文中の将来に関する事項は、当期末日現在において、当社グループが判断したものです。
当社グループの主要事業である国内の上下水道市場では、人口減少等に起因する自治体の財政難や技術者不足が顕在化していることに加え、高度経済成長期に整備された施設・設備の老朽化、大地震や台風・集中豪雨等の自然災害への対策が喫緊の課題となっています。このような状況において、PFI(注1)法の施行や水道法の改正等による民間の資金、技術、ノウハウを活用する公民連携、国土強靭化計画に基づく取り組み等が着実に進展しています。特にPPP(注2)/PFI推進アクションプラン(内閣府:令和5年改定版)では、PPP/PFIの質と量の両面から充実を図るために新たな公民連携方式「ウォーターPPP」の導入拡大を図っています。また、AI、IoT等の技術革新を背景に、新たな事業機会やビジネスモデルが創出されています。
一方、海外の上下水道市場では、欧米等の先進国における施設・設備の老朽化に加え、米国では水資源の確保に向けた再生水の活用、欧州では環境規制の厳格化等への対応が重点課題となっています。また、アジアの新興国等においては、人口増による水需要の増加に伴い、上下水道インフラ整備の需要が高まっています。今後も各国の上下水道市場における課題やニーズを背景とした事業機会の拡大が期待されます。
さらに近年では、物価上昇、金融資本市場の変動、中東地域をめぐる情勢、米国の政策動向による影響等のリスクが懸念されます。
このような市場環境を踏まえ、当社グループは長期ビジョンの実現に向け、2027年度(2028年3月期)を最終年度とする「中期経営計画2027」を策定しました。2027年度の経営目標を受注高2,000億円以上、売上高2,000億円、営業利益130億円とし、次の3点を重点施策として、全社を挙げて取り組んでいます。
① 各事業分野の成長戦略
当社グループは、2024年4月1日付で組織体制を見直すとともに報告セグメントを「環境エンジニアリング事業」「システムソリューション事業」「運営事業」「海外事業」の4区分に変更し、各事業セグメントにおける成長戦略を推進しています。
(環境エンジニアリング事業)
環境エンジニアリング事業は「水環境事業」と「資源環境事業」で構成しています。水環境事業では、昨今の環境課題に対応すべく、上下水道施設の温室効果ガス排出削減に貢献する製品及びシステムの開発、導入に取り組んでいます。また、今後増加する更新需要に対して、維持管理を起点にした提案や最適なLCC(ライフサイクルコスト)を追求することで競争力を強化し、新たな機場の獲得を図っています。資源環境事業では、清掃関連施設としては都内で初めてネーミングライツが導入された施設において、当社が命名権を獲得して命名した「メタウォーターサステナブルパークこがねい」が竣工しました。今後も資源リサイクル施設の更新需要に伴いDBO(注3)案件が増加するなか、提案から設計・建設・維持管理まで、組織としての対応力やパートナー企業との連携を強化し、新たな機場の獲得及び地域貢献を推進します。
(システムソリューション事業)
システムソリューション事業は「システムエンジニアリング事業」と「カスタマーエンジニアリング事業」で構成しています。システムエンジニアリング事業では、今後の電気設備の更新需要に対して、特に監視系のマイグレーション(注4)や開発投資等を積極的に推進し、新たな更新需要の獲得を図っています。また、事業部門横断に加え、協力会社との連携の深化によりエンジニアリング手法を改革し、ICT等を活用することで、データ連携による品質向上及びさらなる業務効率化によるコストダウン等に取り組んでいます。カスタマーエンジニアリング事業では、これまでの実績やノウハウを活用して顧客への提案力を強化し、継続的な電気設備の保守点検及び修繕工事等の獲得を図っています。また、WBC(注5)の拡販及び活用等により、新たな顧客及び新規事業の獲得を目指しています。
(運営事業)
国内では、今後さらに人口減少、自治体の技術者不足や財政難等が顕在化していくなか、これらの解決策として新たに導入された公民連携方式「ウォーターPPP」を好機と捉えるとともに、PFI法の施行から約20年が経過し、第2期目を迎える時期が近付いており、当社グループとしての実績やノウハウを生かした新たなビジネスモデルや地域特性に応じた提案等を推進しています。また、当社グループが運営する機場について、現地運転員の省人化や無人化、運転ノウハウの蓄積や高度化等を実現するため、オペレーションサポートセンター(OSC)を活用し、競争力を強化するとともに運営事業の拡大を図っています。
(海外事業)
欧米市場では、水不足への懸念や環境規制等が強化されるなか、当社グループは欧米を戦略エリアと位置付け、再生水市場及び微量汚染物質処理等の高度な処理プロセスへの対応に注力しています。また、当社及び欧米のグループ企業間の連携を強化し、さらなるシナジー創出を目指しています。一方、アジア市場では当社グループの差別化技術やシステムの拡販に向けて、現地パートナーとの連携を強化しています。当社は、当社の米国子会社であるMETAWATER USA, INC.を通じて、2025年4月に米国のエンジニアリング会社であるSchwing Bioset, Inc.の全株式を取得しました。引き続き欧米を戦略エリアとして、さらなる事業拡大を目指しています。
② 企業価値向上に向けた投融資戦略
当社グループは、ステークホルダーの期待に応え、企業価値の向上を遂げるために、次の投融資等に積極的に取り組んでいます。
(事業拡大に向けた成長投融資)
当社グループの事業拡大に向けて、新技術や強い分野のさらなる強化に向けて研究開発投資や国内外のアライアンス、ウォーターPPP等における特別目的会社(SPC)への投融資を積極的に推進しています。
(将来の安定成長に向けた基盤投資)
当社グループは、人を最大の財産と捉え、将来の安定成長に向けて積極的な新卒及び即戦力の採用に取り組んでいます。2025年2月には、経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」の認定、2025年3月には、経済産業省と日本健康会議が認定する健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を取得しました。当社グループは、引き続きDXの推進及び健康経営の推進に注力します。
③ サステナビリティに関する取り組み
当社グループは、2024年4月に当社グループの存在意義を明確にするため、“わたしたちの目的(パーパス)”「地域と共生し、水と環境の循環を守り、人々の暮らしを支える」を制定しました。当社グループは、このパーパスのもと、事業活動を通じて環境課題や社会課題などの解決に取り組み、地域や社会に寄り添いながら、ステークホルダーの皆様とともに持続可能な未来の実現を目指します。
(注)1.PFI(Private Finance Initiative):施設の設計・建設、維持管理、修繕などの業務について民間事業者の資金とノウハウを活用して包括的に実施する手法
2.PPP (Public-Private Partnership):公共サービスの提供に民間が参画する手法
3.DBO(Design Build Operate):公共が資金を調達し、設計・建設、運営を民間に委託する方式
4.マイグレーション:既存のシステムやソフトウェアを新たな環境等に移転・移行して活用すること
5.WBC(Water Business Cloud):クラウド型プラットフォームを活用した上下水道事業をサポートするICTサービス
文中の将来に関する事項は、当期末現在において、当社グループが判断したものです。
当社グループは、持続可能な環境・社会の実現と企業価値の向上に向けた取り組みに関する目的、基本方針及び重要課題(マテリアリティ)を「サステナビリティに関する基本方針」として次のとおり定めています。当方針は、サステナビリティ委員会及び経営会議にて議論し、取締役会にて決議しています。
当社は、持続可能な環境・社会の実現と企業価値の向上に向けた取り組みを推進するための機関として、サステナビリティ委員会を設置しています。当委員会は、環境分科会、社会分科会、ガバナンス分科会の3つの分科会を設けており、各分科会は期初に計画した活動内容に基づき年間を通じて活動しています。環境分科会は、事業活動における環境貢献及び環境負荷の可視化、気候変動関連の取り組み状況の取りまとめ、環境意識の醸成や啓発等に取り組んでいます。社会分科会は、地域貢献活動の推進、働きやすい職場環境の整備、多様な人財の確保と活動支援等に取り組んでいます。ガバナンス分科会は、コンプライアンスの周知徹底、リスクマネジメントの適切な運用に取り組み、グループ全体の視点で取りまとめています。
当委員会は、原則、年に2回開催し、各分科会の計画及び活動内容を報告し、協議しています。また、当委員会での報告内容及び協議内容等を、適宜、経営会議及び取締役会に報告しています。
当社グループは、経営に影響を及ぼす可能性のある様々なリスクを体系的に認識・評価し、適切に管理することにより、リスクの発生を未然に防止あるいはリスクの発生による損失を低減し、グループの企業価値の維持・拡大に繋げることを目的として、「メタウォーターグループリスク管理規程」及び「リスク管理実施手順書」(以下、「リスク管理規程類」という。)を策定しています。
リスク管理規程類には、リスク管理の体制及びプロセス、リスク分類、影響度及び発生頻度評価基準等を定めています。リスク分類は、当社の経営に大きな影響を与える項目を外部環境(6分類)と事業環境(17分類)に分類しています。また、影響度は、リスクが顕在化した際に想定される影響の大きさを評価するために重要項目(3項目)について3段階(大、中、小)で評価し、発生頻度(高、中、低)との組み合わせにより、それぞれのリスク対応策を検討しています。
当社グループでは、リスク管理規程類に基づき、年度の期初にリスク抽出、影響度評価、発生頻度評価、対応方法の検討等を各部門及び子会社にて実施し、上期終了時点において中間評価を行います。通期終了時点には同様に通期評価を行い、上期及び通期共に各部門等のリスク管理内容を社内に開示しています。
また、ガバナンス分科会は、各部門及び子会社等が認識・評価するリスクやリスク対応策等をグループ全体の視点で取りまとめ、サステナビリティ委員会に報告、協議しています。当委員会での報告内容及び協議内容等を、適宜、経営会議及び取締役会に報告しています。
当社グループは、企業理念「続ける。続くために。」の実践を通じて、「私たちの目的(パーパス)」の実現に向けて、ステークホルダーの期待に応え、社会から信頼され、社会に貢献し続ける企業であることを目指しています。その実現に向けて、長期ビジョン及び中期経営計画を策定し、戦略的に重要課題(マテリアリティ)の解決に取り組んでいます。重要課題(マテリアリティ)の中で、当社グループの事業及び社会課題との関連性が深く、さらに企業への開示要求が高い、温室効果ガス排出削減(気候変動対策)と人財(人的資本)に関する戦略及び指標と目標は以下のとおりです。今後も重要課題(マテリアリティ)に関する具体的な戦略及び指標と目標について、引き続き検討していきます。
① 温室効果ガス排出削減(気候変動対策)
当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の枠組みに則り、気候関連リスク及び機会を抽出するとともに気候関連シナリオを選択し、財務影響と緊急度の視点による影響度を評価しています。気候関連シナリオは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及び国際エネルギー機関(IEA)のシナリオ群からCOP27の結果等を受けて、厳しい規制や技術革新等で気温上昇を1.5℃未満に抑えたシナリオと、現行の対応から大きく変化せず気温が4℃以上上昇するシナリオを選択し、次のとおり分析を行いました。
a.1.5℃未満シナリオ
(リスク)
当社グループの事業領域は、公共事業が大半を占めており、特に移行リスクである政府・自治体の政策動向や技術動向等に大きな影響を受けます。規制が強化されて炭素価格が導入された場合は、資材等の調達コストや施工時の建設コストの増加により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、低炭素技術・製品等の導入に向けた競争が激化した場合にも、開発コストの増加や市場による競争力の低下等により、同様に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、温室効果ガスの排出削減に貢献する技術・製品を有しており、継続的に研究開発投資を実施することで、既存製品の改良のみならず、次世代の技術・製品の早期開発に取り組んでいます。また、自社の事業活動における再生エネルギーの活用や調達先、協力企業と連携したサプライチェーン排出量の削減も引き続き検討していきます。
b.4℃シナリオ
(リスク)
当社グループは、公共事業における施設及び設備の設計・建設・運転維持管理を主な業務としており、特に物理リスクである異常気象や自然災害等に大きな影響を受けます。気温上昇によりヒートストレスが増加した場合は、労働生産性の悪化や人的被害等による工期長期化や建設コストの上昇等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、災害が激甚化した場合は、当社グループの建設現場や当社グループが運転維持管理している現場における災害対応や復旧コストの増加等により、同様に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、建設現場におけるヒートストレス等の影響を軽減するために現場の施工期間の短縮に向けた技術・システムの開発に取り組んでいます。また、自然災害・激甚災害に備え、運転維持管理現場等における自動化や無人化に向けた開発と当社及び子会社(SPCを含む。)等において個別に事業継続計画(BCP)を定め、定期的にBCP訓練を実施しています。今後も引き続き、運転維持管理現場等における無人化や自動化、遠隔監視の開発を積極的に推進し、社会課題の解決とともに働きやすい環境の整備を目指します。
当社グループは、1.5℃未満及び4℃シナリオのいずれにおいても、炭素税を含むコスト増の可能性を考慮しつつ、気候変動関連ニーズに応える技術・製品の開発等に継続的に取り組み、事業のレジリエンスをより一層高めていきます。
(指標と目標)
Scope1、2については、再生エネルギーの活用及び非化石電力証書の購入等により「2030年度に2020年度比70%削減」「2050年度に実質ゼロ」の目標を設定しました。2023年度から、Scope2に相当する当社の国内52拠点及び国内建設現場事務所の使用電力をトラッキング付非化石証書の購入により実質再生可能エネルギーに切り替えています(年間GHG排出量約2,500t-CO2相当)。ただし、現時点で当社グループ企業の全てのScope1、2及び3が算出できていないため、算出を進め、開示するように努めます。
(注) 次の会社を対象とし、国内は4月から翌3月、海外は1月から12月の期間で集計しています。
国内:当社、メタウォーターサービス株式会社
海外:METAWATER USA, INC.、Aqua-Aerobic Systems, Inc.、Mecana AG、FUCHS Enprotec GmbH、
Wigen Companies, Inc.、Rood Wit Blauw Water B.V.
② 人財(人的資本)
当社グループは、企業理念である「続ける。続くために。」の実践を通じて、持続可能な環境・社会の実現に向けて取り組むなかで人を最大の財産と捉え、「人事理念」を次のとおり定めています。
昨今のめまぐるしい社会環境変化や価値観が多様化する時代において、この人事理念を土台とし、社員と企業が共に成長していくために以下のような取り組みを行っています。なお、当社グループは、人を最大の財産と捉え、従業員の雇用、教育、さらに働きやすい環境整備等に対して、継続的かつ積極的に投資を実施しています。
a.安心・安全・健康
当社グループは、社員及び全ての関係者が安全に就業できる職場環境の整備、また、社員とその家族の心と身体の健康増進を支援する健康経営を推進しています。現場の安全を最優先として、オリジナルの作業ガイドラインの作成や協力会社社員への独自のライセンス制度の運用など、当社ならではの取り組みを実践しています。健康面については、経営トップ自らが最高責任者となり、人事部門と産業保健スタッフを中心に労働組合や健康保険組合と連携しながら、社員ひとりひとりの健康保持・増進を図っています。健康管理センターを本社及び複数の事業所に配置し、産業医だけではなく心理カウンセラー、専属の健康管理スタッフが常時社員をフォローする体制を整えています。テレワーク環境下の運動不足解消法などの情報発信、ウォーキングイベントの定期開催などの活動も積極的に行っています。
b.働きやすさの追求
人を企業競争力の要に位置付ける当社グループは、「働きたい会社No.1」を目指し、2017年度から働き方改革を推進してきました。具体的には、様々な事情を持つ多様な個が活躍し続けられるように、「テレワーク制度の導入」「複数のサテライトオフィスの設置」「週休3日制度の導入」「所定労働時間の短縮」「単身赴任の段階的解除」「遠隔地勤務制度の導入」などを他企業に先駆けて実施してきました。また、2025年度より「所定労働時間のさらなる短縮(所定労働時間7時間/日)」を実施しています。今後も環境変化や社員のニーズにきめ細かく対応し、より多様な就労を可能にする環境や風土構築に取り組んでいきます。
c.多様性の尊重
多様な人財が切磋琢磨し、その能力・適性を最大限に発揮することが当社グループの成長に繋がると考え、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。新入社員の女性比率30%以上を目標とした積極採用、両立支援制度の充実、女性管理職の計画的な登用などを行ってきた結果、女性管理職比率はここ数年で増加しています。現状の比率をさらに増加させるため、今後も女性の採用及び管理職登用を推進していきます。その他にも、障がい者の活躍の場の拡充、男性社員の育児休業取得促進などを行っており、多様性を認め受け入れる風土醸成が重要との認識から、ダイバーシティに関する研修の実施など多面的な取り組みを推進しています。
d.成長・挑戦を支援
人が最大の財産である当社グループは、社員の能力開発を経営における重要事項と位置付け、人事理念に掲げるとおり、成長意欲のある社員の能力や可能性を最大限に伸ばす環境と仕組みを整備しています。社員の成長ステージに応じた能力開発を目的として、階層別研修・指名型研修・選択型研修(自己啓発)・職種別専門教育など幅広いプログラムを用意し、社員ひとりひとりの成長をサポートします。特に選択型研修については、成長意欲のある社員のニーズに応えるよう、200を超えるカリキュラムを用意しており、積極的に活用されています。
(指標と目標)
人事理念に基づく各種取り組みに関する指標と実績は、次のとおりです。今後、各指標に関して、他社状況やベンチマーク等を意識しつつ、さらに指標の改善に向けて積極的に取り組んでいきます。
(注) 1.当社における実績であり、連結子会社であるメタウォーターサービス株式会社の女性社員管理職比率等については「
2.社員意識調査は、2025年3月期には実施していないため、直近の実施結果(2023年3月期)を記載しています。
3.育児・介護休業法の規定に基づき、育児・介護休業法施行規則第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものです。また、当社グループのリスク管理の概要及び運用状況は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
当期における我が国の経済状況は、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復しました。また、世界の経済状況は、一部の地域において弱さがみられるものの、景気の持ち直しが続きました。一方で、物価上昇、金融資本市場の変動、中東地域をめぐる情勢、米国の政策動向による影響等、景気の下振れリスクが懸念されました。
このような状況のなか、当社グループは、2027年度(2028年3月期)を最終年度とする「中期経営計画2027」の達成に向けて、「①各事業分野の成長戦略」「②企業価値向上に向けた投融資戦略」「③サステナビリティに関する取り組み」を重点施策とし、全社を挙げて取り組んでいます。
当連結会計年度における当社グループの業績は、次表のとおりとなりました。
主に海外事業セグメントの業績が好調に推移し、売上高及び営業利益共に前期を上回りました。また、受注が好調に推移し、受注高及び受注残高共に前期を上回りました。経常利益については、主に前期の為替差益に対して、当期は円高影響による為替差損が発生したことにより、前期を下回りました。
当社グループは、当連結会計年度より、マネジメント・アプローチの観点から報告セグメントを従来の2区分(プラントエンジニアリング事業、サービスソリューション事業)から、4区分(環境エンジニアリング事業、システムソリューション事業、運営事業、海外事業)に変更しました。セグメント別の業績は次のとおりです。なお、各セグメントの前期比については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた上で算出しています。
(環境エンジニアリング事業)
環境エンジニアリング事業セグメントは、水環境事業及び資源環境事業で構成され、国内の浄水場・下水処理場・資源リサイクル施設向けの機械設備等の設計・建設及び保守・維持管理等を主たる業務としています。
水環境事業においては、サービス分野の売上高は前期を上回りましたが、設計・建設等の工事進行基準の売上高が前期を下回ったことにより、売上高・営業利益共に前期を下回りました。資源環境事業においては、大型の建設工事案件が順調に推移し、売上高・営業利益共に前期を上回りました。
(システムソリューション事業)
システムソリューション事業セグメントは、システムエンジニアリング事業及びカスタマーエンジニアリング事業で構成され、国内の浄水場・下水処理場向けの電気設備等の設計・製造及び保守・維持管理等を主たる業務としています。
システムエンジニアリング事業においては、大型の工事案件が順調に推移し、売上高は前期を上回りましたが、減価償却費や労務費等の増加により、営業利益は前期を下回りました。カスタマーエンジニアリング事業においては、補修工事や更新工事等が順調に推移し、売上高・営業利益共に前期を上回りました。
(運営事業)
運営事業セグメントは、国内の浄水場・下水処理場・資源リサイクル施設の運営事業を主たる業務としています。
子会社の業績が順調に推移したこと等により、売上高・営業利益共に前期を上回りました。
(海外事業)
海外事業セグメントは、海外の浄水場・下水処理場向けの施設・設備の設計・建設及び保守・維持管理並びに民需事業を主たる業務としています。
北米子会社及び欧州子会社の業績が順調に推移し、売上高・営業利益共に前期を上回りました。
(受注及び販売の状況)
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しています。
2. 受注高のうち、官公庁からの受注が9割以上を占めています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの業績は、受注高は前連結会計年度に比べ5.1%増加の222,724百万円となり、売上高は前連結会計年度に比べ8.2%増収の179,094百万円となりました。なお、セグメント別の経営成績につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析 (業績等の概要)」に記載のとおりです。
売上原価は、前連結会計年度に比べ、7.0%増加の140,380百万円となりました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ14.6%増加の28,087百万円となりました。
これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ7.3%増益の10,626百万円となりました。また、経常利益は前連結会計年度に比べ5.1%減益の9,951百万円となりました。特別損失は90百万円となりました。以上により、税金等調整前当期純利益は9,861百万円となり、前連結会計年度に比べ6.0%の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ0.3%減益の6,852百万円となりました。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ27,939百万円増加し、196,783百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金並びに受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ24,103百万円増加し、160,178百万円となりました。
固定資産は、退職給付に係る資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ3,797百万円増加し、36,516百万円となりました。
流動負債は、電子記録債務並びに契約負債が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,393百万円増加し、65,885百万円となりました。
固定負債は、社債の発行並びに長期借入金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ16,872百万円増加し、45,547百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上並びに為替換算調整勘定が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ9,673百万円増加し、85,350百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
主な資金需要は、運転資本、設備投資、研究開発、IT投資に対するものであり、それらの資金は主に営業キャッシュ・フローで充当しており、必要に応じて借入金や社債による調達で対応しています。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は35,683百万円となり、前連結会計年度末に比べ、21,463百万円増加しました。当連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権及び契約資産の増加による支出4,920百万円となりましたが、税金等調整前当期純利益の計上による収入9,861百万円などにより、営業活動に伴う資金の増加は13,316百万円(前年同期比18,802百万円増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出1,772百万円、無形固定資産の取得による支出2,422百万円などにより、投資活動に伴う資金の減少は4,094百万円(前年同期比995百万円減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払による支出2,094百万円、短期借入金の返済による支出29,910百万円となりましたが、短期借入金の借入による収入26,319百万円、長期借入れによる収入4,962百万円、社債の発行による収入9,950百万円などにより、財務活動に伴う資金の増加は12,005百万円(前年同期比667百万円増)となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。
3.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。
4.2023年3月期及び2024年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載していません。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しているとおり、国内外の政治情勢、自然災害、市場環境等、様々なリスクが当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しています。
(5) 重要な会計方針及び重要な会計上の見積り・当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計基準に基づいて見積りが行われており、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しています。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針や見積が連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があると考えています。
・履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益
当社グループは、工事契約による請負、役務の提供(以下、工事契約等)については、一定の期間にわたり履行義務は充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する方法(履行義務の充足に係る進捗度の見積りはコストに基づくインプット法)を適用しています。履行義務の充足に係る進捗度は案件の原価総額の見積りに対する連結会計年度末までの発生原価の割合に基づき算定しています。
ただし、想定していなかった原価の発生等により進捗度が変動した場合は、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する収益及び費用の金額に影響を与える可能性があります。
該当事項はありません。
当期の研究開発活動は、継続して、水・環境インフラの持続可能性(サステナビリティ)に寄与する技術開発に積極的に取り組みました。また、「中期経営計画2027」及び長期ビジョンの目標達成に向けて、中長期的成長に不可欠な製品開発、ソリューション開発、新事業開発を推進しました。
研究開発体制は、当社の開発戦略委員会が研究開発方針や経営資源の配分決定等を統括し、当社の研究開発部門が個別の研究開発テーマを執行しています。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費は
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
(環境エンジニアリング事業)
上下水道施設及び資源リサイクル施設の機械設備に関して、設計・建設段階から、保守・維持管理までの長期的な視点を見据え、ライフサイクル全体にわたる最適なソリューションを提供することを目指し、先進的な商品及びシステムの開発を推進しています。
当社グループのコア技術である固液分離技術、酸化処理技術、熱操作技術、計測制御技術、生物処理技術、ICT技術等を融合し、具体的には、革新的な造水システム、水と資源の再生技術、高度なリサイクル技術等の開発、また、地球温暖化防止に不可欠な温室効果ガス排出削減や省エネルギーを実現する技術開発等に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は
(システムソリューション事業)
上下水道施設の効率的な運転・維持管理を実現するための革新的なソリューション開発を推進しています。
具体的には、当社の強みである監視制御システムや独自のクラウドサービス(WBC)を活用した広域監視システム及び設備管理システムの機能拡充等に取り組んでいます。
また、AI技術等の新技術を取り入れた開発を推進しており、機械分野の製品や新技術に対してICTやAI制御を活用するなど機電融合に関する開発に注力し、新たな価値創造を目指しています。
当連結会計年度における研究開発費は
(運営事業)
安定的かつ効率的な事業運営の実現に向けた研究開発を推進しています。
具体的には、これまで培ってきた運営・運転管理のノウハウと、機電融合の技術力や最新技術を組み合わせた運営現場の効率化及び省力化に貢献する研究開発に取り組んでいます。
また、プラントの稼働・運転状況を24時間体制で監視・サポートするオペレーションサポートセンター(OSC)の機能拡充に向けた研究開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は
(海外事業)
世界の水環境市場のニーズに応えるため、先進的な商品及びシステムの開発を推進しています。
具体的には、海外グループ会社との連携を強化し、再生水製造や微量汚染物質除去技術等、新たなプロセスの開発に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は