文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)が判断したものであります。
当社グループは、企業理念として
「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します。」
を掲げ、以下の行動方針のもと、事業を展開しております。
・安定した事業成長を実現します
・ユーザーに適したソリューションを提供します
・応援して頂ける企業を目指します
・積極的(Positively)に変化(Change)を求め、革新(Innovate)します
・全てのステークホルダーに満足して頂ける企業を目指します
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、収益の「質」向上の視点での「EBITDAマージン」、資本効率性の視点での「ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)」、市場評価の視点での「PBR(株価純資産倍率)」を重視いたします。
中期経営計画「PCI-VISION2027」では、資本コストを意識した経営として、今後継続して資本コストを上回る資本収益性の達成を重視し、中計経営計画最終年度においてROE15%以上を目標としております。また株価を意識した経営として、PBR2倍以上を目標としております。PBRは「ROE×PER(株価収益率)」により算出されます。ROE向上のために、収益の「質」向上への取組み及び適切な資本政策・株主還元を実施いたします。PERについては、株主・投資家に当社の事業内容や成長性を理解していただくようIR活動を充実させることで改善を図ってまいります。
(3) 経営環境
当社グループは、純粋持株会社である当社を中心に、ソフトウェア開発、産業用PC設計・製造、自社ソリューションの開発・保守、半導体の設計・テスト等の情報サービス事業を営む連結子会社6社(うち、孫会社3社)を傘下に構成されております。各事業会社それぞれの文化と独自性を尊重しながら、グループ全体のシナジー効果を発揮し、市場環境の変化や多様化する社会ニーズに機動的かつ柔軟に対応することで、更なる企業価値の向上を図っております。
国内においては雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により景気は緩やかに回復しておりますが、米国の通商政策等の影響による不透明感がみられ、景気の下振れリスクが高まっています。加えて、物価上昇の継続が消費者マインド等を通じて個人消費に与える影響や金融資本市場の変動リスクにも注視が必要と認識しております。海外経済においても、依然として地政学的リスクやインフレ鎮静化に向けた各国の金融政策の動向等、不確実な要素が多く存在します。
当社グループが属する国内の情報サービス産業におきましては、AIやIoT等の先端技術の急速な進化を受けて社会全体で進展しているデジタル化やDXの推進加速、自動車業界におけるSDV化の進展をはじめとしたソフトウェア資産への投資の増加等を背景にIT投資需要は堅調に推移するものと見込んでおります。また、深刻化するIT人材不足への対応も、引き続き企業のIT投資意欲を促すものと考えられます。
イ.技術力
・組込みソフトウェア開発、組込PCの設計・製造・保守、半導体の設計・テスト、AI画像解析をはじめとする豊富な実績のある技術
ロ.リレーションシップ
・自動車関連業界や半導体業界をはじめとした強固な顧客基盤
・プラットフォーマー、パッケージベンダー、ソフトウェアハウス、エレクトロニクス商社等との幅広いパートナーネットワーク
ハ.迅速性・高付加価値性
・クラウドプラットフォームを活用した迅速なシステムインテグレーション
・AI画像解析技術やクラウド技術を応用した自社商材
(4) 中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、今後の対処すべき課題として「PCIブランドの確立」・「事業ポートフォリオの展開」・「資本効率の改善」等を認識しております。
(長期ビジョンステートメント)
「ITの可能性を探求し続け、安心・安全・豊かな社会(=サステナブルな社会)の実現に貢献するとともに常に変化に対応し成長する企業でありたい」
当社グループは、2032年に向けて地球環境や社会が大きく変化する中で、グループの総力を結集し、ITの力で安心・安全・豊かな社会の実現を目指します。
(ありたい姿)
・企業ブランドの確立
当社グループは、今後の事業展開において、モビリティ関連のソフトウェア開発、クラウドサービスを組み合わせたサービスインテグレーション、環境に配慮したハードウェアの開発という3つの領域に注力します。また、人的資本経営の一環として人財教育にもさらに力を入れてまいります。これらの注力領域で高い評価を得られ、「モビリティのPCI」「教育のPCI」等と言われるように「ブランド」を高めていくことが当社グループの目指すところです。
・総合技術コンサルティング企業への進化
様々な情報技術(ハードウェア、ソフトウェア、半導体、先進技術)に精通した「総合技術コンサルティング企業」として、その技術を必要とする産業セクターへのリレーションシップマネジメントを強化し、高い価値のITソリューションを提供することで、社会をワクワクさせる企業集団となることが当社グループのありたい姿です。
(経営目標)
・PX2032においては500~700億円の売上高を目指すことにより、企業ブランドの確立を目指します
・「質」を伴った成長を実現するためROEは15%程度を持続的に維持する経営を行います
当社グループは、2015年8月の上場後、堅調なオーガニックグロースを実現するとともにM&Aによる企業規模の拡大を図ってまいりました。売上高については、これまで順調に推移していますが、利益率や資本効率性については十分とは言い難い状況であると認識しております。本中期経営計画期間は、第二の創業期のスタート期間と位置付け、更なる成長のための「基盤作り」に重点を置き、収益の「質」向上に向けた積極的な戦略投資を実行してまいります。
なお、本中期経営計画を進めるにあたり、2024年9月期より事業セグメントを変更し、以下の3つを設定しております。
エンジニアリング事業 :幅広い産業分野における顧客企業の要求・仕様を実現する情報技術サービス
プロダクト/デバイス事業:特定産業でのハードウェア製品・デバイスの設計・開発・販売
ICTソリューション事業:幅広い分野でのICTを活用したコンサルティング・サービス等による課題解決
(基本コンセプト)
・パーパス経営の実践
・高収益体質へのシフト
・人的資本経営の高度化
・サステナブル経営の深化
(基本戦略)
イ.競争力の強化とコストマネジメントの徹底
IT業界は、技術や事業が短期に変動する環境にあります。この中で成長を目指すには先を見据えた技術力の確保と事業の目利きが必要になります。この本中期経営計画期間では、技術はもとよりお客様とのリレーションを深化させ、当社が強みを持つ産業分野や技術分野をより強化し、お客様から「この分野・技術はPCIだよね」との評価を頂けることを目指し、競争力を高めてまいります。
また、DXによる省力化や効率化の推進、調達業務の最適化、間接機能のスリム化による販管費の削減等、コストマネジメントの徹底を図ります。
・エンジニアリング事業(安定コア事業)
当社の収益の屋台骨であるため持続的な利益の創出を第一に考え、市場変化への対応力並びにそれを踏まえた技術対応力を磨き、“ゆらぎ”の少ない堅実な成長を目指す
<競争力強化に向けた取組み項目>
・事業分野の選択と集中を図り、収益力の高い分野への人財シフト
・未来につながる技術力の確保(育成並びに先端的なスタートアップ企業との協業)
・集中する事業・技術分野への技術者の知識・スキルの再構成
・プロダクト/デバイス事業(安定コア事業)
技術力を磨き続けることによって医療機器メーカーや半導体メーカーをはじめとする優良な顧客を基盤として持続的な成長を実現する。また、“モノ”にまつわるサービスを強化することにより包括的な価値提供による差別化・高付加価値化を図る
<競争力強化に向けた取組み項目>
・製品・サービスの組み合わせにより、顧客のバリューチェーンの複数の工程をカバーする包括的な価値を提供
・製品開発能力や量産能力を活かしたIoT・Edge-AI分野等の新製品を開発・販売
・ICTソリューション事業(成長ドライバー事業)
AI関連やクラウド関連にフォーカスし、積極的に経営資源を投入し、迅速に高付加価値のソリューションを提供する
<競争力強化に向けた取組み項目>
・強みを有するサービスにフォーカスし、技術者リソースを集中投入
・顧客に提供したソリューションをパッケージ化・製品化し、同様ニーズを有する顧客に拡販
・顧客接点を通じたニーズの拡がりを常に捕捉し続け、新たなサービス領域の探索、必要技術の習得の積極化
ロ.人的資本投資の強化・人的資本経営の再構築
競争力を強化するには人的資本の最適化が必須です。人的資本の最適化とは、競争力のある領域を見据えて人財の能力や特性に応じた適切な配置を行うことです。スキル高度化教育、また、リスキリング教育等の教育投資はもとより、人事制度の高度化、企業文化の醸成、多様性・公平性・包摂性のある組織づくりなどへの投資を活性化させます。これにより、社員のエンゲージメントを高め、生産性向上やイノベーション創出を図ります。
ハ.サステナブルな成長
脱炭素社会を推進する各種活動を推し進めると共に、包摂性を持つ企業を目指し多様な人財による経営の実現を推進します。(ジェンダーを含めた様々な格差の是正、社会全体でのエネルギー効率改善等)
ニ.資本効率の極大化
PL/BS/CFの財務3表のバランスを念頭に置き、資本効率(ROE・ROIC)の極大化に向けた道筋を付けます。
(連結経営目標)
中期経営計画「PCI-VISION2027」における最終事業年度の経営目標は以下の通りです。
(注) 1.その達成を保証するものではありません。
2.EBITDAマージン=(連結営業利益+減価償却費+のれん償却費+その他償却費)÷連結売上高
3.ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷(期首・期末 連結自己資本の平均)×100
4.ROIC=税引後営業利益÷(期首・期末 有利子負債・連結純資産の平均)×100
5.PBR=株価÷1株当たり連結純資産
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
<ガバナンス>
①サステナビリティ基本方針
当社グループは、サステナビリティに係る課題が、企業が対処すべきリスクであることを超えて、企業の長期的かつ持続的な価値創造に向けた経営の根幹をなす要素であることを強く認識しております。また、当社グループは、「企業理念」と「行動方針」をサステナビリティ経営の基本方針と位置づけ、サステナビリティ課題の解決に向けた取組みを積極的かつ継続的に実行することにより、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指します。
②サステナビリティ推進体制
当社は、2022年7月に取締役会の諮問機関である、サステナビリティ委員会を設置しました。
本委員会の構成は、当社代表取締役社長が委員長を務め、管理部門管掌取締役及び経営企画部門管掌取締役が副委員長を務めます。また、各グループ会社代表取締役(当社執行役員)及び当社関連部署責任者を委員とすることで事業との連動性を図る体制としています。加えて、サステナビリティ活動を推進するため、委員長の指名によりグループ会社役職員で構成されるワーキンググループを設置し、全グループを挙げて取組む体制を構築しています。
当社グループは、安心・安全・豊かな社会の実現を目指すという基本方針のもと、価値観を共有できるステークホルダーの皆さまと協力して、「ITの力で様々な社会課題を解決する」あるいは「環境変化や技術進化に対応して積極的に変化し、革新する」ことを自らのパーパス(存在意義)として認識しております。
また、かねてより事業活動をとおして取組んできたサステナビリティ経営の強化を図るため、「PCI X-formation2032(PX2032)」において、「ITの可能性を探求し続け、安心・安全・豊かな社会(=サステナブルな社会)の実現に貢献するとともに、常に変化に対応し成長する企業」を2032年のありたい姿として定め、サステナビリティに関する6つの重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。
サステナビリティ経営にとって重要なこれらマテリアリティの解決に積極的に取組むことで、当社グループのパーパスを実現し、企業価値の向上につなげてまいります。
<リスク管理>
当社グループは、企業経営に関連する様々なリスクに対応するため、「サステナビリティ委員会」がリスク管理の充実に努めております。2022年7月にサステナビリティ委員会を設置するまで、当社グループでは、PCIホールディングス常務会の諮問機関である「コンプライアンス・リスク管理委員会」がその管理を行っておりました。しかしながら、昨今の経営環境の不確実性の高まり等を受け、当社グループでは、サステナビリティ課題を含めた広範なリスクと機会を、新設したサステナビリティ委員会で管理する体制としました。(コンプライアンス・リスク管理委員会は「コンプライアンス委員会」と改称し、法令の順守や企業倫理の徹底等のコンプライアンス管理を中心とした、社内調査権のある組織に改編。)
サステナビリティ委員会では、事業環境等の個別リスク(詳細は
<指標及び目標>
(2)人的資本、(3)気候変動に記載のとおりです。
(2)人的資本
<ガバナンス>
基本方針については、(1)サステナビリティ全般の「ガバナンス」に記載のとおりです。人的資本については、サステナビリティ委員会のもとに、各社人事部門担当者を中心に構成される人的資本ワーキンググループを設け、各課題の解決に向けた施策に取組んでおります。
<戦略>
中期経営計画「PCI-VISION2027」では、基本戦略に「人的資本投資の強化、人的資本経営の再構築」を、その実行方針に「最先端技術の習得による技術者集団の育成」「顧客を知悉するリレーションシップマネジメント能力の蓄積」「多様性と一体感のある組織づくり」「働きがいと働きやすさ=従業員エンゲージメントの向上」を掲げております。
人的資本ワーキンググループでは、その活動をとおして、人財面におけるマテリアリティを特定し、「PCI-VISION2027」の基本コンセプトと併せて人財育成方針、社内環境整備方針のアップデートを図っております。
■人財マテリアリティ
↓
↓
■人財育成方針
■社内環境整備方針
人的資本ワーキンググループは、2023年9月期から活動を開始、「人財育成」「従業員エンゲージメント」「人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)」「健康経営」を重点テーマとして準備フェーズを進め、2025年3月期から具体的な施策の実行フェーズに移行しております。

①人財育成
当社グループにとって「人」は財産であり、その「人財」を磨き上げ、適切な組織を組成し、機能させることが事業成長に直結するものと考えております。また、従業員は、各々の業務を通じて自ら学び自ら成長し、当社グループは、年齢・性別・国籍等に関係なく、自らの成長に向けて努力する従業員に対して支援する使命を担っていると考えております。
2025年3月期より事業計画と連動した人財育成計画を実践するPDCAサイクルをスタート、グループ各社で教育研修の目的や進捗状況の見える化を図り、従業員の満足度やミドルマネジメント層の計画遂行に対する意識の向上に努めました。研修費の実績については、下記の<指標及び目標>に記載のとおりです。
今後も、グループ従業員の意識・行動変容の可視化を目指し、ミドルマネジメント層の意識改革、人事評価プロセスの改善等、人財育成のさらなる実効性強化に取組んでまいります。
そのほか、経営人財の事業計画遂行力等の強化を図るため、グループ各社の執行役員を対象とするマネジメント研修をスタートしました。今後はリーダー層から階層別に段階的な選抜研修を実施する等、次世代の経営人財を育成するための仕組み(サクセッションプラン)を充実させてまいります。
②従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントの向上は、従業員の意欲や心理的安全性の向上につながり、離職率の低下、組織の生産性やパフォーマンスを向上させる効果が期待される重要な施策のひとつと考えております。
2024年9月期では、グループ従業員を対象に実施したエンゲージメントサーベイの分析をとおして、人間関係、自己成長、組織風土等が重要なキードライバーとなることを確認、従業員の内発的な動機や会社に対する共感を高めていくためには、コミュニケーションの質向上が重要であることを改めて認識するに至りました。
今後も持続的な成長を続けるためには、社内(人や組織)だけでなく社外(顧客や仕入先)に対する価値提供をコミュニケーションに必要な「人の視点」で捉えて具現化していく必要があります。
当社グループは、これらを形にしていくためには、社内外を含むあらゆる人同士の接点において、お互いに相手をリスペクトし信頼するリレーションシップの構築が重要であると考え、「リスペクト」の共通言語化や習慣化をグループ内に浸透させるべく、まずはミドルマネジメント層の意識・行動変容を促す施策から着手する方針を決定いたしました。
2025年3月期では、先の方針に従い、全役職員を対象とする「リスペクト・トレーニング」を経営層、ミドルマネジメント層からスタート、エンゲージメントサーベイツールの活用研修やメンタルヘルスやアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)等をテーマとするセルフマネジメント研修の企画準備、人事評価プロセスの改善検討等の活動に取組みました。
そのほか、テーマ別交流会の開催(人生100年時代の資産形成)、サステナビリティ関連の取組みを発信する「サステナ通信」の定期発行等、グループ内人的交流の活性化にも積極的に取組みました。
今後も「リスペクト」の共通言語化や習慣化のグループ内浸透や人的交流の活性化に積極的に取組み、社内外のエンゲージメント向上に繋げてまいります。
③人権DD
当社グループは、「PCIグループ行動規範」に「基本的人権および、人格・個性の尊重」を掲げており、グループ全体で人権に関する啓発活動に取組んでおります。
2024年9月期までに、「PCIグループ人権方針」、「PCIグループ購買方針」を制定し、経営層を対象とする人権リスク調査、ビジネスパートナー(仕入取引先)を対象とするアンケート調査を通じた人権侵害リスクの特定・評価、全役職員を対象としたe-ラーニング研修や経営層を対象に外部から専門講師を招いた人権教育を開催する等、人権DDのモニタリングプロセスをスタートしております。
2025年3月期では、継続してPDCAサイクルの浸透に取組んでおりますが、ビジネスパートナー(仕入取引先)を対象とするアンケート調査では、その回収率が大きく改善する等、当社グループの活動への理解が浸透している成果が見られました。
今後も、人権侵害リスクの特定・評価のアップデートを図り、防止・軽減の対応状況の評価やモニタリングを継続的な取組みとして実施してまいります。
④健康経営
当社グループは、全社員が心身ともに健康で、仕事に「やりがい」や「誇り」を感じ、その個性と能力を発揮することで、世の中が抱える課題の解決に挑戦し続けていくことが社会的使命であり、重要な経営課題であると認識しています。
2025年3月期では、「PCIグループ健康経営方針」(2024年11月)を制定し、重点取組事項である健康維持・増進、メンタルヘルス対策の推進、病気と仕事の両立支援に取組みました。
具体的には、健康維持・増進として、従業員の心身の健康状態について現状を把握するため、目標指標に設定したアブセンティーイズム(※1)とプレゼンティーイズム(※2)に関する調査をグループ全体で実施、施策の効果測定に活用する貴重な情報を得ることができました。調査結果は「サステナ通信」を通じてグループ全体にフィードバックし、今後の健康経営の取組みに対する意識向上を図りました。
そのほか、業務と仕事の両立支援として「PCIグループ長期休業サポート制度(2025年4月開始)(※3)」の導入やメンタルヘルス対策として「内部通報窓口の社外設置(2025年3月開始)」を進めてまいりました。
今後は、健康経営優良法人の認定取得も視野に健康診断の受診率向上、メンタルヘルス研修の実施等、重点取組事項を中心に健康保持・増進の制度や施策の拡充を図ってまいります。
(※1)病気や体調不良による欠勤のこと。
(※2)出勤しているものの心身の不調により生産性が低下している状態のこと。
(※3)団体長期障害所得補償保険(Group Long Term Disability 、略称GLTD)制度のこと。
■健康経営戦略マップ

上記①~④を含めた人的資本強化の取組みが、パーパスの実現にどのように寄与するのか、そのインパクトを可視化いたしました。
今後は、アウトプットやアウトカムといった指標の効果測定等をとおして、より効果的な戦略のアップデートを図
ってまいります。
■人的資本インパクトの可視化

<リスク管理>
(1)サステナビリティ全般の「リスク管理」のほか、上記の③人権DD及び「
<指標及び目標>
人的資本に関する取組みにおける、当社グループの主な指標及び目標、前期及び当期の実績は以下のとおりです。
■指標及び目標

2025年3月期は決算期変更のため6ヶ月の変則決算となっておりますため、2024年9月期との比較は参考情報となりますが、各指標について概ね改善しております。今後も目標達成に向けて各種施策に取組んでまいります。
なお、集計範囲については、重要性の観点から提出会社及び主要連結子会社3社を対象としております。
※1 2025年3月期については、決算期変更により、6ヶ月の変則決算となっております。
※2 特にコメントのない項目については、2026年3月期の目標としております。
※3 研修費総額の集計対象期間は、2023年10月~2027年3月までとしております。
※4 2024年9月期の離職率には定年退職者も含まれております。算出に当たっては継続雇用者が含まれていることから、より実態に即した指標を算出するため、2025年3月期より継続雇用者を除いて算出しております。この方法により2024年9月期の離職率を再計算した場合は6.8%となります。また、今後も定年退職者の増加が見込まれることから離職率の目標は設定せず、自発的離職率の目標達成に向けて、社内環境整備方針に基づく各種施策に取組んでまいります。
※5 2025年3月期は決算期変更に伴い6ヶ月の変則決算となっておりますが、有給休暇付与日の変更はおこなっておりませんので、2024年4月から2025年3月までの1年間の数値を記載しております。
※6 毎年4~6月頃に研修を実施しているため、6ヶ月の変則決算である2025年3月期は対象期間外となります。
(3)気候変動
<ガバナンス>
当社グループは、「持続可能な地球環境づくりへの貢献」を重要課題(マテリアリティ)の一つとして認識しております。その選出と特定にあたっては、当社グループへの意識調査に加え、外部有識者の意見を踏まえながらサステナビリティ委員会が中心となっておこなっております。なお、サステナビリティ委員会の体制につきましては、(1)サステナビリティ全般の「ガバナンス」に記載のとおりです。
<戦略>
気候変動問題への対応は、当社グループにとってリスクにも機会にもなりうると考えております。2022年11月のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言賛同に基づく情報開示の中で、①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)、②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)、の2つの代表的なシナリオを想定し、2030年代までを中心に、当社の主力事業に及ぼすリスクと機会を検討いたしました。その選出と特定にあたっては、当社グループへの意識調査に加え、外部有識者の意見を踏まえながらサステナビリティ委員会を中心となっておこなっております。
①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)
2050年までに、地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ。政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「NZE2050シナリオ」、平均気温等、気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠しています。
②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)
現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ。政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「STEPSシナリオ」、平均気温等、気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠しています。
収益や資産等、財務面への影響が大きいと考えられるリスクと機会について、当社グループはその対応策を改めて検討し、その主要な結果を下表にまとめております。
<リスク管理>
(1)サステナビリティ全般の「リスク管理」及び「
<指標及び目標>
気候変動に関する評価指標として温室効果ガス(GHG)排出量を選定しております。排出量につきましては、Scope1・Scope2の合計について2030年までに46%削減すること、2050年までにScope3を含めてカーボンニュートラルを目指すことを目標として、その削減に取組んでいきます。また、事業活動や領域の変遷に伴う温室効果ガス排出量の影響を考慮するため、売上高単位当たりの温室効果ガス排出量(排出原単位)を参照指標として、影響度の高い会社(以下、対象会社)を中心に削減目標を設定しております。
2025年3月期においては、対象会社における事業所統合、非化石証書購入を通じて、当初目標を大きく上回る削減実績をあげることができました。
直近3か年における実績(Scope1+Scope2、Scope3)ならびに基準年度比較は下表のとおりです。
(注)1.GHGプロトコルで定義されるScope1(化石燃料等の使用に伴う直接排出)、Scope2(購入した電気・熱の使用に伴う間接排出)の排出量合計を記載しております。Scope3(Scope1、Scope2以外の間接排出)については、カテゴリー6(出張)、カテゴリー7(通勤)の排出量合計を記載しております。
2.排出量算定に当たっては、重要性の観点から連結子会社2社を含めておりません。
3.2025年3月期は決算期変更により6ヶ月の変則決算となっております。
4.排出量の数値は、一定の仮定や前提を置いて導き出したものであり、独立した第三者による保証・検証を取得しているものではありません。今後、算定範囲の拡大、精度や粒度の向上、リスクシナリオ分析の高度化、適用する排出係数・排出原単位の変更、算定方法に係る国際的な基準の明確化に対する議論の動向等により、当社グループで把握・公表する数値についても将来的に変更となる可能性があります。
(注)1.Scope1・Scope2の合計の削減目標となる対象会社の範囲は、連結売上高の75%を目安としております。基準年度は、2017年9月期(対象会社:PCIホールディングス株式会社、PCIソリューションズ株式会社)、2021年9月期(対象会社:株式会社ソード)とし、合計値を記載しております。今後、集計対象及び基準年度の見直しを行う場合は、適宜公表いたします。
2.2025年3月期は、決算期変更により6ヶ月決算となっております。そのため、基準年度比は記載しておりません。仮に12ヶ月決算に換算した場合、排出量は253.9t-CO2となり、基準年度比△51.8%となります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境について
① 経済・市場環境による顧客の設備投資意欲等の影響について
当社グループの事業は、その業容上、国内企業によるソフトウェア・半導体等の設備投資動向に一定の影響を受けます。経済情勢の変化及び国内の景気低迷等により、市場における設備投資意欲が減少した場合は、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少、保守・運用契約の解約等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは市場の動向を先んじて的確に把握しながら、市場における競争優位性の確保を図っております。
② グローバルな半導体需給の影響について
当社グループにおける半導体関連事業については、半導体メーカーとターンキーメーカー(※1)を主な顧客として、半導体設計の一端を担うと共に開発工程と量産工程で使用される良品・不良品の判別を行う検査プログラムの開発に携わっており、半導体を量産するために必要不可欠なテスト開発等を主とした半導体トータルソリューションビジネスを行っております。しかしながら半導体業界では近年グローバルな事業統合が活発化しており、今後、国内半導体メーカーの経営方針変更や国内半導体メーカーのコスト構造の見直しにより、開発委託先をアジア圏に代表される国外企業に発注を行う等、国内半導体開発市場の縮小が顕著となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは顧客の需要動向を常に把握し、事業ポートフォリオの最適化を推進しております。
③ AIの利活用・技術革新による影響について
当社グループが属する情報サービス産業は、技術革新の速度及びその変化が著しい業界ですが、先進技術の積極的な利活用は当社グループの事業成長に向けた大きな機会であり、特にAI(機械学習・人工知能)は、その性能の進展に伴い、社会実装の範囲も予測・分類といった用途から、対話や生成といった人的業務の代行まで拡大を続けています。
万が一、当社グループが変化するニーズや新しい技術に対応できなかった場合、あるいは当社グループが想定していない新技術、新サービスが普及した場合やAIの利活用の場面で安全性・正確性の確保や、倫理的配慮等について適切な対応ができない場合には、社会的信用やブランドイメージが低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは各事業に関わる技術の動向把握に努めながら、次世代技術の共同研究・他企業との共同開発等、技術革新への対応策を常に講じております。
AIに関しては、AIがもたらす恩恵を最大化すると同時に、AIがもたらす倫理的・社会的な課題やリスクに適切に対応するために、「PCIグループAI倫理方針」を整備しました。
この指針にもとづいたマネジメントを実現するために、AIリスクに関するマネジメントルールやAI利用のためのガイドラインを整備し、AIシステムの開発・運用・利活用を中心としたAIガバナンスの取り組みを拡大・継続していくことで、AIを扱う企業として、AI活用の恩恵を最大限に享受できるサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
④ 競合他社による影響について
当社グループは、市場動向を先んじて捉え、最先端の技術・サービスの開拓等に努めておりますが、当社グループが属する情報サービス業界では、大規模事業者から小規模事業者まで多数の事業者が存在しており、市場において当該事業者との競合が生じております。国内企業のIT化推進等に伴い、業界全体における開発需要は堅調であるものの、一部で価格競争等による競合激化が生じているため、開発需要の減少や新規参入増加等により更に競争が激化した場合、あるいは競合他社の技術力やサービス力の向上により当社のサービス力が相対的に低下した場合には、受注減少、保守・運用契約の解約等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクの対応策として、競合他社の動向を把握し、市場における競争優位性の確保を図ってまいります。
⑤ 部品調達について
当社グループにおける一部の事業分野では、海外より部品調達を行っております。調達部品の仕入れ価格は、為替相場に大きく左右されることから、為替相場の大きな変動がある場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループでは、徹底したコスト管理を通じてコストダウンに努めると共に、変動リスクを回避する目的で為替予約等によるリスクヘッジを行っております。
(2) 事業内容について
① 見積違い及び納期遅延等の発生可能性について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務及び半導体のテスト・設計等については、作業工程等に基づき発生コストを予測し見積りを行っておりますが、すべてのコストを正確に見積もることは困難であり、実績額が見積額を超えた場合には、低採算又は採算割れとなる可能性があります。また、当社が顧客との間であらかじめ定めた期日までに作業を完了・納品できなかった場合には遅延損害金、最終的に作業完了・納品できなかった場合には損害賠償責任が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、見積段階でのリスク洗い出しと対策の徹底を図り、受注時には、一定額以上の大型案件については事業会社毎に然るべき会議体に諮り見積りの適正性を検討しております。また、受注後にはプロジェクト進捗状況のモニタリングを徹底しております。加えて、プロジェクトマネジメント力の向上を図るための教育を実施しております。
② 納品後の不具合について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務等については、顧客への納品時に様々なテストを行いますが、システムの運用段階に至ってから不具合等が発見される場合があります。当連結会計年度末現在において、システムの不具合に関して顧客から訴訟等の損害賠償を請求された事実はありません。しかしながら、当社の過失によるシステムの不具合が顧客に損害を与えた場合には、損害賠償負担及び当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループはサービスの品質・信頼性に係るリスク管理とその対応を行うための体制を構築・運用し、顧客に提供するサービスの品質向上に取り組んでおります。
(3) 事業体制について
① 人材の確保と育成について
当社グループの中核事業は知識集約型の業務であり、一定水準以上の専門技術、知識を有する技術者要員を確保する必要があります。今後、計画通りの人材を確保できない場合や中核となる優秀な人材の流出等があった場合、あるいは想定通りの人材育成ができなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは、計画的な採用活動を通じて新卒採用及び中途採用を実施し、人材の確保を図ると同時に、人材育成面においても教育研修を計画的に実施し、専門性の高い技術を有する人材の育成に注力しております。
② 協力会社の確保及び連携体制について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務等については、開発業務の効率化、受託開発業務における受注量拡大及びコスト低減等を目的として、また多種多様な顧客ニーズに対応するため、開発業務等の一部について当社社員の管理統括のもと、パートナーと位置付ける協力会社への外部委託を活用しております。当社グループが事業拡大を図る上で、協力会社活用の重要性は一層高まるものと認識しており、協力会社の確保及びその連携体制の強化を積極的に推進していく方針であります。しかしながら、協力会社から十分な開発人員を確保できない場合、あるいは協力会社における問題等に起因してのプロジェクトの品質低下、開発遅延又は不具合等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、定期的に協力会社との情報交換会を実施している他、中核的な協力会社に対してはコアパートナー制度として中長期的な契約を締結する等、協力会社との良好な関係構築に努めております。
③ 従業員の安全衛生について
当社グループが展開するソフトウェア等の開発プロジェクトにおいては、当初計画にない想定外の事象が発生すること等が原因で、品質や納期を厳守するために時間外労働や休日労働が連続することがあります。やむを得ない事情によりこのような事象が発生した場合には、それらを起因とする健康問題の発生や生産性の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループでは、健康経営基本方針を定め、これに基づく施策の一環として、労働時間管理の徹底、労働安全衛生法その他法令や通達の遵守等の安全衛生管理に努めております。また、内部監査を通じて、過度な超過勤務が認められる事業会社に対しては注意喚起を行っております。
(4) 法的規制等について
① 労働者派遣における法的規制等について
当社グループが展開する事業の一部において、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に基づく労働者派遣事業許可、並びに「職業安定法」に基づく有料職業紹介事業許可を取得して事業を運営しております。当社グループは法令遵守を徹底し、当該法的規制等に抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により派遣元事業主としての欠格事由及び当該許可の取消事由に該当し、業務の全部もしくは一部の停止処分を受けた場合、又は法的な規制が変更になった場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、顧問弁護士及び法務部門による関係部署に対する労働基準法等の指導に努めると共に、法律の改正や新規制定を確認しながら、法令遵守に努めております。
② 知的財産権の対応について
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することがないよう、第三者の知的財産権との抵触の有無について可能な限り確認し、その権利を侵害しないよう留意しております。当連結会計年度末現在において、過去に第三者から知的財産権の侵害訴訟を提起された事実はありません。しかしながら、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性や、当社グループの事業分野で第三者による知的財産権が成立する可能性があること等から、当社グループによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性は否定できず、過失により当社グループの役員あるいは従業員が第三者の知的財産権を侵害する事態が発生した場合には、当社グループが損害賠償を含む法的責任を負う可能性がある他、当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、新たに知的財産権の取得を行う際には適切な契約の締結・管理を行い、第三者の知的財産権を侵害する恐れがある場合には、事前に専門家による情報収集・調査等を行い、他社の知的財産権を侵害しないよう十分に配慮しております。
③ 情報管理について
当社グループは業務に関連して顧客の機密情報や個人情報を保有しているため、当該情報について社内規程に基づく厳格な管理を行っております。当社グループにおいて機密情報・個人情報を取り扱う事業会社については、「プライバシーマーク」使用の認証を取得しております。本書発表日現在において、過去に当社グループより個人情報あるいは機密情報の重大な漏洩が起きた事実はありません。また、これらに起因する損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、不正アクセスその他により、万が一情報漏洩が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループのうち個人情報を取り扱う事業会社についてはプライバシーマークを取得しております。また、情報漏洩、不正アクセスを防止するための環境整備、社内での定期的な情報セキュリティ研修を実施し、情報管理の徹底及びセキュリティ強化に努めております。また、近年より多様化・巧妙化するサイバーセキュリティ脅威に対して、コンピュータウィルス検知・除去システムの他、適切なサイバーセキュリティソフトを当社グループ全社で導入し、安全対策を行っております。
④ 安全規格について
当社グループの一部事業においては、直流電源装置等の電気用品に属する製品には、これを利用する消費者の安全を確保する目的で制定された電気用品安全法による規制等を受けております。また、海外では、消費者及び公共の安全を目的とする安全規格に関する法的規制等を受け、米国ではULマークの認証取得などそれぞれの国において安全基準に適合することが要求されております。安全規格に関する法的規制等に関して、予期しない新設、改正、変更等が行われた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクの対応策として、当社グループは、各国の法的規制及び安全規格に関する法令及び規制の改正等について恒常的に情報を収集しながら法令遵守に努めております。
(5) その他
① M&A等について
当社グループは、企業価値向上に向けた既存事業の拡大や有望市場への進出のため、事業戦略の一環としてM&Aや戦略的提携を推進していく方針であります。その実施に際しては、対象企業の事業内容や契約関係、財務内容等について、投資の規模やリスク等に応じて適切なデューデリジェンスを行ってリスクを回避するよう努めております。しかしながらデューデリジェンスにおいて未認識債務等を発見できなかった場合や、M&A等の実施後に当初期待した成果をあげられない場合には、のれんの減損処理を行う必要性が生じる等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、M&A等の意思決定においては、社外専門家による法務面・財務面及び事業内容についてのデューデリジェンスの実施結果を踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しております。M&A等の実施後は、事業計画に対する実績達成度のモニタリングを行い、適宜適切なリスク管理に努めております。
② 保有投資有価証券及び貸付金について
当社グループでは、事業上の関係構築等を目的とした投資有価証券及び貸付金を保有しており、このような投融資等は今後も行う可能性があります。投資有価証券及び貸付金の評価は投融資先の財政状態や経営成績等の個別の事情又は株式市場等の動向に依存いたします。当社グループが保有する投資有価証券及び貸付金について、投融資先の企業価値が低下あるいは信用状態が悪化した場合、投資有価証券評価損あるいは貸倒引当金繰入の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当該投資有価証券及び貸付金については、投融資先の財務状況等に関する定期的なモニタリング並びにタイムリーな情報収集を行うことでリスク低減に努めております。また、政策保有の目的で保有する株式については、年に一度、取締役会において個別に保有の適否を判断するとともに、非上場株式等については、当該会社の純資産、投資時からの事業計画の進捗、将来見込み等を継続的に精査し、リスクを軽減する施策を講じております。
③ 訴訟等について
当社グループの事業活動に関連して、前述の「(2)-① 見積違い及び納期遅延等の発生可能性について」、「(2)-② 納品後の不具合について」、「(4)-① 労働者派遣における法的規制等について」、「(4)-② 知的財産権の対応について」、「(4)-③ 情報管理について」において説明したリスク等により、当該第三者が当社グループに対して訴訟その他の請求を提起される可能性があります。これらの結果、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たに発生したリスクあるいは今まで顕在していなかったビジネスリスクによって、現時点で想定されない訴訟等が提起される可能性があります。一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合に、訴訟等による当社グループの権利保護のために多大な費用を要し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは法令遵守を徹底し、内部管理体制の構築及びコンプライアンス体制の充実に努めております。
④ 自然災害等について
地震、火災等の自然災害や、戦争、テロ、新型インフルエンザの流行等により、当社グループにおいて人的被害又は物的被害が生じた場合、又は、外部通信インフラ、コンピュータネットワークに障害が生じた場合等の事由によって当社グループの事業の継続に支障が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは、自然災害に備えた自然災害対応マニュアルおよびBCP(事業継続計画)を策定、安否確認システムの導入、防災訓練、データセンターの分散等の災害発生時に損害を最小限に抑え、重要な業務の継続、早期復旧を図るべくリスクへの対応強化に努めております。
⑤ 気候変動について
当社グループでは、気候変動への対応をサステナビリティ経営上の最重要課題の一つと認識しております。気候変動に起因する自然災害の激甚化により、事業所やサプライチェーンが被災した場合には、生産活動の停止による機会損失等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動対策への取組みに関する社会的要請が高まる中、当該取組みが不十分であった場合やステークホルダーからの理解が十分に得られなかった場合には、社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、気候変動対策に関連する新たな法令や規制の導入がなされた場合には、対応費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動に係るリスクと機会の事業への影響について、継続的に分析を行い、積極的な情報開示に努めてまいります。
⑥ 人権侵害について
当社グループ内のみならず、取引先を含めた当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権を侵害する行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜やブランド価値の毀損等が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「PCIグループ人権方針」を定め、これを人権に関する最上位の方針として位置付けております。
当社グループとしては、人権に関する社員教育や啓発、サステナビリティ委員会における定期的なモニタリング等を実施すると共に、社外仕入先等の取引先に対しては、「グループ購買方針」に従い、直接的に確認・調査を行う体制を整備する等、当リスクの適切な管理に努めてまいります。
⑦ 各種感染症拡大について
社会経済活動全般に大きな影響を及ぼす感染症が発生し、拡大かつ長期化した場合には、顧客のIT投資活動の抑制や製品開発計画の中止等により、受注が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、従業員や協力会社社員等への感染が著しく拡大した場合、納期遅延や開発スケジュール遅れ等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、リモートワークやWeb会議システムの積極的活用等、効率的な事業運営を実施しておりますが、有事の際には感染拡大を防止するため、オフィス入室時の手洗い及び手指消毒、マスク着用等の衛生管理の徹底や時差出勤の推奨等、事業リスクの最小化に向けた施策を推進いたします。
⑧ 親会社グループとの関係について
当社の親会社は株式会社レスターであり、同社は、有価証券報告書提出日現在で当社発行済株式総数における議決権の過半数を所有しております。また、連結総売上高において親会社グループに対する売上高が一定の割合で存在しておりますが、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等を確保しております。しかしながら、将来において、親会社グループの経営方針や事業戦略等に変更が生じた場合には、当社の事業展開、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、親会社グループと一般株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえ、上場子会社としての中長期的な企業価値向上に向けて独立した意思決定を担保するため、実効的なガバナンス体制の構築に努めてまいります。
(※1) ターンキーメーカー:半導体の設計から製造までの各工程を複数の専門企業に委託し、これらの開発工程全般につきコーディネートする企業のこと
当社グループは、当連結会計年度より事業年度を従来の9月30日から3月31日に変更いたしました。これに伴い、当連結会計年度は2024年10月1日から2025年3月31日までの6ケ月間の変則決算となりましたので、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して、前連結会計年度との比較は記載しておりません。
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2024年10月1日~2025年3月31日)における我が国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加等により、一部に足踏みがみられるものの緩やかな回復基調となりました。一方で、物価上昇の継続に加え、米国の通商政策の動向や金融資本市場の変動等により、先行きは不透明な状況下で推移いたしました。
当社グループが属する情報サービス産業においては、社会全体で進展しているデジタル化や、進展が著しい生成AI等の先端技術の活用に関する設備投資は継続しており、IT投資・DX関連投資需要は堅調に推移いたしました。しかしながら、IT人材不足は常態化しており、特に先端IT人材の確保とリスキリングによる技術力向上が課題となっております。
このような状況下において、当社グループは、前連結会計年度の2024年9月27日付で株式会社レスターの連結子会社となり、同社との資本関係及び業務提携関係の変化のもと、提携強化による相乗効果を早期に実現し、企業価値向上を加速させるため、2024年12月20日付で経営体制を一新いたしました。新たな経営体制のもと、中期経営計画「PCI-VISION 2026」に基づき、既存事業の深化とともに持続的成長及び収益の「質」向上を目指し、「①パーパス経営の実践」「②高収益体質へのシフト」「③人的資本経営の高度化」「④サステナブル経営の深化」のこれら4項目を基本コンセプトとした事業活動を推進してまいりました。また、株式会社レスターと共同で、サービスの商品化を目的とした保有技術の棚卸を実施し、両グループ内での活用可能なサービスや商品を選定の上、それぞれの顧客基盤を活用した販売活動の推進に向けた準備に取組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は13,278百万円、営業利益は679百万円、経常利益は697百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は製品不具合対策費用として特別損失55百万円を計上したこと及び過年度分の法人税等に係る還付税額の計上等により、489百万円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりであります。
エンジニアリング事業につきましては、売上高は7,173百万円となり、セグメント利益は496百万円となりました。
エンベデッド分野において、モビリティ変革の鍵となるSDV(※1)化が進む中、ISO26262(機能安全規格)やAUTOSAR(※2)に準拠した車載システムのAD/ADAS(※3)ソフトウェア開発案件の引き合いが強く、当分野にエンジニアリソースを重点的に再配置したことから好調に推移いたしました。また、エンタープライズ分野においては、官公庁向けシステム開発案件が堅調であった他、ERP構築案件が好調に推移し、収益に貢献いたしました。
プロダクト/デバイス事業につきましては、売上高は4,271百万円となり、セグメント利益は243百万円となりました。
組込PC/コントローラ分野につきましては、医療画像診断装置向けコントローラの需要が回復し、出荷が増加したことに加え、医療事務システム向けPC案件のリプレース特需により、収益が増加いたしました。また、円安の影響による部材仕入コスト上昇の影響は継続したものの、その抑止策や販売価格の適正化に注力したことが奏功し、利益率は大きく改善いたしました。
半導体設計・テスト分野につきましては、車載やインフラ、IoT等に係る半導体潜在需要は引き続き底堅くあるものの、既存顧客の開発計画見直しの影響による非稼働人員の発生が継続しており、顧客シフト等、各種施策を実施したものの十分なカバーができず、低調に推移いたしました。
ICTソリューション事業につきましては、売上高は1,878百万円となり、セグメント利益は330百万円となりました。
IoT分野では、建機向けソフトウェア受託開発案件が堅調に推移した他、車載LSI向け検査用基板開発案件も堅調に推移いたしました。ソリューション分野では、拡大推進を図っているクラウドプラットフォームやクラウドデータベースを活用したシステム構築支援案件が好調に推移いたしました。メインフレーム系については、利益率の高い大型案件が収益性向上に寄与いたしました。
(注)上記に用いられている用語の説明は以下のとおりであります。
(※1)SDV:(Software Defined Vehicle)
ソフトウェアによって車両の機能や特性を定義・制御され、アップデートを通じて、購入後も機能が向上する自動車の概念。
(※2)AUTOSAR:(AUTomotive Open System ARchitecture)
自動車業界のソフトウェア開発の効率化を図るために、車載ソフトウェア開発の共通化を目指したプラットフォームの標準規格。
(※3)AD/ADAS:(Autonomous Driving/Advanced Driver-Assistance Systems、自動運転/先進運転支援)
自動運転と、運転者の安全や利便性を支援するシステム。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,073百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
営業活動により得られた資金は641百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益641百万円、減価償却費73百万円、のれん償却額90百万円、賞与引当金の増加157百万円、仕入債務の増加332百万円があった一方で、売上債権及び契約資産の増加468百万円、法人税等の支払額214百万円があったことによるものであります。
投資活動により得られた資金は14百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入22百万円があったことによるものであります。
財務活動により使用した資金は537百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出229百万円、配当金の支払額276百万円があったことによるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
(注) 金額は、製造原価によっております。
(2) 受注実績
当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、合理的に判断して行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 財政状態の分析
(資産)
総資産は15,900百万円(前連結会計年度末は15,503百万円)となり、397百万円増加しました。
流動資産は12,123百万円(前連結会計年度末は11,667百万円)となり、455百万円増加しました。その主な要因は、売掛金の増加143百万円、電子記録債権の増加254百万円によるものであります。
固定資産は3,776百万円(前連結会計年度末は3,834百万円)となり、58百万円減少しました。有形固定資産は830百万円(前連結会計年度末は853百万円)となり、23百万円の減少、無形固定資産は1,607百万円(前連結会計年度末は1,689百万円)となり、82百万円の減少、投資その他の資産は1,338百万円(前連結会計年度末は1,291百万円)となり、46百万円増加しました。有形固定資産の減少の主な要因は、建物附属設備の減少21百万円であります。無形固定資産の減少の主な要因は、のれんの減少90百万円であります。投資その他の資産の増加の主な要因は、繰延税金資産の増加50百万円であります。
(負債)
負債は6,448百万円(前連結会計年度末は6,251百万円)となり、196百万円増加しました。
流動負債は5,438百万円(前連結会計年度末は5,095百万円)となり、342百万円増加しました。その主な要因は、買掛金の増加220百万円、電子記録債務の増加111百万円によるものであります。
固定負債は1,009百万円(前連結会計年度末は1,156百万円)となり、146百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金の減少35百万円、その他の減少82百万円によるものであります。
(純資産)
純資産は9,452百万円(前連結会計年度末は9,251百万円)となり、201百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益489百万円の計上による増加の一方で、配当金の支払277百万円による減少等があったことによるものであります。
この結果、自己資本比率は56.5%(前連結会計年度末は56.6%)となりました。
(3) 経営成績の分析
(売上高)
売上高は、13,278百万円となりました。エンジニアリング事業は、ADAS、AUTOSAR系開発案件をはじめとするモビリティ関連の堅調な引き合いに加え、ERP関連の大型案件の受注も収益に大きく貢献しました。プロダクト/デバイス事業は、伸長していた半導体市場が減速し、一部で顧客企業の在庫調整の影響を受けて受注が減少しましたが、組込みPCは主力顧客向けの医療情報システム系の生産が計画を上回り、好調に推移しました。成長ドライバーであるICTソリューション事業は、AWSやJUST.DBなどの市場の広がりによってクラウド案件が好調に推移したほか、メインフレーム分野の大型プロジェクトが売上に大きく寄与しました。
(売上原価)
売上原価は、10,195百万円となりました。主力のエンジニアリングサービス事業において、引き続き開発体制強化の推進にともなう協業ビジネスパートナーの拡大によって外注費が増加したものの、人員配置見直し、非稼働要員の減少を含めたコストダウン、対象ソリューション選別などによる採算性の維持・向上に努めました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、2,402百万円となりました。当社事業の遂行において根幹となる人的資本の強化のための施策を進めるとともに、売上総利益の着実な伸長を前提として人件費や採用・教育費が増加したものの、成長投資と経費コントロールを両立すべく販管費の効率化に注力しております。
この結果、営業利益は679百万円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は21百万円、営業外費用は3百万円となりました。
営業外収益の主な内訳は、助成金収入7百万円や投資事業組合運用益4百万円、営業外費用の主な内訳は、支払利息2百万円であります。
この結果、経常利益は697百万円となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)
特別利益は計上なし、特別損失は56百万円となりました。
特別損失の主な内訳は、株式会社ソードでの製品不具合対応費用の負担による特別対策費55百万円であります。
この結果、税金等調整前当期純利益は641百万円となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等合計は、過年度分の法人税等に係る還付税額の計上等もあり、145百万円となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は6百万円となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は489百万円となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は主に運転資金需要と投資資金需要の2つがあります。
運転資金需要のうち主なものは、ビジネスパートナー獲得のための費用の他、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、AI技術やDX関連などを含む各種の事業開発投資に加えて、最先端技術の獲得、顧客基盤の強化、あるいは事業成長の加速に資するM&Aの検討を継続的に行っております。
これら資金需要につきましては、基本的には営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金にて対応する考えでおりますが、必要に応じて、後述の強固な財務基盤を背景にした多様な資金調達(金融機関からの借入、各種社債の発行等)にて対応する所存です。
なお、当社グループの2025年3月末時点における、銀行借入等を通じた有利子負債が515百万円であるのに対し、現金及び現金同等物は4,073百万円と有利子負債を上回る水準となっており、強固な財務基盤を実現しております。
手許の運転資金につきましては、当社及び連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネージメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、十分な流動性を確保するとともに、資金効率の最適化を図っております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。事業環境、事業内容、事業運営体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部監査体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
(6) 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します」を企業理念として掲げております。この企業理念のもと、当社グループが今後さらなる成長と発展を遂げるためには、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した課題に適切に対処していくことが必要であると認識しております。
(株式会社レスターとの資本業務提携契約)
契約締結日 2024年8月9日
契約会社名 株式会社レスター(以下、「レスター」という。)
契約会社住所 東京都港区港南二丁目10番9号
当社は、2024年8月9日、レスターとの間で資本業務提携契約を締結することを同日開催の取締役会において決議いたしました。本取締役会に先立ち、フィナンシャル・アドバイザー及びリーガル・アドバイザーの起用を決定したうえで、本提携の目的、レスターとのシナジー効果及び提携条件の妥当性について約2ヶ月にわたり多角的に検討を行いました。検討の結果、当社及びレスターの関係が深化することで期待できるビジネス機会創出も含めた多様なシナジー等を総合的に考慮し、本提携が当社の企業価値の向上に資するものであると判断いたしました。
本契約は、当社の上場会社としての独立性を維持しつつ、両社の経営リソースを有効活用し、過去から継続的に提携関係を強化してきた両社の関係性を土台とした、更なるシナジーの追及を図り、両社の企業価値向上、ひいては両社の株主利益を最大化することを目的としております。
本契約には以下の事項が含まれております。
①レスターは監査等委員ではない業務執行取締役1名を含む取締役2名以内、当社グループ各社取締役とすべき者2名以内を指名することができること。
②レスターは、当社が株式等の発行、処分又は付与を行う場合、レスターの当社株式に係る持分比率に応じた数の株式等について、優先的に引き受ける権利を有すること。
③当社グループにおいて、以下(但し、適時開示基準に該当しない軽微なものを除く。)を決定又は承認する場合は、レスターの事前の書面による承諾を得ること。
ⅰ)子会社又は関連会社の異動を伴う株式の取得又は処分
ⅱ)上場廃止基準に該当する若しくはそのおそれのある行為又は上場廃止の申請
ⅲ)本業務提携と実質的に矛盾若しくは抵触し、又は、本業務提携の効果を著しく減殺若しくは阻害する業務提携
ⅳ)組織変更、合併、株式交換、会社分割、事業の全部若しくは一部の譲渡又は譲受その他これらに準ずる行為
なお、本契約には当社の上場会社としての経営の独立性維持について、規定されており、当社のガバナンスに悪影響を生じさせることはないと考えております。
当社グループでは、高度化・多様化する最新の情報技術を取り込み、新規サービス・製品の開発及び既存サービスの進化のための研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
該当事項はありません。
同一ハードウエア仕様による長期供給、長期保守の対応を目的とした製品を開発中です。自社製品シリーズの中位機種の後継となる「SR-s350(製品名)」は、上位レンジの産業用パソコンの仕様である24時間稼働を採用した製品となることから既存顧客以外に対し、拡販が大きく期待できる製品となります。また、前事業年度に開発を行った「FAB-s110(製品名)」より更に小型化したモデルも開発中であり、受付業務やレセプト業務等、省スペースを要望される顧客への拡販が大きく期待できます。
ロボット、大型プレス機、エスカレータ、搬送装置等の産業機器の状態を監視するためのマルチセンシングエッジ端末を開発いたしました。本端末は、設置された各種センサから収集した情報を複合的に捉え、ダッシュボードで可視化することで、予知保全を標準化、効率化、高度化するソリューションを提供します。
プロダクト/デバイス事業に係る研究開発費は
(3) ICTソリューション事業
① 画像認識に関する基礎研究開発
これまでの当社の強みであるコンピュータビジョンの領域の中心となる画像認識技術を更に発展させるべく、視覚的特徴量をもとに人物やその周囲の状況に関する多様な情報を定量的に把握するための行動分析につながる基盤技術の研究に着手しております。この研究により、あらゆるサービスの抜本的な高度化、そして人々がより安全かつ快適に活動できる社会環境への適応を推進してまいります。
② 交差点の安心安全に寄与する基礎研究開発
数多くの自治体でスマートシティ構想が掲げられる中、市街地の危険な交差点における事故回避を目的として、AIによる画像認識と空間解析技術を活用し、交差点に設置したカメラ映像などのリアルデータから移動体の行動特性や空間情報を自動で抽出する技術を開発いたしました。この技術を利用することで多様な交差点において安全に関するシステムを早期に設置可能になるため、誰もが安心して暮らせる社会基盤の構築に貢献することができます。
③ LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)に関わる研究開発
LLMは、今やビジネスや社会の様々な場面で基盤技術として活用され始めています。当社は、LLMの利便性と安全性を両立させる研究開発を進めています。これらは機密データの保護と多様なシステムとのスムーズなLLMを介した連携を実現するための重要な取り組みです。これにより、人とAIが協調し、より高度な社会環境の実現に貢献してまいります。
④ AIの高度化に関わる研究開発
AI技術の発展は私たちの社会や産業に新たな可能性をもたらしており、このAIの能力をより一層引き出すには高品質な学習データが不可欠となります。ここで、実データのみでは量・質・多様性の確保に課題があることに着目し、当社は現実を精緻に模倣しつつ多様な状況を創出可能な「合成データ」の生成に関わる研究開発とその技術の戦略的な活用に注力しております。これによりAIの精度と信頼性を格段に高め、様々な分野での技術革新を加速し、より安全で豊かな社会の実現に貢献してまいります。
ICTソリューション事業に係る研究開発費は