第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は「『生きる』を増やす。爆発的に。」というミッションを掲げ、「iPSC再生医薬品を活用し、世界中の患者さんに治癒と希望を届ける。世界中に承認販売まで自社で行う体制を構築し、全ての人からRespectを受けるバイオ企業を確立する。」というビジョンに沿って、iPS細胞等の優れた幹細胞技術をもって、世界中の難治性疾患の罹患者に対して新たな治療法を届けるべく、研究開発から製造販売承認の取得、製造・販売までを自社、関係会社及び提携会社において実現する体制の確立を目指し、事業を進めております。

 

(2)目標とする経営指標

当社の体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野の研究開発推進には、多額の開発資金が必要となるため、当該製品が上市されるまでは研究開発費を中心に先行投資が続くものと想定しております。したがって現段階においては、共同開発先からのマイルストン収入等により財務の安定化を図りつつ、早期の製品の上市を目指し、開発計画の着実な進捗、収益見込みが早く既存のパイプラインとの相乗効果の見込まれる新規シーズの導入並びに他社との提携・M&Aなどによるパイプラインの充実に目標を置き、事業を推進してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は上記(1)記載のミッション・ビジョンを実現するため

①短期戦略:3年程で日本国内において、承認の目途が立つ開発パイプラインであり、当社の経営基盤強化(収益体制、製造研究開発販売体制)に資する開発品

②長期戦略:世界でデファクトスタンダードの地位を築く革新的基盤技術

という事業拡大戦略に基づき、①で得られたノウハウ・収益を②へ戦略的に投資し、持続的な成長を果たすという、ハイブリッド戦略を推し進めております。

まずは、短期戦略に基づき2016年に導入した体性幹細胞再生医薬品分野におけるパイプラインHLCM051の早期承認を目指し、現在脳梗塞急性期及びARDSを対象疾患とした治験を実施中であります。

一方、長期戦略の柱であるiPSC再生医薬品の実用化にむけては、第一に国内の加齢黄斑変性に対する治療法の承認取得に向けて開発を推進します。また、当社が臓器作製の分野における「世界でデファクトスタンダードの地位を築くことのできる革新的な基盤技術」になりうると考えている、臓器原基を用いた再生医療等製品(3次元臓器)においては、横浜市立大学との肝臓原基による肝疾患治療法開発の共同研究を推進しています。また、遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のNK細胞を用いて、固形がんを対象にした次世代がん免疫療法の研究を進めております。さらには、遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞の作製にむけた研究活動など、再生医療の産業化に向けて必要な革新的な基盤技術の確立を目指してまいります。

また、当社はバイオ領域投資に特化した投資事業有限責任組合の設立の検討を開始しています。当該ファンドを通じて国内外のバイオ領域への成長資金の提供と投資回収によるリターンのみならず、情報収集を通じて当社パイプラインに貢献する技術や他ベンチャーとの連携を期待しています。現在設立にむけて準備中です。

当社は、患者さんのアンメットメディカルニーズの高い適応疾患領域における複数かつ多層的な開発戦略により、リスク低減を行い、企業価値の向上を目指します。

 

(4)会社の対処すべき課題

① 既存パイプラインの開発推進

当社は、法改正で新設された、再生医療等製品に対する早期承認制度を活用し、日本国内においていち早く再生医薬品の承認を獲得すべく、体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野にて開発を進めております。共同開発パートナーや提携先、治験実施施設等とのスムーズな連携により、着実に開発を進めることが課題と考えております。

 

② 開発におけるアライアンス体制の強化について

再生医療業界においては、常に新しい発見が重ねられており、目覚ましい技術の進展が見られます。またグローバル規模の製薬企業も再生・細胞医療に新たな可能性を見出し、企業買収等によって参入を図っています。このような競争環境のなか、当社は、横浜市立大学との共同研究を実施している臓器原基技術のような、世界でデファクトスタンダードの地位を築く可能性のある革新的なプラットフォーム技術の取得が重要と考えております。国際的な情報ネットワークを一層強化し、国内外の公的研究機関や企業等から新規技術・ノウハウを積極的に取り入れ、強固な提携関係を築くことが課題と考えております。

 

③ 資金調達・管理

当社のようなバイオテクノロジー企業は、研究開発費用の負担により開発期間において継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。既存パイプラインの開発進捗による共同開発先からのマイルストン収入や、承認取得による早期の売上計上を目指す他、リスクの分散や資金調達の多様性確保のため、新規提携先からの契約一時金やマイルストン収入、金融機関等からの借入、株式市場からの資金獲得、補助金等多面的な資金源の検討も必要と考えております。

 

④ 人材の獲得

再生医療という新しい産業を創生し、グローバルリーディング企業を目指し成長を続けるためには、人材が最も重要であると考えます。新しい産業を牽引できるポテンシャルの高い人材を世界中から確保し、活躍できる場を提供することが課題と考えております。

 

2【事業等のリスク】

 当社では当社の事業展開その他に関する主要なリスク要因として以下の事項を認識しております。当社ではこれらのリスクの発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また当社に関連するリスクをすべて網羅するものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野のリスク

① 開発期間が長期にわたることに伴う損失の計上と追加の資金調達の可能性について

 当社は、iPSC再生医薬品分野に加えて、2016年1月より体性幹細胞再生医薬品分野においても研究開発を進めており、当社の両分野の今後の研究開発の進展及び事業展開の成否に依拠しています。

 体性幹細胞再生医薬品分野のパイプラインHLCM051は、アサシス社の開発する幹細胞製品MultiStemを用いて脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象疾患とするもので、法改正で新設された早期承認制度に基づいた承認の取得も想定し、治験を実施しております。

 またiPSC再生医薬品は、前臨床試験段階であり、製品の上市までにはさらなる段階が必要となります。

 このため、体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野において、実際に上市されるまでは収益が上がらず、損失を計上し続ける見込みとなっております。また、その開発には多額の資金が必要となることから、追加の資金調達を行う可能性があります。これらの場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定の提携先への依存について

 当社は、HLCR011の開発に関して、大日本住友製薬との間で共同開発契約、実施許諾契約及び合弁契約を締結し、これらの契約を前提に国内におけるRPE細胞製品の開発計画を立てております。また、体性幹細胞再生医薬品に関しては、アサシス社とのライセンス契約により実施しており、その製品はアサシス社によって製造され、当社はその供給を受けて国内にて開発・販売を行ってまいります。アサシス社の製造・供給体制に何らかの支障が生じた場合、当社の開発又は販売計画が大幅に遅れる、あるいは継続が困難となる可能性があります。

 さらに、これらの契約は、相手先企業の経営方針の変更等の当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性が全くないとはいえません。これらの契約が終了した場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新と競合について

 当社が実施しているiPSC再生医薬品に係る研究開発の領域は、国内のみならず、世界的にも注目を集めている研究分野であるため、新しい知識や技術が発見されイノベーションが生まれやすい分野であります。特に、当社が現在開発対象としているiPSC再生医薬品の対象疾患である加齢黄斑変性に関しては、ES細胞由来の細胞医薬品を含め、様々な治療法の開発が進展しているところであります。

 体性幹細胞再生医薬品分野においては、米国を中心にすでに様々な研究開発が進んでおり、より実現性の高い技術革新が行われる可能性があります。

 当社では、大学や公的研究機関と連携し、常に最先端の技術開発に取り組んでいると考えておりますが、周辺領域を含め当事業に参入している企業や潜在的な競争相手が、当社の保有している知的財産権等を上回る新技術を開発し、関連特許を取得する場合や先行して上市した場合などには、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 再生医療等製品に関する法規制について

 2014年11月に施行された薬機法は、医薬品、医療機器等の安全かつ迅速な提供を図るものであり、体性幹細胞/iPSC再生医薬品を含む再生医療等製品について早期承認制度に基づいた条件及び期限付承認制度を新設しております。この制度下での承認実績は既にあるものの、iPS細胞を由来とする製品はいまだ実績がないことから、他の細胞由来の製品とは異なる検証が必要となる可能性も考えられます。また、かかる薬機法を含む再生医療等製品に関する法規制については、技術の革新の状況や予期し得ない事態の発生等に対応して、継続的に見直しがなされる可能性があります。当社は、そうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めておりますが、法規制の追加や法改正の内容如何によっては、これまで認められてきた品質管理基準を上回る品質管理が求められる等の理由によって、多額の設備投資が必要となり、また当社の想定よりも多数の試験が求められた場合、開発スケジュールが大幅に遅れるなどの事態が生じる可能性があります。このような場合においては、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 体性幹細胞/iPSC再生医薬品の製品特性について

 体性幹細胞/iPSC再生医薬品は、ヒト細胞・組織を原材料とした細胞を人体へ移植・投与するという特性上、原材料の安全性に関するリスクや、様々な予期せぬ副作用・医療事故の発生などの可能性があり、そのために法制度上も厳しい規制がなされております。当社では、そうした規制に対応し、事故を防止するためにも、臓器移植に知見を持つ関係者を集めるなど様々な施策を講じております。しかしながら今後さらに予期せぬ事態が発生する可能性を完全に防ぐことは難しく、そうした事態が発生した場合には当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 製造・販売体制の構築に関する不確実性について

 当社のiPSC再生医薬品事業は、研究開発活動において成果をあげることにとどまらず、その後の製造及び販売についても事業として展開していくことを視野に入れております。そのため、当社では、提携先企業等とともに細胞の大量培養技術の開発など製造方法の確立に向けて注力しております。しかしながら、医薬品の開発には、多種多様な技術が必要となり、今後、何らかの理由で製造方法の確立、製造体制の構築等が困難になった場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお当社は、日本向けiPS細胞由来RPE細胞懸濁液(HLCR011)については、大日本住友製薬と当社の共同出資会社であるサイレジェンに対して製造を委託することとしており、現在、製造体制の構築に向けた準備を行っております。販売体制については、いまだ決定しておりません。こうした取組みが当社の想定どおりに進まなかった場合には当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 一方、HLCM051におきましては、当社単独で販売体制を構築するのか、あるいは製薬企業等との提携により販売体制を構築するのか、その方針はいまだ決定しておりません。今後、体制構築に何らかの障害が生じ、当社の計画より遅れた場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 海外での事業展開について

 当社は、当社の開発するiPSC再生医薬品が、国内のみならず、世界各国の難治性疾患の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、海外子会社の設立等といった形で海外展開に向けた取組みを進めております。

 しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、当社の事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、その場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 治験の実施について

 当社は、現在、体性幹細胞再生医薬品分野において治験を実施しております。治験計画は、PMDAとも事前に相談し、綿密な計画を立てておりますが、いまだ再生医療等製品の治験実施例は多くはないことから、治験に必要とされる患者を適切に確保できないこと、治験実施施設における各種手続きが計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、安全性に関する許容できない問題が生じた場合や、期待した有効性を確認できない場合には、開発を中止するリスクがあります。このような場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 投資に関するリスク

 当社では、常に最先端の技術開発に取り組み、周辺領域を含め当事業に参入している企業や潜在的な競争相手に先んじるため、関連する技術や特許を保有する企業に対して投資やM&A等(買収、合併、事業譲渡・譲受)という形で提携を進める可能性があります。提携先の選定やその投資価額の妥当性等においては、第三者機関の評価を得たうえで慎重に進めてまいりますが、提携先において予期せぬ問題が生じた場合や、予想通りに研究開発が進まない場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 医薬品の研究開発一般に関するリスク

① 薬価に係る法規制の改正等について

 世界的な医療費抑制の流れの中で、薬価に係る法規制の改正により当社が想定している製品価値よりも低い薬価・保険償還価格となった場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 製造物責任において

 当社が開発した医薬品が健康被害等を引き起こした場合、治験、製造、販売において不適当な点が発見された場合には、製造物責任を負う可能性があり、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人材及び組織に関するリスク

① 特定の個人への依存について

 当社は、小規模な組織であります。また、代表執行役社長CEOである鍵本忠尚は、研究開発や経営方針、戦略の決定、提携先との関係構築等、当社の事業活動において重要な役割を果たしております。当社では、過度に特定の人物に依存しない組織的な経営体制の強化を進めておりますが、何らかの理由により、鍵本忠尚が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 社内管理体制について

 当社の行う事業の性質上、他の役員及び従業員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分も大きく、今後、当社の業務の拡大に応じて人員の増強や社内管理体制の充実を図っていく方針でありますが、想定どおりに人材の確保ができない場合や人材の流出が生じた場合、又は社内管理体制に不備が生じた場合には、研究開発の推進や社外との連携関係の構築に支障が生じ、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他の事業リスク

① 大学等公的研究機関との関係について

 当社では、これまで、公的研究機関との連携や特許実施許諾契約の締結等を通じて、積極的な研究開発活動を実施して参りました。しかしながら、国立大学の法人化により大学の知的財産権に関する意識も変化しつつあるため、特許実施許諾契約の新規締結や更新が困難となる等の事態が生じた場合には、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権について

 当社の事業を遂行していく中で、第三者が有する知的財産権を使用することがあります。当社では適法な手続きのもとに知的財産権を使用することとしておりますが、第三者の知的財産権に関連して係争が生じる可能性もあります。当社では、第三者の知的財産権に抵触することを回避するため、調査、検討及び評価等を随時実施し、必要に応じて遅滞なく実施許諾契約(ライセンス契約)を締結しておりますが、今後、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われます。

 当社は、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針でありますが、訴訟等が提起された場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社が有する知的財産権が第三者により侵害される可能性もあります。当社としては、このような場合には当社の知的財産権保護のために必要な法的措置を検討していく方針ですが、費用対効果や第三者から特許無効審判等を提起される可能性なども勘案し、あえて法的措置に踏み切らない可能性も否定できず、その場合、当該第三者が当社と競合する事業を行う可能性も否定できないことから、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 風評上の問題の発生について

 当社は、開発における安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社に関してマスコミ報道などにおいて事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 災害等の発生に関する不確実性について

 当社が事業活動を行っている地域において、自然災害や火災等の事故災害等が発生した場合、当社の設備等に大きな被害を受け、その一部又は全部の稼働が中断し、研究開発が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 資金繰りについて

 当社のようなバイオテクノロジー企業においては、研究開発費用の負担により開発期間において継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。当社としましては、新規に模索している提携先からの契約一時金及びマイルストン収入や補助金の活用、金融機関等からの借入を実施することで資金確保に努め、必要に応じて増資による資金調達を実施する方針でありますが、何らかの理由によりこうした資金の確保が進まなかった場合においては、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 配当政策について

 当社は創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存でありますが、現時点においては繰越利益剰余金がマイナスであるため、当分の間は研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針であります。

 

⑦ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、役員及び従業員等に対し、モチベーションの向上を目的に新株予約権を付与しております。また、パイプライン開発や新技術開発等の資金需要に対応するため、新株予約権付社債を発行しております。

 これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、2019年12月31日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は、6,619,335株であり、発行済株式総数及び潜在株式数の合計の11.4%に相当しております。

 

⑧ 為替変動のリスク

 当社は、事業活動をグローバルに展開するため米国子会社を設立いたしました。今後、海外企業とのライセンス契約の締結、海外での研究開発活動等において外貨建取引が増加する可能性があります。急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合は、当社の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

再生医療業界においては、国内にて新たな再生医療等製品の承認が相次ぎ、2019年3月には国内で初となるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法及び遺伝子治療用製品が承認されました。同年7月、大阪大学にて、他家iPS細胞由来角膜上皮細胞シートの角膜上皮幹細胞疲弊症の患者さんへの移植が実施されました。iPS細胞技術の臨床応用計画も発表され、慶應義塾大学による他家iPS細胞由来神経前駆細胞を用いた脊髄損傷の患者さんへの移植などが近く実施される見込みとなっており、これまで治療法のなかった疾患に対する新たな治療法の可能性が高まりつつあります。また、同年9月、東京医科歯科大学の武部貴則教授のグループが、胎内で肝・胆・膵領域が発生する過程を模倣することによって、ヒトiPS細胞から連続した複数の臓器を同時発生させる技術を確立したことが、国際科学誌Natureのオンライン版にて発表されました。iPS細胞を用いた研究開発では、単一の細胞を作製することは様々な手法が確立されてきていますが、移植医療の代替となり得るためには立体的な臓器の作製が不可欠と考えられています。さらに連続的に複数の臓器を発生させる新技術に関する発表は、将来の画期的な再生医療の実現に貢献する可能性が期待されています。

このような状況のもと、当社は体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野において開発を推進いたしました。

体性幹細胞再生医薬品分野においては、脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療法の承認取得にむけ、それぞれ治験を実施しております。iPSC再生医薬品分野においては、眼科分野及び肝疾患分野での開発の他、次世代iPS細胞の作製、NK細胞を用いた次世代がん免疫分野にむけた研究活動も進めております。また、当社は2019年6月にバイオ領域投資に特化した投資事業有限責任組合の設立の検討を開始することを決定し、現在設立にむけて準備中です。

また、再生医療の早期実現を目指し、2017年に株式会社ニコン(以下、ニコンといいます。)と締結した業務・資本提携契約を拡大し、2019年7月、ニコンに対する無担保転換社債型新株予約権付社債を割り当て、3,985百万円を調達しました。同月、海外募集による新株の発行及び2020年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を発行し、7,681百万円を調達しております。

 

以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

 

a.財政状態

当事業年度末における資産合計は、前事業年度末と比べ6,120百万円増加し、21,101百万円となりました。

当事業年度末における負債合計は、前事業年度末と比べ7,926百万円増加し、12,124百万円となりました。

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末と比べ1,805百万円減少し、8,976百万円となりました。

 

b.経営成績

当事業年度における営業損失は4,271百万円(前期は5,063百万円の営業損失)、経常損失は4,504百万円(前期は5,085百万円の経常損失)、当期純損失は4,410百万円(前期は5,097百万円の当期純損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、資金といいます。)は、前事業年度末と比べて6,318百万円増加し17,946百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により使用した資金は4,970百万円(前期は5,148百万円の資金の使用)となりました。これは主に、営業損失4,271百万円の計上、前受金の減少545百万円、未払金の減少418百万円、前渡金の減少216百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は211百万円(前期は2,654百万円の資金の使用)となりました。これは、関係会社株式の取得による支出231百万円、投資有価証券の売却による収入100百万円、事業譲渡による収入100百万円、有形固定資産の取得による支出94百万円等があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により獲得した資金は11,501百万円(前期は392百万円の資金の獲得)となりました。これは、新株予約権付社債の発行による収入8,891百万円、株式の発行による収入2,812百万円等があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

ロ.受注実績

 当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

ハ.販売実績

 当社は販売活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

②財政状態の分析

当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ6,120百万円増加し、21,101百万円となりました。

流動資産は6,211百万円増加し、18,538百万円となりました。主な要因は、資金調達等による現金及び預金の増加6,318百万円であります。有形固定資産は50百万円増加し223百万円となりました。無形固定資産は1百万円増加し16百万円となりました。投資その他の資産は141百万円減少し、2,323百万円となりました。主な要因は、投資先の株式の時価評価による投資有価証券の減少402百万円、子会社の設立および増資による関係会社株式の増加231百万円、関係会社出資金の増加70百万円であります。

当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ7,926百万円増加し、12,124百万円となりました。

流動負債は1,025百万円減少し、597百万円となりました。主な要因は、未払金の減少404百万円、前受金の減少555百万円です。固定負債は8,952百万円増加し、11,527百万円となりました。主な要因は、新株予約権付社債の発行による増加9,000百万円です。

当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ1,805百万円減少し、8,976百万円となりました。主な要因は、新株式の発行による資本金の増加1,435百万円、資本剰余金の増加1,435百万円、当期純損失の計上による繰越利益剰余金の減少4,410百万円です。

 

③経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度の売上高はございません。

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度においては、既存パイプラインの研究開発が進捗し、治験に使用する医薬品の調達や、商用化に向けた生産体制の構築を進めた一方で、前事業年度はアサシス社との提携拡大により複数の開発・販売権を獲得し、その獲得費用2,160百万円を研究開発費に計上していたことから、当事業年度の研究開発費は3,217百万円(前事業年度比24.6%減)となりました。その結果、販売費及び一般管理費は4,271百万円(前事業年度比15.6%減)となりました。

(営業損失)

 当事業年度においては、売上高、売上原価が無く、販売費及び一般管理費4,271百万円を計上した結果、営業損失は4,271百万円(前事業年度は5,063百万円の営業損失)となりました。

(経常損失)

 当事業年度においては、為替差益等により、営業外収益が7百万円(前事業年度比7.7%減)となりました。一方で、主に資金調達に伴い株式交付費57百万円、社債発行費108百万円を計上したことにより、営業外費用は240百万円(前事業年度比685.3%増)となりました。これらの結果、経常損失は4,504百万円(前事業年度は5,085百万円の経常損失)となりました。

(当期純損失)

 当事業年度においては、新株予約権戻入益0百万円のほか、2017年4月に譲渡したBBG250を含有する眼科手術補助剤に係る事業について、追加的に本事業譲渡の対価として受領したマイルストン収入100百万円を事業譲渡益として特別利益に計上しました。さらに、税金費用として、法人税、住民税及び事業税を6百万円、法人税等調整額を0百万円計上した結果、当期純損失は4,410百万円(前事業年度は5,097百万円の当期純損失)となりました。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は事業活動の維持・拡大に必要な資金を安定的に確保するとともに、資金需要に応じた資金調達を行うことを基本的な方針としております。当事業年度におきましては、主に既存パイプラインを進捗させるための研究開発活動に伴う営業活動によるキャッシュ・フローは4,970百万円の支出となりました。一方で当年度は第三者割当による転換社債型新株予約権付社債発行及び海外募集による新株式発行並びに海外募集による転換社債型新株予約権付社債発行を実施し総額11,667百万円の資金調達を完了させる等により、財務活動によるキャッシュ・フローは、11,501百万円の収入となりました。これらが資金の主な動きとなり、その結果、当事業年度の現金及び現金同等物の期末残高は、17,946百万円となりました。キャッシュ・フローの状況については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)再生医薬品分野に関する重要な契約

相手方の名称

契約名称

契約締結日

契約期間

主な契約内容

iPSアカデミアジャパン株式会社

実施権許諾契約

2013年2月1日

2013年2月1日から許諾を受けた特許権全ての満了日まで

・網膜変性疾患の治療用途に使用するため、iPS細胞に由来する網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する細胞製品を開発、製造、使用、販売するための特許権の非独占的通常実施権(再実施許諾権を含む。)を当社に対して許諾する。

・許諾の対価として、当社は一定の実施料を支払う。

iPSアカデミアジャパン株式会社

人工多能性幹細胞(iPS細胞)使用に関する特許実施許諾契約

2015年3月12日

2015年3月12日から2021年3月11日まで

・国内外非営利機関及び/又はiPSアカデミアジャパン株式会社から提供されたiPS細胞を日本において研究目的で使用するための特許権の非独占的通常実施権を当社に対して許諾する。

・許諾の対価として、当社は一定の実施料を支払う。

国立研究開発法人理化学研究所

特許実施許諾契約

2013年3月28日

2013年3月28日から許諾を受けた特許権全ての満了日まで

・多能性幹細胞由来網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する再生医療製品を全世界で開発・製造・製造委託・使用・販売・販売委託するための特許権及びノウハウの再実施許諾権付独占的通常実施権を当社に対して許諾する。

・許諾の対価として、当社は一定の実施料を支払う。

公立大学法人横浜市立大学

特許実施許諾契約

2014年10月24日

2014年10月24日から許諾を受けた特許権全ての満了日まで

・多能性幹細胞に由来する細胞又はヒト組織より分離された細胞を有効成分として含む再生医療製品を全世界で研究、開発、製造、使用、販売、輸出入等を行うための特許出願等の再実施許諾権付独占的通常実施権を当社に対して許諾する。

・許諾の対価として、当社は一定の実施料を支払う。

National Eye Institute

COOPERATIVE RESEARCH AND DEVELOPMENT AGREEMENT

2018年5月18日

2018年5月18日から2020年5月18日まで

・他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞による加齢黄斑変性治療法の開発にむけた共同研究開発契約を締結した。

・当社は、共同研究費として、一定の金額を支払う。

株式会社ニコン

業務・資本提携契約

2017年2月22日

期限の定めなし

・再生医療分野における新規シーズの探索・開発の推進及び新規シーズを通じた相互の成長可能性の追求を目的とした契約。

・当社は、株式会社ニコンに対して細胞製造に係る画像評価、細胞受託製造などに関するシーズの情報を提供し、他方、株式会社ニコンより細胞製造に係る画像評価における協力及び細胞製造受託に係る開発支援を受ける。

・当社は、株式会社ニコンに対して第三者割当方式によって当社普通株式を付与した。

株式会社ニコン

合意書

2019年7月10日

2019年7月10日から2024年7月30日まで

・2017年2月22日付の業務・資本提携契約に関し、再生医療分野における提携内容を拡大した。

・当社は、株式会社ニコンに対して第三者割当方式による無担保転換社債型新株予約権付社債を割当てた。

 

 

相手方の名称

契約名称

契約締結日

契約期間

主な契約内容

大日本住友製薬株式会社

共同開発契約

2019年6月13日

2019年6月13日から共同開発行為が終了するまで

・滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性、網膜色素変性症その他共同開発委員会において合意した疾患を適応症として、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を再生医療等製品とした製造販売承認の取得及び販売を目的として締結された2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との共同開発契約に関し、以下の変更等を目的として新たな共同開発契約を締結した。

- 共同開発における両社の分担業務につき、主として臨床試験の実施主体を当社から大日本住友製薬株式会社へと変更し、これに伴い他の分担業務についても変更した。

- 製造販売承認申請は臨床試験の結果に基づき大日本住友製薬株式会社及び当社がそれぞれ検討する。

- 開発費分担の枠組みを変更した。

大日本住友製薬株式会社

実施許諾契約

2019年6月13日

2019年6月13日から2039年6月12日まで

・2019年6月13日付の共同開発契約の趣旨に従い、2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との実施許諾契約における許諾対価算定基準の変更を行った。

・開発マイルストンとして網膜色素上皮細胞製品の開発の進捗により、総額10億円の実施料の支払いを受ける。

・日本における眼疾患の予防又は治療を目的とする網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する再生医療等製品の研究・開発・製造・使用・販売・輸出入等を行うための特許権等の独占的通常実施権(第三者から非独占的通常実施権を受けているものについては非独占的通常実施権)を大日本住友製薬株式会社に許諾する。

・日本を除く全世界における眼疾患の予防又は治療を目的とする網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する再生医療等製品の研究・開発・製造・使用・販売・輸出入等を行うための特許権等の非独占的通常実施権を大日本住友製薬株式会社に許諾する。

・全世界における疾患の予防又は治療のためのその他の再生医療等製品の研究、開発、製造、使用、販売、輸出入等を行うための特許権等の非独占的通常実施権を大日本住友製薬株式会社に許諾する。

大日本住友製薬株式会社

合弁契約

2019年6月13日

2019年6月13日から当社又は大日本住友製薬株式会社のいずれかが株式会社サイレジェンの株式の全てを保有しなくなった日又は同社を解散し清算結了登記をした日まで

・株式会社サイレジェンの設立及び運営に関して締結された2013年12月2日付の大日本住友製薬株式会社との合弁契約につき、2019年6月13日付の共同開発契約の趣旨に従い、以下の変更を行った。

- 当社と大日本住友製薬株式会社の両社が製造販売承認申請を行う場合、株式会社サイレジェンに網膜色素上皮細胞製品の製造等を委託する。

 

 

相手方の名称

契約名称

契約締結日

契約期間

主な契約内容

大日本住友製薬株式会社、株式会社サイレジェン

共同実施許諾契約

2019年6月13日

2019年6月13日から2019年6月13日付の大日本住友製薬株式会社との実施許諾契約が終了するまで

・大日本住友製薬株式会社と締結した2019年6月13日付共同開発契約及び実施許諾契約の趣旨に従い、2014年5月28日付の共同実施許諾契約における以下の変更を行った。

- 株式会社サイレジェンが大日本住友製薬株式会社及び当社に対し許諾の対価として支払う、正味売上高に対する料率を変更した。

・日本における眼疾患の予防又は治療を目的とする網膜色素上皮細胞を有効成分として含有する再生医療等製品の研究・開発・製造・使用・販売・輸出入等を行うための特許権等の非独占的通常実施権を、大日本住友製薬株式会社及び当社が共同で株式会社サイレジェンに許諾する。

Athersys,Inc.、

ABT Holding Company

License Agreement

2016年1月8日

2016年1月8日から許諾対象となる特許権等が消滅するまで

・以下に係る国内における開発・販売等に関する再実施許諾権付独占実施権について当社が許諾を受ける。

(1)幹細胞製品MultiStemを用いた脳梗塞に対する細胞治療医薬品

(2) 多能性前駆生体細胞を使用して作製された器官芽を用いた肝疾患に対する細胞治療医薬品

・許諾の対価として、当社は一定の実施料を支払う。

Athersys,Inc.

SECURITIES PURCHASE AGREEMENT

2018年3月13日

期限の定めなし

・Athersys社株式を1,200万株取得した。

Athersys,Inc.

INVESTOR RIGHTS AGREEMENT

2018年3月14日

期限の定めなし

・Athersys社取締役を指名する権利を取得した。

Athersys,Inc.

COMMON STOCK PURCHASE WARRANT

2018年3月14日

2020年9月1日まで

・Athersys社株式を最大 19.9%の持分比率まで取得することのできる権利を取得した。

Athersys,Inc.、

ABT Holding Company

COLLABORATION EXPANSION AGREEMENT

2018年6月7日

2018年6月6日から、右記各ライセンス契約の終了時、又は当社からの20百万米ドルの支払及び取得対価のうち10百万米ドルの将来のマイルストンへの充当が完了し、iPS細胞由来製品とMultiStemとの併用療法の他地域に関する優先交渉期間が満了した時のいずれか早い時まで

・下記THIRD AMENDMENT TO LICENSE AGREEMENT、OPHTH LICENSE AGREEMENT及びCOMBINATION PRODUCT LICENSE AGREEMENTに基づくライセンス権取得等の対価として、20百万米ドルを支払う。うち10百万米ドルはエスクローへ預託された預託金を充当する。

・取得対価のうち10百万米ドルについては、脳梗塞又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の開発が成功した際に、当社からの支払義務が発生するマイルストンから減額される。

 

 

相手方の名称

契約名称

契約締結日

契約期間

主な契約内容

Athersys,Inc.、

ABT Holding Company

THIRD AMENDMENT TO LICENSE AGREEMENT

2018年6月7日

右記License Agreementの契約開始日である2016年1月8日から対象となる特許権等が消滅するまで

・2016年1月8日にAthersys,Inc.及びABT Holding Companyとの間に締結したLicense Agreement上のオプション権を行使して以下の独占的ライセンス権を取得した。

 (1) 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の日本国内における開発・販売

 (2) 臓器原基全適応のMultiStemを併用したグローバルにおける開発・販売

・許諾の対価として一定の実施料を支払う。

Athersys,Inc.、

ABT Holding Company

OPHTH LICENSE AGREEMENT

2018年6月7日

2018年6月6日から、対象となる特許権等の消滅時又は製品販売開始から10年後のいずれか遅い時まで

・MultiStem単体での眼科疾患治療法、及びiPS/ES細胞由来眼科製品とMultiStemを併用した療法のグローバルにおける開発・販売のための独占的ライセンス権を取得した。

・許諾の対価として一定の実施料を支払う。

Athersys,Inc.、

ABT Holding Company

COMBINATION PRODUCT LICENSE AGREEMENT

2018年6月7日

2018年6月6日から、対象となる特許権等の消滅時又は製品販売開始から10年後のいずれか遅い時まで

・iPS細胞由来製品とMultiStemを併用した療法(対象臓器に制限あり)の日本国内における開発・販売のための独占的ライセンス権を取得した。

・許諾の対価として一定の実施料を支払う。

 

(2)その他重要な契約

相手方の名称

契約名称

契約締結日

契約期間

主な契約内容

Goldman Sachs International、

Nomura International plc

Subscription and Purchase Agreement

2019年7月10日

期間の定め無し

・当社が発行する新株式及び2022年満期ユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債につき、Goldman Sachs International及びNomura International plcを共同ブックランナー兼共同主幹事会社として、海外募集をした。

・新株予約権行使可能期間は、2019年8月9日から2022年7月12日まで。

 

5【研究開発活動】

当事業年度においては、体性幹細胞再生医薬品及びiPSC再生医薬品両分野において、以下のとおり研究開発を推進いたしました。

当事業年度の研究開発費の総額は、3,217百万円(前期は4,269百万円)であります。なお、当該費用は、国内におけるRPE細胞製品の共同開発先である大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)による開発費用の負担分を控除した後の金額になります。

 

(1)体性幹細胞再生医薬品分野

当社は2016年1月に米国Athersys, Inc.(以下、アサシス社といいます。) とライセンス契約を締結し、同社の開発する幹細胞製品MultiStem®を用いた日本国内における脳梗塞急性期に対する治療法の開発・販売権を取得したことにより、体性幹細胞再生医薬品分野の取り組みを開始しました。また、2018年3月、アサシス社に対して約21百万ドルの戦略的投資を実施し、同社の筆頭株主となりました。同年6月、日本国内における急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法の開発・販売権を取得し、同年11月には、肺炎を原因疾患とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を適応疾患とした臨床試験を開始しております。当事業年度において、アサシス社の創製した幹細胞製品MultiStemを用いた、日本国内における脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法の開発(開発コード:HLCM051)を進めました。

脳梗塞急性期に対する治療法開発においては、承認取得に向け、脳梗塞発症後36時間以内の患者さんを対象とした、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しております。2019年5月には、40施設強の治験実施施設全てに治験製品の設置を完了しました。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法の開発においては、肺炎を原因としたARDSの患者さんを対象とした、有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相試験(治験名称:ONE-BRIDGE試験)を実施しております。本治験は、非盲検下で標準治療を対照とし、組入症例数は30を予定しており、全国20施設以上の医療機関で治験を実施中です。2019年4月より被験者組み入れを開始しております。同年11月、HLCM051が、ARDSを対象とした希少疾病用再生医療等製品として厚生労働大臣より指定されました。

治験製品は米国の製造委託先において製造されアサシス社より当社に提供されておりますが、本治験が完了し販売承認が得られた場合の商用生産にむけ米国ではなく日本での生産体制を構築するため、アサシス社から株式会社ニコン・セル・イノベーションへの技術移管が進められております

 

(2)iPSC再生医薬品分野

当事業年度において、眼科分野、肝疾患分野及びがん免疫分野での開発を進めました。

(イ) 眼科分野

iPS細胞由来RPE細胞を用いた治療法開発にむけて治験への準備を国内外にて進めてまいりました。国内においては、2019年6月、大日本住友製薬との共同開発体制の変更を決定し、今後同社が主体となって治験が進められることとなりました。同社との合弁会社である株式会社サイレジェンでは、大日本住友製薬の建設した再生・細胞医薬製造プラントSMaRT内の施設において、製造体制の構築に向けた準備を進めております。

海外においては、欧米での治験に使用することを想定して製造したiPS細胞のマスターセルバンクを用いて、米国眼科研究所(NEI)等との共同研究開発を進めております。

(ロ) 肝疾患分野

横浜市立大学との、機能的なヒト臓器を創り出す3次元臓器に関する共同研究では、肝臓原基の製造に向けて研究を進めております。肝臓原基は、肝細胞に分化する前の肝前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系幹細胞と、血管をつくりだす血管内皮細胞に混合して培養することで形成されますが、これらの構成細胞および形成された肝臓原基の機能評価や品質規格に関してデータ取得を進めたほか、大量培養法、細胞凍結法、移植法の開発を進めております。

(ハ) がん免疫分野

遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のNK細胞を用いて、固形がんを対象にしたがん免疫細胞療法の研究を進めております。これまで当社が培ってきたiPS細胞を取り扱う技術と遺伝子編集技術を用いることで、殺傷能力を高めたNK細胞を大量かつ安定的に作製することによる、次世代がん免疫療法を創出すべく自社研究開発を進めております。

() 次世代に向けた研究活動

遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞に関する研究を進めております。患者の免疫細胞に認識されにくいiPS細胞を作製する事で拒絶反応を抑制し、有効性と安全性を高めた再生医療製品を開発するための次世代技術プラットフォームの開発を目指します。

 

 なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。