第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境等

① 経営方針

当社は「グローバルな競争社会で成長発展していくために、常に将来を見通し、大胆に変化していく。」を経営方針としております。いまや鶏卵といえども国内情勢だけを見て経営判断できる時代ではなくなったと認識しております。国内、国外の動向を把握し、常に10年後の近未来を予測し、過去、現在の仕事のやり方に固執することなく積極的かつ大胆に変化していく事が肝要です。

 

② 経営環境

 当事業年度における日本経済は、個人の豊かさに直結する実質賃金は今年3月まで24か月連続で前年同月比マイナスを記録しているものの、インバウンド需要の復活や堅調な企業を背景とした株価の上伸などようやく成長への力強い足音が感じられるようになってきました。その一方で国際情勢は依然として終結の目途が立たないロシアによるウクライナ侵攻に加え、ガザ地区で始まったイスラエルとパレスチナ人の紛争など、より不安定になってきています。

鳥インフルエンザについては一昨年秋より全国に広がった鳥インフルエンザにより1,700万羽近い採卵鶏が殺処分され、全国で「卵ショック」と言われる極端な卵不足が起こったことは記憶に新しいところです。昨年秋からのシーズンについては日本では大規模な鳥インフルエンザの発生はありませんでしたが、北米では依然としてかなりの発生が確認されており、さらに世界的に鳥インフルエンザが鳥以外の哺乳類にまで感染を拡大しているなど、大きな懸念材料となっています。

 

(2)経営戦略等

① 事業領域の拡大

当社の持続的成長のため、引き続き事業領域の拡大に注力してまいります。当社は既に一昨年秋より宮城県にある農場で生産した平飼い卵を関東、東海、東北、北海道において販売開始しておりますが、昨年度以降、当該卵の業務用需要開拓、海外市場への輸出に取り組んでおります。また同農場で製造される発酵鶏糞肥料についても国内販売のみならず東南アジア向け輸出にも取り組んでおります。

 

② 相場に左右されない収益体質の構築

鶏卵は相場商品であり、このため当社収益も相場動向に左右されやすい収益構造になりがちです。当社は相場に左右されない収益体質構築のため、販売価格が比較的安定し、相場の影響を受けにくい「付加価値卵」(各種栄養成分を強化した卵、アニマルウェルフェアを意識した平飼い卵)の生産、拡販に引き続き注力してまいります。

 

③ 農場生産成績向上による鶏卵生産コストの引き下げ

生産コストの引き下げはメーカーでもある当社にとって永遠の取り組み課題です。最新技術を導入した鶏舎への建替え、飼料成分・飼育環境の改良、徹底した防疫対策を通じ、鶏卵生産成績の向上とコスト削減に取り組んでまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社の事業は製品の定価販売が可能な製造業と異なり、製品たる鶏卵、原料である飼料ともその価格が相場に大きく左右されます。このため売上高総利益率等の指標を計画や経営上の目標とすることはかえって経営の本質を見誤る危険性を含んでいるため、事業計画上これらの指標に目標を設定しておりません。代わりに各事業毎の事業成績目標の達成状況を判断するため、産卵率、平均卵重、飼料要求率(卵を産むためにどれだけの餌が必要かを示す指標)、一人一時間当たり製造量(パック詰め等作業)、相場差(販売単価と鶏卵相場の価格差)等の生産・製造・販売に関連する指標を当社では重視しており、結果として売上高総利益率の改善につながるような事業活動を行っております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 高病原性鳥インフルエンザ感染防止対策の徹底

 昨年4月に千歳農場での高病原性鳥インフルエンザが確認され、約70万羽の鶏の淘汰を行い、道内の消費者の皆様をはじめ関係各位に多大なるご不便をおかけしました。当社は今回の事故を教訓に農場における感染防止策を再点検し、引き続き再発防止に最大限の対策を打ってまいります。さらに千歳農場においては、農場の一か所で感染が確認された場合でもその影響を最小限にとどめるため、農場の分割管理を実施しております。

 

② 鶏卵生産コストの高騰に伴う適正な鶏卵販売価格への改定

飼料価格は2020年10月から2022年9月までの2年間ほぼ一本調子で値上げされ現在まで高止まり状態となっています。さらに飼料や鶏卵を運搬する物流費は「24年問題」を背景に今年に入り大幅に増加しています。このほかベースアップ等により人件費、労務費も上昇しており、これらの生産コスト上昇分を適切に売価に転嫁すべく、当社取引先に対しては生産コストの増加事情を丁寧に説明し理解を求めたうえで、適正価格に改定していきます。

 

③ ケージフリー卵の生産・販売

 当社はアニマルウェルフェアへの取り組みの一つとして一昨年秋より宮城県において生産したケージフリー卵の関東、東海、東北、北海道での販売を開始していますが、昨年度よりは業務用ユーザー、海外への輸出にも取り組んでいます。本年度はさらに外資系ホテルへの販売等に取り組み、販売数量の増加を図ります。

 

④ 事業領域の拡大

日本は少子化により13年連続で人口が減少していますが、特に当社の主たる市場である北海道では全国平均を上回るスピードで人口減少が進んでいます。当社としては販売市場の拡大策として、アジアにおける鶏卵、発酵鶏糞肥料輸出に引き続き注力していきますが、これに加え、国内外においてM&A、資本参加案件を積極的に検討し、これらを通じて事業領域の拡大に取り組んでいきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 21世紀を生きる企業として子供たちの未来のために地球の環境を守ることは最優先課題です。この課題に取り組むため、当社は「環境方針」を定め、「かけがえのない星=地球を将来にわたってまもっていくために」(当社環境方針から抜粋)、家畜排せつ物の適切な処理、排水の適切な処理、産業廃棄物の削減を3つの基本方針として定めていますが、その中でも特に上場畜産会社として「鶏糞処理」をサステナビリティ上の最優先課題と認識しており、そのガバナンス、戦略、リスク管理、指標/目標は以下の通りであります。

 人的資本への取り組みは、当社としてのサステナビリティを中から支える重要課題であり、これに関する戦略、及び指標/目標も合わせ記載しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社が北海道及び東北で保有する9つの農場から発生する鶏糞の処理については農場部門の責任者たる生産本部長がその管理責任者となっております。組織としてのモニタリング、ガバナンス体制としては、内部監査室長が年に最低1回各農場における鶏糞処理状況を視察し、その結果を最低年1回取締役会に報告することとし、その際問題があれば取締役会から対応指示を行います。

 

(2)戦略

①サステナビリティに関する戦略

 当社農場で発生する鶏糞については農地還元による処理を基本とし、9つの農場の内近隣に農地がある8農場においては生鶏糞、または発酵鶏糞を近隣農家に提供することで農地還元を実行しております。

 近隣に農家が少ない1農場については、農場内に発酵鶏糞ペレット肥料製造工場を設置、製品はホームセンターや肥料卸へ外部販売を行うとともに、昨年度より本格的に東南アジアへの輸出に取り組んでいます。

 

②人的資本に関する戦略

当社は人材育成方針、社内環境整備方針を以下の通り定めております。

人材育成方針

 優秀人材の獲得・定着、年功序列を排した能力評価によるリーダー層の創出

 挑戦・失敗ともに成長の糧とできる人材育成のための指導・支援の仕組みの充実

 先取・オリジナルなアイデア発想のための職員個人の能力開発への支援強化

 

社内環境整備方針

 ダイバーシティ推進への取組による新たな発想の醸成

 身体的・精神的健康の確保、労働安全衛生水準の向上

 コンプライアンスへの取り組み強化

 

(3)リスク管理

鶏糞処理に係るリスクの特定、評価、管理方法は以下の通りです。

リスクの特定:鶏糞が処理できず、在庫として農場に積みあがること。大雨等で農場外に流れ出すこと

リスクの評価:農場内で鶏糞在庫を一定数量内に抑えることができているか

リスクの管理:農場ごとに毎月月末に鶏糞在庫数量と外部還元数量を本部長宛報告

 

(4)指標及び目標

 鶏糞処理については農地還元率を指標とし、目標は全農場で100%農地還元(外部販売を含む)とします。産業廃棄物としての処理は行わず、100%農地還元を達成することで循環型社会の形成に貢献します。なお、実績としてこれまでのところ農地への100%還元を達成しております。

 

 人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は以下の通りです。

人材の育成に関する指標

①社員定着率(入社3年以内)

目標:全社員90%、新卒社員80% 実績:全社員76%、新卒社員76%

目標達成のための施策:適材適所の人事異動、研修の拡充、年間休日増加等の福利厚生の充実を通じ従業員満足度を向上させ、定着率アップを図る。

 

②研修への投資(一人当たりの研修費用)

目標:20千円 実績:18千円

目標達成のための施策:階層別研修の拡充、資格取得に対する支援と通信教育参加者の増加を図る。

 

社内環境整備に関する指標

①障害者雇用率

目標:5% 実績:3.58%

目標達成のための施策:既に法定雇用率は2.3%を超えているが、今後もサポート体制の整備された職場での特別支援学校等からの新規採用を継続し、障害者を含めたより多様性ある職場作りを進める。

 

②労働災害発生件数

目標:重大災害0件、軽微災害0件

実績:重大災害6件(うち長期療養災害4件、短期療養災害2件)、軽微災害2件

目標達成のための施策:職場での自主的活動を支援(研修ツールの導入等)するとともに定期的に安全衛生委員会を開催、リスクアセスメントによる労働環境の整備・改善、ヒヤリハットの共有等を通じてより安全な職場環境を構築していく。

 

 女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女賃金格差については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 鶏卵相場の変動性

 当社は鶏卵を主力商品として生産及び販売しており、鶏卵相場の変動によるリスクにさらされております。当社では、相場変動リスクを軽減するため、鶏卵相場に左右されない固定単価で販売可能な特殊卵へのシフトを進めてきた結果、鶏卵販売重量の約40%が特殊卵となっております。また、鶏卵相場の変動に対する負担増が軽減される卵価安定基金制度(注)があり、これに加入(積立て)しております。しかしながら、国内の需要バランスが崩れ供給過剰となり、鶏卵相場の低迷が長期にわたった場合は、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(注) 鶏卵生産者経営安定対策事業(通称 卵価安定基金制度)について

 本制度は卵価低落時に価格差補填交付金を交付することによって鶏卵生産者の経営の安定を図るもので現在は一般社団法人日本養鶏協会が事業主体となっています。

 まず、毎年「補填基準価格」が決められますが、2024年度(2024年4月~2025年3月)は222円となっております。「標準取引価格」(JA全農たまご株式会社の東日本営業所(東京相場)と同西日本営業所(大阪相場)の加重平均取引価格…取引の実績)が補填基準価格を下回った場合、下回った価格の90%が交付される仕組みです。加入者はキロ当たり5円程度の積立てを行います。また、支給額の16.7%は国からの補助金となります。

 卵価安定基金支払及び卵価安定基金収入は販売費及び一般管理費で処理しております。

 

② 業績の季節変動について

 当社の売上高及び営業利益は上述の通り、鶏卵相場の推移によって大きく変動します。例年、鶏卵相場は1月の初市で大きく下落しますが2月にかけて上昇し、4月までは比較的高値圏で推移し、5月の連休以降は下落傾向になり、夏場にかけてかなり下落し、8月後半から9月にかけて上昇し、10~12月の需要期に高値推移という一定のリズムの季節変動性を持っています。

 この要因は気候の良くなる春先から一羽あたりの産卵が向上する反面、暑い夏場に向けて外食産業や一般家庭の消費が減退し、供給過剰になるためです。逆に、秋から冬にかけて卵価は高くなりますが、これは鍋物、クリスマスケーキなどに代表される冬季食品の伸びによる需要の増加のためです。

 このような鶏卵相場特有の季節的変動のため、業績の比重が下期に高く、当社の利益は第3四半期会計期間に偏重する傾向があります。

 

③ 原料価格の変動

 当社の鶏卵生産の原価の60%程度は飼料費であります。飼料価格は、作況、船運賃、為替変動や世界的な需要動向に左右されるため、当社では自社の研究鶏舎において飼料コスト低減のために給餌方法の試験を実施しております。飼料コストの低減を研究することによって、飼料価格の上昇を吸収し生産原価の低減に努めております。また、飼料価格の変動に対する負担増が軽減される飼料安定基金制度(注)があり、これに加入(積立て)しております。しかしながら、飼料価格が大きく上昇し十分なコスト削減ができなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(注) 配合飼料価格差補填事業(通称 飼料安定基金制度)について

 本制度は原料価格に起因する配合飼料価格の変動によって生ずる畜産経営者の損失を補てんすることにより畜産経営の安定を図るもので、現在は一般社団法人全日本配合飼料価格畜産安定基金と一般社団法人全国配合飼料供給安定基金が事業主体となっています。

 当社が加入している全日本配合飼料価格畜産安定基金を例にとると生産者がトン当たり800円、配合飼料製造会社がトン当たり1,600円(2024年度)を積立てます。そして、当該四半期の配合飼料の輸入原料価格が直前1年間に係る配合飼料輸入原料価格の平均価格を上回るとき、その上回る額を限度として補てん金が交付されます。

 飼料安定基金支払及び飼料安定基金収入は製造原価で処理しております。

 

④ 卵価安定基金制度及び飼料安定基金制度の基金不足

 養鶏経営の健全な発展を目的として、既述の通り卵価安定基金制度と飼料安定基金制度の仕組みが形成されています。

 当社も、同制度が相場の変動及び飼料価格の変動に対する負担増が軽減される仕組みとなっていることから、これらの安定基金制度に加入(積立て)しております。しかしながら、これらの基金制度は、卵価低迷又は飼料価格高騰が長期化する場合には基金不足により充分に機能せず、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 新型コロナウイルスの影響について

 2020年以降感染が拡大した新型コロナウイルス感染症とそれに伴う緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は、鶏卵消費にとっても大きなマイナスの影響を与え鶏卵相場の下落要因となりました。今年に入り感染症は沈静化の様相を示し、昨年5月には感染症法上の分類が5類となり、その影響は徐々に薄れてきております。しかしながら、もし再び感染者やそれに伴う死者が急増し、まん延防止等重点措置を含む緊急対策が実施された場合には、相場の急落を通じて当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業活動に関するリスク

① 単品経営(鶏卵依存)

 当社の売上のほとんどは鶏卵販売が占めており、かつ上述の(1)①において記載のとおり、相場商品であることから、利益は鶏卵相場により大きく変動する可能性があります。当社としては、鶏卵生産コスト低減のため、自社研究鶏舎において生産性向上のための様々な研究の実施により有効な研究結果を一般鶏舎に適用し、鶏卵相場が低迷しても利益を計上できるような体質づくりを進めております。しかしながら、これらの対策を上回る価格変動が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 食品の安全・衛生問題について

 当社におきましては、安全・安心で高品質な製品を提供するために最新鋭設備の導入や製品の品質管理、従業員への衛生教育を行うなど、衛生問題には万全の注意を払っております。卵が原因であるサルモネラ食中毒は我が国では近年大きく減少しておりますが、生で食べる食品であるため食中毒のリスクを完全に排除することはできません。道内におきましては、健康な雛を当社農場で育成し、かつ鶏舎単位で雛をすべて入れ替えるオールイン・オールアウト方式を採用し、鳥獣の侵入を防ぐウインドレス鶏舎での育成を実施しております。成鶏舎におきましてもウインドレス鶏舎にてHACCP手法を取入れた飼養管理をする他、GP工場においてパッキングする前に卵殻の塩素殺菌等を実施するなど様々なサルモネラ対策を実施しております。しかしながら、今後、偶発的な事由によるものも含めて、当社製品を起因とした安全衛生問題が発生する可能性があり、もし発生した場合は当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 鳥インフルエンザ発生による殺処分、移動制限等

 当社は鳥インフルエンザ防止のため様々な衛生対策を策定し厳重に実施管理してきましたが、残念ながら昨年4月に千歳農場にて発生が確認され、70万羽近くの採卵鶏を淘汰いたしました。当社としても今回の感染を踏まえ、感染防止対策にはより一層注力して参りますが、今後とも感染リスクを100%排除することは出来ません。

 当社の成鶏で鳥インフルエンザが発生した場合、原則として鶏は殺処分となり、淘汰した羽数に対応した鶏卵供給力が減少します。感染前の供給力に戻るまでには1年程度の時間がかかることから、この間の売上減少を通じて当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼすことになります。

 当社の育成農場に鳥インフルエンザが感染した場合、当社は育成農場を予め分散して建設しているため生産機能が全滅することはありませんが、育成農場から成鶏農場への大雛供給に支障を来たし、生産計画に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また当社農場の近隣で鳥インフルエンザが発生した場合、近隣農場は一時的に鶏や鶏卵の移動制限を受けるため、その間出荷が出来なくなる可能性があります。

 

 

④ 鶏糞処理

 家畜の糞尿処理については「家畜排せつ物の管理適正化及び利用の促進に関する法律」により適切に処理することとなっています。家畜排せつ物は不適切な管理によって、環境問題の発生源となりうる側面を有する一方で、堆肥化など適切な処理を施すことによって土地改良資材や肥料としての有効活用が期待され貴重な資源としての側面も有するものといえます。当社では鶏の排せつ物がこの対象となり、鶏糞のほとんどは肥料として近隣農家へ無償で譲渡しております。

 しかしながら、鶏糞処理が円滑に行われなければ当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制によるリスク

 当社では、コンプライアンスを経営上の重要な課題と位置付け、その強化に努めておりますが、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することはできません。当社の事業活動が法令や規制に抵触するような事態が発生したり、予期せぬ法令や規制の新設・変更が行われたりした場合、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)自然災害のリスク

 当社では自然災害への対策として生産、製造、営業、管理の各部門毎にBCPを作成しております。しかしながら、地震、台風などの自然災害が発生し、当社の農場・GP工場が想定外の大規模な被害を受けた場合には、事業活動が停滞し、また損害を被った設備の修復のため多額の費用が発生するなど、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(資産合計)

 当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べて915百万円増加し17,764百万円となりました。

 流動資産は、前事業年度末に比べて581百万円増加し6,344百万円となりました。これは、主として現金及び預金が1,371百万円増加した一方で、未収入金が839百万円減少したこと等によるものです。

 固定資産は、前事業年度末に比べて334百万円増加し11,419百万円となりました。これは、主として建物が117百万円、機械及び装置が226百万円、投資有価証券が109百万円それぞれ増加した一方で、建設仮勘定が177百万円減少したこと等によるものです。

 なお、当事業年度において実施いたしました設備投資の総額は1,240百万円であります。これらの資金は自己資金でまかなっております。

 

(負債合計)

 当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べて655百万円減少し5,446百万円となりました。

 流動負債は、前事業年度末に比べて339百万円減少し3,649百万円となりました。これは、主として買掛金が73百万円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が227百万円、未払法人税等が213百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

 固定負債は、前事業年度末に比べて316百万円減少し1,796百万円となりました。これは主として長期借入金が302百万円減少したこと等によるものです。

 

(純資産合計)

 当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて1,571百万円増加し12,318百万円となりました。これは、剰余金の配当を169百万円計上したものの、当期純利益を1,656百万円計上し、その他有価証券の評価差額金が84百万円増加したことによるものです。

 

b.経営成績

 鶏卵業界におきましては、一昨年秋より全国に広がった鳥インフルエンザにより1,700万羽近い採卵鶏が殺処分され、全国で「卵ショック」と言われる極端な卵不足が起こりました。鶏卵相場はこの影響を受け、昨年秋までは比較的高水準で推移していましたが、採卵鶏の再導入が進んだ秋以降は下落局面に入り、当事業年度平均鶏卵相場は、北海道Mサイズが1キロ295円66銭と前年比15円46銭高、東京Mサイズは1キロ276円49銭と前年比25円75銭高となりました。

 当社は下落する鶏卵相場、昨年4月の当社千歳農場における鳥インフルエンザ発生による生産減、円安を背景に高止まりする飼料価格に対応するため、差別化卵の拡販に注力してきました。この結果、当事業年度の業績は、売上高は18,901百万円(前年同期比6.0%増)、営業利益は2,245百万円(前年同期比70.2%増)、経常利益は2,316百万円(前年同期比67.4%増)、当期純利益は1,656百万円(前年同期比122.2%増)となりました。

 なお、当社は鶏卵事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 ②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べて1,371百万円増加し、3,900百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,376百万円の収入(前事業年度は2,519百万円の収入)となりました。これは主として、税引前当期純利益2,384百万円、減価償却費1,036百万円、補助金の受取額493百万円等による資金の増加が、法人税等の支払額894百万円等による減少を上回ったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、1,282百万円の支出(前事業年度は1,820百万円の支出)となりました。これは主として有形固定資産の取得1,235百万円等による資金の減少等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、722百万円の支出(前事業年度は19百万円の支出)となりました。これは主として長期借入金の返済で529百万円、配当金の支払169百万円等による資金の減少によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における生産実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

14,100

1.3

鶏糞肥料

101

△20.3

レンダリング

178

△30.3

食 品

117

15.0

合計

14,498

0.7

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.当事業年度において、鶏卵の生産実績の内容に著しい変動がありました。これは、昨年4月に当社千歳農場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、生産量が減少した一方で、ウクライナ侵攻に端を発した世界的な原料価格高騰や円安進行等に伴う、国内飼料価格、エネルギーコスト、物流費の高騰等によるものです。

 

b.商品仕入実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における商品仕入実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

130

△15.5

食 品

359

130.1

その他

0

△9.5

合計

490

57.5

 (注)金額は仕入価格によっております。

 

c.受注実績

 当社は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当社の事業は鶏卵事業の単一セグメントであり、当事業年度における販売実績は区分別に記載しております。

区分別

当事業年度(百万円)

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

鶏 卵

18,243

4.8

鶏糞肥料

23

150.5

レンダリング

68

△21.0

食 品

564

80.4

その他

0

△36.2

合計

18,901

6.0

 (注)1.総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。

2.当事業年度において、鶏卵の販売実績の内容に著しい変動がありました。これは、昨年4月に当社千歳農場で高病原性鳥インフルエンザが確認され、販売量が減少した一方で、国内の鳥インフルエンザ感染拡大により1,700万羽近い採卵鶏が殺処分されたこと等により鶏卵相場が上昇したこと等によるものです。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社の当事業年度の財政状態及び経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下の通りです。

 当社千歳農場における鳥インフルエンザ発生の影響を受け鶏卵販売重量は前年同期比11.4%の減少、鶏卵相場はMサイズ平均の前年同期比北海道相場で5.5%、東京相場で10.3%上昇しました。その結果、売上高は前年同期比6.0%の増加の18,901百万円となりました。

 売上高総利益率は20.8%と前年同期比3.3ポイント改善しました。営業利益については、主に卵価相場の上昇により前年同期比926百万円増加の2,245百万円となりました。また、当期純利益は1,656百万円となりました。

 当社が経営管理上重視している道内市場占有率、販売重量、農場における飼料要求率、製造部門における稼働率等の管理指標は鳥インフルエンザ発生による影響を受けた千歳農場、千歳GP工場を除けばほぼ計画通りとなりました。また千歳農場、GP工場についても採卵鶏の再導入が進み、農場成績、工場稼働率等は感染前の水準に戻っております。これらの点から当社の収益構造を支える基礎的な体力は維持されていると判断しております。

 今後については経営戦略に掲げた事業領域の拡大、付加価値卵の拡販、農場成績向上に加え、課題として掲げた販売単価の改定や物流の合理化によるコスト削減等を確実に実行し、当社収益構造の改善を達成してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 資金需要動向については以下の通りです。

 当社の事業活動における運転資金需要の主なものは飼料費、初生雛費、大雛費、各事業についての一般管理費等があります。設備資金需要としては、鶏舎の建替え、GP工場の機械更新、情報処理投資等があります。

 資金調達及び流動性確保に関する認識は以下の通りです。

 当社の事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入による資金調達を行っております。尚、当社のD/Eレシオは0.14と極めて低く、当面の資金調達余力に問題はないと認識しております。

 新型コロナウイルス感染症による当事業年度のキャッシュ・フローへの影響につきましては、「3 事業等のリスク (1)事業環境に関するリスク ⑤新型コロナウイルスの影響について」に記載の通りであります。また、鳥インフルエンザ感染による影響につきましては、「3 事業等のリスク (2)事業活動に関するリスク ③鳥インフルエンザ発生による殺処分、移動制限等」に記載の通りであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。