第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当事業年度におけるサイバー・セキュリティ業界は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)により毎年発表される情報セキュリティ10大脅威によると、法人におけるサイバー脅威として多くの被害が生じている標的型攻撃が引き続き第1位となる中で、ランサムウェアによる被害が大きく順位を上げております。ランサムウェアによるサイバー攻撃は攻撃者にとって経済的なインセンティブが大きく、法人・個人問わず攻撃の対象となることもあり、被害が急拡大しております。標的型攻撃もランサムウェアによる攻撃も共にシステムの脆弱性やマルウェアが用いられ、これらの脅威に対処可能な製品又はサービスが注目されております。

 このような環境の中、当事業年度の経営成績は以下のとおりとなりました。

 セキュリティ・プロダクトにおきましては、法人向けでは主力製品である「FFRI yarai」及び「FFRI yarai analyzer」を中心に販売が順調に推移しました。当事業年度の販売動向としましては、「FFRI yarai」では主に標的型攻撃対策を目的とする大手企業・中央省庁のニーズが拡大している他、これまで標的型攻撃対策へのモチベーションが必ずしも高くなかった中堅規模以下の層において、ランサムウェア被害の拡大を契機に当社の「FFRI yarai」のような対策製品の導入を検討する企業の増加の兆しが見え、販売が好調に推移しました。「FFRI yarai analyzer」については、SOCやCSIRTといった情報セキュリティ部門を抱える企業からの引き合いや、官公庁におけるセキュリティシステムの構築プロジェクトでの利用が売上に貢献しました。

 個人向けではAndroidモバイル端末向け「FFRI安心アプリチェッカー」の販売が引き続き順調に進捗しました。

 この結果、当事業年度におけるセキュリティ・プロダクトの売上高は1,294,329千円(前年同期比76.5%増)となりました。

 セキュリティ・サービスにおきましては、セキュリティ技術者向けの教育・研修サービスや、車載セキュリティに関する案件等のコンサルティングサービスを中心に実施いたしました。なお、セキュリティ・サービスによる当社技術の提供には、拡大するに比例して人的リソースが必要になり、サービスの提供に限界があることから、当社では成長余地の大きいセキュリティ・プロダクトへリソースを投入しております。

 この結果、当事業年度におけるセキュリティ・サービスの売上高は177,455千円(前年同期比17.7%減)となりました。

 また、当社は日々拡大するサイバー脅威に対抗するため、当社製品の強化及び車載セキュリティを始めとするIoTなど新たな分野の研究開発及びこれらの製品・サービスを広くユーザーの皆様にお届けするための営業活動の強化を目的に採用を行った結果、前事業年度末に比べて17名増加し、79名となりました。

 以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高1,471,785千円(前年同期比55.1%増)、営業利益257,218千円(前年同期は営業損失343,837千円)、経常利益258,318千円(前年同期は経常損失343,371千円)、当期純利益271,616千円(前年同期は当期純損失341,990千円)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,062,205千円増加し、1,754,260千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果取得した資金は1,046,786千円(前年同期は317,086千円の支出)となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益257,686千円、売上増加に伴う前受収益及び長期前受収益の増加534,287千円、未払消費税等の増加59,521千円、未払金の増加45,724千円、法人税等の還付額33,883千円、売上債権の減少額37,441千円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は15,590千円(前年同期は49,967千円の支出)となりました。この要因は、販売用ソフトウェアの開発および自社利用ソフトウェア購入等による無形固定資産の取得による支出8,014千円、有形固定資産の取得による支出3,936千円、敷金の差入による支出3,640円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果取得した資金は31,010千円(前年同期は26,726千円の収入)となりました。増加の要因は、新株予約権行使による株式の発行による収入31,010千円によるものです。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(2)受注実績

当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

(3)販売実績

 当事業年度の販売実績を提供するサービスの種類ごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの種類

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

前年同期比(%)

セキュリティ・プロダクト(千円)

1,294,329

76.5

セキュリティ・サービス(千円)

177,455

△17.7

合計(千円)

1,471,785

55.1

(注)1.当社は、サイバー・セキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載に変えて、当社が提供するサービスの種類別の販売実績を記載しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社インフォセック

104,446

11.0

146,835

10.0

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

近年、コンピュータ・システムを取り巻く脅威はさらに多様化・複雑化し、かつ急速に変化しています。多様化する情報漏えい、増え続ける標的型攻撃などにより、既存のリスク管理プロセスだけでは十分な対応を取る事が難しくなりつつあります。的確なリスク管理を実現するためには、日々発生する新たなセキュリティ脅威に対抗するための迅速かつ正確な情報収集能力、分析能力、問題解決能力といった、強力かつ包括的なセキュリティリサーチ能力が求められます。当社は「世界トップレベルのセキュリティ・リサーチ・チームを作り、コンピュータ社会の健全な運営に寄与する」を経営理念とし、広範なセキュリティコア技術とリサーチ能力のバックグラウンドを軸に、さまざまな角度でお客様のセキュリティリスク管理を強力に支援します。

 

(2)目標とする経営指標

当社は従来の技術では防御が難しい脅威が増大している状況で、これに有効に作用する当社製品を早く、多くのユーザーにお届けすべきと考えています。また、究極的にはすべてのコンピュータ・システムへ当社製品を導入し、ユーザーは安心して利用できる環境とすることを目標としています。上記より、当社ではセキュリティ・プロダクトの契約ライセンス数及びPC稼働台数に対する当社製品の導入割合を重視しています。

 

(3)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

社会システムのネットワーク化が進む近年において、コンピュータ・システムを取り巻く脅威は多様化しており、システムを攻撃されることにより甚大な被害を及ぼす傾向が強まっております。これらの脅威からコンピュータ・システムを守り、安定した運用を実現するためには、常に最新かつ最適なセキュリティ体制を構築することが望まれます。このような状況を踏まえ、当社は以下の事項を中長期的な経営戦略として、事業を推進してまいります。

(研究開発戦略)

当社は、サイバー・セキュリティ領域での技術研究から生まれる新しい研究成果により、他に類を見ない高い付加価値と高い市場競争力を持つ製品・サービスを開発・提供してまいります。また、サイバー攻撃技術の研究をベースにトレンドを予測し、プロアクティブな対策技術の開発に取り組むことで、将来予想される脅威に先回りする形で対策製品・サービスを提供できる体制を構築していきます。

(セキュリティ・プロダクト戦略)

研究開発により獲得した新技術及び脅威情報、蓄積したノウハウを製品開発に反映してまいります。これにより、これまでにない斬新なコンピュータ・セキュリティ製品を提供し、サイバー攻撃からコンピュータ・システムを守ることで、コンピュータ社会の健全な運営に寄与してまいります。

(セキュリティ・サービス戦略)

当社のセキュリティ・サービスは、当社の技術レベルを示すことによるブランドの確立を目的とし、技術的に付加価値の高いプロジェクトに特化しております。これにより、ユーザーからの当社製品・サービスに対する信頼を獲得するとともに、ノウハウを蓄積し、製品の拡販につなげてまいります。

 

(4)対処すべき課題

(研究開発)

IT技術が日々進歩する中、同時にコンピュータ・システムに対する新しい脅威が発生しております。また、サイバー・セキュリティ市場においては、情報漏洩等の被害発生が市場ニーズの発生契機となるケースが多数あります。当社では、このような後手の対応ではなく、被害発生前に予防することができる製品・サービスの提供が重要な課題であると考えており、すでに市場ニーズの存在する製品・サービスを開発するニーズ型の研究開発と併せて、市場ニーズを予測し、掘り起こすシーズ型の研究開発を行っております。今後においても、セキュリティ技術は常に進歩していることから、当社は最新技術の獲得のための研究開発の強化に取り組んでまいります。

 

(人材育成)

当社が今後成長するにあたり、優秀な技術者を中心とした人材の確保と育成は重要な課題となっております。当社は従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、技術者を育成することにより全体の技術レベルの底上げに取り組んでまいります。

 

 

(セキュリティリテラシー)

当社製品・サービスの拡販には、ユーザーがコンピュータ・システムを取り巻く脅威の内容及びそれに対するセキュリティ対策の必要性を正しく理解していただくことが重要であると考えています。当社は、通常の営業活動のほか、世間に広く流通する製品等の脆弱性や、その対策などの研究成果の一部をカンファレンスや新聞・雑誌・WEB媒体などを通じて広く情報提供することにより、ユーザーに脅威を周知し、それらに応じた適切な対策の導入を促す活動に取り組んでおります。

 

(ブランディング)

セキュリティ製品・サービスはその性質上、顧客において効果を実感する機会が多くないため、当社製品・サービスの拡販には、当社及び製品・サービスの性能に対する信頼性の確保が課題となっております。信頼性の確保には、導入事例の紹介や実際にマルウェアによる攻撃から当社製品がコンピュータ・システムを防御するデモンストレーションの実施、講演や各種媒体への広告宣伝等を通じて当社製品・サービスの有用性を訴求することが有効と考えております。また、カンファレンス等(Black Hat※1、RSA Conference※2、CanSecWest※3等)にて最新のセキュリティ技術を発表することで当社の技術力を示すなど、当社の認知度・信頼性向上のための活動強化に取り組んでおります。

 

(海外展開)

世界の情報セキュリティ市場における日本のシェアは約10%前後に過ぎず、多くを海外市場が占めております。また、コンピュータ・セキュリティは、その製品技術の内容は世界共通であることから、海外市場への製品供給のハードルは高くなく、海外市場への製品供給は、当社の成長戦略上、重要な事項となっております。

 

(コンシューマー市場での拡販)

ランサムウェアやオンラインバンキングの不正送金といった個人を標的とするサイバー攻撃が拡大を続けているなか、既存のセキュリティ対策は高度化するサイバー脅威を前に効果が薄れてきており、有効な製品の普及はほとんど進んでいない状況となっております。また、個人向けのセキュリティ市場規模はICTの発達やモバイル端末の増加により拡大しており、当社は個人向け製品の拡販に取り組んでおります。

 

※1

Black Hat

世界各国の企業や政府、教育機関等からのリーダーが一堂に会し、最先端のセキュリティ情報を発表する世界最大規模の国際セキュリティカンファレンス。

 2

RSA Conference

米国EMCのRSA部門がホスト役を務める情報セキュリティの総合カンファレンス。IT技術や標準規格、実装、法規格、政策、セキュリティ脅威など、あらゆる方面から情報セキュリティを扱う最先端のセキュリティ専門カンファレンス及び展示会。

 3

CanSecWest

カナダdragostech.com inc.主催の国際セキュリティカンファレンス。日本ではPacSecという名前で開催されている。

 

4【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

 このいずれかが発生した場合、当社の業績や株価に影響を与える可能性があります。また、これらのなかには外部要因や発生する可能性が高くないと考えられる事項を含んでいるほか、投資判断に影響を及ぼすすべてのリスクを網羅するものではないことにご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

1.製品及びサービスに瑕疵が発生する可能性について

製品及びサービスを提供する際には、開発過程においてプログラムにバグや欠陥の有無の検査、ユーザーの使用環境を想定した動作確認などの品質チェックを行い、販売後のトラブルを未然に防ぐ体制をとっております。しかしながら、プログラムの特性上、これらを完全に保証することは難しいものとなっております。

 万が一、製品又はサービスにバグや欠陥が発見された場合の対策として、当社ではプログラムの修正対応や、販売時の契約において免責条項の設定などにより損失を限定する体制をとっておりますが、これらの対策はリスクを完全に回避するものではなく、バグや欠陥の種類、発生の状況によっては補償費用が膨らみ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.サイバー攻撃等を受けることにより信頼性を喪失する可能性について

 サイバー・セキュリティ事業を営む当社は、当社及び当社製品又はサービスを導入されたユーザーにおいて、当社製品又はサービスの効果の及ぶ範囲内でサイバー攻撃等による機密情報等の改鼠・搾取等をされた場合、当社の技術力を否定されることにより、結果として当社製品又はサービスに対する信頼性を喪失する恐れがあります。このようなことが発生した場合、信頼を回復するまでの間、製品及びサービスの販売が停滞することが考えられ、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

3.技術革新又は陳腐化に対応できない可能性について

 当社が属するサイバー・セキュリティの分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。このような中、当社は研究開発部門による新技術の開発や研究成果のカンファレンス等での発表、各種メディアへの情報発信などの取り組みにより、当社製品及びサービスの競争力の維持向上に努めております。

 しかし、当社が環境変化に対応することができず、当社製品及びサービスの陳腐化又は競合他社の企業努力などの要因により、当社が競争力を維持することができない場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

4.特定事業への依存により市場環境の影響を大きく受ける可能性について

 当社が営む事業はサイバー・セキュリティ事業の単一事業であり、ユーザーにおいて経済情勢の不調等によりIT設備投資が抑制されるなど、当該市場環境が冷え込んだ場合、その影響を大きく受け、他の事業分野で挽回するといった対応が取れず、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

5.知的財産権侵害の可能性について

 当社製品及びサービスの競争力維持にあたっては、特許権等による知的財産権の保護が重要となっております。当社は研究開発の結果、有用な技術について積極的に知的財産権の取得をするなど技術の保護に努めております。しかしながら、サイバー・セキュリティ製品には高度かつ複雑なプログラム技術が使用されており、知的財産権においてその権利の範囲を明確に定めることが難しいものとなっております。

 このような状況の下、他社において当社の知的財産権に抵触するものがあったとしても、当社の知的財産権侵害の主張が必ずしも認められない可能性があります。また反対に、当社が意図しないところで他社から当社に対して知的財産権侵害の訴えが提起され、その主張が認められてしまう可能性も否定できません。このようなことが起きた場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

6.小規模組織における経営管理体制・内部統制について

 当社は事業規模に応じた組織体制を志向しており、現在は比較的小規模の体制で事業運営を行っております。また、当社は現在の人員構成における最適と考えられる経営管理体制及び内部統制を構築していますが、今後、当社の計画以上に事業が成長するなどにより、組織規模の急激な拡大の必要が生じた場合、以下に掲げるリスクが考えられ、経営管理体制・内部統制が有効に機能しない可能性があります。

 ・必要な人材を確保できない可能性

 ・新規採用の人員に対する教育が不足する可能性

 ・業務の多様化に社内業務システムの対応が遅れる可能性

 ・従業員とマネジメント層の間における報告体制の冗長化

 また、当社が小規模組織であるために生じるリスクも考えられます。例えば当社のキャパシティを超えるような大型の開発プロジェクト等が生じた場合、当社は他社との業務提携などの戦略をとることが考えられますが、提携先が確保できない場合や、当社と提携先の間で円滑なプロジェクト遂行が困難になる等により、当該案件への投資資金の損失、失注あるいは利害関係者からの損害賠償請求等、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

7.情報漏洩リスクについて

 当社が営むサイバー・セキュリティ事業では、ユーザーのセキュリティシステムに関する情報や社内で使用する検体用マルウェア等の機密情報を扱う場合があります。これらの取り扱いについて、当社は規程やマニュアル等に則った運用体制の整備や社員への教育を通じて機密情報の外部漏洩を厳しく管理しております。しかしながら、特に当社の関係者が悪意を持って機密情報の漏洩を図った場合など、情報漏洩を完全に防ぐことは困難であります。このようなことが起きた場合、漏洩した機密情報を使用されることによる損害や、当社の信用が失墜するなどにより、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

8.事業環境の変化について

 当社が製品・サービスを提供している標的型攻撃対策を始めとする高度なセキュリティ・サービスの市場は、サイバー・セキュリティに対する脅威の複雑化・多様化を背景に今後拡大していくものと見込んでおりますが、市場の黎明期であるため不確定要素も多く、市場の成長スピードが当社の想定よりも遅れる可能性があります。

 また、市場が順調に拡大した場合でも、競合他社の参入や他社から無償又は安価なセキュリティ機能が供給されることにより、当社が市場シェアを伸ばしていくことができない可能性があります。
 このような当社を取り巻く事業環境の変化に有効な対抗策を講じる事ができなかった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

9.法律の制定又は改正により当社の事業に規制がかかる可能性について

 現在、当社の事業に対する法的規制はありませんが、将来新たに行われる法律の制定や既存の法律の改正により、当社の事業が規制された場合には、その内容によっては対応費用の支出又は経営方針の変更を迫られる可能性があります。例えば、当社は研究開発において、実際のサイバー攻撃等で使用されたプログラム(検体用マルウェア)などを用いる場合があり、この管理取り扱いについて法的規制がかかり、その対応に多額の費用がかかるなどが考えられます。このようなことが起きた場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

10.季節的要因について

 当社の売上及び利益計上は、12月から3月に集中する傾向があります。これは、ユーザーである企業や官公庁において、年度末前後における経済状況や事業方針の決定等により、設備投資の動きが活発化する影響によるものと考えております。

 当社は平成26年12月及び平成27年4月に個人向け製品をリリースしたことによりコンシューマー市場に事業範囲を拡大しており、今後においては売上計上時期の偏りが徐々に解消されていく見込みですが、当面は企業・官公庁向けの売上比率が大きいため、この傾向は続く見込みです。

 平成29年3月期における各四半期累計期間の実績は以下の表に記載のとおりです。

 以上より、12月から3月の経済状況、設備投資の動向が当社の業績に影響を与える可能性があります。

(単位:千円)

 

 

平成29年3月期

第1四半期累計期間

第2四半期累計期間

第3四半期累計期間

通期

売上高

265,190

586,406

1,008,598

1,471,785

営業利益

△10,628

32,128

162,534

257,218

 

11.株式の希薄化について

 当社は、取締役及び従業員等に対し、業務に対するモチベーション向上を図り、業績向上に繋がるインセンティブとしてのストック・オプションを付与しております。平成29年3月末現在、ストック・オプションの残高は69,600株であり、発行済株式総数に対する割合は0.9%に相当しております。今後ストック・オプションが行使され、新株が発行された場合、既存株主の1株当たりの利益、純資産、議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社が属するサイバー・セキュリティの分野は、過去に積み上げられた技術情報が少ないほか、技術革新により技術の陳腐化が著しく早くなっております。このような状況のもと、IT社会を取り巻く脅威に対抗するためには、ITセキュリティベンダーは常に最新技術の維持・獲得が求められております。

 当社の研究開発体制は、最新防御技術を基礎研究レベルで研究する専任部署を設置し市場ニーズをつかみ、それに応える製品を開発するニーズ型研究開発のみならず、自らニーズを掘り起こすシーズ型研究開発を行っております。研究成果は当社製品及びサービスへ反映する他、一部を国際カンファレンスなどを通じて世界に向けて情報発信するなど、日本から国内外問わずITセキュリティに貢献していくための活動をしております。

 当事業年度の主な研究開発活動は以下の通りです。

 

① 自動車セキュリティの研究

車載ソフトウェアの標準仕様であるAUTOSARとそれに準拠したソフトウェアの開発手法について調査研究及び実車に対する脆弱性検査手法についての調査研究を行いました。

また、自動車の管理や遠隔操作を行う自動車用モバイルアプリケーションの脆弱性調査を独自に行い、その結果を CODE BLUE 2016 にて発表しました。

 

② IoTセキュリティの研究

IoT技術の普及と共にますます大規模、複雑になるシステムに潜在するセキュリティ脅威を効率的に分析する手法の研究を行いました。

従来の脅威分析手法について現状把握を行い、膨大な分析時間やセキュリティに関する専門知識、経験を要するという課題の解決を目指しました。

システム内の資産を洗い出し、重要資産に対する脅威を優先的に分析する手法や重大な脅威事象の実現条件をツリー化して分析する手法など様々な手法の組み合わせを検討しました。

 

 当社ではこの他にも製品やセキュリティ・サービスに研究開発活動を通じて得た技術・知見を活用し、製品及びサービスの品質向上につなげております。

 以上の結果、当事業年度における研究開発費の総額は、106,015千円となりました。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる当社の会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。なお、この財務諸表の作成にあたっては、一部の箇所に過去の実績や状況等を基に、合理的と考えられる見積り及び判断を用いておりますが、実際の結果は見積りの不確実性によりこれらの見積りと異なる可能性があります。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 当事業年度末における流動資産は1,961,140千円となり、前事業年度末に比べて1,009,722千円増加しました。主な増加要因は、現金及び預金の増加1,062,205千円、繰延税金資産の増加38,118千円等であります。主な減少要因は、未収還付法人税等の減少35,570千円、売掛金の減少37,441千円等であります。固定資産は94,385千円となり、前事業年度末に比べ34,049千円減少しました。主な減少要因は、減価償却によるソフトウェアの減少30,261千円、ソフトウェア仮勘定の減少6,955千円等であります。主な増加要因は、賃料増加による差入保証金の増加3,640千円等であります。

 以上の結果、総資産は2,055,526千円となり、前事業年度末に比べ975,673千円増加しました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は751,097千円となり、前事業年度末に比べ369,276千円増加しました。主な増加要因は、セキュリティ・プロダクトにおける契約の増加等による前受収益の増加230,449千円、未払法人税等及び未払消費税等の増加91,124千円、未払金の増加46,479千円等であります。固定負債は423,543千円となり、前事業年度末に比べ303,769千円増加しました。主な増加要因は、セキュリティ・プロダクトにおける複数年契約の増加等による長期前受収益の増加303,838千円等であります。

 以上の結果、負債合計は、1,174,641千円となり、前事業年度末に比べ673,046千円増加しました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は880,885千円となり、前事業年度末に比べて302,626千円増加しました。この増加要因は、当期純利益の計上による繰越利益剰余金の増加271,616千円、新株予約権の行使による株式の発行による資本金及び資本準備金の増加31,010千円であります。

 

(3)経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度における売上高は1,471,785千円(前年同期比55.1%増)となりました。主な要因は、セキュリティ・プロダクトにおいて、法人向けに加え、個人向けのAndroidモバイル端末向け製品の売上が順調に伸び、セキュリティ・プロダクトの販売が好調に推移したことによるものです。

 

(売上原価)

 当事業年度における売上原価は206,862千円(前年同期比31.9%増)となりました。主な要因は研究開発部門の人員増加によるものです。

 

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度における販売費及び一般管理費は1,007,704千円(前年同期比11.3%減)となりました。主な減少要因は広告宣伝費の減少、主な増加要因は売上増加による販売手数料の増加によるものです。

 

(営業外収益及び営業外費用)

 当事業年度における営業外収益は1,216千円(前年同期比161.3%増)、営業外費用は116千円(前事業年度は実績なし)となりました。営業外収益の主な要因は、法人税、消費税等の還付加算金及び助成金収入によるものです。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載の内容となっております。当社は、これらのリスク要因について、分散又は低減するよう取り組んでまいります。

 

(6)経営者の問題意識と今後の方針

 当社では、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載の各リスク項目について顕在化することがないよう常に注意を払っております。また、当面の当社の課題として「第2 事業の状況 3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の各事項に対応していくことで、企業価値向上に努める方針であります。

 

(7)経営戦略の現状と見通し

 次期におきましては以下の項目を中心に取り組む予定です。

1つ目はセキュリティ・プロダクトの拡販です。当社グループの事業分野である未知脅威対策市場では、標的型攻撃のターゲットとなりやすい大手企業や中央省庁に限っても適切な対策が取られている先は一部となっており、当社製品の拡販余地は大きい状況です。また、ランサムウェアの登場でサイバー攻撃が身近になったことで、大企業や中央省庁以外の層にも対策の動きが広がっています。

2つ目はFFRI yaraiの海外展開です。当社グループは平成29年4月3日に北米に初めての子会社となるFFRI North America, Inc. を設立し、課題であった北米での拡販を本格的に開始することとなりました。北米のセキュリティ市場規模は日本の約10倍というデータもあるほか日本に比べてセキュリティに対するリテラシーは高く、よい製品が受け入れられやすい土壌があります。これまで北米市場ではサイバー攻撃は防げないことを前提に、早期に検知して被害を最小限に留めることを目的とするゲートウェイ型の製品が普及していました。最近の標的型攻撃は感染から被害発生までの時間が短期化していることや、感染後即被害発生するランサムウェアの登場で、攻撃を検知してからの対応では手遅れになる状況になっており、今後は攻撃の検知ではなく、当社グループのFFRI yaraiのように攻撃を防御できる製品が求められています。

3つ目は個人向け製品の拡販です。Android向け「安心アプリチェッカー」の販売が好調に推移している中で、市場環境は大きく変化しております。次期においては個人向け製品販売における中長期的な販売拡大のためのビジネスモデルの再構築に取り組む予定です。

4つ目は新しいセキュリティ領域の研究開発です。以前より当社グループでは車載セキュリティに関する研究や、車載システム関連企業に対してセキュリティ調査・研究のサービスを提供するなど行っており、これまでの活動により車載セキュリティに関するノウハウの蓄積が進みました。次期においては蓄積したノウハウを元に自動車をサイバー攻撃から守る製品やサービスの開発に向けて取り組む予定です。また、その他に当社グループは今後新たに生まれてくるセキュリティリスクについても常時研究を行っており、将来発生する脅威に先回りして対策を講じると同時に、新たなビジネスの創出に取り組んでおります。