当社グループは、以下の経営理念のもと、長年培ってきた開発力・技術力を基盤として、優れた品質の製品を安定供給することにより、顧客満足度の向上を図るとともに、取引先・協力会社・地域社会・投資家の皆様方と従業員からの信頼と期待に応えられる企業を目指しております。
〔経営理念〕
努力、活力、創造力
全員営業、全員製造、全員参加の経営をもって、ものづくりのエキスパート集団となり、
夢ある未来を共に育てる。
① お客様、協力会社との共栄のために
② 従業員とその家族の幸せのために
③ 社会と地球環境への貢献のために
今後の国内外の経済状況については、日本を含めた世界各国における金融政策の変更や米国における政策変動、ウクライナや中東における情勢不安の長期化や、中国経済の先行き不透明感などが市場に与える影響などもあり、今後も予断を許さない状況で推移するものと予想されます。このような状況のなか、当社グループの2026年3月期の連結業績予想を以下のとおりといたします。なお下記業績予想には、化学繊維用紡糸ノズル事業における原材料売却による営業外収益を第1四半期に織り込んでおります。
(金額単位:百万円)
① 特殊精密機器事業
耐摩耗工具関連分野及び実装機用ノズル分野ともに、当期においては厳しい受注環境となりましたが、次期についても当面の間は厳しい事業環境が継続するものと見ております。このような環境の中、当期から量産出荷が開始された新素材で製作した実装機用ノズルの販売が本格化することによる売上拡大や、商社を活用した自動車部品メーカーからの受注拡大、新規参入分野である半導体製造業界や新規開拓したベアリングメーカー等からの受注の獲得、既存顧客からの新規アイテムの受注獲得に注力することにより売上拡大を目指してまいります。
そのため、次期売上高は当期売上高707百万円から21.5%増の860百万円を見込んでおります。
② 化学繊維用紡糸ノズル事業
当期において堅調に推移した風力発電用ブレード向け炭素繊維用紡糸ノズルの販売については、次期においては動きが鈍化する見込みであるものの、航空機向け炭素繊維用ノズルは好調に推移すると見ております。また一部の不織布用ノズルに受注回復の兆しが見えていることや、新工場に設置した大型加工設備の活用により、不織布用大型ノズルやフィルム用ダイの売上拡大、米国やメキシコ、インド、トルコ等への営業展開の強化による売上拡大に取り組んでまいります。
そのため、次期売上高は当期売上高1,679百万円から7.2%増の1,800百万円を見込んでおります。
③ D-Next事業
当社製のパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの販売については、国内大手ダイヤモンドワイヤユーザーを中心に顧客獲得と販売数量の拡大が順調に進捗しており、次期についてもこの傾向は継続するものと見ております。国内大手顧客の開拓はほぼ完了しており、次期は顧客内における当社製品のシェアを高めるとともに、半導体用途を中心とした海外顧客の開拓を進めることにより、さらなる売上拡大を目指してまいります。
そのため、次期売上高は当期売上高243百万円から31.3%増の320百万円を見込んでおります。
④ マテリアルサイエンス事業
ナノサイズゼオライトについては、当期において化粧品用途や歯みがき粉用途において正式採用されており、少量ではありますが製品用ナノサイズゼオライトの出荷が開始されました。なお、販売数量の拡大が期待される複数の用途分野においては、量産採用に向けた顧客やエンドユーザーによる評価が継続しておりますが、電子部品封止剤用途については、次期において量産開始される見込みであることには変更はなく、量産開始に向けた生産技術力と生産性の向上に取り組んでまいります。また次期においては、ナノサイズゼオライトの販売数量を飛躍的に拡大させるため、グローバル市場に対し精力的に営業展開するための体制づくりと、当事業の継続的成長を実現するための事業スキームの策定と確立に向けた取り組みを進めてまいります。
マテリアルサイエンス事業における次期売上高は、当期売上高9百万円から103.5%増の20百万円を見込んでおります。
上記における業績見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが現時点において入手可能な情報による判断及び仮定を前提にしており、実際の業績は様々な要因により異なる場合があります。なお、江蘇三超社との国際仲裁については、2025年5月23日にお知らせいたしました通り、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)から仲裁判断(中間判断)を受領し、当社に対し江蘇三超社が被った直接損害額及び利息の支払いが命じられました。しかしながら、当社が支払う金額については、今後の仲裁手続きにおいて江蘇三超社及び当社がそれぞれ主張を行った上で、仲裁廷により別途決定されることとなっており、現時点においてはその金額の見通しが立てられないため、仲裁判断による業績への影響は連結業績予想には織り込んでいません。
国内経済、海外経済ともに先行き不透明な状況が継続する中、当社グループでは2026年3月期において、これまで取り組んできた構造改革を完了させるとともに、それぞれの事業における成長基盤の確立と収益の拡大を目指し、以下の取り組みを進めてまいります。
① 特殊精密機器事業の収益力強化
特殊精密機器事業においては、これまで取り組んできた技術開発の成果として、新開発の実装機用ノズルの量産販売開始による売上高の増加を見込んでいるとともに、商社を活用した自動車部品メーカーからの受注拡大、半導体製造業界からの新規受注獲得や既存顧客の深耕、製造現場における生産技術力と生産性の向上を実現することなどにより、さらなる収益力の強化に取り組んでまいります。
② 化学繊維用紡糸ノズル事業の収益力強化
化学繊維用紡糸ノズル事業においては、新工場に導入した大型加工設備を活用し、フィルム用ダイや不織布用大型ノズルの受注拡大に注力するとともに、好調に推移している炭素繊維用ノズル分野におけるさらなるシェア拡大と、販売済の不織布製造装置のノズル入れ替え需要や新規の装置需要を的確に取り込むことにより、さらなる収益力の強化に取り組んでまいります。
③ D-Next事業におけるビジネスモデル転換の完了と収益事業化
2019年11月に太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業から撤退し、パワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤ及びPHX-01の生産・販売事業へとビジネスモデルを転換した同事業においては、顧客獲得と販売数量拡大が順調に進捗しているパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの生産・販売事業の収益事業化を達成し、ビジネスモデル転換の完了を目指します。また、インドをはじめとするダイヤモンドワイヤ生産拠点へのPHX-01の受注・販売につきましては、事業上のリスクを慎重に検討しながら商談を進めてまいります。
④ ナノサイズゼオライトの事業化
新規事業として取り組んでいるナノサイズゼオライトの開発については、化粧品や歯みがき粉用途において正式採用されました。また販売量の拡大が期待される複数用途分野においては、量産採用に向けた顧客やエンドユーザーによる評価が継続しております。2025年度におけるナノサイズゼオライトの量産開始に向け、製造現場における生産技術力と生産性の向上に取り組んでまいります。また、ナノサイズゼオライトの販売数量を飛躍的に拡大させるため、グローバル市場に対し精力的に営業展開するための体制づくりと、当事業の継続的成長を実現するための事業スキームの策定と確立に向けた取り組みを進めてまいります。
⑤ 研究開発力の強化
当社グループの持続的発展のためには、技術競争力に裏打ちされた様々な研究開発が必須と考えております。この研究開発力を基盤として社会に役立つ製品開発を推進し、「エネルギー」「環境」「医療」を事業領域の3本の柱として、産官学連携も視野に入れながら次世代技術の研究開発を進めてまいります。
⑥ 人材の確保・育成
当社グループの持続的発展のためには、現在保有する高度かつ熟練した生産技術を次世代に継承することに加え、今後の当社グループの経営の中核を担う人材の育成が急務と考えております。このため当社グループでは高度人材の確保のため継続的な採用活動を行うとともに、人材教育体制の構築や人事制度の再設計を行い、必要不可欠な人材が長い年月にわたって、やりがいを持って働いていただける環境の整備を進めてまいります。
⑦ 内部管理体制の強化
当社グループは、会社法、金融商品取引法及びその他の法令を遵守するコンプライアンス体制を継続して強化していくとともに、内部牽制が機能する管理体制を構築することで、株主や取引先など、すべてのステークホルダーの信頼に耐えうる組織を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、すべてのステークホルダーからの信頼と期待に応えられる企業として、長期的視野のなかで企業価値の向上を目指すとともに、経営の透明性・公明性の確保、社会的な責任を果たしていくために、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。原則として毎月1回開催している取締役会にて基本方針や重要課題等を総合的に検討・審議し、決定しており、常勤取締役で構成される経営会議を毎月1回開催しており、経営に関する重要事項や取締役会から委任を受けた事項に迅速に審議決定しております。
また、監査役は取締役会へ出席するほか、常勤監査役が経営会議その他の重要な社内会議にも出席しており、業務執行状況を監視できる体制となっております。加えて、内部監査室を業務執行部門から独立した形で設置しており、業務執行部門の監査を行い、その結果を常勤監査役同席のもと、代表取締役に直接報告しております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりであります。
・人材育成方針
当社グループは、従業員の成長が組織力と競争力の源泉であると認識し、従業員一人ひとりの自己実現とチャレンジできる成長の機会を提供することで、持続的な企業価値の向上を目指します。従業員が高い志をもち、自律的に学び、新たな技術にチャレンジし続けられるよう、人事制度や人材育成などの改善に継続的に取り組んでおります。
具体的な取り組みとしては、定期的な上司と部下との面談を通し、一人ひとりの期待される役割を明確にし、一人ひとりの教育訓練計画を策定いたしております。特に技術面においては、当社経営理念にあるとおり、「ものづくりのエキスパート集団」であるべく、高い技術力を有する人材を確保または育成するため、国家技能検定の受検を推進しております。
・社内環境整備
当社グループは、従業員の健康増進が個人と組織のパフォーマンスの向上につながるものであると捉え、健康経営を推進しております。
具体的な取り組みとしては、以下のとおりです。
① 安全衛生委員会の開催と労働安全衛生教育の実施
② 定期健康診断・ストレスチェックの実施
③ 特定保健指導の実施
④ 希望者に対する産業医面談の実施
当社グループは、サステナビリティに対するリスクと機会を事業部門ごとに検討しております。事業部門にて検討されたリスクと機会は必要に応じて、経営会議にて審議を行います。また、リスクについては、代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役及び常勤監査役をメンバーとするリスク管理委員会を設置しており、リスク管理に関する戦略的な計画策定及び意思決定、定期的なリスクの抽出、評価を実施しております。
人材の確保に関するリスクの内容については「
当社グループでは、上記「(2) 戦略」に置いて記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
※2級合格者を1、1級合格者を2、特級合格者を3とした場合の指数
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、当社グループはこれらのリスクの存在を認識した上で、当該リスクの発生を極力回避するための努力を継続してまいります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(特に重要なリスク)
(1) 江蘇三超社との仲裁に関するリスク
中国の江蘇三超社に対するダイヤモンドワイヤ生産設備等の譲渡案件について、当社所有のダイヤモンドワイヤ生産設備の譲渡及びダイヤモンドワイヤ製造に関する技術供与に係る契約に関し、同社より2021年11月17日に当社の契約義務の履行がなされなかったとして、本件契約を解除するとともに損害賠償請求する仲裁申立がシンガポール国際仲裁センター(以下「SIAC」という。)になされました。
本仲裁においては2025年5月20日付にて仲裁判断(中間判断)が下され、本件契約については当社に債務不履行があったと判断され、2021年9月27日付で当社の債務不履行を理由に解除が認められましたが、江蘇三超社が要求していた支払済契約対価(9.9億円)の返還請求については棄却されました。
また、当社に対し江蘇三超社が被った直接損害額及び利息の支払いが命じられましたが、当社が江蘇三超社に支払うべき金額については、今後の仲裁手続きにおいて別途検討・決定されることとなっております。当社に対し、多額の支払いが命じられた場合は、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、本仲裁費用のうち、現時点までに生じた各当事者の代理人費用等については各自負担とすることが命じられたとともに、江蘇三超社に対し、当社へ未払いの輸送費約583万円及び利息の支払いが命じられました。これら以外の請求及び反訴は棄却されました。
(2) 新規事業の事業化に関するリスク
当社は、新規事業として、ナノサイズゼオライトの開発に取り組んでおり、2019年7月に国立研究開発法人科学技術振興機構から本開発に対する成功認定を受け、現在、サンプル提供先企業において製品化に向けた開発を進めており、一部の企業においては開発ステージから事業ステージへ移行しており、引き続き量産顧客の獲得に努めてまいります。
しかしながら、サンプル提供先企業における開発に更なる時間が必要であることが見込まれる場合や、将来的に量産顧客の獲得が実現できなかった場合は、当事業における固定費負担が継続することとなるとともに事業化の蓋然性等を考慮しなければならず、その場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(重要なリスク)
(1) 米国による関税政策に関するリスク
米国による相互関税や自動車に対する追加関税については、日本経済全体に与える影響が大きく、日本から米国に対する輸出の減少や見合わせ、これに伴う国内製造業の稼働率低下等が引き起こされることが予想されます。この影響により当社製品の受注・販売が減少する可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)海外取引の拡大に関するリスク
当社グループの連結売上高に占める海外販売の比率は、2025年3月期において45.2%と高く、当社グループが扱う製品の市場動向を鑑みると、今後も海外志向は強まっていくものと考えております。そのため、当社グループでは、取引慣行の違いによるトラブルを未然に回避するため各種契約に係る法務チェックを強化するとともに、債権回収の安全を図るため前受金の割合を高める等、与信管理を徹底しております。また、他にも地政学的要因や急激な為替変動などにより、海外での営業活動や製品の出荷に影響が出る可能性があります。
海外取引においては予期せぬトラブルが発生する可能性があり、これらのトラブルが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 株式希薄化による買収可能性に関するリスク
当社は、財務状態の安定化を目的として、複数回に渡り新株予約権の発行を決議し、その全ての行使が完了しております。発行株式数の増加に伴い、2025年3月末時点の株主は7,536名であり、個人株主比率も82.21%と高い状態にあります。また、2025年3月末時点での当社の株価は335円と低水準となっております。
当社としては、企業価値を高めるべく構造改革を実施し、既存事業での収益力強化や新規事業開発などにも取り組んでおりますが、財務状況の改善が進むにつれ、安定株主不在及び株価低迷に伴う企業買収等の可能性は否定できず、このような場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4)人材の確保に関するリスク
当社グループの運営は、代表取締役社長である井上誠をはじめとする主要な経営陣に大きく依存しております。将来、これらの経営陣において、病気やけがによる長期休暇、死亡などの事態が発生した場合、当社グループの業績や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。また、当社グループの成長と成功は社員の力によるものであり、これら重要な人材の確保と育成には常に取り組んでおりますが、将来、重要な人材の確保と育成ができなかった場合は当社グループの成長、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)原材料等の調達価格が上昇するリスク
当社グループの事業に関し、販売価格に転嫁することが困難な水準で原材料やエネルギーコストなどが高騰した場合、製造原価の上昇によって利益が減少することにより、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、所得や雇用環境の改善、社会経済活動の正常化が進んだことに加え、円安を背景としたインバウンド需要の回復もあり、物価上昇による景気下押し要因はあったものの、緩やかな回復傾向となりました。しかしながら世界経済においてはロシア・ウクライナ紛争や中東地域での緊張が長期化しており、地政学的リスクの高止まりが継続しているとともに、米国における政策変動や中国経済の先行き不安など、依然として厳しくかつ不透明な状況にあります。また原材料・エネルギーコストの高止まりも継続しており、わが国経済を取り巻く世界情勢は予断を許さない状況が継続しているとともに、不透明感が高まっております。
このような状況下、当社グループは、化学繊維用紡糸ノズル事業において炭素繊維用ノズルの販売が堅調に推移したものの、特殊精密機器事業においては、耐摩耗工具関連分野及び実装機用ノズルともに販売が低調に推移いたしました。またD-Next事業においては、半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの販売は順調に拡大したものの、半導体需要の一時的な低迷もあり、売上高は計画を下回りました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は2,640百万円(前年同期比9.4%増)、営業利益は7百万円(前年同期は532百万円の営業損失)、経常損失は21百万円(前年同期は553百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は32百万円(前年同期は144百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
① 特殊精密機器事業
特殊精密機器事業については、商社を活用した自動車部品メーカーからの受注獲得や、同業他社の廃業や事業撤退を背景とした部品需要の取り込みなどによる新規顧客開拓、既存顧客からの新規アイテム受注といった販売拡大施策が着実に進展しており、代表的な新規アイテムである新素材で製作した実装機用ノズルの出荷が当連結会計年度において開始されました。しかしながら、主力製品である耐摩耗工具関連分野及び実装機用ノズルの受注回復が遅れており、厳しい事業環境が継続いたしました。
これらの結果、売上高は707百万円(前年同期比1.2%減)、セグメント利益は29百万円(前年同期は11百万円のセグメント損失)となりました。
② 化学繊維用紡糸ノズル事業
化学繊維用紡糸ノズル事業については、不織布関連ノズルの需要が低調に推移したものの、風力発電用ブレード向けを中心とした炭素繊維用ノズルの旺盛な需要が継続しており、売上は好調に推移いたしました。
これらの結果、売上高は1,679百万円(前年同期比6.9%増)、セグメント利益は146百万円(前年同期は55百万円のセグメント損失)となりました。
③ D-Next事業
D-Next事業については、当社製のパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤが複数の企業に正式採用されるとともに新規顧客開拓の進展もあり、販売は順調に伸長してきました。しかしながら、当連結会計年度において車載用を中心とした半導体需要低迷の影響を受け、ウエハメーカーの稼働率が低下したため、パワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤの販売が一時的に頭打ちとなり、販売数量が計画を下回ることとなりました。なお、ダイヤモンドワイヤ製造装置販売については、インドにおける太陽電池の自国内生産化の進捗の遅れに変化はなく、当連結会計年度における商談の進捗はございませんでした。
これらの結果、売上高は243百万円(前年同期比100.9%増)、セグメント損失は91百万円(前年同期は316百万円のセグメント損失)となりました。
④ マテリアルサイエンス事業
新規事業として取り組んでいるナノサイズゼオライトについては、一部の用途分野において正式採用が決定いたしましたが、量産期待値の高い電子部品封止剤やガス吸着用途分野においては顧客やエンドユーザーにおける正式採用に向けた評価が継続しております。また、直近において引き合いが増加している触媒用途や分離膜用途をはじめとする新規用途分野や新規顧客の開拓を目指したサンプル提供を継続しているとともに、展示会出展をはじめとしたナノサイズゼオライトの認知度向上に取り組んでまいりました。
これらの結果、売上高は9百万円(前年同期比90.0%増)、セグメント損失は96百万円(前年同期は156百万円のセグメント損失)となりました。
総資産は前連結会計年度末に比べ648百万円減少し5,355百万円となりました。これは、仕掛品が138百万円増加したものの、その他流動資産のうち未収消費税が212百万円減少、現金及び預金が186百万円減少、機械装置及び運搬具が130百万円減少、商品及び製品が114百万円減少したこと等によるものであります。
負債は前連結会計年度末に比べ613百万円減少し4,535百万円となりました。これは、1年内返済予定の長期借入金が279百万円増加したものの、長期借入金が512百万円減少、電子記録債務が151百万円減少、契約負債が88百万円減少したこと等によるものであります。
純資産は前連結会計年度末に比べ35百万円減少し819百万円となりました。これは利益剰余金が32百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は15.1%(前連結会計年度末は14.0%)となりました。
セグメントごとの資産は次のとおりであります。
特殊精密機器事業におけるセグメント資産は548百万円となり、前連結会計年度末から0百万円減少しております。これは、減価償却費計上による有形固定資産の減少が主な要因となります。
化学繊維用紡糸ノズル事業におけるセグメント資産は4,343百万円となり、前連結会計年度末から474百万円減少しております。これは、消費税還付によるその他流動資産のうち未収消費税の減少、減価償却費計上による有形固定資産の減少が主な要因となります。
D-Next事業におけるセグメント資産は89百万円となり、前連結会計年度末から34百万円増加しております。これは、棚卸資産の増加が主な要因となります。
④ マテリアルサイエンス事業
マテリアルサイエンス事業におけるセグメント資産は1百万円となり、前連結会計年度末から0百万円減少しております。これはその他流動資産の減少が主な要因となります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ186百万円減少し、1,308百万円となりました。
当連結会計年度における連結キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、123百万円(前年同期は642百万円の収入)となりました。
これは、減価償却費222百万円、未収消費税等の減少額213百万円等の増加要因が、仕入債務の減少額152百万円、契約負債の減少額88百万円等の減少要因を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、45百万円(前年同期は1,771百万円の支出)となりました。
これは、有形固定資産の取得による支出43百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって支出された資金は、263百万円(前年同期は609百万円の収入)となりました。
これは、長期借入金の返済による支出233百万円等によるものであります。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは増加したものの、化学繊維用紡糸ノズル事業の設備に関する投資や取引金融機関に対する約定返済等により、当連結会計年度末の資金は前連結会計年度末から186百万円減少する結果となっております。
当社グループの主な資金需要は、各事業における原材料の仕入、製造経費、販売費及び一般管理費の営業費用などの運転資金や借入金の返済及び利息の支払い等であり、自己資金により充当いたします。当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,308百万円であり、当社グループの事業規模における事業継続に必要な資金が確保できていることから、短期的な資本の財源及び資金の流動性については問題ないと考えておりますが、事業基盤が確立されている特殊精密機器事業ならびに化学繊維用紡糸ノズル事業での目標数値を達成することにより、営業キャッシュ・フローの最大化を図ってまいります。
今後も資金の残高及び各キャッシュ・フローの状況を常にモニタリングしつつ、資本の財源及び資金の流動性の確保・向上に努めてまいります。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 上記の生産高合計額は各セグメントの第55期連結会計年度における当期製品製造原価の合計額であり、製品棚卸高の増減が反映されておりませんので、連結損益計算書の売上原価とは一致しておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3 D-Next事業については当社製のパワー半導体・難削材向けダイヤモンドワイヤが複数の企業に正式採用されるとともに新規顧客開拓の進展により、前年同期に比べて販売高が増加しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行と下記のシンジケート方式コミットメントライン契約を締結しております。
その他の内容については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項の(連結貸借対照表関係)」に記載しております。
1.シンジケートローン契約の概要(当社)
2.シンジケートローン契約の概要(当社連結子会社日本ノズル株式会社)
当社グループにとって研究開発活動は成長戦略の要であり、現在保有する中核技術を堅持しながら将来を見据えた経営の視点から研究開発活動に常に取り組んでおります。このため研究開発部門は、経営方針や事業戦略を踏まえ、最新の技術動向を見極めながら、研究開発テーマの選定、研究開発スケジュールの設定、当社グループ内外との連携方法などについて検討しております。当社グループの経営陣は、定期的に開催される研究部門の会議や経営会議において研究開発活動の進捗報告を受け、必要に応じて軌道修正等を指示することにより適正な研究開発活動が行われる体制を構築しております。
また、当社グループの研究開発活動は産学官連携を積極的に活用しており、大学研究室や国の研究機関との共同研究活動を通して新規分野における事業シーズの可能性を模索するとともに、設備装置メーカーや素材メーカーなどとも連携しながら当社独自の技術を獲得することを目標として、精力的に研究開発活動に取り組んでおります。
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は
セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。
特殊精密機器事業では、微細高精度流路加工技術をベースに開発した最適反応条件自動検索型フロー合成装置を販売しており、その技術を活かした新たな装置の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額はありません。
化学繊維用紡糸ノズル事業では、高い成長が見込まれる不織布製造分野において、ノズル部品単品の加工にとどまらず、多様な不織布生産に対応可能な製造装置全体の研究開発を行っております。また、新たに導入した大型部材加工用の設備を用いた大型不織布製造用ノズル・ダイや、新規参入分野であるフィルム用ダイ製造のための加工技術の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
D-Next事業では、パワー半導体向けダイヤモンドワイヤの細線化や性能向上のための開発や、PHX-01の市場競争力強化のための開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
マテリアルサイエンス事業では、ナノサイズゼオライトの開発に取り組んでおり、早期の事業化を目指し、吸湿やガス吸着、温感や抗菌・抗ウイルス等の用途分野において、様々な企業に対しサンプル供給を行っており、量産顧客の獲得に向けた開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は