第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・戦略等

当社グループは、「パーパス(ありたい姿)」を見つめなおし、それを実現するための「ミッション(未来に向けた使命)」、「バリュー(大切にする価値観)」について、社員をはじめあらゆるステークホルダーの皆さまと共有すべく新たな経営理念としてまとめ、2023年1月に公表しました。

 

<経営理念>

パーパス(ありたい姿)

・世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする

ミッション(未来に向けた使命)

・食の基盤である一次産業の未来に貢献する

・乳製品の新たな需要を創造する

・ステークホルダーすべての豊かな生活を実現する

バリュー(大切にする価値観)

・フェアであれ

 

 

<コーポレートブランド>

「みらいを育む」

食を通じて人々の健康的な未来に貢献したい、その基盤である一次産業の未来に貢献したい、株主、取引先、従業員などのすべてのステークホルダーの皆さまの豊かな未来を共に育んでいきたい、そのような想いを込めています。

 

<長期ビジョン>

10年後の長期ビジョンとして「LACTO VISION 2032」を策定しました。

 

①スローガン

・乳製品専門商社から複合型食品企業へ

・乳製品取扱高日本一、そして世界一へ

・ベストマッチングで需要を創造、酪農・畜産業発展への貢献

 

②計数目標

 

2023年11月期

実績

2032年11月期

目標

連結経常利益

28億円

60億円

海外比率(連結経常利益ベース)

27%

40%

乳製品取扱高(グループ合計)

21万トン

45万トン

 

 

③ESG目標(マテリアリティ・個別施策)

・安心、安全な食の提供

・健康的で豊かな生活への貢献

・持続可能な酪農・畜産業を通じた安定供給

・気候変動への適応及び環境負荷の軽減

・多様な人材が誇りを持って働ける職場作り

・ガバナンスの高度化

 

 

<中期経営計画>

中期経営計画はこれまで毎年3年後の業績目標を掲げ、ローリング方式で公表しておりましたが、2023年に公表した中期経営計画「NEXT-LJ 2025」より、各期の業績目標を明示し3か年ごとに計画を見直す固定方式に変更いたしました。各期の目標を明確化することで、計画の実効性を高め、確実な成長の原動力とすると同時に、株主・投資家の皆さまとの対話を円滑なものにすることを目指しています。

「NEXT-LJ 2025」においては、既存ビジネスの「進化」と、アジア事業の拡大で成長を目指しつつ、次世代ビジネスの構築に向けた基礎固めにも注力してまいります。当中期経営計画の基本方針は下記のとおりです。

 

(基本方針)

事業成長

《Base》

既存ビジネスの「進化」

《Growth》

アジア事業の拡大

《Challenge》

次世代ビジネスの構築

サプライソースの

多様化による安定供給

チーズ製造販売事業の拡大

機能性食品をはじめとした
新たな商材の開発

ベストマッチングを生み

出すコンサルティング営業

現地営業体制の強化
販売エリアの拡充

 製造・加工の
川下分野の拡充

日本産食材の輸出

 宗教や多様な食文化に対応
した高付加価値製品の開発

酪農等の川上分野への関与

M&A(海外トレーディングハウスの買収、同業他社の買収、事業提携など)

経営基盤

の強化

持続可能な酪農・畜産業への貢献
気候変動への適応及び環境負荷を軽減するビジネス体制の構築

人材開発の強化/ガバナンスの高度化/情報システム整備

 

 

(前提となる事業環境)

世界

世界的な食糧争奪 / 環境意識の高まり

アジア

アジアの経済成長 / 食の欧米化

日本

輸入乳原料・チーズ、食肉への堅調な需要 / 高齢化・健康意識のさらなる高まり

ライフスタイルの変化、人手不足

 

 

(業績目標)

単位:億円

2023年11月期

(計画)

2024年11月期

(計画)

2025年11月期

(計画)

連結売上高

1,600

1,800

2,000

連結経常利益

32

36

40

親会社株主に帰属する当期純利益

23

26

29

 

 

 参考 : 実績

単位:億円

2023年11月期

(実績)

2024年11月期

(予想)

連結売上高

1,583

1,600

連結経常利益

28

34

親会社株主に帰属する当期純利益

20

24

 

 

 

 

 

(財務目標)

 

2023年11月期

(実績)

2025年11月期

(計画)

ROE

8.7%

10%以上

配当性向

23.2%

20~25%

連結自己資本比率

34.2%

30~35%

 

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

各事業部門の経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。

<乳原料・チーズ>

コロナ禍以降、酪農・乳業界において大きな課題となっていた国産脱脂粉乳の在庫問題は、当期解消に向けて進展がみられました。官民が一体となって取り組んだ対策の効果により国産脱脂粉乳の使用が進んだほか、生乳の生産量が減少傾向となったことから在庫水準は適正化に向かい、足元ではコロナ禍以前の水準まで低下しました。一方、輸入乳製品原料の調達に目を向けると、世界の乳製品市況は2022年の価格急騰から一転、2023年以降は価格調整局面が続く落ち着いた相場展開となっております。

このような国内の在庫状況や乳製品の国際市況を踏まえると、今後は国内ユーザーの原料調達において、国産品から価格競争力のある輸入品への回帰が期待されます。当社は販売先のニーズに合った原料の供給および納品形態などに対応できるサプライヤーを拡充すること、さらにはタイムリーな提案と確実な調達を心がけ、拡販に努めてまいります。

 

<食肉食材>

輸入豚肉の販売については、当面、仕入コスト高の状況が続くとみられ、厳しい事業環境を見込んでおります。これに対し当社は複数の産地動向や外部環境を十分に注視し、強みである優良なサプライネットワークを活用しつつ、販売先のニーズに応じたサービスの提供を行ってまいります。ポークの仕入に関しては、北米の大手食肉メーカーをサプライソースとして確保していることが強みである一方で、同社からの仕入比重が高いことがリスクにもなるとも認識しております。そこで当社は引き続き新規サプライヤーの開拓に取り組み、調達リスクの低減に努めてまいります。食肉加工品の販売については、コロナ禍以降の人手不足を背景に外食産業などで調理の手間を省く加工食品とその原料に対する需要が堅調となっていることから、原料の安定調達に加えて、既存顧客に対し新たな加工食品を提案するほか、新規顧客の開拓に注力し、事業の拡大に取り組んでまいります。

 

<アジア事業・その他>

(乳原料販売)

乳原料販売部門においては、日本向け粉乳調製品需要の回復のタイミングを着実にとらえ、タイムリーな対応により粉乳調製品の原料販売を拡充することが当面の重要な課題です。当社は、本社とグループ会社との連携を強化した営業活動を推進し、販売数量の回復に努めてまいります。

また、中国の景気低迷の影響も引き続き懸念材料となっています。東南アジア地域における当社の販売先の食品メーカーは、中国向け製品を多く製造しており、同国の需要動向は当社にも影響を及ぼします。当社としては中国景気の状況を注視しつつ、東南アジア各地の需要を開拓し、拡販していくことに注力いたします。

調達面では、競合するオセアニア産乳製品の価格動向に留意しつつ、乳原料の提案力を高めるため、欧州や、北米といった他産地のサプライソースの開拓に引き続き取り組んでまいります。

 

(チーズ製造販売)

アジアにおいては、当面中国の景気低迷の影響は残るものの、中長期的には、食の欧米化に伴いアジア地域における乳製品の消費は順調に拡大していくと見込んでいます。当社グループは、2025年に稼働を予定しているシンガポール新工場の生産が始まれば、事業規模を大幅に拡大できる可能性が高まると考えており、新工場稼働に向けて、生産・販売体制の整備を着実に進めてまいります。

また、プロセスチーズの製造においては、本社を中心とした原料チーズの購買力を活用することで原材料価格を抑え、自社製品の競争力の維持、向上を図ってまいります。

 

(その他事業)

ホエイプロテインは世界的に需要が旺盛であり、仕入価格は当面高値圏で推移することが予想されます。また、競合激化から商品の付加価値を高め、取扱商品の構成を多様化するニーズも高まっています。こうした販売先のニーズに対応するため、当社はホエイプロテインの安定調達にむけてサプライヤーの新規開拓などによる調達力を強化するとともに、商品の付加価値を高めるための多様な機能性食品原料の提案を積極化してまいります。

また、東南アジア地域においても、機能性食品原料や、日本製の健康食品の販売を開始しており、今後は取扱品目の増加と新規顧客の開拓による販売拡大を目指します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 当社グループは、経営理念である「世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする」の実現に向けた事業活動を通じて持続的な企業成長と、持続可能な社会への貢献を目指します。

 

(1) ガバナンス

 当社グループでは、経営会議と管理職会議でサステナビリティに関する全般的な議論を行うと同時に、社内勉強会などを通じて知識の共有や状況の把握を進めています。サステナビリティ活動は、「サステナビリティ推進タスクチーム」が中心となって推進しています。タスクチームでは、長期的な事業リスクおよび機会と対応について検討し、経営会議に提案します。これを受けて経営会議では、提言内容を審議し、施策などを取締役会に報告、取締役会ではこれを決定し、実行について監督します。

 

(2) マテリアリティと個別施策

 当社グループは、事業活動を通じて社会とともに持続的に成長していくことを目指しています。その中で、当社グループの強み・特徴を生かして優先的に取り組むべき経営課題を検討し、経営理念を踏まえた上で特に重要な課題として6つのマテリアリティを設定しました。「世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする」という当社の経営理念(パーパス)の実現のためには、滋養と健康に資する食品原料を安定的に供給し続けることが重要です。そこで、世界の仕入先から日本・アジアの販売先をつなぐ「サプライチェーン」、原料調達の出発点である酪農・畜産業も視野にいれた「地球環境・コミュニティ」「経営基盤」という3つの観点から課題を明確にしました。

今後、これらのマテリアリティを指針とし、成長戦略と個別の施策を結び付けた取り組みを進めることで、当社と社会、双方のサステナビリティ向上を目指します。

 

(ラクト・ジャパンのマテリアリティ)

マテリアリティ

個別施策

安心、安全な食の提供

●品質管理の徹底(トレーサビリティ、フードディフェンス、温度管理等)

●仕入先の選定(監査、視察、サンプル検査)

●プロセスチーズ製造システムの強化(ハード・ソフト面からの見直し、従業員の教育)

健康的で豊かな生活への貢献

●滋養と健康に資する乳製品を世界中から調達

●プラントベースフード原料の充実(ビーガン、乳製品アレルギー等への対応)

●多様なライフスタイルにマッチした食品・原材料の提案

持続可能な酪農・畜産業を通じた安定供給

●サプライソースの多様化(品質、産地特性、価格等)

●ベストマッチング(顧客:最適な原材料の提案・調達/取引先:販売機会の

 提案、新たな需要の創造)

●酪農家育成(国際的な人材交流の支援、酪農業進出の検討等)

●デジタル化の推進による調達・供給の効率化、省力化

気候変動への適応および環境負荷の軽減

●サプライソースの多様化(主に気候変動リスクの分散、環境に配慮した酪農家の優先・支援)

●温室効果ガスの削減への貢献(酪農・畜産業界との協業、仕入先への情報・

 サービス提供)

●フードロスの削減(商品寿命長期化への取り組み、適切な賞味期限の設定、

 廃棄ロスの削減)

●廃棄物削減(包材見直し)

●物流の最適化(環境負荷を軽減する物流のベストマッチング)

●自社の事業所・工場での環境負荷軽減

多様な人材が誇りをもって働ける職場づくり

●ダイバーシティの推進(女性、現地化・グローバル化、障がい者雇用等)

●働きやすい環境の整備(育児休暇等の制度、テレワーク等)

●人材育成の強化(教育・研修の充実化)

ガバナンスの高度化

●責任あるサプライチェーン管理

●コーポレート・ガバナンスのフルコンプライ

●リスクマネジメント(BCP、情報セキュリティ、コンプライアンス)

 

 

(3) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループは、最も重要な資産である「人」が働きがいを持って活躍することにより、持続的な価値創造が可能になると考えています。こうした考え方のもと、私たちは経営理念と長期ビジョンを体現する人材の確保と育成に注力しています。

① 人材像の定義と育成

a.人事制度

 当社が目指す人材像は、「専門性を持ち、失敗を恐れずに挑み、自分と会社の成長に誇りを持って働く個人」です。人事制度では各人が能力を最大限に発揮しつつ自らが描くキャリアを実現できるよう、期待する役割と等級を明確化したうえで、成果とプロセスの両面を公平に評価しています。

 

b.経営人材とスペシャリストの育成
 総合職は、海外駐在を通じて異文化環境における課題解決力や組織運営力を身に付けていきます。また、管理職層では複数の事業領域を横断する人事異動を行うことによって俯瞰的な視野を養い、全社的な課題に取り組めるような経営人材の育成を推進しています。一方、卓越した専門性を持つ従業員には、スペシャリストとしてのキャリアデザインの機会を提供しています。

 

c.教育研修

 従業員が役割や成長段階に応じて能力とスキルを身に付けられるよう、階層別研修をはじめとした体系的な制度を構築しています。例えば若手総合職には、海外拠点での研修を通じてサプライチェーンに関する知見を習得する機会を設けています。また、プロフェッショナルマインドの醸成と実践的な知識の習得のため、OJT研修にも注力しています。さらに、自己啓発学習に対しては会社が費用の半額を補助し、各人のレベルアップをサポートすることにより、従業員の主体的な学びを促進しています。

 

② ダイバーシティの推進

 当社の経営理念では「フェアであれ」を大切にする価値観(バリュー)として位置付けており、年齢、性別、信条、国籍、出身、障がいなどに関わりなく、各人がそれぞれの強みを発揮して活躍できる環境を整備しています。例えば、グループの女性管理職比率は約2割、単体ベースで女性従業員の育児休業からの復職率は100%を維持しており、多くの女性従業員が自ら望むキャリアを実現しながら働いています。
 また、能力、適性を重視した採用・登用・配置を実施しており、障がいのある方の雇用にも積極的に取り組んでいるほか、海外拠点ではローカル人材の管理職登用を推進することにより将来的な幹部人材を育成しています。また国内拠点では、一般職の従業員でも希望があれば総合職へ職種転換することが可能であり、キャリア志向の変化にも柔軟に対応できる仕組みを提供しています。

 

③ 働きやすい環境の整備

 従業員がワーク・ライフ・バランスを充実させられるようさまざまな制度を導入しています。テレワークや時差出勤制度の活用により通勤の負担を軽減することができるほか、土日を含め4連休を取得できる「ブロンズウィーク制度」を整備し、心身のリフレッシュを促進しています。また、育児や介護をする従業員に対し転勤を免除する「キャリアサポート制度」も用意しています。

 

④ 指標及び目標

指標

目標

2023年11月期実績

女性管理職比率(連結)

2032年11月期までに30%以上

21.8%

男性育児休暇取得率

2025年11月期までに100%

50.0%

一人当たり教育研修費(単体)

2025年11月期までに2022年11月期実績(26,030円)比で3倍

28,332円

 

 

(4) 気候変動への適応および環境負荷の軽減

 当社グループは、気候関連リスクおよび機会を管理するため GHGプロトコルや地球温暖化対策の推進に関する法律に準拠してScope1,2,3排出量を算定のうえ、中長期の財務影響などの定量的な分析を行い、TCFDが推奨する情報開示のあり方に沿って開示を進めております。今後は中長期のScope1,2,3排出量の削減目標についても検討・設定を進めていきます。

 

① 当社グループのScope1,2排出量

Scope

2021年11月期

2022年11月期

Scope1

1,010 tCO₂e

1,100 tCO₂e

Scope2

2,142 tCO₂e

2,430 tCO₂e

合計

3,152 tCO₂e

3,530 tCO₂e

 

 

② 当社グループのScope3排出量

カテゴリ

2021年11月期

(単体)

2022年11月期

(単体)

2022年11月期

(連結)

1. 購入した製品・サービス

1,371,104 tCO₂e

1,192,640 tCO₂e

1,856,190 tCO₂e

2. 資本財

1 tCO₂e

86 tCO₂e

340 tCO₂e

3. Scope1,2に含まない燃料およびエネルギー関連活動

15 tCO₂e

4 tCO₂e

304 tCO₂e

4. 輸送、配送(上流)

151,302 tCO₂e

147,167 tCO₂e

196,794 tCO₂e

5. 事業から出る廃棄物

37 tCO₂e

38 tCO₂e

69 tCO₂e

6. 出張

15 tCO₂e

16 tCO₂e

43 tCO₂e

7. 雇用者の通勤

27 tCO₂e

29 tCO₂e

124 tCO₂e

8. リース資産(上流)

算定対象外

算定対象外

算定対象外

9. 輸送、配送(下流)

カテゴリ4に

含めて計算

カテゴリ4に

含めて計算

カテゴリ4に

含めて計算

10. 販売した製品の加工

算定対象外

算定対象外

算定対象外

11. 販売した製品の使用

算定対象外

算定対象外

算定対象外

12. 販売した製品の廃棄

2,223 tCO₂e

1,796 tCO₂e

2,173 tCO₂e

13. リース資産(下流)

算定対象外

算定対象外

算定対象外

14. フランチャイズ

算定対象外

算定対象外

算定対象外

15. 投資

算定対象外

算定対象外

算定対象外

合計

1,524,724 tCO₂e

1,341,777 tCO₂e

2,056,036 tCO₂e

 

(注)Scope3排出量は、2022年11月期より連結子会社を含めた数値を集計しております。

 

(5) リスク管理

当社グループは、全社横断組織であるサステナビリティ推進タスクチームにおいて、シナリオ分析に基づくサステナビリティ関連リスクの特定・評価を実施しています。特定されたリスクは、代表取締役社長が主催するリスク管理委員会に報告され、全社的なリスクマネジメントに統合化されています。また、特定された重要なリスクおよび機会はサステナビリティ推進タスクチームから経営会議に報告され、承認されます。

リスクへの対応策は関連する事業部門で検討し、計画を策定して実行しています。策定された対応策および計画はサステナビリティ推進タスクチームから経営会議に報告され、承認されます。また、計画の進捗はリスク管理委員会に報告され、その後取締役会に報告されます。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、以下の記載はすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

 

当社では、代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、営業本部長、コーポレートスタッフ部門長、経理部長、経営企画部長、内部監査室長及び人事総務部長により構成されるリスク管理委員会を設置し、当社グループのリスク評価、リスク対策の方針決定及び審議結果を取締役会へ報告もしくは諮問しております。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 主要市場の政治・経済動向・気候変動による影響、地政学リスクについて

(主要市場の政治・経済活動による影響)

当社グループが事業活動を行う主要な市場である日本、アジア、北米、欧州、オセアニア等の国及び地域の政治・経済の動向が、当社グループの取扱商品の需給バランスに変動をもたらす可能性があります。政治・経済動向により取扱商品の需給バランスに変化が生じた場合には、仕入価格や販売価格を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(気候変動による影響)

当社グループの取扱商品である乳原料、チーズ、食肉及び食肉加工品等はその原料が動物に由来します。これらは、工業製品とは異なり、生産量は天候や環境等に左右されやすく、需給バランスも崩れやすい商品といえます。特に、酪農業においては、気温上昇が生乳生産量の減少につながるほか、干ばつや多雨による飼料の作柄なども生乳生産量に影響するため、気候変動による影響が大きいといえます。生産量の増加等で国際的に需給が緩和した場合には、国産品に対する輸入品の価格競争力が増し、販売数量が増加する傾向がありますが、逆に異常気象などで生産量が減少し、需給が逼迫した場合には、価格が高騰するとともに販売数量が減少する可能性があります。なお、極端な温暖化が進んだ場合、酪農業において生乳生産量が減少し乳原料、チーズの調達に影響が及ぶ可能性があります。

 

(環境関連規制による影響)

酪農畜産業は、牛によるメタンガスの排出など、温室効果ガスの排出量が多く、糞尿処理による水質・土壌汚染、さらには牧草地の開発に伴う森林破壊など環境負荷が大きい産業とされています。取扱商品のサプライチェーンに酪農畜産業を含む当社の事業活動においては、低炭素社会への移行に伴い温室効果ガスの排出規制がさらに強化されるなど、環境負荷を軽減するために各種規制が強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、酪農畜産業においてこれらへの対応が不十分であったり遅れたりした場合、当社グループの円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。

 

(地政学リスク)

当社グループは日本およびアジアを中心にグローバルに事業を展開しております。一方で、近年では、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ紛争など世界各地で国際紛争が発生しており、アジアにおいても台湾や北朝鮮に係る有事が懸念されています。当社が事業を展開している地域における有事の際には、商品の調達、輸送、さらには販売といった当社グループのサプライチェーンに混乱が生じ、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

以上のような事業環境の変動により取扱商品の調達や販売が困難になる、または、仕入価格や販売価格が大きく変動するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、サプライソースの多様化や代替原料の開発・調達の推進、サステナブルな酪農畜産業の構築にむけて取り組んでいくことに加えて、食品をコアとする事業の多角化に取り組むことで当該リスクの軽減を図ってまいります。

 

 

② 貿易の自由化について

2018年12月には環太平洋戦略的経済連携協定(CPTPP)が、2019年2月にはEUとの経済連携協定(日EU・EPA)が、さらに2020年1月には日米貿易協定が発効するなど、わが国では貿易自由化の流れが進んでいます。当社グループにとって貿易自由化の進展は、わが国における高い関税障壁に対処するため当社が構築してきた海外ネットワークやノウハウの活用を難しくする可能性がある一方で、関税の引き下げや撤廃などにより、輸入品に対する需要が高まり当社の販売数量を増加させる効果も期待できるところであります。そのため貿易協定の見直しなどが行われた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制について

当社グループは事業活動を遂行するにあたり、日本においては食品衛生法、消費者安全法等、その他事業を展開している各国において法的規制を受けております。今後これら規制の改廃もしくは新たな法的規制が設けられた場合には、それらに対応するための追加コストが発生し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、事業活動に必要な各種許認可を受けておりますが、法令違反等により、許認可等が取り消された場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

上記のようなリスクに対応するため、当社は会社組織として品質アセスメント室を設けており、品質に関する法規制の対応及び情報収集を行い、新たな法的規制に対しても適切かつ迅速に対応できる体制を整えております。

 

④ 感染症拡大によるリスク

社会・経済活動に甚大な影響を及ぼす感染症が発生・蔓延し流行が長期化した場合、経済活動の縮小や人流の減少による食品需要の低迷、海外も含めた食品原料の需給バランスの変化による輸入商品の価格変動、物流の混乱による商品供給の停滞等が生じるリスクがあります。

 

(2) 商品の製造及び販売・調達に関するリスク

① 食の安全性について

当社グループの取扱商品は、食品原料や食品製品であります。当社グループではアジアにおいて自社ブランドの業務用チーズの製造を行っております。万一、当社の過失や悪意のある第三者により異物が混入した場合や原料の表示に誤りがあった場合、さらには輸送・保管方法を原因とした成分変化による風味不良が発生した場合には、原料を取り扱う商社の立場、または製品を製造したメーカーとしての立場において、それぞれ商品回収や損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは製品の製造にあたっては、フードディフェンス等の安全管理を徹底するなど品質の確保に最大限努めています。

 

② 競合他社の事業戦略と販売先の系列化について

当社グループの競合他社としては、乳製品原料や食肉及び食肉加工品の仕入・販売を行っている大手総合商社や大手食品メーカーがあげられます。これら大手企業が当社の仕入先もしくは販売先に資本参加し、系列化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 経営、財務等に関するリスク

① 為替相場について

当社グループは、商社として欧米及びアジアを中心とした輸出入取引を行っております。また、海外連結子会社の財務諸表は現地通貨建てとなっており、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて連結財務諸表の純資産の部が変動するリスクがあります。

また、当社の行う大半の営業取引は仕入契約と販売契約を同時に締結しており、輸入取引における本邦顧客に対する円建ての売値は原則として仕入契約締結時における為替相場に基づいて決定されます。輸入取引における仕入契約は原則として外国通貨建てとなっておりますが、仕入契約締結の際に金融機関と為替予約を結び為替変動リスクを回避しております。ただし、円安が進んだ場合、邦貨換算の仕入金額が増加し、それに伴い販売価格も増加いたします(売上高の増加)。円高が進んだ場合はその逆となります(売上高の減少)。また、期末に向けて為替相場が急激に変動した場合において仕入代金決済後、在庫として保有し翌期に販売するときは、翌期の売上原価に影響を与える可能性があります。そのため、大幅な為替変動が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

② 有利子負債について

 

 

前連結会計年度末

(2022年11月30日)

当連結会計年度末

(2023年11月30日)

有利子負債残高(百万円)

31,262

31,518

総資産残高(百万円)

73,456

72,038

有利子負債依存度(%)

42.56

43.75

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△10,408

3,222

 

営業活動によるキャッシュ・フローについては、各連結会計年度の数値を記載しております。

 

当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門及びアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加となり、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる場合があります。引き続き、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等を通じて自己資金の創出には努めてまいります。

このような状況の下、金融情勢の変化等により資金調達が困難になり、投資計画の実行ができなくなる場合や、市場金利の上昇により資金調達コストが増大した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、主要取引金融機関とのコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、同契約には財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には当該借入金の返済を求められ、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 人材について

当社グループは、最重要経営資源として、新卒及び中途採用を通じて優秀な人材の獲得及びその育成に力を入れております。しかしながらこれら人材の退職または人材市場の状況によりタイムリーに優秀な人材が獲得できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を行う上で多種多様の情報を取り扱っております。このような状況下、予期できないシステム障害や不正アクセス等により、情報の漏洩・改ざん・消失等が発生し、社会的信用の失墜や事業活動の広範囲に制約を受けることで、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

上記のリスクに対応するため、情報資産を保護し、情報セキュリティに関する法令等を遵守するため情報セキュリティポリシーを定め、営業会計部を中心にセキュリティ研修の実施などの情報セキュリティ対策を実施しております。社員のSNS使用に関しては、ソーシャルメディアガイドラインを明文化し、周知徹底しています。また、在宅勤務などのテレワークの増加に伴い、これに対応した情報取り扱い方法の規則化及びセキュアなネットワーク環境の整備を行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限や海外からの入国制限の解除に加え、コロナ感染症の位置づけが「5類感染症」に移行されたことにより、社会経済活動が徐々に正常化しました。

世界経済は、ロシア・ウクライナ紛争の長期化、中国の景気低迷に加え、世界各国における金融引き締めによる金利上昇などにより為替動向も不安定な展開となり、先行き不透明な状況が続きました。

国内の食品業界では、人流の増加とともに各種食品需要は回復傾向となりましたが、エネルギー価格の高騰や円安の進行などを背景とした急激なインフレにより、業務用・家庭用ともに最終需要は期待ほどの伸びはありませんでした。当社の主要市場である乳業界では、酪農業の生産コスト上昇を受け、飲用向けから加工向けまで、あらゆる用途の乳価が期中に引き上げられ、加工向けにおいては年度内に2回の引き上げになるなど異例の事態となりました。加えて、円安による輸入原材料価格の上昇もあり、乳製品全般で最終製品の値上げが行われたことから、消費は鈍化しました。一方、コロナ禍以降の課題であった国産脱脂粉乳の過剰在庫問題は、官民一体となった対策事業が奏功し、適正水準に向けて在庫調整が進捗しております。

アジア市場においては、旅行需要の回復などにより東南アジア各国の経済は活性化したものの、中国の景気低迷懸念が中国向けに食品を製造するメーカーが多い東南アジア地域の食品業界に影を落とす結果となりました。

このような状況のもと、当社グループは、期初に発表した長期ビジョン「LACTO VISION 2032」の実現へのファーストステップとなる中期経営計画「NEXT-LJ 2025」の達成に向け、基本方針に沿った施策の実行に注力しました。事業成長に向けた取り組みの中では、成長分野として期待している機能性食品原料事業が順調な展開となり、主要な取扱商品であるプロテイン原料を中心に拡販が進みました。一方、既存事業においては、乳原料販売において、主力商品となる輸入粉乳調製品の販売が減少し、チーズおよび食肉の販売では、仕入価格の上昇などにより利益率が悪化しました。アジア事業においては、乳原料販売部門(商社)の販売数量が大きく減少し、チーズ製造販売部門(メーカー)においても、中国の景気低迷の影響により販売数量が伸び悩んだことに加え、原料チーズ価格高騰の影響もあり、利益は前期比で減少しました。

以上の結果、当連結会計年度末の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ14億18百万円減少し、720億38百万円となりました。負債合計は、前連結会計年度末に比べ36億61百万円減少し、473億14百万円となりました。純資産合計は、前連結会計年度末に比べ22億42百万円増加し、247億24百万円となりました。

 

b.経営成績

日本国内、アジアともに乳原料およびチーズの販売が軟調に推移したものの、国際乳製品価格の上昇と円安により販売価格が上昇したため、当連結会計年度(以下、当期)の売上高は1,583億28百万円(前期比7.4%増)と過去最高となりました。また、営業利益は31億84百万円(前期比7.2%増)、経常利益は28億47百万円(前期比9.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は20億48百万円(前期比10.4%減)となりました。

 

各事業別の状況は、次のとおりであります。

(乳原料・チーズ部門)

乳原料・チーズ部門の販売数量は、167,421トン(前期比8.5%減)となり、売上高は1,118億45百万円(前期比13.2%増)となりました。

(食肉食材部門)

食肉食材部門の販売数量は28,125トン(前期比13.5%増)となり、売上高は182億68百万円(前期比20.7%増)となりました。

(アジア事業・その他)

アジア事業の乳原料販売部門においては、販売数量は37,251トン(前期比26.1%減)となり、売上高は189億22百万円(前期比29.1%減)となりました。

アジア事業のチーズ製造販売部門においては、販売数量は4,827トン(前期比0.8%増)、売上高は48億28百万円(前期比21.2%増)となりました。

以上の結果、アジア事業・その他の売上高は282億14百万円(前期比15.7%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ13億99百万円増加し、72億82百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により増加した資金は、32億22百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益を28億47百万円計上したこと及び売上債権が26億34百万円減少、棚卸資産が17億25百万円減少したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は、13億62百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出11億12百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により減少した資金は、7億72百万円となりました。短期借入金の増加4億16百万円長期借入れによる収入52億60百万円があった一方で、コマーシャル・ペーパーの減少10億円及び長期借入金の返済46億52百万円があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績

当社グループではアジア事業においてチーズの製造販売を行っております。受注実績については金額に重要性がないため、記載しておりません。

区分の名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

前年同期比(%)

アジア事業・その他(千円)

4,807,646

113.8

 

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.販売実績

当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉及び食肉加工品等の輸入を主とする卸売及び海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性及び各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。

区分の名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

前年同期比(%)

乳原料・チーズ(千円)

111,845,951

113.2

食肉食材(千円)

18,268,211

120.7

アジア事業・その他(千円)

28,214,127

84.3

合計(千円)

158,328,290

107.4

 

(注)アジア事業・その他は、機能性食品原料販売、アジア事業とアジア事業以外の海外子会社(LACTO USA INC.及びLACTO OCEANIA PTY. LTD.、LACTO EUROPE B.V.)の合計であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、連結財務諸表の作成に当たっては、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等

1) 財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ14億18百万円減少し、720億38百万円となりました。

 

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末と比べ29億98百万円減少し、670億68百万円となりました。主な要因は、受取手形及び売掛金が23億65百万円減少したこと、商品及び製品が11億16百万円減少したことによるものです。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末と比べ15億80百万円増加し、49億69百万円となりました。主な要因は、有形固定資産が12億43百万円増加したこと、投資その他の資産が3億2百万円増加したことによるものです。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末と比べ40億68百万円減少し、370億33百万円となりました。主な要因は、買掛金が33億15百万円、コマーシャル・ペーパーが10億円それぞれ減少したことによるものです。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末と比べ4億7百万円増加し、102億81百万円となりました。主な要因は、長期借入金が1億65百万円増加したことによるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ22億42百万円増加し、247億24百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が14億14百万円増加、為替換算調整勘定が6億12百万円増加したことによるものです。

これらの結果、自己資本比率は34.2%となり、1株当たり純資産額は、2,476円38銭となりました。

 

2) 経営成績

(売上高)

各事業別の売上高の対前期比は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b. 経営成績」に記載のとおりであります。

なお、当社の売上高は、商品相場や為替相場により変動することがありますので、乳原料・チーズ部門及び食肉食材部門における業績管理の指標として、販売数量も重視しております。当該数量の過去5年間の推移は以下のとおりとなっております。

     単位:トン

 販売数量

2019年11月

2020年11月

2021年11月

2022年11月

2023年11月

 乳原料・チーズ

204,105

191,575

184,358

182,957

167,421

 食肉食材

21,532

21,925

25,699

24,775

28,125

合計

225,637

213,500

210,057

207,732

195,546

 

(売上総利益)

売上総利益は、増収により79億9百万円(前年同期比6.0%増)となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、47億24百万円(前年同期比5.2%増)と増加しました。

この主な要因は、人員増による人件費の増加、発送配達費、出張費など営業関連費用の増加によるものです。

(営業利益)

上記の結果、営業利益は、31億84百万円(前年同期比7.2%増)となりました。

(経常利益)

経常利益は、為替差益の減少等により、28億47百万円(前年同期比9.1%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

税金等調整前当期純利益は28億47百万円(前年同期比9.1%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は20億48百万円(前年同期比10.4%減)となりました。

これらの結果、1株当たり当期純利益は206円46銭となりました。また、自己資本利益率は、8.7%となりました。

 

3) キャッシュ・フローの状況

各キャッシュ・フローの分析とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の主要な取扱製品である乳原料及びチーズの販売価格は、国際乳製品価格の動向ならびに為替相場の影響を受けております。当社では、仕入契約ならびに販売契約を同時期に行うことで商品価格の変動リスクを回避し、さらに外貨建て仕入債務についても契約時点で為替予約を締結することで、為替変動リスクを回避しております。しかしながら、国際乳製品価格の低下、もしくは円高進行時においては仕入単価の低下を通じ販売単価も低下(売上減)し、反対に国際乳製品価格の上昇、もしくは円安進行時においては仕入単価の上昇を通じて販売単価も上昇(売上増)します。このように、当社では商品相場ならびに為替相場の動向により売上高が増減いたしますが、上記のとおり、リスクヘッジを着実に実行し、さらには販売数量を伸ばすことで利益を確保し、着実な成長を図ってまいります。

当社グループが今後も持続的に成長していくためには、従前の日本国内の食品メーカー向けの原料販売に加え、今後需要増が見込まれる高齢者向けに健康を訴求した食品原料の開発や日本に紹介されていない新機能海外原料の紹介、さらには経済発展が進むアジア諸国(中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア等)に対する乳原料やプロセスチーズの販売に積極的に取り組んでまいります。こうした取り組みで持続的な成長をより堅固なものとすべく、適切なパートナー選び、グローバルな視点で活躍できる人材の育成と獲得、教育研修制度の拡充などを通じて“組織力”の強化・整備を進め当社グループのすべての取引先からの信頼を向上させていく所存です。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

資金需要:

当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門及びアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加につながります。こうした運転資金が主たる資金需要となっております。

想定している中長期的な資金用途は下記の通りです。

<設備投資>

・シンガポール新工場への移転関連投資

・既存工場設備の維持・更新関連投資

<事業関連投資>

・アジアにおける営業力強化(拠点拡充など)

・新規事業拡充を目的とした関連投資(商品開発、事業提携、M&Aなど)

・事業効率化のための投資(基幹システムの更新など)

 

財務政策:

事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等自己資金の創出に努めるとともに、現状では、金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を中心に資金を調達しております。資金調達にあたっては、その必要性や実施時期を十分に検討の上、金利や期間といった調達条件やコスト等を勘案しながら、最終的には財務体質の健全性確保の観点から、その時点で最も適切と考えられる方法を採用しております。

また、当社は、主要取引金融機関と総額360億円のコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、機動的な資金調達の対応が可能となっております。

連結自己資本比率30%超を維持し、財務健全性を確保します。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社では、商品相場や為替相場の変動による影響を直接受けない販売数量を客観的な指標として重視しております。また、2024年11月期より、収益性の向上を目指し部門別の管理指標としてROICを導入し、効率経営の実践を目指します。株主の皆さまからお預かりしている資金の効果的な運用を示すROE等の経営指標を着実に向上させていく所存です。

 

e.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉及び食肉加工品等の輸入を主とする卸売及び海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性及び各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。

 

(乳原料・チーズ)

日本の食品市場においては、経済活動の回復、インバウンドの受け入れ再開などにより需要は回復傾向となりましたが、原材料価格の高騰や円安を背景に、食品メーカー各社が断続的に値上げを実施したことから、消費動向には陰りが生じました。乳製品についても、酪農業の生産コスト上昇を受け、年度内に乳価の値上げが複数回実施されたことで、最終製品価格も引き上げられ消費は伸び悩みました。

乳原料については、円安による輸入原材料価格の上昇や国産脱脂粉乳の過剰在庫対策により大手乳業メーカーを中心に国産品の使用が優先されたことで、当社の主要商品である輸入粉乳調製品の販売数量が前期に比べ減少しました。

チーズについても、最終製品の値上げにより需要が低迷し、販売数量は前期比で減少しました。

以上の結果、当期の乳原料・チーズ部門の販売数量は167,421トン(前期比8.5%減)、売上高は1,118億45百万円(前期比13.2%増)となりました。

 

(食肉食材部門)

チルドポークについては、期初は当社が取り扱う米国産ポークの需要が増加傾向で推移しましたが、その後は原料相場高ならびに円安の影響を受けて、各メーカーが最終製品の値上げを実施したことから消費が減退し、期末に向けて販売が伸び悩みました。一方で、コロナ禍の収束に伴う段階的な人流の回復を背景に、外食向けを中心にフローズンポークの需要が増加し、輸入豚肉全体の販売数量は前期比で増加しました。

加工食品の販売においては、円安による調達コストの増加を理由に販売先が商品の調達を見直す動きがあり、生ハム・サラミなど販売数量が減少した商品もありました。しかしながら、当期より取り扱いを強化した鶏肉および鶏肉加工品が、スーパーの総菜や全国展開のフードコートメニューの原料として採用されたため、加工食品全体の販売数量は増加しました。

以上の結果、当期の食肉食材部門の販売数量は28,125トン(前期比13.5%増)、売上高は182億68百万円(前期比20.7%増)となりました。

 

(アジア事業・その他)

乳原料販売部門(商社)においては、日本の脱脂粉乳在庫が適正化に向かったことから、対策事業として前年拡充した日本産脱脂粉乳の輸出が減少したため、当社でも輸出品の販売数量が前期比で大きく減少しました。また、インフレ進行を背景としたアジア市場における食品需要の低迷や、日本の大手乳業メーカーが国産脱脂粉乳の使用を優先したことによる粉乳調製品原料の販売減少から、当部門の販売数量は伸び悩みました。

以上の結果、同部門の販売数量は37,251トン(前期比26.1%減)、売上高は189億22百万円(前期比29.1%減)となりました。

 

チーズ製造販売部門(メーカー)においては、シンガポールやマレーシアなどを中心に外食向け需要は好調でしたが、原料チーズ価格の高騰による販売価格の改定や、中国やタイの景気低迷の影響などから、現地食品メーカー向けの需要は弱くプロセスチーズの販売数量は伸び悩みました。

一方、ナチュラルチーズ加工品の販売数量は伸長しました。近年、東南アジア諸国ではナチュラルチーズの消費が増加傾向にあります。当社では、シンガポール工場に導入した新設備の本格稼働により、需要の増加に十分対応できたことで、販売を大きく伸ばすことができました。

以上の結果、同部門の販売数量は4,827トン(前期比0.8%増)、売上高は48億28百万円(前期比21.2%増)となりました。

 

その他事業においては、機能性食品原料の販売が伸長しました。特に、国内において女性や高齢者など新たなユーザー層の広がりにより市場が拡大しているプロテイン製品の原料となる、ホエイプロテインの販売が好調に推移しました。主な販売先はEC(電子商取引)で最終製品を販売するブランドオーナーや異業種から新規参入するプロテインメーカーです。これらの販売先においては、激しい競合環境を背景に商品の差別化を図るニーズが高まっているため、当社では、原料の輸入・販売だけに留まらず、最終製品に付加価値を加えるため、ホエイプロテイン以外の機能性食品原料との組み合わせなど、製品提案の充実を図っております。当期はこうした取組みが奏功し、機能性食品原料の売上高、販売数量ともに前期を上回る結果となりました。

 

以上の結果、アジア事業・その他の売上高は、282億14百万円(前期比15.7%減)となりました。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。