第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 企業理念体系

① 企業理念

 

足下に種を蒔き続ける

 

「足下に種を蒔き続ける」は、当社グループが創業時から掲げている企業理念です。全社員が企業理念、経営方針、行動指針を理解し、日々の事業活動のベクトルを合わせるために、社員全員に経営方針書、行動指針書を配布し、社員全員が幾度となく繰り返し読み込んでおります。本企業理念は経営方針書の冒頭に記載があり、社員のDNAとなっています。

 

② パーパス

 

変化の先頭に立ち、

最先端のその先にある技と知を探索し、

未来を描き“今”を創る。

 

私たち、マクニカは、未来予測が困難な時代において、

地球環境・社会の変化を先読みし、その変化の先頭に立ち、失敗を恐れず、

ワクワク楽しみながら、挑戦心を持った開拓者「ファーストペンギン」であり続ける。

 

最先端のその先にあるまだ誰も知らない、

指数関数的に進化していく世界中の技:先端テクノロジーと、

知:インテリジェンスを探索し、その種を足下に蒔き続け、育て、つなぎ、つむぐ。

 

快適で信頼できる持続可能な未来ビジョンを構想し、

あらゆる業種・業界のプロフェッショナルと私たちの技と知を新結合する事で、

解像度の高いソリューションを“今”に、きちんと実装し、

その実現にとことんこだわり、情熱をもって新たな価値を創りあげる。

 

明るく・楽しく・元気よく!!

 

私たちは、皆さまと共に、笑顔あふれる、豊かな未来に向けて、終わりなき成功へと寄り添い、伴走します。

 

「パーパス」は、過去、現在、未来の事業を通じ、普遍的に共通する当社グループの「志」を表すものです。当社グループは、新しい技術をどこよりも早く探し出し、磨きこむ目利き力を駆使して、最先端の半導体、電子デバイス、ネットワーク、サイバーセキュリティ商品を提供してまいりました。近年は、これらの経験と知見を活かし、新しい領域へ活動の幅を広げ、事業活動を行っております。当社グループは、今後も最先端の技(テクノロジー)と知(インテリジェンス)をつなぎ、未来構想力と解像度の高い実装力を併せ持った共創パートナーとして、未来社会の発展に貢献する企業を目指していく所存です。

 


③ ビジョン:Vision2030

 

サービス・ソリューションカンパニーは、これまで50年以上にわたるグループの成長を支えてきた高付加価値ディストリビューションのビジネスモデルを拡大しながら、その強みを生かした新しいビジネスモデルであるサービス・ソリューションモデルへと変革していくことで目指す絵姿です。

サービス・ソリューションモデルは、半導体、サイバーセキュリティ事業で培ってきたCyberとPhysicalの強みの融合、創業時から最先端の技と知を追い求め種を蒔き続けてきた先進性、昨今急拡大している共創パートナー、研究機関をはじめ、従来のサプライヤ、お客様、官公庁やM&A等によるグループ会社などによって大きく広がるエコパートナーを組み合わせることで、当社グループと当社グループのエコパートナーにしかできない、高付加価値のサービス・ソリューションを提供していくものです。

従来の当社グループのビジネスはその大部分がBtoBで完結するものでしたが、今後はソリューションのカバレージをコンシューマにまで広げ、社会価値と経済価値を両立させるサービス・ソリューションを提供してまいります。

 


 

④ バリュー

 

Trust Excitement Aggressiveness Move Stretch

 

当社グループのバリュー「T.E.A.M.S」は、社員が日々判断や行動に迷った際に立ち返る価値観をまとめたものです。社員全員がバリューに基づきベクトルを一つにすることで、質の高いチームワークが実現し、未来を切り開くエネルギーと勢いを生み出します。

 

 

(2) サステナビリティ基本方針

当社グループは地球環境や社会課題への対応を経営方針の最重要事項のひとつとして捉え、当社グループのパーパスである「変化の先頭に立ち、最先端のその先にある技と知を探索し、未来を描き“今”を創る。」ための活動に邁進します。

 

① 重要課題を特定し、社会課題の解決と持続可能な社会に貢献するビジネス推進と事業投資マネジメント

事業活動を通じての社会、環境への貢献と企業価値の向上に努めます。

 

② 環境・人権に配慮したグローバル経営の推進とサプライチェーンの強化

環境保全、人権と労働の基本的権利に配慮した経営を行います。仕入先、得意先に当社グループのサステナビリティの考え方を理解してもらったバリューチェーンの構築を目指し、また、世界各国の文化、慣習などの理解と公正且つ誠実な事業活動を行います。

 

③ 社会からの信頼づくりとガバナンス・リスクマネジメント体制の強化

正確、明瞭、タイムリーな情報開示とステークホルダーとの対話をいたします。不正などが発生せず、持続可能な経営が実現できるガバナンス体制の構築と強化を行います。

 

④ サステナビリティ推進に向けた社員の教育・啓発

全ての社員がサステナビリティを推進する責務を負っていることから、社員に対してサステナビリティ推進に関する教育、啓発活動を行います。

 

(3) マテリアリティ(重要課題)と経営・事業活動の関係性

当社グループは社会、ステークホルダーにとって重要度が高く、かつ当社グループの経営インパクトも大きいと考える以下のマテリアリティを特定いたしました。

 

① 顧客課題の解決を通じ経済の発展に寄与する

Cyber Physical System(CPS)セキュリティ事業を通じ、情報化社会における情報セキュリティの強化に貢献します。また、スマートマニュファクチャリング事業を通じ、代替えリソースによる労働力確保などの顧客課題の解決に注力してまいります。

 

② 安全安心で快適な暮らしを創る

ヘルスケア事業を通じ、個人に最適化された個別化医療、予防医療の発展に貢献してまいります。また、スマートシティ/モビリティ事業を通じ、安全で安心できる生活環境の整備や地域社会の活性化にも寄与してまいります。

 

③ 持続可能な地球環境を創る

サーキュラーエコノミー事業を通じ、カーボンニュートラルの実現、再生可能な資源を活用した循環型社会の実現に貢献いたします。また、フード・アグリテック事業を通じ、生活基盤の強化による食料の安定供給を実現してまいります。

 

そして、これら3つのマテリアリティに共通して、最先端半導体の提供やIT商材の提供を通じて、産業と技術革新の基盤の創造に取り組んでまいります。

 

(注) スマートマニュファクチャリング事業、スマートシティ/モビリティ事業、ヘルスケア事業、サーキュラーエコノミー事業、フード・アグリテック事業とは、サービス・ソリューションモデルにおける事業テーマであります。

 


 

④ 経営・事業のレジリエンスを強化する

以下の3つのテーマのもとに経営のレジリエンスを強化してまいります。

 

・ガバナンスとリスクマネジメント強化

・ダイバーシティ&インクルージョン(人的資本の最大化)

・ステークホルダーとの対話の強化

 

(4) 長期経営目標

2030年度の長期経営目標として、社会的価値と経済的価値(企業価値)の両立を目指してまいります。社会的価値としては①顧客課題の解決を通じ経済発展に寄与する、②安全安心で快適な暮らしを創る、③持続可能な地球環境を創る、の3つのマテリアリティ、経済的価値として、現在の高付加価値ディストリビューションモデルに加え、サービス・ソリューションモデルを強化することにより、ビジネスモデル変革を図り、連結売上高2兆円、連結営業利益1,500億円、連結営業利益率7.5%、連結ROE15.0%を実現し、事業の持続的な成長を目指します。

 

 

2030年度

経営目標

連結売上高

2兆円

連結営業利益

1,500億円

連結営業利益率

7.5%

連結ROE

15.0%

 

 

(注) 1 半導体事業、サイバーセキュリティ事業、CPSソリューション事業の3つの柱で1,500億円

   2 2025年度より「ネットワーク事業」のセグメント名称を「サイバーセキュリティ及びその他ITソリューション事業」と名称変更し、「サイバーセキュリティ事業」と表記しております。なお、セグメント名称の変更に伴うセグメントの区分、範囲、測定方法への変更はありません。

 


 

 

(5) 中期経営計画(FY2025~FY2027)

① 当社グループを取り巻く環境

 

当社グループは、独立系エレクトロニクス専門商社として、エレクトロニクス市場の黎明期からスマートフォンなどの高度な情報端末が日常の生活空間の隅々に行きわたり、社会に欠かせない存在となった現在まで、半導体やサイバーセキュリティなどの世界の最先端の商品・技術を提供することを自らの使命としてきました。また、変化の激しいエレクトロニクス・情報通信業界にあって、当社グループは商品の物流機能だけを提供するのではなく、お客様の課題に対する的確な提案やお客様が新たな技術を使いこなしていただくためのテクニカルサポートの提供を通じて、競合他社との差別化を図ってまいりました。

昨今の当社グループを取り巻く環境並びに今後の見通しにつきましては、国内外におけるデジタルインフラを始めとした設備投資の動向、スマートフォン、民生機器、自動車、産業機器などの需給バランスの変動による好不況は避けられません。また、米国政府の関税政策や米中貿易摩擦、戦争などの国際情勢の変動、半導体メーカーの合従連衝を背景とした半導体商社間の競争激化、さらに国内におきましては商社間で買収・統合などの再編が発生しており、大きな環境変化を迎えております。IT産業におきましては、不正アクセスによる個人情報の大量流出や身代金を要求するランサムウェアの大量拡散など、世界的に高度化したサイバー攻撃の被害が拡大するなど、セキュリティリスクが高まっております。一方、今後は生成AIの実装が社会や企業で本格化するものと思われ、国内労働人口の減少や地方社会が抱える課題の解決に向けて、AIや自動運転技術などの活用が大きく期待されております。

 

このような環境の中、当社グループは、Vision2030の実現に向けて、中期経営計画(FY2025~FY2027)を新たに策定し、グループ経営の戦略的変革を推進しております。

 

② 中期経営計画

 

a. 中期経営目標

 

 

2027年度目標

連結売上高

1.4兆円

連結営業利益

800億円

連結営業利益率

5.7%

連結ROE

15.0%

 

(注) 連結ROE = 連結親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 連結自己資本(純資産から非支配株主持分を除いたもの、期末時点)

 

b. 中期経営戦略

 

・全社戦略

Vision2030に向けた成長投資

ビジネスモデル変革

AI関連ビジネスの強化

 

・半導体事業

成長国への重点投資

成長市場の継続強化

AI関連ビジネスの強化

 

 

・サイバーセキュリティ事業

高付加価値ディストリビューションモデルの拡大

高付加価値運用支援サービスの強化

サービス・ソリューションの拡大

 

・CPSソリューション事業

スマートシティ/モビリティ、スマートマニュファクチャリングのビジネス拡大

サーキュラーエコノミー、ヘルスケア、フード・アグリテックの個別強化

 

c. 経営基盤強化

財務戦略強化

人財戦略強化

IR戦略強化

ブランディング戦略強化

IT/DX戦略強化

コーポレートガバナンス強化

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。本項では気候変動による環境課題と人材の育成及び社内環境整備に関して記載しております。その他の項目に関しては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社は、サステナビリティ経営を当社グループで横断的に推進するため、サステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長は、サステナビリティ推進委員会の委員長と、業務執行の最高意思決定機関であるグループ経営会議の議長を担い、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。
 サステナビリティ推進委員会では、当社グループの環境課題に関する実行計画を立案し、進捗モニタリングを行っています。実行計画はグループ経営会議で協議・決議の上、最終的に取締役会へ報告を行っています。取締役会は、報告内容を受けて議論・監督を行います。
 

(2) 戦略

① 環境課題に関する方針、戦略

当社では、TCFDの提言に基づき、リスク及び機会を特定・評価し、気候関連問題が事業に与える中長期的なインパクトを把握するため、2030年における国内の主要3事業(注)1を想定し、シナリオ分析を実施しました。
 分析においては、産業革命前と比べ2100年までに世界の平均気温が4℃前後上昇することを想定した4℃シナリオと、1.5℃上昇する1.5℃シナリオを採用し、各シナリオにおいて政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。使用したシナリオのうち代表的なものは以下です。

 

a. 移行リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ

 ・4℃シナリオ:IEAによるStated Policy Scenario(STEPS)

 ・1.5℃シナリオ:IEAによるThe Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)

b. 物理リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ

 ・4℃シナリオ:IPCCによるRCP8.5

 ・2℃シナリオ:IPCCによるRCP2.6

 

分析の過程では各シナリオに対して、気候変動に関するインパクト要因を洗出し、約400の項目について事業への影響度を検証し、その中でも重要と思われるシナリオを特定いたしました。それらの特定したシナリオに関しては以下のとおり、影響度を定量的、定性的に検証し、大・中・小の3段階で評価をいたしました。

 

 

 

リスク・機会種類

リスク・機会要因項目

事業インパクト

評価

対応方針

リスク

移行

政策・法規制

炭素税導入

炭素税が製造・物流コストへ転嫁されることにより仕入れ価格が上昇する

DXによる収益力の確保

(中期経営計画)

EV車への移行に伴う内燃機関自動車への規制強化

EV市場の拡大に伴い、既存の内燃機関自動車部品の売上が減少する

EV市場への注力

(中期経営計画)

エネルギー・電力調達コストの増加

再生可能エネルギーの調達による追加的コストの発生

省エネ効果の高い設備の導入、切替え

技術

設備投資及び燃料コストの増加

オフィスへの低炭素技術導入により設備投資コストが増加する

中長期的な損益中立でのGHG排出量削減

低GHG半導体製品の普及拡大

半導体製造過程における低GHG化に伴い、大量のEOL/PCN(注)2が発生し、対応コストが増加する

DXによる自動化を推進

(中期経営計画)

市場

メーカー・顧客間での直販化が加速

物流におけるGHG削減のため、メーカーと顧客の直販化が進む

DXによる顧客接点強化と顧客への直接輸送の拡大

低炭素技術への移行

顧客の需要変化や市場変化への適応の遅れによるビジネス停滞や売上の減少

高効率なパワー半導体等環境性能に優れた取扱製品群へのシフト

評判

投資家、顧客、当社応募者等ステークホルダーの行動変化

環境配慮への対応の遅れやレベルの低さによりビジネス機会の損失、企業価値・ブランド価値の毀損を招く

気候変動対応への積極的且つ継続的な取り組み

物理的

急性物理的

リスク

洪水・高潮によるオフィス・物流拠点への影響

異常気象の増加、深刻化に伴い、従業員が就労できず、事業活動が低下する/沿岸部に位置するオフィス・ロジスティクスセンターが被災することによる損失

BCP対策マニュアルの整備

機会

市場

EV市場の拡大に伴う売上拡大

EV市場の拡大に伴い、EV向け半導体売上の増加

EV市場への注力
(中期経営計画)

社会課題解決型ビジネスの伸長

再生可能エネルギー、Foodtech、エネルギーマネジメントなどの循環経済型新規ソリューションビジネスが増大

 関連市場への積極展開
(中期経営計画)

環境貢献を実現するソリューションに向けた半導体の売上拡大

排出ガス削減、省電力、クリーンエネルギー、スマートグリッド等に貢献する各種ITシステムへの半導体採用が増大

関連市場への積極展開
(中期経営計画)
 

脱炭素化を促進するスマートシティ/モビリティ向けビジネス機会の増加

脱炭素化に寄与するスマートシティ/モビリティの進展により、半導体、サイバーセキュリティ、サーキュラーエコノミーといった当社事業領域におけるビジネス機会が増加し、売上が拡大

関連市場への積極展開

(中期経営計画)

 

(注) 1 対象とした国内の主要事業は「半導体事業」「ネットワーク事業」「CPSソリューション事業」の3事業

2 EOL/PCN(End Of Life/Product Change Notice):製品の生産終了や販売終了、あるいは製造プロセスや生産工場変更・追加、製品仕様の変更等により、メーカーから顧客向けに発行される通知書のこと

 

② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループは、人は財産(人財)という考えのもと、人財を「Vision実現に向け、競争力を高め、サステナブルに成長を続けていく原動力、価値を創造する重要な資本」と位置づけ、人財価値の最大化への投資を続けております。人材の育成に関する取り組みとして「多様な人財の確保・活用=ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)」を掲げており、多様な人財が活躍でき、人財価値の最大化を図るために、人財育成方針を定めています。

 

a. 多様性確保についての考え方(ダイバーシティ推進基本方針)
◎ DEI推進の目的:企業の競争力を高め経済的価値と社会的価値の最大化

・ 多様な経験を受け入れることによるイノベーションの創出と既存人財の成長

・ 異文化を取り入れることによる企業文化を進化

・ 将来の深刻な労働力不足(国内)などの課題の解決

◎ 人材活用:

・ 創業時より「フェア」「実力重視主義」「抜擢人事」「エンパワーメント」をポリシーとした人財の登用

  を重視

・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向に関係なく実力のある人を登用する文化・土壌

◎ 方針:

・ 多様性に対応した職場環境(ハード面・ソフト面)の改善を継続

・ 様々な社員が主体的・自律的に考え選択・判断でき、個々の能力を最大限発揮できる環境を構築

 

b. 人材育成方針
◎ 各個人のキャリアデザインをサポートし、キャリアオーナーシップを高める教育機会を提供
◎ 各個人を信頼し、任せる事で、個人の活躍と成長の加速を促す
◎ 年齢や経験に関係ない、実力重視の抜擢人事を実施

 

c. 社内環境整備への取り組み
◎ DEI推進

・ 性別、国籍、人種、宗教、年齢、障がい、性的指向、地位、立場にかかわらず活躍できる環境の整備

・ E-Learning等を活用した社員への継続啓蒙と経営陣による率先垂範

◎ 健康経営・Well-Being経営の促進

・ 健保組合と連携した健康促進施策の充実

・ 労務管理・残業対策の強化

・ 健康経営を推進し、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」認定を取得

◎ 働き方改革推進

・ 生産性が最も上がる方法や場所を、各組織・チームが主体的・自律的に判断する働き方の継続運用

◎ 従業員エンゲージメントの向上

・ 「経営計画発表会」の開催(年に1回、国内外のグループ社員が一堂に集まっての方針・戦略の共有、表

  彰の場)

・ 「行動テーマ」の設定(年度において社員が意識すべきスローガンを設定しベクトルを合わせる

・ 「強い組織づくりアンケート」の実施(従業員サーベイの結果をもとに、全部署が課題と対策を設定し、

  組織の改善を図る取り組みを10年以上継続)

◎ 人事制度・報酬体系の整備

・ 多様な人財が働きやすい制度への見直し

・ 安心して働くための報酬水準の見直し

・ 2024年4月からパーパスの実現を目指して、ケイパビリティを強化し変革を加速させる新人事制度

  を運用開始

 

 

(3) リスク管理

当社は、代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス・リスクマネジメント委員会にて、当社グループの業務運営におけるリスクマネジメント、コンプライアンス状況を把握・分析し、取締役会・グループ経営会議への報告及び必要な施策の企画・立案を行っています。

サステナビリティ推進委員会はシナリオ分析を行い、当社の気候変動リスク・機会を特定・評価し、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会とともに管理しております。
 

(4) 指標及び目標

① 環境課題に対する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社は、2024年5月8日、マクニカグループ全体としてSBT(注)「Science Based Targetsイニシアチブ」認定を取得しており、この認定に基づき温室効果ガス排出削減目標を設定、事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを推進しております。当社では、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するため、引き続き、環境負荷低減に積極的に取り組んでまいります。

 

指標

基準年

目標年

目標

Scope1,2削減率

2022年度

2030年

△42.0%

2050年

△100%

Scope3削減率

2022年度

2030年

△25.0%

 

(注) Science Based Targetsの略称で、気候変動などによる気温上昇を2℃未満に抑えるというCOP21パリ協定の長期目標達成に向けて、企業が科学的根拠に基づいて設定する温室効果ガス排出削減目標のこと。

 

なお、当社グループの温室効果ガス排出量実績につきましては、本有価証券報告書の提出日現在、集計中のため、集計が完了次第、サステナビリティ情報を掲載した当社のウェブサイトにて報告予定です。

 

② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に係る指標については、当社においては、関連する指標データ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関連する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の子会社である㈱マクニカのものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年度(2031年3月)
まで
910

8.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1) 外部・内部経営環境に関するリスク

① シリコンサイクル・需給バランス・景気変動の影響について

当社グループの属する半導体業界はシリコンサイクルと呼ばれる好不況のサイクルが存在し、浮き沈みを繰り返していると言われています。これは、半導体市況の上昇局面では、多くの企業が一斉に生産設備の増強を計画し、その後、生産も同時に行われるため、供給過剰が発生して製品価格が下落し、売上高の減少・停滞が発生するものです。一方、不況となれば一斉に投資に抑制がかかり、その後には供給不足となって価格下落がとまるとともに稼働率が上がって再び好況となります。当社グループは、このような半導体業界特有のサイクルによる好不況の影響を受ける可能性があります。また、当社は顧客、仕入先と常に最新情報の共有などを行っておりますが、昨今のように、このようなサイクルとは別に当社グループが取り扱う半導体の需要の変化や半導体の供給力の変化、または、半導体が搭載される製品の価格やライフサイクルの変化などによって当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② サプライチェーン全般について

当社グループは、主力の半導体事業において、米国企業を中心とする半導体メーカーの製品を仕入れて、世界各地の顧客(各種製造事業者)に販売しております。半導体メーカーの製造工程には前工程、後工程、出荷テスト工程があり、製品ごとにそれぞれの工程がアジアを中心に世界各地に所在しており、納入先である顧客の生産拠点もその多くがアジア各地に所在しております。当社グループもアジアをはじめ世界28の国と地域に事業拠点を設置しております。当社グループでは事業継続のための各種取組みを行っておりますが、感染症パンデミックによる都市封鎖、自然災害等により、現状のサプライチェーンモデルが機能不全に陥り、事業継続が困難になった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 仕入先との関係について

当社グループは、最先端の技術・商品などを有する国内外の様々な企業を仕入先としております。それら仕入先とは、代理店契約などを締結し、緊密な関係を維持しておりますが、仕入先がM&Aに遭遇したり、仕入先自体の代理店政策の見直しにより代理店再編成が生じた場合は、商権に変更が生じるなど業績に影響を与える可能性があります。また、半導体及びIT・セキュリティ業界は、技術革新の激しい業界でありますが、仕入先の商品開発力が著しく低下し、商品の競争力に優位性が保てない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 新規仕入先の継続的な発掘について

当社グループは国内外の最先端の技術力を持ち、競争力の高い商品・サービスを有した企業をいち早く発掘し、代理店契約を締結することで商品ラインナップを拡大・強化してまいりました。これらの企業の獲得競争は激しいものとなっており、仮にこのような新規仕入先の継続的な発掘が困難になった場合は、当社グループの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ サービス・ソリューションモデルの構築について

半導体やネットワーク事業で培ってきた高付加価値ディストリビューションのビジネスモデルを拡大し、従来の仕入先、顧客に加え、研究機関、官公庁、M&Aにより拡大したグループ会社等と協働しながら、技術商社の枠を超えた価値を創造する高付加価値サービス・ソリューションモデルへの変革を目指しております。既に各市場で必要な専門技術やパートナーを獲得し、例えば、自動運転ソリューションやスマートマニュファクチャリング等の分野において着実に一定の取引実績を上げておりますが、今後、これら新規事業の進捗に遅延等が生じた場合、将来の当社グループの収益拡大に向けた事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 高度な技術力の維持と人材確保について

当社グループの属する半導体及びIT・セキュリティ業界は、技術革新の激しい業界にあり、今後の成長及び収益性の向上は半導体、セキュリティ、AI、デジタル技術などの高度な専門性に基づくソリューションを顧客の課題に応じて提供することが重要となります。このような価値を顧客に提供するには、社内の技術力を高め、優秀な人材を採用、育成することが必要になります。近年特に優秀な技術者の獲得競争は激しいものとなっており、高度専門人材の活躍を後押しし、人的資本を最大化する各種取組みを推進する等、当社グループは優秀な技術者の確保に注力しておりますが、仮に十分な技術者を採用できない場合や優秀な技術者が流出した場合には、事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ カントリーリスク

当社グループはアジアを中心として世界28の国と地域に拠点を設置しております。事業展開する海外各国・各地域において、法律・規制の大きな変化、テロや戦争、米中対立の激化による半導体製品の中国への輸出規制や中国での不買運動、その他政治・経済状況の急激な変化、疾病といった予測し難い事態が生じ、事業活動に大きな影響を受け、事業継続が困難になった場合、海外での事業活動の停滞や不測の事態による損害の発生等、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

 

(2) 財務リスク

① 為替相場変動の影響について

当社グループのビジネスにおきましては、2025年3月期の国内仕入額に占めるドル建比率は76.5%、海外も含めた販売額に占めるドル建比率が41.8%と外貨建比率が高いことから、為替相場変動が当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。すなわち、ドル建の販売に対しては売上高の変動、ドル建の仕入に対しては売上原価の変動、さらにこれらに係る債権債務の発生時から決済時迄の為替相場変動による営業外損益発生の可能性があります。また、米国主要仕入先との取引では、仕入値引を仕入の実施から数ヶ月後の販売時に決済する取引条件としており、この間仕入値引に相当する債権額が変動する可能性があります。加えて、当社グループは、連結財務諸表を海外子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成しているため、為替相場変動による換算リスクを負っています。当社グループは、輸出入取引で生じる外貨建債権債務をヘッジしておりますが、かかる為替リスクを完全に払拭することはできず、為替相場変動が当社グループの当期純利益に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 棚卸資産廃棄及び棚卸資産評価の影響について

当社グループのビジネスにおきましては、顧客からの所要数、納期などの要求に迅速に対応するため数ヶ月分の棚卸資産を確保しております。当社グループでは、棚卸資産額を適正に保つため商品が搭載される最終製品の需要予測、顧客の所要数量及び受注状況を考慮しながら、仕入先への発注を調整するなどして棚卸資産を管理しております。しかしながら急激な顧客の所要数量の変動、また、生産中止品や保守用在庫として確保していた商品が、当初見込んでいた顧客所要数量より差異が生じる際は、廃棄、又は資産価値評価の見直しを必要とする可能性があります。このような場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業投資リスクについて

当社グループは、既存事業における確固たるポジションの確立やグローバルに拡大していくためにM&Aを行い、子会社化を進めてきました。また、継続的な成長を目指し、既存事業だけでなく、AI、ヘルスケアといった新規事業分野の企業への出資も行っております。これらの出資に関しては、出資の妥当性・適正性について事業開発委員会の審議・検討を経て経営会議または取締役会で決定し、継続的にそれら企業の業績モニタリングを行っております。しかしながら、出資先企業の価値または株式の市場価値が低迷した場合には、当社グループが投資金額の全部もしくは相当部分を失うことがあります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 法的及びその他リスク

① 当社が影響下にある法規制について

当社グループは、半導体・集積回路などの最先端の電子部品及びネットワーク関連商品・セキュリティ関連製品などの情報通信機器の輸出入を行っているため、輸出関連法規や関連諸規定の影響下にあります。当社グループでは、安全保障貿易管理を適切に実施するため、我が国の「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づく輸出関連法規や関連諸規定を遵守しております。取扱商品の輸出に際しては、仕入先メーカーと協力のうえ「該否判定」を実施するほか、「仕向地、需要者、用途、取引経路等」の把握にも努めておりますが、需要者を通じて懸念国に迂回輸出され、軍事用途製品の一部に転用される可能性もあります。
 当社グループとしましては、海外の需要者に対しても、軍事的用途に使用しないこと、安全保障貿易に関する法令・関連諸規定、国際条約等を遵守することを規定した確認証を提出して頂くよう求め、リスクの軽減に最大限努めておりますが、万一、当社グループの取引商品が予期せぬ需要者、用途で使用された場合、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、米国などの関税政策の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報セキュリティについて

当社グループは、当社が提供する商品・サービスの販売活動を通じて、顧客企業が保有する個人情報などの各種機密情報を知り得る場合があります。このような状況において、サイバー攻撃、もしくは人為的な過失等により、サービス停止、個人情報や機密情報の漏えい・改ざん・紛失等が発生する可能性があります。当社では最先端のサイバーセキュリティ対策製品を導入し、システムがサイバー攻撃を検知した際には、即座に分析・対応できる組織を構成しております。また、世界各地の関連法規制を含み、社員への教育や啓蒙を継続的に実施することで、リスクの軽減に最大限努めております。しかし、このような取組みにもかかわらず、情報漏えい等が発生した場合に、顧客企業などからの損害賠償請求や、当社グループへの信頼喪失を招くことで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 求償リスクについて

当社グループの取扱商品及びサービスは、業務の性格上、顧客企業の様々な製品・サービスに使用されておりますので、製品不良等の問題により、当社グループが損害賠償を負う可能性があります。当社グループでは、契約書、取扱商品のクレームに対する仕入先メーカーとの連携及び協力等により、リスクの予防・軽減に最大限努めておりますが、このような対策にもかかわらず、重大な問題が発生した場合には、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、企業収益の改善や実質所得の増加による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大から景気は緩やかに回復しております。世界経済におきましては、米国では底堅い内需に支えられ堅調な動きがみられていますが、米国の政策変更により貿易摩擦の懸念が発生し、先行き不透明な状況が続いています。

当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、半導体市場は、年度を通じて生成AI向けに高性能な半導体(GPUやメモリ)の需要が増加しました。また、車載市場では、生産台数は伸び悩んでいるものの、安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きなど、車1台当たりの半導体搭載量が増加しております。一方、産業機器市場では、FA・工作機械、医療機器、計測機器など幅広い分野において、中国市場の停滞や在庫調整の影響を受け調整局面となりました。

IT産業におきましては、企業のIT投資環境は引き続き良好となっております。セキュリティに関しては、ランサムウェアなどのサイバー攻撃により情報の漏えいや業務停止するなど、甚大な被害を及ぼしていることから、経営課題ととらえる企業が増加しております。また、近年、企業のITシステムは、クラウド活用やリモートワークの進展などにより外部接続の増加とともに対策するべき点が増えており、社内システム内でもユーザやデバイスを最初から信頼しないことを前提とするゼロトラストや情報資産のリスクを評価・管理するASM(アタック・サーフェス・マネジメント)への注目が高まっています。

また、当社グループが今後もさらなる事業拡大及び企業価値の向上を目指していくためには、半導体及び電子機器に対する技術的な知見・知識や集積回路、電子デバイスなどの販売スキルを有する人材やエンジニアといった人的資本を獲得することが必要不可欠であるため、2024年1月に当社の完全子会社(株式会社マクニカ)による株式会社グローセルの株式の公開買付を実施し、2024年3月より特定子会社としました。当社との人的資本を組み合わせることにより、半導体事業では、事業上のシナジーを生み出し、新たな顧客の獲得につながりました。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は1,034,180百万円(前期比0.5%増)、比較的利益率の高い産業機器向けビジネスの減少による影響、また販売費及び一般管理費において、人件費の増加や株式会社グローセル、NAVYA MOBILITY SASの連結などにより前期と比較し15,718百万円増加したことにより営業利益は39,649百万円(前期比37.8%減)、経常利益は37,318百万円(前期比39.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては25,279百万円(前期比47.4%減)となりました。

 

セグメント別の経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

集積回路及び電子デバイスその他事業

当事業におきましては、車載市場では、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとした安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたハイブリッドカーやEV化の流れにより、車1台当たりの半導体需要が伸びています。また、株式会社グローセルの収益が加わることで、車載、民生機器、OA・周辺機器市場において前年から増加しております。また、コンピュータ市場では、AIサーバー向けに需要が増加しました。一方、産業機器市場においては、企業の設備投資意欲はあるものの中国市場の停滞が予想以上に長引いていることや在庫調整などもあり、FA機器や工業用ロボット、半導体製造装置や医療機器など幅広い市場で調整局面となりました。通信インフラ市場は、国内向けの設備投資が落ち着いており、低調に推移しました。

これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は880,242百万円(前期比3.0%減)、営業利益は26,328百万円(前期比53.5%減)となりました。

 

ネットワーク事業

当事業におきましては、クライアント端末へのセキュリティ対策の重要性認識が浸透し、既に対策ソリューションを導入済みの国内大手企業においてもグループ内で対象者を拡大する動きが広がっており、エンドポイントセキュリティ関連商品が大幅に伸長しました。また、官公庁や金融機関での大型案件により、データ分析関連商品やクラウドセキュリティゲートウェイ関連商品が大幅に伸長しました。加えて、東南アジア地域を中心とした海外ネットワーク事業も順調に伸長しております。

これらの結果、同事業の当連結会計年度の売上高は153,943百万円(前期比27.3%増)、営業利益は13,320百万円(前期比88.2%増)となりました。

 

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べ6,186百万円増加となりました。これは主に電子記録債権が3,914百万円、その他の流動資産が11,875百万円それぞれ減少したものの、現金及び預金が9,819百万円、売掛金が11,800百万円それぞれ増加したことによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ1,992百万円減少となりました。これは主にのれんが469百万円、長期貸付金が872百万円、繰延税金資産が826百万円それぞれ減少したことによるものです。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べ2,002百万円増加となりました。これは主に支払手形及び買掛金が3,239百万円、未払法人税等が7,657百万円、契約負債が326百万円、その他の流動負債が997百万円それぞれ減少したものの、短期借入金が14,140百万円増加したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ2,865百万円減少となりました。これは主に退職給付に係る負債が41百万円、その他の固定負債が102百万円それぞれ増加したものの、長期借入金が3,000百万円減少したことによるものです。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べ5,056百万円増加となりました。これは主に資本剰余金が6,093百万円、為替換算調整勘定が1,110百万円、非支配株主持分が3,042百万円それぞれ減少したものの、利益剰余金が10,869百万円増加、自己株式が4,384百万円減少したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の38,623百万円に比べ9,829百万円増加し、48,452百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは24,232百万円増加(前連結会計年度は、39,949百万円増加)となりました。これは主に法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益37,491百万円の計上があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは9,573百万円減少(前連結会計年度は、18,457百万円減少)となりました。これは主に有形固定資産、無形固定資産の取得による支出、事業譲受による支出及び子会社株式の取得による支出があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは4,229百万円減少(前連結会計年度は、23,014百万円減少)となりました。これは主に短期借入金の純増があったものの、長期借入金の返済による支出、自己株式の取得による支出及び配当金の支払いがあったことによるものです。

 

 

③ 仕入、受注及び販売の実績

a. 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

767,584

△1.5

ネットワーク事業

147,065

+29.2

合計

914,650

+2.4

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

779,871

+32.1

482,659

△17.2

ネットワーク事業

166,062

+29.5

56,752

+27.2

合計

945,934

+31.6

539,412

△14.1

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

集積回路及び電子デバイスその他事業

880,242

△3.0

ネットワーク事業

153,938

+27.3

合計

1,034,180

+0.5

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の当社の属するエレクトロニクス産業におきましては、半導体市場は、年度を通じて生成AI向けに高性能な半導体(GPUやメモリ)の需要が増加しました。また、車載市場では、生産台数は伸び悩んでいるものの、安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたEV(電気自動車)化の動きなど、車1台当たりの半導体搭載量が増加しております。一方、産業機器市場では、FA・工作機械、医療機器、計測機器など幅広い分野において、中国市場の停滞や在庫調整の影響を受け調整局面となりました。IT産業におきましては、企業のIT投資環境は引き続き良好となっております。セキュリティに関しては、ランサムウェアなどのサイバー攻撃により情報の漏えいや業務停止するなど、甚大な被害を及ぼしていることから、経営課題ととらえる企業が増加しております。また、近年、企業のITシステムは、クラウド活用やリモートワークの進展などにより外部接続の増加とともに対策するべき点が増えており、社内システム内でもユーザやデバイスを最初から信頼しないことを前提とするゼロトラストや情報資産のリスクを評価・管理するASM(アタック・サーフェス・マネジメント)への注目が高まっています。

このような経済環境下、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ0.5%増加1,034,180百万円、営業利益は前連結会計年度に比べ37.8%減少39,649百万円、経常利益は、39.8%減少37,318百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ47.4%減少25,279百万円となりました。

 

a. 売上高

当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ0.5%増加1,034,180百万円となりました。

集積回路及び電子デバイスその他事業におきましては、車載市場では、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとした安全性の向上・自動化に向けた高度な制御システム、脱炭素化に向けたハイブリッドカーやEV化の流れにより、その他標準IC等を中心に車1台当たりの半導体需要が伸びています。また、株式会社グローセルの収益が加わることで、車載、民生機器、OA・周辺機器市場において前年から増加しております。一方、産業機器市場においては、FA機器、工作機械、医療機器、計測機器など幅広い分野で中国市場の停滞や在庫調整の影響を受け、アナログICやPLD等を中心に全体として調整局面となりました。その結果、前連結会計年度に比べて3.0%減少880,242百万円となりました。

ネットワーク事業におきましては、クラウド活用やリモートワークの普及に伴い、従来の境界防御では対応できないセキュリティ対策として、エンドポイントセキュリティ関連製品の需要が大幅に伸長しました。また、官公庁や金融機関での大型案件により、データ分析関連商品やクラウドセキュリティゲートウェイ関連商品が大幅に伸長しました。加えて、既に進出している東南アジア地域を中心とした海外事業の開拓がさらに進みました。その結果、前連結会計年度に比べて27.3%増加153,943百万円となりました。

 

b. 売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価は、前連結会計年度の899,101百万円から1.5%増加し、912,928百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は88.3%となりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ23.9%増加し、81,602百万円となりました。なお、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は7.9%であります。

 

c. 営業利益

営業利益は、販売費及び一般管理費の増加等により、前連結会計年度の63,733百万円から37.8%減少し、39,649百万円となりました。

 

d. 営業外収益

営業外収益は、持分法による投資利益が351百万円減少したものの、受取利息316百万円及び受取配当金73百万円の増加等により、前連結会計年度の1,573百万円から10.1%増加し、1,732百万円となりました。

 

e. 営業外費用

営業外費用は、商品補償費用が502百万円減少したものの、為替差損1,168百万円の増加等により、前連結会計年度の3,340百万円から21.7%増加し、4,064百万円となりました。

 

f. 経常利益

経常利益は、前連結会計年度の61,966百万円から39.8%減少し、37,318百万円となりました。

 

g. 特別利益

特別利益は、負ののれん発生益3,090百万円の減少等により、前連結会計年度の5,621百万円から79.4%減少し、1,158百万円となりました。

 

h. 特別損失

特別損失は、投資有価証券評価損1,036百万円の減少等により、前連結会計年度の1,324百万円から25.7%減少し、984百万円となりました。

 

i. 税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の66,263百万円から43.4%減少し、37,491百万円となりました。

 

j. 法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額

税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、前連結会計年度の26.5%から1.9%増加し、28.4%となりました。

 

k. 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の48,069百万円から47.4%減少し、25,279百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. 財政状態

「第2 事業の状況 4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

b. キャッシュ・フロー

「第2 事業の状況 4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 

 

c. 資金需要

当社グループの運転資金需要の主要なものは、売上の増加に伴う支払と回収のサイト差及び商品在庫の保有によるものです。サイト差については、主に海外の仕入先に支払う仕入代金のサイトが国内外の得意先からの回収サイトよりも短くなっていることが主な要因であります。また商品在庫に関しては、得意先への納入期限に対応するために適正水準を保持しております。

 

d. 財務政策

当社グループにおける増加運転資金につきましては、内部資金、売上債権の流動化、金融機関からの借入及び増資等によって調達しております。グループ各社の必要資金は、主に子会社である㈱マクニカが資金調達を行い、他のグループ企業に融資していく方針であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の報告数字に影響を与える見積りは、主として棚卸資産、貸倒引当金、投資の減損、繰延税金資産、賞与引当金、退職給付費用等であり、継続して評価を行っております。見積り及び判断については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

a. 棚卸資産

当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。

 

b. 貸倒引当金

当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

 

c. 投資の減損

当社グループは長期的な取引関係維持のために、特定の顧客、仕入先及び金融機関等に対する少数持分を保有しております。また新規仕入先の開拓を目的とした情報収集のために、投資事業有限責任組合及びそれに類する組合(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるもの)等への出資をしております。これらには市場価格のある公開企業等への投資と市場価格のない未公開企業等への投資があります。市場価格のある投資につきましては、市場価格が取得原価に比べ50%以上下落した場合には無条件で減損処理を行い、30%以上50%未満下落した場合には個別に下落率の推移、発行体の財政状態等を勘案し、減損処理を行っております。

一方、市場価格のない投資の減損につきましては、実質価額が著しく低下した場合、合理的な事業計画等に基づき、回復可能性が認められない場合には実質価額まで減損処理を行っております。

また非連結の子会社及び関連会社の株式等についても、有価証券の評価方法に準じて処理を行っております。

当連結会計年度において減損処理を行い、投資有価証券評価損234百万円を計上しております。今後も株式市場の悪化や投資先の業績不振などにより、評価損を計上する可能性があります。

 

d. 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得と慎重かつ実現可能性の高い継続的な経営計画を検討したうえで繰延税金資産を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を回収又は解消できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上する可能性があります。

 

e. 賞与引当金

賞与引当金は、支給対象期間の業績に応じて支給見込額のうち当期に帰属する額を計上しておりますが、実際の支給額は支給時点における外部環境及び当社グループの状況を勘案のうえ決定されるため、実際の支給額が見積りと異なる場合には追加の費用計上が必要となる可能性があります。

 

f. 退職給付費用及び退職給付に係る負債

退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。前提条件には、退職給付債務の割引率、将来の報酬水準、退職率及び直近の統計数値に基づいて算出される死亡率や年金資産の期待運用収益率等が含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来において認識される費用及び計上される負債に影響を与える可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

当社は、2015年4月1日付で、連結子会社である㈱マクニカとの間で経営管理・指導に関する経営指導契約、業務委託に関する契約を締結しております。

当社グループが締結している仕入先との主要な契約は、次のとおりであります。

 

契約会社の
名称

相手先の名称

契約品目

契約の内容

契約期間

㈱マクニカ

Analog Devices, Inc.

半導体集積回路、

その他関連製品

代理店契約

2018年8月13日から2019年12月31日までで、さらに2020年1月1日から1年間契約。以降も1年間ごと自動更新となり、90日前までに相手方に書面による通知をすることで終了することができる

Infineon Technologies Japan K.K.

半導体集積回路、

その他関連製品

代理店契約

2020年11月1日から有効。3ヶ月前までに相手方に書面による通知をすることで終了することができる

Renesas Electronics  Corporation

半導体集積回路、

その他関連製品

代理店契約

2019年11月20日から解約事由がない限り有効

Avago Technologies International Sales Pte. Limited

半導体集積回路、

その他関連製品

代理店契約

2021年7月1日から2022年6月30日までの1年契約、以降も1年ごとに更新

MACNICA CYTECH LIMITED

Analog Devices, Inc.

半導体集積回路、

その他関連製品

代理店契約

2018年8月13日から2019年12月31日まで以降どちらかが解約するまで1年ごとの更新

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究活動は、サービス・ソリューションカンパニー(技術サービス提供会社)として、顧客の課題解決に対応するためのテクニカルサポート(技術支援)を中心としております。基礎技術(要素技術)に関する研究開発活動は行っておりませんが、最先端の規格に対応したソフトウェアの開発やボード、モジュールなどの企画・開発を行っております。また、サービス・ソリューションモデルの基礎となるサービス及びCPSプラットフォームの開発を進めております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は771百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 集積回路及び電子デバイスその他事業

集積回路及び電子デバイスその他事業では、リファレンスボードや組込みソフトウェアなどの開発を行ってまいりましたが、その実績をもとに当社グループ取扱商品に付加価値を提供するオリジナル・ボードや、IP、ソフトウェア、IoT関連等の開発及び販売を行い、当社グループの差別化に貢献しております。当該事業における当連結会計年度の研究開発費は771百万円であります。

 

(2) ネットワーク事業

該当事項はありません。