文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営戦略
2013年度から2017年度に実施した第5次連結中期経営計画は「成長の基礎を固め、盤石な経営基盤を確立する5年」と位置づけ、石油精製・販売事業の収益力回復を筆頭に、供給部門の合理化等の構造改善を進めてまいりました。
2018年度より開始した第6次連結中期経営計画では、『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンに、前連結中期経営計画で収益基盤の中心であった石油精製・販売を強化しながら、風力発電事業や石油化学事業への成長投資を進め、脱化石燃料の動きが加速することを見据えて事業ポートフォリオの拡充を目指しております。
石油製品の需要減少が想定される中、当社グループが持続的に成長するためには将来に向けた新しい事業の柱を作ることが必要不可欠です。第6次連結中期経営計画では「再投資可能な収益力の確保」「将来に向けた成長ドライバーの強化」「財務体質の健全化」「グループ経営基盤の強化」を基本方針として、事業ポートフォリオを拡充させつつ、石油開発事業や石油事業で収益力を強化し、さらに強固な財務基盤を確立してまいります。
<第6次連結中期経営計画の基本方針>
下の図は当社グループの長期的な事業ポートフォリオの移行イメージを示しております。脱化石燃料の動きを睨みながらも、石油関連事業の競争力を強化することで一定規模の収益力を維持しつつ、積極的な投資により成長が見込まれる再生可能エネルギー事業や石油化学事業を新たな柱にしてまいります。
<事業ポートフォリオ移行のイメージ>
なお、以下の通り、第6次連結中期経営計画の重点施策は、着実に進捗しております。
《各事業セグメントの重点施策》
(石油事業)
石油事業においては、2020年1月から国際海事機関(IMO)の船舶燃料向け硫黄分規制が強化され、全海域で高硫黄C重油が使えなくなりました。当社グループでは、規制の導入よりも前倒しでコスモ石油㈱堺製油所の重質油熱分解装置(コーカー)を増強し、高硫黄C重油を生産しない体制を構築しました。また、当期は千葉製油所及び四日市製油所において、流動接触分解装置から生産されるスラリー油に含まれる不純物の除去設備を設置いたしました。今後、高硫黄C重油から中間留分(灯油・軽油・A重油)や低硫黄C重油といった収益油種へ効率的に生産構成をシフトさせていきます。
また、当期は2019年度より開始したキグナス石油㈱への燃料油供給をさらに拡大しており、今後も収益改善効果を見込んでおります。
カーライフ事業につきましては、世界的な脱炭素社会へのシフトをはじめ持続可能な社会の実現に向け、電気自動車(以下、EV)の普及が加速するとの長期的な環境認識に基づき、EVを軸とした新たなモビリティサービスの創出を進めております。㈱e-Mobility Powerとの連携により、当社系列サービスステーションへのEV用急速充電器の設置及び関連サービスの開発を推進しております。
(石油化学事業)
石油化学事業は、成長ドライバーのひとつとして位置づけ、石油事業とのシナジーを追求しながら積極的な投資を行っております。国内最大規模のエチレン生産能力を持つ丸善石油化学㈱は、環境に左右されにくい機能品等の生産を拡大しております。荒川化学工業㈱と当社グループによる水素化石油樹脂の事業化については、2020年12月に設置工事が完了し、2021年度の商業化を計画しております。また、基礎化学品の高付加価値化を目的として丸善石油化学㈱と共同で建設しているプロピレン精留塔は2021年度の稼働開始を計画しております。
韓国のHyundai Oilbank Co., Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.につきましては、当社グループ各社から安定的にミックスキシレンの供給を受け、パラキシレン製造装置の安定稼働を維持しました。外部環境の変化には十分留意しながら、中長期的にアジア地域を中心として見込まれるポリエステル需要の増大に対応するべく、競争力強化に努めてまいります。
(石油開発事業)
石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、生産を意図的に抑制しております。今後、油層圧回復の施策を実行し、生産量の回復・最大化を目指してまいります。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田)につきましても、安定した生産を継続しました。
また、アブダビ国営石油会社がアブダビ首長国にて実施した探鉱鉱区公開ラウンドに参加し、海上の探鉱鉱区(Offshore Block 4)を落札しました。脱化石燃料の流れの中でも、必要とされるエネルギーを継続して供給することは当社グループの責任であると考えており、今後石油需要の減退が進行していく過程でも、その責任を果たすべく本鉱区を取得しております。本鉱区は、豊富な石油・天然ガスの資源量が賦存するだけでなく、単位数量あたり操業費がその他の地域と比べて低いとされるアラビア湾の浅海に位置し、かつ商業生産に至った場合には隣接するアブダビ石油㈱が保有する油田施設を共同で活用できるため、開発・操業コストの大幅な低減が期待されます。今後、探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査してまいります。
(その他の事業)
再生可能エネルギー事業で中心となるのが、風力発電事業です。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業で、国内シェアは第3位です。陸上風力発電事業に関しては、稼働している発電設備(総発電出力26.1万kW)は順調な稼働を継続しており、また新規サイト開発も進めています。2020年度は、2021年3月に五島八朔鼻サイト(長崎県)が運転を開始し、中紀ウィンドファーム(和歌山県・2021年4月運転開始)、上勇知ウィンドファーム(北海道・2023年3月運転開始予定)及び大分ウィンドファーム(大分県・2023年3月運転開始予定)の建設工事を進めました。2030年度には50万kW規模の設備容量について固定価格買取制度(FIT)の認定を取得しております。洋上風力発電事業は、FIT制から入札制に移行する中で大企業の参入が予想されますが、当社グループは、他の大手企業に先駆けて、複数のエリアでプロジェクトを進めており、競争優位にあると考えております。秋田港・能代港、秋田県由利本荘市沖、青森西北沖、秋田中央海域等のプロジェクトを進め、洋上風力発電のリーディングカンパニーとしての地位を確立し、2030年には150万kW超の設備容量を目指します。
《その他の重点施策》
(業務改革(ダイバーシティー・働き方改革)の取り組み)
今後、中期的に労働人口減少が予想される中、業務改革として属人的な仕事を大幅に削減し、BPOの推進、RPA及びAIといった新しいIT技術の投資が必要であると考えております。今よりももっと短時間かつフレキシブルな働き方ができる体制に変革させ、生産性の向上、ダイバーシティの推進を目指しております。
当社グループの主要各社では従前より、育児や介護支援のための在宅勤務制度を設けておりましたが、2019年度に制度を拡充し、場所を問わずテレワークができる体制を整えました。回数については、テレワークの事由を問わず週2日、育児や介護の突発事由であれば回数制限なく利用できるようになっております。また、新型コロナウイルス感染症対策として、臨時的に週5日テレワークを可能としました。2020年度以前から多くの社員が一斉にテレワークできる体制を事前に構築していたため、緊急事態宣言が発出された2020年5月には本社部門の出社率を10%程度に抑えることができました。テレワークは新たな社会様式として定着していくものであり、今後もこの変化した社会様式の中で、「働き方の多様性」「働き方改革」の一つとして継続していくものと考えております。
(サステナブル経営の推進について)
当社グループは、第6次連結中期経営計画における重点施策の一つとして、ESGを重視し持続的な企業成長と企業価値向上を図るサステナブル経営を推進しております。「地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざす」というグループ理念の原点に改めて向き合い、当社グループのサステナビリティの基本的な考え方を整理しました。このグループ理念と、理念に包含されるサステナビリティの基本的な考え方に基づき、サステナブル経営のアウトカムを定義し、そのアウトカムを実現するための制度設計を進めています。具体的な取り組みとしては、方針類の整備、会議体の再編成、マテリアリティの特定とKPIの設定、従業員のチェンジマネージメント、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)のシナリオ分析などを行っています。顧客・株主・地域住民・従業員等すべてのステークホルダーを含む社会の持続的発展に、サステナブル経営によって貢献してまいります。
・マテリアリティの特定
サステナブル経営推進の一環として、当社グループと社会の持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を以下のプロセスで特定しました。
環境分野のマテリアリティは「気候変動対策」「製品仕様とクリーンな燃料ブレンド」「クリーン技術の機会」、社会分野では「労働安全衛生」「ダイバーシティと機会均等」、ガバナンス分野では「収益基盤事業の構造改革」「安全操業・安定供給」「リスクマネジメント」「コンプライアンス」「倫理と誠実性」をそれぞれ特定しました。
これらのプロセスを経て特定した最重要マテリアリティ10項目と、連結中期経営計画のスローガンである「Oil & New」との関係性を示したのが以下の図です。
マテリアリティの特定に合わせ、各マテリアリティのリスク及び機会の特定を実施しました。リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすため、様々な取り組みを行っております。当社グループ及び社会の持続可能な発展を目指し、これらマテリアリティのリスクと機会を的確に捉え、経営に反映させていくことが重要と考えております。なお、事業等のリスクについては「第2 事業等のリスク」を参照ください。
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マテリアリティ |
リスクと機会 (●リスク、○機会) |
主な取り組み内容 |
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気候変動対策 |
●異常気象(台風、洪水等)の影響による製油所、工場、油槽所の操業または入出荷の停止、給油所の営業停止及びその発生確率の増加 ●風水害による装置、機器の故障及びその発生確率の増加 ●気候変動の物理リスク対策への多額の費用負担または投資コスト増(中・長期) ●炭素税導入による費用負担の増加 ●脱炭素社会への対応遅れによる企業価値の低下 ●脱化石燃料の進展による燃料油需要の減退 ○強じん化対策による災害時のエネルギー(石油製品)の安定供給によるステークホルダーからの信頼の獲得 |
・2050年温室効果ガス(GHG)ネットゼロ宣言、2050年ネットゼロ宣言達成に向けたロードマップの策定、2030年削減目標の見直しを検討 ・気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同及びシナリオ分析の実施 ・サプライチェーン供給体制の強じん化 ・内部炭素価格の導入検討 |
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クリーン技術の機会 |
●技術進展等に伴う低価格代替燃料の普及による石油製品の競争力低下 ●〇電気自動車(EV)技術の進展によるガソリン需要の減少及びEVステーションの拡大 ○再生可能エネルギー(風力発電事業)の事業機会の増大 |
・新規クリーン技術の開発検討(研究所) ・風力発電事業の拡大、洋上風力発電事業への参入 |
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製品仕様とクリーンな燃料ブレンド |
●規制強化によるコスト増 ●〇石油製品の脱炭素化
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・バイオガソリン(ETBE)の供給への取り組み ・バイオジェット燃料(SAF:Sustainable aviation fuel)の供給への取り組みの検討 |
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労働安全衛生 |
●従業員及び協力会社の労働災害被害 ●製油所、物流基地及び油槽所等の操業停止 ●人的や機械的なエラーによる事故の発生 ●労働紛争 〇従業員の離職防止、定着化 |
・グループ全体の労災件数、製油所等の度数率・強度率の実績管理 ・再発防止策や労災件数低減に関する取り組みをグループ各社に共有 ・労災の定義と責任所在の明確化 ・全国安全週間に、社長メッセージをグループ内に発信 |
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ダイバーシティと機会均等 |
●労働人口減少に伴う人材不足に対する採用コストの上昇 ●多様な人材不足による競争力の低下 ○モチベーション向上による企業成長 ○イノベーションが起きやすい環境の醸成 ○優秀な人材確保、定着化を促進 |
・女性活躍を優先課題とし女性管理職比率、採用女性比率をKPIとして管理 ・育児、介護支援制度の充実 ・健康診断受診率と総労働時間をKPIとして管理 ・公平かつ透明性のある評価制度 |
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倫理と誠実性 |
●社員のモラル低下による信頼の失墜 ●法令違反による行政処分 ●顧客からの信頼の失墜、ブランドイメージの低下 〇健全な企業風土の醸成 |
・企業行動指針の浸透 ・社員向けメールマガジンの発行による企業行動指針の浸透 ・倫理意識の醸成を目的とした企業倫理研修を実施 ・従業員意識調査による現況把握 |
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リスクマネジメント |
●予期せぬ障害、損失、組織の機能不全 ●事故、災害時の被害の拡大、復旧の遅れ 〇適切なリスクテイクによる競争力の向上 |
・グループ各社のリスク管理 ・グループ全体に係る全社リスクの選定と対応 ・リスクマネジメント研修の実施 |
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収益基盤事業の構造改革 |
●金融不安、政情不安、景気の急変動等による既存事業の強靭性の低下 ●市場変化や政策への対応の遅れによる事業採算性の低下 ●技術革新への対応の遅れによる主要事業の競争力低下 〇新規事業の収益化による事業基盤のアジリティ確保 〇技術変化への早期対応による競争優位の獲得 |
・再生可能エネルギー事業等、次代の成長を担う投資の実施 ・㈱e-Mobility Powerと共同で給油所へのEV用急速充電器の設置 ・再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業の参画 ・「スマートシティ会津若松」におけるICT・環境技術等を活用した地域モデルの創出。地域創生、地域との協創における事業の機会の検討 ・グリーン成長戦略14分野における事業機会の検討 |
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コンプライアンス |
●コンプライアンス違反による信頼の失墜 ●損害賠償責任や罰金の課金 ●法令違反による行政処分 |
・企業行動指針と規定類の整備 ・内部統制システムの整備、運用及び強化 ・ヘルプライン(内部通報制度)の整備 |
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安全操業・安定供給 |
●事故や労働災害による製油所、物流基地及び油槽所等が操業停止 ●給油所、タンカー及びローリーでの事故及び地震等の災害による事業継続障害 〇企業価値の向上 〇いかなる時にも安定供給を実現することによるレピュテーションの向上 |
・安全を企業行動指針の第1章に掲げ、安全文化を醸成 ・グループ各社の重大事故発生防止を目的に、事故発生率や不具合件数など世界標準のプロセス安全管理指標で評価 ・操業マネジメントシステムの導入、高度化 ・千葉製油所の高圧ガス保安法における特定認定事業者(スーパー認定)の取得 ・災害時の石油製品の安定供給を目的に、系列サプライチェーンBCPを構築、高度化 ・「コスモ石油安全の日」を設定し、事故風化防止と再発防止の教育を徹底 |
(2)経営環境
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により経済活動が停滞し、2020年4月の緊急事態宣言の発令を受け、消費の低迷、雇用情勢の悪化等がみられました。その後、感染拡大防止策を講じるなかで各種政策の効果により、生産や消費活動等にも持ち直しの動きがみられたものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大の懸念は依然として続いており先行きは不透明な状況です。
原油価格は、期初に1バレル21ドル台であったドバイ原油が、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大と、2020年3月に開かれたOPECとOPEC非加盟国で構成される「OPECプラス」における協調減産の延長協議が決裂した影響から、4月下旬には一時13ドル台まで落ち込みました。その後はOPECプラスによる協調減産の合意等により需給バランスは改善し、6月以降は30ドルから40ドル台のレンジで推移しました。11月以降は新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発と普及への期待等が高まり上昇基調に転じ、2021年1月にはOPECプラスにてサウジアラビアが自主減産を発表したことから原油価格の上昇をさらに促すこととなり、期末は63ドル台で終えました。
為替相場は、期初は1ドル107円台から始まり、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大にともない緩やかに円高が進行し、2021年1月には一時102円台まで円高が進行したものの、米国新政権による大型の追加経済対策への期待から米国国債金利が上昇するとともに円安傾向となり、期末は110円台で終えました。
石油製品の国内需要は、依然として減退傾向が続きました。灯油及びA重油は前期を上回ったものの、その他の油種は前期を下回り、特に航空燃料については新型コロナウイルス感染症の影響による移動の制約の影響を受けて大幅に縮小し、燃料油全体では前期を下回りました。
石油化学製品は、海外のプラント新増設の影響等により、主要製品であるパラキシレン等の市況が低調に推移し、厳しいマーケット環境となりました。
今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響は長期化が見込まれますが、経済状況は徐々に回復することが予想され、石油需要も回復が見込まれます。一方で、中長期的には世界的に脱化石燃料への流れが加速し、エネルギー分野においても再生可能エネルギーへのシフトの重要性が高まると予想され、また国内における燃料転換や人口減少等の構造的要因による石油需要の減少傾向も継続するものと予想されます。
このような経営環境の中、当社グループは、前連結中期経営計画から全社を挙げて懸命に進めてきた構造改革により、燃料油の中期的な需要減少に備えた体制構築が完了していたため、新型コロナウイルス感染症の影響で全国的な需要が低迷する環境下においても、当社グループでは製油所の稼働率を低下させることなく対応することができました。
今後も長期的な大きな潮流を捉えつつ、短期的な変化に柔軟に対応しながら、石油関連事業の競争力の強化と再生可能エネルギーへのシフトを同時に進める「Oil & New」の基本方針を着実に、かつスピード感をもって実行することで、企業価値の向上を目指してまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは第6次連結中期経営計画において、足元の経営環境を注視しながら長期的な方向性を見据え、事業ポートフォリオを拡充し、石油開発や石油事業で収益力を強化してまいります。第6次連結中期経営計画を実行する上で、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
《各事業セグメントにおける課題》
(石油事業(石油精製事業))
中長期的に石油需要の減退が予想されるなか、収益油種への集中及び石油化学事業へのシフト、製油所のIT化等を推進してまいります。またキグナス石油㈱向けの供給を引き続き実施するほか、他社とのアライアンスを活かした競争力の強化、石油化学事業とのシナジーの創出を目指してまいります。
(石油事業(石油販売・カーライフ事業))
カーライフの変化に対応したビジネスモデルへの変革により事業領域を確保しつつ、石油精製と併せて競争力を確保してまいります。また、カーライフ事業の拡大を志向しつつ長期的な事業環境を見据え、カーシェア事業や電力小売り販売等の新規ビジネスの拡大を進めてまいります。
(石油化学事業)
長期的には石油化学製品は世界の人口増加を背景に国際市場が拡大していくことが予想されるため、燃料油から石化原料へのシフトを推進してまいります。エチレン・パラキシレン生産での競争優位性を最大限活用しながら、石油精製と石油化学のシナジー享受(未利用分の活用等)や、環境に左右されにくい機能化学品の事業拡大を目指してまいります。2021年度は千葉アルコン製造㈱による水素化石油樹脂製造事業の商業化や、丸善石油化学㈱による高純度のポリマーグレードのプロピレン精製設備導入を計画しております。
(石油開発事業)
半世紀にわたるアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国での安定した海上油田の生産実績による強固な信頼関係と自社操業を強みとして、既存油田の安定的な生産の継続と操業コストの削減を行ってまいります。また、新たに取得した鉱区(Offshore Block 4)からの生産により生産量規模の維持を図り、低油価環境でも利益を出せる事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。
(その他事業)
世界的な脱炭素化の潮流のなか、わが国においても今後大きな成長が期待される風力発電事業を中心に、引き続き積極的な開発を行ってまいります。陸上風力発電においては、2021年4月に運転を開始した中紀ウィンドファーム(和歌山県)につづき、建設中の上勇知ウィンドファーム(北海道)と大分ウィンドファーム(大分県)の工事を完了させ、また青森県、福島県、和歌山県等での開発案件を着実に推進して、風力発電出力50万kW体制の早期達成を目指します。今後、事業環境の整備・投資機会の拡大が見込まれる洋上風力発電においては、公募入札に向けた検討をさらに推し進め、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指してまいります。具体的には、秋田県の秋田港及び能代港における洋上風力発電プロジェクト、秋田県由利本荘市沖洋上風力発電事業及び青森西北沖洋上風力発電事業をはじめとし、次の有望区域となる地域での事業計画についても実現に向けた検討を進めてまいります。
《気候変動への取り組み》
当社グループは、2020年12月に、気候変動関連情報の開示を検討するための一つとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に対する賛同を表明する署名を行い、TCFDコンソーシアムに参画いたしました。またそれを契機として、気候変動に関わる情報の適切かつ積極的な開示に取り組むとともに、2021年5月には、グループ事業から排出する温室効果ガス(GHG(注))を2050年までにネットゼロにすることを宣言しました。今後、TCFDにおけるシナリオ分析を実施し、長期的な目標達成に向けたロードマップを策定します。次期第7次連結中期経営計画においては、財務・非財務を融合した経営計画を策定し、コスモエネルギーグループとしてサステナブルな成長を目指してまいります。
(注)GHG:Greenhouse Gasの略称。当社グループはScope1(直接排出)及びScope2(エネルギー起源間接排出(購入電力等))を対象としています。
《財務体質の健全化》
第6次連結中期経営計画では「財務体質の健全化」を最重要課題の一つとして認識し、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化し、原油価格下落等の環境変化に耐えうる自己資本の厚みを目指しております。財務体質強化の施策の一つとして2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行、劣後ローンのリファイナンスを行っております。
当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは828億円となり、着実に稼ぐ力が強化されています。親会社株主に帰属する当期純利益の計上も過去最高となり、また有利子負債の削減に取り組んだ結果、財務体質は大きく改善しました。2020年度末で自己資本は3,249億円(自己資本比率19.0%)、ネットD/Eレシオは1.59倍となりました。引き続き、連結中期経営計画を進め、稼ぐ力を強化し、財務体質の健全化を進めます。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化することで、市場環境変化に耐え得る自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半を早期に実現すべく第6次連結中期経営計画を策定し、下記を経営目標として掲げております。
※ 2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出
当社グループの経営成績及び財政状態は、今後起こり得る様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下には、事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、コントロールできない外部要因や事業リスクとして顕在化する可能性が必ずしも高くない事項も含め、投資家の判断上重要と考えられる事項については積極的に開示しております。ただし、以下の記載は当社株式への投資に関するリスク全てを網羅するものではありません。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)セグメント特有のリスク
(石油開発事業)
①原油価格に関するリスク
原油価格は、需要動向と供給動向により大きく左右されます。原油の需要は世界経済の動向や石油製品の需要に影響されます。特に大消費国である米国や経済成長著しいアジア地域、中でも中国の動向に影響されます。また、OPEC加盟国や他産油国の増減産に加え、シェールオイルの増減産、中東産油国の周辺地域における戦争勃発や政情の不安定化、テロ等の不測の事態により、原油価格が影響を受ける恐れがあります。当社グループでは原油価格動向を日々注視しながら事業を進めておりますが、原油価格の変動が大きい場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは次期の連結業績予想へ与える原油価格変動の感応度を測定しておりますが、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、石油開発事業のセグメント利益は年間9億円増減する可能性があります。
②原油生産に関するリスク
当社グループはアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国及びカタール国で原油生産を行っております。油田に関する技術やノウハウを蓄積し、長期に渡る安定的な原油生産が継続できるように操業しておりますが、油層の状況が想定と異なった場合等には予定している生産量を確保できないリスクがあります。当社グループが操業しているヘイル油田では油層圧低下が発生しておりますが、今後、油層圧回復の施策を講じリスク低減を図ってまいります。また中東産油国の周辺地域における戦争勃発や政情の不安定化、テロ等の不測の事態により、当社グループの生産拠点での操業停止等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③原油探鉱・開発に関するリスク
当社グループはアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国で新たに探鉱鉱区(Offshore Block 4)を落札しました。今後、探鉱作業を行い原油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査します。探鉱作業において商業生産が可能な規模の資源が発見できず、投資額が回収できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(石油事業及び石油化学事業)
①原油価格及び原油調達に関するリスク
石油開発事業における原油価格に関するリスクに加え、当社グループは、原油在庫の価格を総平均法で評価しているため、原油価格の下落局面では、期初の在庫単価と期中に仕入れた下落した在庫単価が平均され売上原価を押し上げることになり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、中東産油国の周辺地域における戦争勃発や政情の不安定化、テロ等の不測の事態により原油調達が影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは次期の連結業績予想へ与える原油価格変動の感応度を測定しておりますが、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、石油事業のセグメント利益は年間13億円増減する可能性があります。
②石油製品及び石油化学製品等の価格に関するリスク
当社グループの主要な石油製品コストは、国際市況である原油価格や為替レートを反映した形で決定されるのに対し、販売活動は主に国内で行っており、販売価格は国内市況を反映して決定されます。国際市況と国内市況とのギャップやタイムラグが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③石油製品及び石油化学製品等の需要に関するリスク
当社グループの売上高のうち主要な部分を占めるガソリン・灯油・軽油は、一般消費者の需要動向の影響を強く受けます。また、ナフサは石油化学業界、航空燃料は航空業界、軽油は運輸業界、重油は電力業界、海上輸送業界等の需要動向を反映します。燃料油の国内需要は、少子高齢化や人口減少、燃費改善や燃料転換等の構造的要因から減少傾向が継続するものと想定しております。また、足元では新型コロナウイルス感染症の影響により、特に航空燃料の需要低迷が懸念されます。当社グループは、需要減少に備え国内販路の確保や収益油種を集中して生産できる体制の構築等に取り組んでおりますが、国内のみならず海外も含めた経済動向や天候の変化等で需要が変動した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④たな卸資産の収益性の低下による簿価切下げに関するリスク
原油価格の下落により、たな卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下し、たな卸資産の収益性が低下したと判断する場合があります。この場合、たな卸資産の収益性の低下を反映するために計上した評価損が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは原油及び石油製品の輸出入に係る価格変動のリスクをヘッジすることを目的としてデリバティブ取引を利用しています。具体的な取り組みについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 金融商品関係」を参照ください。
(その他事業)
当社グループでは、風力発電事業を将来の事業ポートフォリオの柱のひとつとすべく、積極的に投資を進めております。風力発電事業において、当社グループが認識している事業等のリスクは以下のとおりであります。
①政策及び法令に関するリスク
風力発電事業は固定価格買取制度(FIT)が適用されておりますが、今後、その制度が縮小または終了する等、事業者に不利な制度変更がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態、また将来の成長性に影響を及ぼす可能性があります。
また、一般海域における洋上風力発電事業の開発は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」に則って行われ、具体的な手続、スケジュールは経済産業省及び国土交通省により進められています。当社グループでは事業候補地においてフィージビリティスタディーを実施していますが、当社グループが想定している時期に促進区域に指定されず、事業計画に遅れが出るもしくは中止となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態及び将来の成長性に影響を及ぼす可能性があります。
②開発に関するリスク
風力発電事業では、開発段階において各種許認可の取得に加え、風況観測及び環境アセスメントが必要となるため、建設工事着工前から一定程度の先行的な投資が発生します。開発段階で事業化を断念しなければならない事象が発生し、投資額が回収できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③建設に関するリスク
洋上風力設備の建設工事着工は入札時からのリードタイムが数年あります。その間に鋼材や人件費等の上昇が発生した場合、建設費用が増加する可能性があります。また新型コロナウイルス感染症等の影響により、海外からの資機材搬入の遅延や技術者入国制限等が発生した場合、工事が遅延する可能性があります。当社グループではパートナーとの提携等により、これらのリスク低減に努めますが建設費増加または工事遅延が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④出資に関するリスク
洋上風力発電事業は、当社グループが出資する特別目的会社(SPC)を通じて事業を進めておりますが、事業化を断念しなければいけない事象が発生する場合があります。この場合、出資額が回収できないと判断し、減損処理を実施するため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)その他のリスク
①外国為替レートに関するリスク
当社グループは、原油の輸入及び石油製品等の輸出入を行っており、その調達コストは通常米ドル建てで決済されるため、外国為替レートの変動により差損益が生じます。外国為替レートの変動による悪影響を最小限に留めるべく、為替ヘッジ取引を行っておりますが、円安へ推移すれば調達コストを押し上げることとなります。また、外国為替レートの変動は、海外連結子会社または持分法適用会社の財務諸表を円貨換算する際にも影響しており、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは次期の連結業績予想へ与える為替変動の感応度を測定しておりますが、1米ドル当たり1円変動すると、石油事業及び石油開発事業のセグメント利益は合わせて年間13億円増減する可能性があります。
また、上記の通り、当社グループは為替変動リスクをヘッジすることを目的としてデリバティブ取引を利用しています。具体的な取り組みについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 金融商品関係」を参照ください。
②金利に関するリスク
金利の変動により、今後借入金利が著しく上昇する等金融コストが増加する場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、一部の借入金は変動金利であるため、金利の変動リスクに晒されていますが、当社グループは当該変動リスクをヘッジすることを目的としてデリバティブ取引を利用しています。具体的な取り組みについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 金融商品関係」を参照ください。
③資産価値に関するリスク
原油価格の下落や市場環境の変化等により、資産の収益性の低下や資産価値の下落が生じ、投資額の全部または一部の回収が見込めないと判断する場合があります。この場合、当社グループが保有する固定資産や投融資に対する投資額の回収可能性を反映するために計上する減損損失や評価損が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④繰延税金資産の取り崩しに関するリスク
繰延税金資産の計算につきましては、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤感染症等に関するリスク
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延を機に、危機対策本部会議(2021年3月末までに全22回)において感染予防措置の徹底、原則在宅勤務化、感染時・感染疑い時の対処等、当社グループ全体の方針の周知徹底を図りました。加えて、従前より整備してきた新型インフルエンザ等発生時のBCPマニュアルを適宜見直し、事業への影響の最小化を図りました。また、当社グループでは予てより働き方改革の取り組みとして在宅勤務制度を構築していましたが、この制度を新型コロナウイルス感染症の感染予防策として活用する他、時差出勤などと併せることで、生産性をより向上させる「新しい働き方」を追求するとともに、従業員の安全衛生の徹底を図っております。ただし、当社グループ内での感染者が発生し、事業運営に影響する場合は、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥気候変動に関するリスク
日本はパリ協定に基づき2030年度までにCO₂排出量を2013年度比26%削減することを目標にしておりましたが、2021年4月に日本政府は、2030年度までに温室効果ガスの排出量の削減目標を2013年度比46%まで引き上げ、2050年には温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを表明しております。
当社グループも同レベルの目標を揚げております。削減目標に対応するため世界的に脱化石燃料の動きが加速していくと、電動自動車の普及やシェアリング経済が拡大することとなり、ガソリン需要は存在するものの、化石燃料の需要は漸減していくと考えられます。このような環境を踏まえ、今後、当社グループは事業ポートフォリオの移行を加速させ、より環境配慮型の企業を目指します。しかしながら、日本や他の国が気候変動政策を強化、または環境関連法規等を変更または新規に導入した場合、石油製品の需要が想定外の速度で減少する可能性があります。この場合、石油関連事業を中心として、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦災害や事故に関するリスク
当社グループは、大量の危険物及び高圧ガスを取り扱っており、事故を未然に防止するために様々な安全対策を実施しています。しかしながら、設備の老朽化や人為ミスを原因とする事故や労働災害によって、製油所、物流基地及び油槽所等が操業停止する可能性があります。また、巨大地震や自然災害を想定し、非常用電源設置、耐震改修、事業継続計画(BCP)マニュアル整備及び防災訓練を行い、災害発生時の影響を最小限にする対策を講じています。しかしながら、地震発生時には何らかの要因で操業停止する可能性があります。さらに、製油所、物流基地及び油槽所等以外でも給油所、タンカー及びローリーでの事故及び地震等の災害で事業運営に支障をきたす場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧法規制に関するリスク
石油産業には公害や環境問題に関する様々な法律が適用されており、当社グループはこれらの規制に適合するために然るべき対応を行っております。今後、環境問題への対策強化が予想される中、新たな法律、規制等が課される可能性があります。新しい法律や現行法の改正等により、費用負担が増加した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨競合に関するリスク
当社グループは石油事業を中心に国内外の企業との激しい競争にさらされております。引き続き競争力の維持、向上に取り組んでまいりますが、競合他社と比して効率的な事業運営等ができない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑩信用に関するリスク
当社グループでは取引先に対する与信管理の体制を整備しておりますが、保有する売掛債権が取引先の経営悪化等により債務不履行に陥り回収不能になった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑪品質に関するリスク
当社グループは、リスクマネジメントにおける重点管理項目として品質確保についての目標やKPIを設定し、製品・サービスの品質管理体制の強化に努めています。
しかし、品質管理に関するリスクが顕在化した場合には、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑫顧客満足に関するリスク
当社グループでは、リスクマネジメントにおける重点管理項目として、カスタマーセンターのクオリティ診断、サービスクレーム発生率をKPIとして用い、顧客満足度の向上に努めております。
しかし、サービスレベルの低下などによって顧客の要求に応えられない場合には、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑬法令違反に関するリスク
当社グループは、サステナブル経営を進めるにあたり、法令遵守を柱の一つと位置付け、仕組みを整えるとともに、社員が遵守すべき行動規範である「コスモエネルギーグループ企業行動指針」の浸透を図り、また企業倫理・人権研修を通じ、社員一人ひとりのモラル向上、知識レベル向上に努めております。しかしながら、ヒューマンエラー等による法令違反のリスクが顕在化した場合には、行政処分を受け、事業運営に支障をきたす恐れがあるほか、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑭情報の管理に関するリスク
情報管理につきましては、社内情報システムのセキュリティを強化するためにウイルス対策や個人情報保護対応等を実施しております。さらに、顧客情報を含む機密情報の管理、取り扱いにつきましては、社内体制、社内規程等を整備し、外部への委託先に対して監督管理及び監査を実施しております。しかしながら、何らかの要因により個人情報を含む機密情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクが顕在化した場合には、事業運営に支障をきたす恐れがあるほか、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑮内部統制システムに関するリスク
当社グループでは、法令などの遵守のために財務報告に係る内部統制を含む、有効な内部統制システムの整備、運用及び強化を図っております。しかしながら、組織内外の環境の変化やコンプライアンス違反などが生じ、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能しない場合があります。この場合、ステークホルダーの信頼を失い、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンとした第6次連結中期経営計画の基本方針に基づき、主力事業である石油開発事業、石油事業の収益力を強化し財務基盤を確立するとともに、長期的な環境変化を見据え、再生可能エネルギー事業への積極投資や石油化学事業の競争力強化等、事業ポートフォリオの拡充に向けた取り組みを実施しました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は2兆2,333億円(前期比18.4%の減少)、営業利益は1,013億円(前期比629.1%の増加)、経常利益は974億円(前期比497.9%の増加)となりました。
これは、期首に新型コロナウイルス感染症の影響により急落した原油価格が、経済再開や需要回復への期待が高まったこと等により上昇し、特に石油事業において製品のマージンが改善したこと等によるものです。
上記の増益要因により、親会社株主に帰属する当期純利益は859億円となりました。
なお、セグメント情報につきましては、以下のとおりであります。
(石油事業)
石油事業につきましては、前年同期比で原油価格が下落したこと等により、売上高は2兆558億円(前期比△4,510億円)となりました。一方で、原油価格の回復基調が続いたことによるマージン改善等の影響によりセグメント利益は741億円(前期はセグメント損失478億円)となりました。
(石油化学事業)
石油化学事業につきましては、前年同期比で販売数量が減少したこと並びに製品市況が悪化したこと等により、売上高は3,045億円(前期比△1,099億円)、セグメント損失は33億円(前期はセグメント利益52億円)となりました。
(石油開発事業)
石油開発事業につきましては、前年同期比で原油販売数量が増加したものの原油販売価格が下落したこと等により、売上高は604億円(前期比△375億円)、セグメント利益は139億円(前期比△311億円)となりました。
(その他事業)
その他事業につきましては、売上高は765億円(前期比△81億円)となり、前年同期比で洋上風力への本格進出に伴う開発費及び人件費が増加したこと等により、セグメント利益は79億円(前期比△13億円)となりました。
当期の連結財政状態は、総資産は1兆7,090億円(前連結会計年度末比+692億円)、負債合計は1兆2,599億円(前連結会計年度末比△170億円)、純資産合計は4,491億円(前連結会計年度末比+863億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は445億円となり、前連結会計年度末の残高433億円に比べ12億円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金の増加は1,674億円となり、前連結会計年度に比べ557億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、税金等調整前当期純利益が増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金の減少は846億円となり、前連結会計年度とほぼ同水準になりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金の減少は806億円となり、前連結会計年度に比べ559億円キャッシュ・フローが増加いたしました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの返済による支出が増加したこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
石油事業 |
|
662,532 |
68.5 |
|
石油化学事業 |
|
242,654 |
69.9 |
|
石油開発事業 |
|
14,885 |
64.2 |
|
合計 |
920,071 |
68.8 |
|
(注)1 自家燃料は除いております。
2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。
3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。
4 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
b受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
その他 |
13,017 |
102.6 |
7,901 |
96 |
(注)上記の金額に消費税等は含まれておりません。
c販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
石油事業 |
|
1,906,912 |
83.2 |
|
石油化学事業 |
|
268,005 |
73.5 |
|
石油開発事業 |
|
22,939 |
53.5 |
|
その他 |
|
35,392 |
89.7 |
|
合計 |
2,233,250 |
81.6 |
|
(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
ENEOSホールディングス㈱ |
370,197 |
13.5 |
335,154 |
15.0 |
|
キグナス石油㈱ |
159,289 |
5.8 |
234,426 |
10.5 |
※JXTGホールディングス㈱は、2020年6月25日付でENEOSホールディングス㈱に商号変更しております。
※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
3 上記の金額に消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。
②経営成績の分析
a売上高
売上高は、前連結会計年度に比べ5,047億円減少し、2兆2,333億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。
b売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ5,856億円減少し、2兆6億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。売上高に対する売上原価の比率は、4.9ポイント減少して、89.6%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ65億円減少し、1,314億円となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.9ポイント増加して、5.9%となりました。
c営業利益
上記の結果を受け、営業利益は、前連結会計年度に比べ874億円増加し、1,013億円となりました。これは主に、石油化学事業における市況悪化や定期整備に伴う販売数量減少、石油開発事業における原油価格下落による販売価格の下落等の減益要因があった一方、石油事業においてキグナス石油㈱への供給拡大や製品マージンの改善といった増益要因があったこと等によるものです。
d営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ63億円悪化し、39億円の損失となりました。これは主に、支払利息が前連結会計年度に比べ21億円改善したものの、持分法投資損益が58億円悪化したこと等によるものです。
e特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ13億円悪化し37億円の損失となりました。これは主に、固定資産売却益20億円を特別利益として計上する一方、特別損失として固定資産の除却・撤去に関する固定資産処分損67億円を計上したこと等によるものです。
f親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,141億円増加し、859億円となりました。これは主に、上記に記載した営業利益の増益要因の他に、法人税等が前連結会計年度に比べ305億円減少し44億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ38億円減少し33億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、1,025.86円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(石油事業)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い航空燃料を中心に燃料油の需要の減少等の影響を受けましたが、キグナス石油㈱への供給拡大、製品マージン改善等の影響を享受したことにより、セグメント利益は、741億円(前期はセグメント損失478億円)となりました。
2021年度は当連結会計年度に享受した製品マージン改善の影響が解消されることが想定されますが、燃料油需要が回復し、販売数量が回復することを見込んでおります。
(石油化学事業)
石油化学市況の悪化や定期整備に伴う販売数量の減少により、セグメント損失は、33億円(前期はセグメント利益52億円)となりました。
2021年度は当連結会計年度に行った定期整備の影響が解消し、市況も回復へ向かうことを見込んでおります。石油事業とのシナジーを追求しながら、継続して協業の深化を進めてまいります。
(石油開発事業)
原油生産数量は増加したものの、原油価格の下落に伴う販売価格下落等の影響により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ311億円減少し、139億円となりました。
2021年度は、原油価格の回復による影響を享受する見込みです。また、当連結会計年度に海上の炭鉱鉱区(Offshore Block 4)を落札いたしました。今後探鉱作業を開始し、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査してまいります。
(その他)
風力発電設備が順調な稼動を継続したものの、洋上風力への本格進出に伴う開発費及び人件費が増加したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ13億円減少し、79億円となりました。
2021年度は、陸上風力については、既存の発電設備の安定稼動を目指すとともに新規発電設備の開発並びに建設を進めてまいります。洋上風力については、現在建設中の秋田港、能代港のほか、4つのプロジェクト(秋田県由利本荘市沖、青森西北沖、秋田中央海域、山形県遊佐沖等)の開発に向けた計画を着実に推進いたします。
③資本の財源及び資金の流動性に関する分析
a資金需要
当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。
運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーションや販売促進のためのアプリ開発、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。
b財務政策
第6次連結中期経営計画では、「財務体質の健全化」を基本方針の一つとして掲げ、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化し、原油価格下落等の環境変化に耐えうる自己資本の厚みを目指しております。財務体質強化の施策の一つとして2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行、劣後ローンのリファイナンスを行っております。
当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、コマーシャル・ペーパーによる直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を図り十分な流動性を確保しております。
当年度においては、新型コロナウイルス感染症が業績に与える影響と金融市場の動向を精査しながら、過剰な手元流動性対策は行わず、有利子負債を返済することで、金融コストの抑制を図りました。また、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融体制を構築しており、調達の効率化を行っております。
当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)から格付けを取得しており、当連結会計年度末において当社の格付けは、BBB(方向性:ポジティブ)です。
(特定融資枠契約)
平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,344億円です。
c株主還元
当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。今後も、財務体質とのバランスを鑑みながら、持続性のある安定配当の維持を目指しており、中長期的な視点で総合的に判断し、期末配当を一株当たり80円といたしました。
d財政状態
当社グループは、財務体質を健全化することを最重要課題の1つとして認識しており、原油価格変動等の市場環境変化に耐えうる自己資本の充実を目指しております。今後も、重要な将来への成長投資と両立させながら、財務体質の健全化を目指してまいります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は6,058億円となり、前連結会計年度末に比べ332億円増加いたしました。これは主に、売上債権が199億円及びたな卸資産が151億円増加したこと等によるものです。固定資産は1兆1,031億円となり、前連結会計年度末に比べ362億円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が117億円増加したこと及び繰延税金資産が167億円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は1兆7,090億円となり、前連結会計年度末に比べ692億円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は7,525億円となり、前連結会計年度末に比べ464億円増加いたしました。これは主に、仕入債務が332億円増加したこと等によるものです。固定負債は5,074億円となり、前連結会計年度末に比べ634億円減少いたしました。これは主に、長期借入金が378億円減少したこと等によるものです。
この結果、負債合計は1兆2,599億円となり、前連結会計年度末に比べ170億円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,491億円となり、前連結会計年度末に比べ863億円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益859億円を計上したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は19.0%(前連結会計年度末は14.6%)となりました。
eキャッシュ・フロー
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したこと等により1,674億円のプラスとなりました。投資活動は前連結会計年度並みの846億円のマイナス、財務活動はコマーシャル・ペーパーの返済による支出が増加したこと等により806億円のマイナスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比12億円増加の445億円となりました。
当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行等に伴う原油価格の下落や航空燃料を中心とした燃料油の需要減少等の影響を受けましたが、キグナス石油への供給拡大や石油製品のマージン良化等を主要因とし、税金等調整前当期純利益は前期比で大きく増加しております。フリー・キャッシュ・フローも828億円となり、着実に稼ぐ力が強化されております。また、新型コロナウイルス感染症の影響や金融市場の動向を注視しながら、財務運営を実施し、過剰な手元流動性対策を行うことなく、金融コストの抑制を図ることが出来ました。引き続き、財務体質を強化し、洋上風力等への積極的な成長投資により、事業ポートフォリオの転換を目指し、収益機会を確実に享受し、更なるフリー・キャッシュ・フローの創出を目指してまいります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
|
|
2017年3月期 |
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
|
自己資本比率 |
10.8% |
14.1% |
16.5% |
14.6% |
19.0% |
|
時価ベースの自己資本比率 |
10.5% |
17.2% |
11.0% |
7.8% |
12.9% |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
16.2年 |
3.6年 |
7.7年 |
6.1年 |
3.6年 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
3.8倍 |
15.6倍 |
8.2倍 |
11.8倍 |
23.1倍 |
(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、転換社債型新株予約権付社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営の方向性を第6次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該連結中期経営計画3年目の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。
親会社株主に帰属する当期純利益は859億円、自己資本は3,249億円(自己資本比率19.0%)、ネットD/Eレシオ(※)は1.59倍となりました。足元の原油価格は連結中期経営計画策定時よりも下落しており、当連結会計年度においては新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、連結中期経営計画において掲げた施策の実行による収益力の強化により、過去最高となる親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、財務体質は大きく改善いたしました。
連結中期経営計画の対象期間も残り2年となりましたが、自己資本4,000億円以上、自己資本比率20%以上、ネットD/Eレシオ1.0~1.5倍は概ね達成できるものと想定しております。引き続き、重要な将来への成長投資と確実な収益機会の享受等により、第6次連結中期経営計画の目標達成に向けて邁進してまいります。
(※):2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出。
(1)1997年7月15日、カタール国政府と連結子会社のコスモ石油㈱・日商岩井㈱(現・双日㈱)及び持分法適用関連会社の合同石油開発㈱は、カタール国沖合東南第1鉱区アル・カルカラ構造及びA構造における石油の探鉱・開発の生産物分与契約(以下「DPSA」)を締結しました。連結子会社のカタール石油開発㈱は1997年11月14日、DPSAに基づく全ての権利義務を上記3社から譲り受け、当該区域において、開発・生産・貯蔵・輸送及び販売を行っております。
(2)1999年10月12日、コスモ石油㈱と日石三菱㈱(現・ENEOS㈱)との間で、原油調達・精製・物流及び潤滑油の各分野に関して、業務提携に関する基本協定を締結しました。
(3)2007年9月18日、コスモ石油㈱とInternational Petroleum Investment Company(現・Mubadala Investment Company)との間で、日本/アジア/環太平洋における、エネルギー分野を中心とした包括的かつ戦略的な業務提携を行うことを目的に、コスモ石油㈱への投資に関する第三者割当契約を締結しました。
(4)2011年2月3日、アブダビ首長国最高石油評議会と連結子会社のアブダビ石油㈱は操業している3油田の利権の更新と新鉱区の追加取得について、新たな利権協定を締結しました。アブダビ石油㈱は、同利権地域におけるアブダビ海域において石油の採掘・貯蔵・輸送及び販売を行っております。
(注)本協定は、前協定(1967年12月6日締結及び1979年4月28日締結)が期限満了となった2012年12月6日より
発効しました。
当社グループの研究開発活動は、連結子会社のコスモ石油㈱、コスモ石油ルブリカンツ㈱、丸善石油化学㈱及びコスモエンジニアリング㈱で実施しております。コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒などの石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。コスモ石油ルブリカンツ㈱では、環境対応潤滑油商品化のために技術開発に取り組むとともに、消費者のニーズに応える潤滑剤及び放熱材料の商品開発等を行っております。丸善石油化学㈱では、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品等、既存事業の強化、拡大及び新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。コスモエンジニアリング㈱では、プラント保全技術、次世代エネルギー、環境等、時代のニーズに応える研究活動を行っております。
この結果、当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は
以下に主要な研究概要をセグメント別に記載いたします。
(1)石油事業
コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒等の石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。
石油精製分野では、長年培った触媒の調製・運転管理技術を活かして、製油所の高効率稼動や精製コストの削減等に取り組んでおります。また、環境規制の強化など変化に対応した燃料処方検討や需給構造変化に向けた重質油削減等を実施することで製油所競争力の強化に資する研究開発を実施しております。
石油化学分野では、石油化学工場における未利用留分の燃料利用や石油留分の高付加価値化(石油化学製品化)、新規石油化学溶剤の調査・開発など石油精製と石油化学との連携強化に関する研究開発に取り組んでおります。
石油開発分野では、2016年度より原油タンク底部に蓄積する原油スラッジの削減技術に関する共同研究を独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と実施し、新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも2021~2022年に産油国にて商業スケールでの実証化を実施すべく、機器調達、製作等の準備に着実に取り組んでおります。
そして、2020年度より新たにコーポレート研究分野での取り組みを開始し、資源循環など将来の社会課題解決を目的として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」及びNEDO先導研究プログラム「自動車の早期低炭素化を実現する内燃機関/燃料組成の開発」に参画し、研究開発に着手しております。
また、Hyundai Oilbank Co., Ltd. との「石油事業包括協力覚書」(2008年4月16日締結)及び「技術/研究分野における覚書」(2011年10月13日締結)に基づき、相互の課題解決や研究開発活動の強化を目的として情報交換、協力を実施しております。
コスモ石油ルブリカンツ㈱は現在、環境対応を最重要テーマとして、脱炭素、自動車や産業機械の電動化、デジタル化といった事業環境の変化に対応する最先端の商品開発に取り組んでおります。また、自社開発技術の更なる発展による要素技術開発・商品開発も並行して実施しております。
車両用潤滑油・工業用潤滑油・グリースの分野では、国内外で今後ますます厳しくなる排ガス規制・省燃費規制に対応したディーゼルエンジン油、長寿命ガスエンジン油、低硫黄燃料に対応する舶用シリンダー油の開発や、各国の化学物質規制に対応した商品開発、省エネルギー・省資源技術確立のための更なる研究開発に取り組んでおります。
また、デジタル化に対応する製品として、電子部品の放熱材料(製品名:「コスモサーマルグリース」、「コスモサーマルギャップフィラー」)、低トルク・省電力の「HDD動圧軸受油」など高付加価値商品の開発を行い、さらには産学連携による新規商品開発にも取り組んでおります。
(2)石油化学事業
丸善石油化学㈱は、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品等、既存事業の強化、拡大及び新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。エチレンやプロピレンなど、ナフサの熱分解による石油化学製品の生産過程で併産されるアセチレン、C4、C5留分等の未利用留分を原料とし、ビニルエーテル類や、未利用留分の付加価値をさらに高めた製品の開発、量産化に向けたプロセス技術の開発を実行中です。一方、年を追うごとに微細化、高性能化が進む最先端のメモリー、デバイスの生産に使用される半導体レジスト材料、周辺材料などの分野では、ますます高度化、多様化する顧客の要望に応えるために、生産技術、製品評価技術の向上、新規の製品・技術を創出するための研究開発を推進しております。
(3)その他
コスモエンジニアリング㈱はプラント産業分野での経験やノウハウをベースとした技術力を更に強化し、様々な顧客のニーズに的確に応えられるよう、以下の主要4点について研究活動を進めております。
①プラント設計/保全関連技術では3Dレーザースキャナーによる点群データを活用したプラント設計/保全・プラント更新事業、ロボットを利用した検査、補修技術に関して技術開発しております。デジタル・テクノロジーについても、内製業務のDX化を推進することにより、事業領域の模索を行い、また、保全関連技術としてコスモ石油㈱と触媒交換工事の工期短縮に関する技術開発を進めております。
②再生可能エネルギー関連では風力発電設備建設事業において、顧客ニーズに応えるため建設だけでなく風車検査技術に関する技術開発、また、洋上風力事業においても、同社が貢献できる領域の模索を実施してまいります。また、バイオマス発電プラント建設事業において、既存技術の応用による新規事業開発の技術検討に取り組んでおります。
③環境対応技術では同社が得意とする工業ガスの分離・精製技術の展開につながる排気ガス等からのCO₂回収利用技術や原油スラッジからの油分回収・分離技術についてプロセス調査と技術導入に取り組んでおります。
④物流・ロジスティクス関連では同社の主力製品であるADPACの競争力・汎用性をより強化するため、IoTやビッグデータ活用による物流・ロジスティクスの最適化・効率化について技術開発を進めております。