当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションの下、インターネットを軸に新しいエンターテインメントを生み出し、提供する、最強のエンターテインメント企業を目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社オリジナルのビジネスモデルを活かして、より一層、出版事業の拡大を図ると共に、出版事業を通して蓄積した自社IP(小説・漫画・キャラクターなど)を活用して、映像事業、キャラクター事業、ゲーム事業などの分野にも積極的に展開することを目指しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、より高い成長性を確保する観点から「売上高」の伸び率において、市場全体の伸び率を上回ることを重視しております。加えて、企業価値の拡大を図るという観点にも立ち、「営業利益」及び「当期純利益」も重要な経営指標としております。
(4)経営環境
当社が属する出版業界におきましては、紙の出版物の市場は厳しい状況が続いているものの、一方で電子出版の市場は堅調な成長を続けております。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2023年(1月から12月まで)の紙と電子を合算した推定販売金額は前年比2.1%減の1兆5,963億円となり、その内訳は、紙の出版物については同6.0%減の1兆612億円、電子出版については同6.7%増の5,351億円となっております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、更なる成長に向け、激しく変容する出版市場を好機と捉え、素早く対応することで出版事業の増強をはかるとともに、将来的には出版事業にとどまらずエンターテインメント企業として出版事業で蓄積したIPを活かした他事業展開を目指しております。その目的に際して、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は次のとおりです。
① 優秀な人材の確保・育成
当社の編集担当者は書籍ごとに配置され、その担当者の受け持つ領域は、企画、編集、販促ツール制作、広告出稿等、書籍の制作から売上に結びつくまでに必要な全ての業務となります。そのため、担当者ごとの成果がわかりやすく、モチベーションが維持しやすい仕組みとなっておりますが、同時に幅広い知識とスキルが求められます。
その一方で、昨今の読者ニーズは非常に移り変わりが激しく、出版するタイミングが極めて重要となってきております。更に、今後は取扱ジャンルの拡大を目指しているため、編集担当者を増強し、ヒットが見込まれる作品はタイミングを逃すことなく確実に刊行していくことが必要となります。
加えて、取扱ジャンルを拡大するためには、スマートフォンアプリを含めた当社Webサイトのサービスを充実させ、調達可能なコンテンツの種類が拡大していることが前提となりますので、Webサイトサービスの速やかな対応を行うためにも、エンジニアをはじめとするWeb開発人員の増強も必要となってきます。
当社といたしましては、即戦力となる中途人材の確保を促進することに加え、積極的な新卒採用活動を行うことにより、将来の飛躍的な成長を担う人材を確保することに努めております。また同時に、社内教育の充実及び当社並びに当社サービスの知名度を向上させるための施策を継続的に実施することにより、志望者を引き付ける企業作りも行っております。
② 作家・ユーザー数の拡大
当社のビジネスモデルは、インターネット上にて良質なコンテンツが数多く収集でき、かつ、多くのユーザーにより多角的に評価されることで出版時の成功率が事前に高められることを前提に成り立っておりますので、継続的な新規コンテンツ及びユーザーの確保が必要不可欠となっております。
そのためには、作家・ユーザーの方の満足度向上が重要であると認識しておりますので、当社といたしましては、投稿作品の閲覧数等に応じてギフト券や現金を得られる「投稿インセンティブ」の実施や出版物に対するプロモーション等を積極的に実施することに加えて、作家・ユーザーの方からの当社Webサイトに対するリクエストにも適宜対応することで、その実現を目指しております。
③ 取扱書籍のジャンル拡大
当社の売上高の約24%はライトノベルが占めており、また売上高の約74%を占める漫画につきましても原作がライトノベルであるコミカライズ作品が多く、ライトノベルへの依存度は高いものとなっております。そのため、更なる業績拡大及びポートフォリオ最適化の観点から、特定のジャンルに依存しないよう、取扱書籍のジャンル拡大を課題の一つに位置付けております。
当社といたしましては「キャラ文芸大賞」、「歴史・時代小説大賞」、「絵本・児童書大賞」等幅広いジャンルでのWebコンテンツ大賞を開催、強化することを通じて、新たなジャンルの開拓にも積極的に取り組んでおります。
④ 電子書籍市場への対応
当社の属する出版業界におきましては、電子書籍市場は堅調に拡大しており、当社におきましても電子書籍販売を本格的に開始した2015年度以降、電子書籍売上は順調に増加し続けております。
その一方で、電子書籍の市場環境は紙書籍に比して変化が激しいことから、従来の紙書籍コンテンツとは異なる、環境変化に応じた柔軟な対応を取ることが電子書籍売上の維持・拡大には必要となります。
当社といたしましては、組織体制の整備及び社員への意識改革を適宜実施し、そのような市場環境の変化に迅速に対応できる体制構築を行っております。
⑤ 新たな販路の確保・拡大
現在、当社を取り巻く出版業界は厳しさを増し、とりわけ書店数の減少が顕著であります。このような環境の中、当社の書籍コンテンツの販売チャネルを確保・拡大すること、並びにそうしたチャネルの収益力の高さを追い求めることが必要となっております。
当社といたしましては、好調な電子書籍市場における販売を拡大するため、販売チャネルとなる電子取次及び各電子ストアとの連携を強化するとともに、活況な海外漫画市場の開拓として海外電子ストアとの新規契約を推進する等、販路の拡大に努めております。
さらに、当社では2017年2月より課金サービス「レンタル」を開始し、2021年7月には海外向けの漫画アプリ「Alpha Manga」を配信してサービスをグローバル展開する等、当社が一般消費者に書籍コンテンツを直接販売する仕組みを構築、強化し、投稿サイトという源泉から販売サイトという出口までの垂直の幹を太くしていくことにも取り組んでおります。
⑥ 自社IPを活かした事業拡大
当社といたしましては、更なる事業拡大を図るため、出版事業のみに留まらず、出版事業により蓄積された自社IPを活用した事業の多角展開を目指しております。具体的には、映像等の出版事業以外のメディア展開、グッズ販売、ゲーム事業、スマートフォン向けの新たなアプリサービス等への展開を目指しております。
⑦ 生成系AIへの対応
近年AI技術の著しい進化に伴い、生成系AIの利用が急速な広がりをみせておりますが、当社におきましてもクリエイティブ面において大きな影響を与えるものであり、その効果的な活用について迅速な対応が求められます。また一方で、生成系AIによる著作権についてはそのルールが国内のみならず海外においても定まっておらず、著作権問題から生じるリスクに備える必要があります。
当社といたしましては、これらの課題に対処するため、生成系AIの動向や法規制に関する情報を常に収集し、生成系AIを巡る社会のルール形成に速やかに対応することに取り組んでおります。
⑧ 内部管理体制の強化
当社は、市場動向、競合企業、顧客ニーズ等の変化に対して速やかに対応し、持続的に成長を維持していくためには、内部管理体制の強化を通じた業務の標準化と効率化が重要であると考えております。そのため、当社といたしましては、内部統制の実効性を高めるための環境を整備し、コーポレート・ガバナンスを充実していくことにより、内部管理体制の強化に努めてまいります。これにより、組織的な統制・管理活動を通じてリスク管理の徹底とともに、業務の標準化と効率化を目指しております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
(2)人的資本に関する戦略
当社における人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、男女ともに全社員が活躍できる雇用環境の整備を行い、社員が仕事と子育てを両立させることができる働きやすい環境を作ることによってすべての社員がその能力を十分に発揮できるようにすることを方針としております。
(3)人的資本に関する指標及び目標
当社では、上記「(2)人的資本に関する戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
①
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目標 |
実績(2023年度) |
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②
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目標 |
実績(2023年度) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
1. 事業環境に関するリスク
(1) 市場環境について
① 他社との競合について
インターネット上の小説や漫画等のコンテンツを書籍化するビジネスモデルにより、各社から大型のヒット作が相次ぎ出版され、一部のメディアでもそのビジネスモデルが取り上げられていることから、今後はより一層、当社と類似したビジネスモデルにて多くの新規参入等があると考えられます。
当社といたしましては、当社ならびに当社サービスの知名度向上、及び作家・ユーザーの満足度向上のための施策を継続的に実施することで、競合他社に対する優位性を確保することに努めてまいりますが、見込みどおりの効果が得られない場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
② 原材料市況について
近年における原油価格等の高騰や円安の進行に伴う物価上昇等が出版物の原材料となる紙のコストにも影響を与えております。当社におきましては、出版物の印刷・製本業務は複数の取引先に分散して委託することで安定的な供給量とコストのコントロールを行っておりますが、原材料価格の想定を超える急騰や長期にわたって高騰が続く場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
③ 出版市場について
当社は、デジタルネットワークの発展に伴う情報メディアの多様化等による書籍の市場規模の縮小、顧客ニーズの細分化に対応するため、魅力ある書籍の拡充・強化を進めております。しかし、顧客ニーズに合致する書籍の拡充・強化が想定どおりに進まない場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(2) 業界慣行及び法的規制について
① 再販売価格維持制度について
当社が販売している書籍等の著作物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下、「独占禁止法」という。)第23条の規定により、再販売価格維持契約制度(以下、「再販制度」という。)が認められております。
再販制度とは、一般的にはメーカーが自社の製品を販売する際に、「卸売業者がその商品を小売業者に販売する価格」、「小売業者が消費者に販売する価格」を指定し、その価格(以下、「再販売価格」という。)を卸売業者、小売業者にそれぞれ遵守させる制度であります。独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法の1つであるとして原則禁止しておりますが、著作物については再販制度が認められております。
公正取引委員会は2001年3月23日付「著作物再販制度の取扱いについて」において、「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべき」としながらも、「同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない」と指摘しており、当面、当該再販制度が維持されることとなっております。しかし、当該制度が廃止された場合、販売価格の値引きなどの価格競争に陥る可能性があるため、業界全体への影響も含め、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 委託販売制度について
法的規制等には該当いたしませんが、再販制度と並んで出版業界における特殊な慣行として委託販売制度があります。委託販売制度とは、当社が取次及び書店に配本した出版物について、配本後も返品を受け入れることを条件とする販売制度であります。
当社は発生し得ると考えられる予想返金額を返品率等を計算基礎として算出し、収益より控除するとともに、返金負債として計上しておりますが、今後の返品実績の動向によっては、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 著作権、商標権、知的財産権等について
当社は、著作権、商標権、知的財産権等の法令等の下、事業活動を行っており、現段階において事業及び業績に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。しかし、当社と作家との間において著作権に関するトラブルが生じた場合、又は当社と他社間において著作権又は商標権等に関するトラブルが発生した場合においては、訴訟等が発生する可能性があります。当社では、知的財産権に関する専門の弁護士と顧問契約を締結し、常にトラブルが無いよう努めておりますが、万一訴訟等が発生し、当社の信頼を大きく毀損する事態に至った場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、著作権、商標権、知的財産権等の法令等に重大な変更や当社事業に関係する重大な法令等の新設がある場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
④ 個人情報等について
当社では、多数の作家及びユーザーの個人情報をお預かりしております。個人情報保護につきましては全社的な対策を継続的に実施しておりますが、万一個人情報の漏洩等が発生した場合には、当社の信頼を大きく毀損することとなり、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
2.事業に関するリスク
(1)取引依存の高い主要な取引先について
当社は、将来的には出版事業を通して蓄積した自社IPを活かした多角展開を見据えておりますので、限られた経営資源は編集等に注力すべきだと考えております。そのため、紙の書籍に関する取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)との取引業務(書籍の販売・流通業務)は全て中取次(出版社と取次の間をつなぐ流通業者)である株式会社星雲社を介して行っており、当事業年度の売上高の18%が同社に対するものとなっております。
また、電子書籍の販売に関しては、主に電子書籍取次の大手である株式会社メディアドゥを介して行っており、当事業年度の売上高の55%が同社に対するものとなっております。
両社とはそれぞれ良好な関係を構築、維持しておりますが、何らかの理由により取引が継続できなくなった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(2) 新規事業への取組について
当社は、出版事業のみに留まらず、出版事業により蓄積された自社IPを活用して、映像等の出版事業以外のメディア展開、グッズ販売、ゲーム事業、スマートフォン向けアプリサービス(情報提供サービス等)の開始等、多角的に事業展開することを目指す方針であります。
これらの新規事業への取組に際して、新たな人材の確保、システム投資及び広告宣伝等のため追加的な支出が発生する場合、また当社がこれまで想定していない新たなリスクが発生する場合、あるいは事業展開が想定どおりに進捗しない場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(3) 書籍の刊行時期について
書籍の刊行に関しては綿密な刊行計画を設定しておりますが、作家の執筆過程、及び編集者の編集過程等における予測不能の事態の影響から、当初の刊行計画から変更が生じることがあります。その結果、当社書籍の販売時期が延期等となった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(4) サイトの健全性の維持について
書籍化の源泉となるコンテンツが投稿される当社Webサイトは、不特定多数のユーザーがコンテンツを投稿することができ、また独自にコミュニケーション等を図っているため、こうした場においては、公序良俗に反する行為や、他人を不快にさせる行為等が生じる危険性が存在しております。そのため、当社は、Webサイト内における禁止事項を明記すると共に、当社においても不適切なコンテンツや書き込み等がないかの確認を行っております。
しかし、急速な利用者の増加等により、Webサイト内における全ての不適切な行為を取り締まることができない場合には、Webサイトの安全性及び健全性が確保できず、当社のブランドや信頼が毀損する可能性があります。その場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(5) システムの安定的な稼働について
当社Webサイト及びアプリはウェブ上で運営されており、快適な状態でユーザーにサービスを提供するためにはシステムを安定的に稼働させ、問題が発生した場合には適時に解決する必要があると認識しております。そのため、新システムまたは機能導入時における十分な検証、及びシステム運用後においてはシステムを安定的に稼働させるための人員確保等に努めております。
しかし、当社が提供する各サービスへの急激なアクセス数の増加や災害等に起因したサーバーの停止に伴うシステムダウンが生じた場合、またはコンピュータ・ウイルスやクラッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
3.事業体制に関するリスク
(1) 人材採用と育成について
当社の事業運営に当たっては、人材の確保・育成が重要課題であると認識しております。そのため、当社は採用活動に注力し、人材の確保に努めるとともに、社内教育・研修制度の充実を図ることで、実務スキルに加えて、当社の経営理念や行動規範を理解した責任のある社員の育成を行っていく方針であります。
しかし、人材を適時確保できない場合や人材が大量に社外へ流出してしまった場合、あるいは人材の育成が当社の計画どおりに進捗しない場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(2) 代表取締役社長への依存及び当社の事業推進体制について
当社の代表取締役社長である梶本雄介は、当社の創業者であり、設立時より最高経営責任者であります。同氏は、企業経営に関する豊富な経験と知識を有しており、現在においても経営方針や事業戦略等の立案及び決定を始め、取引先やその他各分野に渡る人脈等、当社の事業推進の中心的役割を担っており、当社における同氏への依存度は高いものとなっております。
そのため当社では、同氏に過度に依存しないよう、経営幹部、ならびに業務推進役の拡充、育成、及び権限委譲による分業体制の構築等を進めておりますが、現時点においては、何らかの理由により同氏が当社の経営者として業務遂行が継続出来なくなった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(3) 小規模組織における管理体制について
当社は、小規模な組織であり、現在の内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社では今後、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充を図る予定です。しかし、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充が順調に進まなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
4.その他
(1) 配当政策について
当社は株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けております。当社は、未だ成長過程にあることから、経営基盤の強化と事業拡大のための成長投資に必要な内部留保の充実を図ることが株主に対する最大の利益還元に繋がると考え、創業から当事業年度まで配当は実施しておりませんでした。
次期以降につきましては、堅調な業績推移により内部留保の充実を図るとともに、将来の成長投資と株主に対する利益還元を両立することが可能と判断したことから、配当を実施することといたします。
なお、今後の配当方針につきましては、業績や企業価値向上のための成長投資、経営基盤強化のための内部留保の充実等を総合的に勘案したうえで、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針といたします。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中で緩やかな回復が見られるものの、世界的な金融引締め等による海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっており、また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響が懸念される等、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社が属する出版業界におきましては、紙の出版物の市場は厳しい状況が続いているものの、一方で電子出版の市場は堅調な成長を続けております。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2023年(1月から12月まで)の紙と電子を合算した推定販売金額は前年比2.1%減の1兆5,963億円となり、その内訳は、紙の出版物については同6.0%減の1兆612億円、電子出版については同6.7%増の5,351億円となっております。
こうした環境の中、インターネット発の出版の先駆者である当社は、「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」、「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションの下、インターネット時代の新しいエンターテインメントを創造することを目的とし、インターネット上で話題となっている小説・漫画等のコンテンツを書籍化する事業に取り組んでまいりました。
当事業年度における書籍のジャンル別の概況は以下の通りであります。
(ライトノベル)
当事業年度の刊行点数は前期を大きく上回る344点(前期比71点増)となりました。各書籍の売れ行きにつきましては、TVアニメ化タイトルである『Re:Monster』が、最新巻を刊行したことに加えて2024年4月からのアニメ放送にあわせた既刊の増刷及び出荷を行ったことにより、好調に推移いたしました。また、電子書籍販売につきましては、2024年1月からアニメ第2期の放送を開始した『月が導く異世界道中』の既刊がアニメの放送に伴って大きく販売数を伸ばし、売上を牽引いたしました。
結果、当事業年度の売上高は前期を上回る着地となりました。
(漫画)
当事業年度の刊行点数は前期を上回る187点(前期比26点増)となりました。各書籍の売れ行きにつきましては、2024年4月からアニメ放送を開始する『Re:Monster』や同じく4月からアニメ放送を開始する『THE NEW GATE』等の人気シリーズの続刊が引き続き好調に推移いたしました。また、漫画と親和性の高い電子書籍販売につきましては、新規配信点数の増加、各ストアにおける拡販施策の展開、アニメ放送による販売数の伸長等により、売上高は大幅に増加いたしました。
結果、当事業年度の売上高は前期を大幅に上回る着地となりました。
(文庫)
当事業年度の刊行点数は前期を上回る185点(前期比26点増)となりました。シリーズ累計144万部を超える人気シリーズ『居酒屋ぼったくり』の文庫版が堅調に推移し、当ジャンルの売上を牽引いたしました。また、日本歴史時代作家協会主催の「第11回日本歴史時代作家協会賞」において文庫書き下ろし新人賞を受賞した時代小説『谷中の用心棒 萩尾大楽』の続編を刊行する等、取扱いジャンルの拡大にも引き続き注力してまいりました。
しかし、開拓中のジャンルにおける刊行を強化した反面、刊行書籍1点あたりの発行部数は前期より減少したことから、当事業年度の売上高は前期を下回る金額で着地いたしました。
(その他)
当事業年度の刊行点数は4点(前期比3点減)となりました。当ジャンルにおいては、更なる業績拡大及びポートフォリオ最適化の観点から、特定ジャンルに依存しない幅広いジャンルにおける書籍の刊行に取り組んでまいりました。
しかしながら、刊行計画の都合上、刊行点数が前期から減少したことにより、当事業年度の売上高は前期を下回る金額で着地いたしました。
以上の活動の結果、当事業年度の売上高は10,334,097千円(前期比11.3%増)となり、過去最高を更新いたしました。利益面につきましては、増収効果はあったものの、期初に計画していた「印税率の改定」及び「人材・設備の拡充」といった事業基盤強化を目的とした成長投資を実施したことや紙書籍の製本コストが増加していること等から利益率が低下し、営業利益は2,272,181千円(同6.0%減)、経常利益は2,279,071千円(同6.1%減)、当期純利益は1,403,294千円(同6.8%減)となりました。
また、当事業年度末における資産合計は13,946,426千円(前事業年度末比12.1%増)、負債合計は2,257,409千円(同5.0%増)、純資産合計は11,689,017千円(同13.6%増)となりました。
(注)シリーズ累計部数:同作品の続編に加え、同作品の漫画及び文庫を含み、部数は電子書籍販売数を含む。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末より935,598千円増加し、9,707,339千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは1,248,069千円の収入(前事業年度は1,618,854千円の収入)となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益の計上によるものであります。また、主な減少要因は、法人税等の支払によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは286,506千円の支出(前事業年度は25,848千円の収入)となりました。これは主に、出資金の払込による支出188,790千円及び有形固定資産の取得による支出64,043千円が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは25,963千円の支出(前事業年度は24,442千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出24,200千円が発生したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社は出版事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
a.生産実績
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事業区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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出版事業(千円) |
3,756,045 |
108.8 |
|
合計(千円) |
3,756,045 |
108.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
受注生産を行っておりませんので、受注状況に関する記載はしておりません。
c.販売実績
|
事業区分 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
出版事業(千円) |
10,334,097 |
111.3 |
|
合計(千円) |
10,334,097 |
111.3 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社メディアドゥ |
5,015,298 |
54.0 |
5,702,059 |
55.2 |
|
株式会社星雲社 |
2,002,111 |
21.6 |
1,893,698 |
18.3 |
|
株式会社カカオピッコマ |
1,219,446 |
13.1 |
1,386,258 |
13.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産)
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べ1,188,331千円増加し、13,286,432千円となりました。これは主に、現金及び預金が増加(前事業年度末比935,598千円増)したこと並びに売掛金が増加(同171,092千円増)したことによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べ322,094千円増加し、659,994千円となりました。これは主に、投資その他の資産が増加(同289,406千円増)したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の流動負債は、前事業年度末に比べ113,559千円増加し、2,223,509千円となりました。これは主に、未払法人税等が減少(前事業年度末比165,499千円減)した一方で、未払金が増加(同129,719千円増)したこと、未払費用が増加(同73,920千円増)したこと、前受金が増加(同32,884千円増)したこと並びに返金負債が増加(同27,520千円増)したことによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べ6,428千円減少し、33,900千円となりました。これは、リース債務が増加(同5,687千円増)した一方で、長期借入金が減少(同12,116千円減)したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ1,403,294千円増加し、11,689,017千円となりました。これは全て、利益剰余金の増加によるものであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当事業年度の売上高は10,334,097千円となり、前事業年度に比べ1,045,517千円の増加となりました。これは主に、電子書籍の販売体制強化等により電子書籍売上が大幅に伸長したことによるものであります。
(営業利益)
当事業年度の営業利益は2,272,181千円となり、前事業年度に比べ145,079千円の減少となりました。これは主に、売上高の増収効果はあったものの、期初に計画していた「印税率の改定」及び「人材・設備の拡充」といった事業基盤強化を目的とした成長投資を実施したことや紙書籍の製本コストが増加していること等から利益率が低下したことによるものであります。
(当期純利益)
当事業年度の当期純利益は1,403,294千円となり、前事業年度に比べ102,979千円の減少となりました。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性について
当社の運転資金需要のうち主なものは、出版事業に係わる製造費(印刷費、印税など含む。)、販売費及び一般管理費等の営業費であります。投資を目的とした資金需要は、当社ビジネスモデルの基幹となる投稿サイトに対する開発費となります。
当社は、運転資金及び投資を目的とした資金につきましては、内部資金または借り入れにより資金調達することとしております。
なお、当事業年度末における借入金の残高は、38,799千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、9,707,339千円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
当社は、紙書籍に関する取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)との取引業務(書籍の販売・流通業務)は全て中取次(出版社と取次の間をつなぐ流通業者)である株式会社星雲社を介して行っております。また、同社に対する債権を保全する目的で債権譲渡に関する登記を行っております。
また、当社は、電子書籍の配信業務に関して、取次との配信契約を締結しております。
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相手会社の名称 |
契約の名称 |
契約期間 |
契約内容 |
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株式会社星雲社 |
出版物販売流通 業務委託契約 |
2002年7月29日から2年間 (以後1年ごとの自動更新) |
書籍の販売・流通業務の委託 |
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株式会社星雲社 |
債権譲渡担保契約 |
2023年12月14日から 2028年12月31日まで |
債権譲渡登記 |
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株式会社出版デジタル機構 (現、株式会社メディアドゥ) |
取次基本契約 |
2010年11月1日から 2012年10月31日まで (以後1年ごとの自動更新) |
書籍の配信業務の基本契約 |
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株式会社出版デジタル機構 (現、株式会社メディアドゥ) |
電子書籍配信契約 |
2010年11月1日から 2012年10月31日まで (以後1年ごとの自動更新) |
書籍の配信業務の委託 |
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株式会社メディアドゥ |
電子書籍取次契約 |
2016年2月1日から 2017年1月31日まで (以後1年ごとの自動更新) |
書籍の配信業務の委託 |
(注)株式会社出版デジタル機構と株式会社メディアドゥは2019年3月1日をもって合併し、株式会社出版デジタル機構は株式会社メディアドゥに社名を変更しております。
該当事項はありません。