臨床試験開始時、前期第2相臨床試験開始時、後期第2相臨床試験開始時、第3相臨床試験開始時、製造販売承認申請時、製造販売承認取得時、純売上高が一定額超過時)、及び市販後の一定率のロイヤルティー及び藤本製薬株式会社の得たサブライセンス収入の一定割合を支払う。さらに、当社が第三者割当の方法で発行する普通株式について、3億円分の引き受けを行う。(なお、本引き受けについては、2014年5月12日に払込を完了しております。)

③ 当社は関連特許の50%を藤本製薬株式会社に譲渡する。

(注)本契約書の対象となる関連特許については、「②特許譲受に関する契約」に記載の、国立大学法人東京大学との2008年9月16日付譲渡契約書及び2010年3月23日付譲渡契約書、並びに塩野義製薬株式会社との2012年9月10日付特許実施対価等に関する覚書に基づき、関連特許の譲渡を受けております。

 

契約書名

ライセンス契約書

契約相手方名

AJU薬品株式会社(「AJU薬品」韓国)

契約締結日

2020年3月17日

契約期間

守秘義務により非開示

主な契約内容

① 当社は、AJU薬品に対し、韓国並びに東南アジア諸国(シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー)におけるRBM-007を含有する医薬品(「RBM-007製品」)の滲出型加齢黄斑変性を適応症とする開発、販売に関する(当社事前書面承諾による)サブライセンス権付きの独占的実施権を許諾する。

② AJU薬品は、当社に対して、当該ライセンス許諾の対価として、契約一時金:100万USドル、開発の進展等に応じたマイルストーン・ペイメントを最大500万USドル、合計最大600万USドルを支払う。又、AJU薬品による販売に際しては、当社が、AJU薬品に対し、ロイヤルティーを含めた製品供給価格でRBM-007製品を供給します。

 

 

②特許譲受に関する契約

契約相手方名

国立大学法人 東京大学

契約締結日

特許を受ける権利ごとに、個別に契約を締結しており、各締結日は下記のとおりです。

2006年5月31日、2006年10月31日、2008年9月16日、2009年5月8日、2010年3月23日、2012年3月22日、2012年11月19日、2019年7月4日

契約期間

契約締結日から契約上の権利が全て失効する日まで

主な契約内容

当社は、アプタマー創薬に関する事業化に必要な特許に関し、国立大学法人東京大学より特許を受ける権利を譲り受けております。その概要は下記のとおりです。

当社は、特許を受ける権利の対価として契約一時金、開発の進展に応じたマイルストーン及び市販後は一定率のロイヤルティーを支払う。

備考

各契約とパイプラインとの関係は下記のとおりです。

RBM-001:2006年10月31日付契約、2012年11月19日付契約

RBM-003:2009年5月8日付契約

RBM-004:2008年9月16日付契約、2010年3月23日付契約

RBM-007:2012年3月22日付契約

TGFβに対するアプタマー:2019年7月4日付契約

 

契約書名

特許を受ける権利等の譲渡契約書

契約相手方名

国立大学法人 名古屋大学

契約締結日

2012年12月25日

契約期間

契約締結日から契約上の権利が全て失効する日まで

主な契約内容

当社は、アプタマー創薬に関する事業化に必要な特許に関し、国立大学法人名古屋大学より特許を受ける権利を譲り受けております。その概要は下記のとおりです。

当社は、特許を受ける権利の対価として契約一時金、開発の進展に応じたマイルストーン及び市販後は一定率のロイヤルティーを支払う。

備考

契約の対象となるパイプラインはRBM-001です。

 

契約書名

特許実施対価等に関する覚書

契約相手方名

塩野義製薬株式会社

契約締結日

2012年9月10日

契約期間

締結日から、特許の有効に存続する期間の満了又は失効が最も遅く到来する日まで

主な契約内容

当社は、抗NGFアプタマーを含有する製品の販売に伴う特許実施の対価を受け取った場合、塩野義製薬株式会社に対し一定率のロイヤルティーを支払う。

 

契約書名

共同研究終了に伴う成果取扱い覚書

契約相手方名

大塚製薬株式会社

契約締結日

2017年5月8日

契約期間

守秘義務により非開示

主な契約内容

① 当社は、大塚製薬株式会社と、2008年1月1日から2015年12月末日までに実施した、RBM-002及びRBM-003に関する共同研究の成果に関連して、当社側で研究開発を推進することを目的に、関連特許の譲渡を受ける。

② 当社は、RBM-002及びRBM-003について開発やライセンス・アウトに成功した場合には、製品の売上に応じたロイヤルティー、当社が第三者にライセンスを行った場合のライセンス対価の分配金、及び当社が第三者に事業譲渡を行った場合の事業譲渡対価の分配金を、大塚製薬株式会社に支払う。

 

契約書名

覚書

契約相手方名

大正製薬株式会社

契約締結日

2019年4月4日

契約期間

守秘義務により非開示

主な契約内容

当社は、自己によるRBM-010の研究・開発・製造・販売等をする場合、その売り上げに応じたロイヤルティーを、または、第三者に対して、RBM-010のライセンス・アウトに成功した場合には、当該ライセンス対価(ロイヤルティを含む)の分配金を、大正製薬株式会社に支払う。

 

契約書名

覚書

契約相手方名

大塚製薬株式会社

契約締結日

2019年5月24日

契約期間

守秘義務により非開示

主な契約内容

当社は、第三者に対して、RBM-001の、ライセンス・アウトに成功した場合には、当該ライセンス対

価(ロイヤルティを含む)の分配金、及び事業譲渡を行った場合には、当該事業譲渡対価の分配金を、大塚薬製株式会社に支払う。

 

 

③共同研究開発に関する契約

契約書名

社会連携講座等設置契約書

契約書相手方名

国立大学法人 東京大学

契約締結日

2012年1月5日

契約期間

2012年4月1日から2023年3月31日

主な契約内容

① 当社は東京大学に対し、本契約において予め定められた活動経費を支払う。

② 東京大学は「「RNA医科学」社会連携研究部門」を設置する。

③ 東京大学と当社は共同研究を実施する。

 

 

契約書名

共同研究契約書

契約書相手方名

国立大学法人 東京大学

契約締結日

2012年3月30日

契約期間

2012年4月1日から2023年3月31日

主な契約内容

① 当社は東京大学に対し、本契約において予め定められた研究経費を支払う。

② 当社と東京大学は、社会連携講座等設置契約に基づき共同でRNAアプタマーの研究を実施す

  る。

③ 当社の研究担当者は東京大学の施設を利用し、研究を実施することができる。

 

④アドバイザリー契約

契約書名

技術アドバイスおよび研究委託に関する覚書

契約書相手方名

全薬工業株式会社

契約締結日

2013年4月1日

(2011年2月に締結した「RNAアプタマー創薬技術アドバイスに関する契約」が更新を経て継続しているものです)

契約期間

守秘義務により非開示

主な契約内容

 

① 当社は、全薬工業株式会社に対しアプタマー創薬に関する技術上の助言を行うと共に、別途合意によりアプタマー開発に関する試験を受託する。

② 全薬工業株式会社は、当社に対し、技術上の助言及び試験実施の対価として、別途合意した金額を支払う。

 

 当事業年度において終了した契約は以下のとおりです。

共同研究開発に関する契約

契約書名

共同研究契約書

契約相手方名

アステラス製薬株式会社

契約締結日

2017年3月21日

契約期間

2017年3月21日から2019年9月21日

主な契約内容

① 共同研究により開発候補となる物質(アプタマー)を取得する。

② アステラス製薬株式会社は本共同研究の対価として、所定の金額を支払う。

 

5【研究開発活動】

 当社は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。

 

(1)研究開発戦略

当社は研究開発を事業とすることから、事業戦略とは研究開発戦略でもあります。当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。

① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充・進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。

② 共同研究を積極的に展開し、早期での収益の確保及びライセンス・アウトを目指す。

③ 最適な自社製品については自社で臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。

 アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。

1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)

2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー

3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー

4)次世代シークエンサーとコンピュータ科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発

5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用

 アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品・疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から自社での臨床POC取得のための臨床試験を実施する。

⑥ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。

 

(2)研究開発費

当事業年度における研究開発費は673百万円となっております。

 

(3)研究開発の特徴について

① 核酸医薬品の中でもアプタマーの創薬研究に特化

 核酸医薬は、現在巨大な市場を形成しつつある抗体医薬に続く、次世代の医薬品として注目されている新しいカテゴリーの医薬品です。

 当社は、その核酸医薬の中で、RNAが多様な立体構造を作り、標的となる疾患関連タンパク質に結合してその作用を阻害することに注目して、RNAアプタマーの医薬品への応用を図るための研究開発を行っております。

 

アプタマーを創薬のシーズとするのは、以下のような優れた特性があるためです。

1)標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体と比較しても、その結合活性が非常に高いことが多く知られています。

2)アプタマーは様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善することが可能です。

3)副作用に関しても、抗体は生物製剤であるため、免疫原性の影響は無視できませんが、アプタマーは合成品であるため、そのような懸念は今のところ報告されていません。

4)アプタマーは他の核酸医薬のように細胞内に入らなければその効果を発揮しないものと異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。

 

② アプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」

 当社が有するアプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。

当社は、現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。

 

「RiboARTシステム」のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この技術は、2011年6月までは米国のアルケミックス社が全世界で権利を有し、その高価なライセンスの対価と同社の政策により、容易に第三者が商業目的でSELEX法を実施することができませんでした。当社は、2006年2月以降、アルケミックス社からSELEX法に関する基本特許等の使用許諾を受け、各種のアプタマーを開発するとともにSELEX法に関する技術の向上を図ってまいりました。他社に先駆けてSELEX法を実施し様々なアプタマーを創製してきたこと及びアカデミアとの連携が、「RiboARTシステム」として結実し、現在及び将来のアプタマー創薬における当社の競争優位性をもたらしております。

 SELEX法の基本特許が2011年6月に日本及びヨーロッパで、2014年9月にアメリカで失効したため、世界各国の大手製薬企業がアプタマー創薬に参入してくることは十分に考えられます。一部の大手製薬企業が参入を開始しておりますが、当社は「RiboARTシステム」の発展を図り、核酸創薬、特にアプタマー創薬の分野において、主導的役割を果たしてまいりたいと考えております。

 

③ トランスレーショナル・リサーチの推進

当社の研究開発が他の創薬ベンチャー企業と際立って異なる点は、アカデミアでの研究成果を事業化のための開発に移行させるトランスレーショナル・リサーチを、長期間継続して行ってきたことであります。これにより、アカデミアにおける最新のRNA研究の内容や成果を、当社での事業化に直接反映させることができます。

 

④ 大学内の研究施設の活用と共同研究

当社は、東京大学医科学研究所と2005年よりRNA科学やアプタマーに関連する共同研究を行ってまいりました。2012年4月からは新たに社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し、その下で産学連携での共同研究による、製品・技術開発を推進しております。

 

(4)研究開発体制について

  当社の研究開発活動は研究開発本部と事業開発部が密に連携して実施しております。研究開発本部には探索研究部、開発研究部、臨床開発部を設置し、SELEX法を駆使して目標のタンパク質に結合する医薬品用途のアプタマーの創製、創製されたアプタマーの薬効と安全性を調査、確認、創製されたアプタマーの臨床開発までをそれぞれの部が緊密に連携し研究開発を行っております。また、事業開発部では、医薬品開発で培ったノウハウを基に医薬品以外のアプタマー開発等の新規事業プロジェクトを推進しております。

 2020年3月31日現在、研究開発本部及び事業開発部に所属する研究員は16名であり、内7名が博士号を取得しています。同時に東京大学をはじめとした国内外のアカデミアとも共同研究を行っており、最先端のRNA研究の成果やアプタマーに関する技術動向の把握に努めております。

また、医薬品開発に必要なノウハウなどは大手製薬企業との共同開発を通じて蓄積するとともに、大手製薬企業でのグローバルな医薬品開発の経験を有する人材を社内に擁し、研究開発のプロセスを効果的に管理、運営できる体制をとっております。

  医薬品の中でもとりわけ核酸医薬のような最先端の技術が関係する場合、知財は極めて重要であり、その対応には万全を期す必要があります。当社は医薬品、バイオ技術・製品に精通した複数の知財専門家と顧問契約を結び、緊密な連携のもと、対応を図っております。

 なお、選定した品目について、自社での臨床試験の実施に向けた体制の整備を進めております。

 

(5)新薬候補化合物の主な開発状況

本書提出日現在における新薬候補化合物の主な開発状況は「第1 企業の概況 3.事業の内容」の項で示したとおりです。