第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針及び経営戦略

(Vision 2030)

エネルギー変革期において期待されるのは中長期のビジョンであることから、Vision 2030として「未来を変えるエネルギー、社会を支えるエネルギー、新たな価値を創造する。」というスローガンを掲げ、以下の3つの施策に取り組み、ありたい姿の実現を目指してまいります。

 

<Vision 2030及びありたい姿>

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(第7次連結中期経営計画の基本方針)

当社グループは、第6次連結中期経営計画において収益改善施策の着実な実行により稼ぐ力を向上させ、財務体質を大幅に改善させました。

第7次連結中期経営計画は、第6次連結中期経営計画のコンセプトをしっかりと引き継ぎながら、新たなステージへ変革し、企業価値向上をテーマとしてまいります。そのような位置づけを明確にすべく、スローガンを『Oil & New ~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。企業価値向上に向けて、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、企業価値の最大化につなげてまいります。

 

<基本方針>

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(第7次連結中期経営計画 収益計画(2025年度))

Oil事業における構造改善に加え、New事業の収益拡大により1,400億円(2022年度業績予想値、第7次連結中期経営計画公表時点)から250億円の増益を見込んでおり、在庫影響を除く経常利益は2025年度において1,650億円を目指しています。

 

<収益計画>

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(第7次連結中期経営計画 資本政策)

株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行していくことで、企業価値の最大化を目指してまいります。また、株主の皆様への利益還元につきましては、資本政策を三位一体で実現していくなかで、最大限拡大していきます。

 

<資本政策>

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(第7次連結中期経営計画 収益改善の取組)

石油事業においては製油所稼働の更なる改善、石油開発事業においてはヘイル油田の増産等を進めてまいります。加えて、New領域では国内初の大規模生産となるSAF生産開始等、連結中期経営計画における施策を着実に実行しております。

 

<施策の進捗>

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(第7次連結中期経営計画 経営基盤の変革)

HRX(Human Resources Transformation)、DX(Digital Transformation)、GX(Green Transformation)を中心とした経営基盤の変革に取り組んでまいります。KPIとしてエンゲージメント指数の改善、人材育成投資の強化、データ活用コア人材の育成、GHG排出量削減を掲げています。

 

<経営基盤の変革>

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(第7次連結中期経営計画 経営目標(2025年度))

第7次連結中期経営計画は企業価値向上を目指す新たなステージと位置づけています。収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大をしっかり実現し、ステークホルダーの皆様にご評価いただけますよう、努めてまいります。

 

<経営目標(2025年度)>

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《当事業年度における各事業セグメントの重点施策》

(石油事業)

石油事業においては、2013年度の坂出製油所閉鎖に加え、2019年度より開始したキグナス石油㈱への燃料油供給により、当社グループは生産数量が販売数量を下回るショートポジションを確立し、製油所の高稼働を維持しております。

更なる稼働率向上のため、APM(注1)導入範囲の拡大やデジタルツイン(注2)構築に向けたVRデータ整備等DX強化を推進しました。

 

(注1)Asset Performance Managementの略。グローバルスタンダードの保全・設備信頼性業務プロセスをシステムに記憶させ、保全のビッグデータを効率的かつ効果的に管理し、網羅性・予見性・管理性を高めることができる。

(注2)現実の製油所がデジタルの仮想空間で再現され、必要とする製油所設備の情報(運転データ、補修履歴、機器スペック等)をすぐに参照できる状態を作り出すこと。

 

カーライフ事業につきましては、デジタル化への対応として、2019年に開発したカーライフスクエアアプリが、2025年4月時点で累計900万ダウンロードを突破し、アプリを利用した給油回数は累計2億9千万回を超える等、多くのお客様にご利用いただいております。お客様とのつながり強化を目的として、アプリ上で見積りから決済まで完了できるコミット車検のほか、燃料油・カーケア商品のお得なクーポンの提供やお勧めの給油タイミングのお知らせ等、様々なサービスを提供しております。カーライフスクエアは2025年4月21日にコスモの公式アプリとして全面リニューアルしました。各種サービスをホーム画面に集約し、より直感的で使いやすいデザインに刷新したことに加え、コミっと車検の決済手段としてPayPay、d払い、楽天ペイが新たに追加される等、機能面も大幅に進化しました。アプリやコスモ・ザ・カード会員のデータを用いて、お客様の属性に合わせた情報配信を自動で行う等、新規顧客の獲得及び既存顧客の定着の施策を実施しており、引き続き異業種パートナーの持つデータも組み合わせ、販売促進に取り組んでまいります。

 

 

(石油化学事業)

石油化学事業は、丸善石油化学㈱において基礎化学品分野では高稼働・高効率操業の実現、環境に左右されにくい機能化学品分野では半導体レジスト用樹脂等の生産拡大を目指しております。

韓国のHD Hyundai Oilbank Co., Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHD Hyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.につきましては、2009年に設立され、パラキシレンを中心に一定の収益を上げてきましたが、近年は中国を中心とした設備増強や需要減速の影響により、パラキシレン市況の悪化が続き、事業環境が大幅に悪化しておりました。今後もパラキシレン市況の低迷が継続する見通しであることから、HD Hyundai Cosmo Petrochemical Co., Ltd.の全株式をHD Hyundai Oilbank Co., Ltd.に譲渡し、パラキシレン製造事業から撤退いたしました。

また、エチレン生産体制に関しましては中国での大型装置の新設・増強による世界的な供給過剰及び国内におけるエチレン需要の減少から厳しいマーケット環境が続いていること等から、丸善石油化学㈱は2026年度を目途に自社エチレン製造装置を停止し、丸善石油化学㈱と住友化学㈱の合弁会社である京葉エチレン㈱に生産を集約することを住友化学㈱と合意しました。千葉地区での生産体制最適化を図ることで装置稼働率と競争力を更に高め、加えてカーボンネットゼロ実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)への対応も図ってまいります。

 

(石油開発事業)

石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度以降、想定よりも油層の圧力低下が見られたため、生産を一部抑制しておりました。その後、水攻法により油層圧力の回復傾向が認められ、2024年12月末より生産抑制実施以前の水準での生産を再開いたしました。2025年4月現在も順調に生産を継続しております。今後、油層圧回復の施策を実行し、生産量の回復・最大化を目指してまいります。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田)につきましても、安定した生産を継続しました。

また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。脱化石燃料の流れの中でも、必要とされるエネルギーを継続して供給することは当社グループの責任であると考えており、今後石油需要の減退が進行していく過程でも、その責任を果たすべく本鉱区を取得しております。本鉱区は、豊富な石油・天然ガスの資源量が賦存するだけでなく、単位数量あたり操業費がその他の地域と比べて低いとされるアラビア湾の浅海に位置し、かつ商業生産に至った場合には隣接するアブダビ石油㈱が保有する油田施設を共同で活用できるため、開発・操業コストの大幅な低減が期待されます。今後も、引き続き本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査すべく、探鉱作業を実施してまいります。

 

(再生可能エネルギー事業)

再生可能エネルギー事業では風力発電事業を中心にグリーン電力サプライチェーンの構築に取り組んでおります。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業であり、国内業界シェアは約5%(2024年12月末時点)となります。

陸上風力に関しては、順調な稼働を継続しており、またノンファーム型接続の開始等により新規サイトの開発も着実に進めています。2025年3月には新岩屋ウィンドパーク(青森県)の運転を開始しました。陸上風力では運転中の風力サイトに建設中、開発中のサイトを合わせると874MWとなりました。2030年度には約900MWの規模を目指しております。

洋上風力に関しては、世界的な脱炭素の流れを受けて大規模なグリーン電源に対する期待は高まっており、当社としては、しっかりと収益性を確保した上で、プロジェクトを進めてまいります。2030年には陸上、洋上を合わせて1,500MW超の設備容量を目指します。

 

(2)経営環境

当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあって、景気は緩やかに回復しております。一方で物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響や、米国の政策動向による影響等が、日本の景気を下押しするリスクとなっております。設備投資、個人消費は持ち直しの動きがみられ、消費者物価は上昇しております。こうしたなかで、石油製品の国内需要は、緩やかに需要減退の傾向がみられます。

 原油価格(ドバイ原油)は、期初1バレル87ドル台から、中東の地政学リスクに対する懸念やOPECプラスの減産緩和延期等の価格上昇要因がありましたが、地政学リスクへの懸念の後退や米中の景気減速懸念等により年末にかけて下落基調で推移しました。その後、中国の景気刺激策への期待や米国のロシアに対する制裁措置等から一時上昇する場面も見られましたが、中東における停戦合意やOPECプラスによる段階的な減産緩和の実施決定、米国関税政策への懸念を背景に再び下落し、当連結会計年度末は75ドル台となりました。

為替相場は、期初1ドル151円台から、日米金利差を背景に7月にかけて161円台まで円安が進みましたが、日銀の追加利上げや米国の利下げ観測等を受け円高に転じ、9月には一時140円台となりました。その後、米国大統領選挙の結果を受け、新政権移行後のインフレ懸念等から米長期金利が上昇し、年末にかけて158円台まで円安に進行しました。年明け以降、米国新政権が関税引き上げを示したことによる景気後退懸念や日銀の利上げ観測を背景に再び円高に推移し、当連結会計年度末は149円台となりました。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

国際社会では、ウクライナや中東情勢等の地政学的リスクが継続し、世界経済は不確実性が高い状態が続いています。米国の政治的変動も世界経済に影響を与えており、今後の政策を注視する必要があります。

これらの外部環境変化を受けて、エネルギーセキュリティの強化が求められており、石油は引き続き重要なエネルギー資源であり、当面は石油製品がエネルギー需要の大きな比率を占めると想定されます。一方で、長期的には再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素社会への取組が進むと予想されます。このようななか、石油事業を中心に収益力を強化しつつ、長期的な方向性を見据え、次の成長に向けて事業ポートフォリオを拡充してまいります。第7次連結中期経営計画においては、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」を基本方針とし、企業価値の向上に取り組んでまいります。

第7次連結中期経営計画を実行する上で、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりとなります。

 

《各事業セグメントにおける課題》

(石油事業(石油精製事業))

石油精製事業においては、製油所デジタルプラント化に向けた取り組み、運転・保全力の向上による更なる稼働率改善等を図ってまいります。また、定期整備の短縮に加えて、トラブルによる計画外停止を削減するためのソフトウェアであるAPMを導入し、予見性、網羅性、管理性を向上させることで、製油所高稼働の維持を推進してまいります。

 

(石油事業(石油販売・カーライフ事業))

石油販売・カーライフ事業においては、当社グループの持つ豊富な顧客データと、異業種パートナーとのデータ連携を組み合わせることで、マーケティングサイエンスによる燃料油販売の高度化を進めてまいります。

 

(石油化学事業)

石油化学事業においては、高稼働・高効率操業の実現、外部環境に左右されにくい化成品及び機能化学品の生産拡大を目指してまいります。

また、機能化学品については、メチルエチルケトン(MEK)等の化成品、需要が増加している半導体レジスト用樹脂の生産拡大を進めてまいります。

 

(石油開発事業)

石油開発事業においては、ヘイル油田や既存油田の生産量最大化、操業コストの最適化により収益構造を強靭化してまいります。また、2021年度に取得した海上探鉱鉱区(Offshore Block 4)においては探鉱作業を行い、本鉱区における石油及び天然ガスの商業生産の可能性を調査しております。

 

(再生可能エネルギー事業)

世界的な脱炭素化の潮流のなか、今後大きな成長が期待される風力発電事業を中心に、引き続き積極的に規模拡大を進めてまいります。陸上風力においては、2025年3月には新岩屋ウィンドパーク(青森県)の運転を開始しております。その他にも、新むつ小川原(青森県)、遠州(静岡県)、あぶくま南(福島県)等の開発を着実に推進することで、2030年において陸上風力の設備容量約900MWの達成を目指しております。

さらに、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、事業環境整備・投資機会拡大が見込まれる洋上風力においては、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指しております。2022年12月に秋田港能代港プロジェクトの商業運転を開始しており、その他にも複数地域において洋上風力プロジェクトの開発を進めております。洋上風力においては競合他社の増加やコストの上昇等、事業環境の厳しさが増していますが、当社グループでは建設、O&M、売電先を含めた全てのサプライチェーンを精査し、徹底的なコスト競争力の強化を図ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「私たちは、地球と人間と社会の調和と共生を図り、無限に広がる未来に向けての持続的発展をめざします。」というグループ理念と、このグループ理念の原点に改めて向き合い整理した当社グループのサステナビリティの基本的な考え方に基づき、8つの最重要マテリアリティを特定しました。第7次連結中期経営計画における重点施策の一つとして、このマテリアリティに取り組むことで、持続的な企業成長と企業価値向上を図るサステナブル経営を推進しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ課題全般について

①ガバナンス

当社グループでは、コスモエネルギーグループ理念及び企業行動指針を実践し職務を適正かつ効率的に執行するため、「内部統制システムに関する基本方針」に基づき、当社及びグループ各社の取締役及び社員の職務執行の体制と、これを支えるためのリスクマネジメント及び内部監査の体制、監査等委員会による監査が実効的に行われることを確保するための体制を整備・運用しています。

当社グループでは、サステナブル経営を推進するための体制として、社長執行役員を議長とするサステナビリティ戦略会議を設置し、当戦略会議において、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する特定・評価、及び第7次連結中期経営計画におけるマテリアリティの活動の実績報告・評価を行い、重要なものを取締役会に報告してまいりました。2024年度はサステナビリティ戦略会議を計6回開催し、19件の議題を討議しました。そのうち9件の議題について取締役会へ審議、付議・報告しました。サステナビリティ戦略会議にて討議された事項は、必要に応じてサステナビリティ連絡会を通じ、グループ各社へ共有しています。加えて、取締役及び執行役員が、サステナブル経営を推進していくにあたり、2022年度よりESG目標への取組に対する評価も役員報酬に反映しています。

2025年度からは、サステナビリティガバナンス体制の見直しを行い、サステナビリティ戦略も含めた執行の決議機能を経営執行会議に集約し、新たに経営執行会議を補佐する機関としてサステナビリティ戦略委員会を設立しました。この組織体制の見直しにより、財務・非財務を一体として経営執行会議で取り扱うことで、サステナブル経営の進化を推進してまいります。

このサステナビリティ戦略委員会の実務機関として、サステナビリティ推進部長を事務局長とするサステナビリティコミッティを必要に応じて開催しています。また、中核事業会社(コスモ石油㈱、コスモ石油マーケティング㈱、コスモエネルギー開発㈱)及び準中核事業会社(丸善石油化学㈱)に、それぞれの機能に応じた委員会を設置し、当社のサステナビリティ戦略委員会と連携をとることによりグループ全体の統制を図っています。

 

サステナビリティ推進のガバナンス体制図

 

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②戦略(マテリアリティの特定)

2023年4月の第7次連結中期経営計画のスタートに合わせ、当社グループは目指すべき2050年の社会の実現に向け、社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値及び業績に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を見直し、以下の8課題を特定しました。

 

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最重要マテリアリティは、持続的な価値創造のためのマテリアリティである「気候変動対策」「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」「収益事業の構造改革」と、事業継続の基盤となるマテリアリティである「安全操業・安定供給」「グループリスクマネジメントの強化」「コンプライアンスと理念・価値観の共有」「人材の活躍推進・健康増進・働きがいの向上」「デジタル変革(DX)」に分類されます。

持続的な価値創造のためのマテリアリティは、連結中期経営計画を社会課題の観点からも推進し、それらを事業継続の基盤となるマテリアリティが支えます。当社グループでは、マテリアリティのあるべき姿の実現に向けたさまざまな取組を実施しています。

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③リスク管理

当社グループは、リスクマネジメントをマテリアリティの一つと位置づけ、事業活動を通じて発生するリスク及び機会を把握の上、適切な管理体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを構築しています。リスク管理の詳細については「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

④指標及び目標

特定した各マテリアリティにおいて、あるべき姿とKPIを定めて進捗管理を行っております。

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2024年度実績

気候変動対策

・GHG排出量(注)が適切に管理されている状態

・2050年カーボンネットゼロ達成に向けて進捗している状態

GHG排出量削減:

2030年度 30%以上

(2013年度比)

24%削減

CO₂排出削減量

(Scope1、2)

(2013年度比)

1,631千t-CO₂削減

CO₂削減貢献量

468千t-CO₂貢献

クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供

・顧客のニーズに合致したクリーンな燃料を開発し、提供できている状態

・国内再生可能エネルギー発電のリーディングカンパニーとなっている状態

・バリューチェーン全体でクリーンな製品を開発し、提供できている状態

・低炭素・脱炭素化に対応した技術・サービスを開発し、提供できている状態

クリーン燃料の供給

・バイオETBE

・SAF

・バイオETBEの供給:310千KL

・廃食用油原料のSAF供給:2025年3月生産開始

・風力発電設備容量

・その他再生可能エネルギー発電設備容量

・風力発電設備容量(当期末時点):320MW

・その他再生可能エネルギー事業化検討:進行中

・次世代原料の供給

・新規事業の研究開発

次世代原料及び新規事業に関する研究開発に取り組み中

収益事業の構造改革

・既存事業で上げた収益を新たな事業に投資することで、脱炭素社会において事業収益を上げている状態

・クリーン技術を中心とした新規事業により企業価値の向上が図られている状態

新規事業(New)への投資額

2024年度はSAF供給事業を中心に投資を実施

 

 

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2024年度実績

人材の活躍推進・健康増進・働きがいの向上

・年齢・性別・国籍・職種・所属・職歴にかかわらず、あらゆる従業員が能力を最大限に発揮できる状態

・多様な意見を取り入れた活発な議論がなされ、意思決定がなされている状態

・過重労働やハラスメントが防止できており、従業員が安心して健康に働ける状態

・従業員が自らの心身の健康管理に進んで取り組み、健康管理・増進に努めている状態

・従業員が事業戦略の実現に向け、自律的に強み、専門性を向上させ、活かしている状態

・従業員が活力高く挑戦し、働きがい・やりがいを持って持続的に成長している状態

・女性管理職比率:

 2025年度 10%以上

・新卒学卒女性採用比率:

 50%以上

・女性管理職比率:7.7%(2025年4月1日現在)

・新卒学卒女性採用比率:51%(2025年4月入社者含)

・ストレスチェックの受検率(ココロの健康)

・特定保健指導実施率(カラダの健康)

・ストレスチェック受検率:98.2%

・特定保健指導実施率の向上に向けた健康への取組を実践中

従業員の育成・研修に対する投資額

研修費用:年間16万円/人

従業員意識調査「仕事のやりがい・誇り」のスコア:60ポイント以上

従業員意識調査スコア:

62ポイント

コンプライアンスと理念・価値観の共有

・法令・社規規範が遵守できている状態

・役員・従業員等がグループ理念、方針、社内規程を認識・遵守できている状態

・企業行動指針・方針が浸透していて、個々が適切な判断ができる状態

コンプライアンス違反件数

重大コンプライアンス違反件数:ゼロ件

従業員意識調査スコア

・コンプライアンス教育:83%以上

・通報窓口の認知度:

 94%以上

・企業行動指針の理解:72%以上

従業員意識調査スコア

・コンプライアンス教育:83%

・通報窓口の認知度:

 92%

・企業行動指針の理解:74%

グループリスクマネジメントの強化

・オペレーショナルリスクに加え、自社にとっての戦略リスク(機会も含む)が識別できており、適切なリスクヘッジ、リスクテイクができている状態

・グループ全体の重大リスクが把握・管理できている状態

・トップリスクのモニタリング

・各社重点取組リスクのモニタリング

・トップリスク11項目を決定の上、対策を立案し実施

・各社重点取組リスクの選定、リスク低減計画・実施評価を実行

 

 

マテリアリティ

あるべき姿

主なKPI

2024年度実績

デジタル変革(DX)

・ビジネス変革を実現すべく、デジタル技術を活用して仕事の進め方を変え、変革に挑戦し続ける企業文化が醸成されている状態

・顧客や従業員に対して、データ利活用を軸とし、社内外の課題を解決するためのソリューションを提供することで、社内外のCX(顧客体験価値)向上が図られている状態

データ活用コア人材の育成:2025年度 900名以上

・データ活用コア人材の育成:980名

・人材創出の目標に向け、座学研修、業務活用及び事例横展開や各部署とのコミュニケーション実施等の取組によりDXへの意識改革を推進中

安全操業・安定供給

・従業員の傷害が防止できている状態

・プラント事故及び製品(品質)事故が防止できている状態

・操業地域や周辺住民の安全を脅かさない操業ができている状態

・災害時や非常時等も含めて、エネルギーが安定的に供給できている状態

・重大労働災害件数

・重大事故件数

・環境影響のある重大事故件数

・災害時・非常時の供給及び販売体制:24時間以内の再開

・重大労働災害件数:2件

・重大事故件数:ゼロ件

・環境影響のある重大事故件数:ゼロ件

・BCP発動:実績なし

 

(注)GHG排出量はScope1、2排出量から、再生可能エネルギー及びバイオ燃料による削減貢献分を控除した数値となります。

 

 

マテリアリティで特定した課題を踏まえ、当社グループにとって重要なサステナビリティ課題として「気候変動への対応」及び「人的資本」の2つについて以下に詳細を示します。

 

(2)気候変動への対応

当社グループは、気候変動の視点をより一層取り入れた経営計画を策定し実行していくことが、地球や社会、そして私たちの持続的な発展に不可欠であるとの認識から、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、2021年5月に「2050年カーボンネットゼロ」宣言を行い、その実現に向けた取組と工程をとりまとめたロードマップを2022年5月に公表いたしました。

このロードマップの策定は、最重要マテリアリティの一つとして特定した「気候変動対策」に対応するものであり、TCFDにおけるシナリオ分析や外部環境・内部環境の分析等を実施し、ロードマップに反映させております。2023年5月には、サプライチェーン全体を含めたロードマップの改定を行い、5つの重点取組テーマを掲げ、取組を推進しています。

第7次連結中期経営計画においては、『Oil & New ~Next Stage~』に基づき、グリーン電力サプライチェーン強化、次世代エネルギー事業の拡大、石油事業の低炭素化を推進することで、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。

 

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ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ戦略のガバナンスに組み込まれています。当社は、サステナビリティ戦略会議(2025年度よりサステナビリティ戦略委員会及び経営執行会議に変更、以下同様)において、気候変動関連の課題を含む重要な業務や方針に関する事項の審議を行っています。

気候変動に関する議題として、気候変動シナリオ分析による定量的な財務的影響の試算結果について、財務的影響リスクの定量的な情報開示やGX推進戦略への対応等の審議及び決定を行いました。また、グループ全体の事業活動から生じる環境負荷を最小化させる環境保全活動(リスク低減施策)を実施しています。

サステナビリティ戦略会議において審議及び決定された内容は、構成員が担当する部署へ周知するとともに、事務局がサステナビリティ連絡会にて、グループ会社に連絡・報告しています。

2050年カーボンネットゼロに向けたロードマップについては、GHG排出削減に関する進捗をサステナビリティ戦略会議において報告・討議した後、取締役会において決議・報告を行っています。

 

 

②戦略

(短期・中期・長期の気候変動関連のリスクと機会及びビジネスへの影響)

当社グループは、2050年カーボンネットゼロ社会の実現に向け、社会と当社グループの持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える重要なESG課題(マテリアリティ)を特定しています。持続的な価値創造のためのマテリアリティとして、「気候変動対策」「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」「収益事業の構造改革」を特定し、事業継続のための基盤となるマテリアリティの一つとして、「グループリスクマネジメントの強化」を特定しています。これらのマテリアリティに関する取組の進捗を計る指標として、再生可能エネルギー事業の拡大やGHG排出削減量を設定し、気候変動関連のリスクと機会の視点を取り入れながら、気候変動対策の取組を積極的に推進しています。

事業活動において想定しうる気候変動リスクと機会について、外部環境による事業環境の変化を想定し、

TCFD提言に示されている気候変動リスク項目に基づき重要度を検討しています。

 

当社グループが想定するリスクと機会の主な項目と影響は以下のとおりです。

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対象範囲  石油精製/販売、石油化学、石油開発、電力(再生可能エネルギー等)

発生時期(短・中・長期)の考え方 短期:1年以内、中期:1~5年以内、長期:5年~20年

発生時の影響度  小:10億円未満、中:10億円以上~100億円未満、大:100億円以上

 

(シナリオ分析、戦略のレジリエンス)

当社グループのシナリオ分析では、石油事業、石油化学事業、石油開発事業を対象事業とし、2030年~2050年の事業影響を想定しています。

シナリオとして、4℃(成り行き)、1.5℃(より低炭素移行)の2つの温度帯におけるシナリオについて、一般的に利用されている国際エネルギー機関(IEA)のパラメーターを利用し、1.5℃シナリオでは、NZE、APSシナリオ、4℃シナリオでは、STEPSシナリオを選択し、IEAシナリオに不足する物理リスクの自然災害等の想定は、IPCCのRCP8.5、RCP6.0、RCP2.6や国内外の政府機関等のシナリオを参考として想定いたしました。

4℃シナリオでは、石油事業はグローバルで需要増加が見込まれる一方で、気候変動に起因する異常気象の頻発や激甚化により、風水害による装置や機器の故障を要因とする損失や、保険料の増加をはじめとするコストの増加が発生する恐れがあることが予想されます。

1.5℃シナリオでは、脱炭素化が大きく推進され、カーボンプライシングや排出量取引価格が高額化することから石油需要の減少も加速することが予想され、事業における排出削減やポートフォリオ見直しの必要性が高まることが認識されました。再生可能エネルギー事業において優位性を保つことができれば、売上を増加させる機会を獲得できることも認識され、エネルギー企業の事業ポートフォリオの変換が進み、太陽光、風力、水力、その他の再生可能エネルギー市場の更なる開拓が必要とされています。

このような分析に基づき、第7次連結中期経営計画のグリーン電力サプライチェーン強化、次世代エネルギーの拡大、石油事業の低炭素化の推進施策に反映させ、取組を進めています。

 

(気候変動シナリオによる財務的影響評価)

シナリオ分析に基づき、4℃及び1.5℃シナリオにおける財務的影響評価を行いました。以下の前提条件による試算の結果は次のとおりです。

4℃シナリオについては、4℃の世界観に基づき、自然災害による物理リスク、需要減による移行リスクについて試算し、1.5シナリオについては、1.5℃の世界観に基づき、需要減及び炭素税による移行リスクについて試算を行いました。

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自然災害:(直近5年程度で最大の豪雨災害被害額×集中豪雨の年間発生率)+(石油・石油化学の保険料×集中豪雨の年間発生率)

需要減 :2030年の想定経常利益×需要変動率(IEA STEPS、APSの比率を参照)

炭素価格:2030~2050年のScope1・2想定排出量×炭素価格(IEA NZEを参照)

 

(主要なリスクへの対応策及び機会の取り込み)

今回のシナリオ分析では、主力事業である石油事業・石油化学事業・石油開発事業を対象範囲とし、2030年、2040年、2050年の断面で財務的影響評価を実施しました。

気候変動リスクに対する機会側面として、当社は、Vision 2030において「グリーン電力サプライチェーンの強化」「次世代エネルギー拡大」を掲げています。今後、これらの事業を中心としたNew領域への投資を拡大させる計画としており、機会面のインパクト拡大に取り組む予定です。また、最新のシナリオを参考にした分析や機会の収益見通しを反映させる等の検討を行い、より長期断面での分析やその他事業への横展開、毎年更新される

IEA等のシナリオを参考にした分析の精度向上を実施し、定期的にサステナビリティ戦略会議で報告する等、

TCFD提言に沿った開示と経営戦略を一体化した体制強化に継続的に取り組みます。

 

③リスク管理

当社グループのリスクマネジメントについては「3 事業等のリスク」をご参照ください。

気候変動に関するリスク及び機会については、グループ全社にまたがる重要な経営課題として、サステナビリティ戦略会議において継続的に議論を行う体制を整え、リスクの把握と対応状況の評価等を実施しています。

 

④指標と目標

当社グループでは、気候変動関連リスクを「気候変動対策」のマテリアリティで、機会に関しては「クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供」で管理しています。2024年度の気候変動関連のリスクと機会に関する目標と実績値は、「(1)サステナビリティ課題全般について ④指標及び目標」にある「気候変動対策」の主なKPIと2024年度実績をご参照ください。長期のGHG削減目標としては、「2050年カーボンネットゼロ」の実現に向け、「2030年には自社操業に伴う排出量(Scope1+2)を、削減貢献量(※)を含め30%削減(2013年度比)し、2050年には、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献すべく、Scope3を含めたカーボンネットゼロを目指す」という方針を掲げています。

2024年度の当社グループの事業活動におけるGHG排出量について、Scope1は6,176千t-CO、Scope2は256千t-CO、Scope3は75,032千t-CO(算定対象はカテゴリー1~7,9,11~13,15)でした。

 

2024年度の実績等、2024年度の取組、評価等の詳細については、2025年9月に更新予定の当社ウェブサイトの「サステナビリティサイト」をご参照ください。

https://www.cosmo-energy.co.jp/ja/actions/sustainability.html

 

※ バイオ燃料(ETBE配合ガソリンによるCO削減貢献量)、及び再生可能エネルギー(風力発電の総売電量×各年度の排出係数(全国平均値)によるCO削減貢献量)の合計

 

 

(3)人的資本

 Vision 2030では、石油事業の競争力の更なる強化を図り収益力を高めると同時に、次世代・低炭素エネルギー

事業にも投資し、将来の社会を支える様々なエネルギー需要に応えることを目指しています。人材戦略においても、将来を見据えた新たな事業領域へのチャレンジと既存事業領域の変革を同時に推進するため、自律的で多様な思考を持ち挑戦し続ける人材集団を形成し、社員と会社がともに成長することを目標としています。これまで以上に経営戦略と人材戦略を一体として捉え経営戦略を実現できる強い組織を作り上げるため、人材の価値の最大化を志向し各種施策や投資を行っています。

年齢、性別、国籍、職種、所属及び職歴等に関わらず、あらゆる役員及び従業員が公正に処遇され、能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めています。

 

①戦略

(人材戦略のありたい姿と基本方針)

当社グループは、人材を経営資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことが重要であると認識しています。従業員が健康でエンゲージメント高く活き活きと働ける環境を整えウェルビーイングを実現すること、また従業員の自律的な成長を促し個の能力と組織の力を向上させることで、経営戦略の早期達成を目指します。

グループ企業行動指針においても、人材の活用及び能力の向上に取り組むことを示していますが、その指針の下、基本方針として「人材活用方針」「健康経営方針」を以下のとおり定めています。

 

a人材活用方針

多様な人材の活躍推進

多様な価値観を尊重し、年齢、性別、国籍、職種、所属及び職歴等に関わらず、あらゆる従業員が公正に処遇され、能力を最大限に発揮できる環境づくりを行います。

ジョブ型志向による能力発揮の促進

それぞれの従業員に求められる役割、職責及び目標を明確にし、能力を最大限に発揮した従業員に報います。

自律的成長の促進

当社グループ全体の収益及び成長に「こだわり」を持ち、自ら課題を設定して課題の解決に取り組むことができる従業員を育成していきます。

個の強化の促進

それぞれの従業員に求められる育成課題に対し、業務目標や行動計画を明確にして自律的キャリアの形成や行動変容を促し、その成長を評価していきます。

 

b健康経営方針

取組体制

当社グループは、役員及び従業員並びにコスモ石油健康保険組合と一体となって、役員及び従業員の心身の健康維持・増進に取り組みます。

自律的な健康管理・増進の促進

当社グループは、役員及び従業員が自らの心身の健康管理に進んで取り組み、健康の維持、増進及び傷病の予防に努めることを促進していきます。

健康リスクの予防及び早期対応等の取組

当社グループは、グループ各社の各事業場における業務内容や勤務体系等に合わせて健康リスクを把握し、疾病及びメンタルヘルス不調の予防、早期対応及び重症化予防並びにそれらの再発防止に取り組みます。

職場環境づくり

当社グループは、役員及び従業員の健康を大切にする職場風土を醸成し、健康で働きがいのある環境づくりに取り組みます。

コミュニケーションと教育

当社グループ及びコスモ石油健康保険組合は、本方針をすべての役員及び従業員に周知するとともに、継続的な教育及び啓発活動によって、役員及び従業員が自らの健康を管理し、維持、増進及び傷病の予防に努める健康意識(ヘルスリテラシー)向上に取り組みます。

 

 

(第7次連結中期経営計画期間中の重要テーマ)

第7次連結中期経営計画では、Vision 2030の実現に向けて経営基盤変革の一つの取組としてHRX「人が活き、人を活かす人材戦略の実践」を掲げています。人材戦略のありたい姿を実現するために、「人材の育成・開発」「組織風土」「健康」をメインテーマとして以下の施策に取り組んでいます。

 

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a人材育成強化

育成体系の整備、ジョブ型の人材マネジメントの推進、経営人材の育成及びラインを通じた育成を強化すると

ともに、整備したグループ人材データ基盤をベースに、従業員の自律的キャリア形成意識を促進しています。2024年度は意識変革から行動変容へつなげる年として、従業員各人が自身のキャリアを考える「キャリつく(注)」を通じて社員一人ひとりの行動実践を促しています。また、「経営人材」の育成にも注力し、経営層に求める要件に基づいた人材の選抜と育成を行っています。アセスメント等により各人の強み、弱みを分析したうえで人材カルテを作成し、個別の育成方針に基づいた配置、教育を実施しています。タフアサインによる実務経験と、役員によるメンタリングや社外研修への派遣を通じて個別の育成を行い、経営者として必要なスキルと高い視座の獲得を目指しています。

(注)「キャリつく」:充実したキャリアをつくるために、自分について深く知り・考え、キャリアや健康を学

び・調べて、将来について上司と対話し、自己成長や健康増進に取り組むこと。

bダイバーシティ&インクルージョン

勤務地限定制度、テレワーク制度の継続等の制度対応、柔軟な働き方の定着と並行し、従業員の意識改革に注力することで、画一的な価値観・マネジメントスタイルからの転換を図り、多様な価値観・知識・スキルを融合させるよう、取り組んでいます。女性活躍を最重要課題として取り組んでおり、第7次連結中期経営計画では採用にも力を入れ、新卒学卒女性採用比率は50%以上を維持しています。また、2024年度は女性取締役による社内セミナーを開催することで、社員のサポート強化を始めています。エンゲージメント指数は昨年から継続して2025年度目標を達成しました。

c健康経営の推進

健康管理を経営課題として戦略的に捉え、収益・企業価値向上への投資として取組んでいきます。経営陣のコミットメントやラインを通じたフォロー、健康保険組合と協同したコラボヘルス等を進めています。コスモエネルギーグループ23社(26事業所)が集う「健康経営推進連絡会」を開催し、グループ全体で健康経営を推進しています。各社は、個別に健康増進に向けたプランを策定、PDCAを回す運用を本格的に開始しています。継続的な健康施策実施により、「健康経営優良法人2025」に認定され、2019年から7年連続で認定を獲得しています。

dグループ人事基盤の構築

人事システムを刷新し、人材戦略を実行する環境としてCTP(コスモタレントパレット)を導入しています。グループ内の人材情報を可視化することで、従業員のキャリア自律を促すとともに、経営戦略に応じた適所適材を実現します。2024年度は、人材データ基盤を拡充することにより、人事業務の高度化を加速させ、かつグループ人材のスキルを可視化することでグループ横断の適材配置、データに基づく意思決定の実践に取り組んでいます。

 

②指標と目標

第7次連結中期経営計画では、上記の施策によって「個の力の強化」と「社員エンゲージメントの向上によるパフォーマンスの最大化」を図ることで企業価値の向上を目指しています。それら人材戦略の実行度を確認する指標として目標値を設定しています。なお、人的資本のリスクと機会に関する目標と実績値は、「(1)サステナビリティ課題全般について ④指標及び目標」に記載されております「人材の活躍推進・健康増進・働きがいの向上」をご参照ください。

非財務指標

2025年度目標

2024年度実績

従業員一人あたり教育投資 (注)1、3

18万円

16万円

エンゲージメント指数   (注)2、3

60ポイント

62ポイント

(注)1 当社及び中核事業会社(コスモ石油㈱、コスモ石油マーケティング㈱、コスモエネルギー開発㈱)を中心とした、コスモ石油㈱の従業員及びコスモ石油㈱からの出向者を対象としています。

2 従業員意識調査における「仕事のやりがい・誇り」に関する3項目のプラス回答者の割合を指し、当社及び中核事業会社に在籍する従業員のみを対象としています。

3 当社グループの各社において「① 戦略」において記載した方針に基づく取組が行われているものの、各社の業種及び業態によりKPI指標が異なり、各社が一律の目標設定を行っておらず、当社の連結グループ全体に係る指標及び目標については記載が困難です。そのため、対象の範囲は人事関連制度が同一であることから上記のとおりとしております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、リスクマネジメントをマテリアリティの一つと位置づけ、事業活動を通じて発生するリスクを把握の上、適切な管理体制を整備し、計画・実践・評価・是正措置のサイクルを構築しています。当社グループのマテリアリティについては「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般について ④指標及び目標」をご参照ください。

また、当社グループを取り巻く事業環境の変化や様々なリスクに対し、より適切に対応するため、中長期の視点を持つとともに、リスクを事業機会として捉え、企業価値を最大化しようとする全社的リスクマネジメント (ERM:Enterprise Risk Management)を構築しています。リスク抽出においては、経営によるトップダウン型のアプローチ手法を導入するとともに、リスク管理においてはリスクオーナー設定によるリスクカテゴリ毎のグループ横断的なリスク管理を推進しています。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスク管理体制

当社グループでは、各社の事業を発展的かつ安全に運営するため、グループリスクマネジメント統括部署(サステナビリティ推進部)が各社におけるリスクへの取組状況を集約し、サステナビリティ戦略委員会に報告します。サステナビリティ戦略委員会では、グループ全体に関わるリスクへの対策と進捗を審議し、その結果を経営執行会議、取締役会へ報告するとともに、サステナビリティ連絡会を通じてグループ各社へ展開します。(サステナビリティ戦略委員会については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般について」をご参照ください。)

また、サステナビリティ戦略委員会の実務機能を担う機関として、サステナビリティコミッティを必要に応じて開催しています。

 

(2)リスク管理の運営

経営層へのヒアリングやアンケートによりトップダウンで抽出した中長期的リスク及び各部門・グループ各社がボトムアップで抽出したリスクのうち、影響度や発生可能性が上位かつ、マテリアリティとの関連性や業界特性上の重要性が高いリスクを選定しました。これらのリスクについて、経営層がサステナビリティ戦略会議(2025年度からはサステナビリティ戦略委員会)において議論し、2024年4月に11項目をトップリスクとして決定し、取締役会へ報告しました。2025年度はその11項目を継続しつつ、直近の社内外の環境変化が当社グループに与えうる事象・影響をリスクシナリオに織り込み、対策の強化に取り組んでおります。

トップリスクについては、グループ横断的に統制を図るため、当社グループ全体におけるグループリスクオーナーと、中核事業会社におけるリスクオーナーを設定しています。

グループリスクオーナーであるグループ全体の統括責任部署が、トップリスクへの対策の策定並びにKPIの設定を実施した上でモニタリング・レビューを行い、更なる改善活動に繋げます。中核事業会社のリスクオーナーはグループリスクオーナーとの連携のもと、各社において同様のPDCAサイクルを実践します。

また、トップリスクに含まれない、各部門・グループ各社から抽出したリスクについても、全社的リスクマネジメントの中で管理しております。

 

当社ERMにおけるPDCAサイクル

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(3)トップリスク

トップリスクは、以下に記載のとおりです。トップリスクについては「(2)リスク管理の運営」に記載のとおり決定し、管理します。

No.

トップリスク

カテゴリ

マテリアリティとの関連

想定されるシナリオ・主な対策

脱炭素化の進展による石油需要の減少・事業資産への影響

戦略

(シナリオ)エネルギートランジションの進行等により、想定外のスピードでの石油製品需要減少やGX-ETSや炭素賦課金によるコスト増に伴い、収益性が低下し、当社グループの事業資産が座礁化する

(対策)中長期的な事業環境の変化を適切に捉え、将来の環境を見据えて事業方向性を検討

環境規制・気候変動対策の強化に伴うポートフォリオ・戦略投資への影響

戦略

(シナリオ)エネルギー政策や規制変更等により気候変動対策が急激に強化され、ポートフォリオ転換・戦略投資の判断に影響を及ぼす

(対策)中長期的な事業環境の変化を適切に捉え、将来の環境に応じた適切なポートフォリオ・事業戦略を構築

労働市場の変化による人材確保・育成の困難化

戦略

(シナリオ)労働人口が減少する中で、既存・新規事業の両面で多様性かつ専門性を持った人材の確保・育成が困難になる

(対策)経営人材の確保、事業戦略に合わせた人材の確保

カーボンニュートラル燃料への対応遅れ

戦略

(シナリオ)カーボンニュートラル燃料に関して、上市されている当該燃料の調達が困難となる、あるいは新しい技術開発・導入が遅れる、または失敗することにより、対応が遅れる

(対策)業界・政策動向のモニタリング、技術検討

原料・資材価格の変動

戦略

 

(シナリオ)政情変化や経済変化、各国の政策変更等に伴う原油やLNG等の資源価格のボラティリティ上昇や、世界的な保護主義政策やインフレ(資機材、労務費等の高騰含む)、為替レートの変動により業績が悪化する

(対策)業界・政策動向、産油国動向のモニタリング、調達体制の最適化

自然災害

戦略

(シナリオ)地震や津波等の大規模自然災害により当社設備が壊滅的な被害を受け、早期復旧が困難となり巨額の損失を被る

(対策)当社グループ全体での災害対策の構築

品質不正

業務

(シナリオ)品質管理の不備と自浄作用の欠如により、(出荷後に)品質に関する問題が発覚し、製品回収による損失、ステークホルダーからの信用失墜を招く

(対策)品質監査の実施、品質管理システムの高度化検討

サプライチェーンの中断

業務

(シナリオ)当社グループのサプライチェーンは広範囲に及ぶため、政治情勢の悪化や取引先における様々な要因等により、原油生産拠点での操業停止、船舶輸送、製油所の整備や給油所の運営等において、サプライチェーンの中断、損失が発生する

(対策)運送体制強化、調達体制の最適化

情報セキュリティリスク

業務

(シナリオ)サイバー攻撃により業務停止や情報漏洩、身代金請求等の被害が発生する

顧客情報管理の委託先に対する指導・監査を適切に行うことができず、個人情報が流出し、顧客からの信頼を失う

(対策)ランサムウェアやウイルス対策の強化、個人情報保護等の対策強化

10

生産設備における事故、不具合・故障

業務

(シナリオ)製油所・油田・発電所での事故や不具合・故障により、操業継続が困難となるほか、周辺地域の自然環境・生物に影響を及ぼす等損失が発生し、キャッシュ・フロー創出に影響する

(対策)不具合の未然防止(APM(注1)の構築等)及び減災対策の強化、老朽化対策

11

内部統制不備による不正/不適切行為の発生

財務・

コンプライアンス

(シナリオ)内部統制システムが十分に機能せず、人員・ノウハウやIT技術導入不足等により重大な不備や不正が発生し、行政指導や刑事罰を受けるほか、ステークホルダーからの信用を失う

企業の価値・競争力の源泉となる情報資産が社外へ漏えいすることで、企業価値・競争力が毀損される

(対策)CSA(注2)の実施、グループガバナンス強化、知的財産管理強化

(注1)APM(Asset Performance Management System):グローバルスタンダードの保全・設備信頼性業務プロセスをシステムの活用により、保全のビッグデータを効率的かつ効果的に管理し、網羅性・予見性・管理性を高めることができる。

(注2)CSA(Control Self Assessment - 内部統制自己評価)

 

なお、トップリスクに関連するリスク顕在化の可能性、影響の内容及び対策については次のとおりであります。

 

(トップリスクNo.1 脱炭素化の進展による石油需要の減少・事業資産への影響)

当社グループの売上高のうち主要な部分を占めるガソリン・灯油・軽油は、一般消費者の需要動向の影響を強く受け、ナフサは石油化学業界の需要動向に影響されます。燃料油の国内需要は、少子高齢化や人口減少、自動車ハイブリッド化等による燃費改善や燃料転換等の構造的要因から減少傾向が継続するものと想定しております。また、油価の下落、産油国の政策変更による供給先変更及び国内のみならず海外も含めた経済や政治の動向等で石油および石油化学製品の需要が変動した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループは、需要減少に備え国内販路の確保や収益油種を集中して生産できる体制の構築等に取り組んでおります。また、新たな取組としては、日本初の国産SAF(持続可能な航空燃料。カーボンニュートラル燃料に関するリスクについてはトップリスクNo.4に記載)の大規模生産、グリーン電力販売の拡大、蓄電事業の実証の着実な推進、水素事業の推進に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.2 環境規制・気候変動対策の強化に伴うポートフォリオ・戦略投資への影響)

エネルギー政策や規制変更等により気候変動対策が急激に強化され、ポートフォリオ転換・戦略投資の判断に影響を及ぼす可能性があります。

風力発電事業では、開発段階において各種許認可の取得に加え、風況観測及び環境アセスメントが必要となるため、建設工事着工前から一定程度の先行的な投資が発生します。開発段階で事業化を断念しなければならない事象が発生し、投資額が回収できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、資材、建設費等の高騰、競争の激化等から、収益性が低下する可能性があります。

これらのリスクについてはそれぞれ施策を講じてリスク低減に取り組んでおります。

一般海域における洋上風力発電事業の開発は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(平成30年法律第89号)に則って行われ、具体的な手続、スケジュールは経済産業省及び国土交通省により進められています。当社グループが想定している時期に促進区域に指定されず、事業計画に遅れが出るもしくは中止となった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態及び将来の成長性に影響を及ぼす可能性があります。

上記に対し、当社グループでは事業候補地におけるフィージビリティスタディ等を実施し、リスク低減に取り組んでおります。

なお、当社グループにおける気候変動に関するリスク及び取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」をご参照ください。

 

(トップリスクNo.3 労働市場の変化による人材確保・育成の困難化)

近年、労働人口が減少する中で有能な人材の確保をめぐる競争は激化しています。在籍している社員の流出防止や、経営戦略の推進に必要な人材の確保・育成ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

そのため、当社グループは、事業成長の源泉及び組織活力の維持を担う人材の継続的な確保と育成に努めています。既存・新規事業の両面で多様性かつ専門性を持った人材の確保・育成に対応するため、処遇制度の見直し、自律的キャリア形成強化、人材育成への投資強化、 女性・キャリア採用強化に取り組んでおります。具体的には、自己啓発制度の拡充、経営人材・女性社員・事業部門の育成強化、採用手法の多様化等を実施しています。これら当社グループの取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。

 

(トップリスクNo.4 カーボンニュートラル燃料への対応遅れ)

カーボンニュートラル燃料は、既存の石油製品サプライチェーンの活用が可能であること等から脱炭素社会の実現へ向け期待は大きくなっています。一方で、現状では生産効率やコスト等が課題であり、普及に向けて技術開発に取り組む必要があります。脱炭素社会が到来し、カーボンニュートラル燃料が主流となった環境において、技術開発の失敗等によりカーボンニュートラル燃料を扱えない場合には製品の供給が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、脱炭素社会に向けた様々な技術開発・検討を行っており、リスク低減に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.5 原料・資材価格の変動)

原油価格は、世界経済や産油国の生産方針等の需給動向に加え、中東産油国の周辺地域を中心とした戦争勃発や政情の不安定化、テロ等の不測の事態を含む多様な要因により変動する恐れがあります。石油開発事業における原油価格に関するリスクに加え、当社グループは、原油在庫の価格を総平均法で評価しているため、原油価格の下落局面では、期初の在庫単価と期中に仕入れた在庫単価が平均され売上原価を押し上げることになり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの主要な石油製品コストは、国際市況である原油価格や為替レートを反映した形で決定されるのに対し、販売活動は主に国内で行っており、販売価格は国内市況を反映して決定されます。国際市況と国内市況とのギャップやタイムラグが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(注)。石油化学製品の価格については、国際市況であるナフサ価格や為替レートの変動、世界的な需要動向等の影響を受ける可能性があります。

また、原油価格の下落により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下し、棚卸資産の収益性が低下したと判断する場合があります。この場合、棚卸資産の収益性の低下を反映するために計上した評価損が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは原油及び石油製品の輸出入に係る価格変動のリスクをヘッジすることを目的としてデリバティブ取引を利用しています。具体的な取組については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 金融商品関係」をご参照ください。

世界的な保護主義政策やインフレによって資材調達、輸送等のコストが変動し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループはパートナーとの提携や、在庫の適正化等の施策を講じてリスクの低減に取り組んでおります。

資材価格の変動に関して、洋上風力設備の建設工事着工は入札時からのリードタイムが数年あるため、その間に鋼材や労務費等の上昇が発生した場合、建設費用が増加する可能性があります。また、海外からの資機材搬入の遅延等さまざまな要因により、工事が遅延する可能性があります。建設費増加または工事遅延が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループではパートナーとの提携等により、これらのリスクの低減に努めております。

 

(注)2025年5月13日に公表した2026年3月期通期連結業績予想の経常利益へ与える原油価格変動、為替変動の感応度を測定しております。2025年4月~2026年3月の前提条件は原油価格65ドル/バレル、為替145円/ドルとしており、前提より原油価格+1ドル/バレルあたりの影響額及び為替+1円/ドルあたりの影響額は以下のとおりであります。なお期間中において原油価格、為替に変動なく一定に推移した前提で試算しております。

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(トップリスクNo.6 自然災害)

自然災害の発生時には、当社グループの設備が被害を受け巨額の損失を被るほか、何らかの要因で操業が停止する可能性があります。

そのため、当社グループでは巨大地震等の自然災害を想定し、その影響を最小限に抑えるため、非常用電源設置、耐震改修、BCP(事業継続計画)マニュアル整備等を行っています。2024年9月に南海トラフ巨大地震を想定したBCP訓練を当社、コスモ石油㈱、コスモ石油マーケティング㈱の3社合同で行いました。初動対応から被災地へ向けた石油製品の供給・販売方針策定に重点を置き、災害情報を視覚的に表示するダッシュボードシステム等を活用しオンラインでの情報連携や共有を行う等、より実践的な訓練とし、BCPの実効性や課題を確認しました。さらに2024年11月には、首都直下地震により当社グループの本社機能が麻痺した状態を想定し、臨時危機対策本部をコスモ石油㈱堺製油所及びコスモ石油マーケティング㈱大阪オフィスに設置し、災害対応に関する意思決定の権限を委譲した前提のBCP訓練を実施しました。訓練を通じて抽出されたBCPの体制や訓練運営上の課題に対して、対策を進めております。

 

(トップリスクNo.7 品質不正)

当社グループは、日々製品・サービスの品質管理体制の強化に努めておりますが、(出荷後に)品質に関する問題が発覚し、広域にわたり製品回収を行うことにより多額の損失を被るだけでなく、顧客からの信頼喪失やブランドイメージの低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいて、過去に一部製品における不適正な検査が顕在化した事案を踏まえ、教育の徹底、試験法管理の見直し、監査の強化等の対策を継続実施し、リスク低減に取り組んでおります。

 

(トップリスクNo.8 サプライチェーンの中断)

昨今のウクライナ紛争の長期化、中東地域や東アジア地域の政情変化、欧米及び中国の経済変化に伴う原油価格の急激な変動、テロ等の不測の事態により原油調達が影響を受ける可能性があります。また、原油生産拠点での操業停止のほか、必要物資の確保が困難になる等の要因により、製油所の整備ができず操業停止に至る場合や給油所の運営が中断された場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループにおける必要物資確保のために施策を講じてリスクの低減に取り組んでおります。

なお、サプライチェーンにおける人権課題等の把握が遅れ、リスク発現時にサプライチェーンの変更が求められるほか、中断を招く可能性があります。人権課題に対しては、2021年に策定した人権方針に基づき、人権デューデリジェンス(サプライヤーの人権課題分析、ステークホルダーエンゲージメント、従業員教育の取組)を実施しました。

 

(トップリスクNo.9 情報セキュリティリスク)

サイバー攻撃によって、事業活動の混乱、秘密情報の喪失、個人情報の漏洩等が発生する可能性があり、近年そのリスクは高まっております。個人情報を含む秘密情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクが顕在化した場合には、事業運営に支障をきたす恐れがあるほか、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではランサムウエアへの対応手順の整備、ウイルス対策や個人情報保護等の対策強化を実施しております。さらに、顧客情報を含む機密情報の管理、取り扱いにつきましては、社内体制、社内規程等を整備し、外部への委託先に対して監督管理を実施しております。

 

(トップリスクNo.10 生産設備における事故、不具合・故障)

設備の老朽化や人為的なミスを原因とする事故や労働災害によって、製油所、物流基地及び油槽所等の操業が停止する可能性があります。また、製油所、物流基地及び油槽所等以外でも給油所、タンカー及びローリーでの事故で事業運営に支障をきたす場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事故を未然に防止するために、OMS(注1)の仕組みを強化、千葉製油所・四日市製油所のスーパー認定に続き堺製油所のA認定(注2)を取得しました。加えて、APMの導入範囲拡大やデジタルツイン構築、各種データ連携、VRデータ整備等DX強化に取り組むことで、トラブルの低減及び更なる稼働率の向上を目指しております。

 

(注1)OMS(Operations Management System):「あるべき姿(世界トップレベルの安全安定操業)」と現状のギャップを洗い出し、「規則・マニュアル化」、「教育・訓練」、「定着・実践」、「継続的改善」を繰り返すことで、「あるべき姿」を目指す操業マネジメントシステム。

(注2)A認定:認定高度保安実施者制度。従来のスーパー認定制度に、テクノロジー活用やサイバーセキュリティの要件等が追加された高圧ガス保安法における認定制度。

 

(トップリスクNo.11 内部統制不備による不正/不適切行為の発生)

当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス違反等が発生した場合、ステークホルダーの信頼を失い当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは、法令等の遵守のために財務報告に係る内部統制を含む、有効な内部統制システムの整備、運用及び強化を図っております。内部通報制度については、周知並びに教育の強化を引き続き実施いたしました。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、第7次連結中期経営計画において、スローガンを『Oil & New ~Next Stage~』として、「収益力の確保」「成長に向けたNew領域の拡充」「三位一体の資本政策実現」「経営基盤の変革」の4点を基本方針に、非財務資本の活用による事業戦略の実現と、これによる収益力の向上、資本政策の充実、成長事業の拡大を図り、持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。また、当連結会計年度において、ROE及びPER向上の取組を加速し、堅調な収益を背景に2年連続で連結中期経営計画の目標であるROE10%以上を達成いたしました。

 こうした経営活動の結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は2兆7,999億円(前期比+703億円)、営業利益は1,282億円(前期比△210億円)、経常利益は1,508億円(前期比△108億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は577億円(前期比△244億円)となりました。

 各セグメントの業績を示すと次のとおりであります。

(石油事業)

 石油事業につきましては、売上高は前期並みの2兆5,069億円(前期比+613億円)となりました。一方、原油価格が下落したこと等により、セグメント利益は618億円(前期比△289億円)となりました。なお、在庫評価の影響を除くセグメント利益は926億円(前期比+13億円)となっております。

(石油化学事業)

 石油化学事業につきましては、引き続き製品市況が低迷したこと等により、売上高は3,402億円(前期比△216億円)、セグメント損失は50億円(前期はセグメント損失78億円)となりました。

(石油開発事業)

 石油開発事業につきましては、為替変動の影響等により、売上高は1,346億円(前期比+68億円)、セグメント利益は824億円(前期比+141億円)となりました。

(再生可能エネルギー事業)

 再生可能エネルギー事業につきましては、前期比で風力発電における風況が悪化したこと等により、売上高は133億円(前期比△10億円)、セグメント利益は13億円(前期比△15億円)となりました。

 

 当連結会計年度末の連結財政状態は、総資産は2兆1,566億円となり、前連結会計年度末に比べ560億円減少しております。負債合計は1兆4,491億円となり、前連結会計年度末に比べ361億円減少しております。純資産合計は7,075億円となり、前連結会計年度末に比べ199億円減少しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は349億円となり、前連結会計年度末に比べ706億円減少しております。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金の増加は1,371億円(前期は1,779億円の資金の増加)となり、これは主に、税金等調整前当期純利益を計上したこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金の減少は1,457億円(前期は328億円の資金の減少)となり、これは主に、有形固定資産の取得による支出等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金の減少は690億円(前期は1,042億円の資金の減少)となり、これは主に、自己株式の取得による支出等によるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

石油事業

 

1,624,044

104.6

石油化学事業

 

402,007

89.0

石油開発事業

 

13,308

105.2

合計

2,039,359

101.1

(注)1 自家燃料は除いております。

2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。

3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。

 

b受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

14,634

111.8

13,803

106.3

 

c販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

石油事業

 

2,417,033

103.2

石油化学事業

 

296,960

94.8

石油開発事業

 

43,606

111.4

再生可能エネルギー事業

 

13,158

92.9

その他

 

29,188

131.9

合計

2,799,947

102.6

(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

キグナス石油㈱

363,430

13.3

369,045

13.2

※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。

 なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。

 

 

②経営成績の分析

a売上高

 売上高は、前連結会計年度並みとなり、703億円増加の2兆7,999億円となりました。

 

b売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は、前連結会計年度に比べ832億円増加し、2兆4,931億円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、0.7ポイント増加して、89%となりました。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ82億円増加し、1,786億円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、0.2ポイント増加して、6.4%となりました。

 

c営業利益

 営業利益は、前連結会計年度に比べ210億円減少し、1,282億円となりました。これは主に、原油価格の下落等によるものです。

 

d営業外損益

 営業外損益は、前連結会計年度に比べ101億円改善し、225億円の利益となりました。これは主に、為替差益が59億円増加したこと等によるものです。

 

e特別損益

 特別損益は、前連結会計年度に比べ191億円悪化し、258億円の損失となりました。これは主に、特別損失として事業構造改善費用を169億円計上したこと等によるものです。

 

f親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ244億円減少し、577億円となりました。これは主に、法人税等が前連結会計年度に比べ14億円増加し660億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ70億円減少し13億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、672.78円となりました。

 

 なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(石油事業)

 原油価格が下落したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ289億円減少し、618億円となりました。

 2025年度は、堅調な販売マージンの確保及び製油所トラブル解消等を見込むものの、原油価格が下落すること等により当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。

(石油化学事業)

 引き続き製品市況が低迷したこと等により、セグメント損失は50億円(前連結会計年度はセグメント損失78億円)となりました。

 2025年度は、事業構造改善によるコスト削減により当連結会計年度比で増益となる見通しとなっております。

(石油開発事業)

 為替変動の影響等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ141億円増加し、824億円となりました。

 2025年度は、販売数量の増加を見込むものの原油価格の下落及び為替の円高影響により当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。

(再生可能エネルギー事業)

 風力発電における風況が悪化したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ15億円減少し、13億円となりました。

 2025年度は、設備容量拡大により当連結会計年度比で増益となる見通しとなっております。

 

 

③資本の財源及び資金の流動性に関する分析

a資金需要

 当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。

 運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーション設備や販売促進のためのシステム投資、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。

 

b財務政策

 2023年4月より開始された第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指しております。財務健全性においては、資産に内在するリスク、求められる資本効率、柔軟な資金調達といった観点を総合的に精査し、自己資本並びにネットD/Eレシオの目標値を設定しております。

 当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、短期並びに長期社債による直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な資金調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を行っております。また、持株会社である当社が一括して資金を調達し、グループ会社に融通するグループファイナンスを実行しており、資金の集中化並びに効率化を行っております。

 当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)並びに格付け投資情報センター(R&I)から格付を取得しております。当連結会計年度末において当社の格付は、JCR、R&IともにA-(安定的)となります。

(特定融資枠契約)

 平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,201億円です。

 

c株主還元方針

 当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。

 第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率のいずれも欠けることなく、三位一体で実行していくことを資本政策として掲げ、企業価値の最大化を図っており、株主還元方針としましては、総還元性向60%以上(3ヵ年累計、在庫影響を除く純利益に対する比率)、配当1株当たり330円以上としております。

 また、財務健全性が目標値(自己資本6,000億円以上、ネットD/Eレシオ1.0倍)に到達した場合は原則として追加の還元を実施いたします。

 当連結会計年度は、堅調な収益をベースに配当の引き上げを行い、前連結会計年度から30円増配の1株当たり330円の配当を行うとともに、下限配当についても同額の330円に引き上げました。加えて、取得総額180億円の自己株式の取得を実施し、当連結会計年度は単年で総還元性向58%(在庫影響を除く純利益に対する比率)となりました。

 引き続き企業価値向上を目指し、収益環境や株価等を見極めながら、還元を実施してまいります。

なお、当連結会計年度の1株当たり配当額330円のうち、期末配当額180円については、2025年6月26日開催予定の定時株主総会の決議事項になっております。

 

 

d財政状態

 当社グループは、自己資本やネットD/Eレシオといった財務健全性の向上を重要な課題の一つとして認識しております。財務健全性に加え、株主還元、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指してまいります。

 

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1兆791億円となり、前連結会計年度末に比べ436億円減少しております。これは主に、売上債権が464億円減少したこと等によるものです。固定資産は1兆774億円となり、前連結会計年度末に比べ124億円減少しております。これは主に、投資有価証券が326億円減少したこと等によるものです。

 この結果、総資産は2兆1,566億円となり、前連結会計年度末に比べ560億円減少しております。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は9,455億円となり、前連結会計年度末に比べ621億円減少しております。これは主に、未払揮発油税が295億円減少したこと等によるものです。固定負債は5,037億円となり、前連結会計年度末に比べ262億円増加しております。これは主に、社債が162億円増加したこと等によるものです。

 この結果、負債合計は1兆4,491億円となり、前連結会計年度末に比べ361億円減少しております。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は7,075億円となり、前連結会計年度末に比べ199億円減少しております。これは主に、自己株式を371億円取得したこと等によるものです。

 この結果、自己資本比率は27.1%(前連結会計年度末は27.2%)となりました。

 

eキャッシュ・フロー

 当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したこと等により1,371億円の増加となりました。投資活動は有形固定資産の取得による支出等により1,457億円の減少となりました。財務活動は自己株式の取得による支出等により690億円の減少となりました。

 以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ706億円減少の349億円となりました。

 なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率

19.0%

23.5%

24.9%

27.2%

27.1%

時価ベースの自己資本比率

12.9%

11.4%

17.7%

30.4%

24.5%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

3.6年

5.4年

84.5年

3.5年

4.5年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

23.1倍

16.7倍

1.3倍

38.3倍

27.6倍

(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。

4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

5 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 会計方針の変更」に記載のとおり、当連結会計年度における会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度のキャッシュ・フロー指標については遡及適用後の数値となっております。

 

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中期的な経営の方向性を2025年度が最終年度となる第7次連結中期経営計画にて目標値として定めております。当該連結中期経営計画初年度の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。

 

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 株主還元・財務健全性・資本効率等、多くの指標で2025年度の目標を達成しております。その他の指標につきましても順調に推移しておりますが、引き続き全指標において目標を達成すべく各種施策を実行してまいります。なお、当連結会計年度の1株当たり配当額330円のうち、期末配当額180円については、2025年6月26日開催予定の定時株主総会の決議事項になっております。

 

5【重要な契約等】

1.岩谷産業㈱との資本業務提携契約

 当社は、2024年4月23日開催の取締役会決議に基づき、同日付で、岩谷産業㈱と資本業務提携契約(2024年4月30日付で締結した当該契約に関する変更覚書を含め、以下「本資本業務提携契約」という。)を以下のとおり締結いたしました。

 

(1)本資本業務提携契約の相手方の氏名又は名称及び住所

 商号:岩谷産業株式会社

 本店の所在地:大阪市中央区本町3丁目6番4号

 

(2)合意の内容

 本資本業務提携契約には、当社の取締役の候補者を指名する権利を株主が有する旨の合意を含みます。具体的には、岩谷産業㈱は、岩谷産業㈱が指定する者1名を当社の取締役に選任することを求めることができ、当社は、かかる者を含めた取締役候補者について検討を行い、法令及び当社定款に従い、取締役選任議案を当社の定時株主総会に付議するものとするとされております。

 

(3)当該合意の目的及び取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程

 当社と岩谷産業㈱は、2022年3月8日に、水素事業での協業検討に関する基本合意書を締結し、2023年2月には、水素ステーション事業協業を目的として、岩谷コスモ水素ステーション合同会社を、2023年11月には、水素関連プロジェクトのエンジニアリング事業協業を目的として、コスモ岩谷水素エンジニアリング合同会社を設立する等、水素分野において、協業関係を強化してきました。

 2024年3月27日に、岩谷産業㈱が当社株式を追加で取得したことに伴い、両社が有する経営資源やノウハウを結集しながら、より一層の連携を深めていくことが、新たなシナジーを創出し、当社の企業価値向上に資すると判断し、当社は、2024年4月23日開催の取締役会にて、当該合意内容を含む本資本業務提携契約を締結することを決議いたしました。

 

(4)当該合意が当該提出会社の企業統治に及ぼす影響

 当該合意によるガバナンスへの影響は軽微と考えています。

 

2.財務上の特約が付された金銭消費貸借契約

 当社の連結子会社であるコスモ石油㈱は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結いたしました。

 

(1)当該連結子会社の名称、住所及び代表者の氏名

① 名称      コスモ石油株式会社

② 住所      東京都港区芝浦一丁目1番1号

③ 代表者の氏名  鈴木 康公

 

(2)本契約の締結をした年月日

2024年4月30日

 

(3)本契約の相手方の属性

独立行政法人

 

(4)本契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容

① 債務の期末残高         100,815百万円

② 弁済期限            2025年4月30日

③ 当該債務に付された担保の内容  該当事項はありません。

 

(5)財務上の特約の内容

 本契約には以下の財務制限条項が付されており、これに抵触し、貸付人から請求があった場合には期限の利益を喪失します。

① 直近決算が著しい債務超過となったとき

② 経常損益又は税引後当期損益が3期連続の赤字となったとき

3.その他の重要な契約

(1)1999年10月12日、コスモ石油㈱と日石三菱㈱(現・ENEOS㈱)との間で、原油調達・精製・物流及び潤滑油の各分野に関して、業務提携に関する基本協定を締結しました。

 

(2)2011年2月3日、アブダビ首長国最高石油評議会と連結子会社のアブダビ石油㈱は操業している3油田の利権の更新と新鉱区の追加取得について、新たな利権協定を締結しました。アブダビ石油㈱は、同利権地域におけるアブダビ海域において石油の採掘・貯蔵・輸送及び販売を行っております。

(注)本協定は、前協定(1967年12月6日締結及び1979年4月28日締結)が期限満了となった2012年12月6日より

発効しました。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、連結子会社のコスモ石油㈱、コスモ石油ルブリカンツ㈱、丸善石油化学㈱及びコスモエンジニアリング㈱で実施しております。コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒等の石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。コスモ石油ルブリカンツ㈱では、環境対応潤滑油商品化のために技術開発に取り組むとともに、消費者のニーズに応える潤滑剤及び放熱材料の商品開発等を行っております。丸善石油化学㈱では、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品等、既存事業の強化、拡大に向けた研究開発に取り組むと共に、カーボンニュートラルや新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。コスモエンジニアリング㈱では、プラント保全、次世代エネルギー、カーボンニュートラル対応及びデジタルトランスフォーメーション等の各種技術について、時代のニーズに応える研究活動を行っております。

 この結果、当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は5,243百万円であります。

 以下に主要な研究概要をセグメント別に記載いたします。

 

(1)石油事業

コスモ石油㈱では、石油製品や石油精製プロセス・触媒等の石油精製分野の競争力強化に関する研究を実施するとともに石油化学分野、石油開発分野、コーポレート研究分野において研究開発を実施しております。

石油精製分野では、長年培った触媒の調製・運転管理技術を活かして、製油所の高効率稼動や精製コストの削減等に取り組んでおります。また、2021年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業に採択された「国産廃食用油を原料とするバイオジェット燃料製造サプライチェーンモデルの構築」において、廃食用油を原料としたSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)サプライチェーンモデルを実証・構築し、2025年度から国内初となる大規模SAF生産を目指しております。さらに将来に向けて、その他原料を用いたSAFの調査等も進めております。石油化学分野では、コスモ松山石油㈱、丸善石油化学㈱との連携により、石油化学工場における未利用留分の燃料利用や石油留分の高付加価値化(石油化学製品化)、それぞれが持つ技術や資産の融合による新製品開発等、シナジー創出や事業拡大に貢献する研究開発に取り組んでおります。石油開発分野では、2016年度より原油タンク底部に蓄積する原油スラッジの削減技術に関する共同研究を独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と実施しており、さらなる技術改良及び技術ニーズ調査を進めながら商業化の可能性を確認してまいります。コーポレート研究分野では、「2050年カーボンネットゼロ宣言」の実現に向けた研究開発に着手しており、2020年度よりNEDO事業「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」に参画し、廃プラスチックを高い転換率で石油化学原料に転換するプロセス技術の開発に取り組んでおります。また、2023年2月よりNEDO事業「再エネ由来電力を利用した液体合成燃料プロセスの研究開発」にJPEC(一般財団法人石油エネルギー技術センター)からの再委託として参画し、液体合成燃料の燃料利用技術における規格適合化処理技術を検討しております。また、戸田工業㈱とカーボンニュートラル実現に向けた環境対応技術の実用化のため、2023年1月に共同開発について基本合意書を締結し、戸田工業㈱が保有するメタン直接改質法による低炭素水素製造技術やCO₂分離回収技術に関する環境対応技術の適用に向けて、コスモ石油㈱中央研究所にて評価、検討を実施いたします。さらに、2023年4月より国立大学法人京都大学とカーボンネットゼロに向け新時代のポートフォリオを育てていくための新たな事業創出を目指し、次世代エネルギーの安定供給技術等に関する共同研究の可能性を検討することを目的に、包括連携提携書を締結して連携を行っております。2023年度は溶融塩電解技術に着目し、京都大学と溶融塩電解によるCO₂の炭素固定化技術に関して共同研究を進めるとともに、製造プロセス開発として溶融塩電気化学プロセスに取り組む、アイ’エムセップ㈱と連携し、技術の実用化に向けた検討を進めております。

コスモ石油ルブリカンツ㈱では、環境対応を最重要テーマとして、脱炭素・カーボンニュートラル、自動車や産業機械の電動化、デジタル化といった事業環境の変化に対応する最先端の商品開発に取り組んでおります。また、自社開発技術の更なる発展による要素技術開発・商品開発も並行して実施しております。

車両用潤滑油・工業用潤滑油・グリース分野において、バイオマス原料を使用した省燃費エンジン油やトラクター油、作動油等の各種潤滑油、並びに長寿命ガスエンジン油、電動車用油剤、風力発電用ギヤー油等の開発に取り組んでおります。また、各国の化学物質規制や複雑化するサプライチェーンに対応した製品開発、省エネルギー・省資源技術の確立のための研究開発も進めております。

デジタル化に対応する製品として、電子部品の放熱材料(製品名:「コスモサーマルグリース」、「コスモサーマルギャップフィラー」)の高付加価値製品の開発を行っております。さらには磁気粘性流体(MR流体)の商品化研究や産学連携による新規商品開発にも取り組んでおります。

 

(2)石油化学事業

丸善石油化学㈱は、石油化学製品、溶剤や半導体レジスト周辺材料等の機能化学品、既存事業の強化、拡大及びカーボンニュートラル、新規事業化に資する製品・技術開発を目指して研究活動を行っております。エチレンやプロピレン等、ナフサの熱分解による石油化学製品の生産過程で併産されるアセチレン、C4、C5留分等の未利用留分を原料とし、ビニルエーテル類や、未利用留分の付加価値をさらに高めた製品の開発、量産化に向けたプロセス技術の開発を実行中です。また、需要が高まっている製品の増産に向けたプロセス設計検討も進めております。一方、年を追うごとに微細化、高性能化が進む最先端のロジック、メモリー等の各種デバイスの生産に使用される半導体レジスト材料、周辺材料等の分野では、ますます高度化、多様化する顧客の要望に応えるために、生産技術、製品評価技術の向上、DX技術の活用等、新規の製品・技術を創出するための研究開発を推進しております。

また、カーボンニュートラル、新規事業に繋がる製品・技術開発におきましては、産学連携の強化による社会的価値の創出を目指して開発に取り組んでおります。

 

(3)その他

コスモエンジニアリング㈱は、プラント産業分野での経験やノウハウをベースとした技術力をさらに強化して、様々な顧客のニーズに的確に応えられるよう、以下の主要3点について研究活動を進めております。

①脱炭素社会対応:CO₂回収を含めたブルー水素製造設備やアンモニア供給関連設備建設に向けた技術開発、またバイオ燃料等のCCUS技術開発を進めております。

②デジタル技術活用:内製業務のデジタルトランスフォーメーションを進めております。

③プラント設計/保全関連技術:工事管理システム、スマート設計ツール、3Dモデリングを活用したプラント設計/保全・プラント更新事業、ロボットを利用した検査、補修技術を開発しております。