第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第3四半期累計期間において新たに追加した体性幹細胞再生医薬品分野とiPSC再生医薬品分野の両分野共通のリスクは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

 

iPSC/体性幹細胞両再生医薬品分野のリスク

① 開発期間が長期にわたることに伴う損失の計上と追加の資金調達の可能性について

 当社は、iPSC再生医薬品分野及び化合物医薬品分野に加えて、平成28年1月より体性幹細胞再生医薬品分野においても研究開発を進めております。化合物医薬品分野においては平成22年より、欧州等において製品を上市しておりますが、当該分野の市場規模は小さく、当社の事業の成長は体性幹細胞/iPSCの両再生医薬品分野の今後の研究開発の進展及び事業展開の成否に依拠しています。当社の中核事業であるiPSC再生医薬品は、前臨床試験段階であり、製品の上市までには長い年月が必要となります。

 また、体性幹細胞再生医薬品分野の新規パイプラインHLCM051は、アサシス社の開発する幹細胞製品MultiStemを用いた脳梗塞急性期を対象疾患とするもので、すでにアサシス社により欧米にて第Ⅱ相試験が実施されております。当社はその試験結果を踏まえて、法改正で新設された早期承認制度に基づいた承認の取得を想定しております。

しかし、iPSC/体性幹細胞再生医薬品両分野において、実際に上市されるまでは収益が上がらず、損失を計上し続ける見込みとなっております。また、その開発には多額の資金が必要となることから、追加の資金調達を行う可能性があります。

 これらの場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定のパイプラインに関する提携先への依存について

 当社は、その主要パイプラインであるHLCR011の開発に関して、大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)との間で共同開発契約、実施許諾契約及び合弁契約を締結し、これらの契約を前提に国内におけるRPE細胞製品の開発計画を立てております。

 また新規パイプラインHLCM051に関しては、その製品はアサシス社によって製造され、当社はその供給を受けて国内にて開発・販売を行ってまいります。アサシス社の製造・供給体制に何らかの支障が生じた場合、当社は製品供給を受けることができず開発あるいは販売を継続することが困難になる可能性があります。

 さらに、これらの契約は、相手先企業の経営方針の変更等の当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性が全くないとはいえません。これらの契約が終了した場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新と競合について

 当社が実施しているiPSC再生医薬品に係る研究開発の領域は、国内のみならず、世界的にも注目を集めている研究分野であるため、新しい知識や技術が発見されイノベーションが生まれやすい分野であります。

 特に、当社が現在開発対象としているiPSC再生医薬品の対象疾患である加齢黄斑変性に関しては、ES細胞由来の細胞医薬品を含め、様々な治療法の開発が進展しているところであります。

 体性幹細胞再生医薬品分野においては、米国を中心にすでに様々な研究開発が進んでおり、より実現性の高い技術革新が行われる可能性があります。

 当社では、大学や公的研究機関と連携し、常に最先端の技術開発に取り組んでいると考えておりますが、周辺領域を含め当事業に参入している企業や潜在的な競争相手が、当社の保有している知的財産権等を上回る新技術を開発し、関連特許を取得する場合や先行して上市した場合などには、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 再生医療等製品に関する法規制について

 平成26年11月に施行された薬機法は、医薬品、医療機器等の安全かつ迅速な提供を図るものであり、iPSC/体性幹細胞再生医薬品を含む再生医療等製品について早期承認制度に基づいた条件及び期限付承認制度を新設しております。この申請においてすでに承認実績があるものの、iPS細胞を由来とする製品はいまだ実績がないことから、他の細胞由来の製品とは異なる検証が必要となる可能性も考えられます。また、かかる薬機法を含む再生医療等製品に関する法規制については、技術の革新の状況や予期し得ない事態の発生等に対応して、継続的に見直しがなされる可能性があります。当社は、そうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めておりますが、法規制の追加や法改正の内容如何によっては、これまで認められてきた品質管理基準を上回る品質管理が求められる等の理由によって、多額の設備投資が必要となり、または当社の想定よりも多数の試験が求められた場合、開発スケジュールが大幅に遅れるなどの事態が生じる可能性があります。このような場合においては、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ iPSC/体性幹細胞再生医薬品の製品特性について

 iPSC/体性幹細胞再生医薬品は、ヒト細胞・組織を原材料とした細胞を人体へ移植・投与するという特性上、原材料の安全性に関するリスクや、様々な予期せぬ副作用・医療事故の発生などの可能性があり、そのために法制度上も厳しい規制がなされております。当社では、そうした規制に対応し、事故を防止するためにも、臓器移植に知見を持つ関係者を集めるなど様々な施策を講じております。しかしながら今後さらに予期せぬ事態が発生する可能性を完全に防ぐことは難しく、そうした事態が発生した場合には当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 製造・販売体制の構築に関する不確実性について

 当社のiPSC再生医薬品事業は、研究開発活動において成果をあげることにとどまらず、その後の製造及び販売についても事業として展開していくことを視野に入れております。そのため、当社では、提携先企業等とともに細胞の大量培養技術の開発など製造方法の確立に向けて注力しております。

 しかしながら、医薬品の開発には、多種多様な技術が必要となり、今後、何らかの理由で製造方法の確立、製造体制の構築等が困難になった場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社は、日本向けiPS細胞由来RPE懸濁液(HLCR011)については、大日本住友製薬と当社の共同出資会社であるサイレジェンに対して製造を委託することとしており、現在、製造体制の構築に向けた準備を行っております。また、販売体制についてもサイレジェンを活用した販売体制の整備を進めておりますが、こうした取組みが当社の想定どおりに進まなかった場合には当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 一方、HLCM051におきましては、当社単独で販売体制を構築するのか、あるいは製薬企業等との提携により販売体制を構築するのか、その方針はいまだ決定しておりません。今後、体制構築に何らかの障害が生じ、当社の計画より遅れた場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 海外での事業展開について

 当社は、当社の開発するiPSC再生医薬品が、国内のみならず、世界各国の難治性疾患の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、当社の主要パイプラインであるHLCR012を欧米において開発する準備を進めており、今後、海外子会社の設立等といった形で海外展開に向けた取組みを視野に入れております。

 しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、当社の事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、その場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

治験の実施について

 当社は、体性幹細胞再生医薬品分野におけるパイプラインHLCM051において治験計画届書をPMDAに提出し受理されたことをうけ、治験段階に入りました。治験計画は、PMDAとも事前に相談し、綿密な計画を立てておりますが、いまだ再生医療等製品の治験実施例は多くはないことから、治験に必要とされる患者を適切に確保できないこと、治験実施施設における各種手続きが計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、安全性に関する許容できない問題が生じた場合や、期待した有効性を確認できない場合には、開発を中止するリスクがあります。このような場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

2【経営上の重要な契約等】

 当第3四半期会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

3【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)業績の状況

 当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、政府による経済対策や日銀による金融緩和策等により、雇用情勢や企業収益に改善がみられました。またリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの成功により4年後の東京での開催への期待は高まりつつあります。しかしながら、為替や株価の不安定な動向や個人消費の停滞感などを背景に、全体感としては足踏み状態が続き、世界経済の先行きも、英国のEU離脱問題や世界各地で相次ぐテロなどにより依然として不透明な状況となっております。

 再生医療業界においては、京都大学の山中伸弥教授らによるiPS細胞作製論文の発表からこの夏で10年という節目であることから、報道等によりiPS細胞・再生医療に係る研究や実用化に向けての進捗が改めて注目を集めました。また、文部科学省が人工知能(AI)研究拠点の新設を発表し、産学官連携によりiPS細胞など日本が誇る最先端技術とAIの融合研究の加速が期待されるなど、再生医療産業の拡大を後押しする動きも見られました。

 このような状況のもと、当社は平成28年1月に導入した体性幹細胞再生医薬品分野における新規パイプライン、及び当社の中核事業領域であるiPSC再生医薬品分野、さらに化合物医薬品分野において開発を推進しました。

 体性幹細胞再生医薬品分野においては、アサシス社の開発する幹細胞製品MultiStemを用いた脳梗塞急性期に対する治療法の日本での承認取得に向け、PMDAに提出した治験計画届書が受理されたことをうけ、治験段階に入りました。

 一方、iPSC再生医薬品分野においては、加齢黄斑変性を対象に他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞を懸濁液としたiPSC再生医薬品の国内外での治験準備を進行するとともに、公立大学法人横浜市立大学(以下、横浜市立大学といいます。)との肝臓原基作製に向けたプロジェクトを推進いたしました。加えて、平成28年4月に共同研究契約を締結した米国のバイオテクノロジー企業Universal Cells, Inc.(以下、ユニバーサルセル社といいます。)との、次世代のプラットフォーム技術ともなりうる、免疫拒絶リスクの少ないiPS細胞の作製に向けた研究も始まっております。

 

 以上の結果、当第3四半期累計期間の業績は、売上高は57,714千円(前年同期比24.4%減)、営業損失は3,053,161千円(前年同期は705,586千円の営業損失)、経常損失は3,099,857千円(前年同期は611,042千円の経常損失)、四半期純損失は3,103,516千円(前年同期は582,030千円の四半期純損失)となりました。なお、前年同期に対する損失の拡大は、平成28年1月のアサシス社からのMultiStemに関するライセンス導入における契約一時金1,809,049千円を研究開発費に計上したことが主な要因です。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 流動資産は、前事業年度末と比べて659,687千円減少し、8,665,562千円となりました。これは、現金及び預金が722,520千円減少したことなどによるものであります。

 固定資産は、前事業年度末に比べて24,198千円減少し1,138,164千円となりました。

(負債)

 流動負債は、前事業年度末に比べて27,608千円減少し、1,052,948千円となりました。

 固定負債は、前事業年度末に比べて2,422,057千円増加し、2,451,752千円となりました。これは、ライセンス導入による契約一時金及び開発費用への充当を目的とした借入により長期借入金が2,414,000千円増加したことなどによるものであります。

(純資産)

 純資産は、前事業年度末に比べて3,078,335千円減少し、6,299,026千円となりました。これは、四半期純損失を3,103,516千円計上したことなどによるものであります。

 

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当第3四半期累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりであります。

 

 新規導入パイプラインHLCM051の国内治験の促進について

 アサシス社とのライセンス契約締結により平成28年1月に導入した、脳梗塞急性期を対象としたMultiStemによる体性幹細胞再生医薬品の開発については、法改正で新設された早期承認制度に基づいた承認の取得の可能性を想定し、早期の治験開始を目指し準備を進めてまいりました。本製品に関しては、アサシス社により欧米にて第Ⅱ相試験がすでに行われており、その安全性は統計的にも解析されておりますが、これらの試験結果を踏まえて日本国内での承認の取得に向けて、どのようなプロトコルで開発を進めることが適切か、規制当局との協議を重ねた上で治験計画を策定いたしました。この計画に基づき、本治験を確実に実施することが課題と考えております。

 

(4)研究開発活動

 当第3四半期累計期間においては、体性幹細胞再生医薬品、iPSC再生医薬品の各分野において研究開発人員の増強を行い、開発体制を強化したほか、以下のとおり研究開発を推進いたしました。

 当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は、2,644,537千円(前年同期は375,532千円)であります。なお、当該費用は、国内におけるRPE細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。

 

① 体性幹細胞再生医薬品分野

 当第3四半期累計期間において、アサシス社の開発する幹細胞製品MultiStemを用いた日本国内における脳梗塞急性期に対する治療法HLCM051の承認取得に向け、治験計画届書を提出、30日調査を終え治験段階に入りました。

 本治験は、脳梗塞患者を対象としたHLCM051の有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験として実施されます。

 アサシス社による欧米での第Ⅱ相試験の結果を参考とし、脳梗塞発症後18時間から36時間以内にHLCM051あるいはプラセボを投与し、投与90日目の機能評価でExcellent Outcome(優れた転帰)を達成した被験者の割合を主要評価項目といたします。

 本治験は、今後各治験実施医療機関での治験審査委員会の審査を経たうえで実施され、治験期間は平成30年10月末までのおよそ2年間を予定しております。

 

 ※ Excellent Outcome(優れた転帰)とは

脳卒中患者の機能評価に使われる主要な指標として、mRS、NIHSS、BIの3つの指標が用いられております。

これら3つの指標において、mRS1以下、NIHSS1以下かつBI95以上の場合を“Excellent Outcome(優れた転帰)“と呼びます。

 

mRS とは:概括障害度(modified Rankin Scale)と表現され、障害の程度を0(まったく症候がない)、1(症候があっても明らかな障害はない)、2(軽度の障害)、3(中等度の障害)、4(中等度から重度の障害)、5(重度の障害)、6(死亡)のグレードで判定する。数字が低い方が障害の度合いが低い。

NIHSS とは:神経症状障害度(NIH Stroke Scale)と表現され、脳梗塞の神経学的重症度を項目別に点数化して合計点で評価する。点数は0点から42点となるように設定されており、点数が高いほど重症となる。

BIとは:日常生活活動指標(Barthel Index)と表現され、代表的な基本的日常生活動作10項目について点数をつけ、合計得点で評価する。例えば、食事の項目では自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終えるができれば10点、部分介助(おかずを切って細かくしてもらう等)の場合は5点、全介助は0点となっている。点数は0点から100点。数字が低いほど介助の必要が高まる。

(出所:日本脳卒中学会の資料等を参考に当社作成)

 

② iPSC再生医薬品分野

 当第3四半期累計期間において、iPS細胞由来RPE細胞を用いた加齢黄斑変性の治療法開発にむけて治験への準備を国内外にて進めております。

 国内においては、本製品の適応疾患である加齢黄斑変性の疾患モデル動物での有効性評価や、免疫拒絶反応モデルを用いた免疫抑制処方の検討等を継続して進めております。

 海外においては、海外での治験に用いるRPE細胞の受託製造会社において、CPCでの培養条件の最適化検討が継続して行なわれております。また、欧米での治験における使用を想定したiPS細胞のマスターセルバンクの製造を開始しております

 横浜市立大学との、機能的なヒト臓器を創り出す3次元臓器に関する共同研究では、代謝性肝疾患を対象疾患と定め、肝臓原基の製造に向けて、研究体制を拡充いたしました。

 さらに、平成28年4月に共同研究契約を締結したユニバーサルセル社とは、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ないiPS細胞の開発を目指し、同社の持つ遺伝子編集技術を基に共同研究を開始しております。

 

③ 化合物医薬品分野

 当第3四半期累計期間においては、欧州で販売されている眼科手術補助剤の日本向け製品の製造販売承認の取得に向け、原薬受託製造会社におけるGMP製造にむけたプロセス検討、及び製剤受託製造会社における製剤製造体制の準備がいずれも計画に従って進捗しております。

 

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。