第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)経営方針

当社グループは、「人々の生活環境が豊かになることを使命とし、土・水・大気・構造物調査・測量設計等における適切な情報を土木管理総合試験所グループの総力(スピード・対応力・提案力)を挙げ、顧客に対して積極的にコンサルテーションを行う」を経営の基本理念として、事業展開を行っております。

生活基盤を形成する保全・整備事業に寄り添い、サステナブルな社会づくりに貢献することが、当社の事業の伸長につながると考え、近年課題となっている、防災・減災対策、災害からの復旧・復興、老朽化したインフラストックの維持管理問題、環境保全(気候変動・生物多様性)等に注力しております。更なる技術革新とスピード感ある対応が求められる状況の中、顧客満足度の最大化と地域社会への貢献を進め、企業の成長と共に株主の皆様の期待に応えられるよう邁進する所存であります。

 

 

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(2)経営戦略

当社グループの中長期的な経営戦略は、2024年から2032年までの新中長期経営計画「いつの時代も選ばれ喜ばれるDKへ」をスタートさせ、近年事業の転換期をむかえる中、機構改革、構造改革に取組み、計画に則った業績を残せるようステップUPの土台をしっかりと醸成し、安定期から再成長期へ向け体制を整えてまいります。

 

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人材・組織戦略として、組織間の連携を強化、個の業務推進力を伸ばし、1人当たりの売上、利益の最大化を目指します。

事業戦略として、基幹業務である試験総合サービス事業(土質・地質調査試験、非破壊調査試験、環境調査試験)を高収益構造へ変化させ基礎体力を最大化させます。

フランチャイズ店(以下、FC店)の拡大、新技術の開発、新規事業を推進し、コア事業とのシナジー効果で事業領域を拡大させ、収益性の改善を進めてまいります。

 

 

 

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(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、安定的かつ継続的な成長を目指し、労働集約型からの脱却と事業の大型化に取組むことで、売上高営業利益率8.4%以上、1人当り売上高16百万円以上の二点を目標に掲げ、その向上に努め企業価値の最大化を目指しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社を取り巻く事業環境は、政府の国土強靭化政策のもと、インフラ老朽化対策、防災・減災対策等の社会インフラの整備が必要とされるなかで、激甚化する自然災害の復旧・復興事業への対応、さらにリニア中央新幹線事業等の大型事業を中心に市場の拡大に拍車がかかることが予想されます。また、今までに経験のない自然災害が全国各地で発生しており、予想だにしない災害に対応するため、様々な場面での防災・減災への対応が急務であると考えております。ロシア・ウクライナ情勢により地政学的リスクの顕在化や資源価格の高騰が続いており、引き続き、サプライチェーンの不安定化が想定されます。物価上昇を背景とした建設現場での経費の高騰により、当社業務にも影響がでております。

このような状況のなか、当社は変化する社会ニーズに対し的確かつ効率的に応え、成長していくための経営上の対処すべき課題について以下を掲げ取組んでおります。

 

①技術力の向上とサービスの充実・拡大による対応力の強化

変化する世況に対応し顧客の利便性を高めるために、調査・試験並びに設計・工事の各項目の充実や品質の向上を図り完結型サービスの業務範囲を拡大してまいります。

また、既存の業務に囚われることなく最新技術の開発や新規事業の導入を推進し、防災・減災、地域社会への貢献と社会問題解決に寄与できるよう取組んでまいります。

 

②試験センターの充実及び営業エリアの拡大

当社の特徴であり基幹業務である室内試験の更なる受注拡大と、効率的な受注体制を確立するため、3試験センター(中央試験センター、西日本試験センター、東日本試験センター)への設備投資を充実させ試験領域の拡大と対応力の強化を推進いたします。

また、FC店による拠点展開及び海外を含めた新たな営業エリアでの受注拡大を進め、効率的な営業ブロック体制の構築を目指してまいります。

 

③人材の確保と育成による対応力の強化

当社の技術力の根源である土木技術者の不足は深刻な状況にありますが、当社独自のPS(パートナー・シップ)制度の導入やFC店の設置を推進し、人材不足に影響されにくい体制を整えてまいります。

また、目まぐるしい環境の変化に対応するための人材教育を積極的に推進し、技術力とサービス力の向上と人材の定着率向上に努め、今後の業容拡大に対応できる体制の構築を目指してまいります。

 

④他社との差別化

国が推進するICT技術を全面に活用した建設現場のi-Construction化により、建設現場の施工管理が大きく変化してきており、建設コンサルタント業界でもICTの活用は急務となっております。長年培ってきた当社の調査・試験・分析技術に加えてAI、自動化、独自アルゴリズム等の最新技術の導入により、他社にないソリューションを提供することで他社との差別化を図ってまいります。

 

⑤海外展開

現状は、オフショア事業が中心ではありますが、当社の顧客による海外での事業展開が年々増えており、海外での試験総合サービスのニーズも拡大しつつあります。当社の長期的な成長を実現するためにも海外展開に取組むべきであると認識しております。海外で当社が提供するサービスの中長期的な需要を見極めつつ、海外展開を推進してまいります。

 

⑥リスクマネジメントの強化

激甚化する自然災害が全国各地で発生しており、予期しない自然災害の発生でも業績に影響がでないように事業継続計画(BCP)の重要性が非常に高まっております。当社では大規模な災害が発生した場合でも、被害を最小限にとどめ、業務を継続できるよう業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋、各試験センターをはじめとする各設備の見直しを行い、多目的な観点からBCPを作成して定期的な見直しを行ってまいります。

また、昨今の地政学的リスクの影響は当業界でも大きくなりつつあり、適正価格での受注、当社にしかない付加価値の向上を行い、世況に影響されない体制の整備を進めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下のとおりであります。

 

(1)サステナビリティ

  当社の経営理念では「人々の生活環境を豊かにするために貢献する」と掲げており、この理念のもと建設コンサ

 ルタント企業として、ステークホルダーの皆様の信頼を確立し、持続可能な社会の発展に貢献するため、サステナ

 ビリティ経営を推進してまいります。

 

 ①ガバナンス

 当社では、取締役会直結の「サステナビリティ委員会」を設置し、その責任者としてサステナビリティ担当取締役を配置しております。当社およびグループ全体のサステナビリティ活動の責任を担っております。

 原則サステナビリティ委員会は月1回開催されており、サステナビリティの動向について協議し、その対策を検討しております。その内容は取締役会に定期的に報告され、必要に応じて企業全体の課題として対策の実施、問題解決に向けた取組みの指示が発信されます。

 また下部組織としては、サステナビリティ事務局が設置されており、サステナビリティ委員会のフォローを行うと共にデータの収集、分析等実務的な案件の対応を行っております。

 

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 ②戦略

 当社は、事業活動を通じて社会問題の解決に寄与し、社会価値と企業価値の双方の創出に取組んでいます。その実践のために優先的に取組む社会課題を抽出し、重点課題である5つのマテリアリティを特定いたしました。

 1.安全で強靭な社会インフラの整備の追求

 2.暮らしの安全・安心を支える防災、減災技術の提供

 3.自然との共生社会の実現

 4.脱炭素社会、持続可能な循環型社会への貢献

 5.多様な価値観の尊重と働きがいの創造

 社会問題を解決することで事業成長を果たし、事業が成長することで多くの社会課題の解決に寄与できることから事業の成長と社会問題の解決を両輪としたサステナビリティ経営で持続可能な社会の実現を目指します。

 

 ③リスク管理

    企業を取り巻く環境は、不透明であり、不確実性を増すなか、企業活動に重要な影響を及ぼすリスクについて、的確に対処するために、取締役会、サステナビリティ委員会が中心となり、サステナビリティに関連するリスクを適切に管理しております。

 

 ④指標及び目標

  社会課題解決に向けた取組むべき重要な課題である5つのマテリアリティへの取組について、「取組みのテーマ」、「目標」を定め「実績」を管理しております。

 重要なテーマ

取 組

実 績

安全で強靭な社会インフラ整備の追求

膨大なインフラ管理への対策

3次元高速レーダ探査車を利用した高速調査+高速解析を実現し、人海戦術が恒常化されている路面、路面下の調査解析において、短時間低コストにて調査解析を可能とした。

内閣府主催の第3期戦略的イノベーション創造プログラムに協力機関として参画することが決定。

 

開発を進め、道路表面、路面下だけでなく、橋梁床版内部劣化調査(コンクリート)にも利用が可能となった。その技術が、国土交通省新技術情報提供サービス「NETIS」に登録された。

暮らしの安全・安心を支える防災、減災技術の提供

ゼロエミッションへ向けた取組

現場で排出される産業廃棄物を削減させる工法の研究開発を進め、砂防堰堤では砂防ソイルセメント工法を推奨。

硬化の判定方法の特許も取得。

工法対応件数

昨年比54%UP

自然との共生社会の実現

自然との共生社会の実現

各種環境調査を通じて生態系の保全に取組んでいる。

環境保全環境調査件数昨年比31%UP

脱炭素社会、持続可能な循環型社会への貢献

CO2排出削減への取組

地盤改良工法において、環境負荷軽減工法の採用を拡大している。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明し、気候変動による事業への影響やリスクを管理し、事業戦略の検討を進めております。

 

 

令和4年より温室効果ガス排出量データの収集を開始

令和4年度のデータをもとに令和5年度データの分析を進める。

多様な価値観の尊重と働きがいの創造

ダイバーシティ&インクルージョン

性別、年齢、国籍等さまざまな属性をもつ人々を等しく認め、互いの違いを受入れ、活かし合いながら、それぞれが実力を発揮できる職場環境を目指しています。

外国人雇用の促進

女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法等に積極的に取組み、職場環境の整備を進めている。

働き方の多様性に対応するため、人事制度改革にも取組んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)気候変動

  気候変動の原因となる地球温暖化への対応を重要な経営課題の一つとして認識しており、令和4年にはT

 CFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明いたしました。

 気候変動による自然災害の増加・激甚化や温暖化による海水面の上昇等、物理的なリスクに加えて、脱炭素社会

 への転換による法規制の強化や新技術の開発が業界全体の構造を変化させ、財務やレピュテーションに様々な影

 響を与える可能性があります。

 

 ①ガバナンスの整備

  気候変動対応に関するガバナンスについては

 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ ①ガバナンスに記

 載のとおりであります

 

 ②戦略

  当社の重要なマテリアリティに「脱炭素社会、持続可能な循環型社会への貢献」を掲げており、当社の業務の

 推進によって、将来にわたって温室効果ガス排出量の削減に取組んでまいります。不確実性の高い気候変動につ

 いて、2050年時点における2℃と4℃のシナリオを描き、2030年に想定される自社への影響を分析いたしまし

 た。

定義

シナリオ分析

事業への影響

対応策

財務への強度

2℃

2030年までに2℃上昇における財務及び事業に与えるインパクトは、法規制等のリスクはあるものの、限定的と考えられ、リスクに対応した施策を講じることで、事業機会の創出に繋げ、収益化することも可能と想定される。

 

CO2排出規制強化、炭素税の導入により、事業活動が停滞し、収益に影響がでる。

想定シナリオを前提とした対策を施した場合、再エネ・省エネ導入による業務、受注の拡大により収益が増加する。

再生可能エネルギー関連事業の開始

環境負荷低減工法の増加

AI/IOT事業を増加させ、現場出張比率を抑制

災害時の具体的な行動指針の策定

 

4℃

世界が現状を上回る施策を講じることなく、温暖化が進んだ場合、気温が4℃上昇することにより、さらに自然災害が頻発化、激甚化することが予想される。当社の基幹施設である試験センターや各支店への影響はあるかと想定するが、リスクを低減し、機会を最大化することで、影響を最小限に抑えることができると考えている。

 

気温上昇が抑制できなかった場合、大幅な規制強化はなく、現状と変わらない体制で、自然災害の頻発化、激甚化がさらに進んでいると予想される。再エネ・省エネ事業の普及も限定的で市場の拡大も進まないため、当社としても事業推進は限定的と考えられる。事業としては防災減災事業への寄与と社員関係者の安全管理を徹底することで、事業を継続的に存続させ、計画的なレジリエンスの向上により機会を増加させることも可能である。

防災・減災事業への寄与

現場出張比率抑制

災害時の具体的な行動指針の策定

 

 

 

 

 

 

 ③リスクと機会

区分

リスクの内容

機会の内容

期間

財務への影響

移行リスク

法規制・技術・市場

・評判

法規制、脱炭素税が導入された場合、炭素排出抑制のための設備投資、税負担を製品に転嫁した場合、価格競争力の低下のリスク

計画的な設備投資を実施し、設備投資額の高騰を限定的にすることで、他者に先んじて脱炭素、エネルギー効率の高い事業を推進できる。

脱炭素税の製品価格への転嫁を最小限に抑えることができれば、価格優位性が産まれ、売上・利益が拡大する可能性。

中期

社会的な脱炭素化の潮流から、各国で排出権取得制度導入が拡大した場合、排出量削減に対する設備への切替投資コストが発生する。リスク削減義務を達成できなかった場合、排出枠購入による費用増加のリスク

削減義務を達成し、大きく排出量を削減できる場合、排出権売却により収益拡大につながる可能性。

長期

脱炭素化の進展により

新技術への切替が必要となり、設備投資の増加による費用の増加リスク

既存技術からの更新のない特殊技術の価値低下による収益の減少リスク

脱炭素化の進展に合わせた新技術の導入や、特殊技術の更新ができれば、市場に先行して業務の提供ができ、収益の拡大につながる可能性。

中期

再エネルギー活用の急拡大により、エネルギー価格が高騰した場合、試験センタ―等の操業コストが増加するリスク

再エネ、省エネ等の発電やEMS等の導入促進により、調査、試験、工事需要が増加する可能性。

中期

顧客から再エネ利用やカーボンニュートラル対応等の要求に対応できない場合、ビジネスチャンスを喪失し売上高が減少するリスク

業界全体でのサプライチェーンでGHG排出量を削減する動きに対し、当社の事業もサステナブルと認知されることにより、業績の向上につながる。

そのための技術開発、研究を早期に進める必要がある。

中期

物理リスク

急性

自然災害の頻発化、激甚化により、サプライチェーンが乱れた場合、当社の業績が減少するリスク

自然災害の頻発化、激甚化により、災害復旧復興業務、インフラの維持管理業務が増加し、当社の業績が向上する可能性。

短期

慢性

平均気温の上昇による、従業員の健康状態の悪化による事業継続の困難

業務の省力化(AI、ロボット化等)を推進することによって、人海戦術からの脱却が可能となり、

人員に影響されない業務の遂行が可能。

長期

温暖化による海面の上昇により、当社の施設に被害が発生し、業績に影響がでるリスク

災害の発生による、復旧復興、防災減災事業の増加により、業績が向上する可能性。

長期

 

 

 

 

 

 

④指標及び目標

  当社は中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成を目指し、事業への再エネ・省エネの導入、新

 技術の開発により企業全体のサプライチェーンの環境負荷低減に取組んでまいります。

 令和5年から、Scope1:燃料の消費、Scope2:電力の使用料、Scope3:バリューチェーン全体の間接的排出

 について測定を開始しており、今期はまだ具体的な成果算出に至っておりません。

 

(3)人的資本経営に関する取組

  当社の事業戦略の中でも重要課題であり、人材・組織戦略を推進し、事業戦略を強化するには、まず人材・組

 織戦略の推進が不可欠だと考えており、個の業務推進力と組織間の連携を強化し、1人当たりの売上高、利益の

 最大化、少人数で最大限の効果を発揮できるよう、施策を講じてまいります。それが事業戦略の効率的な推進に

 繋がり、人材・組織戦略、事業戦略の両輪で当社の成長につながると認識しております。

 そのための教育と採用を強化し、必要な人材の確保を行うと同時に多様な価値観を持った人材が活躍できる組織

 体制と職場作り(ダイバーシティへの取組)を進めてまいります。

 

①ガバナンス

  人材戦略に関わる重要な事項は、取締役会が中心となって推進し、その責任者は代表取締役社長が担っており

 ます。人材戦略の具体的な各施策は、中期経営計画に紐づいた分科会が担当しており、定期的に取締役会に報告

 され管理監督を行っております。また、女性活躍推進委員会を設置し女性活躍推進に積極的に取組んでいます。

 

 ②戦略

  当社の事業の根幹を担うのが「人」であり、人材戦略による経営基盤の強化は、当社のソリューションの提供

 に大きな影響を及ぼします。「自ら考え、自ら変革する創造的人間であれ」は、当社の人材育成の基本的な理念

 であり、この理念を共有し、成長できる環境を構築することを人材戦略の柱としています。

  また近年様々なリスクが顕現しており、リスクを回避するための取組を実施しております。

  具体的な取組としては、

  ・人事制度の改定:評価制度、賃金制度の改定、多様な働き方、福利厚生の充実

  ・採用の強化:新卒、中途、外国人雇用等多種多様で幅広い人材の採用強化

  ・教育制度の充実:基本的な研修として年齢、階級、能力、目的に合わせた研修を実施

 

 ③リスク管理

  当社が事業を継続、発展させていくためには、人材の確保・育成が重要であります。社員の離職や健康状態の

 悪化により、人材育成が進まなくなること、多様性が損なわれることにより、個々の能力発揮が阻害されること

 がリスクであり、社員に対し安全で健康的な労働条件の提供及び多様性のある社内環境を整備することでリスク

 低減に努めています。多岐に渡る問題に対応するために、外部に相談窓口を設け、全社員が利用できる体制を整

 えております。

  また、定期的に社員満足度アンケートを実施し、社員の生の声を吸い上げ、その結果を分析し取締役会に提出

 しております。

 

 ④指標及び目標

  当社は、サステナビリティの重要なマテリアリティである「多様な価値観の尊重と働きがいの創造」を目標と

 して取り組んでおります。具体的にダイバーシティ&インクルージョンの取組に注力し、性別、年齢、国籍等さ

 まざまな属性をもつ人々を等しく認め、互いの違いを受入れ、活かし合いながら、それぞれが実力を発揮できる

 職場環境の構築を進めております。

  当社では、女性活躍推進委員会「BATONプロジェクト」を設置し、活動を統括し、働きやすい職場環境改善へ

 の施策、社員全体の意識改革等、BATONプロジェクトが中心となって、目標を設定し活動を推進しております。

目標

対策

実績

仕事と子育ての両立を確立する

小学校3年生までの子を持つ社員の短時間勤務制度を導入

令和6年度までに規定化

多様な働き方の充実

ノー残業デー増設

有給取得奨励日の増設

ノー残業デーの増設令和4年~月2回の実施、有休奨励日令和5年より年4日に増加

有休取得率の向上

有休管理の徹底、取得推奨

令和4年64.2% 令和5年 68.4%

管理職に占める女性労働者の割合

7.6%以上

令和5年 7.8%

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)公共事業動向に関するリスク

試験総合サービス事業において、公共事業の元請案件(直接受注)は全体の1割程度となっておりますが、ゼネコン等からの受注案件(間接受注)まで含めますと、公共事業への依存率は9割程度となるため、国及び地方公共団体等の財政悪化や事業の見直し等の公共投資の動向により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

よって当社では公共事業に依存するだけではなく、一般民間案件の受注にも注力しており、業界の枠に囚われることなく事業領域を拡大させております。公共事業は年度末(3月末)に集中する傾向があり、逆に4月からは閑散期となることもあるため、年間を通して受注が平準化するよう公共事業と民間案件のバランスをみながら受注をしております。

 

(2)災害等による事業活動の阻害に関するリスク

当社の試験総合サービス事業は、基幹業務を担う試験センターを中心に業務を進めており、この試験センターが災害など不測の事態に見舞われた場合には、試験・分析設備の破損、データの損傷・喪失や、ITネットワークを活用した業務処理システムのダウンにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

よって当社では、長野県千曲市(中央試験センター)、宮城県仙台市(東日本試験センター)及び山口県山口市(西日本試験センター)の合計3箇所に試験センターを分散させ、各試験センターにて設備の充実を図っているため、万が一の不測の事態が発生したとしても基幹業務がストップすることはなく、事業を推進することができます。

 

(3)人材の確保について

当社は、安定した技術力の提供を行うため正社員による現場作業を中心に行っております。業容の拡大のためには、それに応じた作業人員を一定数確保する必要があり、毎年の新卒採用及び中途採用を積極的に進め安定的な人員確保に努めております。しかし、少子高齢化、建設コンサルタント業界の雇用情勢の逼迫等により、その確保が十分でない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

よって当社では、業務の効率化(自動化等)を行うと共にPS(パートナーシップ)制度、FC制度を導入して全国各地の協力業者と協力して業務にあたることで、技術員不足の解消に努めております。

 

(4)感染症に関するリスク

当社が属する建設コンサルタント業界では、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けることはありませんでしたが、今後、新たにこのような感染症が拡大し長期化する場合は、当社経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)燃料費、原材料等の高騰に関するリスク

世界的な原油価格、原材料の高騰により、燃料費、建設資材価額が高騰し、建設現場に係る経費が増大することで、当社業務の受注価格に影響を及ぼし、適正価格での受注が困難となることが予想され、当社経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の行動制限解除により、経済活動は回復基調にあるものの、設備投資の抑制及び物流の停滞による世界的な原材料の供給不足やウクライナ情勢の悪化による資源価格の高騰等、供給面での影響があり、不透明な状況が続いております。

当社が属する建設コンサルタント業界では、資源価格の高騰等、供給面での影響はありますが、一方で激甚化する自然災害に備えるため、国が定めた2025年までの「5ヵ年総額15兆円の国土強靭化計画」が集中的に実施されており土木、河川、農業、電力、空港、通信等々の各分野で公共事業費が上乗せされ高需要が続いております。

このような環境下で、当社グループは、国土強靭化計画による公共事業を効率的に受注すると共に、民間営業の推進等で受注を拡大させました。さらにインフラメンテナンス事業では、従来の目視点検から、当社で開発した3Dレーダ搭載車を活用した高速調査・高速解析を実施し、維持管理・更新コストの縮減に取組むと同時に業績を伸ばしております。

また、内閣府主導で実施される第3期戦略的イノベーション創造プログラム(以下、第3期SIP)のスマートインフラマネジメントに協力機関として参画することが決定いたしました。本プログラムにて研究開発を進め、研究成果の社会実装を目指してまいります。これに伴い、平成31年より研究開発及び営業活動を推進しておりました、ロードスシステムの業務を停止いたしました。ロードスシステムに費やしていたリソースを第3期SIPに移行し研究開発に注力してまいります。

業界全体も国土交通省が推進するi-Constructionの取組みによる効率化が進む中、既存事業のICT化を目指し、高速調査・高速解析、AI、自動化(ロボット化)、WEB立会サービス等の開発・導入を進めており、グループ会社と協力してBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling Management)への取組みに注力し業務の効率化を進めました。

海外展開の進捗につきましては、ベトナム現地法人(C.E.LAB INTERNATIONAL CO., LTD)とのオフショア事業を強化しており、今後の事業拡充を目指し組織体制の強化を図っております。

北海道のジオロボティクス研究所では、様々な分野のお客様に研究・開発、実証実験等で利用して頂いており、自社のみならず業界の技術革新に寄与できるよう対応しております。

前年度から引き続き、原材料費の高騰等によるコスト増の影響はあるものの、改善傾向にあり、既存事業及び新規事業を進捗させ、FC店の展開を進めるとともに既存店の廃止にともなう事業の調整を行っております。

売上につきましては増収でありましたが、利益につきましては資材、人件費等の高騰により減益となっております。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、7,326百万円(前期比4.7%増)、利益につきましては、営業利益は474百万円(前期比10.9%減)、経常利益は488百万円(前期比13.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は190百万円(前期比45.7%減)となりました。

なお、親会社株主に帰属する当期純利益の減益は、当社の連結子会社である株式会社環境と開発の、のれんを一括

償却したことによる減損損失113百万を特別損失として計上したことが要因であり、一過性のものであります。

 

当社グループのセグメント別の業績は以下のとおりであります。

 

試験総合サービス事業

当連結会計年度の試験総合サービス事業の業績は、土質・地質調査試験において、全国的に地質調査業務が好調で全社の業績を牽引しました。

非破壊試験業務においては、堅調な業績となりましたが、引き続きインフラ調査の需要は多く、橋梁点検やトンネル点検等の定期点検業務が繁忙でありましたが、利益面では外注費が増加し減益となりました。

環境調査試験においては、法改正による調査・分析案件の増加で市場環境は良く、特にアスベスト建材の調査・分析案件の増加が目覚ましく、業績向上に貢献しました。

事業の転換期、地政学的リスク等の影響もありましたが基幹事業である試験総合サービスでは増収増益となっております。

 以上の結果、セグメント別売上高6,214百万円(前期比5.8%増)、セグメント別営業利益1,163百万円(前期比

7.6%増)となりました。

 

試験総合サービス セグメント売上高一覧表                          (単位:百万円)

セグメント名

第38期連結会計年度

第39期連結会計年度

前期比額

前期比率

土質・地質調査試験

3,518

3,820

301

108.6

非破壊調査試験

非破壊CO

1,129

1,552

1,154

1,500

△51

96.7

非破壊鉄

190

162

物理探査

232

183

環境調査試験

環境調査

413

800

474

892

92

111.6

環境分析

386

417

セグメント合計

5,871

6,214

342

105.8

 

試験総合サービス セグメント利益一覧表                           (単位:百万円)

セグメント名

第38期連結会計年度

第39期連結会計年度

前期比額

前期比率

土質・地質調査試験

614

740

125

120.5

非破壊調査試験

非破壊CO

259

292

210

224

△68

76.6

非破壊鉄

32

4

物理探査

0

9

環境調査試験

環境調査

85

175

107

199

24

113.8

環境分析

89

91

セグメント合計

1,082

1,163

81

107.6

 

 

地盤補強サービス事業

当業務は一般住宅及び中・大型建設物の建設予定地における、地盤調査、地盤補強・改良工事が主な事業の内容となっております。一般住宅等の新規着工件数自体は増加傾向との試算もありますが、いまだにコロナ禍前の状況には戻っていない市場環境であります。

以上の結果、セグメント売上高485百万円(前期比12.6%減)、セグメント利益23百万円(前期比25.5%減)となりました。

 

ソフトウェア開発販売事業

当連結会計年度の業績は、当社の連結子会社である株式会社アイ・エス・ピーと株式会社アドバンスドナレッジ研究所のソフトウェア販売が主な収益であり、解析業務、アカウント利用料、保守料金、ソフトウェアの新規販売が進んだことで順調に推移いたしました。

以上の結果、セグメント別売上高582百万円(前期比9.7%増)、セグメント別営業利益132百万円(前期比16.2%減)となりました。

 

 

当連結会計年度末の財政状態は、

総資産は6,861百万円となり、前連結会計年度末に比べ152百万円の減少となりました。その内訳は以下のとおりであります。

資産の部では、流動資産が3,815百万円となり、前連結会計年度末に比べ145百万円の増加となりました。その主な要因は、現金及び預金の増加391百万円、売掛金の減少99百万円等であります。

固定資産は3,045百万円となり、前連結会計年度末に比べ297百万円の減少となりました。その要因は、有形固定資産の減少89百万円、無形固定資産の減少265百万円等であります。

負債の部では流動負債が1,253百万円となり、前連結会計年度末に比べ9百万円の増加となりました。その主な要因は、買掛金の減少61百万円、未払法人税等の増加110百万円等であります。

固定負債は976百万円となり、前連結会計年度末に比べ219百万円の減少となりました。その主な要因は、長期借入金の減少212百万円等であります。

純資産の部では純資産が4,631百万円となり、前連結会計年度末に比べ58百万円の増加となりました。その主な要因は、利益剰余金の増加26百万円等であります。

この結果、自己資本比率は67.5%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、1,958百万円となり、前連結会計年度末と比べて391百万円増加しました。その主な内訳は以下のとおりであります。

営業活動の結果得られた資金は、952百万円(前期より623百万円増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益374百万円(前期より179百万円減)、減価償却費264百万円(前期より12百万円減)等によるものであります。

投資活動による支出は、82百万円(前期より627百万円減)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出52百万円(前期より8百万円増)等によるものであります。

財務活動による支出は、479百万円(前期より138百万円増)となりました。これは、長期借入金の返済による支出217百万円(前期より116百万円減)等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は、生産活動は行っていないため該当事項はありません。

b.受注実績

当社のサービスは、受注から販売までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、

記載を省略しております。

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績はセグメント別業績に記載の通りであります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当事業年度の経営成績は、売上高が7,326百万円(前期比4.7%増)、(計画比5.5%減)、営業利益は474百万円(前期比10.9%減)、(計画比27.1%減)となりました。中期経営計画「ソリューション企業へ」の最終年度であり、中期経営計画の3つの事業戦略、新規技術の開発、完結型サービスの拡充、海外展開の3つに注力してまいりました。一定の成果は挙げられましたが、前期比では増収減益、計画比では、減収減益となりました。

新技術開発では橋梁床版の調査・解析の効率化を進め、国土交通省新技術提供システム「NETIS」に登録され一定の研究開発成果を得たと考えており、これを事業へ実装し収益化を図ってまいります。ロードスシステムにつきましては、研究開発、営業活動を推進してまいりましたが、導入にはいたらず、研究開発から派生した、技術の展開(橋梁床版の劣化調査等)にとどまりました。この度、内閣府主導の第3期SIPに協力機関として参画することが決定したため、ロードスシステムの研究開発、営業活動を停止することといたしました。ロードスシステムの社会実装が叶わなかった反省を元に、ロードスシステムのリソースを第3期SIPに移管し、再びインフラメンテナンスの維持管理問題解決に向けて研究開発を進め、社会実装を目指してまいります。

 完結型サービスにつきまして、調査・試験・分析から工事まで一括で受注することで、1件当たりの受注単価を向上させる施策でありましたが、こちらは大型案件が少なく大きな成果をあげることができませんでした。海外展開につきましては、ベトナム現地法人と協力してオフショア事業に注力いたしました。時差の利用やコスト減ができることで当社の原価率を下げる狙いがありましたが、こちらも計画より発注できる案件が少なく、十分な成果をあげることができませんでした。

業界の状況は国土強靭化、インフラストックの維持管理、環境保全と当社の基幹業務に関わりのある事業が増加していることから好況と判断でき、需要を効率的に取込んでいくことが重要だと認識しております。またFC展開による営業エリアの拡大と既存拠点の閉鎖をバランスよく行うことが重要であり、引き続きFC店の展開を進め営業エリアの拡大を進めてまいります。

今後の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

当連結会計年度における達成状況は、売上高営業利益率目標8.4%に対して6.5%(前期比1.1ポイント減、計画比1.9ポイント減)、1人当り売上高16.0百万円に対して15.0百万円(前期比0.5百万円増、計画比1.0百万円減)でありました。営業利益率につきましては、外注費の増加、販管費の増加及び赤字案件の増加があり、目標から乖離いたしました。1人当り売上高は、前期より若干増加したものの、大型案件の受注が進まず目標達成には至りませんでした。

現状の当社グループの受注単価は25万円程度でありまして、売上件数にすると年間約3万件に上ります。まだまだ労働集約型の業務体系は否めず、技術員の増加にて業績を伸ばしてまいりましたが、昨今の人口減少、技術員、業者不足のなか飛躍的な業績の向上が困難になっております。労働集約型からの脱却は急務となっており、FC展開と拠点閉鎖のバランスを整え、業務の効率化による利益率の改善と案件の大型化による受注単価の向上を目標として取組んでおります。令和6年12月期の経営成績目標を売上高7,661百万円、営業利益648百万円、経常利益653百万円、親会社株主に帰属する当期純利益395百万円と見込んでおり、売上高営業利益率8.5%、1人当り売上高16百万円としております。

 

②キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金需要は主に運転資金需要と設備資金需要があります。運転資金需要は稼動キャストの労務費と販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。設備資金需要につきましては、当社基幹業務である試験総合サービス事業に係る各種試験分析機器の導入費用等が主なものであります。これら資金需要に対する運転資金は、短期運転資金は、営業キャッシュ・フローと金融機関からの借入とし、長期運転資金は、金融機関からの長期借入を基本としております。また、当連結会計年度末の流動比率は連結ベースで304.5%となっており、流動性の観点からも財務健全性を維持しております。

 

 

 

 

③重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  該当事項はありません。