第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「百術不及一誠」を社是としております。これは“百術は一誠に及ばず”と読み、どんなに小細工を弄しても真心にはかなわない、という意味です。全てのお客様に誠心誠意で接することが大切だということを教えている言葉で、この方針に基づきお客様の最善の利益を追求することにより、お客様とともに発展し続ける企業を目指しております。

経営理念としては「独立独歩」「進取の気性」「百尺竿頭進一歩」を掲げております。特色ある路線を歩み、そして常に未来を見据えて未来を先取りし続けたい、そのためには百尺もある高い竿の先まで登り、必要とあらばなおそこから思い切って一歩を踏み出す勇気を持ちたい、そういう経営があってこそ初めて、お客様に選ばれる証券会社であり続けられる、ひいては日本の資本市場を牽引し、国民経済に寄与することができると考えております。

 

(2) 経営環境及び中長期的な経営戦略

当社を取り巻く経営環境は、オンライン証券会社を中心とした手数料の引下げや無料化等の動きが広がっており、対面営業の強みを活かし、競合他社との差別化を図ることがこれまで以上に求められる状況となっております。一方で、「資産運用立国」の実現が掲げられるなか、証券業は社会的なインフラとしての役割を担いつつあります。NISA制度の普及を背景に、資産形成や資産管理の重要性が広く認識されるようになり、証券投資は国民にとってより身近なものとなっています。その流れは当社の顧客基盤の拡大にとって追い風となることが期待されます。

このような状況のもと、中長期的な経営戦略として「収益構造の変革」「預り資産の増加」「対面営業の強み」「システムの自社運営」「持続可能な社会への取組み」の5点に注力し、企業価値の一層の向上を図ってまいります。

「収益構造の変革」については、投資信託の預り資産を増加させストックからの収益を増やすことで、株式市況に左右されにくい収益基盤の確立を図ります。「預り資産の増加」については、預り資産の増加がお客様の満足度向上と当社の収益拡大に結びつくことを当社としての共通認識とします。「対面営業の強み」については、いつでも相談に行ける・会いに来てくれる地域に根差しお客様に寄り添う証券会社として、多様な商品・サービス、高度な情報提供及びきめ細やかなアフターフォローにより他社との差別化を図ります。「システムの自社運営」については、自社で開発・運営するシステムによりお客様のニーズに迅速に対応することで、お客様の満足度のさらなる向上につなげます。「持続可能な社会への取組み」については、当社が定めるサステナビリティにおける重点項目に取り組むことで持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ります。

 

(3) 優先的に対処すべき課題及び経営指標

当社は、前述の社是及び経営理念を基に、対面営業の強みを活かし他社との差別化を図ることを常に考慮し、企業価値を一層向上させるため、「旧収益構造からの脱出」「預り資産の倍増」「人的資本への投資」の3点を優先的に対処すべき課題だと認識し、以下のとおり経営指標を定めております。

 

① 旧収益構造からの脱出

投資信託の預り資産を増加させストックからの収益を増やすことで、株式市況に左右されにくい収益基盤の確立を図ってまいります。そのために、以下の算式により算出する受益証券による経費カバー率を新たに経営指標として定め、中期的に36%超(長期的には50%超)とすることを目指してまいります。なお、受益証券による受入手数料には、投資信託の募集手数料やその信託報酬等が含まれます。

受益証券による経費カバー率

受益証券による受入手数料

販売費・一般管理費

 

当事業年度の受益証券による経費カバー率は27.7%(前事業年度は28.9%)となりました。

また、ストック収益となるような商品・サービスを常に模索し、それらに積極的に取り組んでまいります。

 

 

② 預り資産の倍増

「預り資産の増加が、お客様の満足度向上と収益の拡大に結びつく」ことを当社としての共通認識とし、2022年3月期末を基準に2032年3月期末までの10年間で預り資産をおよそ倍増させることを目指してまいります。なお、そのためには「新たなお客様の獲得」「お客様の新規資金による投資」「お客様満足度の向上」が必要不可欠であると認識しております。「新たなお客様の獲得」にあたっては、経営指標として掲げる5年間で15,000口座(単年度では3,000口座)以上の新たなお客様の獲得を目指してまいります。また、自社開発のシステムやデータを活用してお客様の利便性を高めるとともに効率的かつ積極的な営業活動を推進し、競争力を高めてまいります。「お客様の新規資金による投資」及び「お客様満足度の向上」にあたっては、お客様に選ばれる証券会社であり続けられるよう、当社調査部門が作成する「Imamura Report」をはじめとするレポート等を活用して質の高い情報の提供を図ります。また、定時定額で買い付ける積立投資やゴールベースアプローチ型ラップサービス、M&A支援、税理士相談サービスのほか、地方証券会社連携コンソーシアムにおける地方創生に資するための取組み等、新たな商品・サービスを充実させ、他社との差別化を図り、地域密着型の地方証券会社としての付加価値の向上を図ってまいります。そのほか、引き続きお客様本位の業務運営を徹底し、お客様からのより一層の信頼向上に努めてまいります。

 

③ 人的資本への投資

当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、役職員を増加させることが必要不可欠であると認識しており、その目標として、2030年3月期末までに役職員(非常勤を除く)250名体制を目指してまいります。そのために、人的資本への投資を積極的に実施し、従業員エンゲージメントの向上と優秀な人材の確保を図ってまいります。

従業員エンゲージメントの向上としては、社員一人ひとりが自発的に能力開発を行うことで成長し続けられる社内環境の整備に努めます。具体的には、ファイナンシャルプランナー(FP)をはじめとする資格の取得や、所属する部門で求められる専門的な教育・研修等の機会を積極的に提供します。同時に、全ての社員に対して役職に応じた知識の習得及び経験の蓄積を促進してまいります。

また、全国的な賃上げの動きも考慮し、2025年4月には、当社の成長を牽引する優秀な人材を確保するため、前年に引き続き新卒初任給の引上げを実施いたしました。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社は、サステナビリティに関する課題への対応が持続的な成長と中長期的な企業価値向上にとって重要であるという認識のもと、最終責任者を代表取締役社長とし、取締役会で「サステナビリティに関する基本方針」において「サステナビリティにおける重点項目」を定め、各関連部署においてこれらの課題に積極的・能動的に取り組むこととしております。取組状況は、重点項目毎に必要に応じて幹部会や取締役会で報告されております。なお、当社の幹部会は、常勤取締役及び各部長で構成されており、会社の適時的確な運営を行うために必要な報告、協議を行う会議体であります。

 

(2) 戦略

当社が独自に定めるサステナビリティにおける重点項目毎の具体的な取組みは以下のとおりであります。

 

サステナビリティに関する重点項目

SDGsの該当項目

具体的な取組み

ビジネスに関する取組み

証券投資の普及と裾野の拡大


・新たなお客様の開拓

・高校、大学での金融リテラシー教育等の実施

中長期的な資産形成のサポート


・お客様本位の業務運営

・NISAつみたて投資枠、投信積立及びゴールベースアプローチ型ラップサービス「未来設計」の推進

SDGsへの資金供給


・SDGs関連の投資信託等の取扱い

・北陸みらい応援ファンドの取扱い

地方創生


・株主コミュニティの運営

・地方証券会社連携コンソーシアムの設立及び会員の拡大

・企業のビジネスマッチングの仲介

・VI-1号投資事業有限責任組合への出資

・ほくりくスタートアップコミュニティ投資事業有限責任組合への出資

・北陸みらい応援ファンドの取扱い

経営基盤に関する取組み

環境保全・環境配慮


・敦賀支店のZEB Ready取得

・本支店の照明をLED化

・グリーンボンドへの投資

・カーボンニュートラル電力推進サービスの利用

安心安全な暮らし


・防犯ブザープレゼントキャンペーンへの協賛

・こども未来古本募金への参加

・こどもサポート証券ネットへの参加

・東日本大震災復興支援義援金セミナーへの協賛

・地元活性化の産学連携ソーシャルプロジェクトへの参加

・小学生の社会科見学受入れ

・能登半島地震災害義援金の寄附

・石川県立いしかわ特別支援学校の職場体験受入れ

働きやすい環境づくり


・人間ドックの受診促進(費用補助)

・有給休暇の取得促進

・育児・介護休業休暇制度の整備

・ハラスメント防止研修の実施

・従業員研修の充実

・資格試験費用の補助

・従業員満足度調査の実施

・女性営業員の意見交換会開催

・時差出勤制度の導入

・人事評価制度の整備

 

 

なお、当社は個々の役職員の持つ多様性を認め、個性を活かし個々の能力が発揮できる会社を目指しており、人材の多様性の確保を含む採用に関する方針、人材育成方針及び社内環境整備方針を以下のとおり定めております。

① 採用に関する方針

当社は、採用に当たり、主体性と自主性を持って行動できるとともに、幅広い視野を有し、時代の変化に柔軟に対応し得る多様な人材の採用に努めます。その際、性別はもちろん、学部や専攻も問いません。また、定期的な新卒採用を中心にキャリア採用も併用します。当社は、「百術不及一誠」を社是、「独立独歩」「進取の気性」「百尺竿頭進一歩」を経営理念とし、持続的に成長する企業を目指しています。この社是や経営理念は、そのまま社員一人ひとりの行動指針にも通じ、採用において当社が求める人材像も同様です。「誠心誠意」で接し、「自ら考え、自ら行動する」「未来を見据え、新たなチャレンジを行う」「思い切って一歩を踏み出す」ことが出来る人を求めます。

② 人材育成方針

当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためには、お客様本位の業務運営の推進に向けて役職員一人ひとりが自発的に能力開発に取り組み、各々が成長し続けることが必要不可欠であると考えます。そのためにも集合研修やOJTを通してスキルアップや能力開発を図るとともに、役職員が主体的に能力開発に取り組めるよう学習機会を提供します。また、日常的な業務にとどまらず、売買制度、決済制度、税制改正等の制度対応や新商品の導入等とこれらに伴う社内システムの構築に関する全社横断的なプロジェクトへの参画を通じて役職員の能力の向上を図ります。

③ 社内環境整備方針

当社は、役職員が仕事と育児・介護を両立し活躍し続けるための環境整備を行い、各種制度の利用推進を図ります。また、全ての役職員が心身ともに健康で働き続けられるよう、役職員の健康保持を支援するとともに、ハラスメント対策を実施し、あらゆるハラスメントの防止に取り組みます。その他、公平な人事制度の設計及び運用により、公正な評価・処遇を実現します。

 

また、当社は、役職員の心身の健康のみならず経済的な安定を支援する取組み(ファイナンシャル・ウェルネス)として、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度、従業員持株制度、社内預金制度及び社内融資制度を導入しております。そのほか、金融商品取引業を営む当社の役職員は、業務の一環として資産形成に関して様々な教育・研修等を受け、知識の習得を図っております。

 

(3) リスク管理

当社において、サステナビリティに関するリスクの識別や評価等は、全社的なリスク管理と同様に「リスク管理規程」等に基づき行われ、識別されたリスクについては幹部会の協議を経て戦略や計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。

また、サステナビリティに関する機会につきましては、各関連部署において識別や評価等が行われております。機会の獲得については幹部会の協議を経て戦略や計画に反映され、取締役会へ報告、監督されます。

 

(4) 指標及び目標

当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む採用に関する方針及び人材育成方針並びに社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

総合職の新卒採用における
女性の割合

2027年3月31日まで35.0以上

55.6

管理職に占める女性労働者の割合

2027年3月31日まで20.0以上

13.8

男性労働者の育児休業取得率

2027年3月31日まで50.0以上

100.0

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当社では、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性等に応じて、「特に重要なリスク」「重要なリスク」に分類しております。

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

<特に重要なリスク>

(1) 市場の縮小に伴うリスクについて

株式相場の下落又は低迷により流通市場の市場参加者が減少し株券等の売買高が縮小する場合には、委託手数料が減少する可能性があります。また、株式相場の下落又は低迷により投資信託等の販売額が縮小し、募集等に係る手数料が減少する等、同様の影響を受ける可能性があります。このような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。株式相場の下落又は低迷の時期を予想することは困難であり、その期間についても同様であります。当社は、株式以外での収益を高めることで、当リスクの軽減を図っております。

 

(2) 競合によるリスクについて

規制緩和に伴う銀行等との競合、異業種からの参入、競合他社同士の合併・業務提携等により競合他社との競争が激化しております。当社が競争力を維持できない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は取扱商品の豊富な品揃え、インターネット取引の自営、お客様から信頼される営業員の育成等、競争力の維持・向上に努めており、当リスクの顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(3) 収益基盤に関するリスクについて

当社の主たるお客様は、個人投資家であります。このため、個人投資家の投資行動の変化が業績に影響する可能性があります。個人投資家の投資行動の変化は、年齢、相場環境、景気動向、税制の変更等様々であります。当社は、新たなお客様の獲得に注力して収益基盤の拡大を図っており、当リスクの顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(4) 固定資産の減損について

当社は、全ての本支店の土地・建物を保有し、固定資産のグルーピングを店舗単位で行っております。これらの中には市場価格が著しく下落しているものがあり、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなる可能性があります。「固定資産の減損に係る会計基準」に規定される減損損失を認識するに至った場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<重要なリスク>

(1) 主要な事業活動の前提となる事項について

当社は、金融商品取引業を営むため、金融商品取引法に基づく「第一種金融商品取引業」及び「投資助言・代理業」の登録を内閣総理大臣より受けております。金融商品取引業者は、金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し、法令又は法令に基づく規定に違反した時は、登録又は認可の取消し、一定期間の業務停止又は何らかの改善命令を受ける可能性がありますが、当事業年度末時点では、法令違反等による業務改善命令や業務停止命令等の行政処分に該当する事実はないと認識しております。当社は、法令遵守を重視した運営を行っており、登録等の取消しに至る事態が発生する可能性は低いと思われますが、事業内容が単一セグメントであることから、将来何らかの事由により登録等の取消しを命じられた場合には、当社の経営成績、財政状態並びに企業の継続に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 自己資本規制比率について

金融商品取引業者には、金融商品取引法及び金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、自己資本規制比率維持の規制が課されており、同比率に関し120%を下回ることのないようにする必要がありますが、当事業年度末時点では、当社において同比率が120%を下回る事実はないと認識しております。当社は、市場リスク相当額に上限を設けるとともに、同比率を営業日毎に算出して200%を下回らない運営を行っていることから、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われますが、将来何らかの事由により定められた自己資本規制比率を維持できない場合は、業務停止や金融商品取引業者の登録の取消しを命じられる可能性があります。また、経営環境の悪化による損失計上等の要因により自己資本規制比率が著しく低下した場合には、比率を維持する観点から積極的にリスクをとり収益を追求することが困難となり、収益機会を逸する可能性が高まります。その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 市場リスクについて

当社は、自己の計算において、株価・債券価格・金利・為替その他市場価格等の変動に伴うリスクを内包した金融資産を保有しております。それらの市場価格が急激に変動した場合に損失が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社ではリスク管理を徹底しており、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(4) 取引先又は発行体の信用力悪化に伴うリスクについて

当社の取引先が決済を含む債務不履行に陥った場合、また、当社が保有する有価証券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合には、元本の毀損や利払いの遅延等により損失を被り、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、取引先が債務不履行となることのないよう社内規程によりリスクの軽減を図り、商品有価証券については、保有期間を短くしてリスクの軽減を図っており、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(5) 業務処理におけるリスクについて

当社では、各種規程の整備やコンプライアンス体制の整備強化に努めておりますが、事務処理プロセスで発生する事務ミス、事故、又は不正等により損失が発生する可能性があります。また、このような事により、社会的信用が低下する等、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、事務ミス、事故、又は不正等の発生を抑止するための各種統制を実施しており、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(6) システムに関するリスクについて

当社が業務上使用するコンピュータ・システムや通信回線にハードウエアの不具合、ソフトウエアの不具合、人為的ミス、不正アクセス、災害、停電等の諸要因により障害が発生した場合、障害規模によっては当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社が使用しているコンピュータ・システムや通信回線は原則として冗長化構成とし、使用しているソフトウエアについては、使用開始前に必ずテストを実施して不具合の発生を予防しております。また、人為的ミスや不正アクセスについては、監視機能の充実を図り、災害・停電等については訓練を実施して備えております。このような対策により、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(7) 風評リスクについて

当社の事業は、法人、個人のお客様からの信用に大きく依存しています。当社役職員に起因する法令違反や訴訟等が発生した場合には、当社の社会的信用が低下する可能性があります。また、憶測や事実に基づかない風説等が流布された場合、その内容の正確性に関わらず、当社の社会的信用が低下する可能性もあります。その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、インターネット上で当社に関する事実に基づかない書込み等の発見に努めており、当リスクの顕在化する可能性は低いと思われます。

 

(8) 法令遵守に関するリスクについて

当社は、法令遵守に係る問題について内部統制の整備を図り、より充実した内部管理体制の確立と役職員の教育・研修等を通じて意識の徹底に努めております。しかしながら、価格変動商品を扱っている業務の特殊性から、そのプロセスに関与する役職員の故意又は過失により法令に違反する行為がなされる可能性があります。このような場合には、訴訟等を提起され、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすような損害賠償を求められる事案が生じる可能性があります。当社は、苦情・相談のための専用窓口を設置するとともに、通話のモニタリングに努めて法令違反行為の抑止及び早期発見を図っており、当リスクの発生頻度は低いと思われます。なお、当事業年度末時点において、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のある訴訟等はありません。

 

(9) 情報セキュリティに関するリスクについて

当社は、個人データの安全管理に係る取扱規程を整備し管理には万全を期しておりますが、サイバー攻撃によるウイルス・マルウエア感染及び不正アクセス等並びに故意又は過失により、万一、基幹システムの停止や情報が外部に漏洩した場合には、賠償金の発生や社会的信用が失墜すること等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は、ウイルス・マルウエア感染や不正アクセス等の対策を実施しておりますが、日々状況が変化しており完全に回避することは困難なため、発生に備えた訓練を実施する等の対応を行っております。また、故意・過失による流出についても技術的な対策を行うとともに、全役職員を対象とした情報セキュリティ研修を実施して啓蒙を図っております。これまでのところ被害は確認されておりませんが、依然として世界的にサイバー攻撃は増加しており、細心の注意を払っているもののリスクは増大傾向にあると認識しております。

 

(10) 災害等に関するリスクについて

自然災害の発生や感染症の流行等により事業の縮小を余儀なくされた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社の営業基盤は北陸地区を主力としており、この地区のインフラが麻痺するような場合には、その影響はより大きくなります。当リスクの発生可能性を予測することは困難ですが、自然災害に備えて業務継続に必須であるコンピュータ・システムを堅牢なデータセンターに設置する等の対策を行っており、当リスクが顕在化する可能性は低いと思われます。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

なお、当社の事業は投資・金融サービス業という単一セグメントであるため、セグメントごとの分析については記載を省略しております。

 

(1) 財政状態の分析

① 資産

当事業年度末における総資産は前事業年度末に比べ22億32百万円減少し、197億10百万円となりました。

募集等払込金が3億26百万円増加し、現金・預金が19億99百万円、預託金が5億62百万円、信用取引資産が1億27百万円それぞれ減少したこと等により流動資産は23億4百万円減少し、148億32百万円となりました。投資その他の資産が1億60百万円増加し、有形固定資産が99百万円減少したこと等により固定資産は72百万円増加し、48億78百万円となりました。

② 負債

信用取引負債が7億28百万円、受入保証金が6億5百万円、預り金が4億72百万円、未払法人税等が2億9百万円、未払金が1億94百万円、役員退職慰労引当金が71百万円、繰延税金負債が29百万円それぞれ減少したこと等により負債合計は23億87百万円減少し、76億17百万円となりました。

③ 純資産

利益剰余金が2億74百万円増加し、その他有価証券評価差額金が1億19百万円減少したことにより純資産は1億55百万円増加し、120億92百万円となりました。

 

当社は、金融機関等からの借入れは、信用取引にかかる借入れ及び一時的な資金繰りに必要な借入れを除いて行わない方針であります。信用取引でのお客様への金銭等の貸付は、証券金融会社から借り入れるほか、自己資金を充てています。固定資産の取得についても自己資金で賄っております。当事業年度は大型の設備投資はなく、有形固定資産が99百万円の減少(前事業年度は、1億30百万円の減少)となりました。一方、投資有価証券の取得等により投資その他の資産が1億60百万円の増加(前事業年度は、6億87百万円の増加)となり、その結果、固定資産は72百万円の増加(前事業年度は、5億57百万円の増加)となっております。

また、利益剰余金の増加及びその他有価証券評価差額金の減少により純資産は120億92百万円となりました。

 

(2) 経営成績の分析

当事業年度における我が国経済は、物価の継続的な上昇が個人消費に及ぼす影響や米国の通商政策をはじめとする政策変更等、景気を下押しするリスクがある一方、国内の雇用や所得環境が改善し、景気は緩やかに回復しました。

国内の株式市場において、40,646円で始まった4月の日経平均株価は、中東情勢の緊迫化を受けて下落しその後も上値の重い展開が続きましたが、外国為替市場で1ドル=161円90銭台の安値を付けたこと等から日経平均株価は大幅に上昇し、7月11日に史上最高値となる42,426円を付けました。しかし、日本銀行が金融政策決定会合で政策金利の引上げを決定する中、年内の追加利上げの可能性を否定しなかったことから円高・ドル安が進行し、それを受けて日経平均株価は連日で急落しました。8月5日には過去最大の下げ幅を記録し、31,156円の安値を付けました。反発後は39,000円を付ける場面も見られたものの勢いは続かず、35,000円台まで値を下げました。その後、自民党総裁選への期待から日経平均株価は節目となる40,000円目前まで上昇しましたが、当初の市場予想とは異なり石破茂氏が自民党総裁に就任し、経済政策に対する警戒感が強まったことから下落に転じました。しかし下値は限定的で、10月に入ると、堅調な米雇用統計を受けてリスクオン姿勢が強まり、日経平均株価は3カ月ぶりに40,000円を一時回復しました。その後、国内では衆議院選挙での与党の過半数割れや、国外では第二次トランプ政権の誕生といった大きなイベントが続きましたが、日経平均株価は38,000円割れから40,000円前後のレンジで上下を繰り返す展開が続きました。しかし、2月下旬以降はトランプ米大統領による関税引上げへの警戒感から日経平均株価は下値を切下げる動きが続き、3月11日には6カ月ぶりに36,000円を割りこみ、その後も軟調な展開が続きました。トランプ政権の政策による影響で米国をはじめとする世界経済が減速するとの懸念が強まると、3月31日には前週末比で1,500円以上値下がりし、35,617円で当事業年度を終えました。

 

このような状況の中、当社は地域密着型の対面営業を行う証券会社として、株式営業や債券販売、投資信託販売を中心に営業を展開しました。株式営業においては、「情報シャトル特急便」、「Imamura Report」等当社作成の情報誌や専門調査機関の作成するレポートを活用した投資情報の提供のほか、資産形成に関するセミナーの開催等、お客様のニーズにお応えする提案・サポート等を積極的に行いました。また、12月には株式会社リスキルのIPOに引受証券会社として参加しました。債券販売においては、米ドル建て社債の販売に注力したほか、福井県債や北陸電力社債、石川県債も取り扱いました。投資信託販売においては、新たに取扱いを開始した「ニッセイ・円建てグローバル社債/バランスファンド2024-09」等の販売が好調となりました。また、投資助言・代理業として4月よりゴールベースアプローチ型ラップサービス「未来設計」の取扱いを開始し、お客様一人ひとりに寄り添った長期的なライフプランの実現をサポートするべく販売に注力しました。

当社は、システムの開発から運用まで全てを自社で行う「システムの独立」を経営理念の一つとしておりますが、当事業年度においても、システムの開発を行い、お客様ご自身が保有資産をオンラインで照会いただけるお客様向けポータルサイト「iPortal」を新たなサービスとして開始しました。これにより、お客様はいつでも、どこでも、ご自身で保有資産をご確認いただけるようになりました。当社社員におきましても、お客様からの保有資産照会に関するお問合せが減少することで、より多くの時間をお客様へのフォローアップに費やすことができ、また、今後は更なるサービスの充実が図れるようになります。さらに、本年1月より、取引報告書をお客様のiPortalにてご確認いただける電子交付サービスの提供を開始し、お取引内容をその日のうちにご確認いただけるようになりました。当社におきましても、取引報告書の郵便が減少することで紙資源やコストの削減が見込まれます。また、業務の効率化を図るとともに、よりきめ細かいサポートを目指し、各営業員のパソコンやタブレット端末で利用できる新たな営業活動支援システムの運用を開始しました。その他、昨年11月からの東京証券取引所の取引時間延長につきましても、自社でシステムを開発し、対応しております。

また、2023年5月に設立した地方証券会社連携コンソーシアムにおける取組みが、令和6年度「地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」に選定され、本年3月に内閣府特命担当大臣(地方創生担当)より表彰いただきました。地方から数多くの新規上場企業が輩出されることを目指し、地域密着型の地方証券会社として本取組みにも注力してまいります。

その結果、当事業年度の営業収益は41億86百万円前年同期比13.1%減)、純営業収益は41億70百万円同13.0%減)、経常利益は10億18百万円同32.3%減)、当期純利益は7億60百万円同24.7%減)となりました。

当事業年度における主な収益及び費用の状況は次のとおりであります。

① 受入手数料

当事業年度の受入手数料の合計は36億85百万円前年同期比17.0%減)となりました。その内訳は次のとおりであります。

イ 委託手数料

株券に係る委託手数料は26億92百万円(同8.6%減)となり、受益証券を含めた委託手数料の合計は27億33百万円同7.8%減)となりました。

ロ 引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は2百万円同99.5%減)となりました。

ハ 募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は5億29百万円同21.6%減)となりました。

ニ その他の受入手数料

その他の受入手数料は4億19百万円同20.9%増)となりました。

② トレーディング損益

トレーディング損益は4億41百万円(前年同期比33.7%増)となりました。

③ 金融収支

金融収益が59百万円前年同期比31.2%増)、金融費用が15百万円同23.0%減)となった結果、差し引き金融収支は43百万円(同74.7%増)となりました。

④ 販売費・一般管理費

販売費・一般管理費は31億84百万円前年同期比4.1%減)となりました。

⑤ 営業外損益

営業外収益は、受取配当金等54百万円前年同期比38.4%増)、営業外費用は、為替差損等22百万円(同91.1%増)となりました。

⑥ 特別損益

特別利益は、投資有価証券売却益88百万円(前年同期の計上はなし)、特別損失は、投資有価証券売却損等13百万円(前年同期比8.5%増)となりました。

 

当事業年度の受入手数料の合計は36億85百万円(前年同期比17.0%減)で、その商品別内訳は、株券26億98百万円(同8.5%減)、債券1百万円(同99.7%減)、受益証券9億9百万円(同7.0%減)、その他75百万円(同27.1%増)であります。当事業年度は、第1四半期累計期間まで仕組債の販売を行っていた前事業年度に比べ債券部門の受入手数料が大幅に減少しました。また、仕組債の償還金により投資信託の販売が大幅に増加した前事業年度に比べ受益証券部門の受入手数料も減少しました。その結果、当社が経営指標として新たに定める「受益証券による経費カバー率」は27.7%(前事業年度は28.9%)となりました。目標とする2029年3月期までに36%超の達成を目指し、引き続き、株式市況に左右されにくい収益基盤の確立を図ってまいります。なお、米ドル建て社債等の販売に注力した結果、当事業年度のトレーディング損益は前事業年度に比べ増加し4億41百万円(同33.7%増)となりました。

また、当社は経営戦略の一つとして「新たなお客様の獲得」を掲げ、その指標として5年間で15,000口座の新たなお客様の獲得を目指し、単年度においては3,000口座以上の獲得を目標としております。当事業年度は、3,926口座(前事業年度は4,440口座)となり目標を30.9%上回りました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

当事業年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、期首残高に比べ19億99百万円減少し、61億96百万円となりました。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、11億84百万円の資金減少(前事業年度は、20億25百万円の資金増加)となりました。これは、税引前当期純利益10億92百万円、減価償却費1億39百万円を計上したことに加え、顧客分別金信託の減少5億70百万円、信用取引資産の減少1億27百万円等により資金が増加する一方、信用取引負債の減少7億28百万円、受入保証金の減少6億5百万円、預り金の減少4億72百万円、募集等払込金の増加3億26百万円、未払金の減少1億91百万円、役員退職慰労引当金の減少71百万円、法人税等の支払額5億23百万円等により資金が減少した結果であります。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出3億45百万円、投資有価証券の売却による収入94百万円等により3億5百万円の資金減少(前事業年度は、3億6百万円の資金減少)となりました。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額により4億85百万円の資金減少(前事業年度は、3億98百万円の資金減少)となりました。

 

当事業年度において、当社の主要顧客である個人投資家の取引は低調となり減収減益となりました。その結果、税引前当期純利益を計上したことに加え、顧客分別金信託の減少等により資金が増加した一方で、信用取引負債の減少、受入保証金の減少、預り金の減少等により資金が減少したことから、営業活動によるキャッシュ・フローは11億84百万円の資金減少(前事業年度は20億25百万円の資金増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、自己資金での投資有価証券の取得による支出が前事業年度に比べ増加したものの、前事業年度にはなかった投資有価証券の売却による収入があったこと等により、資金減少額は3億5百万円となり、前事業年度と比較し僅かに縮小しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前事業年度の期末配当金を1株当たり70円と倍増したことに加え、当事業年度より中間配当金を実施したため、資金減少額は4億85百万円となり、前事業年度と比較し拡大しました。

 

これらの結果、当事業年度末の資金は期首に比べ減少し61億96百万円となり、依然として高水準を維持しております。また、当社では資金を手許現金や要求払預金等とし、十分な流動性を確保しております。

なお、現時点においては、重要な資本的支出の予定はありません。

当社の業績は経済情勢及び市場環境の変動による影響を大きく受けることから、将来に対する予測が困難であります。そのような状況のもと、当社は、今後の事業展開の資金需要及び一時的な業績不振に陥った場合にも柔軟な営業戦略の推進を維持できるよう備えるとともに、株主の皆様への継続的かつ安定的な利益還元を目指してまいります。

 

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積り及び仮定の設定を必要とします。経営者は、過去の実績やそれぞれの状況等を勘案し合理的と考えられる仮定を用いて見積りを行っておりますが、見積り及び仮定については特有の不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。