第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、“「プロフェッショナル・テック」で、次の常識をつくる”をミッションとして、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」および税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」等を通じたインターネットメディアの運営、ならびに契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」をはじめとしたIT・ソリューションサービスの提供を行ってまいりました。また、2024年5月1日付で弁護士向けデジタル文書整理ツール「弁護革命」を提供する株式会社弁護革命の株式を取得しております。加えて、2024年6月12日に公表しましたとおり、子会社である株式会社弁護革命を2024年8月1日に当社を存続会社とする吸収合併を行っております。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループは、今後、中長期的な企業の成長のための経営戦略を実行し、経営理念を実現するため、以下のような課題に対処してまいります。

① 収益基盤の強化および事業領域の拡大

当社グループは「弁護士ドットコム」における弁護士支援サービスおよび有料会員サービスによる収益を中心として収益基盤を構築してまいりましたが、今後の成長のために更なる収益基盤の強化と事業領域の拡大が課題であると認識しております。

この課題に対応するため、「弁護士ドットコム」の運営においては、継続的にサイトのコンテンツの拡充およびユーザビリティの向上を実施し、認知度の向上および顧客基盤の拡大を実現することで、広く社会からインターネットを通じた弁護士へのアクセスをより容易とし、顕在・潜在する法的トラブルの解決および予防に貢献する、価値の高い法律相談ポータルサイトへと成長させ、サイト利用者である一般ユーザーおよび弁護士の更なる支持を獲得し、収益の拡大を図ってまいります。

同時に、税理士をはじめとした弁護士以外の専門家についても、「弁護士ドットコム」の運営を通じて得たノウハウを活用し、インターネットを通じて、専門家へのアクセスをより容易とし、一般ユーザーが抱えている課題の解決に貢献する、価値の高いサービスを積極的に展開することで事業領域の拡大を図ってまいります。

また、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」については、ユーザビリティの向上、認知度の向上、および顧客基盤の拡大に努め、電子契約の普及・市場拡大に貢献することにより、企業および個人の生産性向上、コンプライアンスの強化を実現することで、収益の拡大を図ってまいります。

 

② システムの安定稼働およびセキュリティの強化

当社グループはインターネットメディア事業を展開しているため、サービス提供にかかるシステムの安定稼働およびセキュリティ管理が重要な課題であると認識しております。

この課題に対応するため、今後の事業拡大においてサービス利用者数が増加した場合も、環境の変化に対応したシステム保守管理体制を構築することで、システムの安定稼働および高度なセキュリティが維持されたサービス提供が可能となるように努めてまいります。

 

③ 優秀な人材の確保および組織体制の強化

当社グループは、今後の更なる事業拡大を目指すうえで、開発部門および営業部門等における優秀な人材の確保およびその人材の育成が重要な課題であると認識しております。

人材確保においては、積極的な中途採用活動を実施し、当社グループの経営理念に共感を持った早期に戦力化可能な人材の採用を行ってまいります。

人材の育成については、採用した人材のモチベーションを向上させる人事諸制度の構築を行うことで、最大限の実力を発揮できる組織体制の強化および最適な人員配置を実施してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、“「プロフェッショナル・テック」で、次の常識をつくる”をミッションに掲げ、持続可能な社会の実現に向けて、事業を通じた環境・社会課題の解決と社会の発展に貢献することで、持続的成長と企業価値向上の実現を目指しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、ミッションおよびサステナビリティに関する基本方針やそれを踏まえた経営方針などを効果的に実現し、中長期的な企業の価値向上を目指した経営を推進する基盤として、コーポレート・ガバナンス体制の構築とさらなる高度化に取り組んでおります。また、企業倫理・コンプライアンス・腐敗防止の徹底、プライバシー、情報セキュリティ等においても継続的な活動の改善、強化に取り組んでまいります。

 

(2)戦略

当社グループは、持続的な成長や事業価値の向上を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資源であると考えております。毎年積極的な採用を行い、多様性に富んだ優秀な人材を採用することで、事業の成長に取り組める人材の確保と継続的な雇用の創出に努めております。

従業員の働き方については、ライフステージの変化、多様化する価値観に合わせて、生産性高く働ける仕組みを整備しており、全ての人材が活躍できる環境を整えております。また働き方に合わせて、全社総会などの社内行事をハイブリッドで実施し、柔軟な働き方の提供と帰属意識醸成の両立を実現しております。

 

(3)リスク管理

当社グループは、経営戦略および事業戦略と連動して、重要なリスクへの対応力を高めるために必要な措置を講じております。当社グループでは事業運営に関し、顧客の重要な情報を保有しております。リスクの中でも、特に情報セキュリティリスクを重視しており、定期的にリスクの分析・評価及びモニタリングを行うことで、リスクの低減を図っております。また、戦略的なリスクマネジメントを推進することで、企業価値を高めることに寄与しているものと考えております。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。

なお、当社グループでは、ESG方針及び人的資本に関する方針についての具体的な取り組みは行われておりますが、必ずしもすべての会社ですべての指標のデータ管理が行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、当社を対象に記載しております。

当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度)

女性管理職比率

2030年3月まで30.0

25.2

男性育児休業取得率

2030年3月まで継続的に

80.0%以上を維持すること

120.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項および本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
 なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 事業環境に係わるリスクについて

① 技術革新について(発生可能性:中、発生時期:中長期、影響度:大)

インターネット業界は、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが逐次産み出されている中、当社グループも技術革新および顧客ニーズの変化に対応するべく、積極的に最新の情報の蓄積、分析および当社グループサービスへの導入に取り組んでおります。しかしながら、技術革新において当社グループが予期しない急激な変化があり、その対応が遅れた場合には、当社グループのサービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります

 

② 競合について(発生可能性:中、発生時期:中長期、影響度:大)

当社グループが運営する主力サイト「弁護士ドットコム」では、インターネットを通じた弁護士への支援サービスを提供しており、サービスの確立および今後の成長には弁護士業界からの支持が必要不可欠であります。当連結会計年度末現在、国内の全弁護士数45,569人(出所:日本弁護士連合会ホームページ「日弁連の会員2025年3月1日現在の会員数」)の62.2%にあたる28,344人の弁護士が当社グループサービスに会員登録していることが当社グループの市場優位性の基盤となり、競合他社が容易に参入し難い事業環境としておりますが、今後何らかの理由により当社グループが弁護士業界からの支持を失った場合、または当社グループ以外の競合他社が弁護士業界から一定の支持を受けた状態で同サービスに参入した場合は、競争激化により、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが運営する契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」では、「紙と印鑑」で行っている契約行為を、クラウド上で完結できるサービスを提供しており、サービスの確立および今後の成長には主に企業ユーザーからの支持が不可欠であります。当連結会計年度には契約送信件数が1,000万件を超えるなど、2015年の提供開始以来、多くの企業ユーザーに利用されていることが当社グループの市場優位性の基盤となり、競合他社が容易に拡大し難い事業環境としておりますが、今後何らかの理由により当社グループが企業ユーザーからの支持を失った場合、または当社グループ以外の競合他社が企業ユーザーから一定の支持を受けた場合は、競争激化により、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります

 

③ インターネット市場について(発生可能性:低、発生時期:中長期、影響度:大)

当社グループはメディア事業、IT・ソリューション事業を事業領域としており、インターネットのさらなる普及は当社グループの今後の成長にとって重要であります。2024年12月末時点の移動系通信の契約数は、2億2,147万回線(前期比1.2%増)と増加が続いており(出所:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和6年度第3四半期(12月末))」)、スマートフォンおよびタブレット端末や高速通信手段の普及が急速に進んでいくなど、インターネットの利用環境は年々改善されており、今後についても同様の傾向が続くと思われます。しかしながら、インターネット利用に関する新たな規制やその他予期せぬ要因により、インターネット利用環境が悪化し、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります

 

(2) 事業内容に係わるリスクについて

① 新規事業について(発生可能性:中、発生時期:中長期、影響度:中)

当社グループは、今後も事業内容の多様化や新規事業への取り組みを進めていく予定であり、これによる事業規模の拡大および収益力の向上に努めてまいりますが、これらの実現には、人材の採用、サービス・ソフトウエア開発費用等の追加的な支出が発生し、さらに、新規事業が目論見通りに推移しないことで、追加的な支出についての回収が行えず、当社グループの利益率が一時的に低下する可能性があります。

 

② サイト運営の健全性について(発生可能性:低、発生時期:中長期、影響度:大)

当社グループが運営する主力サイト「弁護士ドットコム」では、法的トラブルを抱えた一般ユーザーが、会員登録のうえ、無料法律相談サービス「みんなの法律相談」を通じて弁護士に匿名の法律相談をすることが可能です。また、「税理士ドットコム」では、税務の悩みを抱えた一般ユーザーは、会員登録をすることで、無料税務相談サービス「みんなの税務相談」を通じて税理士に匿名の税務相談をすることが可能です。

当社グループはサイト運営に関して利用規約をサイト上に明示し、一般ユーザーの適切な利用を促すよう努めており、「みんなの法律相談」および「みんなの税務相談」では、相談および回答内容の全件監視体制を構築していることから、利用規約で禁止されている、特定個人に対する誹謗中傷、個人情報および企業の名称、知的財産権を侵害する内容、公序良俗に反する内容等の不適切な投稿があった場合には当該相談および回答を削除するなど、健全なサイト運営を維持しております。

このような体制を構築しているにもかかわらず、不適切な投稿に対して当社グループが十分な対応ができない場合は、当社グループがサイト運営者として信頼を失う可能性があり、当グループ社の事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 固定資産の減損(発生可能性:中、発生時期:中長期、影響度:中)

 当社グループは、のれんやソフトウエア等の固定資産を有しておりますが、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。このため、当該資産又は資産グループの経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業運営体制について(発生可能性:低、発生時期:中長期、影響度:中)

当社グループは、今後の業容の拡大に伴い、継続的な人材の確保が必要となるため、優秀な人材を適切に確保するとともに、人材の育成に努めてまいります。しかしながら、人材の確保および育成が計画通りに進まなかった場合は、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システムリスクについて(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:大)

当社グループの事業はインターネット環境において行われており、サービスの安定供給のために適切なセキュリティ対策を施しております。しかし、ハードウエア・ソフトウエアの不具合、人為的なミス、コンピュータウィルス、第三者によるサーバーやシステムへのサイバー攻撃、自然災害等の予期せぬ事象の発生によって、当社グループの想定しないシステム障害等が発生した場合は、当社グループの事業活動に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 法的規制について

① 法的規制について(発生可能性:低、発生時期:中長期、影響度:大)

a インターネットにおける法的規制について

当社グループがインターネット上で運営している事業においては各種法的規制を受けており、当社グループが主に受ける規制の内容は以下の通りであります。

 

(a) 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)

当社グループは、同法における特定電気通信役務提供者として、特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害された場合に、権利を侵害した情報の送信を防止する措置を講じたり、損害賠償義務を負ったりする可能性があります。また、権利を侵害された者に対して、権利を侵害した情報を発信した者に関する情報の開示義務を課される場合があります。

 

(b) 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)

当社グループは、同法におけるアクセス管理者として、不正アクセス行為からの一定の防御措置を講ずる努力義務が課されております。

 

(c) 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

当社グループが、利用者に対し、広告や宣伝の手段として電子メールを送信する場合には、一定の事項を当該メール上に表示する義務等が課されております。

インターネット上のトラブル等への対応として、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されている状況にあるため、今後、インターネットの利用や関連するサービスおよびインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等による規制や既存法令等の解釈等が変更等された場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(d) 特定商取引に関する法律(特商法)

インターネットを介したサービス提供は特商法が規定する通信販売に該当するため、当社グループは、かかるサービスの提供に係る広告などにおいて法定の事項を表示し、特商法の遵守に努めております。しかしながら、今後、不測の事態などにより、万が一、特商法の規定に抵触しているとして当社グループが何らかの法的責任を問われた場合、また、今後、特商法の改正、解釈の変更、新たな規制法令の制定などが行われ、かかる変化に迅速に対応できない、または対応に要するコストが過大となるなどの事態に至った場合には、当社グループのサービスの信頼性やブランドが毀損され、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

b その他の法的規制について

(a) 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

当社グループの運営するサイトにおける広告などに該当する表記について、優良誤認表示や有利誤認表示等の不当な表示を行うことがないよう義務が課されておりますが、同法の内容または解釈等が変更された場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b) 弁護士法および同法の関連法規

当社グループは弁護士への支援サービスを提供しており、弁護士法、同法の関連法規、および各単位弁護士会の規則・ガイドラインを遵守する必要があります。例えば、弁護士法第72条において報酬を得る目的での弁護士に対する訴訟事件等の周旋は禁止されており、同サービスの運営においてはもちろん、新規事業を検討する際には適宜日本弁護士連合会等の所管組織に確認するなど、細心の注意を払った事業運営をしております。しかし、同法の内容または解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等の動向により、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c) 税理士法および同法の関連法規

当社グループは税理士への支援サービスを提供しており、税理士法、同法の関連法規、および規則・ガイドラインを遵守する必要があります。しかし、同法の内容または解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等の動向により、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報の管理について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:中)

当社グループは事業運営上個人情報を保有する場合があり、個人情報の管理は当社グループにとって極めて重要な責務となるため、厳重な顧客情報管理のルールに基づき十分なセキュリティ対策を施しております。しかし、当社グループの保有する個人情報が流出し不正に使用された場合、当社グループが責任を問われ社会的信頼を失うことで、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:中)

当社グループは運営事業に関わる知的財産権の適正な獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権を侵害することがないよう可能な限りの対策を施しております。しかし、当社グループが認識していない知的財産権が既に第三者に成立しており、これを侵害したことを理由として損害賠償請求や差止請求を受けた場合、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 訴訟について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:小)

本書提出日現在において、当社グループとして関与している当社グループの事業および業績に影響を及ぼす訴訟手続きはありません。しかし、今後の当社グループの事業展開の中で、第三者の権利・利益を侵害したとして損害賠償請求等の訴訟その他の法的手続が行われる可能性があり、その訴訟その他の法的手続の内容および結果、損害賠償の金額によっては、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他

① 投融資について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:中)

当社グループでは、成長戦略の一環として、国内外を問わず出資、M&A、合弁会社の設立、アライアンス等の投融資を実施する場合があります。投融資については、リスクおよび回収可能性を十分に事前評価し決定してまいりますが、投融資先の事業の状況が当社グループに与える影響を確実に予想することは困難な場合もあり、投融資額を回収できなかった場合や減損の対象となる事業が生じた場合には、当社グループの財政状態およびに経営成績影響を与える可能性があります。

 

② 配当政策について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:小)

当社グループは、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。株主への利益配分につきましては、経営の最重要課題のひとつと位置付けておりますが、現在は内部留保の充実に注力する方針であります。

将来的には、経営成績および財政状態を勘案しながら株主への利益配分を検討いたしますが、配当実施の可能性およびその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生時期:中長期、影響度:小)

当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(ストック・オプション等関係)のとおり、当社役員、従業員等に対して、新株予約権を付与しております。

これらの新株予約権が権利行使された場合は、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは今後も新株予約権の付与を行う可能性があり、この場合、さらに1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は306,000株であり、発行済株式総数22,595,200株の1.4%に相当しております。

 

④ Authenseグループとの関係について(発生可能性:低、発生時期:不明、影響度:小)

本書提出日現在において、弁護士法人Authense法律事務所、Authense Consulting株式会社、株式会社ユニバーサルスポーツジャパンおよびAuthense Holdings合同会社は、当社の代表取締役社長兼CEOである元榮太一郎が代表権を有し又は議決権の過半数を自己の計算において所有している法人です。また、Authense税理士法人およびAuthense社会保険労務士法人は、当社と出資関係はありませんが、元榮太一郎が重要な決議や業務執行に関与する法人であることから、関連当事者と判断しております。

当事業年度、当社は、弁護士法人Authense法律事務所との間で法律顧問契約を締結するとともに、定常的に発生する、士業を営む当社顧客(主に法律事務所や弁護士)に対する債権回収とメディア対応の業務を依頼しております。このような業務はその特殊性から依頼可能な法律事務所が限定されることから、今後も継続する方針であります。また、Authenseグループ各社との間で、クラウドサイン等の当社のサービスを一般取引先と同様の条件で提供しております。Authenseグループ各社との取引については、当該取引の事業上の必要性と取引条件の妥当性等取引内容について審議し、「関連当事者取引規程」に定められた承認を得ることとし、取引の健全性および適正性を確保する体制を構築しております。

なお、当事業年度のAuthenseグループとの取引のうち金額が大きい弁護士法人Authense法律事務所との取引については、クラウドサイン等の当社からのサービスの提供により57,925千円の売上を計上し、顧問料、債権回収およびメディア対応業務等の弁護士法人Authense法律事務所からのサービス提供により8,136千円の支払いが発生しております
 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 業績等の概要

① 業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資が緩やかな増加傾向にあり、また、雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費も緩やかな増加基調を維持していること等から、経済活動は緩やかに持ち直しております。しかしながら、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、先行きは依然として不透明な状況であります。

当社は、“「プロフェッショナル・テック」で、次の常識をつくる”をミッションとして、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」および税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」等を通じたインターネットメディアの運営、ならびに契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」や判例データベース「判例秘書」をはじめとしたIT・ソリューションサービスの提供を行ってまいりました。

また、2024年5月1日付で弁護士向けデジタル文書整理ツール「弁護革命」を提供する株式会社弁護革命の株式を取得しております。加えて、2024年6月12日に公表しましたとおり、子会社である株式会社弁護革命を2024年8月1日に当社を存続会社とする吸収合併を行っております。そのため同社の業績が当連結会計年度より反映されております。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は14,072百万円前年同期比24.3%増)、営業利益1,389百万円前年同期比12.4%増)、経常利益1,405百万円前年同期比6.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,049百万円前年同期比25.3%増)となりました。

 

報告セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

 

(メディア事業)

メディア事業では、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」および税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」等を通じたインターネットメディアの運営を行っております。また、当連結会計年度より弁護士向けデジタル文書整理ツール「弁護革命」を提供しております。

「弁護士ドットコム」では、ユーザーに向けた有益なコンテンツの提供やユーザビリティの向上に注力するとともに、「判例秘書」および「弁護革命」との連携を強化することで弁護士向けのプロダクト開発に努めました。その結果、当連結会計年度末時点の会員登録弁護士数が24,600人(前年同月比3.4%増)、そのうち、弁護士支援サービスの有料会員登録弁護士数が5,918人(前年同月比10.2%増)、「弁護士ドットコム」の有料会員サービスの有料会員数が160,748人(前年同期比13.0%減)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は4,883百万円前年同期比9.7%増)、セグメント利益は1,297百万円前年同期比9.3%減)となりました。

 

(IT・ソリューション事業)

IT・ソリューション事業では、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」や判例データベース「判例秘書」をはじめとしたIT・ソリューションサービスの提供を行っております。

「クラウドサイン」では、積極的な人材採用による開発体制・営業体制の強化および各種媒体への広告出稿等を通じて、ユーザビリティの向上、認知度の向上、および顧客基盤の拡大に努めました。その結果、当連結会計年度の契約送信件数は10,082,005件(前年同期比23.5%増)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は9,191百万円前年同期比33.8%増)、セグメント利益は2,214百万円前年同期比49.5%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して702百万円増加し4,171百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得た資金は1,368百万円(前連結会計年度は1,160百万円の収入)となりました。主な要因は、売上債権の増加額273百万円、未払金の減少額75百万円、未払費用の減少額71百万円、および法人税等の支払額559百万円があったものの、税金等調整前当期純利益1,641百万円の計上、減価償却費680百万円の計上、および前受金の増加額81百万円があったこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は625百万円(前連結会計年度は2,103百万円の支出)となりました。主な要因は、無形固定資産の取得による支出666百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出194百万円、および投資有価証券の取得による支出30百万円があったものの、投資有価証券の売却による収入228百万円があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は41百万円(前連結会計年度は2,765百万円の収入)となりました。主な要因は、短期借入金の増減額250百万円、ストックオプションの行使による収入234百万円があったものの、長期借入金の返済による支出525百万円があったこと等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当社グループの業務には生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

b.受注実績

当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

メディア

4,882

109.7

IT・ソリューション

9,189

133.7

合計

14,072

124.3

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

② 財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は11,296百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,132百万円の増加となりました。その主な要因は、現金及び預金、売掛金、のれん、ソフトウエア仮勘定が増加した一方で、技術資産が減少したこと等によるものであります。

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産は、6,604百万円となり、前連結会計年度末と比較して949百万円の増加となりました。これは主に現金及び預金が702百万円、売掛金が273百万円増加したこと等によるものであります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産は、4,692百万円となり、前連結会計年度末と比較して182百万円の増加となりました。これは主にのれんが130百万円、ソフトウエア仮勘定が114百万円増加した一方で、技術資産が97百万円減少したこと等によるものであります。

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債は、3,253百万円となり、前連結会計年度末と比較して346百万円の増加となりました。これは主に短期借入金が250百万円、未払法人税等が132百万円増加した一方で、未払金が78百万円、未払費用が71百万円減少したこと等によるものであります。

(固定負債)

当連結会計年度の固定負債は、2,604百万円となり、前連結会計年度末と比較して495百万円の減少となりました。これは主に長期借入金が485百万円減少したこと等によるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、5,438百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,281百万円の増加となりました。これは主に資本金が81百万円、資本剰余金が81百万円、利益剰余金が652百万円増加した一方で、自己株式が468百万円減少したこと等によるものであります。

 

③ 経営成績の分析

(売上高)

売上高は14,072百万円となりました。これは主に、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」の有料導入企業数および送信件数が順調に推移したこと等によるものであります。

(売上総利益)

売上原価は3,239百万円となりました。これは主に、ソフトウエアの開発や制作に係る人件費や経費が増加した一方で、ソフトウエアの開発や制作の進行に伴いソフトウエア仮勘定への振替えを行ったこと等によるものであります。

この結果、売上総利益は10,833百万円となりました。

(営業利益)

販売費及び一般管理費は9,443百万円となりました。これは主に、従業員の増加に伴う人件費の増加、業務委託費の増加、および各媒体へ広告出稿を行ったことに伴う広告宣伝費の増加等によるものであります。

この結果、営業利益は1,389百万円となりました。

(経常利益)

経常利益は、1,405百万円となりました。

(税金等調整前当期純利益)

特別利益は249百万円となりました。主な内容は投資有価証券売却益であります。

この結果、税金等調整前当期純利益は1,641百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

法人税等は、592百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,049百万円となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費や外注費等の売上原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、運転資金につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で対応しております。また企業買収に係る資金につきましては、自己資金および金融機関からの借入により対応しております。

なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,171百万円であります。

 

 キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

70.8

62.9

71.3

40.3

47.6

時価ベースの自己資本比率(%)

6,250.5

2,293.5

1,214.7

744.2

548.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

2.37

1.82

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

342.79

95.08

 

 自己資本比率:自己資本/総資産
 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
 インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。
(注2)2021年3月期から2023年3月期におけるキャッシュ・フロー対有利子負債比率については、有利子負債が存在しないため、記載しておりません。
(注3)2021年3月期から2023年3月期におけるインタレスト・カバレッジ・レシオについては、利払いがないため、記載しておりません。
(注4)当社は2024年3月期より連結財務諸表を作成しているため、2024年3月期から2025年3月期については連結財務諸表の数値を基礎とし、2021年3月期から2023年3月期については財務諸表の数値を基礎として計算した指標を記載しております。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通り、事業環境、事業内容、事業運営体制、システムリスク、法的規制等様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループが今後の業容を拡大し、より良いサービスを継続的に展開していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は常に外部環境の構造やその変化に関する情報の入手および分析を行い、現在および将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を実施していく方針であります。

 

⑦ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

当社は、2024年5月1日付で株式会社弁護革命の株式の100%を取得し、同社を子会社といたしました。また、2024年8月1日付で子会社である株式会社弁護革命について、当社を存続会社とする吸収合併を行っております。

詳細は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。