当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、RNA(リボ核酸)を成分とする医薬品(「アプタマー医薬」)の開発を通じて、「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」を企業理念に掲げ、それを実現するために、
・人の生命、健康に関連する医薬品の研究開発に関わる企業として、高い倫理性を持ち、最新の科学・技術に基づく研究活動を推進する
・コーポレート・ガバナンス体制の強化と充実を図り、業務執行の適法性や妥当性の維持に努めることにより企業価値の最大化を図り、社会に貢献できる企業としての責任を果たす
・会社経営の透明性を確保するために、会社情報の開示を一層充実させるとともに、説明責任を果たし、株主、取引先、地域社会等のステークホルダーとの良好な関係の維持、発展に努める
ことを基本ポリシーに掲げ、当社のプラットフォーム技術である「RiboART SystemⓇ」を活用した研究開発を推進しております。
(2)経営戦略等
一般に、医薬品事業は一つの製品を創出し上市するまで莫大な費用と年数を要します。このような中、当社はアプタマーの医薬品としての研究開発を行い、ライセンス・アウトした時に受け取る契約一時金、開発進行に伴ってその節目に受領するマイルストーン収入、製品上市後に受け取るロイヤルティー及び共同研究に伴って得られる共同研究収入などにより収益を獲得する創薬事業を展開しております。
当社の事業の特徴は、比較的早期の研究開発段階においてライセンス・アウトを実施し、早期に一定の収入を獲得すること、並びに、ライセンス・アウトで得られる収益の拡大も経営においては重要であるため、適切な自社創薬品については自社で臨床開発に取り組むことを重要な戦略としております。
当社は、共同研究並びに自社パイプラインの研究開発や臨床開発を推進するとともに、製薬企業との協力関係構築の一層の強化を図りながら、今後継続的なライセンス・アウトを実現することで収益規模の拡大とその安定化に努めてまいります。
中長期的な成長のための事業目標として、①探索から臨床ステージへの脱皮、②次世代アプタマー・テクノロジーの開発、③社会に対する企業価値の創出を念頭に、研究開発・臨床開発・事業開発活動に取り組んでおります。これの具体的進捗状況については、「第1企業の概況 3事業の内容 (1)当事業年度の主要なトピックス」、並びに「第1企業の概況 3事業の内容 (3)事業戦略」に記載しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、研究開発型の創薬ベンチャーであり、研究開発への投資から、その収益化まで長期間を要すること、また、収益はライセンス・アウトなどの成果に委ねられるという事業特性からROEやROAなどを目標とする経営指標は設けておりません。
ライセンス・アウト時の契約一時金、その後のマイルストーン、ロイヤルティー、共同研究による共同研究収入を計上するための前提となる研究成果(新規技術開発、非臨床POCや臨床POCの取得)や、各種開発イベント(当局への治験開始申請許可など)などが、当社における重要な経営イベントとなり、2025年までに自社創薬品の中から優先度の高いパイプラインを臨床ステージへ移行させる臨床試験プログラム目標(VISION 2025)を設けております。
(4)経営環境
医薬品業界では、未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医薬品開発が求められており、この分野での新薬開発競争が激化しております。製薬企業においては、従来の低分子医薬品だけでは、この分野の新薬を開発することが困難となっており、核酸医薬品をはじめとした新規医薬品の開発が進められております。このような取り組みにおいて、製薬企業は単独で開発を進めるのではなく、新規医薬品を手掛けるバイオベンチャー等と提携し、新規技術の導入や、バイオベンチャーが開発したパイプラインを導入するなどにより開発を進めております。近年、核酸医薬品の上市が顕在化しつつありますが、このような環境のもと、当社はアプタマー創薬のプラットフォーム技術である「RiboART SystemⓇ」により、特定の疾患や標的タンパク質に限定されない新薬シーズを創製し、製薬企業に提供していくとともに、当社ビジネスモデルの発展に注力してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、アプタマーの医薬品としての研究開発を行い、製薬企業にライセンス・アウトした際に受け取る契約一時金、開発進行に伴ってその節目に受領するマイルストーン収入、製品上市後に受け取るロイヤリティー及び共同研究に伴って得られる共同研究収入などにより収益を獲得する創薬事業を展開しております。このようなビジネスモデルにおいて、継続的かつ安定的な収益の確保の実現と、今後の飛躍に向けた中長期の事業目標として、探索から臨床ステージへの脱皮、次世代アプタマー・テクノロジーの開発、社会に対する企業価値の創出を掲げ、これにより「世界のアプタマー医薬品開発における主要な地位確立」を目標としております。
世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向(「第1 企業の概況 3 事業の内容(4)医薬品市場におけるアプタマー医薬②世界におけるアプタマー医薬品の臨床開発動向」の項の記載を参照)等も踏まえ、当社の事業目標の実現に向けて、以下の項目について、特に重点的に取り組んでまいります。
①自社での治験の実施
当社は、今後当社が大きく飛躍するためにも、自社で臨床試験を実施することが必要であると考えております。具体的には、umedaptanib pegolによる滲出型加齢黄斑変性を対象とした第2相臨床試験を米国で実施し、2021年12月までに試験を完了いたしました。また、軟骨無形成症(ACH)を対象とした第1相臨床試験を国内で実施いたしました(2020年7月~2021年5月)。さらに、ACHに関する、国内での前期第2相試験の被検者選定を目的とした観察試験、ACHの小児患者でのumedaptanib pegolの有効性と安全性を調べる前期第2相臨床試験、及びこれに引き続き実施する前期第2相長期投与試験の3つの治験計画を進めております。現在、東京、岡山及び関西地区の8施設において前期第2相観察試験が終了して、前期第2相臨床試験、前期第2相長期投与試験に順次移行しております。
当社の臨床開発については、社内のリソースに加え、臨床医や製品開発のエキスパートを含む外部の協力も得て進めております。今後もumedaptanib pegolの開発推進に向け、一層の体制整備を図ってまいります。
②自社パイプラインの充実と質の高いデータの構築
持続的な企業成長を実現するためには、良質な自社パイプラインを選定、拡充し、各々について製薬企業の評価に耐え得る試験データを取得していくことが重要と考えております。新規テーマの選定にあたっては、大手製薬企業における重点領域、既存薬剤による医療ニーズの充足度等を調査し、最適な創薬ターゲットと適応疾患を選定するよう努めてまいります。しかし同時に、経営資源の集中のため、一度着手したテーマについても、一定期間の後に適切な評価を実施し、必要に応じて、開発ラインから除外する判断も必要であると認識しております。
③新規技術の開発
今後、アプタマー医薬への参入企業が増えてきた場合でも常に技術の優位性を保てるように、新規のアプタマー創薬技術の開発に努めてまいります。具体的には、アプタマー創製の新技術の開発、次世代シークエンサーとコンピューター科学を利用したアプタマー探索の人工知能(AI)技術の開発、細胞内への取り込み可能なアプタマーや、細胞膜貫通型のタンパク質と結合するアプタマー、脳内標的化アプタマー等のドラッグデリバリーシステム(drug delivery system:DDS)用アプタマーなどの開発を目標に、これまでに培った技術のさらなる発展、向上を図ってまいります。
④ライセンス活動及びパートナリング活動の推進
当社は、臨床ステージに進んだパイプラインや非臨床開発が完了したパイプラインにつきましてはライセンス・アウト、もしくはパートナリングの実現に注力しております。
また、ライセンス・アウトを目標とした共同研究の実現や、自社パイプラインのライセンス・アウトを図るべく、国内外の製薬企業への営業活動、学会での発表や学術雑誌への論文掲載等を通じて、当社の技術と製品を国内外にアピールする活動を継続してまいります。
なお、当社のライセンス活動については、社内のリソースに加え、必要に応じて外部のコンサルタントの協力を得て進めております。
⑤共同研究の推進
大手製薬企業との共同研究は、安定的な収益源となるだけでなく、当社のアプタマー創製に関するスキルアップにつながり、同時に、大手製薬企業の技術を活用して開発を迅速に進められることから、既存の契約での成果創出と同時に、新規提携契約の獲得に努めてまいります。また、他の創薬ベンチャーやアカデミアと共同研究を通じて、新たなアプタマー関連技術や、新規核酸創薬モダリティー(核酸を用いる創薬基盤技術)の獲得に努めてまいります。
⑥資金調達
当社はUnmet Medical Needsに応える医薬品開発のための先行投資段階にあり、研究開発活動に必要な資金の調達が課題であると認識しております。
当社では、大手企業との共同研究やライセンス・アウト実現のための事業開発活動や公的助成金の獲得に努めており、これと同時に費用の節約に努めておりますが、継続的かつ安定的な収益の確保に至るまでの先行投資段階においては、新株発行等による資金調達を行い財務体質の維持・強化を図りUnmet Medical Needsに応える医薬品をお届けできるよう研究開発活動を進めてまいります。
⑦人材の獲得と育成の支援
新たな技術を速やかに世に送り出すためには、優れた人材を獲得し、社員の成長を支援する環境を提供することによって、小規模ながら機能的な研究開発、事業推進、管理の各部門を構築していくことが重要であると認識しております。今後もビジネスや組織のニーズに合った人材獲得を行うとともに、社員一人ひとりの成長が、会社の成長に繋がるよう社員の育成、活躍の場を整備して参ります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日(2025年6月20日)現在において当社が判断したものであります。
当社は企業理念として「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)の新薬を患者さんへ届ける」を掲げ、中長期的な成長のための事業目標として下記の3項目を掲げ研究開発・臨床開発・事業開発活動に取り組んでおります。
・Discovery(探索)からClinical(臨床)ステージへの脱皮
・次世代アプタマー・テクノロジーの開発
・社会に対する企業価値の創出
◆サステナビリティ全般に関する事項
<サステナビリティ方針>
当社は、「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」という企業理念のもと、Unmet Medical Needsに有効な新薬を「アプタマー創薬」により開発し、他の製薬会社とのコラボレーションを通じて早期の市販化を実現し、人々の健康の増進に貢献します。
この企業理念を実現させるために、①人の生命、健康に関連する医薬品の研究開発に関わる企業として、高い倫理性を持ち、最新の科学・技術に基づく研究活動を推進し、②企業価値の最大化を図り、社会に貢献できる企業としての責任を果たしていくために、コーポレート・ガバナンス体制の強化、充実を図り、業務執行の適法性や妥当性の維持に努め、③上場会社として、証券取引所が定める「企業行動規範」を遵守し、会社経営の透明性を確保するために、会社情報の開示を一層充実する。また、説明責任を果たし、株主、取引先、地域社会等のステークスホルダーとの良好な関係の維持、発展に努めることを通じて、持続可能な社会の実現に挑戦し続けます。
(1)ガバナンス
当社は、社会的要請や医薬品開発事業における重要テーマを踏まえ、ステークホルダーの皆様にとっての重要度と、当社事業の持続的成長にとっての重要度からマテリアリティ(重要課題)を特定し、特定したマテリアリティに対する取組みを進めてまいります。
“マテリアリティの特定~取組み”
(2)戦略
当社が特定したマテリアリティは以下のとおりですが、当社では前述のとおり、中期事業目標の一つとして「社会に対する企業価値の創出」を掲げており、マテリアリティを事業活動と連動させ課題解決に取り組んでまいります。
“特定したマテリアリティ”
事業活動に関する重点領域:Unmet Medical Needsの新薬を患者さんに届ける
経営基盤に関する重点領域:環境への取り組み、社会貢献、ガバナンス強化・充実、働きがいのある職場づくり
“マテリアリティ(重点課題)マップ”
(3)リスク管理
当社が直面する、あるいは将来発生する可能性のあるリスクを識別し 、その会社経営に対する影響を評価、検討し、よって当該リスクに対して組織的、且つ適切な予防策を講じ 、または発生時の損害の発生を防止もしくは最小化することを目的とした「リスク管理規程」を定め、「リスク管理委員会」を中心にリスクマネジメントを行っております。本リスク管理委員会において定期的に子会社を含む当社全部門におけるリスクの洗い出しと、把握したリスクのモニタリングを行い、リスクの未然防止と危機発生に備えた体制の構築と維持を図っております。
(4)指標及び目標
事業活動に関するマテリアリティがステークホルダーの皆様、当社ビジネスの両方にとって極めて重要度の高いマテリアリティであると特定しており、本マテリアリティに関する指標と目標を開示しております。
主要なパイプラインの進捗状況
アライアンスの状況
事業会社とのアライアンスの状況については、「
◆サステナビリティ(人的資本・多様性)に関する事項
<戦略>多様性の確保を含む人材育成方針、社内環境整備方針
当社は、Unmet Medical Needsに応えるため、人の生命、健康に関連する医薬品の研究開発に関わる企業として、高い倫理性を持ち、最新の科学・技術に基づく研究活動を推進することを企業ポリシーとして掲げております。新たな技術を世に送り出すためには、新しい発想への挑戦や、目標に向けて諦めずに粘り強く取り組みを続けることが必要です。新たな社員を迎え入れる際には多様な専門性を持った方々を採用し、既存の社員とともに一人ひとりの社員を尊重し、安全でその能力を存分に発揮できる環境を整えることが大切であり、その実現こそが、社員一人ひとりの成長と、当社の成長へと結びついていくものと考えております。
<具体的な取り組み>
■専門性を持った多様な人材の採用と育成・活躍推進
①専門性を持った多様な人材の採用
少人数で研究開発とビジネスサポートを行っている当社では、既存の社員に加え必要に応じ多様な属性(性別・年齢・国籍など)や専門性を有した社員を迎え入れることにより、その多様性に基づく新たな視点や発想をスピード感をもって組織全体として活かして参ります。
過去2年間(2023年4月~2025年3月)の採用状況
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採用した数(パートは除く) |
10名 うち 男性8名 女性 2名 うち 外国籍社員 2名 |
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入社時の年齢層 |
35歳以下 6名 36歳以上45歳以下 2名 46歳以上 2名 |
②社員の成長を支える体制と環境整備
常に新しい知識、情報、ニーズを収集、発信するために、社内における知見の共有、社外研修への参加、学会への参画や学術論文の調査を推奨し、必要であれば論文や研究成果の発表も行います。
また、社員の自律的なキャリア成長を支援するため、医薬品開発に携わる研究員においては、個々人の発想に基づくテーマを業務に取り入れ、また、全社員を対象に将来のキャリア希望・能力開発目標を聴取し、能力の幅を広げることに努め、組織のサステナビリティ維持と育成のリンクを図って参ります。
③女性活躍推進への取り組み
性別に関わらず、社員の知見や専門性を基に採用や登用をしておりますが、現状に満足することなく、採用や登用の機会において積極的な検討を行うとともに女性であるが故にキャリア成長を阻害する要因が社内にないかを調査するなど、その対策を講じます。
2025年3月末の管理職に占める女性労働者の割合
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(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
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同 |
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全労働者 |
(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
非正規雇用労働者(男性)は現在就業しておりません。
■安全で快適な職場環境とワークライフバランスの実現
①安全で健康に、安心して働ける職場環境の維持
人の生命や健康に貢献する企業として、社員が安全で健康に働ける職場環境を作り、維持することは最も優先される課題です。法定健康診断の受診や、化学物質の適切な使用や管理、職場の耐震対策などの基本的な事柄を疎かにせず継続するとともに、当社の企業規模では法律的には必須でない安全衛生委員会の開催やストレスチェックの実施、産業医との連携などを通じて安全衛生の意識の向上と実践を続けて参ります。
2025年3月期の社員が安全で健康に、安心して働ける職場環境作りの状況
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②安心して長期にわたり働ける職場作り
当社の事業領域には短期間に成果を出すことが容易でない業務課題が多々あります。それらに果敢に挑戦し、粘り強く取り組んでいくためには、社員が安心して長期にわたり働くことができる職場を作っていくことが大切です。そのため、過残業とならないように勤務時間をモニタリングし、適切な業務分担や人員計画に反映すること、有給休暇の取得を奨励すること、在宅勤務制度の適切な運用などを促進して参ります。また出産や育児、介護といったライフイベントに対して、育児(介護)時短勤務制度活用、育児(介護)休職取得などを指標とし、更に在宅勤務制度の活用などを通じて両立支援を行って参ります。
2025年3月期の安心して長期にわたり働ける職場作りの状況
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(注)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資家の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
①創薬・医薬品開発事業全般に関する事項
当社は、医薬品開発における初期段階(探索研究~初期臨床試験)での研究開発を中心とした創薬・開発事業を主たる事業としております。本分野は、国際的な巨大企業を含む国内外の多数の企業や研究機関等が競い合っています。また、研究開発から製造販売のための承認・許可の取得、上市に至る過程において様々な薬事規制に従い、しかも長期間にわたって多額の資金を投入する必要があります。この創薬・開発事業は下記のとおり不確実性及びリスクを伴うものであります。
(イ)医薬品研究開発の不確実性について
1)新規パイプライン創出について
当社は、新規医薬品の候補アプタマーを自社あるいはアカデミアとの連携を通じて創出し、自社創薬品目あるいは共同研究品目の候補としていくことを基本戦略としております。
この戦略を確実に推進するため、製薬企業との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの産学連携等により、Unmet Medical Needsを満たす新規パイプラインの選定・獲得・創出の可能性を高める努力を続けております。
しかしながら、新規標的タンパク質に対して開発候補品となりうるアプタマーを創出できる保証が100%あるとはいえず、開発候補品が得られない場合には、当社の事業計画の変更を余儀なくされる等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
2)臨床開発について
一つの開発候補化合物が医薬品として承認され上市に至るまでには、ヒトでの臨床試験を含む様々な試験によって有効性・安全性の確認のみならず、製造・販売に至るまでに様々な関門があり、その全てをクリアする必要があり、その成功確率は低いことが現実です。
開発過程の各段階において、開発続行の可否を判断する際、中止の決定を行うことは稀なことではありません。このような成功の不確実性は、自社で開発した場合も、あるいは製薬企業にライセンス・アウトした場合においても、避けては通れないものです。このリスクを低減・分散するため、当社は以下の基本的な対応をとっております。
・アプタマーというモダリティーの特性を生かした疾患領域や治療方法を検討する
・一つのターゲット(ターゲットタンパク質)に結合するアプタマーについて、有力なものが得られても、必要に応じ、バック・アップ品を準備する
・互いに独立した複数の開発パイプラインを保有する
これらによって事業遂行上のリスクやロスを最小限に留めるよう努めております。
しかしながら、当社のような規模の創薬企業にとって、自社創薬、共同研究又はライセンス・アウトかを問わず、開発パイプラインから品目が脱落する影響は大きく、その場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、第1相臨床試験における重篤な副作用の発現で開発中止を余儀なくされた場合、新たな創薬標的タンパク質に対するアプタマー探索から開始して、非臨床試験を経て第1相臨床試験の実施に到達するまでには、通常4~6年の期間と、数億円規模の追加費用を要することになります。
(ロ)収益の不確実性について
当社が想定している開発品(開発途上の製品を含む)のライセンス収入としては、契約一時金、マイルストーン収入(複数回に分かれることもあり)及び製品上市後のロイヤルティー収入があります。
ライセンス契約を成立させ、契約一時金を受け取るためには、導出候補品がライセンシーの評価をクリアする一定の条件(安全性・有効性等に関する信頼できる試験データ、一定の期間独占的な販売を可能とする特許の存在、競合品との優位性の根拠資料等)を有した導出候補品を創製・開発する必要があります。マイルストーン収入を獲得するためには、ライセンシーによって導出品の開発が順調に進み、マイルストーンをクリアすることが必要です。さらにロイヤルティーを得るには、導出品に対して、許認可当局からの販売承認の取得が必要です。
ライセンシーにおける開発期間中には、ライセンシーの経営環境の悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない事情により、途中で開発が終了する可能性もあります。
また、製品化(製品の承認取得、製造販売)に成功した場合も、薬価や市場性の問題等から、当該製品に関する事業活動を継続するために必要な採算性を確保するのに十分な収益を得ることができず、販売中止になる場合もあります。
当社は、開発の当初から標的の妥当性や適応疾患の選定を厳密に検討するとともに、開発候補品の市場性や採算性、ライセンスの際には提携先の開発力・事業化力等に関して、種々の情報リソースを使って検討します。しかしながら、前記検討結果が誤りである可能性、あるいは検討の基礎となる状況に変化が生じる可能性を完全に排除することはできません。
(ハ)遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について
新規医薬品を製造発売するに当たっては、対象となる全ての国で当該国が定める薬事関連法規に従って一定の基準の下で承認や許可を受ける必要があり、また臨床試験の開始などについても、多くの国で厳しい薬事規制が設けられています。
当社の事業計画は現行の医薬品に関する日本など先進国での承認基準や薬事規制を前提として策定されておりますが、これらの基準及び規制は科学技術の発展や課題解決の必要性等に伴って、適時、改定されます。
そのため、当社は、特に、臨床試験を実施中(又は予定)の日本及び米国の最新の承認基準や薬事規制を適時調査し、当社の研究開発計画に反映し、また、必要に応じて、その他地域についても調査を進めております。
しかしながら、長期間を要する新薬開発においては、開発期間にこれらの基準や規制、制度、価格設定動向等が大きく変動する可能性がないとはいえず、特に、薬事に関する法的規制等及び医療保険制度等に変更等が生じた場合があります。
(ニ)アプタマー医薬に関する潜在的な競合について
当社の潜在的な競合相手は、国内外の大手製薬企業、バイオ関連企業、大学、その他の研究機関等多岐にわたります。
1)アプタマー創薬企業との競合:アプタマー創薬を行っている企業は、現時点では当社やドイツのBerlin Cures社、米国のIVERIC社(2023年5月にアステラス製薬が買収を発表)が代表的な会社であり、この分野で公開されている各社の開発ターゲット(開発品目)を見る限り、競合はほとんどありません。
しかし、アプタマー創薬の基盤技術であるSELEX法に関する特許は、日本及びヨーロッパにおいて2011年6月、米国において2014年9月に失効しておりますので、その点で、アプタマー創薬への新規参入は容易であり、リスク要因といえます。
当社は、当社独自のアプタマー創薬のプラットフォームである「RiboART SystemⓇ」だけでなく、AIを用いる新たなプラットフォーム技術として「RaptRanker」、「RaptGen」及び「大規模言語モデルを用いたアプタマーの結合活性予測手法の開発」を早稲田大学と共同開発しております。また、アプタマー原薬の製造会社との良好な取引関係を推進するとともに、核酸科学分野の研究者・研究機関とのネットワークの維持等の対応を行っていきます。
2)抗体医薬等との競合
アプタマー医薬は抗体医薬と類似した作用メカニズムや投与方法などから、ターゲット疾患によっては抗体医薬との開発競争や市場での競合が起こりえます。
上記に述べた競合相手の中には、マーケティング力、財務状況等について当社やその提携先より優位にある大手製薬企業が多数あり、当社開発品と競合する製品(特に抗体医薬)を開発する可能性があります。
当社としては、当社開発品と競合する製品・開発品のプロファイル並びに開発状況等も考慮に入れながら、アプタマーの特徴を生かせるように開発を推進する所存です。
しかしながら、これら競合相手との競争が生じた場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性はあります。
(ホ)賠償問題発生リスクについて
当社の創薬対象であるアプタマー医薬は、これまで医薬品として用いられてきた低分子医薬品、ワクチン、抗体医薬品に次ぐ新しいカテゴリーである核酸医薬品に属するものです。
核酸医薬品は開発の歴史が浅く、現在までに10数品目が上市されただけで、多くは開発途上にあります。このため、製品の効果や安全性、製造方法及び製造コストなどにつき十分な経験、実績が確立されているとはいえず、予期せぬ副作用や製造上の問題または課題が発生する可能性があり、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、臨床試験の実施に伴う健康被害に対する賠償問題が発生した場合に備えて、治験賠償責任保険への加入によって、こうした事態が発生した場合の財政的負担を最小限にする対応を図っておりますが、当該保険で、十分な賠償責任金額を填補できない場合があり得ます。
(ヘ)海外での事業展開について
当社は、当社の開発するパイプラインが、国内のみならず、世界各国の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、海外子会社や中国合弁会社の設立を含む形で海外展開に向けた取組みを進めております。
しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行、あるいは海外でのファイナンスの未達により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、当社の事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、その場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ト)研究開発に関する外部委託について
当社は、広く社外にも専門的な意見を求め、さらに機動的な事業運営を図るため、主に以下に掲げる研究開発項目の一部について、外部機関に業務委託を行っております。
・原薬(非臨床試験用及び臨床試験用の各種アプタマー)並びに治験薬の製造業務
・非臨床試験の実施
・臨床試験の実施
特に、原薬・治験薬製造委託取引については、自然災害や所在国における不測の事態、予期せぬ事情により契約終了した場合等により、当該製造元から安定的な原薬供給が受けられなくなる可能性があります。
そのため、当該製造元との良好な関係を維持・継続、また代替先の確保に努めております。
しかしながら、近年の核酸医薬開発の状況を踏まえると、今後、速やかに適切な業務委託先が確保出来ず、結果的に、当社の事業等に影響が及ぶ可能性があります。
(チ)投資に関するリスク
当社では、常に最先端の技術開発に取り組み、周辺領域を含めアプタマー創薬に参入している企業や潜在的な競争相手に先んじるため、関連する技術や特許を保有する企業に対して投資やM&A等(買収、合併、事業譲渡・譲受)という形で提携を進める可能性があります。
しかしながら、提携先の選定やその投資価額の妥当性等においては、各事業・財務等の社外専門家の評価を得たうえで慎重に進める方針でありますが、提携先において、予期せぬ問題が生じた場合や、予想通りに研究開発が進まない場合には、当社の事業等に影響が及ぶ可能性があります。
②会社組織に関する事項
(イ)小規模組織であることについて
当社の人員は、当事業年度末現在で役員9名(取締役6名、監査役3名)、従業員25名と小規模であります。当社の研究開発活動については、比較的少人数による体制をしいており、CRO等の積極活用により、既存パイプラインの開発並びに新規薬剤候補化合物の探索を推進しております。今後は、既存パイプラインの開発推進及び新規薬剤候補化合物のパイプライン化に伴い、必要に応じて研究開発人員の増加を計画します。
管理部門(内部監査室を含む)の人員は当事業年度末現在で9名(兼務取締役1名、従業員8名)であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大に伴い、管理部門につきましても増員を図る可能性があります。
しかし、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合等には、当社の事業等に影響が及ぶ可能性があります。
(ロ)個人への依存について
当社は少数精鋭の組織であり、サステナブルな会社経営や発展を目指して、人材の採用、後継者育成に努め、役員構成にも配慮しておりますが、事業全般の推進を担う中村義一代表取締役社長の経営執行が困難になった場合や優秀な研究開発人材が退職した場合には、経営成績及び今後の事業発展に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)自然災害について
当社は、事業活動の中心となる研究設備や人員が本社周辺に集中しており、地理的なリスク分散ができておりません。今後、地理的なリスク分散も検討して参りますが、この地域において地震等の大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊、事業活動の停滞等により、当社の事業等に影響が及ぶ可能性があります。
(ニ)大学等との共同研究について
当社は東京大学を含め、複数の大学等公的機関と共同研究を実施してまいりました。今後もこれらの共同研究を継続していく考えでおります。
東京大学医科学研究所には社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し共同研究を実施しておりましたが、2025年3月末日に、共同研究を終了しております。
本契約終了に伴い、東京大学のインフラが利用出来なくなりましたが、取引先等への外注によりインフラ整備が完了しており、既存リスクへの対応を完了しております。
③敵対的買収リスクについて
株価水準によっては、第三者の株式取得を通した敵対的買収が行われ、現経営陣が意図する経営が遂行できなくなるリスクが存在しますが、当社は、既存株主に対しての適時的確な情報発信を通じて友好関係を構築、維持するとともに機関投資家や戦略的提携企業等新規投資家の確保にも注力し、株主層の安定化を図ってまいります。
④知的財産権に関する事項
(イ)特許について
当社の出願中の各特許については、特許出願時に特許事務所や専門家による特許性等に関する検討・調査を行った上で、最適な特許出願を実施しております。しかしながら、出願した特許が全て登録されるとは限らず、また、特許が無効となる、消滅する等した場合には、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、本項に記載した事項については、現在、当社が開発中のプロジェクトに関して、その実施に支障若しくは支障の発生を懸念される事項は、調査した限りにおいて、存在しておりません。
(ロ)訴訟及びクレームについて
当社においては、その事業が第三者の特許権等に抵触することを未然に防止するため、事業の着手及びその過程において、特許事務所や専門家による特許調査を適宜実施しており、現時点において第三者特許への抵触の可能性は低いものと認識しております。
また、当事業年度末現在において、当社の事業に関する特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟及びクレームが発生している事実はありません。
(ハ)特許の確保について
当社は、事業に必要となる職務発明につき、その発明者である役員・従業員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は発明者に対して特許法第35条第3項に定める「金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を与えなければなりません。なお、当社は社内に周知された規程に則り、発明者の認定及び金銭の支払を実施しているため、これまでに金銭の額等について発明者との間で問題が生じたことはありません。
(ニ)情報管理について
当社の事業において、研究若しくは開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。その流出リスクを低減するため、当社は、役職員、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。
⑤サイバーセキュリティについて
近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化してきており、攻撃手法も多様化しており、製薬業界の持つ重要なデータも攻撃の対象となっております。悪意のある活動によって引き起こされるサイバー攻撃により、重要なITシステムの障害や、個人情報を含む機密データの漏洩に繋がる可能性があります。
当社は、ITセキュリティサービスの導入・モニタリング、定期的なバックアップの実施、ならびに各種情報管理規程を制定し、役職員の教育を行うことでITセキュリティ対策に努めております。
⑥経営成績に関する事項
当社は、医薬品の研究開発を事業とするベンチャー企業であり、製薬企業との共同研究や製薬企業への開発品のライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としておりますが、医薬品の研究開発では当初から多額の資金が必要になる一方で、安定的な収益の計上にいたるまでには相当な期間を要するため、先行投資段階においては、期間損益がマイナスになる傾向があります。2015年3月期を除き、創業以来、2025年3月期まで当期純損失を計上してまいりました。当社は、既にライセンス・アウトしたパイプラインに続く、後続のパイプラインのライセンス・アウトや新規共同研究契約の獲得を推し進めてまいりますが、将来においてこれらの施策が計画通りに進展しない場合、予定した当期純利益を計上できず、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。
なお、過去5年間の当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。
|
回次 |
第18期 |
第19期 |
第20期 |
第21期 |
第22期 |
|
|
決算年月 |
|
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
事業収益 |
(千円) |
91,963 |
80,909 |
65,969 |
- |
2,107 |
|
営業損失(△) |
(千円) |
△1,239,643 |
△1,748,112 |
△1,786,041 |
△1,116,193 |
△1,050,589 |
|
経常損失(△) |
(千円) |
△1,184,998 |
△1,635,532 |
△1,649,305 |
△982,824 |
△1,014,861 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
△1,149,038 |
△1,499,224 |
△1,708,626 |
△932,757 |
△996,966 |
上記に記載しましたように、安定的な収益の計上に至るまで、さらには、事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、提携内容の変更、更なる助成金の獲得、新株発行等の方法により資金需要に対応してまいります。
⑦資金繰り
前項に記載しましたように、当社は医薬品の研究開発を事業とするベンチャー企業であり安定的な収益の計上に至るまでは先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社グループの事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
⑧新株発行による資金調達
当社は医薬品の研究開発企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑨東証グロース市場の上場維持について
当社は、東京証券取引所にて2022年4月適用の新市場区分においてグロース市場を選択しており、2025年3月期末においても上場維持基準への適合を維持しておりますが、上場来10年が経過していることから、グロース市場の上場維持基準の1つである時価総額基準への適合が求められることになります。今後株価水準によっては、本基準に抵触することとなり、上場廃止となった場合には、資金調達に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑩継続企業の前提に関する重要事象等
当社は、核酸医薬の一種である「アプタマー医薬」の開発を目的として創薬事業を展開している創薬プラットフォーム系バイオベンチャー企業です。医薬品開発は、研究費用及び臨床開発費用といった多額の先行投資を要するため、営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスが継続的に発生する状況であり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社は、当該事象を解消すべく、2024年2月20日開催の取締役会において、第三者割当の方法による第17回新株予約権の発行について、決議し、2024年3月7日に払い込みが完了しました。なお、2025年1月27日にすべての行使が完了し、694百万円の資金確保を行っております。
また、資金面においては、当事業年度末において比較的流動性の高い資産として、現金及び預金1,837百万円及び安全性の高い有価証券1,200百万円の計3,037百万円を保有しており、当事業年度末から1年を超える期間についての資金を十分に確保していると判断しております。
以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないと認識しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(イ)資産の部
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて361百万円減少し、3,185百万円となりました。これは、RBM-006の薬効薬理試験等に係る前渡金が13百万円増加した一方で、現金及び預金が262百万円、有価証券が100百万円それぞれ減少したこと等によるものです。なお、当事業年度末において保有している有価証券は、第17回新株予約権等により調達した資金の一部において、研究開発への充当時期まで、一定以上の格付けが付された金融商品で元本が毀損するリスクを抑えて運用することを目的としたものです。
(ロ)負債の部
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて13百万円減少し、142百万円となりました。これは、未払法人税等が26百万円増加した一方で、その他が22百万円、未払金が15百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
(ハ)純資産の部
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて347百万円減少し、3,043百万円となりました。これは、第17回新株予約権の行使に伴い、資本金及び資本剰余金がそれぞれ337百万円増加した一方で、当期純損失1,018百万円を計上したことにより、利益剰余金が同額減少したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は、前事業年度末から変動はありません。
②経営成績
当事業年度において、事業収益2百万円(前事業年度の事業収益はありません。)、事業費用として研究開発費667百万円、販売費及び一般管理費385百万円を計上し、営業損失は1,050百万円(前事業年度の営業損失は1,116百万円)となりました。
また、営業外収益として、コンピューター科学を応用した技術開発を目的としたJST委託事業や量子計算技術と人工知能を組み合わせた技術の活用により、医薬品創製プラットフォームの確立を目的としたNEDO委託事業等による助成金収入35百万円等を計上した一方で、営業外費用として、第17回新株予約権の行使に伴う株式交付費3百万円等を計上したことにより、経常損失は1,014百万円(前事業年度の経常損失は982百万円)となりました。
また、固定資産の減損損失2百万円を計上したことにより、税引前当期純損失は1,017百万円(前事業年度の税引前当期純損失は1,023百万円)となり、法人税、住民税及び事業税1百万円の計上により、当期純損失は1,018百万円(前事業年度の当期純損失は1,024百万円)となりました。
なお、当社は創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比較し262百万円減
少し、1,837百万円となりました。
なお、上記資金以外に有価証券(満期保有目的の債券)を1,200百万円保有しており、比較的流動性の高い資産を当事業年度末においては3,037百万円保有しております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は996百万円(前事業年度は932百万円の支出)となりました。主な資金減少要因は、ACHの臨床試験を中心とした研究開発を行ったこと等に伴う税引前当期純損失1,017百万円、前渡金の増加額13百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は67百万円(前事業年度は177百万円の収入)となりました。資金増加要因は、有価証券の満期到来による払い戻し100百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は667百万円(前事業年度は27百万円の収入)となりました。主な資金増加要因は、第17回新株予約権が行使されたことに伴う株式の発行による収入667百万円によるものです。
④生産・受注及び販売の実績
当社の事業は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。
(イ)生産実績
該当事項はありません。
(ロ)受注実績
該当事項はありません。
(ハ)販売実績
当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
|
事業の名称 |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
創薬事業 |
2,107 |
- |
|
合計 |
2,107 |
- |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
販売高 (千円) |
割合 (%) |
販売高 (千円) |
割合 (%) |
|
|
レナセラピューティクス株式会社 |
- |
- |
1,500 |
71.2 |
|
University Hospital Center of Rouen |
- |
- |
607 |
28.8 |
2.前事業年度において事業収益はございませんでした。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成に当たりましては、会計方針の決定とその継続的な適用、並びに資産及び負債、収益及び費用の会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しましては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づき合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは固定資産の減損損失であり、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (損益計算書関係)※5固定資産の減損損失」に記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度における最重点経営目標は、「自社での臨床Proof of Conceptの獲得に向けた開発」であり、その実現に向けた取り組みを進めてまいりました。
その具体的な進捗は、「第1企業の概況 3 事業の内容 (1)当事業年度の主要なトピックス」に記載の通りであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性
(イ)運転資金
当社は、医薬品の研究開発を事業としており、製薬企業との共同研究や開発品の製薬企業へのライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としております。
当社の事業を遂行するための、運転資金需要のうち主なものは、当社が創製するアプタマー医薬の研究開発を推進するための研究開発費であります。なお、過年度における研究開発費の推移については下記に示すとおりであり、自社での臨床試験を実施するために、2017年3月期よりumedaptanib pegolによる臨床試験のための原薬製造を開始して以降、臨床開発を行うための資金需要が高まっております。
また、現在臨床開発を実施しているパイプライン以外の研究段階にある既存パイプラインや研究開発を推進することも重要と考えており、新規技術開発、核酸医薬を特定の標的部位へと効率的に送り込むドラッグデリバリーシステムの開発等を遂行するための資金需要が生じております。
研究開発費の推移
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回次 |
|
第18期 |
第19期 |
第20期 |
第21期 |
第22期 |
|
決算年月 |
|
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
研究開発費 |
(千円) |
957,605 |
1,482,132 |
1,491,239 |
764,327 |
667,691 |
(ロ)財務政策
当社は中期事業目標として、①探索から臨床ステージへの脱皮、②次世代アプタマー・テクノロジーの開発、③社会に対する企業価値の創出を掲げております。そのため、①RBM-007のwet AMD及びACHを対象とした臨床開発費用(臨床開発のための薬剤合成費用を含む)、②RBM-011(肺動脈性肺高血圧症に対するアプタマー医薬)の研究開発費用、③ドラッグデリバリーシステム用アプタマーを中心とした探索研究費用、④RBM-006(抗オートタキシン・アプタマー医薬)の研究開発費用等に充当する計画で過年度において新株予約権を発行し資金調達を実施しており、当事業年度末の現金及び預金は1,837,123千円、有価証券1,200,000千円となっております。
(ハ)株主還元
当社の株主還元に関する方針は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
当社の重要な契約は次のとおりであります。
①ライセンス・アウトに関する契約
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契約書名 |
ライセンス契約書 |
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契約相手方名 |
韓国AJU薬品株式会社(以下「AJU薬品」) |
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契約締結日 |
2020年3月17日 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
① 当社は、AJU薬品に対し、韓国並びに東南アジア諸国(シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー)におけるRBM-007を含有する医薬品(以下「RBM-007製品」)の滲出型加齢黄斑変性を適応症とする開発、販売に関する(当社事前書面承諾による)サブライセンス権付きの独占的実施権を許諾する。 ② AJU薬品は、当社に対して、当該ライセンス許諾の対価として、契約一時金:100万USドル、開発の進展等に応じたマイルストーン・ペイメントを最大500万USドル、合計最大600万USドルを支払う。また、AJU薬品による販売に際しては、当社が、AJU薬品に対し、ロイヤルティーを含めた製品供給価格でRBM-007製品を供給する。 |
②特許譲受等に関する契約
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契約書名 |
特許を受ける権利の譲渡契約 |
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契約相手方名 |
国立大学法人 東京大学 |
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契約締結日 |
2019年7月4日 |
|
契約期間 |
契約締結日から契約上の権利が全て失効する日まで |
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主な契約内容 |
当社は、TGFβに対するアプタマー創薬の事業化に必要な特許に関し、国立大学法人東京大学より特許を受ける権利を譲り受けております。当社は、特許を受ける権利の対価として契約一時金及び市販後は一定率のロイヤルティーを支払う。 |
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契約書名 |
共同研究終了に伴う成果取扱い覚書 |
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契約相手方名 |
大塚製薬株式会社 |
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契約締結日 |
2017年5月8日 |
|
契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
① 当社は、大塚製薬株式会社と、2008年1月1日から2015年12月末日までに実施した、RBM-002及びRBM-003に関する共同研究の成果に関連して、当社側で研究開発を推進することを目的に、関連特許の譲渡を受ける。 ② 当社は、RBM-002及びRBM-003について開発やライセンス・アウトに成功した場合には、製品の売上に応じたロイヤルティー、当社が第三者にライセンスを行った場合のライセンス対価の分配金、及び当社が第三者に事業譲渡を行った場合の事業譲渡対価の分配金を、大塚製薬株式会社に支払う。 |
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契約書名 |
覚書 |
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契約相手方名 |
大正製薬株式会社 |
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契約締結日 |
2019年4月4日 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
当社は、自己によるRBM-010の研究・開発・製造・販売等をする場合、その売り上げに応じたロイヤルティーを、または、第三者に対して、RBM-010のライセンス・アウトに成功した場合には、当該ライセンス対価(ロイヤルティを含む)の分配金を、大正製薬株式会社に支払う。 |
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契約書名 |
発明の取扱いに関する契約書 |
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契約相手方名 |
味の素株式会社(以下「味の素」) |
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契約締結日 |
2025年3月 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
味の素との共同研究により得られた成果に関して出願した、核酸アプタマーと免疫グロブリンのFc領域とのコンジュゲート及びその血中半減期延長に関する特許について、両社間で取扱いを定めたもの。 |
③共同研究開発に関する契約
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
日本大学産官学連携知財センター(以下「NUBIC」) |
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契約締結日 |
2023年2月9日 |
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契約期間 |
2022年12月1日から2025年5月31日まで |
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主な契約内容 |
① 当社はNUBICに対し、本契約において予め定められた研究費を支払う。 ② RBM-007を含む複数のアプタマーについて、増殖性硝子体網膜症(PVR)に対する薬理作用を検証するための共同研究を行う。 |
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
学校法人慈恵大学 |
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契約締結日 |
2023年9月8日 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
① 当社は学校法人慈恵大学に対し、本契約において予め定められた研究費を支払う。 ② 当社の所有するアプタマーの光免疫療法への応用可能性を検討する。 |
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
国立大学法人東京大学 |
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契約締結日 |
2024年7月 |
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契約期間 |
契約締結から2年間 |
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主な契約内容 |
① 当社は国立大学法人東京大学医学部眼科学教室(以下、東大眼科学教室)に対し、本契約において予め定められた研究費を支払う。 ② 当社の所有するアプタマーを、東大眼科学教室が所有する各種評価系を用いて眼科疾患に対する薬効を評価する。 |
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
三菱商事ライフサイエンス株式会社(旧ビタミンC60バイオリサーチ株式会社、以下「MLS」) |
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契約締結日 |
2019年1月18日 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
① MLSが開発を目指す化粧品原料ターゲットに対して、当社が化粧品原料候補となるアプタマーを創製し、MLSと協力して化粧品原料としての開発を進める。 ② 当社はMLSより、契約締結後2年間で研究費として1500万円を受領するとともに、マイルストーンに応じたマイルストーンペイメントを合わせ、総額で3000万円を受領する。さらに、製品が上市された場合には、別途締結されるライセンス契約に基づく報酬を受け取る予定。 |
④当事業年度に終了した重要な契約
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契約書名 |
提携及びライセンス契約書 |
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契約相手方名 |
藤本製薬株式会社 |
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契約締結日 |
2014年4月30日 |
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契約期間 |
締結日から、製品の販売後7年が経過する日の属する月の末日、或いは本製品の関連特許が全て消滅する日の属する月の末日のいずれか遅い日まで |
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主な契約内容 |
① 当社は、NGFに対するRNAアプタマーを含有する医薬品の開発、製造、販売に関する、全世界でのサブライセンス権付きの独占的実施権を藤本製薬株式会社に許諾する。 ② 藤本製薬株式会社は、当社に対して、対価として、契約一時金、開発の進展等に応じたマイルストーン・ペイメント(第1相臨床試験開始時、前期第2相臨床試験開始時、後期第2相臨床試験開始時、第3相臨床試験開始時、製造販売承認申請時、製造販売承認取得時、純売上高が一定額超過時)、及び市販後の一定率のロイヤルティー及び藤本製薬株式会社の得たサブライセンス収入の一定割合を支払う。さらに、当社が第三者割当の方法で発行する普通株式について、3億円分の引き受けを行う。(なお、本引き受けについては、2014年5月12日に払込を完了しております。) ③ 当社は関連特許の50%を藤本製薬株式会社に譲渡する。 |
本契約は、主要な対象特許の終了に伴い、2025年3月31日をもって終了いたしました。
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契約書名 |
社会連携講座等設置契約書 |
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契約相手方名 |
国立大学法人 東京大学 |
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契約締結日 |
2012年1月5日 |
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契約期間 |
2012年4月1日から2025年3月31日 |
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主な契約内容 |
① 当社は東京大学に対し、本契約において予め定められた活動経費を支払う。 ② 東京大学は「「RNA医科学」社会連携研究部門」を設置する。 ③ 東京大学と当社は共同研究を実施する。 |
本契約は、契約期間満了により2025年3月31日をもって終了いたしました。
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
国立大学法人 東京大学 |
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契約締結日 |
2012年3月30日 |
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契約期間 |
2012年4月1日から2025年3月31日 |
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主な契約内容 |
① 当社は東京大学に対し、本契約において予め定められた研究経費を支払う。 ② 当社と東京大学は、社会連携講座等設置契約に基づき共同でRNAアプタマーの研究を実施す る。 ③ 当社の研究担当者は東京大学の施設を利用し、研究を実施することができる。 |
本契約は、契約期間満了により2025年3月31日をもって終了いたしました。
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
味の素株式会社 |
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契約締結日 |
2023年10月20日 |
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契約期間 |
守秘義務により非開示 |
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主な契約内容 |
当社の核酸アプタマー化合物の作成及び測定技術と、味の素株式会社が有する抗体-薬物複合体製造技術を組み合わせ核酸アプタマーの体内動態制御技術の確立を目指す。 |
本契約は、契約期間満了により2025年3月31日をもって終了いたしました。
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契約書名 |
共同研究契約書 |
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契約相手方名 |
国立大学法人北海道大学 |
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契約締結日 |
2023年10月10日 |
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契約期間 |
2023年10月1日から2025年3月31日まで |
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主な契約内容 |
① 当社は北海道大学に対し、本契約において予め定められた研究費を支払う。 ② 当社の所有するアプタマーのANCA関連血管炎に対する薬理作用を検討する。 |
本契約は、契約期間満了により2025年3月31日をもって終了いたしました。
当社は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。
(1)研究開発に関する活動の状況(戦略、成果、特徴、並びに体制)について
「第1 企業の概況 3事業の内容」の項で示したとおりです。
(2)研究開発費
当事業年度における研究開発費は
当社は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。
(3)新薬候補化合物の主な開発状況
本書提出日(2025年6月20日)現在における新薬候補化合物の主な開発状況は「第1 企業の概況 3事業の内容」の項で示したとおりです。