第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社経営の基本方針

当社グループは、~持続可能な社会実現のために~「再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」というビジョンの下、日本市場のみならず、ベトナムを始めとするアジア諸国においても脱炭素に向けた取り組みを段階的に着実に具現化し、創業より受け継ぐ「挑む文化」をもって「総合エネルギー企業」へと進化してまいります。

 

(2)経営方針、経営環境及び対処すべき課題

 当社グループを取り巻く経営環境は、脱炭素・循環型社会の実現に向けた社会的要請の高まりや、ロシアによるウクライナへの侵攻、イスラエル・ハマスの衝突等に見られる地政学的リスクの継続、大幅な円安の進行等、かつてない転換期を迎えております。

 このような状況下、当連結会計年度における大幅な赤字を踏まえて実施した、事業推進体制の見直し、戦略の変更、また当連結会計年度においても利益を計上していた電力小売事業の成長により、翌連結会計年度は黒字化を見込んでおります。将来に向けた成長投資については、海外事業を中心に実施してまいります。

 

① 電力小売事業の取組み

高圧につきましては、完全固定プランやハイブリッドプラン等、顧客ニーズに対応したプランの提案を実施するとともに、コーポレートPPA、DR等のソリューションを提供してまいります。低圧につきましては、全ての契約をCO2フリープランに移行するとともに、Web直販による顧客の獲得や転居時の顧客獲得等を目指し、代理店の強化に取り組みます。

 

② トレーディング事業の取組み

当連結会計年度末には、割高な電源の相対契約は全て終了しており、今後は、確定した販売量に対し、必要となる電力の調達を実施してまいります。また、電力先物を含む様々な電力取引のノウハウを活かした小売プランを組成してまいります。

 

③ 発電事業の取組み

国内のバイオマス発電所については、出力抑制の指令増加影響に伴う発電量が減少する見通しですが、定期修繕の効率化による所要日数の短縮に取り組み、天災等による設備点検期間短縮に備え日常整備を徹底してまいります。また、糸魚川発電所(石炭火力)については、容量市場制度の開始を受け、制度に則った運転を行ってまいります。このほか、計画中の発電所についても、引き続き、準備を進めてまいります。

 

④ 燃料事業の取組み

2024年4月より発電所の燃料であるPKSに対し認証制度が導入されたことから、燃料コストの増加が見込まれます。その対策として、PKSの一部を木質ペレットへ切替え、コストの低減を図ります。また国内において燃料長期供給契約に基づく外販を本格的にスタートし、為替予約を活用した円安対策、燃料の海上輸送船の大型化による輸送コスト低減にも取り組んでまいります。

 

⑤ 海外事業の取組み

ベトナムにおいては、ハウジャンバイオマス発電所、イエンバイ省、トゥエンクアン省のペレット工場が翌連結会計年度内に完成予定であり、また両省にそれぞれ建設予定のバイオマス発電所※が優先度の高い発電所となっている「ベトナム第8次国家電源開発計画(PDP8)の実施計画」が2024年4月1日に承認されたことから、両発電所の早期着工に向けた準備を進めてまいります。

カンボジアにおいては、2025年11月完成予定の水力発電所の建設を継続し、新設バイオマス発電所建設に向けたフィージビリティスタディに取り組みます。

 

⑥ 脱炭素戦略

当社グループは、脱炭素戦略として、2030年、2,500万tのCO2削減を掲げるとともに、2050年カーボンマイナスの実現に向け、挑戦を加速させます。今後、カーボンプライシングやグローバルな排出権取引等、環境価値のトレードが具体化するネットゼロ社会の実現を見据え、エネルギー事業者から脱炭素のリーディングカンパニーへと変革を遂げ、環境価値を収益源として成長を加速させてまいります。

 

※ この二つの発電所は、前記の「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」に採択されております。

 

<新たな成長戦略>

 

 

成長戦略

 

 

 

国内

 

・お客さまニーズに応じた最適な販売プラン(固定プラン、脱炭素プラン等)の提供による販売拡充

 

・既存の代理店チャネルに加え、Webチャネル、直販チャネルの確立による拡販体制の強化

 

・アグリゲーター機能を強化し、再エネ事業者としての地位を確立

 

 

 

海外

 

・当社事業と親和性の高い第三者割当増資引受先パートナーとの協業による、海外事業への取り組み強化

 

・電力需要が増加する東南アジアでの再エネ電源の開発(バイオマス、石炭フューエルコンバージョン、水力)及び燃料の開発等(木質ペレットの輸出、ニューソルガム等の新燃料の開発)

 

・東南アジアで創出されるカーボンクレジットトレードの実施

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する全般的事項

 当社グループは、2030ビジョンである「~持続可能な社会の実現のために~ 再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」を実現すべく、サステナビリティに関する取組みを進めてまいります。

① ガバナンス、リスク管理

 2022年度、当社はサステナビリティ委員会を設立し、サステナビリティに関するガバナンス体制の構築を行いました。経営企画管掌取締役が委員長、他の役員等が委員を務めるサステナビリティ委員会は、気候変動への対応や人的資本など持続可能な社会実現のための当社グループの活動を部門横断的に推進し統括するものであり、専任3名で構成する事務局も経営企画部内に設けられました。委員会の開催を通じ、短期的な視点だけでなく中長期的な企業価値向上の観点から適切な経営を行えるよう努力してまいります。

 マテリアリティ特定については、経営企画管掌取締役の指示のもと、事務局が中心となり情報収集・整理を行い、サステナビリティ委員会に報告・審議のうえ、取締役会にて報告しております。

 また、サステナビリティに関する個別の取組については、事務局のもと各部門から選出されたメンバーで環境・社会・ガバナンスの三つの部会を執り行い協議しております。部会で協議された内容は年に四回以上開催されるサステナビリティ委員会で報告され審議されます。

 経営会議では、サステナビリティ委員会での審議事項や決定事項の上申を受けたうえで重要な経営・事業戦略として受け止め、必要な場合には諮問を行って経営上の意思決定を行います。取締役会へは、気候変動問題への実行計画等について報告を行うこととしております。

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<サステナビリティマネジメント体制>

 

② 戦略、指標及び目標

 当社グループでは、サステナビリティに関する取組みを推進するため、サステナビリティ方針を制定するとともに、サステナビリティに関する重要課題として、マテリアリティを特定しました。

 マテリアリティに関しては、順次対応を進めてまいります。具体的な取組等については、「(2)気候変動への対応(TCFDへの対応)」、「(3)人的資本」に記載しています。

<サステナビリティ方針>

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<マテリアリティ>

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表1 マテリアリティ(会社の重要課題)

 

(2)気候変動への対応(TCFDへの対応)

 当社は、2023年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言への賛同を表明しました。

 賛同表明を機に、事業活動が環境に及ぼす影響を再認識し、情報開示の充実を図ってまいります。また、サステナビリティ委員会を中心とし「カーボンニュートラルへ向けた取り組み」を積極的に行い、ステークホルダーの皆様と共にサステナブルな社会の実現を目指してまいります。

 TCFDの枠組みに基づく情報開示の内容については、サステナビリティ委員会での議論を経て毎年見直しを行い、内容の充実を図ります。

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① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般におけるガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティに関する全般的事項 ① ガバナンス、リスク管理」を参照ください。

 なお、本年度のサステナビリティ委員会ではTCFD提言に沿って気候関連リスクの識別・評価を実施するとともに、対応策の整理・検討を行いました。

 

② 戦略

 当社の主軸を担う事業である発電事業を中心に、長期かつ不確実性の高い未来に対し事業のレジリエンスを高められるよう、世界の平均気温上昇に関し1.5℃シナリオ(脱炭素が進む未来、IEAのNZEシナリオ等)、4℃シナリオ(現在の延長線上、成り行きの未来、IEAのSTEPSシナリオ等)を参照し、2050年を想定して、自社への影響をリスクおよび機会に分け評価を行いました。

 その結果、移行リスクとして再エネ発電・バイオマス発電に対する需要の高まりを受け、燃料の需要も増加すると想定しております。更には再エネの基準を満たす燃料の供給が需要に追い付かないことで、原価の増加がとりわけ事業活動へ大きなインパクトを及ぼす可能性も想定もしております。

 一方、ニューソルガムやその他、新規燃料の開発計画など多様なバイオマス燃料開発の推進や再エネ基準を満たす燃料の自社調達を強化することで、長期にわたり安定的な価格で原材料を調達できるようになり、原価の低減を通じ販売拡大の機会を得られる可能性もあると考えております。

 なお、当社の財務状況に及ぼす影響度合いについては、現時点では定量評価が難しいため大・中・小の三段階で定性的に評価しております。今後は継続的にシナリオ分析を進めることで当社の財務状況に及ぼす影響度の精度を高めながら気候変動に伴うリスクと機会への対応力を強化し、当社の事業を持続可能にするべく努めてまいります。

 また、リスク、機会の発現時期については、短期は3年以内、中期は3年超2030年まで、長期は2030年以降を想定しております。

 

<気候変動に関連する主なリスクと対応策>

 

分類

当社への影響

重要度

発現時期

対応策

移行

リスク

政策と法(既存の製品およびサービスに対する命令および規制)

バイオマス発電に用いる燃料の規制が変更された場合、再エネとしての位置づけを維持するため、規制を満たす燃料への転換にかかるコストが発生する、ないし規制を満たす高コスト燃料への転換で燃料コストが増加する。

短期~

バイオマス燃料 PKS の持続可能性の確保に関する自主的取組としてPKS や木質ペレットといったバイオマス燃料を海外から調達。また2020年にPKS を対象とした GGL 認証(Green Gold Label) を取得するなど、自然環境保護や持続的なバイオマス燃料の活用に向けて、サプライチェーンの管理等をカバーする各種認証の取得に努めている。

排出目標の未達成や開示情報の不備(第三者認証未取得燃料の混在や認定されたバイオマス比率の相違を含む)に関するレピュテーションリスクや対応に係るコストの増加が発生する。

短期~

テクノロジー(既存の製品・サービスを排出量の少ないものに置換)

環境意識の高まりを受けた再エネ発電による発電量の増加に伴い、出力抑制の日数が増加し、売上が減少する。

中~長期

2050年CNに向けた布石として水素事業の実証、収益化や太陽光PPAなどバイオマス以外の再エネへの投資、売価・販売量の最適化等を推進していく。

市場(原材料のコスト増加)

再エネ発電・バイオマス発電に対する需要の高まりをうけ、燃料の需要が増加する一方、再エネの基準を満たす燃料の供給が需要に追い付かないことで、原価が増加する。

短期~

再エネ基準を満たす燃料の調達強化や自社燃料工場の設置、自社燃料開発ニューソルガム計画など多様なバイオマス燃料の開発を推進していく。

評判(ステークホルダーの懸念または否定的なステークホルダーからのフィードバックの増加)

気候関連課題への対応不備や情報開示ニーズへの対応不備による株価の下落や投資家離れにより、資金調達コストが増加する、ないし株価の下落により企業価値が低下する。

短期~

経営計画上、2050CNを目標とし、自社GHG排出量の削減とバイオマス事業による削減貢献を推進していく。

物理的

リスク

急性(サイクロンや洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇)

風水害の激甚化により、バイオマス燃料の製造工場が被災、あるいはサプライチェーンの寸断により、燃料の調達が停止し、発電所の稼働が止まることで売上高が減少する。

中~長期

サプライチェーンの寸断により発電所が稼働できなくなるリスクを回避するために複数の国や販路から燃料調達を実施している。

風水害の激甚化により発電施設が損傷し、稼働が停止することで売上高が減少する。

中~長期

発電所立地エリアの高潮時の浸水深・洪水時の浸水深ともに2050年1.5℃、4℃ともに現状の浸水深予測から大きな変化はない旨を確認している。 出所:[WRI]“Aqueduct GlobalFlood Analyzer”

また有事に備え、避難経路の確保など人員に対してのリスク管理を徹底し、必要に応じてBCP対策等を計画に織り込む。

表2 気候変動に関するリスクと対応策

 

<気候変動に関連する機会と主な対応策>

 

分類

対応課題

重要度

発現時期

対応策

機会

テクノロジー(既存の製品・サービスを排出量の少ないものに置換)

再生可能エネルギーのポテンシャルを生かす電力系統へシフトを促す政策の導入により、出力抑制の対象となる運転期間が短縮され、売上が増加する。

蓄電池を活用したエネルギーマネジメントシステムの効率化ビジネスの開発と実用化により、収益が増加する。

中~長期

2050年CNに向けた布石として水素事業の実証、収益化や太陽光PPAなどバイオマス以外の再エネへの投資、売価・販売量の最適化等を推進していく。

新技術の進展により、発電効率の高いバイオマス燃料が開発され、発電量当たりコストが低下することで売上原価が減少する。

中~長期

バイオマスR&D センター(日、越)を設立し、自社燃料開発ニューソルガム計画など多様なバイオマス燃料の開発を推進していく。

BECCS (回収・貯留 CCS )付きバイオマス発電のニーズの高まりにより、バイオマス発電に対するニーズが高まり、売上が増加する。

中~長期

2050年 CN に向けた布石として「更なる脱炭素への挑戦」を掲げBECCSや植林等を検討する。

市場(原材料のコスト増加)

再エネ基準を満たす燃料の自社調達を強化することで、長期にわたり安定的な価格で原材料を調達できるようになり、燃料コストが減少する。

短期~

ニューソルガムの開発計画など多様なバイオマス燃料開発を推進していく。

評判(変化する顧客行動)

気候変動対応に取り組む企業等による再エネニーズの高まりにより、バイオマス発電を含む再エネで発電された電力に対するニーズが高まり、売上が増加する。

短期~

Non FITのバイオマス発電事業への挑戦やグループ会社のエバーグリーン・マーケティングによる、RE100加盟企業等へのCO2フリープランの販売をしていく。

気候変動対応の一環として、電化が拡大し、併せて再エネ電力に対する需要も高まることで売上高が増加する。

短期~

評判(ステークホルダーの懸念または否定的なステークホルダーからのフィードバックの増加)

自社のESG 課題へ積極的に取り組み、その状況を開示し ESG 投資を呼ぶことで、株価上昇により企業価値が向上する。

短期~

経営計画上、2050年CNを目標とし、自社GHG排出量の削減とバイオマス事業による削減貢献を推進していく。

表3 気候変動に関する機会と対応策

 

③ リスク管理

 リスクの識別・評価及び重要と評価されたリスク・機会に対する大まかな対応方針については、サステナビリティ委員会の事務局が主体となって情報収集、整理を行い、当該情報をもとに、サステナビリティ委員会にて協議、決定し、取締役会に報告しております。

 なお、気候変動に関連した重要なリスク・機会に係る対応策の精緻化や進捗管理等のリスク管理体制については、体制の構築に向け、検討を進めております。

 

④ 指標及び目標

 カーボンニュートラル達成に向けた指標として、当社グループは2021年度分よりGHGプロトコルに基づくGHG排出量の算定を始めました。算定の対象となる活動や排出源ごとの算出手法を特定・整理しSCOPE1,2および3を計算いたしました。今後も継続して算定し当社グループ事業による環境への影響をモニタリングしてまいります。

<GHG排出量(SCOPE1-3の合計値)>

 

SCOPE1※1

SCOPE2

SCOPE3※2

合計

2021年度

4,975

3,990

3,008,878

3,017,842

2022年度

483,134

1,382

1,980,456

2,464,981

2023年度

630,226

3,279

1,508,534

2,142,039

表4 GHG排出量実績(単位:ton-CO2)

 

 GHG排出量を今後の指標とするにあたって事業の拡大や海外への積極的進出および当社が取り組むフューエルコンバージョン(石炭火力発電の漸次的バイオマス専焼化)計画(※3)などによって一時的なGHG排出量の増大も考えられますが、各種取り組みによって自社が排出するGHG排出量を削減してまいります。また、CO2フリーの電気を需要家に供給するなど「当社グループ事業によって削減される世の中全体のCO2削減量」を「削減貢献量」と定義し、今後この削減貢献量を増加させるべく取り組んでまいります。削減貢献量(※4)はグループ全体で2030年に2,500万ton-CO2/年を目標としています。

※1)2022年8月、当社はフューエルコンバージョン計画の一環として糸魚川石炭火力発電所を買収いたしました。そのため2021年度から2022年度にかけてSCOPE1が増加しています。

※2)2023年度は販売電力量が減少したことに伴いSCOPE3が減少しています。

※3)フューエルコンバージョン計画においては石炭火力発電所を購入することにより短期的には当社グループのGHG排出量のSCOPE1が増加します。しかしながら石炭燃料をバイオマス燃料へ一部置換え、その比率を増やしていくことで、一時的に増加した当社グループのGHG排出量SCOPE1を削減していくとともに、世界全体のGHG排出量を削減していくこと(=石炭退出による削減貢献)が可能です。

※4)削減貢献量は算定方法が確立されておらず、当社独自に試算を行ったものです。今後、国際基準等が定義された場合は数値を変更する可能性があります。

・文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(3)人的資本

① ガバナンス、リスク管理

 人的資本に関するガバナンス、リスク管理は、サステナビリティ全般におけるガバナンス、リスク管理に組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティに関する全般的事項 ① ガバナンス、リスク管理」を参照ください。

 

② 戦略、指標及び目標

 2030ビジョン(2030年目標)の達成には、人材確保、高付加価値人材の育成が不可欠であり、制定した社内環境整備方針・人材育成方針を基に、人的資本に対する取組みを推進してまいります。

■社内環境整備方針、人材育成方針

 「再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」という2030ビジョンを実現する為に、ジェンダーや国籍にとらわれることなく採用活動を行い、働きやすい労働環境や公正な評価と処遇の整備に努め、一人ひとりの価値を引き出しながら長期的な企業価値向上につなげてまいります。

 なお、人材育成に関する各施策を推進するに際して、当社のバリューである「挑戦とスピード」、「共創」を各従業員へ浸透させると共に、職位に応じた「あるべき姿」を従業員育成の指針として導入しております。

 

■当該方針に基づいた具体的な取り組み(設定済みの指標及び目標を含む)

a.ダイバーシティ推進

 脱炭素社会の実現に向けてグローバルに事業を展開していく上で、国籍やジェンダーを問わない優秀な人材の活躍が必要不可欠となります。当社におきましては、以下のような方針でダイバーシティを推進してまいります。

・「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」労働者に占める女性労働者の割合

男性比率:73.1% 女性比率:26.9% 

・女性の活躍推進

 女性管理職比率を2030年に10%超となることを目標といたします。

(2023年の女性管理職比率は3.4%)

 新卒採用における女性新入社員比率を2030年に50%とすることを目標といたします。

(2024年4月入社の新卒採用における女性新入社員比率は57.1%)

※上記の数値は子会社等を除いた実績や目標値となります。

・中途採用の活躍推進

 新卒従業員の育成と共に新たな事業展開の局面に適した即戦力人材を採用することで、人材ポートフォリオの拡充を行います。

・外国籍の方の活躍推進

 

b.人材の育成

 従業員一人ひとりが、そのステージに合わせて成長が出来るよう、以下のような施策を実施しております。

・職位に応じた研修制度

例:新卒社員向け各種研修、職位別管理職研修

・若手従業員へのフォローアップ

例:新卒入社研修に加えて四半期毎のフォローアップ研修(最初の3年間実施)

・外部ビジネスセミナーの受講

全従業員を対象としたオンライン形式でのセミナー受講環境を整備し、社員へ周知

・四半期毎の目標設定及び人事評価面談の実施

 

c.多様な働き方の導入

 従業員一人ひとりの能力、生活スタイルを尊重し、価値を最大化出来るように多様な働き方の導入を推進してまいります。

・働き方改革(時差出勤、有休奨励期間の設定、海外赴任者の処遇改善)

・性別に関わらない育児休業制度の運用徹底

 

d.公正な評価と処遇

 従業員一人ひとりがやりがいを持って長期的に働いていくためには、公正な人事評価システムの運用が極めて重要となります。

 同時に、ご家族含めて安心感を抱いて頂けるよう、福利厚生については充実を図って参ります。

・退職金・企業年金制度

・従業員持株制度

・ジェンダーや国籍に関係ない評価制度の実現(優秀な若手社員は積極的に登用)

・遺児育英年金

・人間ドッグ費用補助

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経営成績並びに現在及び将来の事業等に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2024年6月26日)において当社が入手可能な情報等に基づいて判断したものです。また、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、当社が必ずしも重要なリスクとは考えていない事項であっても、事業等のリスクを理解する上で投資家にとって参考となる情報は記載しております。また、以下の記述は、別段の意味に解される場合を除き、連結ベースでなされており、「当社グループ」には当社並びに当社の連結子会社及び持分法適用会社(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)の定義に従います。)が含まれております。

 

(1)電気事業制度改正による当社グループの影響に関するリスク

当社グループは「電気事業法」に基づいた事業を行っております。電気事業法については、電力システムに関する詳細制度設計、制度見直しの議論が継続的に行われており、その内容によっては、競争状況等への影響がでる可能性があります。また、エネルギー基本計画の改定により、電源構成の大幅な変化が生じる可能性もあり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法令等の改正による当社グループへの影響に関するリスク

当社グループが運営する発電所は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(FIT制度 再生可能エネルギー固定価格買取制度)の設備認定を受けた発電設備による発電事業を行っております。現行制度では、一度適用された買取価格は上記法で定める調達期間内において変更されることはありません。経済産業省・資源エネルギー庁による再生可能エネルギー固定価格買取制度の検討によっては、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に何らかの影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギー政策及びその他当社グループの事業に関連する各種法令等が変更された場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす場合があります。

 

(3)気候変動問題へのリスク

当社グループは、バイオマス発電を中心にCO2フリー電源である再生可能エネルギーの拡大、バイオマス燃料の開発などにも取り組んでおります。2050年のカーボンニュートラル実現を目指すという政府目標が示され、電力部門においては、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めるとされているなか、当社の主軸事業を担うバイオマス発電事業を中心に、長期かつ不確実性の高い未来に対し事業のレジリエンスを高められるよう、世界の平均気温上昇を仮定したシナリオ分析を行い、2050年を想定した自社への影響についてリスク評価を行いました。例えば気候変動問題への対応のために新たな法的規制等が導入された場合、その内容によっては、事業計画・事業運営に大幅な変更や制約等が生じる可能性があり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、「第2事業の状況2 サステナビリティに関する考え方及び取組」にて具体的に世界の気温上昇に関し仮定した上で、リスク等を想定しています。

 

(4)競争激化に伴うリスク

当社グループの総販売電力量は、気温・気候の変化、経済・景気動向などの避けがたい外部環境の影響を受け

るほか、2016年4月に開始された電力小売全面自由化に伴う競合他社の新規参入などによる競争環境の変化、電力取引市場における卸電力取引の動向、相対取引の価格の動向などにより、影響を受ける可能性があります。新規参入者の急増は、電力購入価格の上昇と、電力販売価格の下落を招く可能性があり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)卸電力取引市場の取引価格の変動リスク

当社グループが行う電力卸売事業は、主として一般社団法人日本卸電力取引所への電力販売によるものです。また、同時に一般社団法人日本卸電力取引所から電力の調達も行っております。日本卸電力取引所における取引価格は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・ハマス衝突等国際エネルギー情勢を反映した原油、天然ガス等の資源価格の動向、季節や時間帯の電気の需要動向、太陽光発電の稼働状況、原子力発電所の稼働状況等、様々な要因によって変動します。当社は、変動リスクの軽減のためのヘッジ取引も行っておりますが、同取引所の取引価格が大きく変動した場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)需給バランス調整リスク

当社グループを含む小売電気事業者は一般送配電事業者の送電ネットワークを介して電力を供給するにあたり、一般送配電事業者の定める託送供給約款等に基づき、発電計画と実際の発電量、需要想定と実際の需要量を、それぞれ30分毎に一致させる義務(計画値同時同量制度)を負っており、事前に計画した需給量と実際の需給量の差分は、インバランス(料金)として一般送配電事業者との間で精算されることになります。当社グループでは、需給管理システムを用い、時間毎の需給バランスの最適化を図っておりますが、同時同量を達成できない場合において精算するインバランス料金が多額に生じる場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)電力調達先が当社グループ収益に与えるリスク

当社グループでは旧一般電気事業者及び発電設備を有する事業会社等からも電力の購入を行っております。当社が電力の購入を行っている発電所の多くは、化石燃料を用いた火力発電を行っており、燃料調整条項が付されているケースでは、輸入化石燃料の価格の変動により調達先発電所からの電力購入価格が変動する場合があり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、調達先電力会社等からの契約解除や契約更新の見送り、契約条件の変更等が行われた場合、並びに電力調達先の発電所のトラブル等により発電量が低下した場合も、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)燃料輸入元に関するリスク

当社グループが運営する発電所で使用するバイオマス燃料であるPKSや木質ペレットは、主に海外の国々を産地としています。これらの国において、法令の変更や政情不安、その他の理由から禁輸措置が執られた場合、または自然災害等により輸出が不可能になった場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)バイオマス燃料の価格上昇リスク

当社グループが運営する発電所で使用するバイオマス燃料であるPKSや木質ペレットが、今後、産業構造改革や技術伸展、生産国による法令、税制変更、不可抗力事由の発生及び需要増加による価格上昇が生じた場合、原材料費が増加し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、バイオマス燃料の価格変動リスクに備えて、調達するバイオマス燃料の一部について外貨建て固定価格での長期バイオマス燃料調達契約を締結しております。

 

(10)為替相場の変動リスク

当社グループが運営する発電所では、海外からの輸入によるバイオマス燃料を用いた発電事業を行っており、為替相場の影響を受けます。また、今後もアジアでの発電事業、燃料事業の拡大も計画しており、為替レートの急激な変動は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、一部の外貨建て営業債務について為替相場の変動リスクに対するヘッジを目的とした為替予約取引を行っております。

 

(11)当社グループが運営する発電所の操業リスク

当社グループが運営する発電所においては、安全操業及び設備の安定運転を心がけております。保守・保安作業については当社グループ従業員のみならず、発電設備メーカー及びメンテナンス会社と協議を重ねた上で実施しております。定期点検において、数週間の稼働停止期間が見込まれ、同点検において想定外の設備故障等により、計画通りの操業ができなくなった場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)当社グループの所有する発電所の出力制御のリスク

太陽光発電や風力発電といった発電出力が気候の影響を受ける自然変動電源においては、電力需給バランスを保ち電力供給の安定化を図ることを目的とし、運転開始後における無制限・無補償の出力制御を受け入れることが系統への接続要件となる出力抑制ルールを拡充する制度改定が2015年1月に行われました。

バイオマス発電については電力広域的運営推進機関の定める送配電等業務指針に基づき、原則として火力発電に準じた電源として出力制御を受けることになります。今後、想定を上回る出力制御が実施された場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)多額の設備投資に関するリスク

当社グループは、小売電気事業者として電力の小売を行うとともに、安価で再生可能なベース電源を確保するため、バイオマス発電所に積極的な設備投資を実施してまいりました。今後も国内外での再生可能エネルギーの発電所建設を推進、計画してまいります。

当社グループでは、設備投資の決定は市場動向、競合他社の動向等も検討しつつ、事業戦略及び当該投資の収益性等を総合的に勘案し、慎重に実施していくことにしています。しかしながら、経済動向や市場動向を正確に予測することは困難であり、当社の想定どおりに需要が拡大しなかった等の場合には、使用設備の除却や減損が生じるなど、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、当連結会計年度において多額の経常損失及び当期純損失を計上したことにより純資産が減少した結果、当連結会計年度末において、一部の借入契約等に付されている財務制限条項に抵触しました。

しかしながら、財務制限条項に抵触した当該契約につきましては、該当する全ての取引金融機関より期限の利益喪失の権利行使を行わないことについて承諾を得ており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

当該財務制限条項は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結貸借対照表関係 7 財務制限条項」に記載しております。

 

(15)エネルギー情勢の変動に伴うリスク

 ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・ハマス衝突等の、国外、及び国内の政治、経済、社会情勢や政策の変化などにより、国際的なエネルギー情勢は大きく影響を受ける可能性があります。前述(5)、(7)の通りエネルギー価格の変動は、当社グループの電源調達に大きな影響を与える他、物流などの問題から燃料調達への支障が生ずる可能性もあります。当社グループの事業運営に影響が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (16)情報管理・セキュリティ

 当社グループは、大量のお客様情報をはじめ、業務上の重要な情報を保有しています。社内規程の整備、社員教育等を通じて、情報の厳正な管理に留意しておりますが、サイバー事案などにより、これらの情報が流出した場合には、社会的信用が低下し、事業運営に影響が生じる可能性があります。

 

(17)海外バイオマス事業をはじめとする国内外での新たな事業への取組みについて

 当社グループは、収益基盤の強化を目指して、ベトナムを中心とした東南アジアにおけるバイオマス燃料事業、ベトナムを始めとするバイオマス発電事業、石炭火力をバイオマスに転換するトランジション事業など国内外での新たな取組みを進めております。また、国内電気事業については、フューエルコンバージョンによる再生可能エネルギーを利用した発電事業に加えて、カーボンニュートラルの推進、DRへの注力等にも取り組んでおります。

 しかしながら、これらの事業は、状況の大幅な変化、需要や市場環境の変化、規制の変更等の予期せぬ事態の

発生等により、当社グループが期待したほどの収益を生まない可能性があり、これらの事情により事業計画の変更、事業・建設の取り止め等があれば、これに伴う関連費用の発生、追加資金拠出等により、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性もあります。さらに、海外での事業については、為替リスクに加え当該国の政情不安等によるリスク(カントリーリスク)が存在します。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度に係る各数値については暫定的な会計処理の確定の内容を反映させております。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

ア.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ26,924百万円減少し、145,180百万円となりました。当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ8,204百万円減少し、89,947百万円となりました。当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ18,719百万円減少し、55,233百万円となりました。

 

イ.経営成績

区分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

売上高

296,312

244,977

△17.3

営業利益又は営業損失(△)

14,823

△19,851

経常利益又は経常損失(△)

15,234

△18,388

親会社株主に帰属する当期純利益

又は当期純損失(△)

9,131

△22,257

 

当連結会計年度における連結経営成績は、売上高は244,977百万円(前年度比△17.3%)、売上原価は254,143百万円(前年度比△6.1%)となり、売上総損失は9,166百万円(前年度は売上総利益25,719百万円)となりました。販売費及び一般管理費は10,685百万円(前年度比△1.9%)となり、営業損失は19,851百万円(前年度は営業利益14,823百万円)、経常損失は18,388百万円(前年度は経常利益15,234百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は22,257百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純利益9,131百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ13,818百万円減少し、19,670百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

区分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

21,489

△23,226

△44,715

投資活動によるキャッシュ・フロー

△14,576

△114

14,461

財務活動によるキャッシュ・フロー

△225

15,672

15,898

現金及び現金同等物期末残高

33,488

19,670

△13,818

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、使用した資金は23,226百万円(前連結会計年度は21,489百万円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純損失20,649百万円、法人税等の支払額又は還付額(資金の減少)4,781百万円、未収消費税等の増加(資金の減少)3,415百万円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は114百万円(前年同期比99.2%減)となりました。主な要因は、敷金及び保証金の回収による収入4,328百万円等があったものの、定期預金の預入による支出3,637百万円、有形固定資産の取得による支出2,674百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、得られた資金は15,672百万円(前連結会計年度は225百万円の支出)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入9,501百万円、社債の発行による収入6,000百万円、短期借入金の純増加額5,390百万円等によるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

当社グループは電力事業の単一セグメントであるため、以下の事項はサービス別に記載しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。

区分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

増減率(%)

発電実績(MWh)

発電実績(MWh)

電源開発(連結子会社による発電)

1,624,647

1,233,033

△24.1

合計

1,624,647

1,233,033

△24.1

 (注)当連結会計年度より、豊前ニューエナジー合同会社を連結の範囲から除外し持分法適用会社としました。

    そのため、当連結会計年度の発電実績につきましては豊前ニューエナジー合同会社を除外し、算定しておりま

    す。

 

b.受注実績

当社グループは電力事業を主たる事業として行っており、事業の性質上記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。

区分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

電力小売

98,525

75,337

△23.5

電力卸売

190,844

147,842

△22.5

その他

6,942

21,797

214.0

合計

296,312

244,977

△17.3

 (注)主要な販売先

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

一般社団法人

日本卸電力取引所

101,998

34.4

32,629

13.3

エナジーグリッド株式会社

31,403

12.8

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア.財政状態の分析

区分

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

増減額

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

流動資産

79,329

46.1

66,903

46.1

△12,426

固定資産

92,775

53.9

78,277

53.9

△14,497

資産合計

172,105

100.0

145,180

100.0

△26,924

流動負債

48,400

28.1

41,411

28.5

△6,989

固定負債

49,751

28.9

48,536

33.4

△1,215

負債合計

98,152

57.0

89,947

62.0

△8,204

株主資本

57,593

33.5

34,887

24.0

△22,705

その他の包括利益累計額

4,420

2.6

12,617

8.7

8,196

非支配株主持分

11,939

6.9

7,728

5.3

△4,210

純資産合計

73,953

43.0

55,233

38.0

△18,719

負債純資産合計

172,105

100.0

145,180

100.0

△26,924

 

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は66,903百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,426百万円減少いたしました。これは主に未収入金及び未収消費税等が増加したものの、現金及び預金、売掛金が減少したことによるものであります。固定資産は78,277百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,497百万円減少いたしました。これは主に豊前ニューエナジー合同会社が当社の連結の範囲から除外されたことにより建物及び構築物(純額)、機械装置及び運搬具(純額)が減少したことによるものであります。

この結果、総資産は145,180百万円となり、前連結会計年度末に比べ26,924百万円減少いたしました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は41,411百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,989百万円減少いたしました。これは主に短期借入金の増加があったものの、買掛金、1年内返済予定の長期借入金、未払法人税等、デリバティブ債務が減少したことによるものであります。固定負債は48,536百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,215百万円減少いたしました。これは主に社債が増加したものの、豊前ニューエナジー合同会社が当社の連結の範囲から除外されたことにより長期借入金が減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は89,947百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,204百万円減少いたしました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は55,233百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,719百万円減少いたしました。これは主に繰延ヘッジ損益の増加があったものの、親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金の減少及び豊前ニューエナジー合同会社が当社の連結の範囲から除外されたことにより非支配株主持分が減少したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は32.7%となりました。

 

イ.経営成績の分析

区分

上期

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

下期

(自 2023年10月1日

至 2024年3月31日)

通期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

売上高

(百万円)

120,894

124,082

244,977

営業利益

(百万円)

△10,704

△9,147

△19,851

営業利益率

(%)

△8.9

△7.4

△8.1

経常利益

(百万円)

△9,220

△9,168

△18,388

経常利益率

(%)

△7.6

△7.4

△7.5

 

区分

計画

2024年3月期

実績

2024年3月期

計画達成率

(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

売上高

219,400

244,977

111.7

営業利益

△21,300

△19,851

経常利益

△19,800

△18,388

親会社株主に帰属する当期純利益

△22,000

△22,257

 

当連結会計年度における我が国経済は、ロシアのウクライナへの侵攻、イスラエル・ハマスの衝突等、地政学リスクが高止まりする中、円安が進行し、インフレ率も高い状況にありました。エネルギー分野につきましては、燃料価格の変動は限定的でしたが、国内の電力については、記録的な高温であった夏季においても電力需要は昨年比で減少し、発電燃料の供給体制が十分だったこともあり、電力の市場価格は低迷が続きました。

このような状況の中、当連結会計年度における連結経営成績は、売上高は244,977百万円(前年度比△17.3%)、売上原価は254,143百万円(前年度比△6.1%)となり、売上総損失は9,166百万円(前年度は売上総利益25,719百万円)となりました。販売費及び一般管理費は10,685百万円(前年度比△1.9%)となり、営業損失は19,851百万円(前年度は営業利益14,823百万円)、経常損失は18,388百万円(前年度は経常利益15,234百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は22,257百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純利益9,131百万円)となりました。

電力需要の減少、電力市場価格の低迷により、前年度に調達していた電源に余剰が発生し、その余剰を逆ザヤで電力市場に販売せざるを得なかったことがこの損失の主な要因です。今後、このような損失の計上を起こさないために、既に対策を講じております。具体的には、電源の調達において、価格見通しに基づく余剰なポジションを取ることをやめ、精緻な販売見通しと発電見通しを基に、電源調達部門と小売部門がよりタイムリーに円滑なコミュニケーションが取れるように組織を変更しました。加えて、事業基盤の構築と国内事業の再整備及びグローバル化への対応等、事業活動全般にわたる徹底した効率化を図るべく、グループ一体となって取り組んでいます。

 

事業別に状況をご説明します。

 

電力小売事業については、当社グループの販売子会社であるエバーグリーン・マーケティング株式会社、エバーグリーン・リテイリング株式会社を中核として、株式会社沖縄ガスニューパワー、ティーダッシュ合同会社、株式会社イーセルが販売を行っております。高圧分野においては、利益重視の販売戦略により、一件あたりの売上は上昇しましたが、販売電力量は1,523百万kWhと38.5%減少しました。但し、期の後半には、電力先物市場等を活用した独自性のあるプランの引き合いが強まり、売上高の減少ペースは低減しました。低圧分野においては、販売量、供給件数ともに概ね横ばいで推移し、販売電力量は1,382百万kWh(0.2%増)、電力供給施設件数は307千件(0.0%増)となりましたが、市場連動プランへの切り替えにより利益率は安定化しました。

 

トレーディング事業については、2023年度のJEPXスポット価格が低位に推移した事で、2022年度に調達していた電源が割高となり、同時に、低圧需要を市場連動メニューに移行させたことや、高圧分野での販売量の減少により増加した余剰電源を安価なJEPXに卸販売せざるを得なくなり逆ザヤが発生した事で利益は大幅に減少しました。一方で、卸電力取引市場(JEPX)での取引、相対卸売取引及び電力デリバティブ取引など、様々な電力取引を組み合わせ、小売事業で販売している独自プランの立案、組成にも取組みました。

 

発電事業については、佐伯、豊前、大船渡、中城の各バイオマス発電所が年間を通じて計画通り稼働いたしました。一方で、土佐発電所はPKS価格とFIP単価を考慮した運用を実施し、糸魚川発電所は石炭価格と電力市場の価格を考慮した抑制運転を実施したため、計画を下回る結果となりました。Non-FIT大型バイオマス発電所については、新潟県での住民説明会を実施し、環境アセスメントが順調に進捗し、2029年度営業運転開始に向けて取組みを進めています。海外案件については、ベトナムにおいて、当社にとっても同国にとっても、初めてとなる大型の商用バイオマス発電所(ハウジャン省20MW:環境省の令和4年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」(※1)に採択)の建設が順調に進み、運転開始が2024年末に予定されており、カンボジアにおいては、水力発電プロジェクトについて、2025年11月完成に向け、迂回トンネル、上流入口補強工事等、順調に建設工事を進めております。

なお、国内初の商用の水素専焼発電所については、Hydrogen Technology社の独自の技術により製造される水素により発電が行えることを確認し、運転特性などのデータの取得が完了したため、2024年3月末に実証運転を終了いたしました。

 

燃料事業については、FIT用PKSの第三者認証対応を主とする供給不足により、PKSや木質ペレットの価格が上昇し、円安と併せてコスト負担が増加しております。このような状況下、PKSについてはマレーシア・インドネシアのJV等による自社調達と、長期契約との適切な組合せや、輸送コストの低減に向けた取組を進めることにより、コスト削減と安定供給体制の構築・拡充に取り組んでおります。また、木質ペレットについては、商社からの調達に加えベトナムに自社製造能力の確保をすることで、輸送コストを含めたコストの削減と、安定供給体制の構築・拡充に取り組んでおります。加えて、ベトナム国において木質残渣、もみ殻等の未利用のバイオマス燃料を確保し、栽培中のニューソルガムと併せ、バイオマス燃料の開発を進めております。

 

販売費及び一般管理費については、代理店報酬や人件費などの削減により減少しました。

 

当社グループは、~持続可能な社会実現のために~「再生可能エネルギーをコアに電力新時代の先駆者になる」というビジョンのもと、日本市場のみならず、ベトナムを始めとするアジア諸国においても脱炭素に向けた取組を段階的に着実に具現化し、創業より受け継ぐ「挑む文化」をもって「総合エネルギー企業」へと進化していきます。

 

※1 優れた脱炭素技術等を活用し、途上国等における温室効果ガス排出量を削減する事業を実施し、測定・報告・検証(MRV)を行う事業になります。途上国等における温室効果ガスの削減とともに、JCMを通じて我が国及びパートナー国の温室効果ガスの排出削減目標の達成に資することを目的としております。優れた脱炭素技術等に対する初期投資費用の2分の1を上限として補助を行います。尚、本事業はベトナム政府と日本政府の協力の下、実施されております。

 

ウ.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

エ.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主要な資金需要は設備投資等であり、自己資金及び長期借入金により調達しております。

また、短期的な資金需要に対しては、短期借入金による調達に加えて当座貸越契約やコミットメントライン契約により充分な流動性を確保しております。

 

オ.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

5【経営上の重要な契約等】

(1)バイオマス燃料調達契約

相手方の名称

契約締結日

契約期間

丸紅株式会社

2016年12月2日

2020年1月1日から2029年12月31日まで

サムスン物産株式会社

2016年12月19日

2020年1月1日から2029年12月31日まで

阪和興業株式会社

2016年12月21日

2020年1月1日から2029年12月31日まで

 

(2)当社連結子会社における契約

契約会社名

相手方の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

イーレックスニューエナジー株式会社

太平洋セメント株式会社

2012年10月11日

発電所用地の事業用定期借地権設定契約

2012年10月11日から

2033年3月31日まで

イーレックスニューエナジー佐伯株式会社

太平洋セメント株式会社

2014年7月31日

事業用定期借地権設定契約

2014年9月1日から

2036年9月30日まで

糸魚川発電株式会社

明星セメント株式会社

2016年6月30日

事業用定期借地権設定契約

2016年7月31日から

2032年3月31日まで

糸魚川発電株式会社

明星セメント株式会社

2016年6月30日

石炭中継契約書

2016年7月31日から

2032年3月31日まで

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発活動の金額は、59百万円であります。なお、当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。