文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念とし、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人、そういう幸せな人を育て、真に人間が働く喜びを味わえる企業経営を行うことを、経営の基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、安定的な成長を目指すため収益性を意識した経営が重要との観点から「売上高経常利益率」を重視しており、また資本効率を高め企業価値の向上を図る観点から「ROE(自己資本当期純利益率)」を重視しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
当連結会計年度におけるわが国経済は、引き続き緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生や中国経済の停滞、米国新政権の関税政策の変更や、株価、為替の乱高下等の影響を受け、依然として先行き不透明な状況が続いております。
中長期的には、当社グループの主要顧客が関連する自動車産業において電動化への流れは一時的に減速しているもののCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への流れが着実に進んでおり、当社グループとしてもその変化への対応として次世代自動車への対応・拡販を成長戦略とし、対応を進めております。
また生成AIをはじめとしたAIの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展等により当社グループが関連する半導体等の市場は世界的に拡大が続くものと考えられます。
社会的な環境としましては持続可能で強靱な社会の構築のため「脱炭素社会」、「循環型社会」の形成が強く求められており、企業においても持続的な成長のためその実現に向けた責任ある取り組みが求められております。
日本を取り巻く環境としては少子高齢化・人口減少による市場縮小や人財確保の競争激化、コロナ禍を契機とした事業構造・生活様式の変化、デジタル化の一層の推進など様々な変化が予測されております。
このような変化の激しい環境のもと顧客と社会の期待に応え成長し続けるため「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しました。この中期方針のもと国内事業は成長の基盤(安定的に成長)とし、成長を牽引するのは海外事業、将来の成長基盤の育成として新事業の実現という方向性を定め、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立を成長戦略として持続的に取り組んでおります。
1.経営基盤の強化
当社グループは様々な環境・社会課題の解決と事業の持続的な成長の両立を実現するため、サステナビリティ経営に取り組んでおります。サステナビリティ委員会の活動を通じてサステナビリティ方針に基づくマテリアリティへの取り組みを進めており、エネルギー関連向け新製品の開発や超硬工具・金型のリサイクルについての活動を強化しております。
ガバナンスの強化として、2025年1月1日付で品質保証本部を新設しました。ガバナンス及び品質管理の強化を目的としたグループ横断部署を新設することで、安全で安定した生産体制を堅持し、高品質な製品づくりで企業価値の向上を目指します。
人的資本の強化の取り組みとしては、社員エンゲージメントの向上のため新たな福利厚生制度を導入しました。またEラーニングのプログラムを拡充し、社員が自己研鑽できる環境を整備しました。
情報基盤の整備として基幹システムを刷新し、紙での管理からデータ管理に変えてデジタル化を進めるとともに検索性の向上等によるデータの利活用を進めております。
ブランドイメージの社外浸透やインナーブランディングの強化のためのコーポレートブランディングにも着手し、経営基盤の強化に努めております。
2.生産性向上・業務効率化
生産性向上・業務効率化としては国内生産部門にて前中期経営計画より生産効率改革活動として取り組みを続けており、前中期経営計画ではフェーズ1としては生産管理の強化と現場改善等を組み合わせて生産性向上に取り組んでまいりました。本中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)においては多品種少量の生産工程におけるロボットの導入等による自動化、省人化を進めてまいります。
2025年3月期はモデル工場である郡山製造所の研削加工作業に自動化ロボットを導入・本格稼働させました。
ロボット導入による無人加工により産出量が10%向上しております。更に、2024年10月末には郡山製造所の冶金工程の自動化ロボットの対応製品範囲を広げる改修を実施しました。
熊本製造所の冶金工程にCAD・CAMを駆使したNC加工機による自動加工ラインを導入し平面加工における手作業から自動加工に約60%移管しております。また材料費のコストダウンを進めるため、部品取りを最適化するCAD・CAMの自動ネスティングを2026年3月期からの導入に向けてテストをしております。
3.海外事業の飛躍
海外事業につきましては本中期経営計画期間(2025年3月期-2027年3月期)に海外売上高比率25%以上(2027年3月期)を目指し、売上高拡大による成長を積極的に目指してまいります。
中国では当社は2024年3月に東莞に新規開設した営業拠点を足掛かりに、展示会に出展するなど、知名度向上の取り組みを行うとともに、商材を拡充したことで新規顧客の獲得に成功し、販売を拡大しています。今後はEV関連メーカーへの新規拡販を強化してまいります。
アセアンではタイ・インドネシアの生産拠点にて日本からの技術指導等により工場の生産性が向上しております。タイは日本と同等な高精度品を製造することができるようになっており、インドネシアでは対応製品の幅が広がり、現地企業との取引が拡大しております。
インドにおいては、輸出ベースでの出荷額が増加傾向にあります。知名度向上と潜在需要獲得を目的に、2025年1月に展示会に初めて出展しました。2027年3月期までの営業再開を目指して、2025年の夏頃を目途に再開プロジェクトを立ち上げる予定です。
北米においては、シカゴで開催された展示会に初めて出展するなど市場調査を進めております。
4.脱炭素・循環型社会への貢献
当社グループは環境・社会の課題解決を事業機会と捉え、脱炭素・循環型社会の形成に貢献する製品を積極的に開発、市場投入してまいります。
従来から取り組んでいる次世代自動車関連製品にも引き続き注力しており、車載用モーターコアの金型に適した材種のラインナップ拡充や、車載用電池缶向けの金型の拡販に向けた取り組みを進めております。
また次世代エネルギー分野に向けて、当社の強みである粉末冶金技術を活かした触媒や電極の開発も進めております。その一つとして2024年11月にJIMTOFという工作機械の大きな展示会で、エネルギー関連での新製品「グリーン水素の製造装置向け電極」を発表しました。
循環型社会への貢献としては、省タングステン・コバルト合金の開発、拡販による希少な金属の使用量低減を図るとともに、超硬工具・金型のリサイクルについても活動を強化してまいります。
5.新事業の確立
当社グループは「既存事業」と「新規事業」が独立しながら両輪で走ることが企業価値の向上に繋がるとの観点から、新事業シーズの探索、事業化検討が可能な体制を構築するため組織を2024年7月に発足させました。当該組織においては、新たな事業の柱となる新規事業の実現や事業創出サイクルの短縮化に取り組んでまいります。 また新規事業の早期実現に向けて、M&Aや業務提携の検討についても積極的に進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ基本方針について
③サステナビリティ全般に関するガバナンス
④サステナビリティ全般に関する戦略
当社は、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に向けて、サステナビリティ基本方針に基づいた取り組むべき10項目の優先課題(マテリアリティ)を特定しました。その達成に向けて社内外に周知し、取り組みを進めてまいります。

⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理
(2)気候変動に関する取組について
①ガバナンス
当社グループは、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」ことを掲げ、より良い社会の形成と企業の持続可能な発展のため、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に対する活動を積極的に進めております。また、サステナビリティに関する施策の立案や推進を専門に行う「サステナビリティ推進室」を設置し、サステナビリティに関する課題を経営層と共有し、その解決のための検討及び有効性評価の場として、「サステナビリティ委員会」を年4回(4月、7月、10月、1月)開催しています。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、各部門の担当者で構成され、別途、取締役会にて実効的な監督を行う体制を整備しております。
今後、当社グループのサステナビリティに関する取り組みの更なる強化、推進を図ってまいります。

図1 ガバナンス体制
②戦略
a.気候変動による事業への影響の分析
気候変動による事業への影響を明らかにするために、2つのシナリオを用いてシナリオ分析を実施しております。積極的な政策により気温上昇を抑える1.5℃シナリオと、限定的な政策により気候変動が進む4℃シナリオを採用いたしました。
各シナリオにて、分析のために参考にしたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、IEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオになります。RCPシナリオは、気候変動による物理的な影響(物理リスク)の分析のために参考にし、IEAのシナリオは脱炭素社会への移行に伴う影響(移行リスク)の分析のために参考にいたしました(表1)。また、分析における時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するために重要な時点とされている2030年を設定いたしました。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
※1.5℃シナリオの情報がない場合は、2℃シナリオに分類される参考シナリオを使用
b.分析結果と対応
〈1.5℃シナリオ〉
1.5℃シナリオでは、炭素税など気候変動に対する政策・法規制の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されております。当社事業へのリスクとしては、炭素税の導入やレアメタル価格の上昇による調達コストの増加が挙げられました。そのため、再生可能エネルギー導入や設備の省エネルギー化などGHG排出量削減のための取り組み、および製品設計による省資源化や新規合金の開発など資源価格高騰への対応を進めております。一方で、機会としては、次世代自動車関連製品の売上増加が挙げられました。現在、中期経営計画における重点施策の1つとして、脱炭素・循環型社会への貢献を掲げており、次世代自動車用の製品の販売計画や、国内循環型の超硬粉末のリサイクルの取り組みを策定しております。
〈4℃シナリオ〉
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されております。当社のリスクとしても、異常気象がもたらす災害発生時における製造所の被災による製品販売の停止や、サプライヤーと顧客の被災による影響が挙げられました。現状、当社としては、海岸付近の製造所における防潮堤の設置や、BCP対応の強化を進めており、異常気象による事業へのリスク低減を進めております。
表2:シナリオ分析結果
※重要度評価に関しては、現時点における財務的影響額を基にした評価となっています。当社では1.5℃シナリオ、4℃シナリオの両方に対応できるよう包括的な施策を検討しており、持続可能な企業を目指していきます。
③リスク管理
当社は、リスクマネジメント基本規程にてリスク管理方法を定めており、「(1)サステナビリティ基本方針について ⑤サステナビリティ全般に関するリスク管理」に記載の方法でリスク管理を行っております。
④指標と目標
当社は、サステナビリティの観点を踏まえた経営の進捗や、気候変動に対する政策等の影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量を指標として設定しており、2030年度に2018年度比で38%以上削減することを目標として掲げております。今後は、目標達成にむけて、自社設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。
表3:GHG(温室効果ガス)排出量(t-CO2)
対象範囲:冨士ダイスグループ
※2024年度の排出量に関しては、2025年5月時点の排出係数を使用しております。
今後、排出係数は更新される可能性があります。
(3)人的資本に関する取組について
①人的資本に関する戦略(人財確保、人財育成、社内環境整備)
当社グループは人の成長が企業の成長の源泉であるという考えのもと、「事業を通じて広く社会に貢献し、幸せな人を育てる」「人間尊重、人間中心の経営」を企業理念として掲げ、広く産業とくらしを支え、社会に貢献できる人、そして、自分を必要としてくれる社会に対して感謝の気持ちを持つことができる人財を育てることを目指しております。
加えて、中長期で持続的な成長を遂げられる人財の確保・育成・制度の整備を行い、経営戦略に連動した人財戦略を目指します。
[人財確保の方針]
a.採用
当社グループでは、性別・経歴・国籍・文化的背景等を区別せず、知識・資質・業績・経験等を総合的に勘案し、経験者や外国人等の人財を登用しており、当社グループ内の多様性の確保を図ることとしております。また、新卒採用においては、これまで実施していなかった、学生に直接オファーするダイレクトリクルーティング等の採用方法を取り入れております。さらに、即戦力人財獲得のためのキャリア採用は通年で実施し、これまで以上に積極的に推進しております。
加えて、アルムナイ採用といわれる当社を退職し他社に転じた人財の再雇用も実績があります。
今後も様々な採用手法を駆使しつつ、人財確保を進めてまいります。
b.高年齢者の雇用
豊富な知識や経験を有する高齢者が定年後も働けるよう、再雇用制度を整備するとともにキャリア開発の支援を行います。
c.待遇
社員がいきいきと働けるように就業環境の整備を行います。
[人財育成の方針]
a.教育・研修
不確実なビジネス環境において当事者意識を持ち、環境の変化に対応できる人財を継続的に輩出するために自立型人財の育成を目指しております。これらの人財育成を達成するため、適切な教育・研修の機会を提供します。
b.配置・異動・昇進
従業員の多様なスキルの向上を目的とし、積極的にジョブローテーションを行います。
また、すべての従業員に平等に昇進の機会があり、従業員が昇進に対して前向きに捉えられるように研修を行っております。
c.目標管理・評価
自立型人財(やることを決める、決めたことをやる、チームとして働く)の育成を目的とし、年度ごとに目標を設定、評価します。また、従業員の自主性とチャレンジ精神を大切にし、評価するため、処遇面における公正性・透明性を確保します。
[社内環境整備の方針]
a.就業環境の整備
従業員が安心して働ける快適な職場を作り、健康維持やモチベーション向上を促進します。
b.人事制度の見直し
中長期の戦略に沿った適正な評価・報酬体系を整備し、従業員のエンゲージメント向上と組織の競争力強化を図ります。
c.ガバナンスの強化
従業員の安全と健康を確保し、働きがいのある職場づくりを重視します。また職場における良好なコミュニケーションを確保し、従業員一人ひとりの心と身体の健康保持・増進に取り組みます。
②指標と目標
当社グループでは、上記人的資本に関する取り組みについて、次の指標を用い、その目標は次のとおりであります。
なお、これらの指標について、当社においては関連するデータの管理を行うとともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループによる記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標は、提出会社のものを記載しております。
(1)当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、リスクマネジメント基本方針に基づき、リスクマネジメントの効果的かつ円滑な運営及び適切な指導を行うために、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会はリスクマネジメント基本規程に基づき定期的に開催され、重要リスクの特定・分析・評価・見直し、年間の活動計画(対応策)の策定及び活動状況の確認・評価、新規に発生したリスクのモニタリング等を行っております。
[リスクマネジメント基本方針]
当社グループは、次に示す方針のもと、リスクマネジメントに取り組み、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に貢献する。
1.社会的責任を果たすために、可能な限り危機の未然防止を図り、リスクの組織的な監視体制を構築する。
2.リスクマネジメント委員会を中心に、リスクの識別・評価・低減等の活動を推進し、リスク対応力の強化を図
る。
3.危機発生時には、ステークホルダーの安全確保を第一とし、経営資源の保全及び被害・損失の極小化を図る。
また、早期復旧と継続操業に向け組織的に対応する。
4.教育、訓練、研修及びリスク情報の共有化により、リスクに対する認識を高め、対応能力の向上を図る。
5.定期的にリスクマネジメント体制の見直しを行い、リスクマネジメントが有効に機能するよう継続的な改善を
行う。
[リスクマネジメント体制]

※リスクマネジメント委員会は、当社より各本部長、副本部長、内部監査室長、安全管理部長、各事業所長及び
総務課長、国内子会社(2社)より子会社社長及び総務課長、在外子会社(4社)より子会社社長のメンバー
で構成されております。なお、事務局は当社の総務部が担当しております。
(2)リスクマネジメントプロセス
①リスクマネジメントプロセスの概要
当社グループにおける重要リスクの選定は年1回実施しており、そのプロセスの概要は次のとおりであります。
・リスクマネジメント委員会で当社グループの重要リスクになり得るリスクを「リスク候補」として選定。これら
のリスク候補ごとに所管部署を決定し、リスク候補に対する年間の活動計画(対応策)を策定。
・定期的に開催されるリスクマネジメント委員会にて、活動計画(対応策)に対する活動状況の確認・評価、新規
に発生したリスクのモニタリング等を実施。
・リスクマネジメント委員会の年間の活動等を踏まえ、事務局がリスク候補ごとに影響度及び発生可能性の面から
分析・評価を実施し、当社グループのリスクマップを作成。
・リスクマネジメント委員会の事務局が実施した分析・評価結果及び当社グループのリスクマップをリスクマネジ
メント委員会で審議。リスク値の高いリスクを当社グループの「重要リスク」として選定。
・リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクは取締役会へ報告し、承認を得る。

・影響度及び発生可能性は以下の目安をもとに評価を行っております。
②当連結会計年度の当社グループのリスク候補及び重要リスク
(注)当連結会計年度において当社グループが重要リスクと選定したリスクについては、(3)事業等のリスクに詳細を記載しております。
(3)事業等のリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。但し、これらのリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、予見できないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも存在し、将来的にそれらのリスクが、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与える可能性もあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、引き続き緩やかに回復しているものの、ウクライナ情勢に伴う資源・エネルギー価格の高騰や世界的な物価上昇、中東での紛争の発生や中国経済の停滞、米国新政権の関税政策の変更や、株価、為替の乱高下等の影響を受け、依然として先行き不透明な状況が続いております。
こうした状況の中、当社グループは「共生」を年度方針に掲げ、高品質・低コスト・短納期・充実したサービスの向上に努めてまいりました。
また、「変化に対応できる企業体質への転換」を目指し、2025年3月期から3ヵ年を対象期間とした中期経営計画を策定しており、1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新規事業の確立を重点施策に掲げ、諸施策への取り組みを推進しております。
経営基盤の強化については、コーポレート・ガバナンスの機能をより一層高め、加速する外部環境の変化への対応力を強化するため、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行することを決定いたしました。また、品質の安定・向上や職場の安全性の強化を通じて企業価値向上を目指すため、2025年1月に品質保証本部を新設いたしました。
生産性向上・業務効率化については、自動化のモデル工場である郡山製造所において、研削加工作業に自動化ロボットを導入し、産出量を10%向上させることができました。
海外事業の飛躍については、インド現地子会社の営業再開に向けた知名度向上と潜在需要獲得を目指して、IMTEX2025(インド工作機械展)に初めて出展いたしました。
脱炭素・循環型社会への貢献については、11月に行われたJIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)において、当社のコア技術である粉末冶金技術と超高圧合成技術を掛け合わせて開発した、貴金属フリーで省電力のグリーン水素発生装置向け触媒・電極(PME)や、車載用モーターコア金型向け新材種として開発した水切りワイヤー放電加工用超硬合金(フジロイVG51)を発表いたしました。
新規事業の確立については、新事業探索・事業化検討に関する組織を立ち上げ、リサイクル事業等の検討を開始しております。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は16,595百万円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。
超硬製工具類では、昨年度好調であった海外向け溝付きロールの顧客での在庫調整による大幅な売上減少により、売上高は4,183百万円(前連結会計年度比12.6%減)となりました。
超硬製金型類では、製缶金型や車載用電池向け金型の販売が堅調に推移した結果、売上高は4,268百万円(前連結会計年度比8.9%増)となりました。
その他の超硬製品では、半導体製造装置向けが堅調に推移したほか、超硬素材の販売が好調に推移した結果、売上高は4,257百万円(前連結会計年度比6.3%増)となりました。
超硬以外の製品では、一部の鋼製自動車部品用工具・金型の売上が堅調に推移したものの、混錬工具等の販売が低調に推移した結果、売上高は3,886百万円(前連結会計年度比2.0%減)となりました。
また利益につきましては、生産性向上・業務効率化の施策等に一定の成果があったものの、原材料の高騰、IT投資や人財投資の拡充により、営業利益は488百万円(前連結会計年度比39.7%減)、経常利益は603百万円(前連結会計年度比31.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は426百万円(前連結会計年度比39.9%減)となりました。
なお、当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は14,909百万円(前連結会計年度末15,024百万円)となり、115百万円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が564百万円増加したものの、電子記録債権が381百万円減少、受取手形が136百万円減少、売掛金が151百万円減少したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は10,694百万円(前連結会計年度末11,114百万円)となり、419百万円減少いたしました。これは主に、建物及び構築物(純額)が278百万円減少、機械装置及び運搬具(純額)が106百万円減少したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は3,395百万円(前連結会計年度末3,871百万円)となり、476百万円減少いたしました。これは主に、支払手形及び買掛金が273百万円減少、未払法人税等が143百万円減少したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は1,460百万円(前連結会計年度末1,619百万円)となり、159百万円減少いたしました。これは主に、退職給付に係る負債が135百万円減少、リース債務が15百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、20,748百万円(前連結会計年度末20,647百万円)となり、100百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が426百万円増加、剰余金の配当により利益剰余金が635百万円減少、為替換算調整勘定が232百万円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ377百万円増加し、7,361百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益603百万円、減価償却費1,011百万円の計上、売上債権の減少額699百万円などにより1,800百万円の収入(前連結会計年度は2,050百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは定期預金への預入による支出679百万円、定期預金の払戻による収入541百万円、有形固定資産の取得による支出620百万円などにより849百万円の支出(前連結会計年度は1,656百万円の支出)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは951百万円の収入(前連結会計年度は394百万円の収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払額634百万円などにより659百万円の支出(前連結会計年度は651百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注)1.当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
2.金額は当期製品製造原価によっております。
(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
(注)当社グループの事業区分は「耐摩耗工具関連事業」の単一セグメントであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は、売上高は16,595百万円、営業利益は488百万円、経常利益は603百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は426百万円となりました。
当連結会計年度は在庫調整の一巡による自動車関連製品の需要回復や新拠点である富士模具貿易(上海)有限公司東莞支店を足掛かりにした中国での販売拡大を見込み、売上高の目標を前連結会計年度比7.9%増の18,000百万円としておりました。
しかしながら想定より自動車部品関連金型の回復が遅れたことや昨年度好調であった海外向け溝付きロールの在庫調整による大幅な売上高の減少、混錬工具の売上高が低調に推移したこと等により当連結会計年度の売上高は目標比7.8%減の16,595百万円となりました。
当連結会計年度の営業利益は、生産性向上・業務効率化の施策等に一定の成果があったものの、売上高の減少に加え、原材料の高騰、IT投資や人財投資の拡充により、営業利益は目標比52.1%減の488百万円となりました。
当連結会計年度の経常利益は、営業利益が対目標で下回ったことから目標比47.6%減の603百万円となり、また親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が対目標で下回ったことから目標比48.7%減の426百万円となりました。
これにより当社グループが重視する経営指標である売上高経常利益率は3.6%(対目標比2.8ポイント減)、ROE(自己資本当期純利益率)は2.1%(対目標比1.9ポイント減)となりました。
当連結会計年度における売上高経常利益率、ROEの目標未達は売上高の未達や費用構造の悪化が原因であり、収益力の改善が今後の課題であると捉えております。
このような状況のもと、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題」に記載のとおり、「変化に対応できる企業体質への転換」を中期方針とした2025年3月期からの3年を対象期間とする「中期経営計画2026」を策定しております。当社グループは成長戦略である1.経営基盤の強化、2.生産性向上・業務効率化、3.海外事業の飛躍、4.脱炭素・循環型社会への貢献、5.新事業の確立に着実に取り組むとともに、価格戦略の見直しも実施し、持続的な成長を目指してまいります。
当社グループは事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を目指し、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を最優先事項と考えております。
当社グループは事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、また、健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金についても調達することが可能と考えております。またコミットメントライン契約により、自然災害等の緊急時も含め流動性を担保できるよう備えております。
当社におけるコミットメントライン契約の状況につきましては、以下のとおりであります。
コミットメントライン契約 10億円(当連結会計年度末の借入実行残高はありません)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(a)仕掛品(完成粉末を除く)の評価
仕掛品(完成粉末を除く)の評価に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(b)繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより行っております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し見積っており、また中期経営計画の見積期間を超える期間の課税所得については、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(c)退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、退職率、予想昇給率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率等の様々な計算基礎があります。退職給付債務の算定にあたっては、退職給付見込額の期間帰属方法を給付算定式基準とし、割引率の設定は加重平均期間アプローチによる方法により算出しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(6)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
(d)減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。
当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(0百万円)を計上いたしました。回収可能価額は正味売却価額により算定しております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、連結財務諸表を作成している当社のみが行っており、当社技術開発本部がその担当部署となっております。
当社グループにおける研究開発の基本方針は、顧客のニーズに応える工具・金型材料の研究開発と加工技術の研究開発からなる製品化であり、現行の事業品目のみならず新規事業分野への展開を目指した研究開発を行っております。
基本方針のもと、上記材料の研究開発に関しては、粉末冶金技術を基軸とし、超硬合金、セラミックス及び機能性複合材料に関する研究開発を行っております。
一方、加工技術に関する研究開発は、超精密加工技術を基軸とし、高精度製品の加工製作、加工効率改善、新鋭設備による新たな加工方法の構築を目的とした研究開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発活動は、上記材料の研究開発においては、電気化学反応用電極及びその材料に関する研究開発等を、加工技術の研究開発においては、次世代光通信用デバイスの成型工具・金型における超精密加工技術開発等により、一定の成果をあげることができました。
・電気化学反応用電極及びその材料の開発
当社コア技術のひとつである粉末冶金技術を応用し、電気化学反応用電極とその材料の開発を進めております。この電極材料は、水の電気分解や金属空気二次電池の反応効率を高め、今後成長が見込まれる環境・エネルギー分野への展開が期待されます。
・次世代光通信用デバイスの成型工具・金型における超精密加工技術開発
光通信は、電動車や自動運転実施、またデータセンターといったインフラにおいて、その重要性は近年ますます高まっています。当社は、超精密加工技術を活用して、光通信用デバイスの成形工具・金型の加工技術開発を進めています。
・高熱膨張材料TR材種と、その高精度加工の開発
従来のバインダレス合金よりも高い熱膨張率を有する当社TR材種(TR05、TR30)は、特殊レンズの成形金型に用いられていますが、その超精密加工も実現しました。これは、「2024年度(第8回)精密工学会ものづくり賞最優秀賞」を受賞いたしました。
今後につきましては、粉末冶金技術を駆使した新材料、超精密加工技術の研究開発を進め、それにより得られる開発製品を通じて、次世代自動車、環境・エネルギー、次世代光通信等の成長分野への参入により、当社グループの事業領域拡大を進めてまいります。
また、新事業として検討しているリサイクルについての研究開発を進めております。
なお、当連結会計年度の研究開発活動に要した費用は
当社グループは耐摩耗工具関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。