第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、以下の経営理念のもと、長年培ってきた開発力・技術力を基盤として、優れた品質の製品を安定供給することにより、顧客満足度の向上を図るとともに、取引先・協力会社・地域社会・投資家の皆様方と従業員からの信頼と期待に応えられる企業を目指しております。

〔経営理念〕

努力、活力、創造力

全員営業、全員製造、全員参加の経営をもって、ものづくりのエキスパート集団となり、
夢ある未来を共に育てる。
① お客様、協力会社との共栄のために
② 従業員とその家族の幸せのために
③ 社会と地球環境への貢献のために

 

(2) 目標とする経営指標

今後の国内外の経済状況については、新型コロナウイルス感染症の影響はほぼ解消されたものの、世界的な金融引き締め政策の継続、原材料・エネルギー価格の高止まり、ウクライナや中東における情勢不安の長期化への懸念や、中国経済の先行き不透明感などが市場に与える影響などもあり、今後も予断を許さない状況で推移するものと予想されます。このような状況のなか、当社グループの2025年3月期の連結業績予想を以下のとおりといたします。

                                   (金額単位:百万円)

 

2025年3月期

第2四半期(累計)

対前年同期

増減率(%)

2025年3月期

通期

対前年同期

増減率(%)

売上高

1,550

30.1

3,300

36.8

営業利益

△20

110

経常利益

△30

80

親会社株主に帰属する
当期純利益

△70

20

△86.1

 

 

① 特殊精密機器事業

耐摩工具関連分野、実装機用ノズル分野ともに、当期においてはベアリング業界や半導体業界が低調であった影響を受け厳しい受注環境となりましたが、次期についても当面の間は厳しい事業環境が継続するものと見ております。このような環境の中、次期において新開発の実装機用ノズルの販売を開始するとともに自動車部品メーカーからの受注拡大、半導体製造業界からの新規受注の獲得、既存顧客からの新規アイテムの受注獲得に注力することにより売上拡大を目指してまいります。

そのため、次期売上高は当期売上高715百万円から18.8%増の850百万円を見込んでおります。

 

② 化学繊維用紡糸ノズル事業

当期において堅調に推移した風力発電用ブレード向け及び航空機向け炭素繊維用紡糸ノズルの販売については、次期においても引き続き堅調に推移すると見ております。加えて新工場に導入した大型加工設備を活用し、フィルム用ダイや不織布用大型ノズルの売上拡大、国内顧客を含めた中国外顧客への営業展開の強化による売上拡大に取り組んでまいります。

そのため、次期売上高は当期売上高1,570百万円から27.3%増の2,000百万円を見込んでおります。

なお、建設を進めてまいりました新工場の稼働開始により、大型不織布製造用ノズル・ダイ等の生産が可能となるため、当該分野での受注・売上の拡大を目指してまいります。

 

③ D-Next事業(旧電子材料スライス周辺事業)

当社製のパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの販売については、国内大手ダイヤモンドワイヤユーザーを中心に顧客獲得と販売数量の拡大が順調に進捗しており、次期についてもこの傾向は継続するものと見ております。また、PHX-01の受注・販売につきましては、インドにおける太陽電池内製化の進捗に遅れが生じており、契約締結に向けた商談が長期化しておりますが、事業上のリスクを慎重に検討しながら交渉を進めてまいります。

そのため、次期売上高は当期売上高121百万円から254.5%増の430百万円を見込んでおります。

 

④ マテリアルサイエンス事業

ナノサイズゼオライトについては、各用途分野において量産採用に向けた顧客やエンドユーザーによる評価が継続しております。量産開始は2025年度を見込んでおり、次期におきましては新たな顧客や用途分野開拓のためのサンプル提供や展示会への出展を行い、ナノサイズゼオライトの認知度向上に取り組むとともに、量産開始に向けた生産技術力と生産性の向上に取り組んでまいります。

そのため、次期売上高は当期売上高5百万円から286.6%増の20百万円を見込んでおります。

 

上記における業績見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが現時点において入手可能な情報による判断及び仮定を前提にしており、実際の業績は様々な要因により異なる場合があります。なお、江蘇三超社との国際仲裁については、現時点においてシンガポール国際仲裁センターの判断が出ておらず、見通しが立てられないため、仲裁判断による業績への影響は当期の連結業績予想には織り込んでおりません。

 

(3) 会社の対処すべき課題

当連結会計年度において営業損失を計上し、シンジケートローン契約における財務維持要件に抵触したため2025年3月期については借入金利が引き上げられる予定であり、また国内経済、海外経済ともに先行き不透明な状況が継続しております。このような状況下、当社グループでは2025年3月期において、これまで取り組んできた構造改革を完了させるとともに、それぞれの事業における成長基盤を確立し、収益力の強化を図るため、以下の取り組みを進めてまいります。

 

① 特殊精密機器事業の収益力強化

特殊精密機器事業においては、これまで取り組んできた技術開発の成果として、新開発の実装機用ノズルの販売を開始する計画であるとともに、商社を活用した自動車部品メーカーからの受注拡大、半導体製造業界からの新規受注獲得や既存顧客の深耕、製造現場における生産技術力と生産性の向上を実現することなどにより、さらなる収益力の強化を図り、セグメント利益の確保に取り組んでまいります。

 

② 化学繊維用紡糸ノズル事業の収益力強化

化学繊維用紡糸ノズル事業においては、新工場に導入した大型加工設備を活用し、フィルム用ダイや不織布用大型ノズルの受注拡大、好調に推移している炭素繊維用ノズル分野におけるさらなるシェア拡大、国内顧客を含めた中国外顧客への営業展開の強化による受注拡大に取り組んでまいります。また販売済の不織布製造装置のノズル入れ替え需要や新規の装置需要を的確に取り込むことにより、セグメント利益の確保に取り組んでまいります。

 

③ D-Next事業におけるビジネスモデル転換の完了と収益事業化

2019年11月に太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業から撤退し、パワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤ及びPHX-01の生産・販売事業へとビジネスモデルを転換した同事業においては、顧客獲得と販売数量拡大が順調に進捗しているパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの生産・販売事業の収益事業化を達成し、ビジネスモデル転換の完了を目指します。また、インドを始めとするダイヤモンドワイヤ生産拠点へのPHX-01の受注・販売につきましては、事業上のリスクを慎重に検討しながら契約締結に向けた商談を進めてまいります。

 

④ ナノサイズゼオライトの事業化

新規事業として取り組んでいるナノサイズゼオライトの開発については、各用途分野において量産開始に向けた顧客やエンドユーザーによる評価が継続しております。量産開始は2025年度を見込んでおり、2024年度におきましては新たな顧客や用途分野開拓のためのサンプル提供や展示会への出展を行い、ナノサイズゼオライトの認知度向上に取り組んでまいります。なおナノサイズゼオライト量産開始に向け、製造現場における生産技術力と生産性の向上を図り、量産開始以降の生産量の確保と早期の収益事業化を目指した取り組みを進めてまいります。

 

⑤ 研究開発力の強化

当社グループの持続的発展のためには、技術競争力に裏打ちされた様々な研究開発が必須と考えております。この研究開発力を基盤として社会に役立つ製品開発を推進し、「エネルギー」「環境」「医療」を事業領域の3本の柱として、産学官連携も視野に入れながら次世代技術の研究開発を進めてまいります。

 

⑥ 人材の確保・育成

当社グループの持続的発展のためには、現在保有する高度かつ熟練した生産技術を次世代に継承するだけでなく、今後の当社グループの経営の中核を担う人材の育成が急務と考えております。このため当社グループでは高度人材の確保のため継続的な採用活動を行うとともに、人材教育体制を構築し、経営環境の変化に対応できる人材の育成に取り組んでまいります。

 

⑦ 内部管理体制の強化

当社グループは、会社法、金融商品取引法及びその他の法令を遵守するコンプライアンス体制を継続して強化していくとともに、内部牽制が機能する管理体制を構築することで、株主や取引先など、すべてのステークホルダーの信頼に耐えうる組織を目指してまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、すべてのステークホルダーからの信頼と期待に応えられる企業として、長期的視野のなかで企業価値の向上を目指すとともに、経営の透明性・公明性の確保、社会的な責任を果たしていくために、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。原則として毎月1回開催している取締役会にて基本方針や重要課題等を総合的に検討・審議し、決定しており、常勤取締役で構成される経営会議を毎月1回開催しており、経営に関する重要事項や取締役会から委任を受けた事項に迅速に審議決定しております。

また、監査役は取締役会へ出席するほか、常勤監査役が経営会議その他の重要な社内会議にも出席しており、業務執行状況を監視できる体制となっております。加えて、内部監査室を業務執行部門から独立した形で設置しており、業務執行部門の監査を行い、その結果を常勤監査役同席のもと、代表取締役に直接報告しております。

 

(2) 戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりであります。

 

・人材育成方針

当社グループは、従業員の成長が組織力と競争力の源泉であると認識し、従業員一人ひとりの自己実現とチャレンジできる成長の機会を提供することで、持続的な企業価値の向上を目指します。従業員が高い志をもち、自律的に学び、新たな技術にチャレンジし続けられるよう、人事制度や人材育成などの改善に継続的に取り組んでおります。

具体的な取り組みとしては、定期的な上司と部下との面談を通し、一人ひとりの期待される役割を明確にし、一人ひとりの教育訓練計画を策定いたしております。特に技術面においては、当社経営理念にあるとおり、「ものづくりのエキスパート集団」であるべく、高い技術力を有する人材を確保または育成するため、国家技能検定の受検を推進しております。

 

・社内環境整備

当社グループは、従業員の健康増進が個人と組織のパフォーマンスの向上につながるものであると捉え、健康経営を推進しております。

具体的な取り組みとしては、以下のとおりです。

① 安全衛生委員会の開催と労働安全衛生教育の実施

② 定期健康診断・ストレスチェックの実施

③ 特定保健指導の実施

④ 希望者に対する産業医面談の実施

 

(3) リスク管理

当社グループは、サステナビリティに対するリスクと機会を事業部門ごとに検討しております。事業部門にて検討されたリスクと機会は必要に応じて、経営会議にて審議を行います。また、リスクについては、代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役及び常勤監査役をメンバーとするリスク管理委員会を設置しており、リスク管理に関する戦略的な計画策定及び意思決定、定期的なリスクの抽出、評価を実施しております。

人材の確保に関するリスクの内容については「3 事業等のリスク (重要なリスク)(3)人材の確保に関するリスク」をご参照ください。

 

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」に置いて記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

目標

実績
(当連結会計年度末)

国家技能検定2級以上合格者指数※

2026年3月まで63

51

 

※2級合格者を1、1級合格者を2、特級合格者を3とした場合の指数

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、当社グループはこれらのリスクの存在を認識した上で、当該リスクの発生を極力回避するための努力を継続してまいります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(特に重要なリスク)

(1)  江蘇三超社との仲裁に関するリスク

中国の江蘇三超社に対するダイヤモンドワイヤ生産設備等の譲渡案件について、当社所有のダイヤモンドワイヤ生産設備の譲渡及びダイヤモンドワイヤ製造に関する技術供与に係る契約に関し、同社より2021年11月17日に当社の契約義務の履行がなされなかったとして、本件契約を解除するとともに損害賠償請求する仲裁申立がシンガポール国際仲裁センター(以下「SIAC」という。)になされました。当社としては、本件契約の義務の履行は完了しており、同社の主張する契約解除事由には該当しないと考えており、仲裁手続きを通じて当社の正当性を主張するとともに、同社に対し本件契約代金の未払い額の請求を行っておりますが、本仲裁において、当社が敗訴となる判決が出た場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 財務維持要件に関するリスク

当社グループが複数の金融機関との間で締結しているシンジケートローン契約において「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結貸借対照表関係) ※4 財務維持要件」に記載のとおり財務維持要件が付されております。本契約において、2024年3月期は営業損失を計上したため財務維持要件に抵触しており、2025年3月期について借入金利が引き上げられる予定となっております。2025年3月期は営業利益を計上する業績予想となっておりますが、黒字化を達成できない場合、期限の利益を喪失するため、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新規事業の事業化に関するリスク

当社は、新規事業として、ナノサイズゼオライトの開発に取り組んでおり、2019年7月に国立研究開発法人科学技術振興機構から本開発に対する成功認定を受け、現在、サンプル提供先企業において製品化に向けた開発を進めており、一部の企業においては開発ステージから事業ステージへ移行しており、引き続き量産顧客の獲得に努めてまいります。
 しかしながら、サンプル提供先企業における開発に更なる時間が必要であることが見込まれる場合や、将来的に量産顧客の獲得が実現できなかった場合は、当事業における固定費負担が継続することとなるとともに事業化の蓋然性等を考慮しなければならず、その場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(重要なリスク)

(1)海外取引の拡大に関するリスク

当社グループの連結売上高に占める海外販売の比率は、2024年3月期において39.2%と高く、当社グループが扱う製品の市場動向を鑑みると、今後も海外志向は強まっていくものと考えております。そのため、当社グループでは、取引慣行の違いによるトラブルを未然に回避するため各種契約に係る法務チェックを強化するとともに、債権回収の安全を図るため前受金の割合を高める等、与信管理を徹底しております。また、他にも地政学的要因などにより、海外での営業活動や製品の出荷に影響が出る可能性があります。

海外取引においては予期せぬトラブルが発生する可能性があり、これらのトラブルが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 株式希薄化による買収可能性に関するリスク

当社は、財務状態の安定化を目的として、複数回に渡り新株予約権の発行を決議し、その全ての行使が完了しております。発行株式数の増加に伴い、2024年3月末時点の株主は7,887名であり、個人株主比率も81.5%と高い状態にあります。また、2024年3月末時点での当社の株価は338円と低水準となっております。
  当社としては、企業価値を高めるべく構造改革を実施し、既存事業での収益力強化や新規事業開発などにも取り組んでおりますが、財務状況の改善が進むにつれ、安定株主不在及び株価低迷に伴う企業買収等の可能性は否定できず、このような場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)人材の確保に関するリスク

当社グループの運営は、代表取締役社長である井上誠をはじめとする主要な経営陣に大きく依存しております。将来、これらの経営陣において、病気やけがによる長期休暇、死亡などの事態が発生した場合、当社グループの業績や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。また、当社グループの成長と成功は社員の力によるものであり、これら重要な人材の確保と育成には常に取り組んでおりますが、将来、重要な人材の確保と育成ができなかった場合、当社グループの成長、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)原材料等の調達価格が上昇するリスク

当社グループの事業に関し、販売価格に転嫁することが困難な水準で原材料やエネルギーコストなどが高騰した場合、製造原価の上昇によって利益が減少することにより、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が指定感染症5類に移行されたことで社会経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境の改善、個人消費やインバウンド需要の持ち直しにより、緩やかな回復基調で推移いたしました。世界経済においては、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や、中東地域における地政学リスクの高まりの中、原材料・エネルギー価格の高止まりや欧米を中心とした世界的な金融引き締め政策の継続、中国経済停滞の長期化など、依然として厳しい状況が続いており、わが国経済を取り巻く世界情勢は、予断を許さない状況が続いております。

このような状況下、当社グループは、特殊精密機器事業において新規顧客の開拓や自動車部品メーカーへの販売拡大等において成果が見られたものの、ベアリング業界や半導体業界が低調であり、耐摩耗工具関連分野及び実装機用ノズルの受注が落ち込むこととなりました。同様に化学繊維用紡糸ノズル事業においても、炭素繊維用ノズルの受注は引き続き好調に推移したものの、中国向け不織布関連ノズルの受注が大きく落ち込むこととなり、厳しい事業環境となりました。一方、当連結会計年度において、化学繊維用紡糸ノズル事業の新工場の建設及び大型メルトブローンノズル・ダイ製造設備に関する投資において、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金の申請により確定通知を受領し、特別利益1,181百万円を補助金収入として計上いたしました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は2,413百万円(前年同期比27.4%減)、営業損失は532百万円(前年同期は33百万円の営業利益)、経常損失は553百万円(前年同期は65百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は144百万円(前年同期は124百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

① 特殊精密機器事業

特殊精密機器事業については、耐摩耗工具関連分野における大手ベアリングメーカーとの新規取引の開始や、自動車部品メーカーへの販売拡大等の成果はあったものの、ベアリング業界や半導体業界がともに低調であった影響を受け、耐摩耗工具関連分野及び実装機用ノズルの売上がともに落ち込むなど、厳しい事業環境が継続しております。

これらの結果、売上高は715百万円(前年同期比12.5%減)、セグメント損失は11百万円(前年同期は40百万円のセグメント利益)となりました。

 

② 化学繊維用紡糸ノズル事業

化学繊維用紡糸ノズル事業については、風力発電用ブレード向け及び航空機向け炭素繊維用ノズルは、旺盛な需要により引き続き好調に推移いたしました。反面、炭素繊維以外の化学繊維用紡糸ノズルについては、下期から回復基調に転ずると予測していた中国経済停滞の長期化やマスク需要が想定より早く終息したことにより、不織布関連ノズルの受注・売上が計画を大きく下回ったため、低調に推移いたしました。

これらの結果、売上高は1,570百万円(前年同期比30.4%減)、セグメント損失は55百万円(前年同期は376百万円のセグメント利益)と、不織布製造装置の収益を計上した前年同期と比較すると大幅な減収減益となりました。

 

③ D-Next事業

D-Next事業については、当社製のパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤを正式採用する企業が着実に増加し、国内大手顧客を中心に量産採用が進んでおります。また顧客内シェアも順調に拡大しており、着実に販売数量が増加しております。なお、ダイヤモンドワイヤ製造装置販売については、インド国内における太陽電池内製化の進捗に遅れが生じており、契約締結に向けた商談が長期化する見込みであるものの、太陽電池内製化の動きに変化はなく、引き続き有望顧客との商談を継続しております。

これらの結果、売上高は121百万円(前年同期比28.5%減)、セグメント損失は316百万円(前年同期は162百万円のセグメント損失)と、中国向けダイヤモンドワイヤ製造装置販売の契約対価の一部を計上した前年同期と比較すると減収減益となりました。

 

④ マテリアルサイエンス事業

新規事業として取り組んでいるナノサイズゼオライトについては、エンドユーザーにおける量産採用に向けた評価が継続されており、2025年度の量産開始に向け着実に進捗しているとともに、新たな用途分野での顧客獲得を目指したサンプルの提供と、展示会出展をはじめとする認知度向上に取り組んでおります。

これらの結果、売上高は5百万円(前年同期比93.2%減)、セグメント損失は156百万円(前年同期は136百万円のセグメント損失)と、パイロットプラント立ち上げに係る山全社からの受託収入を計上した前年同期と比較すると大幅な減収となりました。

 

(2) 財政状態の状況

総資産は前連結会計年度末に比べ1,315百万円増加6,003百万円となりました。これは、現金及び預金が503百万円減少したものの、当社連結子会社の日本ノズル株式会社における新工場の建設及び大型メルトブローンノズル・ダイ製造設備に関する投資として、機械装置及び運搬具が1,155百万円増加、建物及び構築物が494百万円増加、それに加えて、商品及び製品が104百万円増加したたこと等によるものであります。

負債は前連結会計年度末に比べ1,175百万円増加5,148百万円となりました。これは、上記工場建設及び当該設備投資に係る資金として、長期借入金が525百万円増加、繰延税金負債が375百万円増加、契約負債が114百万円増加したこと等によるものであります。

純資産は前連結会計年度末に比べ139百万円増加854百万円となりました。これは利益剰余金が144百万円増加したこと等によるものであります。

この結果、自己資本比率は14.0%(前連結会計年度末は15.0%)となりました。

 

セグメントごとの資産は次のとおりであります。

 

① 特殊精密機器事業

特殊精密機器事業におけるセグメント資産は548百万円となり、前連結会計年度末から109百万円減少しております。これは,売上債権の減少が主な要因となります。

 

② 化学繊維用紡糸ノズル事業

化学繊維用紡糸ノズル事業におけるセグメント資産は4,818百万円となり、前連結会計年度末から1,832百万円増加しております。これは、新工場の建設及び大型メルトブローンノズル・ダイ製造設備などの有形固定資産の増加が主な要因となります。

 

③ D-Next事業

D-Next事業におけるセグメント資産は54百万円となり、前連結会計年度末から33百万円減少しております。これは、棚卸資産の減少が主な要因となります。

 

④ マテリアルサイエンス事業

マテリアルサイエンス事業におけるセグメント資産は1百万円となり、前連結会計年度末から0百万円減少しております。これは売上債権の減少が主な要因となります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ503百万円減少し、1,495百万円となりました。

当連結会計年度における連結キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、642百万円(前年同期は81百万円の支出)となりました。

これは、税金等調整前当期純利益527百万円、減価償却費186百万円、契約負債の増加額114百万円、売上債権の減少額97百万円等の増加要因が、未収消費税等の増加額228百万円、棚卸資産の増加額202百万円等の減少要因を上回ったことによるものであります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、1,771百万円(前年同期は470百万円の支出)となりました。

これは、有形固定資産の取得による支出1,772百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によって得られた資金は、609百万円(前年同期は378百万円の支出)となりました。

これは、長期借入れによる収入800百万円等の増加要因が、長期借入金の返済による支出174百万円等の減少要因を上回ったことによるものであります。

 

当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは増加したものの、化学繊維用紡糸ノズル事業の新工場の建設及び大型メルトブローンノズル・ダイ製造設備に関する投資等により、当連結会計年度末の資金は前連結会計年度末から503百万円減少する結果となっております。

 

当社グループの主な資金需要は、各事業における原材料の仕入、製造経費、販売費及び一般管理費の営業費用などの運転資金や借入金の返済及び利息の支払い等であり、自己資金により充当いたします。当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,495百万円であり、当社グループの事業規模における事業継続に必要な資金が確保できていることから、短期的な資本の財源及び資金の流動性については問題ないと考えておりますが、事業基盤が確立されている特殊精密機器事業ならびに化学繊維用紡糸ノズル事業での目標数値を達成することにより、営業キャッシュ・フローの最大化を図ってまいります。

今後も資金の残高及び各キャッシュ・フローの状況を常にモニタリングしつつ、資本の財源及び資金の流動性の確保・向上に努めてまいります。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

特殊精密機器事業

526,734

94.3

化学繊維用紡糸ノズル事業

1,355,812

105.1

D-Next事業

200,282

123.3

マテリアルサイエンス事業

合計

2,082,830

102.0

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 上記の生産高合計額は各セグメントの第54期連結会計年度における当期製品製造原価の合計額であり、製品棚卸高の増減が反映されておりませんので、連結損益計算書の売上原価とは一致しておりません。

3 マテリアルサイエンス事業についてはパイロットプラントの立上げに係る受託業務が完了したため、前年同期に比べて生産高が減少しております。

 

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

特殊精密機器事業

686,354

82.0

76,359

72.2

化学繊維用紡糸ノズル事業

1,809,520

82.1

1,636,093

117.1

D-Next事業

129,936

143.6

663,518

101.3

マテリアルサイエンス事業

5,643

86.5

650

361.1

合計

2,631,454

83.8

2,376,621

110.1

 

(注)  セグメント間取引については相殺消去しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

特殊精密機器事業

715,762

87.5

化学繊維用紡糸ノズル事業

1,570,847

69.6

D-Next事業

121,304

71.5

マテリアルサイエンス事業

5,173

6.8

合計

2,413,086

72.6

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

NATIONAL FOX LIMITED.

318,044

9.6

330,626

13.7

 

3 マテリアルサイエンス事業についてはパイロットプラントの立上げに係る受託業務のため、前年同期に比べて販売高が減少しております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2019年8月30日に、南京三超新材料股份有限公司の完全子会社である江蘇三超金剛石工具有限公司(以下「江蘇三超社」という。)との間で、当社所有のダイヤモンドワイヤ生産設備の譲渡及びダイヤモンドワイヤ製造に関する技術供与に係る契約を締結いたしました。

なお、本契約に関して江蘇三超社より仲裁の申立てを受けております。その内容については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2)その他」に記載しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにとって研究開発活動は成長戦略の要であり、現在保有する中核技術を堅持しながら将来を見据えた経営の視点から研究開発活動に常に取り組んでおります。このため研究開発部門は、経営方針や事業戦略を踏まえ、最新の技術動向を見極めながら、研究開発テーマの選定、研究開発スケジュールの設定、当社グループ内外との連携方法などについて検討しております。当社グループの経営陣は、定期的に開催される研究部門の会議や経営会議において研究開発活動の進捗報告を受け、必要に応じて軌道修正等を指示することにより適正な研究開発活動が行われる体制を構築しております。

また、当社グループの研究開発活動は産学官連携を積極的に活用しており、大学研究室や国の研究機関との共同研究活動を通して新規分野における事業シーズの可能性を模索するとともに、設備装置メーカーや素材メーカーなどとも連携しながら当社独自の技術を獲得することを目標として、精力的に研究開発活動に取り組んでおります。

当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は210百万円であります。

 

セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1) 特殊精密機器事業

特殊精密機器事業では、微細高精度流路加工技術をベースに開発した最適反応条件自動検索型フロー合成装置を販売しており、その技術を活かした新たな装置の開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の金額は0百万円であります。

 

(2) 化学繊維用紡糸ノズル事業

化学繊維用紡糸ノズル事業では、高い成長が見込まれる不織布製造分野において、ノズル部品単品の加工にとどまらず、多様な不織布生産に対応可能な製造装置全体の研究開発を行っております。また、新たに導入した大型部材加工用の設備を用いた大型不織布製造用ノズル・ダイや、新規参入分野であるフィルム用ダイ製造のための加工技術の開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の金額は18百万円であります。

 

(3) D-Next事業

D-Next事業では、パワー半導体向けダイヤモンドワイヤの細線化や性能向上のための開発や、PHX-01の市場競争力強化のための開発などに取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の金額は100百万円であります。

 

(4)マテリアルサイエンス事業

マテリアルサイエンス事業では、ナノサイズゼオライトの開発に取り組んでおり、早期の事業化を目指し、吸湿やガス吸着、温感や抗菌・抗ウイルス等の用途分野において、様々な企業に対しサンプル供給を行っており、量産顧客の獲得に向けた開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の金額は90百万円であります。