第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当事業年度におけるわが国経済は、弱さもみられるが緩やかな回復基調が続いております。個人消費については横ばいとなっているものの、企業の設備投資は持ち直しの動きがみられております。サイバー・セキュリティ業界においては、2015年に発生した日本年金機構に対するサイバー攻撃が大きな問題となった他、最近においてはシステム内のデータを暗号化し、その復号をするにあたって金銭を要求するランサムウェアが流行しており、サイバー脅威及びセキュリティ対策の必要性が高まっております。しかしながら急速に拡大するサイバー脅威に対して現状は当社のように感染前に防御できるソリューションを提供するセキュリティベンダーはほとんどなく、感染後の早期対応を目的とするソリューションが中心となってしまっており、情報漏えい被害等は拡大している状況です。また、個人ユーザーにおいては前述のようなソリューションすらも当社製品以外にはほとんどなく、ランサムウェアやオンラインバンキングの不正送金ウイルスといった未知の脅威に無防備な状況となっております。

 このような環境の中、当事業年度の経営成績は以下のとおりとなりました。

 セキュリティ・プロダクトにおきましては、法人向けでは最近のサイバー脅威拡大を背景に主力製品である「FFR yarai」の販売が拡大しました。販売先の状況としましては、これまでは日本の企業・官公庁の内、トップレイヤーの組織を中心に当社製品の導入が進んでおりました。これら大企業・官公庁にはセキュリティの専門知識を持つ担当者がおり、当社製品の検討・導入がスムーズに進んできましたが、当事業年度においては標的型攻撃対策を実施するユーザーはこれまでの大企業・官公庁に加えて中堅企業に広がってきております。これにより当社においては商談案件が増加する一方で、中堅企業にはセキュリティ担当者が少なかったり、いなかったりするケースがあることから、当社製品の導入検討の期間が長期化する傾向が出てきました。これらの影響により売上計上時期が後ずれするケースが生じ、当初見込んでいた売上計画に一部影響を及ぼしました。この課題に対して、当事業年度におきましてはユーザーの負担となっている導入後の運用を軽減するため、販売パートナーと連携して月額課金型のマネージドサービスの提供を開始しました。これによりユーザーは自社にセキュリティの専門知識を持つ人員を確保することなく運用にかかる負荷を外部に委託することが可能となります。また、複数の大手企業との間でかねてより進めてきたアライアンス施策について、当事業年度中のサービス開始を見込んでいたものが凍結となった結果、期初計画を下まわることとなりました。個人向けにおきましては、オンラインバンキングの不正送金ウイルスやランサムウェアといった従来型のセキュリティソフトでは防ぐことが難しい新しいサイバー脅威が増加する中、これらのサイバー脅威に効果的に作用するPC向け「FFRI プロアクティブ セキュリティ」を発売しました。個人向けの製品を拡販していくにあたり、当事業年度においては最初に当社及び製品の知名度向上に主眼を置いた広告宣伝活動を行いました。また、Androidモバイル端末向け「FFRI 安心アプリチェッカー」の販売は順調に進捗しました。このほか、かねてより提携関係のある大手企業との間で個人向け新製品に関する案件の交渉を進めてまいりました。こちらについて当事業年度の契約締結を見込んでおりましたが、契約交渉の過程において販売戦略等の検討が長引いたことから、次期以降の見通しとなりました。これにより当事業年度の売上・利益は大きく期初計画を下回ることとなりました。

この結果、当事業年度におけるセキュリティ・プロダクトの売上高は733,341千円(前年同期比21.3%増)となりました。

 セキュリティ・サービスにおきましては、ユーザーにおけるセキュリティ課題を解決するコンサルティングや受託の研究開発を中心に実施してまいりました。この結果、当事業年度におけるセキュリティ・サービスの売上高は215,496千円(前年同期比20.8%減)となりました。

 また、当社は業容拡大に伴い当事業年度において技術部門の人員を中心に採用を行った結果、前事業年度末に比べて10名増加し、62名となりました。

 以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高948,838千円(前年同期比8.2%増)、営業損失343,837千円(前事業年度は営業利益256,248千円)、経常損失343,371千円(前事業年度は経常利益241,767千円)、当期純損失341,990千円(前事業年度は当期純利益171,451千円)となりました。

 なお、現在において当社の事業の対象は企業や官公庁を中心としており、多くの顧客の年度末である12月から3月にかけてセキュリティ・プロダクト及びセキュリティ・サービスの出荷又は検収が集中します。このため、当社の法人向けの売上は12月から3月にかけて集中する傾向があります。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ340,328千円減少し、692,054千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果支出した資金は317,086千円(前年同期は305,780千円の収入)となりました。主な減少要因は、税引前当期純損失343,371千円、法人税等の支払額80,392千円等であり、主な増加要因は、売上債権の減少額116,862千円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は49,967千円(前年同期は48,613千円の支出)となりました。この要因は、販売用ソフトウェアの開発による無形固定資産の取得による支出45,814千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果取得した資金は26,726千円(前年同期は234,802千円の収入)となりました。増加の要因は、新株予約権行使による株式の発行による収入26,726千円によるものです。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(2)受注実績

当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

(3)販売実績

 当事業年度の販売実績を提供するサービスの種類ごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの種類

当事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

前年同期比(%)

セキュリティ・プロダクト(千円)

733,341

21.3

セキュリティ・サービス(千円)

215,496

△20.8

合計(千円)

948,838

8.2

(注)1.当社は、サイバー・セキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載に変えて、当社が提供するサービスの種類別の販売実績を記載しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 平成26年4月1日

至 平成27年3月31日)

当事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社インフォセック

104,446

11.0

日本電気株式会社

157,317

17.9

株式会社日立システムズ

151,731

17.3

※ 総販売実績に対する当該販売実績の割合が10%未満であるため、記載を省略しております。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【対処すべき課題】

(研究開発)

IT技術が日々進歩する中、同時にコンピュータ・システムに対する新しい脅威が発生しております。また、サイバー・セキュリティ市場においては、情報漏洩等の被害発生が市場ニーズの発生契機となるケースが多数あります。当社では、このような後手の対応ではなく、被害発生前に予防することができる製品・サービスの提供が重要な課題であると考えており、すでに市場ニーズの存在する製品・サービスを開発するニーズ型の研究開発と併せて、市場ニーズを予測し、掘り起こすシーズ型の研究開発を行っております。今後においても、セキュリティ技術は常に進歩していることから、当社は最新技術の獲得のための研究開発の強化に取り組んでまいります。

 

(人材育成)

当社が今後成長するにあたり、優秀な技術者を中心とした人材の確保と育成は重要な課題となっております。当社は従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、技術者を育成することにより全体の技術レベルの底上げに取り組んでまいります。

 

(セキュリティリテラシー)

当社製品・サービスの拡販には、ユーザーがコンピュータ・システムを取り巻く脅威の内容及びそれに対するセキュリティ対策の必要性を正しく理解していただくことが重要であると考えています。当社は、通常の営業活動のほか、世間に広く流通する製品等の脆弱性や、その対策などの研究成果の一部をカンファレンスや新聞・雑誌・WEB媒体などを通じて広く情報提供することにより、ユーザーに脅威を周知し、それらに応じた適切な対策の導入を促す活動に取り組んでおります。

 

(ブランディング)

セキュリティ製品・サービスはその性質上、顧客において効果を実感する機会が多くないため、当社製品・サービスの拡販には、当社及び製品・サービスの性能に対する信頼性の確保が課題となっております。信頼性の確保には、導入事例の紹介や実際にマルウェアによる攻撃から当社製品がコンピュータ・システムを防御するデモンストレーションの実施、講演や各種媒体への広告宣伝等を通じて当社製品・サービスの有用性を訴求することが有効と考えております。また、カンファレンス等(Black Hat※1、RSA Conference※2、CanSecWest※3等)にて最新のセキュリティ技術を発表することで当社の技術力を示すなど、当社の認知度・信頼性向上のための活動強化に取り組んでおります。

 

(海外展開)

世界の情報セキュリティ市場における日本のシェアは約10%前後に過ぎず、多くを海外市場が占めております。また、コンピュータ・セキュリティは、その製品技術の内容は世界共通であることから、海外市場への製品供給のハードルは高くなく、海外市場への製品供給は、当社の成長戦略上、重要な事項となっております。

 

※1

Black Hat

世界各国の企業や政府、教育機関等からのリーダーが一堂に会し、最先端のセキュリティ情報を発表する世界最大規模の国際セキュリティカンファレンス。

 2

RSA Conference

米国EMCのRSA部門がホスト役を務める情報セキュリティの総合カンファレンス。IT技術や標準規格、実装、法規格、政策、セキュリティ脅威など、あらゆる方面から情報セキュリティを扱う最先端のセキュリティ専門カンファレンス及び展示会。

 3

CanSecWest

カナダdragostech.com inc.主催の国際セキュリティカンファレンス。日本ではPacSecという名前で開催されている。

 

4【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

 このいずれかが発生した場合、当社の業績や株価に影響を与える可能性があります。また、これらのなかには外部要因や発生する可能性が高くないと考えられる事項を含んでいるほか、投資判断に影響を及ぼすすべてのリスクを網羅するものではないことにご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

1.製品及びサービスに瑕疵が発生する可能性について

製品及びサービスを提供する際には、開発過程においてプログラムにバグや欠陥の有無の検査、ユーザーの使用環境を想定した動作確認などの品質チェックを行い、販売後のトラブルを未然に防ぐ体制をとっております。しかしながら、プログラムの特性上、これらを完全に保証することは難しいものとなっております。

 万が一、製品又はサービスにバグや欠陥が発見された場合の対策として、当社ではプログラムの修正対応や、販売時の契約において免責条項の設定などにより損失を限定する体制をとっておりますが、これらの対策はリスクを完全に回避するものではなく、バグや欠陥の種類、発生の状況によっては補償費用が膨らみ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.サイバー攻撃等を受けることにより信頼性を喪失する可能性について

 サイバー・セキュリティ事業を営む当社は、当社及び当社製品又はサービスを導入されたユーザーにおいて、当社製品又はサービスの効果の及ぶ範囲内でサイバー攻撃等による機密情報等の改鼠・搾取等をされた場合、当社の技術力を否定されることにより、結果として当社製品又はサービスに対する信頼性を喪失する恐れがあります。このようなことが発生した場合、信頼を回復するまでの間、製品及びサービスの販売が停滞することが考えられ、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

3.技術革新又は陳腐化に対応できない可能性について

 当社が属するサイバー・セキュリティの分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。このような中、当社は研究開発部門による新技術の開発や研究成果のカンファレンス等での発表、各種メディアへの情報発信などの取り組みにより、当社製品及びサービスの競争力の維持向上に努めております。

 しかし、当社が環境変化に対応することができず、当社製品及びサービスの陳腐化又は競合他社の企業努力などの要因により、当社が競争力を維持することができない場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

4.特定事業への依存により市場環境の影響を大きく受ける可能性について

 当社が営む事業はサイバー・セキュリティ事業の単一事業であり、ユーザーにおいて経済情勢の不調等によりIT設備投資が抑制されるなど、当該市場環境が冷え込んだ場合、その影響を大きく受け、他の事業分野で挽回するといった対応が取れず、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

5.知的財産権侵害の可能性について

 当社製品及びサービスの競争力維持にあたっては、特許権等による知的財産権の保護が重要となっております。当社は研究開発の結果、有用な技術について積極的に知的財産権の取得をするなど技術の保護に努めております。しかしながら、サイバー・セキュリティ製品には高度かつ複雑なプログラム技術が使用されており、知的財産権においてその権利の範囲を明確に定めることが難しいものとなっております。

 このような状況の下、他社において当社の知的財産権に抵触するものがあったとしても、当社の知的財産権侵害の主張が必ずしも認められない可能性があります。また反対に、当社が意図しないところで他社から当社に対して知的財産権侵害の訴えが提起され、その主張が認められてしまう可能性も否定できません。このようなことが起きた場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

6.小規模組織における経営管理体制・内部統制について

 当社は事業規模に応じた組織体制を志向しており、現在は比較的小規模の体制で事業運営を行っております。また、当社は現在の人員構成における最適と考えられる経営管理体制及び内部統制を構築していますが、今後、当社の計画以上に事業が成長するなどにより、組織規模の急激な拡大の必要が生じた場合、以下に掲げるリスクが考えられ、経営管理体制・内部統制が有効に機能しない可能性があります。

 ・必要な人材を確保できない可能性

 ・新規採用の人員に対する教育が不足する可能性

 ・業務の多様化に社内業務システムの対応が遅れる可能性

 ・従業員とマネジメント層の間における報告体制の冗長化

 また、当社が小規模組織であるために生じるリスクも考えられます。例えば当社のキャパシティを超えるような大型の開発プロジェクト等が生じた場合、当社は他社との業務提携などの戦略をとることが考えられますが、提携先が確保できない場合や、当社と提携先の間で円滑なプロジェクト遂行が困難になる等により、当該案件への投資資金の損失、失注あるいは利害関係者からの損害賠償請求等、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

7.情報漏洩リスクについて

 当社が営むサイバー・セキュリティ事業では、ユーザーのセキュリティシステムに関する情報や社内で使用する検体用マルウェア等の機密情報を扱う場合があります。これらの取り扱いについて、当社は規程やマニュアル等に則った運用体制の整備や社員への教育を通じて機密情報の外部漏洩を厳しく管理しております。しかしながら、特に当社の関係者が悪意を持って機密情報の漏洩を図った場合など、情報漏洩を完全に防ぐことは困難であります。このようなことが起きた場合、漏洩した機密情報を使用されることによる損害や、当社の信用が失墜するなどにより、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

8.事業環境の変化について

 当社が製品・サービスを提供している標的型攻撃対策を始めとする高度なセキュリティ・サービスの市場は、サイバー・セキュリティに対する脅威の複雑化・多様化を背景に今後拡大していくものと見込んでおりますが、市場の黎明期であるため不確定要素も多く、市場の成長スピードが当社の想定よりも遅れる可能性があります。

 また、市場が順調に拡大した場合でも、競合他社の参入や他社から無償又は安価なセキュリティ機能が供給されることにより、当社が市場シェアを伸ばしていくことができない可能性があります。
 このような当社を取り巻く事業環境の変化に有効な対抗策を講じる事ができなかった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

9.法律の制定又は改正により当社の事業に規制がかかる可能性について

 現在、当社の事業に対する法的規制はありませんが、将来新たに行われる法律の制定や既存の法律の改正により、当社の事業が規制された場合には、その内容によっては対応費用の支出又は経営方針の変更を迫られる可能性があります。例えば、当社は研究開発において、実際のサイバー攻撃等で使用されたプログラム(検体用マルウェア)などを用いる場合があり、この管理取り扱いについて法的規制がかかり、その対応に多額の費用がかかるなどが考えられます。このようなことが起きた場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

10.季節的要因について

 当社の売上及び利益計上は、12月から3月に集中する傾向があります。これは、ユーザーである企業や官公庁において、年度末前後における経済状況や事業方針の決定等により、設備投資の動きが活発化する影響によるものと考えております。

 当社は平成26年12月及び平成27年4月に個人向け製品をリリースしたことによりコンシューマー市場に事業範囲を拡大しており、今後においては売上計上時期の偏りが徐々に解消されていく見込みですが、当面は企業・官公庁向けの売上比率が大きいため、この傾向は続く見込みです。

 平成28年3月期における各四半期累計期間の実績は以下の表に記載のとおりです。

 以上より、12月から3月の経済状況、設備投資の動向が当社の業績に影響を与える可能性があります。

(単位:千円)

 

 

平成28年3月期

第1四半期累計期間

第2四半期累計期間

第3四半期累計期間

通期

売上高

138,734

320,051

547,180

948,838

営業利益

△54,052

△418,848

△416,128

△343,837

 

11.株式の希薄化について

 当社は、取締役及び従業員等に対し、業務に対するモチベーション向上を図り、業績向上に繋がるインセンティブとしてのストック・オプションを付与しております。平成28年3月末現在、ストック・オプションの残高は375,600株であり、発行済株式総数に対する割合は4.8%に相当しております。今後ストック・オプションが行使され、新株が発行された場合、既存株主の1株当たりの利益、純資産、議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社が属するサイバー・セキュリティの分野は、過去に積み上げられた技術情報が少ないほか、技術革新により技術の陳腐化が著しく早くなっております。このような状況のもと、IT社会を取り巻く脅威に対抗するためには、ITセキュリティベンダーは常に最新技術の維持・獲得が求められております。

 当社の研究開発体制は、最新防御技術を基礎研究レベルで研究する専任部署を設置し市場ニーズをつかみ、それに応える製品を開発するニーズ型研究開発のみならず、自らニーズを掘り起こすシーズ型研究開発を行なっております。研究成果は当社製品及びサービスへ反映する他、一部を国際カンファレンスなどを通じて世界に向けて情報発信するなど、日本から国内外問わずITセキュリティに貢献していくための活動をしております。

 当事業年度の主な研究開発活動は以下の通りです。

 

① 自動車セキュリティの研究

 自動車業界のサイバー・セキュリティに対する動向調査、自動車のコンポーネントに存在する脆弱性の評価手法の調査、国際会議における自動車セキュリティ関連研究発表のサーベイを実施し、サーベイレポートを公開しました。

 その他、ECUソフトウェアで考えられる脆弱性攻撃とその対策をまとめた論文をSCIS2016にて発表しました。

 

② IoTセキュリティの研究

 IoTのセキュリティの研究として、新たに登場したIoT向けのプラットフォームのセキュリティについて調査研究を行いました。その一例として、Windows 10 IoT Coreのセキュリティ分析を行い、その結果に基づいて想定される脅威と対策をCODE BLUE 2015にて発表いたしました。

 その他、LinuxプラットフォームをベースとするIoTデバイスにおけるコンテナ技術を用いたセキュリティ対策について研究を行いました。

 今後のIoT社会において新たに登場する様々なデバイスのプラットフォームとしてLinuxの利用が大幅に増加すると予測されます。しかし、ソフトウェアのアップデートシステムや製品ライフサイクルが考慮されておらず、十分なセキュリティ対策がなされないIoTデバイスが爆発的に増加し、サイバー攻撃の対象になる恐れがあります。このような背景から、Linuxを搭載したIoTデバイスに想定されるセキュリティ脅威とその対策についての研究を実施しました。

 具体的には、IoTゲートウェイに対して想定される脅威の分析を行い、それらの脅威に対して、開発・運用ツールの1つとして注目を浴びているDockerに代表されるコンテナ技術を活用した対策の可能性や課題について検討を行いました。

 

 当社ではこの他にも製品やセキュリティ・サービスに研究開発活動を通じて得た技術・知見を活用し、製品及びサービスの品質向上につなげております。

 以上の結果、当事業年度における研究開発費の総額は、75,179千円となりました。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる当社の会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。なお、この財務諸表の作成にあたっては、一部の箇所に過去の実績や状況等を基に、合理的と考えられる見積り及び判断を用いておりますが、実際の結果は見積りの不確実性によりこれらの見積りと異なる可能性があります。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

当事業年度末における流動資産は951,418千円となり、前事業年度末に比べて386,637千円減少しました。主な減少要因は、現金及び預金の減少340,328千円、売掛金の減少116,862千円等であり、主な増加要因は、未収還付法人税等の増加35,570千円等であります。固定資産は128,435千円となり、前事業年度末に比べ14,344千円増加しました。主な増加要因は、販売用ソフトウェアの開発等によるソフトウェアの増加12,881千円等であります。

以上の結果、総資産は1,079,853千円となり、前事業年度末に比べ372,292千円減少しました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は381,820千円となり、前事業年度末に比べ3,247千円減少しました。主な減少要因は、未払法人税等及び未払消費税等の減少78,905千円等であり、主な増加要因は、セキュリティ・プロダクトにおける契約の増加等による前受収益の増加73,098千円等であります。固定負債は119,774千円となり、前事業年度末に比べ53,781千円減少しました。主な減少要因は、主にセキュリティ・プロダクトにおける複数年契約の減少等による長期前受収益の減少55,910千円等であります。

 以上の結果、負債合計は、501,594千円となり、前事業年度末に比べ57,028千円減少しました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は578,258千円となり、前事業年度末に比べて315,264千円減少しました。この減少要因は、当期純損失の計上による繰越利益剰余金の減少341,990千円であり、増加要因は新株予約権の行使による株式の発行による資本金及び資本準備金の増加26,726千円であります。

 

(3)経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度における売上高は948,838千円(前年同期比8.2%増)となりました。主な要因は、セキュリティ・プロダクトにおいて、法人向けに加え、個人向けのAndroidモバイル端末向け製品の売上が順調に伸び、セキュリティ・プロダクトの販売が好調に推移したことによるものです。

 

(売上原価)

 当事業年度における売上原価は156,888千円(前年同期比0.5%増)となりました。主な増加要因は研究開発部門の人員増加によるものであり、主な減少要因は研究開発の実施による売上原価から研究開発費への振替、ソフトウェアの制作によるソフトウェア仮勘定への振替等によるものです。

 

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度における販売費及び一般管理費は1,135,786千円(前年同期比144.6%増)となりました。主な要因は広告宣伝費の増加、人件費の増加によるものです。

 

(営業外収益及び営業外費用)

 当事業年度における営業外収益は465千円(前年同期比53.2%増)となり、営業外費用の実績はありませんでした(前事業年度は14,785千円)。営業外費用の主な減少要因は、前事業年度に東京証券取引所マザーズへの上場関連費用等を計上したことによるものです。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載の内容となっております。当社は、これらのリスク要因について、分散又は低減するよう取り組んで参ります。

 

(6)経営者の問題意識と今後の方針

 当社では、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載の各リスク項目について顕在化することがないよう常に注意を払っております。また、当面の当社の課題として「第2 事業の状況 3 対処すべき課題」に記載の各事項に対応していくことで、企業価値向上に努める方針であります。

 

(7)経営戦略の現状と見通し

 次期におきましては以下の項目を中心に取り組む予定です。

 1つ目はFFR yaraiの拡販です。当社ではこれまでもFFR yaraiの拡販に取り組んでおりますが、市場全体からみると当社製品を利用いただいているのはごく一部となっており、当社製品の導入余地は大きい状況です。また、政府・官公庁においてもサイバー・セキュリティ対策に積極的に活動しており、順次対策が整備されていくものと見込まれ、その中で当社製品の利用拡大に取り組む予定です。この他、拡大するサイバー脅威を背景に、当社の顧客の中心である大企業及び官公庁に加えて中堅企業の引き合いが増加しており、製品の拡販を見込んでおります。

 2つ目は海外の販路開拓です。海外展開については、海外企業との連携を中心に進めております。次期においては、製品販売においても本格化させるべく進めてまいります。

 3つ目は個人向け製品の販売チャネルの拡充です。当期においては主に個人向けの広告宣伝を積極的に実施し、知名度の向上を図ってまいりました。次期においては販売店にとってインセンティブのあるプランの設定などにより販売数の増加を狙うなど、販売数増加に寄与する活動を重点的に行う予定です。また、販売チャネルについては現時点においてもオンライン・オフラインともに増加していますが、今後においても他社サービスにおけるオプション販売など、様々な形でユーザーに当社製品を届けられるよう取り組む予定です。

 4つ目はIoTセキュリティ分野、車載セキュリティ分野の研究開発です。こちらについては短期的に業績寄与する性質のものではありませんが、このような技術革新による未知のセキュリティリスクについての研究は、当社の中長期的な成長に欠かせない取り組みとなっています。当社では今後においても短期的なものと併せて長期的な目線で研究開発を行ってまいります。