第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・戦略等

当社グループは、「パーパス(ありたい姿)」を見つめ直し、それを実現するための「ミッション(未来に向けた使命)」、「バリュー(大切にする価値観)」について、社員をはじめあらゆるステークホルダーの皆さまと共有すべく新たな経営理念としてまとめ、2023年1月に公表しました。

 

<経営理念>

パーパス(ありたい姿)

・世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする

ミッション(未来に向けた使命)

・食の基盤である一次産業の未来に貢献する

・乳製品の新たな需要を創造する

・ステークホルダーすべての豊かな生活を実現する

バリュー(大切にする価値観)

・フェアであれ

 

 

<コーポレートブランド>

「みらいを育む」

食を通じて人々の健康的な未来に貢献したい、その基盤である一次産業の未来に貢献したい、株主、取引先、従業員などのすべてのステークホルダーの皆さまの豊かな未来をともに育んでいきたい、そのような想いを込めています。

 

<長期ビジョン>

長期ビジョンとして「LACTO VISION 2032」を公表しております。

 

①スローガン

・乳製品専門商社から複合型食品企業へ

・乳製品取扱高日本一、そして世界一へ

・ベストマッチングで需要を創造、酪農・畜産業発展への貢献

 

②計数目標

 

2024年11月期

実績

2032年11月期

目標

連結経常利益

43億円

60億円

海外比率(連結経常利益ベース)

37%

40%

乳製品取扱高(グループ合計)

22万トン

45万トン

 

 

③ESG目標(マテリアリティ・個別施策)

・安心、安全な食の提供

・健康的で豊かな生活への貢献

・持続可能な酪農・畜産業を通じた安定供給

・気候変動への適応および環境負荷の軽減

・多様な人材が誇りを持って働ける職場づくり

・ガバナンスの高度化

 

 

<中期経営計画>

中期経営計画はこれまで毎年3年後の業績目標を掲げ、ローリング方式で公表しておりましたが、2023年に公表した中期経営計画「NEXT-LJ 2025」より、各期の業績目標を明示し3か年ごとに計画を見直す固定方式に変更いたしました。各期の目標を明確化することで、計画の実効性を高め、確実な成長の原動力とすると同時に、株主・投資家の皆さまとの対話を円滑なものにすることを目指しています。

「NEXT-LJ 2025」においては、既存ビジネスの「進化」と、アジア事業の拡大で成長を目指しつつ、次世代ビジネスの構築に向けた基礎固めにも注力してまいります。当中期経営計画の基本方針は下記のとおりです。

 

(基本方針)

事業成長

《Base》

既存ビジネスの「進化」

《Growth》

アジア事業の拡大

《Challenge》

次世代ビジネスの構築

サプライソースの

多様化による安定供給

チーズ製造販売事業の拡大

機能性食品をはじめとした
新たな商材の開発

ベストマッチングを生み

出すコンサルティング営業

現地営業体制の強化
販売エリアの拡充

 製造・加工の
川下分野の拡充

日本産食材の輸出

 宗教や多様な食文化に対応
した高付加価値製品の開発

酪農等の川上分野への関与

M&A(海外トレーディングハウスの買収、同業他社の買収、事業提携など)

経営基盤

の強化

持続可能な酪農・畜産業への貢献
気候変動への適応および環境負荷を軽減するビジネス体制の構築

人材開発の強化/ガバナンスの高度化/情報システム整備

 

 

(前提となる事業環境)

世界

世界的な食糧争奪 / 環境意識の高まり

アジア

アジアの経済成長 / 食の欧米化

日本

輸入乳原料・チーズ、食肉への堅調な需要 / 高齢化・健康意識のさらなる高まり

ライフスタイルの変化、人手不足

 

 

(業績目標)

単位:億円

2023年11月期

(計画)

2024年11月期

(計画)

2025年11月期

(計画)

連結売上高

1,600

1,800

2,000

連結経常利益

32

36

40

親会社株主に帰属する当期純利益

23

26

29

 

 

 参考 : 実績

単位:億円

2023年11月期

(実績)

2024年11月期

(実績)

2025年11月期

(予想)

連結売上高

1,583

1,709

1,800

連結経常利益

28

43

46

親会社株主に帰属する当期純利益

20

31

33

 

 

 

 

 

(財務目標)

 

2023年11月期

(実績)

2024年11月期

(実績)

2025年11月期

(計画)

ROE

8.7%

12.1%

10%以上

配当性向

23.2%

25.3%

20~25%

連結自己資本比率

34.2%

33.8%

30~35%

 

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

各事業部門の経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。

<乳原料・チーズ部門>

世界的なたんぱく需要の増加が見込まれる一方、気候変動や環境規制などの影響による生乳生産量の伸び悩みから、チーズを含む乳製品原料は、将来は、供給不足となることが懸念されています。そのため、乳原料・チーズ部門においては、顧客ニーズにマッチした原料を安定的に確保できる体制を構築することが最も重要な課題といえます。当社グループはすでにサプライソースに強みをもっておりますが、引き続き新規サプライヤーの開拓に注力し、調達体制を強化してまいります。

また、既存サプライヤーとはこれまで以上に連携を強化し、他社では扱えない乳原料の開発などにより、日本における乳製品原料の輸入シェアのさらなる拡大に取り組んでまいります。

 

<食肉食材部門>

豚肉を中心とした輸入食肉事業については、海外市場における相場高や円安傾向が継続すると想定しており、当面は厳しい事業環境が続く見込みです。さらに、長年日本市場向けの輸出を担ってきた海外の大手食肉メーカーのなかには、製造コストの増加などを理由に工場閉鎖など事業を縮小する動きもみられることから、今後は価格競争力のある原料の調達とともに、物量を安定的に確保することが重要な課題です。これら課題に対して当部門では、複数の産地動向や外部環境を注視しつつ、引き続き新規サプライヤーの開拓に取り組み、調達リスクの低減に努めてまいります。

また、鶏肉などの食肉加工品以外にも取扱商品の幅を広げることで事業の拡大を目指してまいります。

 

<機能性食品原料部門>

プロテイン原料は世界的に需要が旺盛であり、国際相場は今後も高値圏で推移することが予想されます。このようななか、当部門では顧客ニーズにマッチした品質や機能性を有するプロテイン原料の安定調達のために、引き続き調達力を強化することが課題です。また、当部門においては、原料の輸入販売の枠組みを超えた付加価値の高いビジネス展開を目指しております。今後はプロテイン原料以外の商品の取り扱いを増やし、サステナブルな商材を含む多様な機能性食品原料を複合的に提案する体制を整えるとともに、ソリューションの幅を広げるために、製品の販路拡大などにも取り組む所存です。

 

<アジア事業・その他>

(乳原料販売)

アジア市場に大きな影響力を持つ中国の景気動向は引き続き懸念材料となっています。当部門としては中国景気の状況を注視しつつ、同国の景気影響が少ない東南アジア各地の需要を開拓することでリスク分散と拡販を実現してまいります。そのために、今後はアジアの各拠点と本社との緊密な連携により販売力の強化と、付加価値を高めたビジネスの展開を目指します。

 

(チーズ製造販売)

現在建設中のシンガポール新工場は2026年11月期上期の稼働開始を予定しております。短期的には、新工場での製造体制への移行に向けて、スムーズに準備を進めることのほか、各種認証の早期取得、製造量確保のための営業活動の強化が当面の課題です。また、中期的には原料サプライヤーの新規開拓を進め、物量の確保と原価低減に努めます。アジアにおいては、今後さらに食の欧米化が進み、乳製品の消費が拡大していくと見込んでいます。当社グループは、チーズの製造能力の拡大と製品の競争力の維持、向上を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、さまざまな要因により実際の結果とは大きく異なる可能性があります。

 当社グループは、経営理念である「世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする」の実現に向けた事業活動を通じて持続的な企業成長と、持続可能な社会への貢献を目指します。

 

(1) ガバナンス

 当社グループでは、経営会議と管理職会議でサステナビリティに関する全般的な議論を行うと同時に、社内勉強会などを通じて知識の共有や状況の把握を進めています。サステナビリティ推進部は、サステナビリティ活動の中心となり、全社横断的に選抜されたメンバーから成るサステナビリティ推進タスクチームとともに、長期的な事業リスク及び機会と対応について検討し、経営会議に提案します。これを受けて経営会議では、提言内容を審議し、施策などを取締役会に報告、取締役会ではこれを決定し、実行について監督します。

 なお、当社のサステナビリティ活動の基本方針として、「環境ポリシー」「持続可能な調達ポリシー」「情報セキュリティポリシー」「労働安全衛生ポリシー」を定め、ホームページにおいてその内容を公開しております。

 

               <サステナビリティ推進体制>


 

(2) マテリアリティと個別施策

 当社グループは、事業活動を通じて社会とともに持続的に成長していくことを目指しています。その中で、当社グループの強み・特徴を活かして優先的に取り組むべき経営課題を検討し、経営理念を踏まえた上で特に重要な課題として6つのマテリアリティを設定しました。「世界を食で繋ぎ、人々を健康に、そして笑顔にする」という当社の経営理念(パーパス)の実現のためには、滋養と健康に資する食品原料を安定的に供給し続けることが重要です。そこで、世界の仕入先から日本・アジアの販売先をつなぐ「サプライチェーン」、原料調達の出発点である酪農・畜産業も視野にいれた「地球環境・コミュニティ」「経営基盤」という3つの観点から課題を明確にしました。

 今後、これらのマテリアリティを指針とし、成長戦略と個別の施策を結び付けた取組みを進めることで、当社と社会、双方のサステナビリティ向上を目指します。

 

(ラクト・ジャパンのマテリアリティ)

マテリアリティ

個別施策

安心、安全な食の提供

●品質管理の徹底(トレーサビリティ、フードディフェンス、温度管理等)

●仕入先の選定(監査、視察、サンプル検査)

●プロセスチーズ製造システムの強化(ハード・ソフト面からの見直し、従業員の教育)

健康的で豊かな生活への貢献

●滋養と健康に資する乳製品を世界中から調達

●植物由来原料の充実(ビーガン、乳製品アレルギー等への対応)

●多様なライフスタイルにマッチした食品・原材料の提案

持続可能な酪農・畜産業を通じた安定供給

●サプライソースの多様化(品質、産地特性、価格等)

●ベストマッチング(顧客:最適な原材料の提案・調達/取引先:販売機会の

 提案、新たな需要の創造)

●酪農家育成(国際的な人材交流の支援、酪農業進出の検討等)

●デジタル化の推進による調達・供給の効率化、省力化

気候変動への適応および環境負荷の軽減

●サプライソースの多様化(主に気候変動リスクの分散、環境に配慮した酪農家の優先・支援)

●温室効果ガスの削減への貢献(酪農・畜産業界との協業、仕入先への情報・

 サービス提供)

●フードロスの削減(商品寿命長期化への取組み、適切な賞味期限の設定、

 廃棄ロスの削減)

●廃棄物削減(包材見直し)

●物流の最適化(環境負荷を軽減する物流のベストマッチング)

●自社の事業所・工場での環境負荷軽減

多様な人材が誇りを持って働ける職場づくり

●ダイバーシティの推進(女性、現地化・グローバル化、障がい者雇用等)

●働きやすい環境の整備(育児休暇等の制度、在宅勤務等)

●人材育成の強化(教育・研修の充実化)

ガバナンスの高度化

●責任あるサプライチェーン管理

●コーポレート・ガバナンスのフルコンプライ

●リスクマネジメント(BCP、情報セキュリティ、コンプライアンス)

 

 

(マテリアリティに関連するKPI)

マテリアリティ

KPI

2025年11月期

(目標)

2024年11月期

(実績)

健康的で豊かな生活への貢献

乳たんぱく取扱シェア

20%

11.2%

機能性食品原料の取扱品目

50品目

62品目

※目標を前倒しで達成

植物由来原料の取扱数量

1,900トン

290トン

 

 

(3) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループは、最も重要な資産である「人」が働きがいを持って活躍することにより、持続的な価値創造が可能になると考えています。こうした考え方のもと、私たちは経営理念と長期ビジョンを体現する人材の確保と育成に注力しています。当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び戦略は以下のとおりです。

 

① 人材像の定義と育成

a.人事制度

 当社が目指す人材像は、「専門性を持ち、失敗を恐れずに挑み、自分と会社の成長に誇りを持って働く個人」です。人事制度では各人が能力を最大限に発揮しつつ自らが描くキャリアを実現できるよう、期待する役割と等級を明確化したうえで、成果とプロセスの両面を公平に評価しています。

 

b.経営人材とスペシャリストの育成
 総合職は、海外駐在を通じて異文化環境における課題解決力や組織運営力を身に付けていきます。また、管理職層では複数の事業領域を横断する人事異動を行うことによって俯瞰的な視野を養い、全社的な課題に取り組めるような経営人材の育成を推進しています。一方、卓越した専門性を持つ従業員には、スペシャリストとしてのキャリアデザインの機会を提供しています。

 

c.教育研修

 従業員が役割や成長段階に応じて能力とスキルを身に付けられるよう、階層別研修をはじめとした体系的な制度を構築しています。例えば若手総合職には、海外拠点での研修を通じてサプライチェーンに関する知見を習得する機会を設けています。また、プロフェッショナルマインドの醸成と実践的な知識の習得のため、OJT研修にも注力しています。さらに、自己啓発学習に対しては会社が費用の半額を補助し、各人のレベルアップをサポートすることにより、従業員の主体的な学びを促進しています。

 

② ダイバーシティの推進

 当社の経営理念では「フェアであれ」を大切にする価値観(バリュー)として位置付けており、年齢、性別、信条、国籍、出身、障がいなどに関わりなく、各人がそれぞれの強みを発揮して活躍できる環境を整備しています。例えば、グループの女性管理職比率は15.7%、単体ベースで女性従業員の育児休業からの復職率は100%を維持しており、多くの女性従業員が自ら望むキャリアを実現しながら働いています。
 また、能力、適性を重視した採用・登用・配置を実施しており、障がいのある方の雇用にも積極的に取り組んでいるほか、海外拠点ではローカル人材の管理職登用を推進することにより将来的な幹部人材を育成しています。また国内拠点では、一般職の従業員でも希望があれば総合職へ職種転換することが可能であり、キャリア志向の変化にも柔軟に対応できる仕組みを提供しています。

 

③ 働きやすい環境の整備

 従業員がワーク・ライフ・バランスを充実させられるようさまざまな制度を導入しています。テレワークや時差出勤制度の活用により通勤の負担を軽減することができるほか、土日を含め4連休を取得できる「ブロンズウィーク制度」を整備し、心身のリフレッシュを促進しています。また、育児や介護をする従業員に対し転勤を免除する「キャリアサポート制度」も用意しています。

 

④ 指標及び目標

指標

目標

2024年11月期実績

女性管理職比率(連結)

2032年11月期まで30以上

15.7

男性育児休暇取得率

2025年11月期まで100

100.0

一人当たり教育研修費(単体)

2025年11月期までに2022年11月期実績(26,030円)比で3倍

25,557

 

 

(4) 気候変動への適応および環境負荷の軽減への取組みと戦略

当社グループは、気候変動をはじめとしたサステナビリティの課題が中長期的に顕在化する可能性を考慮し、事業・財務に重大な影響を及ぼす可能性のある気候関連のリスク及び機会を、短期的・中期的・長期的視野で特定しています。また、特定されたリスク及び機会の影響度について議論し、グループ戦略の検討及び策定に活かしています。

気候変動については、当社グループにとってリスクである一方、特徴・強みを活かした事業機会をもたらす可能性もあると考えております。そこで当社グループは、酪農や原料製造の過程におけるGHG排出量削減への取組みが進んだサプライヤーの原料を取り扱うことを強化するなど、事業を通じた脱炭素社会への貢献を推進しております。これら取組みを含む具体的な戦略は以下のとおりです。

 

・GHG排出量の提言を可能とするサプライソースの確保・育成

・気候に関連した消費行動や販売先のニーズの変化に対応した商品群の拡充とビジネスの多様化

・当社グループのバリューチェーンにおける環境配慮活動の推進

・既存商品群における環境配慮型商品の拡充

・産地の分散化の推進と仕入先との関係強化による安定調達の確保

・自社排出量(Scope1、2排出量)の削減目標の設定および削減活動の推進

・仕入先が自らの製品をカーボンオフセットする際のサポート

 

なお、当社グループは、気候関連リスク及び機会を管理するため GHGプロトコルや地球温暖化対策の推進に関する法律に準拠してScope1,2,3排出量を算定のうえ、中長期の財務影響などの定量的な分析を行い、TCFDが推奨する情報開示のあり方に沿って開示を進めております。今後は中長期のScope1,2,3排出量の削減目標についても検討・設定を進めていきます。

 

① 当社グループのScope1,2排出量

Scope

2022年11月

2023年11月

Scope1

1,100

 tCO₂e

1,259

tCO₂e

Scope2

2,430

tCO₂e

2,352

tCO₂e

合計

3,530

tCO₂e

3,611

tCO₂e

 

 

② 当社グループのScope3排出量

カテゴリ

2022年11月

2023年11月

1. 購入した製品・サービス

1,856,190

tCO₂e

1,613,760

tCO₂e

2. 資本財

340

tCO₂e

254

tCO₂e

3. Scope1,2に含まない燃料およびエネルギー関連活動

304

tCO₂e

307

tCO₂e

4. 輸送、配送(上流)

196,794

tCO₂e

188,189

tCO₂e

5. 事業から出る廃棄物

69

tCO₂e

65

tCO₂e

6. 出張

43

tCO₂e

44

tCO₂e

7. 雇用者の通勤

124

tCO₂e

127

tCO₂e

8. リース資産(上流)

算定対象外

算定対象外

9. 輸送、配送(下流)

カテゴリ4に含めて計算

カテゴリ4に含めて計算

10. 販売した製品の加工

算定対象外

算定対象外

11. 販売した製品の使用

算定対象外

算定対象外

12. 販売した製品の廃棄

2,173

tCO₂e

2,115

tCO₂e

13. リース資産(下流)

算定対象外

算定対象外

14. フランチャイズ

算定対象外

算定対象外

15. 投資

算定対象外

算定対象外

合計

2,056,036

tCO₂e

1,804,861

tCO₂e

 

 

(5) リスク管理

当社グループは、サステナビリティ推進部が運営する全社横断組織のサステナビリティ推進タスクチームにおいて、シナリオ分析に基づくサステナビリティ関連リスクの特定・評価を実施しています。特定されたリスクは、代表取締役社長が主催するリスク管理委員会に報告され、全社的なリスクマネジメントに統合化されています。

また、サステナビリティ関連の機会については、サステナビリティ推進部がとりまとめ、経営会議に報告されます。また、経営会議において報告された機会については、各事業部門に周知され、関連部署においてビジネスの可能性等の検証を行い、対応することとしています。

リスク及び機会への対応策は関連する事業部門で検討し、計画を策定して実行しています。策定された対応策及び計画はサステナビリティ推進部から経営会議に報告され、承認されます。また、計画の進捗はリスク管理委員会と経営会議に報告され、その後取締役会に報告されます。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、以下の記載はすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

 

当社では、当社グループのリスク評価、リスク対策の方針決定及び審議結果の取締役会への報告もしくは諮問のための機関として、リスク管理委員会を設置しています。委員会は、業務執行取締役、コーポレートスタッフ部門長、経営戦略部門長、総務部長、経理部長、経営企画部長により構成され、委員長は代表取締役社長が務めております。原則として、年2回定例で委員会を開催し、その他必要に応じて都度開催することとしています。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 主要市場の政治・経済動向・気候変動による影響、地政学リスクについて

(主要市場の政治・経済活動による影響)

当社グループが事業活動を行う主要な市場である日本、アジア、北米、欧州、オセアニア等の国及び地域の政治・経済の動向が、当社グループの取扱商品の需給バランスに変動をもたらす可能性があります。政治・経済動向により取扱商品の需給バランスに変化が生じた場合には、仕入価格や販売価格を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(気候変動による影響)

当社グループの取扱商品である乳原料、チーズ、食肉及び食肉加工品等はその原料が動物に由来します。これらは、工業製品とは異なり、生産量は天候や環境等に左右されやすく、需給バランスも崩れやすい商品といえます。特に、酪農業においては、気温上昇が生乳生産量の減少につながるほか、干ばつや多雨による飼料の作柄なども生乳生産量に影響するため、気候変動による影響が大きいといえます。生産量の増加等で国際的に需給が緩和した場合には、国産品に対する輸入品の価格競争力が増し、販売数量が増加する傾向がありますが、逆に異常気象などで生産量が減少し、需給が逼迫した場合には、価格が高騰するとともに販売数量が減少する可能性があります。なお、極端な温暖化が進んだ場合、酪農業において生乳生産量が減少し乳原料、チーズの調達に影響が及ぶ可能性があります。

 

(環境関連規制による影響)

酪農畜産業は、牛によるメタンガスの排出など、温室効果ガスの排出量が多く、糞尿処理による水質・土壌汚染、さらには牧草地の開発に伴う森林破壊など環境負荷が大きい産業とされています。取扱商品のサプライチェーンに酪農畜産業を含む当社の事業活動においては、低炭素社会への移行に伴い温室効果ガスの排出規制がさらに強化されるなど、環境負荷を軽減するために各種規制が強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、酪農畜産業においてこれらへの対応が不十分であったり遅れたりした場合、当社グループの円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。

 

(地政学リスク)

当社グループは日本及びアジアを中心にグローバルに事業を展開しております。一方で、近年では、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ紛争など世界各地で国際紛争が発生しており、アジアにおいても台湾や北朝鮮に係る有事が懸念されています。当社が事業を展開している地域における有事の際には、商品の調達、輸送、さらには販売といった当社グループのサプライチェーンに混乱が生じ、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

以上のような事業環境の変動により取扱商品の調達や販売が困難になる、または、仕入価格や販売価格が大きく変動するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、サプライソースの多様化や代替原料の開発・調達の推進、サステナブルな酪農畜産業の構築に向けて取り組んでいくことに加えて、食品をコアとする事業の多角化に取り組むことで当該リスクの軽減を図ってまいります。

 

 

② 貿易の自由化について

2018年12月には環太平洋戦略的経済連携協定(CPTPP)が、2019年2月にはEUとの経済連携協定(日EU・EPA)が、さらに2020年1月には日米貿易協定が発効するなど、わが国では貿易自由化の流れが進んでいます。当社グループにとって貿易自由化の進展は、わが国における高い関税障壁に対処するため当社が構築してきた海外ネットワークやノウハウの活用を難しくする可能性がある一方で、関税の引き下げや撤廃などにより、輸入品に対する需要が高まり当社の販売数量を増加させる効果も期待できるところであります。そのため貿易協定の見直しなどが行われた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制について

当社グループは事業活動を遂行するにあたり、日本においては食品衛生法、消費者安全法等、その他事業を展開している各国において法的規制を受けております。今後これら規制の改廃もしくは新たな法的規制が設けられた場合には、それらに対応するための追加コストが発生し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、事業活動に必要な各種許認可を受けておりますが、法令違反等により、許認可等が取り消された場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

上記のようなリスクに対応するため、当社は会社組織として品質アセスメント室を設けており、品質に関する法規制の対応及び情報収集を行い、新たな法的規制に対しても適切かつ迅速に対応できる体制を整えております。

 

④ 感染症拡大によるリスク

社会・経済活動に甚大な影響を及ぼす感染症が発生・蔓延し流行が長期化した場合、経済活動の縮小や人流の減少による食品需要の低迷、海外も含めた食品原料の需給バランスの変化による輸入商品の価格変動、物流の混乱による商品供給の停滞等が生じるリスクがあります。

 

(2) 商品の製造及び販売・調達に関するリスク

① 食の安全性について

当社グループの取扱商品は、食品原料や食品製品であります。当社グループではアジアにおいて自社ブランドの業務用チーズの製造を行っております。万一、当社の過失や悪意のある第三者により異物が混入した場合や原料の表示に誤りがあった場合、さらには輸送・保管方法を原因とした成分変化による風味不良が発生した場合には、原料を取り扱う商社の立場、または製品を製造したメーカーとしての立場において、それぞれ商品回収や損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは製品の製造にあたっては、フードディフェンス等の安全管理を徹底するなど品質の確保に最大限努めています。

 

② 競合他社の事業戦略と販売先の系列化について

当社グループの競合他社としては、乳製品原料や食肉及び食肉加工品の仕入・販売を行っている大手総合商社や大手食品メーカーがあげられます。これら大手企業が当社の仕入先もしくは販売先に資本参加し、系列化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 経営、財務等に関するリスク

① 為替相場について

当社グループは、商社として欧米及びアジアを中心とした輸出入取引を行っております。また、海外連結子会社の財務諸表は現地通貨建てとなっており、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて連結財務諸表の純資産の部が変動するリスクがあります。

また、当社の行う大半の営業取引は仕入契約と販売契約を同時に締結しており、輸入取引における本邦顧客に対する円建ての売値は原則として仕入契約締結時における為替相場に基づいて決定されます。輸入取引における仕入契約は原則として外国通貨建てとなっておりますが、仕入契約締結の際に金融機関と為替予約を結び為替変動リスクを回避しております。ただし、円安が進んだ場合、円貨換算の仕入金額が増加し、それに伴い販売価格も増加いたします(売上高の増加)。円高が進んだ場合はその逆となります(売上高の減少)。また、期末に向けて為替相場が急激に変動した場合において仕入代金決済後、在庫として保有し翌期に販売するときは、翌期の売上原価に影響を与える可能性があります。そのため、大幅な為替変動が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

② 有利子負債について

 

 

前連結会計年度末

(2023年11月30日)

当連結会計年度末

(2024年11月30日)

有利子負債残高(百万円)

31,518

33,435

総資産残高(百万円)

72,038

81,435

有利子負債依存度(%)

43.75

41.06

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

3,222

636

 

営業活動によるキャッシュ・フローについては、各連結会計年度の数値を記載しております。

 

当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門、機能性食品原料部門及びアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加となり、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる場合があります。引き続き、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等を通じて自己資金の創出には努めてまいります。

このような状況の下、金融情勢の変化等により資金調達が困難になり、投資計画の実行ができなくなる場合や、市場金利の上昇により資金調達コストが増大した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、主要取引金融機関とのコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、同契約には財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には当該借入金の返済を求められ、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 人材について

当社グループは、最重要経営資源として、新卒及び中途採用を通じて優秀な人材の獲得及びその育成に力を入れております。しかしながらこれら人材の退職または人材市場の状況によりタイムリーに優秀な人材が獲得できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を行う上で多種多様な情報を取り扱っております。このような状況下、予期できないシステム障害や不正アクセス等により、情報の漏洩・改ざん・消失等が発生し、社会的信用の失墜や事業活動の広範囲に制約を受けることで、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

上記のリスクに対応するため、DX企画推進部がサーバやネットワークの構成にクラウドサービスを積極的に活用し、業務を止めないインフラ構築とトレンドに沿った最新のセキュリティ対策に追随できるよう取り組んでおります。また、情報資産を保護し、情報セキュリティに関する法令等を遵守するため情報セキュリティポリシーを定め、セキュリティ研修を定期的に実施し、社員の意識向上に努めているほか、SNS使用に関してはソーシャルメディアガイドラインを明文化し、周知徹底しています。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善を示すなか、外食や飲食関連を中心に個人消費

が回復傾向にあり、また訪日外国人数が過去最多を更新するなどインバウンド需要の高まりにより緩やかな景気

持ち直しの動きがありました。一方で、世界経済は、東欧・中東地域における紛争の長期化により原油・原材料

価格等の高止まりや、わが国を含む主要国の政治情勢が大きく変化し、中国経済の低迷など先行き不透明な状況

が継続しました。

 国内の食品業界においては、業務用を中心に幅広い食品で需要回復傾向が強まったことに加え、原材料価格の

高騰・人件費や物流費などの増加分を反映した値上げにより、多くの企業が好調な業績を上げましたが、物価上

昇により消費者の購買意欲が低下傾向にあることから、先行きは予断を許さない状況となっております。当社の

主要市場である国内乳業界は、国産脱脂粉乳の過剰在庫問題が解消傾向にあり適正な在庫水準に近づくなど、前

向きな話題がある一方で、生産者側においては、エネルギー価格や飼料価格に加え、物流費や人件費などあらゆ

る面で生産コストが高騰し、酪農家の収益を圧迫する状況が続きました。

 このような事業環境のもと、当社グループでは長期ビジョン「LACTO VISION 2032」の実現に一丸となって取り

組み、その第一段階である、中期経営計画「NEXT-LJ 2025」で掲げている計数計画のうち、経常利益および親会

社株主に帰属する当期純利益の目標を一年前倒しで達成することができました。業務用を中心に回復した食品原

料需要を背景に、すべての部門において販売数量が前期比で増加し、また乳製品原料および食肉製品の価格上昇

や円安により販売価格も高水準が継続したため、売上高は期初の想定を上回り、前期比で増収となりました。利

益面では、国内事業の乳原料・チーズ部門で利益率の高い商品の比率が増加したことや、アジア事業において乳

原料販売部門、チーズ製造販売部門ともに販売数量が前期比で増加し、利益率も改善したことから前期比で大幅

増益となりました。特に、チーズ製造販売部門において、前期まで国際相場の高騰の影響を受けていた原料チー

ズのコストが低下したことに加え、製造量増加による生産効率の改善の影響が顕著でした。

以上の結果、当連結会計年度末の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ93億97百万円増加し、814億35百万円となりました。負

債合計は、前連結会計年度末に比べ65億39百万円増加し、538億53百万円となりました。純資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億57百万円増加し、275億81百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度(以下、当期)の売上高は1,709億7百万円(前期比7.9%増)となりました。また、営業利益は44億55百万円(前期比39.9%増)、経常利益は43億20百万円(前期比51.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は31億46百万円(前期比53.6%増)となりました。

 

各事業別の状況は、次のとおりであります。

(乳原料・チーズ部門)

乳原料・チーズ部門の販売数量は、176,402トン(前期比5.4%増)となり、売上高は1,141億82百万円(前期比2.1%増)となりました。

(食肉食材部門)

食肉食材部門の販売数量は31,831トン(前期比13.2%増)となり、売上高は217億88百万円(前期比19.3%増)となりました。

(機能性食品原料部門)

機能性食品原料部門の販売数量は4,199トン(前期比49.6%増)となり、売上高は51億41百万円(前期比31.2%増)となりました。

(アジア事業・その他)

アジア事業の乳原料販売部門においては、販売数量は39,728トン(前期比6.6%増)となり、売上高は215億84百万円(前期比14.1%増)となりました。

アジア事業のチーズ製造販売部門においては、販売数量は5,422トン(前期比12.3%増)、売上高は55億94百万円(前期比15.9%増)となりました。

以上の結果、アジア事業・その他の売上高は297億95百万円(前期比22.6%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ12億37百万円増加し、85億20百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により増加した資金は、6億36百万円となりました。これは税金等調整前当期純利益を43億20百万円計上したこと、売上債権が51億98百万円、棚卸資産が22億43百万円増加した一方、仕入債務が31億5百万円増加したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は、5億96百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5億57百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により増加した資金は、11億1百万円となりました。長期借入金の返済50億42百万円があった一方で、短期借入金の増加27億50百万円長期借入れによる収入43億円があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績

当社グループではアジア事業においてチーズの製造販売を行っております。受注実績については金額に重要性がないため、記載しておりません。

区分の名称

金額(百万円)

前期比(%)

アジア事業・その他

5,764

119.9

 

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.販売実績

当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉及び食肉加工品、機能性食品原料等の輸入を主とする卸売及び海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性及び各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。

区分の名称

金額(百万円)

前期比(%)

乳原料・チーズ

114,182

102.1

食肉食材

21,788

119.3

機能性食品原料

5,141

131.2

アジア事業・その他(百万円)

29,795

122.6

合計(百万円)

170,907

107.9

 

(注)アジア事業・その他は、株式会社LJフーズのその他事業、アジア事業とアジア事業以外の海外子会社(LACTO USA INC.等)の合計であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、連結財務諸表の作成に当たっては、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等

1) 財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ93億97百万円増加し、814億35百万円となりました。

 

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末と比べ87億58百万円増加し、758億26百万円となりました。主な要因は、受取手形及び売掛金が53億28百万円増加したこと、商品及び製品が19億92百万円増加したことによるものです。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末と比べ6億38百万円増加し、56億8百万円となりました。主な要因は、有形固定資産が3億17百万円増加したこと、無形固定資産が2億47百万円増加したことによるものです。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末と比べ74億22百万円増加し、444億55百万円となりました。主な要因は、買掛金が31億78百万円、短期借入金が27億52百万円それぞれ増加したことによるものです。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末と比べ8億82百万円減少し、93億98百万円となりました。主な要因は、長期借入金が8億32百万円減少したことによるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ28億57百万円増加し、275億81百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が25億98百万円増加、為替換算調整勘定が2億55百万円増加したことによるものです。

これらの結果、自己資本比率は33.8%となり、1株当たり純資産額は、2,766円36銭となりました。

 

2) 経営成績

(売上高)

各事業別の売上高の対前期比は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 b. 経営成績」に記載のとおりであります。

なお、当社の売上高は、商品相場や為替相場により変動することがありますので、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門及び機能性食品原料部門における業績管理の指標として、販売数量も重視しております。当該数量の過去5年間の推移は以下のとおりとなっております。

     単位:トン

 販売数量

2020年11月

2021年11月

2022年11月

2023年11月

2024年11月

 乳原料・チーズ

191,575

184,358

182,957

167,421

176,402

 食肉食材

21,925

25,699

24,775

28,125

31,831

機能性食品原料

-

-

-

2,806

4,199

合計

213,500

210,057

207,732

198,352

212,432

 

 

(売上総利益)

売上総利益は、増収により100億71百万円(前年同期比27.3%増)となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、56億16百万円(前年同期比18.9%増)と増加しました。

この主な要因は、人員増による人件費の増加、発送配達費、出張費など営業関連費用の増加によるものです。

(営業利益)

上記の結果、営業利益は、44億55百万円(前年同期比39.9%増)となりました。

(経常利益)

上記の結果、経常利益は、43億20百万円(前年同期比51.7%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

税金等調整前当期純利益は43億20百万円(前年同期比51.7%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は31億46百万円(前年同期比53.6%増)となりました。

これらの結果、1株当たり当期純利益は315円83銭となりました。また、自己資本利益率は、12.1%となりました。

 

3) キャッシュ・フローの状況

各キャッシュ・フローの分析とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の主要な取扱商品である乳原料及びチーズの販売価格は、国際乳製品価格の動向ならびに為替相場の影響を受けております。当社では、仕入契約ならびに販売契約を同時期に行うことで商品価格の変動リスクを回避し、さらに外貨建て仕入債務についても契約時点で為替予約を締結することで、為替変動リスクを回避しております。しかしながら、国際乳製品価格の低下、もしくは円高進行時においては仕入単価の低下を通じ販売単価も低下(売上減)し、反対に国際乳製品価格の上昇、もしくは円安進行時においては仕入単価の上昇を通じて販売単価も上昇(売上増)します。このように、当社では商品相場ならびに為替相場の動向により売上高が増減いたしますが、上記のとおり、リスクヘッジを着実に実行し、さらには販売数量を伸ばすことで利益を確保し、着実な成長を図ってまいります。

当社グループが今後も持続的に成長していくためには、従前の日本国内の食品メーカー向けの原料販売に加え、今後需要増が見込まれる高齢者向けに健康を訴求した食品原料の開発や日本に紹介されていない新機能海外原料の紹介、さらには経済発展が進むアジア諸国(中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア等)に対する乳原料やプロセスチーズの販売に積極的に取り組んでまいります。こうした取組みで持続的な成長をより堅固なものとすべく、適切なパートナー選び、グローバルな視点で活躍できる人材の育成と獲得、教育研修制度の拡充などを通じて“組織力”の強化・整備を進め当社グループのすべての取引先からの信頼を向上させていく所存です。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

資金需要:

当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門、機能性食品原料部門及びアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加につながります。こうした運転資金が主たる資金需要となっております。

想定している中長期的な資金用途は下記のとおりです。

<設備投資>

・シンガポール新工場への移転関連投資

・既存工場設備の維持・更新関連投資

<事業関連投資>

・アジアにおける営業力強化(拠点拡充など)

・新規事業拡充を目的とした関連投資(商品開発、事業提携、M&Aなど)

・事業効率化のための投資(基幹システムの更新など)

 

財務政策:

事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等自己資金の創出に努めるとともに、現状では、金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を中心に資金を調達しております。資金調達にあたっては、その必要性や実施時期を十分に検討の上、金利や期間といった調達条件やコスト等を勘案しながら、最終的には財務体質の健全性確保の観点から、その時点で最も適切と考えられる方法を採用しております。

また、当社は、主要取引金融機関と総額360億円のコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、機動的な資金調達の対応が可能となっております。

連結自己資本比率30%超を維持し、財務健全性を確保します。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社では、商品相場や為替相場の変動による影響を直接受けない販売数量を客観的な指標として重視しております。また、2024年11月期より、収益性の向上を目指し部門別の管理指標としてROICを導入し、効率経営の実践を目指します。株主の皆さまからお預かりしている資金の効果的な運用を示すROE等の経営指標を着実に向上させていく所存です。

 

e.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉及び食肉加工品、機能性食品原料等の輸入を主とする卸売及び海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性及び各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。

 

(乳原料・チーズ)

乳原料販売において、乳製品原料の国際相場は供給面及び物流面の不安定な状態が継続したことから、年間を通して高値で推移しました。特にバターやクリームなどの脂肪系乳原料は生産量減少が顕著だったことに加え、世界的な需要の高まりにより、需給はひっ迫し国際相場は大幅に上昇しました。

当社の主力商品である輸入乳製品原料は、国際相場の高騰に加え、円安の影響を受け高値で推移したにも関わらず、国産脱脂粉乳の過剰在庫の解消やアイスクリーム・菓子類など乳製品を原料とした食品の需要が回復傾向であることを捉えた当社の積極的な販売が功を奏し、引き合いが増加しました。また、近年需要の高まりが著しいプロテイン関連食品の原料販売も好調に推移したため、乳原料の販売数量は前期比で増加しました。

チーズ販売においては、世界的に需給バランスが安定していたことから、当期のチーズの国際相場は落ち着いた展開となりました。国内においては、円安による輸入価格の上昇や各種コストの高騰分を反映するためにチーズメーカーの多くが段階的に実施した最終製品の値上げの影響により、小売用チーズの需要は低迷しました。しかし、人流の回復や訪日外国人数の増加による外食向けやレジャー向けのチーズ消費は好調となり、当社は業務用を中心に販売数量を伸ばすことができました。

以上の結果、当期の乳原料・チーズ部門の販売数量は176,402トン(前期比5.4%増)、売上高は1,141億82百万円(前期比2.1%増)となりました。

 

(食肉食材部門)

食肉食材部門においては、牛肉、豚肉、鶏肉ともに国際相場が高騰したことや、円安基調であったことから内外価格差が縮小する局面が多く、国産にシフトする顧客もいるなど厳しい事業環境となりました。

このような環境下、当部門においては強みである調達力を駆使し、需要の高い商品を安定的に顧客に供給できたこと、また、顧客の仕様に合わせた加工を施したうえで販売するなど付加価値をつけた提案により、取引先のニーズに応え販売数量を増やすことができました。特に主要商品である豚肉関連では、米国の主要サプライヤーとのさらなる連携強化により、加工食品の原料となるフローズンポークやシーズンドポークを中心に物量を確保できたことが好調の一因となりました。

前年度の下期から取扱いを本格化した鶏肉及び鶏肉加工品については、年間を通じて販売数量増加に寄与しました。

以上の結果、当期の食肉食材部門の販売数量は31,831トン(前期比13.2%増)、売上高は217億88百万円(前期比19.3%増)となりました。

 

(機能性食品原料部門)

機能性食品原料部門においては、主要な取扱商品であるプロテイン製品原料の国際価格が、世界的な需要の高まりを受け高値圏で推移したことなどにより、国内のプロテインメーカーのなかには買い控えや使用量を調整する動きもみられました。しかしながら、国内のプロテイン市場は、従来のスポーツプロテイン用途の商品に加え、チルド飲料やヨーグルト、サラダチキンなど高たんぱく商品のラインナップが拡充されたことにより購買層が広がり、市場拡大の傾向が続きました。

このようなプロテイン関連需要の高まりを背景に、当部門では、前期から新たに取引を開始した先への販売が本格化したことや、新規参入するプロテインメーカーの新ブランド立ち上げをトータルサポートするなど、営業の枠組みを超えた付加価値の提供に取り組み、取引を拡大しました。その結果、当初計画していた植物由来原料やその他の機能性食品原料の販売には苦戦しましたが、プロテイン製品原料の販売が順調に拡大したため、当期の機能性食品原料部門の販売数量は4,199トン(前期比49.6%増)、売上高は51億41百万円(前期比31.2%増)となりました。

 

(アジア事業・その他)

アジア地域では中国・香港を除き、乳製品の需要が回復傾向にあり、輸入乳原料の取引数量はコロナ禍以前の水準にまで戻りつつあります。

このようななか、乳原料販売部門(商社)においては、日本国内の脱脂粉乳の過剰在庫問題が解消傾向にあることから、日本向けに粉乳調製品を製造する企業において需要回復の兆しがみえ始めました。現地企業向けでも、各社の業況が回復に向かうなか、インドネシア・フィリピン・シンガポールを中心に新規の取引先を開拓したことや、既存の取引先が求める商品や品質などの要求に柔軟に対応したことで、売上高、販売数量ともに前期を上回ることができました。加えて、当社グループのアジア地域の営業体制を強化し、海外拠点間の連携をさらに強めたことも取引拡大の一因となりました。

以上の結果、同部門の販売数量は39,728トン(前期比6.6%増)、売上高は215億84百万円(前期比14.1%増)となりました。

 

チーズ製造販売部門(メーカー)においては、中国・タイ向けの販売は低調が続きましたが、マレーシア、シンガポールを中心に、旅行・観光関連消費が下支えとなり、前期から継続して外食向けやベーカリー向けを中心にチーズの需要は回復傾向にあります。

このようななか、当部門においては、現地の日系外食チェーン向けの販売数量が好調に推移しました。耐熱性など顧客ごとに求められる品質に応えるプロセスチーズを開発・提案することが拡販に繋がっています。

以上の結果、同部門の販売数量は5,422トン(前期比12.3%増)、売上高は55億94百万円(前期比15.9%増)となりました。

 

以上の結果、アジア事業・その他の売上高は、297億95百万円(前期比22.6%増)となりました。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。