文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
再生医療業界においては、2019年5月、東京医科歯科大学の武部貴則教授らの研究グループと埼玉大学、シンシナティ小児病院との共同研究にて、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞から、炎症や線維化を担う複数種類の細胞を含む複雑なヒト肝臓オルガノイド(ミニ肝臓)の創出に成功したことが発表されました。オルガノイドとは、生体組織・器官に類似した立体構造のことで、当社も武部教授らの発明による3次元臓器作製法を用いて、肝臓の基となる肝臓原基の作製による新たな治療法の研究開発を進めています。今回の武部教授らの研究成果は、脂肪性肝炎の病態変化を生体外で再現できることで、疾患のメカニズムへの理解が加速し、オルガノイドを用いた創薬スクリーニングなどにより治療に有効な新薬の開発に貢献することなどが期待されています。
同年6月には、再生医療業界における国際的な学会のひとつであるInternational Society of Stem Cell Research (ISSCR)が米国ロサンゼルスにて開催され、オルガノイドを含む様々な多能性幹細胞を用いた研究成果が発表されるとともに、企業による実用化に向けた動向に関する発表も注目を集めました。
このような状況のもと、当社は体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野において開発を推進いたしました。
体性幹細胞再生医薬品分野においては、脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療法の承認取得にむけ、それぞれ治験を実施しております。
iPSC再生医薬品分野においては、眼科分野及び肝疾患分野を中心に開発を進めております。眼科分野では、国内におけるiPS細胞由来RPE細胞を用いた治療法開発に関して、共同開発パートナーである大日本住友製薬との共同開発体制の変更に関して合意いたしました。
以上の結果、当第2四半期累計期間の業績は、営業損失は1,969百万円(前年同期は3,301百万円の営業損失)、経常損失は1,979百万円(前年同期は3,320百万円の経常損失)、四半期純損失は1,881百万円(前年同期は3,323百万円の四半期純損失)となりました。
なお、当社は2019年7月、株式会社ニコンとの業務・資本提携を拡大し、再生医療分野における更なる成長可能性を共に追求することを決定し、この提携拡大に基づき、同社に対して第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債を発行いたしました。同時に、今後の企業価値向上に必要となる資金調達を目的として、海外募集による新株式の発行及び2022年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を発行し、手取金概算額合計116億円を調達いたしました。
(2)財政状態の分析
①資産、負債及び純資産の状況
(資産)
流動資産は、前事業年度末と比べて2,922百万円減少し、9,404百万円となりました。これは、現金及び預金が2,918百万円減少したことなどによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて392百万円増加し、3,046百万円となりました。これは、投資有価証券が242百万円、関係会社株式が121百万円増加したことなどによるものであります。
(負債)
流動負債は、前事業年度末に比べて885百万円減少し、737百万円となりました。これは、未払金が293百万円、前受金が555百万円減少したことなどによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて28百万円減少し、2,546百万円となりました。これは、長期借入金が27百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、前事業年度末に比べて1,616百万円減少し、9,165百万円となりました。これは、四半期純損失1,881百万円を計上したことなどによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当第2四半期会計期間末における現金及び現金同等物(以下、資金といいます。)は、前事業年度末と比べて2,918百万円減少し、8,708百万円となりました。
当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は2,773百万円となりました(前年同期は2,263百万円の資金の使用)。これは主に、営業損失1,969百万円の計上、未払金の減少288百万円、前受金の減少545百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は77百万円となりました(前年同期は2,465百万円の資金の使用)。これは、有形固定資産の取得による支出43百万円、関係会社株式の取得による支出121百万円、事業譲渡による収入100百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は65百万円となりました(前年同期は479百万円の資金の獲得)。これは、長期借入金の返済による支出86百万円、株式の発行による収入20百万円等があったことによるものであります。
(3)経営方針・経営戦略等
当第2四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありませんが、iPS細胞由来RPE細胞を用いた治療法における共同開発の体制変更等に伴い以下の通り再整理しております。
<短期目標>
日本の再生医療等製品に対する条件・期限付き承認制度等を活用することで、早期に治験開始が可能な製品を導入し、製品化することで製薬企業としての基盤を整える、という方針に従い、Athersys, Inc.(以下、「アサシス社」といいます。)との提携によりHLCM051を用いた脳梗塞急性期に対する臨床試験を開始、続いて急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する臨床試験を開始し、短期的な目標に向かって進捗しております。一方で当社のようなベンチャー企業にとって2つの治験を同時に実施することは大きな挑戦でもあります。そのため自社のみで3つ目の治験を実施するのではなく、共同開発パートナーのサポートにより製品化に向けて進みたいと考え、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞による治療法開発に関しては、今後治験を大日本住友製薬に主体となって進めていただくこととなりました。
<中長期目標>
短期目標の達成により得られる収益や製薬企業としての基盤によって、当社は以下のような幹細胞プラットフォームを確立し、さらに革新的な治療法を生み出すことを中長期的に目指しています。また新たな製品群の開発に関しては、自社開発だけではなく提携等の柔軟な開発体制も検討します。
a) 遺伝子編集技術×iPS細胞及び新規移植法の開発
遺伝子編集技術を用いて、患者の免疫細胞に認識されないiPS細胞を作製する事で拒絶反応を回避し、次世代技術プラットフォームの中心に据えることを目指しています。さらにこの次世代iPS細胞を臓器原基技術に応用する等、新規移植法と組み合わせることにより、有効性と安全性を高めた再生医療製品を開発し、現在有効な治療法のない疾患への治療法の開発を目指します。
b) 遺伝子編集技術×がん免疫細胞の開発
iPS細胞に遺伝子編集を加え、機能を高めた免疫細胞を作製し、がん免疫療法への活用を目指します。iPS細胞を用いることで、通常の免疫細胞よりも格段に殺傷能力を高めた免疫細胞を大量かつ安定的に作製できるであろうことから、次世代のがん免疫医療とすべく自社研究開発を進めています。
c) 効率的な製造方法の開発
上記のような新規細胞技術を用いた治療法の実用化には、自動培養装置、3D培養技術、安価な培地作製等の製造法の改善も必須ですが、自社のみで技術開発を目指すことは効率的ではありません。将来有効性が期待されるものの、移植法や製造法の開発にコストと時間が必要となるプロジェクトについては、自社での開発にこだわらず、柔軟に効果的な体制構築を目指します。
d) ベンチャーキャピタル設立により期待する効果
当社の中長期目標達成にむけて、ファンドを通じた国内外のバイオ領域への成長資金の提供と投資回収によるリターンのみならず、当社パイプラインに貢献する技術の促進、質の高い情報収集、有望なベンチャー企業との関係構築の機会を得る可能性、自社技術のカーブアウトの可能性等の複合的な効果を期待しています。ファンド専任チームが重要な先端技術への投資活動を先導することで、当社は目標達成に向けて集中することが可能となります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期累計期間においては、体性幹細胞再生医薬品、iPSC再生医薬品の各分野において以下のとおり研究開発を推進いたしました。
当第2四半期累計期間における研究開発費の総額は、1,550百万円(前年同期は2,890百万円)であります。なお、当該費用は、国内におけるRPE細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。
①体性幹細胞再生医薬品分野
当第2四半期累計期間において、体性幹細胞製品HLCM051(MultiStem®)を用いた日本国内における脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法の開発を進めました。
脳梗塞急性期に対する治療法開発においては、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しております。2019年5月には、40施設強の治験実施施設全てに治験製品の設置を完了しました。
ARDSに対する治療法開発においては、肺炎を原因としたARDS患者を対象とした、有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相試験(治験名称:ONE-BRIDGE試験)を実施しており、2019年4月より被験者組み入れを開始しております。本試験は30症例の組み入れ予定に対し、全国25施設以上の医療機関で治験を実施予定です。
同年1月、アサシス社より、同社が欧米において実施したARDS患者に対するMultiStemの安全性と有効性を探索する第Ⅰ/Ⅱ相試験(MUST-ARDS試験)に関しポジティブな結果が得られたとの発表がありました。当該試験によりARDS患者に対するMultiStemの安全性及び忍容性は良好であることが確認されたのみならず、プラセボ対照二重盲検試験として実施された第Ⅱa相試験では、死亡率、28日間のうち人工呼吸器を使用しなかった日数(VFD; Ventilator Free Days)及び28日間のうちICU管理が不要であった日数、といった指標においてMultiStem投与群に改善傾向が見られました。そこで当社は、MUST-ARDS試験結果を用いて、ONE-BRIDGE試験の被験者にできるだけ近い被験者群に関する追加解析を行ったところ、ONE-BRIDGE試験の主要評価項目であるVFDのみならず、死亡率及び28日間のうちICU管理が不要であった日数についても、MultiStem投与群での改善傾向が確認でき、ONE-BRIDGE試験の推進をサポートする結果となりました。
これらの結果を基に、当社は同年7月、HLCM051のARDSに対する治療法開発に関し、希少疾病用再生医療等製品の指定申請を行いました。
②iPSC再生医薬品分野
当第2四半期累計期間において、眼科分野及び肝疾患分野での開発を進めました。
<眼科分野>
iPS細胞由来RPE細胞を用いた治療法開発にむけて治験への準備を国内外にて進めてまいりました。
国内においては、大日本住友製薬との共同開発のもと、治験開始に必要な安全性データの取得を行い、規制当局との相談を重ねております。大日本住友製薬との合弁会社であるサイレジェンにおいては、大日本住友製薬の建設した再生・細胞医薬製造プラントSMaRT内の施設において、製造体制の構築に向けた準備を進めております。なお、2019年6月、大日本住友製薬との共同開発体制の変更を決定し、今後大日本住友製薬が主体となって治験が進められることとなりました。
海外においては、欧米での治験に使用することを想定して製造したiPS細胞のマスターセルバンクを用いて、米国眼科研究所(NEI)との共同研究開発を進めております。
<肝疾患分野>
横浜市立大学との、機能的なヒト臓器を創り出す3次元臓器に関する共同研究では、肝臓原基の製造に向けて共同研究を進めております。肝臓原基は、肝細胞に分化する前の肝前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系幹細胞と、血管をつくりだす血管内皮細胞に混合して培養することで形成されますが、これらの構成細胞の機能評価や品質規格に関してデータ取得を進めたほか、大量培養法、細胞凍結法、移植法の開発を進めております。
<次世代に向けた研究活動>
遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞に関する研究活動のほか、iPS細胞技術と遺伝子編集技術を組み合わせた次世代がん免疫細胞の作製にむけた取り組みを推進しております。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績の記載を省略しております。
(1)再生医薬品分野に関する重要な契約
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相手方の名称 |
契約名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
主な契約内容 |
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大日本住友製薬株式会社 |
共同開発契約 |
2019年6月13日 |
2019年6月13日から共同開発行為が終了するまで |
・2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との共同開発契約に関し、以下の変更等を目的として新たな共同開発契約を締結した。 - 共同開発における両社の分担業務につき、主として臨床試験の実施主体を当社から大日本住友製薬株式会社へと変更し、これに伴い他の分担業務についても変更した。 - 製造販売承認申請は臨床試験の結果に基づき大日本住友製薬株式会社及び当社がそれぞれ検討する。 - 開発費分担の枠組みを変更した。 ・2013年12月2日付の共同開発契約は2019年6月13日をもって終了した。 |
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大日本住友製薬株式会社 |
実施許諾契約 |
2019年6月13日 |
2019年6月13日から2039年6月12日まで |
・2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との共同開発契約を変更するために締結した2019年6月13日付の共同開発契約の趣旨に従い、2013年12月2日付の同社との実施許諾契約における許諾対価算定基準の変更を行った。 ・開発マイルストンを総額16億円から総額10億円とした。 ・日本を除く全世界における眼疾患の予防又は治療を目的とする網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する再生医療等製品の研究・開発・製造・使用・販売・輸出入等を行うための特許権等の非独占的通常実施権を大日本住友製薬株式会社に許諾した。 ・2013年12月2日付の実施許諾契約は2019年6月13日をもって終了した。 |
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大日本住友製薬株式会社 |
合弁契約 |
2019年6月13日 |
2019年6月13日から当社又は大日本住友製薬株式会社のいずれかが株式会社サイレジェンの株式の全てを保有しなくなった日又は同社を解散し清算結了登記をした日まで |
・2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との共同開発契約を変更するために締結した2019年6月13日付の同社との共同開発契約の趣旨に従って2013年12月2日付の合弁契約における以下の変更を行った。 - 当社と大日本住友製薬株式会社の両社が製造販売承認申請を行う場合、株式会社サイレジェンには網膜色素上皮細胞製品の製造のみを委託する。 ・2013年12月2日付の合弁契約は2019年6月13日をもって終了した。 |
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大日本住友製薬株式会社、株式会社サイレジェン |
共同実施許諾契約 |
2019年6月13日 |
2019年6月13日から2019年6月13日付の大日本住友製薬株式会社との実施許諾契約が終了するまで |
・2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との共同開発契約に関し締結した2019年6月13日付の共同開発契約及び実施許諾契約の趣旨に従って2014年5月28日付の共同実施許諾契約における以下の変更を行った。 - 許諾の対価としての料率を変更した。 ・2014年5月28日付の共同実施許諾契約は2019年6月13日をもって終了した。 |